用紙断裁装置及び用紙後処理装置
【課題】複写機等の用紙後処理装置における、用紙束を断裁位置に保持する用紙押さえ部材に断裁刃を受ける刃受け部材を結合した構成において、用紙束を断裁位置に円滑に導入し、断裁不良や搬送不良を防止する。
【解決手段】刃受け部材の用紙進入側端部に、斜面からなり用紙の進入を案内する案内面を設けるとともに、該案内面に弾性案内片を固定する。さらに、用紙支持台の用紙進入側端部にも、斜面からなり用紙の進入を案内する案内面を設けるとともに、該案内面に弾性案内片を固定する。
【解決手段】刃受け部材の用紙進入側端部に、斜面からなり用紙の進入を案内する案内面を設けるとともに、該案内面に弾性案内片を固定する。さらに、用紙支持台の用紙進入側端部にも、斜面からなり用紙の進入を案内する案内面を設けるとともに、該案内面に弾性案内片を固定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数枚の用紙を断裁する用紙断裁装置に関し、特に、複写機、プリンタ、ファクシミリ及びこれらの機能の2以上を合わせ持つ複合機等の画像形成装置の付属装置として用いられる用紙後処理装置及び該用紙後処理装置に組み込むことができる用紙断裁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置に装着して用いられる用紙後処理装置として、複数枚の用紙を束ねて冊子を作成する機能を有するものが開発されている。このような用紙後処理装置の多くでは、用紙束をその中央部で折り畳んだ後に、中央部を綴じ、綴じ部と対向する辺、すなわち、小口を用紙断裁装置により断裁して小口を揃えることにより、冊子が形成される。
【0003】
このような用紙後処理装置に組み込まれる用紙断裁装置は、コピーセンターやオフィスに設置される画像形成システムの一部を構成するものであることから、小型であることが必要であるとともに、小口をきれいに揃える機能が安定して維持されることが必要である。小口の断裁面に凹凸等の不揃いがあると、冊子の見開きが円滑でない等、冊子の品位が低下するという問題が生ずる。
【0004】
同一の冊子を大量に生産する印刷製本工程に使用される用紙断裁装置は、大電力で駆動される大規模装置であり、高い断裁性能があれば十分であるが、画像形成システムの一部として用いられる用紙断裁装置では、前記のように、小電力で作動可能であり、小型であることが断裁性能に対する条件に加わるために、大規模装置に用いられる用紙断裁装置にはない工夫必要になる。
【0005】
特許文献1では、事務機に使用可能な用紙断裁装置として、断裁刃を用紙束に紙面に対して斜め方向から押し当てて断裁する用紙断裁装置が開示されている。
【特許文献1】特開2003−136471号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、特許文献1に開示されているような用紙断裁装置において、断裁装置への用紙束の導入が安定して行われ、用紙導入時における用紙束の搬送不良により生ずる断裁不良や、用紙の曲がり、紙詰まり等の搬送不良が少なく、高い断裁性能が安定して維持される用紙断裁装置及びかかる断裁装置を有する用紙後処理装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の前記目的は、下記の発明のいずれかにより達成される。
(請求項1)
用紙束に対して、その紙面に直角な方向の移動成分と平行な方向の移動成分が合成された斜め方向の移動により用紙を断裁する断裁刃、
該断裁刃を受ける刃受け部材、
用紙を断裁位置に支持する支持台及び、
前記刃受け部材を介して前記支持台との間に用紙を押さえる用紙押さえ部材
を有する用紙断裁装置であって、
前記刃受け部材の用紙進入側端部に、斜面からなり、用紙の進入を案内する案内面を設けたことを特徴とする用紙断裁装置。
(請求項2)
前記斜面に弾性案内片を固定したことを特徴とする請求項1に記載の用紙断裁装置。
(請求項3)
前記支持台の用紙進入側端部に、用紙の進入を案内する案内面を設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の用紙断裁装置。
(請求項4)
前記支持台の前記案内面に弾性案内片を固定したことを特徴とする請求項3に記載の用紙断裁装置。
(請求項5)
前記刃受け部材をその未使用部が用紙押さえ位置に設定されるように、駆動する受け部材駆動機構を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の用紙断裁装置。(請求項6)
請求項1〜5のいずれか1項に記載の用紙断裁装置を有することを特徴とする用紙後処理装置。
【発明の効果】
【0008】
請求項1〜5の発明により、断裁処理される用紙束が円滑に断裁部に導入されるので、断裁不良や搬送不良がきわめて少なく、安定性、信頼性の高い用紙断裁装置が実現される。
【0009】
請求項2又は請求項4の発明により、断裁不良や搬送不良がより一層良好に防止される。
【0010】
請求項5の発明により、変位する刃受け部材に用紙案内面が形成されるので、変位する刃受け部材の位置により、用紙の搬送が不安定になる等の不都合がなく、刃受け部材を設定した初期から、刃受け部材の交換時期まで、断裁性能、搬送性能において安定した用紙断裁装置が実現される。
【0011】
請求項6の発明により、小型で処理枚数に左右されない高い断裁性能を持った用紙後処理装置が実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明の実施の形態を図を参照して説明する。
【0013】
図1は本発明の用紙断裁装置及び用紙後処理装置を有する画像形成システムの全体構成図である。
【0014】
Aは画像形成装置、DFは自動原稿送り装置、LTは大容量給紙装置、Bは後処理装置である。
【0015】
画像形成装置Aは、画像読み取り部(画像入力装置)1、画像処理部2、画像書き込み部3、画像形成部4、給紙カセット5A、5B、5C、手差し給紙トレイ5D、第1給紙部6A、6B、6C、6D、6E、レジストローラ6F、定着装置7、排紙部8、自動両面コピー給紙部(ADU)8B等を備えている。
【0016】
画像形成装置Aの上部には、自動原稿送り装置DFが搭載され、図の左側面には、後処理装置Bが一体的に連結されている。
【0017】
自動原稿送り装置DFの原稿台の上に載置された原稿dは矢印方向に搬送され画像読み取り部1の光学系により原稿の片面又は両面の画像が、CCDからなるイメージセンサ1Aに読み込まれる。
【0018】
イメージセンサ1Aにより光電変換されたアナログ信号は、画像処理部2において、アナログ処理、A/D変換、シェーディング補正、画像圧縮処理等が行われた後、画像書き込み部3に画像情報信号として送られる。
【0019】
画像形成部4は、電子写真プロセスを用いて画像形成する部位であり、感光体ドラム4Aに対して帯電、露光、現像、転写、分離、クリーニング等の処理が行われる。前記露光処理の工程では前記画像情報信号に基づく半導体レーザ(不図示)の出力光が感光体ドラム4Aに照射され静電潜像が形成される。更に、前記現像処理の工程では、前記静電潜像に対応したトナー像が形成される。
【0020】
給紙カセット5A〜5C、手差し給紙トレイ5D、大容量給紙装置LT、及び、それらに対応した第1給紙部6A〜6Eのうちいずれかが選択されると、用紙Sが、レジストローラ6Fに向けて搬送される。用紙Sはレジストローラ6Fにより感光体ドラム4Aのトナー像と同期が取られて、転写手段4Bに向けて搬送されトナー像が転写される。
【0021】
トナー像を担持した用紙Sは定着装置7により定着され、排紙部8から後処理装置Bに送り込まれる。
【0022】
