説明

用紙折り装置

【課題】装置の大型化や搬送手段の構成の複雑化を招くことなく、また、搬送過程での用紙同士の干渉などを生じさせることなく用紙束を構成する複数の用紙にそれぞれ折り目を付けて適切にスタックし、用紙束を構成する用紙の枚数が多い場合でも仕上がり状態の良好な冊子の製本が可能な用紙折り装置を提供する。
【解決手段】搬送ローラ1により搬送される用紙をプレスローラ3により搬送方向と略垂直な第1の方向へと引き込み、用紙に折り目を付けた後に、第1の方向とは逆方向となる第2の方向へと逆送する。そして、プレスローラ3により折り目が付けられた複数枚の用紙を、第2の方向の前方側に設けられたスタック部5に、搬送ローラ1による搬送方向と略平行となるように折り目を開いた状態で複数枚重ねてスタックする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば複写機やプリンタなどの画像形成装置から排出された用紙に対して折り加工を施す用紙折り装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機やプリンタなどの画像形成装置から排出された用紙を複数枚スタックし、スタックした用紙束に中綴じなどのステープル処理を行うとともに折り加工を施して製本する技術が知られている。用紙束を中綴じ製本する場合、用紙束を構成する用紙の枚数が多くなると折りが甘くなって、製本した冊子の折り目が時間とともに開いてしまうことがある。そこで、用紙束を構成する用紙に1枚あるいは少数枚ずつ折り目を付けてからスタックし、スタックした用紙束の折り目位置にステープル処理を施すことで、用紙束を構成する用紙の枚数が多い場合でも、仕上がり状態の良好な冊子を製本できるようにする試みがなされている(例えば、下記の特許文献1,2等を参照。)。
【0003】
特許文献1に記載の技術では、まず、少数枚の用紙を重ねた状態で短辺側を先頭にして中折り位置まで搬送し、中折り位置にて中折りする。その後、中折りされた少数枚の用紙を、長辺側を先頭にしてステープル位置まで搬送し、このステープル位置にて折り目位置が揃うように鞍掛けの状態でスタックする。そして、スタックした用紙が所定枚数に達すると、折り目位置にステープル処理を施して中綴じし、冊子として排出するようにしている。
【0004】
また、特許文献2に記載の技術では、まず、用紙束を構成する用紙を1枚ずつ中折り位置に搬送し、中折り位置にて中折りする。その後、中折りされた用紙を、折り目を開いた状態で1枚ずつステープル位置まで搬送し、このステープル位置にて折り目位置が揃うようにスタックする。そして、スタックした用紙が所定枚数に達すると、折り目位置にステープル処理を施して中綴じし、冊子として排出するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−96913号公報
【特許文献2】特許第3592138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、所定枚数の用紙をステープル位置にて鞍掛けの状態でスタックする構成であるため、ステープル位置に用紙をスタックするための大きなスペースを確保する必要があり、装置の大型化を招いてしまう問題がある。また、特許文献1に記載の技術では、中折りされた用紙を、搬送方向を90度切り替えてステープル位置まで搬送する必要があるため、搬送手段の構成が複雑になるという問題がある。
【0007】
また、特許文献2に記載の技術では、中折りされた用紙を1枚ずつステープル位置まで搬送してステープル位置にてスタックする構成であるため、中折りされた用紙がステープル位置に搬送される過程で、搬送中の用紙の端部とステープル位置にスタックされている用紙の折り目、或いは搬送中の用紙の折り目とステープル位置にスタックされている用紙の端部とが干渉するといった懸念がある。そして、搬送中の用紙とすでにスタックされている用紙との間でこのような干渉が生じることにより、用紙に傷や皺などを発生させてしまうという問題や、用紙ジャムが発生するといった問題、さらには所定枚数の用紙を折り目位置が揃うように適切にスタックできずに、用紙がずれた状態でステープル処理などを行ってしまうといった問題が生じる虞がある。