両面画像形成の場合には、片面に画像形成された用紙Sは搬送路切り換え板8Aにより自動両面コピー給紙部8Bに送り込まれ、画像形成部4において反対側の面に画像形成が行われ、定着装置7により定着された後、排出部8から後処理装置Bに送り込まれる。
【0023】
次に、後処理装置Bの概要について、図2、図3、図4、及び、図5を用いて説明する。
【0024】
図2は本発明の実施の形態に係る後処理装置の正面図、図3は右側面図、図4は左側面図、図5は後処理装置における用紙の流れの一部を示す模式図である。
【0025】
各図において、矢印X、Y、Zは方向を表す直交座標軸であり、各座標の正方向をX方向、Y方向、Z方向と称し、負方向は逆X方向、逆Y方向、逆Z方向と称するものとする。
【0026】
なお、紙面に直交し、表面方向に矢印が向いている場合を◎、紙面裏面方向に矢印が向いている場合を○で表す。
【0027】
画像形成装置で画像形成された用紙Sは、後処理装置Bの入り口部で搬送路切り換え手段により、何も処理せずにそのまま排出する搬送路、或いは、中折り処理、及び、中綴じ処理を行う搬送路のどちらかに搬送される。
【0028】
中折り処理、及び、中綴じ処理を行う搬送路に送り込まれた用紙Sは複数枚重ねられた状態で中折りされ、逆V字形状をした積載手段に積載されて、積載枚数が所定枚数に達した後中綴じ処理が行われた後、用紙取り出し手段により取り出されて、本発明に係わる断裁装置により小口断裁された後排出される。
【0029】
先ず、図2を用いて、搬送路R1に入った用紙Sの搬送経路について説明する。
【0030】
搬送路切り換え手段G1により搬送路R1に送り込まれた用紙Sは、搬送ローラ203〜207に挟持されて搬送され、搬送路切り換え手段G2の上方の搬送路R3又は下方の搬送路R4のいずれかに搬送される。
【0031】
上方の搬送路R3に搬送された用紙Sは、排紙ローラ208によって、後処理装置Bの上部に配置されたサブ排紙トレイ(トップトレイ)209に排紙される。
【0032】
下方の搬送路R4に搬送された用紙Sは、搬送ローラ210〜213に挟持されて搬送され、排紙ローラ214によって他の後処理装置等に送り込まれる。
【0033】
次に、図2、図5を用いて、搬送路R2に入った用紙Sの搬送について説明する。
【0034】
搬送路切り換え手段G1により搬送路R2に入った用紙Sは、逆Y方向に搬送され、所定位置(図に示す位置P1)に一時停止して収納される。
【0035】
位置P1において、後続の少数枚の用紙Sが重ね合わされて収納される。
【0036】
上記の収納枚数は本実施の形態では3枚であるが、収納枚数はこれに限定されることはなく適宜設定することが出来る。
【0037】
位置P1に収容された3枚の用紙Sは重ね合わされた状態で、搬送ローラ215、216、案内板(不図示)等により、Z方向に搬送された後、X方向に偏向され、位置P2に一時停止する(搬送路R5)。
【0038】
なお、以下の説明において、特に断りのない限り、複数枚の用紙が重なったものを用紙束SSという。
【0039】
位置P2に一時停止した用紙束SSは所定のタイミングで搬送ローラ217、218、案内板等によりY方向に搬送された後逆Z方向に偏向される(搬送路R6)。
【0040】
逆Z方向に偏向された用紙束SSは搬送整合ベルト220により中折り手段230に送られる。
【0041】
ここで、中折り手段230について図3を用いて説明する。
【0042】
本実施の形態においては、用紙束SSの長辺方向が搬送整合ベルト220の搬送方向と一致するように構成されている。
【0043】
中折り手段230は、整合部材232、中折りローラ234、235、中折りナイフ236等から構成されている。
【0044】
整合板232は中折りローラ234と235との当接点から用紙束SSの長辺方向の長さの半分の長さの位置に配設されている。
【0045】
逆Z方向に搬送された用紙束SSは、搬送整合ベルト220に設けられた整合爪221により押されて後述する中折り用紙搬送手段250を構成するガイド板251上を搬送され、用紙束SSの先端部が整合部材232に突き当たる位置で停止する。
【0046】
続いて、搬送整合ベルト220の正逆回転により整合爪221が後退前進動作を行い、用紙束SS(3枚)の後端が押圧され搬送方向の幅が揃えられる。
【0047】
上述した揃え動作完了後、中折りローラ234、235の当接点下方に設けられた中折りナイフ236がガイド板251上の用紙束SSの長辺方向中央部を押し上げ、図に示す矢印方向に回転する中折りローラ234、235に用紙束SSを食い込ませる。
【0048】
食い込んだ用紙束SSは中折りローラ234、235により長辺方向中央部に折り目が付けられた後、中折りローラ234、235の逆方向の回転によりガイド板251上に戻され、後述する中折り用紙搬送手段250によりX方向に搬送される。
【0049】
用紙サイズが変更された場合には、不図示の制御手段により整合板232の位置、搬送整合ベルト220の動作等が用紙サイズに応じて変更されるように構成されている。
【0050】
なお、ローラ237、折りナイフ238等を用いて用紙束SSに対してZ折り(3つ折り)を行うことも可能である。
【0051】
図2、図5に戻って、長辺方向中央部に折り目が付けられた用紙束SSは中折り用紙搬送手段250の搬送ベルトに設けられた搬送爪252、及び、図示しない案内板等によりX方向に搬送され、積載手段310に積載される(搬送路R7)。
【0052】
次に、積載手段310、中綴じ手段を構成する打針手段350及び受針手段370について図4を用いて説明する。
【0053】
積載手段310は、逆V字形状をした折り目支持部材311と、同じく逆V字形状をした辺縁支持部材312とからなり、折り目支持部材311は、折り目が付けられた用紙束SSの谷側面(下面)の折り目a近傍を支持し、辺縁支持部材312は、折り目が付けられた用紙束SSの谷側面の辺縁部を支持する。
【0054】
ここで、折り目が付けられた用紙束SSの谷側面とは、用紙に折り目に沿って折り曲げた時に、内側で互いに対向する用紙面のことをいい、外側の用紙面を山側面という。
【0055】
積載手段310の上方には、上下方向に移動可能な押さえ手段330、及び、固定の打針手段350が配置されている。
【0056】
積載された用紙束SSの折り目aの下方には、受針手段370が上下方向に移動可能に配設されている。
【0057】
用紙綴じ手段である打針手段350及び受針手段370は、用紙折り目方向にみて中央振り分け2箇所に配置されている。
【0058】
上記構成により、積載手段310に積載された用紙束SSが所定枚数に達すると、押さえ手段330が下降し用紙束SSを押さえた状態で、受針手段370が上昇し、打針手段350によりステープル針が用紙束SSの折り目部の2箇所に打針される。
【0059】
次に、図2、図4を用いて、中綴じ処理された用紙束SSの取り出しについて説明する。
【0060】
用紙束SSを取り出す取り出し手段420は、支持手段、駆動手段(ともに図示せず)等で構成されている。
【0061】
支持手段421は、積載手段310に積載された用紙束SSの両端部に配設された支持部材422、423を有しており、当該支持部材422、423は、用紙束SSの折り目部を支持するために一端が直角に曲げられた折り曲げ部422A、423Aを有する棒状部材で形成されている。
【0062】
支持部材422、423の他端は支持軸424の周りに回動自在に支持されている。
【0063】
支持部材422、423は、図2の左右方向にみて、前記駆動手段により、積載された用紙束SSを支持するために用紙束SSの折り目部に挿脱可能に構成されている。
【0064】
また、支持部材422、423は、図4に示すように、前記駆動手段により、積載手段310に積載された用紙束SSを取り出す取り出し位置と用紙束SSを受け取りコンベア500に移載する受け渡し位置との間を、支持軸424を中心にして揺動する。
【0065】
斯かる構成により、積載手段310に積載された用紙束SSが所定枚数に達し、中綴じ手段により中綴じ処理が完了すると、支持部材422、423は積載された用紙の折り目部近傍に挿入され用紙束SSの折り目部を支持した後、前記取り出し位置から前記受け渡し位置に回動し、受け取りコンベア500上に載置し、載置された用紙束SSをグリップ501で挟持する。
【0066】
グリップ501で挟持された用紙束SSは受け取りコンベア500の回動に連動して斜め下方に搬送され、グリップ501から開放された後、断裁コンベア600に受け渡される。
【0067】
断裁コンベア600は用紙束SSが受け渡された後には水平状態になり、続いて、用紙束SSは後述する折り目押さえ部材により折り目部を押さえられた状態で断裁手段700側に搬送され所定位置に停止し、不揃いになっている小口(折り目の反対側の自由端部)が本発明に係わる断裁装置700により断裁され小口が揃えられる。
【0068】
断裁処理が終了すると用紙束SSは断裁コンベア600により逆方向に搬送され、断裁コンベア600の先端部から矢示方向に落下し回収コンベア900により回収され、後処理装置Bの前面外側に配置された排紙トレイ950に排出される。
【0069】
次に、図6を用いて本発明に係わる断裁装置700への用紙束の導入について説明する。
【0070】
先ず、図6を用いて、中折り、中綴じされた用紙束SSを受け取りコンベア500から断裁コンベア600に受け渡し、受け渡し後断裁装置700にて小口断裁をするために所定位置に停止させるための機構について説明する。
【0071】
図6は、断裁コンベア600及び用紙束SSの搬送機構の模式図である。
【0072】
図6(a)に示すように、受け取りコンベア500の用紙搬送方向下流側終点付近でグリップ501が開き、挟持していた用紙束SSを解放する。
【0073】
解放された用紙束SSは、傾斜して停止している断裁コンベアー600の搬送ベルト601の上側のベルトに近接し、平行に設けられた用紙載置台602上の斜面を滑り、搬送ベルト601に固定されたストッパ爪603に当接し停止する。
【0074】
用紙束SSの停止後、整合部材604が図の実線で示す位置から点線で示す位置に起立する。
【0075】
整合部材604の起立後、搬送ベルト601が図の矢印Fで示す方向に移動し、ストッパ爪603により用紙束SSの折り目部を整合部材604に当接させて停止する。
【0076】
このように、用紙束SSを整合部材604に当接させることにより用紙の搬送方向の曲がりが修正される。
【0077】
ストッパ爪603の停止後、折り目押さえ部材605が、図の矢印Gで示す方向に下降して、用紙載置台602とほぼ同じ平面を有するように設けられた受け板606との間に用紙束SSを挟持する。
【0078】
用紙束SSの挟持が完了すると、断裁コンベア600が回転しストッパ爪603は、図の点線で示す位置に退避する。
【0079】
ストッパ爪603の退避が完了すると、整合部材604、折り目押さえ部材605及び受け板606は用紙束SSを挟持したまま、断裁コンベア600と一体的に、断裁コンベア600のプーリ607の中心を支点として、図6(b)に示す水平位置に揺動し停止する。
【0080】
断裁コンベア600の揺動が完了すると、用紙束SSは折り目押さえ部材605及び受け板606により挟持されたまま、用紙載置台602上を滑りながら、図の矢印H方向に移動し、各用紙のサイズによって決められた所定の位置に停止する。
【0081】
所定位置に停止した用紙束SSは、用紙断裁装置700によって小口を断裁される。
【0082】
次に用紙断裁装置について、図7〜11を用いて説明する。図7は用紙断裁装置の正面図、図8は用紙押さえ部材を上から見た斜視図、図9は用紙断裁部の断面図である。
【0083】
用紙断裁装置700の上部には、用紙断裁装置の枠体700Aに支持された軸708が設けられる。軸708には、互いに反対方向の雄ネジ部708A、708Bが設けられ、雄ネジ部708Aには雌ネジユニット706が、雄ネジ部708Bには雌ネジユニット707がそれぞれ螺合する。
【0084】
上下動可能な用紙押さえ部材701と雌ネジユニット706、707とを連結棒704、705が連結する。すなわち、連結棒704の上端は雌ネジユニット706に、下端は用紙押さえ部材701の左端部に回転自在にそれぞれ支持される。同様に、連結棒705の上端は雌ネジユニット707に、下端は用紙押さえ部材701の右端部にそれぞれ回転自在に支持される。軸708はモータ709と歯車G1を介して連結され、モータ709の回転により、雌ネジユニット706、707が左右に移動し、連結棒704、705の傾斜が変化して、用紙押さえ部材701は上下に平行移動する。
【0085】
このように、モータ709、軸708、雌ネジユニット706、707及び連結棒704、705は用紙押さえ部材701を平行に上下動させる押さえ部材駆動機構を構成する。
【0086】
用紙束SSは固定の支持台702と刃受け部材701Aとの間に保持される。用紙押さえ部材701は、雄ネジ部708A,708Bを含む大きな減速比の駆動機構により駆動されるので、高い圧力で用紙束SSを押さえ保持する。
【0087】
上端縁に刃先が形成された断裁刃703には、コロ715、716が固定され、コロ715、716は右下がりに傾斜したガイド部材717、718にそれぞれガイドされる。ガイド部材717、718は図示しないが、枠体700Aに固定される。
【0088】
刃駆動部材725は雄ネジ部726、727により駆動されて左右に平行移動する。雄ネジ部726、727は歯車G2〜G5を介してモータ728により駆動される。一方刃駆動部材725には、垂直な長孔725Aが設けられ、長孔725Aには、断裁刃703の基部703Aに固定された2本のピン719が嵌入する。
【0089】
モータ728、歯車G2〜G5、雄ネジ部726、727、刃駆動部材725は断裁刃703の刃駆動機構を構成し、モータ728の回転により、断裁刃703は左右に移動する。断裁刃703はガイド部材717、718のガイドにより、水平成分と上下成分の合成した斜め方向すなわち、矢印Jで示す運動をする。このように、断裁刃703はモータ728の駆動により、矢印Jで示すように斜めに移動する。
【0090】
図8に示すように、用紙押さえ部材701の下端部は刃受け部材701Aで構成されており、刃受け部材701Aは用紙押さえ部材701にその端部に設けられたレール(後に説明)により保持されており、矢印Kで示すように、断裁刃703の長手方向、即ち、断裁刃703の刃面に直交する方向にスライド可能である。
【0091】
刃受け部材701Aの両端部上面には、ラック722、723が形成され、これらは、用紙押さえ部材701に設けられた開口701D、701Eにより上方に露出している。
【0092】
ラック722,723にはピニオンG7、G8がそれぞれ係合し、ピニオンG7、G8はそれぞれ軸730の両端部に固定された歯車G5、G6に係合する。軸730は一方向クラッチG9、歯車G4を介して、ソレノイドSLに連結される。すなわち、ソレノイドSLのプランジャ731に固定されたラック732が歯車G4に噛み合い、軸730は歯車G4の一方向の回転により駆動される。
【0093】
一方向クラッチG9の作用によって、ソレノイドSLのオンによるプランジ731の上昇運動のみが、歯車G4に伝達され、ソレノイドSLがオフして、プランジャ731が降下する運動は歯車G4に伝達されない。
【0094】
ソレノイドSL、プランジャ731、一方向クラッチG9、歯車G4〜G8、ラック722、723は刃受け部材701Aの受け部材駆動機構を構成し、ソレノイドSLの作動により、刃受け部材701Aは矢印K方向に歩進する。
【0095】
次に、断裁装置700の作動を説明する。
【0096】