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、装置の大型化や搬送手段の構成の複雑化を招くことなく、また、搬送過程での用紙同士の干渉などを生じさせることなく用紙束を構成する複数の用紙にそれぞれ折り目を付けて適切にスタックし、用紙束を構成する用紙の枚数が多い場合でも仕上がり状態の良好な冊子の製本が可能な用紙折り装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる用紙折り装置は、用紙を1枚ずつ搬送する用紙搬送手段と、前記用紙搬送手段により搬送された用紙の搬送方向における中途位置を前記搬送方向に対して略垂直な第1の方向に引き込んで当該用紙に折り目を付けるとともに、折り目の付いた用紙を前記第1の方向とは逆方向となる第2の方向に逆送する折り加工手段と、前記折り加工手段の前記第2の方向における前方側に設けられ、前記折り加工手段により折り目が付けられて前記第2の方向に逆送された用紙を、前記搬送方向と略平行となるように折り目を開いた状態で複数枚重ねてスタックするスタック部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、スタック部が、折り加工手段により折り目が付けられた用紙を、折り加工手段の第2の方向における前方側の位置にて、用紙搬送手段による搬送方向と略平行となるように折り目を開いた状態で複数枚重ねてスタックするため、装置の大型化や搬送手段の構成の複雑化を招くことなく、また、搬送過程での用紙同士の干渉などを生じさせることなく用紙束を構成する複数の用紙にそれぞれ折り目を付けて適切にスタックすることができ、用紙束を構成する用紙の枚数が多い場合でも仕上がり状態の良好な冊子の製本が可能となるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、第1の実施形態にかかる用紙折り装置の概略構成図である。
【図2】図2は、第1の実施形態にかかる用紙折り装置の制御系のブロック図である。
【図3】図3は、第1の実施形態にかかる用紙折り装置の一連の動作を説明する図である。
【図4】図4は、第1の実施形態にかかる用紙折り装置により折り加工が施されて冊子として排出された用紙束を示す図である。
【図5】図5は、第1の実施形態にかかる用紙折り装置が必要とする機械的なスペースを、用紙を鞍掛けスタックする場合と比較して示す図である。
【図6】図6は、折り目が付けられた用紙を1枚ずつ用紙搬送方向のさらに下流側へと搬送してからスタックするようにした場合の問題点を説明する図である。
【図7】図7は、第2の実施形態にかかる用紙折り装置の概略構成図である。
【図8】図8は、第3の実施形態にかかる用紙折り装置の概略構成図である。
【図9】図9は、第4の実施形態にかかる用紙折り装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる用紙折り装置の最良な実施の形態を詳細に説明する。なお、以下の実施の形態は本発明の一適用例を例示的に示したものであり、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、以下に示す実施の形態の構成要素は、当業者が容易に置換可能なもの或いは実質的に同一のものに適宜変更することができる。
【0013】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態にかかる用紙折り装置の概略構成図であり、図2は、本実施形態にかかる用紙折り装置の制御系のブロック図である。この用紙折り装置は、複写機やプリンタなどの画像形成装置から排出される記録済みの用紙に1枚ずつ折り目を付けて、折り目を付けた所定枚数の用紙を、折り目位置を揃えて重ねてスタックするものである。
【0014】
用紙折り装置は、図1に示すように、用紙束搬送手段としての搬送ローラ1と、突き当て部材2と、折り加工手段としての一対のプレスローラ3と、ガイド部材としての分岐爪4と、スタック部5とを備えて構成される。
【0015】
搬送ローラ1は、隣接配置された一対のローラからなり、一対のローラのうちの一方が図示しない搬送モータにギヤを介して連結されている。搬送ローラ1は、画像形成装置から排出された用紙を一対のローラ間のニップ部に挟み込んだ状態で、搬送モータの駆動により一方のローラが回転することによって、用紙を1枚ずつ下流側へと搬送する。
【0016】
突き当て部材2は、搬送ローラ1により搬送された用紙の搬送方向(図1中の矢印A方向)における先端部が当接する部材であり、搬送ローラ1による用紙搬送方向の前方側(下流側)に配設されている。この突き当て部材2は、移動アクチュエータ13(図2参照)によって、搬送ローラ1による用紙搬送方向に沿って移動可能とされている。
【0017】
プレスローラ3は、隣接配置された一対のローラからなり、一対のローラのうちの一方が、正逆回転の切替えが可能な折りモータ14(図2参照)にギヤを介して連結されている。プレスローラ3は、折りモータ14によって一方のローラが正転駆動されている状態で、先端部が突き当て部材2に当接した用紙の搬送方向における中途位置(後述する撓み部)を、一対のローラ間のニップ部に進入させる。そして、ニップ部に進入した中途位置が先頭となるように用紙を2つ折りにした状態で挟み込んで加圧しながら、搬送ローラ1による用紙の搬送方向に対して略垂直な第1の方向(図1中矢印B方向)に引き込むことで、用紙に折り目を付ける。その後、折りモータ14の回転が反転され、折りモータ14によって一方のローラが逆転駆動されることによって、折り目を付けた用紙を第1の方向とは逆方向となる第2の方向(図1中矢印C方向)に逆送する。なお、プレスローラ3の第1の方向における前方側には、プレスローラ3により第1の方向に引き込まれた用紙を検知する用紙検知センサ12が配設されている。
【0018】
分岐爪4は、バネによって図1中の実線で示す位置に付勢されており、搬送ローラ1により搬送される用紙の先端部が突き当たることによって、図1中の一点鎖線で示す位置へと変位する。その後、用紙がプレスローラ3により第1の方向に引き込まれ、用紙の後端が分岐爪4の位置を通過すると、分岐爪4は、図1中の一点鎖線で示す位置から実線で示す位置へと復帰する。分岐爪4が図1中の実線で示す位置にあるとき、プレスローラ3から搬送ローラ1へ戻る進路は分岐爪4によって遮断されるので、プレスローラ3によって折り目が付けられて第2の方向に逆送された用紙はスタック部5へと導かれることになる。つまり、分岐爪4は、プレスローラ3によって折り目が付けられて第2の方向に逆送された用紙をスタック部5へと導くガイド部材として機能する。
【0019】
スタック部5は、プレスローラ3により折り目が付けられた用紙を複数枚重ねてスタックするものである。このスタック部5は、プレスローラ3から見て、当該プレスローラ3が用紙を逆送する方向である第2の方向(図1中矢印C方向)の前方側に設けられている。スタック部5は、このプレスローラ3の第2の方向における前方側の位置にて、プレスローラ3により折り目が付けられて逆送された用紙を、搬送ローラ1による用紙搬送方向(図1中矢印A方向)と略平行となるように、折り目を開いた状態で複数枚重ねてスタックするように構成されている。
【0020】
本実施形態にかかる用紙折り装置の制御系は、図2に示すように、例えばCPUやROM、RAM、入出力インターフェース等を備えるマイクロコンピュータなどからなる制御部10を中心として構成される。制御部10には、用紙のサイズを検知するサイズ検知部11と、プレスローラ3により第1の方向に引き込まれた用紙を検知する用紙検知センサ12と、突き当て部材2を移動するための移動アクチュエータ13と、プレスローラ3を回転駆動する折りモータ14とが接続されている。
【0021】
サイズ検知部11は、例えば、用紙折り装置に用紙を供給する画像形成装置においてユーザの操作入力やサイズ検知処理の結果に基づいて設定された用紙サイズの情報を取得することにより、用紙折り装置の内部に導入された用紙のサイズを検知する。また、サイズ検知部11は、用紙折り装置の内部に導入された用紙のサイズを、センサなどを用いて新たに検知する構成であってもよい。サイズ検知部11により検知された用紙サイズの情報は、制御部10に入力される。
【0022】
用紙検知センサ12は、例えば、反射型光センサまたは透過型光センサなどから構成される。この用紙検知センサ12は、プレスローラ3の第1の方向における前方側に配設され、プレスローラ3により第1の方向に引き込まれた用紙が当該用紙センサ12の位置を通過する際の光の反射または遮断を検知することで、プレスローラ3により第1の方向に引き込まれた用紙を検知する。この用紙検知センサ12による検知情報は、制御部10に入力される。
【0023】