待機状態においては、雌ネジユニット706は左端に、雌ネジユニット707が右端に位置して、用紙押さえ部材701は上限位置にある。
【0097】
用紙束SSが断裁装置700に導入されると、モータ709が起動して、雌ネジユニット706、707を駆動し、用紙押さえ部材701が下降する。用紙押さえ部材が用紙束SSを押さえる位置まで下降すると、駆動抵抗が急激に増加して、モータ709に過電流が流れる。このモータ過電流を検知した信号によりモータ709が停止する。
【0098】
用紙押さえ部材701は、後に説明する断裁時に、多数枚重なった用紙に対して断裁刃703により横方向からの力が加わったときにもずれが生じないように大きな圧力で用紙束SSを押さえる。
【0099】
用紙束SSの押さえが完了した段階で、モータ728が起動して、断裁刃703を矢印Jの左上方に移動させる。断裁刃703のこの移動により、用紙束SSが断裁される。断裁刃703の断裁作用は、刃のスライドによる断裁なので、比較的小さな駆動力による断裁が可能であり、しかも、断裁する用紙の枚数が多くなっても、断裁刃のストロークが変わるのみで、駆動力は変わらない。
【0100】
積載用紙の全てが断裁されると、断裁刃703の刃先が刃受け部材701Aに接触して、断裁刃703の駆動抵抗が増大する。この駆動抵抗の増大、すなわち、モータ709の負荷の増大によるモータ過電流を検知した信号により、モータ709の駆動を停止する。このようにして、用紙束SSを構成する用紙の全てが断裁される。
【0101】
小口断裁処理が完了すると、下刃駆動モータ728が逆回転し、下刃703は図7の右斜め下方の所定位置に下降する。
【0102】
下刃703の下降が完了すると、用紙押さえ部材701が初期位置まで上昇する。
【0103】
用紙押さえ部材701の上昇完了後、用紙束SSの折り目部近傍を挟持していた折り目押さえ部材605及び受け板606が図6(b)に示す位置に戻ると、折り目押さえ部材605が上昇、整合部材604が用紙搬送面より下方に退避し、用紙束SSの挟持が解除される。
【0104】
続いて、断裁コンベア600が回転し、ストッパ爪603により、小口断裁された用紙束SSは、図4に示すように、断裁コンベア600の先端部から矢示方向に落下し回動する回収コンベア900により搬送され、後処理装置Bの前面外側に配置された排紙トレイ950に排出される。
【0105】
以上述べた一連の動作により、1用紙束SSの小口断裁工程が完了する。
【0106】
刃受け部材701Aはポリプロピレン等の樹脂からなるが、断裁動作の繰り返しにより、刃受け部材701Aが断裁刃703により、僅かづつではあるが、切除される結果、図9に示すように、刃受け部材701Aに刻み溝Tが形成される。この刻み溝Tの深さが大きくなると、用紙の切り残し、断裁された小口の端面が平坦でなくなる等の断裁不良が発生する場合がある。
【0107】
前記に説明したように、刃受け部材701Aを断裁刃703の長手方向に交叉する方向Kに変位させて、刃受け部材701Aの未使用部分を断裁刃703の刃先を受ける位置に設定している。すなわち、ソレノイドSLを作動させることにより、前記に説明した受け部材駆動機構が作動して、刃受け部材701AをK方向に所定長歩進させる。
【0108】
これにより、図9に示すように複数の刻み溝Tが形成されはするが、許容限度内の深さに制限することができ、刻み溝による断裁不良が発生することはない。
【0109】
図8における制御手段CRは断裁動作の回数をカウントし、カウント値が所定値、例えば、700回に達したときに、ソレノイドSLを作動させて、刃受け部材701Aを変位させる。
【0110】
図10は用紙押さえ部材701の両端部を示す。
【0111】
用紙押さえ部材701の両端部には、Z型の支持板701B、701Cがネジで固定される。支持板701B、701Cの下方には、刃受け部材701Aの両端を保持する保持部材800、801が設けられる。
【0112】
保持部材800は、保持ブロック800A、レール形成部材800Bからなり、両者はネジ800Cにより相互に固定される。レール形成部材800Bは刃受け部材701Aを支持し、刃受け部材701Aの図10における紙面に直角な方向の移動を案内するレールを形成する。
【0113】
保持ブロック800Aには穴が形成され、該穴には、ピン802が嵌入する。ピン802は、その上部が支持板701Bに形成された穴に嵌入し、下部が断面台形で示すように大径部802Bに形成され、保持ブロック800Aの穴の台形形状部に係合する。従って、ピン802は支持板701B及び保持ブロック800Aに対して、穴にガイドされて上下に移動可能であるが、上方に抜けないように構成されている。ピン802にはストッパ802Aが形成され、ストッパ802Aと用紙押さえ部材701との間には、圧縮型のコイルバネ804が介在する。コイルバネ804Aの付勢力により、保持部材800は上方に押し上げられて、図10(a)に示す状態、すなわち、刃受け部材701Aが用紙押さえ部材701に密着し両者は結合される。
【0114】
保持ブロック801Aには穴が形成され、該穴には、ピン803が嵌入する。ピン803は、その上部が支持板701Cに形成された穴に嵌入し、下部が断面台形で示すように大径部803Bに形成され、保持ブロック801Aの穴の台形形状部に係合する。従って、ピン803は支持板701C及び保持ブロック801Aに対して、穴にガイドされて上下に移動可能であるが、上方に抜けないように構成されている。ピン803にはストッパ803Aが形成され、ストッパ803Aと用紙押さえ部材701との間には、圧縮型のコイルバネ805が介在する。コイルバネ805Aの付勢力により、保持部材801は上方に押し上げられて、図10(a)に示す状態、すなわち、刃受け部材701Aが用紙押さえ部材701に密着し両者は結合される。
【0115】
刃受け部材701Aと用紙押さえ部材701とは、前記に説明したようにバネ804、805の付勢力により相互に密着結合し、一体化される。
【0116】
図11は刃受け部材701Aの下面図である。
【0117】
図11に示すように、レール形成部材800B、801Bはそれぞれ3本のネジ800C、801Cにより、保持ブロック800A、801Aに固定される。
【0118】
保持ブロック800A、801Aには、長穴800D、801Dが形成され、長穴800Dには2本のピン802が、長穴801Dには2本のピン803がそれぞれ嵌入する。
【0119】
図10(a)の状態で用紙束を断裁する断裁工程が実行される。所定回数(たとえば、700回)の断裁工程が実行された段階で、前記に説明したモータ709を駆動源とする押さえ部材駆動機構により用紙押さえ部材701が上昇する。用紙押さえ部材701が上限位置まで上昇した状態を図10(b)に示す。
【0120】
図10(b)の状態では、断裁装置の枠に設けられた解除手段としての突起806にピン802の上端が突き当たり、解除手段としての突起807にピン803の上端が突き当たる。
【0121】
これによって、ピン802、803がバネ804、805の付勢力に抗して、用紙押さえ部材701に対して相対的に下降する。その結果、刃受け部材701Aが用紙押さえ部材701から離れる。従って、刃受け部材701Aは用紙押さえ部材701に対して移動可能となり、この段階で前記に説明した刃受け部材701Aを移動させる刃受け部材駆動機構が作動して、刃受け部材701Aを図10の紙面に直角な方向に移動させて、刃受け部材701Aの未使用部が刃を受ける位置に設定される。この刃受け部材の更新においては、刃受け部材701Aは、ピン802と長穴800Dとのガイド及びピン803と長穴801Dとのガイドにより図8,9,11における方向Kに移動する。
【0122】
図10、11を用いて説明したように、ピン802、803、バネ804、805は、刃受け部材701Aを用紙押さえ部材701に解除可能に結合する結合手段を構成し、該結合手段により、用紙断裁工程においては、刃受け部材701Aが用紙押さえ部材701に結合されて両者が一体化されるとともに、用紙押さえ部材701が退避した状態では、前記結合が解除されて、刃受け部材701Aの未使用部が刃受け位置に設定される。
【0123】
また、前記結合を解除した状態において、刃受け部材701Aを新しい物に交換することもできる。
【0124】
小口断裁処理される用紙束SSは図7における紙面奥側から手前側に向けて搬送され、断裁装置700に導入されるが、用紙束SSの導入を案内する案内面が刃受け部材701Aに形成される。即ち、図9に示すように、刃受け部材701Aの用紙進入側端部には、斜面からなる案内面701ASが形成される。
【0125】
断裁位置において用紙束SSを支持する支持台702は枠体700Aに固定されるが、支持台702の用紙進入側端部にも斜面からなる案内面702Sが形成されるとともに、枠体700Aの用紙進入側端部にも斜面からなる案内面700ASが形成される。
【0126】
これらの案内面701AS、700AS、702Sにより、用紙SSが図9における矢印Dのように進行し、断裁装置700に円滑に導入され、紙曲がり、不規則な断裁面の形成、用紙の引っかかり、切り残し等が良好に防止される。
【0127】
前記に説明したように、刃受け部材701Aは、断裁作業の進行とともに変位するが、断裁位置に用紙を案内する案内面を固定部材に設けた場合、刃受け部材701Aの変位に伴って、固定の案内部材と刃受け部材701Aとの間の間隙が変化して、用紙の案内が不安定になるが、刃受け部材701Aに用紙の案内面を形成したので、刃受け部材701Aの各位置で用紙の案内が円滑に行われる。
【0128】
図12は用紙断裁部の他の例を示す。
【0129】
本例では、刃受け部材に形成された斜面701AS及び枠体700Aの斜面700ASに弾性案内片701AF、700AFが固定される。
【0130】
弾性案内片701AF、700AFはPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムからなる。
【0131】
弾性案内片701AF、700AFを用紙導入部に設けることにより、用紙束SSがより安定して用紙断裁部に導入される。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】本発明の実施の形態に係る用紙後処理装置を有する画像形成システムの全体構成図。
【図2】本発明の実施の形態に係る後処理装置の概略正面図。
【図3】図2の後処理装置の右側面図。
【図4】図2の後処理装置の左側面図。
【図5】後処理装置における用紙の流れの一部を示す模式図。
【図6】断裁コンベア600及び用紙束SSの搬送機構の模式図。
【図7】本発明の実施の形態に係る用紙断裁装置700の正面図。
【図8】用紙押さえ部材701の斜視図である。
【図9】用紙断裁部の断面図である。
【図10】用紙押さえ部材701の両端部を示す図である。
【図11】刃受け部材701Aの下面図である。
【図12】用紙断裁装置の他の例における用紙断裁部の断面図である。
【符号の説明】
【0133】
A 画像形成装置
B 後処理装置
700 用紙断裁装置
700AF、701AF 弾性案内片
700AS、701AS 案内面
701 用紙押さえ部材
701A 刃受け部材
702 支持台
703 断裁刃
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数枚の用紙を断裁する用紙断裁装置に関し、特に、複写機、プリンタ、ファクシミリ及びこれらの機能の2以上を合わせ持つ複合機等の画像形成装置の付属装置として用いられる用紙後処理装置及び該用紙後処理装置に組み込むことができる用紙断裁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置に装着して用いられる用紙後処理装置として、複数枚の用紙を束ねて冊子を作成する機能を有するものが開発されている。このような用紙後処理装置の多くでは、用紙束をその中央部で折り畳んだ後に、中央部を綴じ、綴じ部と対向する辺、すなわち、小口を用紙断裁装置により断裁して小口を揃えることにより、冊子が形成される。
【0003】
このような用紙後処理装置に組み込まれる用紙断裁装置は、コピーセンターやオフィスに設置される画像形成システムの一部を構成するものであることから、小型であることが必要であるとともに、小口をきれいに揃える機能が安定して維持されることが必要である。小口の断裁面に凹凸等の不揃いがあると、冊子の見開きが円滑でない等、冊子の品位が低下するという問題が生ずる。
【0004】
同一の冊子を大量に生産する印刷製本工程に使用される用紙断裁装置は、大電力で駆動される大規模装置であり、高い断裁性能があれば十分であるが、画像形成システムの一部として用いられる用紙断裁装置では、前記のように、小電力で作動可能であり、小型であることが断裁性能に対する条件に加わるために、大規模装置に用いられる用紙断裁装置にはない工夫必要になる。
【0005】
特許文献1では、事務機に使用可能な用紙断裁装置として、断裁刃を用紙束に紙面に対して斜め方向から押し当てて断裁する用紙断裁装置が開示されている。
【特許文献1】特開2003−136471号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、特許文献1に開示されているような用紙断裁装置において、断裁装置への用紙束の導入が安定して行われ、用紙導入時における用紙束の搬送不良により生ずる断裁不良や、用紙の曲がり、紙詰まり等の搬送不良が少なく、高い断裁性能が安定して維持される用紙断裁装置及びかかる断裁装置を有する用紙後処理装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の前記目的は、下記の発明のいずれかにより達成される。
(請求項1)
用紙束に対して、その紙面に直角な方向の移動成分と平行な方向の移動成分が合成された斜め方向の移動により用紙を断裁する断裁刃、
該断裁刃を受ける刃受け部材、
用紙を断裁位置に支持する支持台及び、
前記刃受け部材を介して前記支持台との間に用紙を押さえる用紙押さえ部材
を有する用紙断裁装置であって、
前記刃受け部材の用紙進入側端部に、斜面からなり、用紙の進入を案内する案内面を設けたことを特徴とする用紙断裁装置。
(請求項2)
前記斜面に弾性案内片を固定したことを特徴とする請求項1に記載の用紙断裁装置。
(請求項3)
前記支持台の用紙進入側端部に、用紙の進入を案内する案内面を設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の用紙断裁装置。
(請求項4)
前記支持台の前記案内面に弾性案内片を固定したことを特徴とする請求項3に記載の用紙断裁装置。
(請求項5)
前記刃受け部材をその未使用部が用紙押さえ位置に設定されるように、駆動する受け部材駆動機構を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の用紙断裁装置。(請求項6)
請求項1〜5のいずれか1項に記載の用紙断裁装置を有することを特徴とする用紙後処理装置。
【発明の効果】
【0008】
請求項1〜5の発明により、断裁処理される用紙束が円滑に断裁部に導入されるので、断裁不良や搬送不良がきわめて少なく、安定性、信頼性の高い用紙断裁装置が実現される。
【0009】
請求項2又は請求項4の発明により、断裁不良や搬送不良がより一層良好に防止される。
【0010】
請求項5の発明により、変位する刃受け部材に用紙案内面が形成されるので、変位する刃受け部材の位置により、用紙の搬送が不安定になる等の不都合がなく、刃受け部材を設定した初期から、刃受け部材の交換時期まで、断裁性能、搬送性能において安定した用紙断裁装置が実現される。