制御部10は、サイズ検知部11により検知された用紙サイズの情報に基づいて移動アクチュエータ13を駆動して、突き当て部材2の位置を制御する。具体的には、制御部10は、搬送ローラ1により搬送された用紙の先端部が突き当て部材2に当接したときに、用紙の搬送方向における中間位置がプレスローラ3のニップ部に対向するように、移動アクチュエータ13を駆動して突き当て部材2の位置を制御する。
【0024】
また、制御部10は、サイズ検知部11により検知された用紙サイズの情報と、用紙検知センサ12による検知情報とに基づいて、プレスローラ3による折り加工終了のタイミングを判定し、折りモータ14の回転方向を切り替えてプレスローラ3を逆転駆動させる制御を行う。具体的には、制御部10は、用紙検知センサ12とプレスローラ3との間の距離と用紙検知センサ12が用紙を検知してからの経過時間とから、プレスローラ3による第1の方向への用紙の引き込み量を算出する。そして、プレスローラ3による第1の方向への用紙の引き込み量が、サイズ検知部11により検知された用紙サイズの半分の長さに近くなったとき(搬送ローラ1により搬送される用紙の後端が分岐爪4の位置を通過した後)に、プレスローラ3による折り加工終了と判断し、折りモータ14の回転方向を正転から逆転に切り替えて、プレスローラ3を逆転駆動させる。
【0025】
図3は、本実施形態にかかる用紙折り装置の一連の動作を説明する図である。以下、この図3を参照しながら、本実施形態にかかる用紙折り装置の動作について説明する。
【0026】
まず、画像形成装置から用紙折り装置の内部に用紙Sが導入されると、搬送モータにより搬送ローラ1が駆動され、搬送ローラ1による用紙Sの搬送が開始される。そして、用紙Sの先端部が分岐爪4に突き当たると、分岐爪4がバネの付勢力に抗して図3(a)に示すように、下流側の通路を開放するように変位する。
【0027】
その後、搬送ローラ1による用紙Sの搬送が継続されることにより、図3(b)に示すように、用紙Sの先端部が突き当て部材2に当接する。このとき、突き当て部材2は、制御部10の制御のもとで、用紙Sの搬送方向の中間位置がプレスローラ3のニップ部に対向する位置となるように、移動アクチュエータ13の動作によって位置決めされている。また、プレスローラ3は、制御部10の制御のもとで、折りモータ14によって正転駆動される。
【0028】
先端部が突き当て部材2に当接した状態の用紙Sが搬送ローラ1によりさらに搬送されると、図3(c)に示すように、プレスローラ3のニップ部に対向する用紙Sの搬送方向中間位置がプレスローラ3側に撓み、このプレスローラ3側に撓んだ撓み部Sxがプレスローラ3のニップ部へと進入していく。
【0029】
用紙Sの撓み部Sxがプレスローラ3のニップ部に進入すると、図3(d)に示すように、プレスローラ3が、用紙Sを撓み部Sxが先頭となるように2つ折りにした状態で挟み込んで加圧しながら、搬送ローラ1による搬送方向に対して略垂直な第1の方向へと引き込み、用紙Sに折り目を付ける。そして、図3(e)に示すように、プレスローラ3による用紙Sの引き込み量が用紙サイズの半分の長さに近くなると、制御部10の制御により、折りモータ14の回転方向が正転から逆転に切り替えられる。
【0030】
折りモータ14の回転方向が正転から逆転に切り替えられると、プレスローラ3が折りモータ14によって逆転駆動され、図3(f)に示すように、折り目が付けられた用紙Sを、第1の方向とは逆方向となる第2の方向へと逆送する。このとき、分岐爪4は、バネの付勢力によって元の位置に復帰している。
【0031】
その後、プレスローラ3による用紙Sの逆送が継続されることで、折り目の付いた用紙Sはスタック部5へと導かれ、図3(g)に示すように、搬送ローラ1による搬送方向と略平行となるように、折り目を開いた状態でスタック部5に収容される。
【0032】
次に、画像形成装置から用紙折り装置の内部に2枚目の用紙Sが導入されると、図3(h)に示すように、搬送ローラ1による用紙Sの搬送が再開され、上述した一連の動作が繰り返されることによって、折り目が付けられた2枚目の用紙Sがスタック部5へと導かれる。そして、2枚目の用紙Sが、搬送ローラ1による搬送方向と略平行となるように、折り目を開いた状態で、1枚目の用紙上に重ね合わされる。その後、画像形成装置から用紙折り装置の内部に新たな用紙Sが導入されるたびに以上の動作が繰り返されることによって、図3(i)に示すように、用紙束を構成する所定枚数の用紙Sが、搬送ローラ1による搬送方向と略平行となるように折り目を開いた状態で重ね合わされて、スタック部5にスタックされる。そして、所定枚数の用紙Sが重ね合わされてなる用紙束は、冊子として用紙折り装置の外部に排出される。
【0033】
以上、具体的な例を挙げながら詳細に説明したように、本実施形態にかかる用紙折り装置は、スタック部5が、プレスローラ3により折り目が付けられた用紙を、プレスローラ3の第2の方向における前方側の位置にて、搬送ローラ1による用紙搬送方向と略平行となるように折り目を開いた状態で複数枚重ねてスタックするようにしている。したがって、装置の大型化や搬送手段の構成の複雑化を招くことなく、また、搬送過程での用紙同士の干渉などを生じさせることなく用紙束を構成する複数の用紙にそれぞれ折り目を付けて適切にスタックすることができ、用紙束を構成する用紙の枚数が多い場合でも仕上がり状態の良好な冊子の製本が可能となる。
【0034】
図4は、本実施形態にかかる用紙折り装置により折り加工が施されて冊子として排出された用紙束を示す図である。本実施形態にかかる用紙折り装置は、プレスローラ3によって用紙に1枚ずつ折り目をつけてからスタック部5にスタックする構成となっているので、用紙束を構成する用紙の枚数が多い場合でも、プレスローラ3の加圧力を過度に大きくすることなく一つ一つの用紙にしっかりと折り目を付けることができる。このため、図4に示すように、冊子として排出する用紙束の折り高さを小さくして、仕上がり状態の良好な冊子とすることができる。
【0035】
図5は、本実施形態にかかる用紙折り装置において必要となる機械的なスペースを、用紙を鞍掛けスタックする場合と比較して示す図である。本実施形態にかかる用紙折り装置は、図5(a)に示すように、折り目が付けられた用紙Sを、折り目を開いた状態で用紙搬送方向と略平行となるようにスタックする構成となっているので、図5(b)に示す用紙Sを鞍掛けスタックする場合と比較して、用紙の搬送や折り加工のための機構も含めた装置全体のサイズをコンパクトにすることができ、装置の小型化を実現することができる。
【0036】
図6は、折り目が付けられた用紙を1枚ずつ用紙搬送方向のさらに下流側へと搬送してからスタックするようにした場合の問題点を説明する図である。折り目が付けられた用紙を1枚ずつ下流側のスタック位置へと搬送しようとすると、スタック位置で複数枚の用紙が折り目の山を上にしてスタックされている場合には、図6(a)に示すように、スタック位置でスタックされている用紙の折り目の山と、新たにスタック位置へと搬送される用紙の先端部とが干渉してしまうことが懸念される。また、スタック位置で複数枚の用紙が折り目の山を下にしてスタックされている場合には、図6(b)に示すように、スタックされている用紙の端部と、新たにスタック位置へと搬送される用紙の折り目の山とが干渉してしまうことが懸念される。そして、このような搬送過程における用紙間の干渉によって、用紙に傷や皺などを発生させてしまうという問題や、用紙ジャムが発生するという問題、さらには所定枚数の用紙を折り目位置が揃うように適切にスタックできずに、用紙がずれた状態の冊子を排出してしまうといった問題が生じる虞がある。
【0037】
これに対して、本実施形態の用紙折り装置は、折り目が付けられた用紙を用紙搬送方向に対して垂直な方向である第2の方向に送り、第2の方向の前方側に設けられたスタック部5に折り目を開いた状態で重ねてスタックする構成となっているので、上述した用紙間の干渉などを生じさせずに所定枚数の用紙を適切にスタックすることができる。
【0038】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態にかかる用紙折り装置について説明する。本実施形態は、用紙に対して折り目を付ける折り加工手段の構成が上述した第1の実施形態とは異なるものである。なお、用紙折り装置における折り加工手段以外の構成は第1の実施形態と共通しているため、以下では、第1の実施形態と共通の部分については同一の符号を付して重複した説明を省略し、本実施形態に特徴的な折り加工手段の構成についてのみ説明する。
【0039】
図7は、本実施形態にかかる用紙折り装置の概略構成図である。本実施形態にかかる用紙折り装置では、用紙に対して折り目を付ける折り加工手段が、引き込みローラ21とプレス部材22とにより構成される。
【0040】