【0011】
請求項6の発明により、小型で処理枚数に左右されない高い断裁性能を持った用紙後処理装置が実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明の実施の形態を図を参照して説明する。
【0013】
図1は本発明の用紙断裁装置及び用紙後処理装置を有する画像形成システムの全体構成図である。
【0014】
Aは画像形成装置、DFは自動原稿送り装置、LTは大容量給紙装置、Bは後処理装置である。
【0015】
画像形成装置Aは、画像読み取り部(画像入力装置)1、画像処理部2、画像書き込み部3、画像形成部4、給紙カセット5A、5B、5C、手差し給紙トレイ5D、第1給紙部6A、6B、6C、6D、6E、レジストローラ6F、定着装置7、排紙部8、自動両面コピー給紙部(ADU)8B等を備えている。
【0016】
画像形成装置Aの上部には、自動原稿送り装置DFが搭載され、図の左側面には、後処理装置Bが一体的に連結されている。
【0017】
自動原稿送り装置DFの原稿台の上に載置された原稿dは矢印方向に搬送され画像読み取り部1の光学系により原稿の片面又は両面の画像が、CCDからなるイメージセンサ1Aに読み込まれる。
【0018】
イメージセンサ1Aにより光電変換されたアナログ信号は、画像処理部2において、アナログ処理、A/D変換、シェーディング補正、画像圧縮処理等が行われた後、画像書き込み部3に画像情報信号として送られる。
【0019】
画像形成部4は、電子写真プロセスを用いて画像形成する部位であり、感光体ドラム4Aに対して帯電、露光、現像、転写、分離、クリーニング等の処理が行われる。前記露光処理の工程では前記画像情報信号に基づく半導体レーザ(不図示)の出力光が感光体ドラム4Aに照射され静電潜像が形成される。更に、前記現像処理の工程では、前記静電潜像に対応したトナー像が形成される。
【0020】
給紙カセット5A〜5C、手差し給紙トレイ5D、大容量給紙装置LT、及び、それらに対応した第1給紙部6A〜6Eのうちいずれかが選択されると、用紙Sが、レジストローラ6Fに向けて搬送される。用紙Sはレジストローラ6Fにより感光体ドラム4Aのトナー像と同期が取られて、転写手段4Bに向けて搬送されトナー像が転写される。
【0021】
トナー像を担持した用紙Sは定着装置7により定着され、排紙部8から後処理装置Bに送り込まれる。
【0022】
両面画像形成の場合には、片面に画像形成された用紙Sは搬送路切り換え板8Aにより自動両面コピー給紙部8Bに送り込まれ、画像形成部4において反対側の面に画像形成が行われ、定着装置7により定着された後、排出部8から後処理装置Bに送り込まれる。
【0023】
次に、後処理装置Bの概要について、図2、図3、図4、及び、図5を用いて説明する。
【0024】
図2は本発明の実施の形態に係る後処理装置の正面図、図3は右側面図、図4は左側面図、図5は後処理装置における用紙の流れの一部を示す模式図である。
【0025】
各図において、矢印X、Y、Zは方向を表す直交座標軸であり、各座標の正方向をX方向、Y方向、Z方向と称し、負方向は逆X方向、逆Y方向、逆Z方向と称するものとする。
【0026】
なお、紙面に直交し、表面方向に矢印が向いている場合を◎、紙面裏面方向に矢印が向いている場合を○で表す。
【0027】
画像形成装置で画像形成された用紙Sは、後処理装置Bの入り口部で搬送路切り換え手段により、何も処理せずにそのまま排出する搬送路、或いは、中折り処理、及び、中綴じ処理を行う搬送路のどちらかに搬送される。
【0028】
中折り処理、及び、中綴じ処理を行う搬送路に送り込まれた用紙Sは複数枚重ねられた状態で中折りされ、逆V字形状をした積載手段に積載されて、積載枚数が所定枚数に達した後中綴じ処理が行われた後、用紙取り出し手段により取り出されて、本発明に係わる断裁装置により小口断裁された後排出される。
【0029】
先ず、図2を用いて、搬送路R1に入った用紙Sの搬送経路について説明する。
【0030】
搬送路切り換え手段G1により搬送路R1に送り込まれた用紙Sは、搬送ローラ203〜207に挟持されて搬送され、搬送路切り換え手段G2の上方の搬送路R3又は下方の搬送路R4のいずれかに搬送される。
【0031】
上方の搬送路R3に搬送された用紙Sは、排紙ローラ208によって、後処理装置Bの上部に配置されたサブ排紙トレイ(トップトレイ)209に排紙される。
【0032】
下方の搬送路R4に搬送された用紙Sは、搬送ローラ210〜213に挟持されて搬送され、排紙ローラ214によって他の後処理装置等に送り込まれる。
【0033】
次に、図2、図5を用いて、搬送路R2に入った用紙Sの搬送について説明する。
【0034】
搬送路切り換え手段G1により搬送路R2に入った用紙Sは、逆Y方向に搬送され、所定位置(図に示す位置P1)に一時停止して収納される。
【0035】
位置P1において、後続の少数枚の用紙Sが重ね合わされて収納される。
【0036】
上記の収納枚数は本実施の形態では3枚であるが、収納枚数はこれに限定されることはなく適宜設定することが出来る。
【0037】
位置P1に収容された3枚の用紙Sは重ね合わされた状態で、搬送ローラ215、216、案内板(不図示)等により、Z方向に搬送された後、X方向に偏向され、位置P2に一時停止する(搬送路R5)。
【0038】
なお、以下の説明において、特に断りのない限り、複数枚の用紙が重なったものを用紙束SSという。
【0039】
位置P2に一時停止した用紙束SSは所定のタイミングで搬送ローラ217、218、案内板等によりY方向に搬送された後逆Z方向に偏向される(搬送路R6)。
【0040】
逆Z方向に偏向された用紙束SSは搬送整合ベルト220により中折り手段230に送られる。
【0041】
ここで、中折り手段230について図3を用いて説明する。
【0042】
本実施の形態においては、用紙束SSの長辺方向が搬送整合ベルト220の搬送方向と一致するように構成されている。
【0043】
中折り手段230は、整合部材232、中折りローラ234、235、中折りナイフ236等から構成されている。
【0044】
整合板232は中折りローラ234と235との当接点から用紙束SSの長辺方向の長さの半分の長さの位置に配設されている。
【0045】
逆Z方向に搬送された用紙束SSは、搬送整合ベルト220に設けられた整合爪221により押されて後述する中折り用紙搬送手段250を構成するガイド板251上を搬送され、用紙束SSの先端部が整合部材232に突き当たる位置で停止する。
【0046】
続いて、搬送整合ベルト220の正逆回転により整合爪221が後退前進動作を行い、用紙束SS(3枚)の後端が押圧され搬送方向の幅が揃えられる。
【0047】
上述した揃え動作完了後、中折りローラ234、235の当接点下方に設けられた中折りナイフ236がガイド板251上の用紙束SSの長辺方向中央部を押し上げ、図に示す矢印方向に回転する中折りローラ234、235に用紙束SSを食い込ませる。
【0048】
食い込んだ用紙束SSは中折りローラ234、235により長辺方向中央部に折り目が付けられた後、中折りローラ234、235の逆方向の回転によりガイド板251上に戻され、後述する中折り用紙搬送手段250によりX方向に搬送される。
【0049】
用紙サイズが変更された場合には、不図示の制御手段により整合板232の位置、搬送整合ベルト220の動作等が用紙サイズに応じて変更されるように構成されている。
【0050】
なお、ローラ237、折りナイフ238等を用いて用紙束SSに対してZ折り(3つ折り)を行うことも可能である。
【0051】
図2、図5に戻って、長辺方向中央部に折り目が付けられた用紙束SSは中折り用紙搬送手段250の搬送ベルトに設けられた搬送爪252、及び、図示しない案内板等によりX方向に搬送され、積載手段310に積載される(搬送路R7)。
【0052】
次に、積載手段310、中綴じ手段を構成する打針手段350及び受針手段370について図4を用いて説明する。
【0053】
積載手段310は、逆V字形状をした折り目支持部材311と、同じく逆V字形状をした辺縁支持部材312とからなり、折り目支持部材311は、折り目が付けられた用紙束SSの谷側面(下面)の折り目a近傍を支持し、辺縁支持部材312は、折り目が付けられた用紙束SSの谷側面の辺縁部を支持する。
【0054】
ここで、折り目が付けられた用紙束SSの谷側面とは、用紙に折り目に沿って折り曲げた時に、内側で互いに対向する用紙面のことをいい、外側の用紙面を山側面という。
【0055】
積載手段310の上方には、上下方向に移動可能な押さえ手段330、及び、固定の打針手段350が配置されている。
【0056】
積載された用紙束SSの折り目aの下方には、受針手段370が上下方向に移動可能に配設されている。
【0057】
用紙綴じ手段である打針手段350及び受針手段370は、用紙折り目方向にみて中央振り分け2箇所に配置されている。
【0058】
上記構成により、積載手段310に積載された用紙束SSが所定枚数に達すると、押さえ手段330が下降し用紙束SSを押さえた状態で、受針手段370が上昇し、打針手段350によりステープル針が用紙束SSの折り目部の2箇所に打針される。
【0059】
次に、図2、図4を用いて、中綴じ処理された用紙束SSの取り出しについて説明する。
【0060】
用紙束SSを取り出す取り出し手段420は、支持手段、駆動手段(ともに図示せず)等で構成されている。
【0061】
支持手段421は、積載手段310に積載された用紙束SSの両端部に配設された支持部材422、423を有しており、当該支持部材422、423は、用紙束SSの折り目部を支持するために一端が直角に曲げられた折り曲げ部422A、423Aを有する棒状部材で形成されている。
【0062】
支持部材422、423の他端は支持軸424の周りに回動自在に支持されている。
【0063】
支持部材422、423は、図2の左右方向にみて、前記駆動手段により、積載された用紙束SSを支持するために用紙束SSの折り目部に挿脱可能に構成されている。
【0064】
また、支持部材422、423は、図4に示すように、前記駆動手段により、積載手段310に積載された用紙束SSを取り出す取り出し位置と用紙束SSを受け取りコンベア500に移載する受け渡し位置との間を、支持軸424を中心にして揺動する。
【0065】
斯かる構成により、積載手段310に積載された用紙束SSが所定枚数に達し、中綴じ手段により中綴じ処理が完了すると、支持部材422、423は積載された用紙の折り目部近傍に挿入され用紙束SSの折り目部を支持した後、前記取り出し位置から前記受け渡し位置に回動し、受け取りコンベア500上に載置し、載置された用紙束SSをグリップ501で挟持する。
【0066】
グリップ501で挟持された用紙束SSは受け取りコンベア500の回動に連動して斜め下方に搬送され、グリップ501から開放された後、断裁コンベア600に受け渡される。
【0067】
断裁コンベア600は用紙束SSが受け渡された後には水平状態になり、続いて、用紙束SSは後述する折り目押さえ部材により折り目部を押さえられた状態で断裁手段700側に搬送され所定位置に停止し、不揃いになっている小口(折り目の反対側の自由端部)が本発明に係わる断裁装置700により断裁され小口が揃えられる。
【0068】
断裁処理が終了すると用紙束SSは断裁コンベア600により逆方向に搬送され、断裁コンベア600の先端部から矢示方向に落下し回収コンベア900により回収され、後処理装置Bの前面外側に配置された排紙トレイ950に排出される。
【0069】
次に、図6を用いて本発明に係わる断裁装置700への用紙束の導入について説明する。
【0070】
先ず、図6を用いて、中折り、中綴じされた用紙束SSを受け取りコンベア500から断裁コンベア600に受け渡し、受け渡し後断裁装置700にて小口断裁をするために所定位置に停止させるための機構について説明する。
【0071】
図6は、断裁コンベア600及び用紙束SSの搬送機構の模式図である。
【0072】
図6(a)に示すように、受け取りコンベア500の用紙搬送方向下流側終点付近でグリップ501が開き、挟持していた用紙束SSを解放する。
【0073】
解放された用紙束SSは、傾斜して停止している断裁コンベアー600の搬送ベルト601の上側のベルトに近接し、平行に設けられた用紙載置台602上の斜面を滑り、搬送ベルト601に固定されたストッパ爪603に当接し停止する。
【0074】
用紙束SSの停止後、整合部材604が図の実線で示す位置から点線で示す位置に起立する。
【0075】
整合部材604の起立後、搬送ベルト601が図の矢印Fで示す方向に移動し、ストッパ爪603により用紙束SSの折り目部を整合部材604に当接させて停止する。
【0076】
このように、用紙束SSを整合部材604に当接させることにより用紙の搬送方向の曲がりが修正される。
【0077】
ストッパ爪603の停止後、折り目押さえ部材605が、図の矢印Gで示す方向に下降して、用紙載置台602とほぼ同じ平面を有するように設けられた受け板606との間に用紙束SSを挟持する。
【0078】
用紙束SSの挟持が完了すると、断裁コンベア600が回転しストッパ爪603は、図の点線で示す位置に退避する。
【0079】
ストッパ爪603の退避が完了すると、整合部材604、折り目押さえ部材605及び受け板606は用紙束SSを挟持したまま、断裁コンベア600と一体的に、断裁コンベア600のプーリ607の中心を支点として、図6(b)に示す水平位置に揺動し停止する。
【0080】
断裁コンベア600の揺動が完了すると、用紙束SSは折り目押さえ部材605及び受け板606により挟持されたまま、用紙載置台602上を滑りながら、図の矢印H方向に移動し、各用紙のサイズによって決められた所定の位置に停止する。
【0081】
所定位置に停止した用紙束SSは、用紙断裁装置700によって小口を断裁される。
【0082】
次に用紙断裁装置について、図7〜11を用いて説明する。図7は用紙断裁装置の正面図、図8は用紙押さえ部材を上から見た斜視図、図9は用紙断裁部の断面図である。
【0083】
用紙断裁装置700の上部には、用紙断裁装置の枠体700Aに支持された軸708が設けられる。軸708には、互いに反対方向の雄ネジ部708A、708Bが設けられ、雄ネジ部708Aには雌ネジユニット706が、雄ネジ部708Bには雌ネジユニット707がそれぞれ螺合する。
【0084】
上下動可能な用紙押さえ部材701と雌ネジユニット706、707とを連結棒704、705が連結する。すなわち、連結棒704の上端は雌ネジユニット706に、下端は用紙押さえ部材701の左端部に回転自在にそれぞれ支持される。同様に、連結棒705の上端は雌ネジユニット707に、下端は用紙押さえ部材701の右端部にそれぞれ回転自在に支持される。軸708はモータ709と歯車G1を介して連結され、モータ709の回転により、雌ネジユニット706、707が左右に移動し、連結棒704、705の傾斜が変化して、用紙押さえ部材701は上下に平行移動する。
【0085】
このように、モータ709、軸708、雌ネジユニット706、707及び連結棒704、705は用紙押さえ部材701を平行に上下動させる押さえ部材駆動機構を構成する。
【0086】
用紙束SSは固定の支持台702と刃受け部材701Aとの間に保持される。用紙押さえ部材701は、雄ネジ部708A,708Bを含む大きな減速比の駆動機構により駆動されるので、高い圧力で用紙束SSを押さえ保持する。