引き込みローラ21は、第1の実施形態で説明したプレスローラ3と同様に一対のローラからなり、一対のローラのうちの一方が、正逆回転の切替えが可能な折りモータ14にギヤを介して連結されている。ただし、引き込みローラ21は、プレスローラ3のように一対のローラ間に挟み込んだ用紙を加圧する機能を備えておらず、一対のローラ間の間隔がプレスローラ3に比べて大きくとられている。
【0041】
この引き込みローラ21は、図7(a)に示すように、折りモータ14によって一方のローラが正転駆動されている状態で、搬送ローラ1により搬送された用紙Sの先端部が突き当て部材2に当接して用紙Sの搬送方向における中間位置に撓み部Sxが形成されると、この撓み部Sxを一対のローラ間の隙間に進入させる。そして、図7(b)に示すように、撓み部Sxが先頭となるように、用紙Sを搬送ローラ1による搬送方向に対して略垂直な第1の方向へと引き込む。その後、図7(c)に示すように、第1の方向に引き込んだ用紙Sに対してプレス部材22により折り目が付けられた後、図7(d)に示すように、折りモータ14の回転が反転され、折りモータ14によって一方のローラが逆転駆動されることによって、折り目が付いた用紙Sを第1の方向とは逆方向となる第2の方向に逆送する。
【0042】
プレス部材22は、対向配置された一対のプレス板よりなり、図7(c)に示すように、引き込みローラ21によって用紙Sが第1の方向に引き込まれたときに、一対のプレス板が互いに接近するように駆動され、これら一対のプレス板の間に用紙Sの撓み部Sxを挟み込んで加圧することで、用紙Sに折り目を付ける。その後、図7(d)に示すように、一対のプレス板が離間して、用紙Sを逆送可能な状態とする。このプレス部材22によって折り目が付けられて、引き込みローラ21により第2の方向に逆送された用紙Sは、第1の実施形態と同様に、引き込みローラ21から見て第2の方向の前方側に位置するスタック部5に、折り目を開いた状態で収容される。そして、用紙束を構成する所定枚数の用紙Sが、搬送ローラ1による搬送方向と略平行となるように折り目を開いた状態で重ね合わされてスタック部5にスタックされ、その後、冊子として用紙折り装置の外部に排出される。
【0043】
以上のように、本実施形態にかかる用紙折り装置は、引き込みローラ21により第1の方向に引き込まれ、プレス部材22により折り目が付けられた後に引き込みローラ21により第2の方向に逆送された用紙を、スタック部5が、引き込みローラ21の第2の方向における前方側の位置にて、搬送ローラ1による用紙搬送方向と略平行となるように折り目を開いた状態で複数枚重ねてスタックするようにしている。したがって、第1の実施形態にかかる用紙折り装置と同様に、装置の大型化や搬送手段の構成の複雑化を招くことなく、また、搬送過程での用紙同士の干渉などを生じさせることなく用紙束を構成する複数の用紙にそれぞれ折り目を付けて適切にスタックすることができ、用紙束を構成する用紙の枚数が多い場合でも仕上がり状態の良好な冊子の製本が可能となる。
【0044】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態にかかる用紙折り装置について説明する。本実施形態は、スタック部5にスタックされた所定枚数の用紙からなる用紙束を、折り加工手段としてのプレスローラ3に再度導入し、プレスローラ3が、所定枚数の用紙からなる用紙束を再度第1の方向に引き込んで、この用紙束に重ね折りを施すようにしたものである。なお、用紙折り装置の基本的な構成は第1の実施形態と共通しているため、以下では、第1の実施形態と共通の部分については同一の符号を付して重複した説明を省略し、本実施形態に特徴的な部分についてのみ説明する。
【0045】
図8は、本実施形態にかかる用紙折り装置の概略構成図である。本実施形態にかかる用紙折り装置では、スタック部5にスタックされた所定枚数の用紙からなる用紙束をプレスローラ3に導入するための導入部材31が付加されている。導入部材31は、スタック部5にスタックされた用紙束を挟んで、プレスローラ3のニップ部に対向する位置に設けられており、図示しないアクチュエータによって第1の方向に移動可能とされている。
【0046】
本実施形態にかかる用紙折り装置では、図8(a)に示すように、スタック部5に用紙束を構成する所定枚数の用紙がスタックされた後、折りモータ14によるプレスローラ3の正転駆動が再開される。そして、導入部材31がアクチュエータによって第1の方向へと駆動され、スタック部5にスタックされた所定枚数の用紙からなる用紙束をプレスローラ3のニップ部に導入する。これにより、図8(b)に示すように、プレスローラ3が用紙束を第1の方向へと引き込みながら加圧して、用紙束に対して重ね折りを施す。プレスローラ3によって重ね折りが施された用紙束は、その後、第1の方向へとさらに送り込まれて、冊子として用紙折り装置の外部に排出される。また、導入部材31はアクチュエータにより駆動されて元の位置に復帰する。
【0047】
以上のように、本実施形態にかかる用紙折り装置は、スタック部5にスタックされた所定枚数の用紙からなる用紙束を導入部材31によりプレスローラ3のニップ部に導入し、プレスローラ3によってこの用紙束に重ね折りを施すようにしているので、第1の実施形態の効果に加えて、冊子として排出する用紙束の折り高さ(図4参照)をさらに小さくすることができ、冊子の仕上がり状態をさらに良好なものとすることができるといった効果が得られる。また、プレスローラ3により重ね折りをする用紙束は、各用紙にすでに折り目が付けられているので、比較的小さい加圧力で適切に重ね折りを施すことができる。
【0048】
なお、以上の例では、折り加工手段として第1の実施形態と同様のプレスローラ3を用いているが、折り加工手段として第2の実施形態と同様の引き込みローラ21およびプレス部材22を用いるようにしてもよい。折り加工手段として引き込みローラ21およびプレス部材22を用いた場合にも、上記と同様の効果を得ることができる。
【0049】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態にかかる用紙折り装置について説明する。本実施形態は、スタック部5にスタックされた所定枚数の用紙からなる用紙束をステープル位置へと搬送し、ステープル位置にて用紙束にステープル処理を施した後に、冊子として用紙折り装置の外部に排出するようにしたものである。なお、用紙折り装置のその他の構成は第1の実施形態と共通しているため、以下では、第1の実施形態と共通の部分については同一の符号を付して重複した説明を省略し、本実施形態に特徴的な部分についてのみ説明する。
【0050】
図9は、本実施形態にかかる用紙折り装置の概略構成図である。本実施形態にかかる用紙折り装置では、スタック部5にスタックされた所定枚数の用紙からなる用紙束にステープル処理を施すステープルユニット41が付加されている。また、突き当て部材2には、スタック部5にスタックされた所定枚数の用紙からなる用紙束の端部を挟持するための押さえ部2aが設けられており、この突き当て部材2が用紙束の端部を挟持した状態で移動アクチュエータ13の駆動により移動することで、用紙束を揃えた状態で搬送できるようになっている。つまり、突き当て部材2は、スタック部5にスタックされた所定枚数の用紙からなる用紙束を搬送する用紙搬送手段として機能する。
【0051】
本実施形態にかかる用紙折り装置では、図9(a)に示すように、スタック部5に用紙束を構成する所定枚数の用紙がスタックされると、図9(b)に示すように、突き当て部材2の押さえ部2aが移動して、スタック部5にスタックされた所定枚数の用紙からなる用紙束の端部が突き当て部材2によって挟持される。そして、移動アクチュエータ13の駆動により突き当て部材2が図中の下方に移動する。その後、図9(c)に示すように、用紙束の折り目位置がステープルユニット41によるステープル位置に到達したところで突き当て部材2の移動が停止され、ステープルユニット41により、用紙束の折り目位置にステープル処理が施される。
【0052】
ステープルユニット41によるステープル処理が終了すると、移動アクチュエータ13による突き当て部材2の駆動が再開され、図9(d)に示すように、ステープルユニット41によりステープル処理が施された用紙束が、突き当て部2により図中のさらに下方へと搬送される。そして、ステープル処理が施された用紙束がステープルユニット41の下方に設けられた排出口42に到達したところで突き当て部材2の移動が停止され、図9(e)に示すように、ステープル処理が施された用紙束が、排出口42から用紙折り装置の外部に冊子として排出される。
【0053】
以上のように、本実施形態にかかる用紙折り装置は、スタック部5にスタックされた所定枚数の用紙からなる用紙束をステープル位置へと搬送して、ステープルユニット41により用紙束の折り目位置にステープル処理を施した後に、排出口42から用紙折り装置の外部に冊子として排出するようにしているので、用紙束を構成する用紙を1枚ずつステープル位置へと搬送する場合に懸念される搬送過程での用紙同士の干渉を有効に防止することができ、用紙束に対して適切にステープル処理を施して、用紙ずれなどのない仕上がり状態が良好な冊子を排出すことができる。また、折り目を付けた用紙を重ねた用紙束に対してステープル処理を施すようにしているので、用紙束を構成する用紙の枚数が多い場合でも仕上がり状態の良好な冊子を排出することができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
以上のように、本発明は、所定枚数の用紙からなる用紙束に折り加工を施して冊子を製本する技術として有用である。
【符号の説明】
【0055】
1 搬送ローラ
2 突き当て部材
3 プレスローラ
4 分岐爪
5 スタック部
21 引き込みローラ
22 プレス部材
31 導入部材
41 ステープルユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙を1枚ずつ搬送する用紙搬送手段と、
前記用紙搬送手段により搬送された用紙の搬送方向における中途位置を前記搬送方向に対して略垂直な第1の方向に引き込んで当該用紙に折り目を付けるとともに、折り目の付いた用紙を前記第1の方向とは逆方向となる第2の方向に逆送する折り加工手段と、
前記折り加工手段の前記第2の方向における前方側に設けられ、前記折り加工手段により折り目が付けられて前記第2の方向に逆送された用紙を、前記搬送方向と略平行となるように折り目を開いた状態で複数枚重ねてスタックするスタック部と、を備えることを特徴とする用紙折り装置。
【請求項2】
前記折り加工手段は、前記用紙を前記搬送方向における中途位置が先頭となるように2つ折りにした状態で挟み込んで加圧しながら前記第1の方向に引き込んだ後、前記第2の方向に逆送するプレスローラを有することを特徴とする請求項1に記載の用紙折り装置。
【請求項3】
前記折り加工手段は、
前記用紙を前記搬送方向における中途位置が先頭となるように前記第1の方向に引き込んだ後、前記第2の方向に逆送する引き込みローラと、
前記引き込みローラにより前記第1の方向に引き込まれた用紙の前記搬送方向における中途位置を挟み込んで加圧するプレス部材と、を有することを特徴とする請求項1に記載の用紙折り装置。
【請求項4】
前記用紙搬送手段により搬送された用紙の搬送方向における先端部が当接する突き当て部材をさらに備え、
前記折り加工手段は、先端部が前記突き当て部材に当接した状態で前記用紙搬送手段による搬送が継続されることにより形成される用紙の撓み部を前記第1の方向に引き込むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の用紙折り装置。
【請求項5】
前記折り加工手段により折り目が付けられて前記第2の方向に逆送された用紙を前記スタック部に導くガイド部材をさらに備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の用紙折り装置。
【請求項6】
前記折り加工手段は、前記スタック部にスタックされた所定枚数の用紙からなる用紙束を前記第1の方向に再度引き込んで、当該用紙束に重ね折りを施すことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の用紙折り装置。
【請求項7】
前記用紙束を前記折り加工手段へと導入する導入部材をさらに備えることを特徴とする請求項6に記載の用紙折り装置。
【請求項8】
前記スタック部にスタックされた所定枚数の用紙からなる用紙束を搬送する用紙束搬送手段と、
前記用紙束搬送手段により搬送された用紙束に対してステープル処理を施すステープル手段と、をさらに備えることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の用紙折り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−184112(P2011−184112A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−48039(P2010−48039)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(000006932)リコーエレメックス株式会社 (708)
【Fターム(参考)】