【0087】
上端縁に刃先が形成された断裁刃703には、コロ715、716が固定され、コロ715、716は右下がりに傾斜したガイド部材717、718にそれぞれガイドされる。ガイド部材717、718は図示しないが、枠体700Aに固定される。
【0088】
刃駆動部材725は雄ネジ部726、727により駆動されて左右に平行移動する。雄ネジ部726、727は歯車G2〜G5を介してモータ728により駆動される。一方刃駆動部材725には、垂直な長孔725Aが設けられ、長孔725Aには、断裁刃703の基部703Aに固定された2本のピン719が嵌入する。
【0089】
モータ728、歯車G2〜G5、雄ネジ部726、727、刃駆動部材725は断裁刃703の刃駆動機構を構成し、モータ728の回転により、断裁刃703は左右に移動する。断裁刃703はガイド部材717、718のガイドにより、水平成分と上下成分の合成した斜め方向すなわち、矢印Jで示す運動をする。このように、断裁刃703はモータ728の駆動により、矢印Jで示すように斜めに移動する。
【0090】
図8に示すように、用紙押さえ部材701の下端部は刃受け部材701Aで構成されており、刃受け部材701Aは用紙押さえ部材701にその端部に設けられたレール(後に説明)により保持されており、矢印Kで示すように、断裁刃703の長手方向、即ち、断裁刃703の刃面に直交する方向にスライド可能である。
【0091】
刃受け部材701Aの両端部上面には、ラック722、723が形成され、これらは、用紙押さえ部材701に設けられた開口701D、701Eにより上方に露出している。
【0092】
ラック722,723にはピニオンG7、G8がそれぞれ係合し、ピニオンG7、G8はそれぞれ軸730の両端部に固定された歯車G5、G6に係合する。軸730は一方向クラッチG9、歯車G4を介して、ソレノイドSLに連結される。すなわち、ソレノイドSLのプランジャ731に固定されたラック732が歯車G4に噛み合い、軸730は歯車G4の一方向の回転により駆動される。
【0093】
一方向クラッチG9の作用によって、ソレノイドSLのオンによるプランジ731の上昇運動のみが、歯車G4に伝達され、ソレノイドSLがオフして、プランジャ731が降下する運動は歯車G4に伝達されない。
【0094】
ソレノイドSL、プランジャ731、一方向クラッチG9、歯車G4〜G8、ラック722、723は刃受け部材701Aの受け部材駆動機構を構成し、ソレノイドSLの作動により、刃受け部材701Aは矢印K方向に歩進する。
【0095】
次に、断裁装置700の作動を説明する。
【0096】
待機状態においては、雌ネジユニット706は左端に、雌ネジユニット707が右端に位置して、用紙押さえ部材701は上限位置にある。
【0097】
用紙束SSが断裁装置700に導入されると、モータ709が起動して、雌ネジユニット706、707を駆動し、用紙押さえ部材701が下降する。用紙押さえ部材が用紙束SSを押さえる位置まで下降すると、駆動抵抗が急激に増加して、モータ709に過電流が流れる。このモータ過電流を検知した信号によりモータ709が停止する。
【0098】
用紙押さえ部材701は、後に説明する断裁時に、多数枚重なった用紙に対して断裁刃703により横方向からの力が加わったときにもずれが生じないように大きな圧力で用紙束SSを押さえる。
【0099】
用紙束SSの押さえが完了した段階で、モータ728が起動して、断裁刃703を矢印Jの左上方に移動させる。断裁刃703のこの移動により、用紙束SSが断裁される。断裁刃703の断裁作用は、刃のスライドによる断裁なので、比較的小さな駆動力による断裁が可能であり、しかも、断裁する用紙の枚数が多くなっても、断裁刃のストロークが変わるのみで、駆動力は変わらない。
【0100】
積載用紙の全てが断裁されると、断裁刃703の刃先が刃受け部材701Aに接触して、断裁刃703の駆動抵抗が増大する。この駆動抵抗の増大、すなわち、モータ709の負荷の増大によるモータ過電流を検知した信号により、モータ709の駆動を停止する。このようにして、用紙束SSを構成する用紙の全てが断裁される。
【0101】
小口断裁処理が完了すると、下刃駆動モータ728が逆回転し、下刃703は図7の右斜め下方の所定位置に下降する。
【0102】
下刃703の下降が完了すると、用紙押さえ部材701が初期位置まで上昇する。
【0103】
用紙押さえ部材701の上昇完了後、用紙束SSの折り目部近傍を挟持していた折り目押さえ部材605及び受け板606が図6(b)に示す位置に戻ると、折り目押さえ部材605が上昇、整合部材604が用紙搬送面より下方に退避し、用紙束SSの挟持が解除される。
【0104】
続いて、断裁コンベア600が回転し、ストッパ爪603により、小口断裁された用紙束SSは、図4に示すように、断裁コンベア600の先端部から矢示方向に落下し回動する回収コンベア900により搬送され、後処理装置Bの前面外側に配置された排紙トレイ950に排出される。
【0105】
以上述べた一連の動作により、1用紙束SSの小口断裁工程が完了する。
【0106】
刃受け部材701Aはポリプロピレン等の樹脂からなるが、断裁動作の繰り返しにより、刃受け部材701Aが断裁刃703により、僅かづつではあるが、切除される結果、図9に示すように、刃受け部材701Aに刻み溝Tが形成される。この刻み溝Tの深さが大きくなると、用紙の切り残し、断裁された小口の端面が平坦でなくなる等の断裁不良が発生する場合がある。
【0107】
前記に説明したように、刃受け部材701Aを断裁刃703の長手方向に交叉する方向Kに変位させて、刃受け部材701Aの未使用部分を断裁刃703の刃先を受ける位置に設定している。すなわち、ソレノイドSLを作動させることにより、前記に説明した受け部材駆動機構が作動して、刃受け部材701AをK方向に所定長歩進させる。
【0108】
これにより、図9に示すように複数の刻み溝Tが形成されはするが、許容限度内の深さに制限することができ、刻み溝による断裁不良が発生することはない。
【0109】
図8における制御手段CRは断裁動作の回数をカウントし、カウント値が所定値、例えば、700回に達したときに、ソレノイドSLを作動させて、刃受け部材701Aを変位させる。
【0110】
図10は用紙押さえ部材701の両端部を示す。
【0111】
用紙押さえ部材701の両端部には、Z型の支持板701B、701Cがネジで固定される。支持板701B、701Cの下方には、刃受け部材701Aの両端を保持する保持部材800、801が設けられる。
【0112】
保持部材800は、保持ブロック800A、レール形成部材800Bからなり、両者はネジ800Cにより相互に固定される。レール形成部材800Bは刃受け部材701Aを支持し、刃受け部材701Aの図10における紙面に直角な方向の移動を案内するレールを形成する。
【0113】
保持ブロック800Aには穴が形成され、該穴には、ピン802が嵌入する。ピン802は、その上部が支持板701Bに形成された穴に嵌入し、下部が断面台形で示すように大径部802Bに形成され、保持ブロック800Aの穴の台形形状部に係合する。従って、ピン802は支持板701B及び保持ブロック800Aに対して、穴にガイドされて上下に移動可能であるが、上方に抜けないように構成されている。ピン802にはストッパ802Aが形成され、ストッパ802Aと用紙押さえ部材701との間には、圧縮型のコイルバネ804が介在する。コイルバネ804Aの付勢力により、保持部材800は上方に押し上げられて、図10(a)に示す状態、すなわち、刃受け部材701Aが用紙押さえ部材701に密着し両者は結合される。
【0114】
保持ブロック801Aには穴が形成され、該穴には、ピン803が嵌入する。ピン803は、その上部が支持板701Cに形成された穴に嵌入し、下部が断面台形で示すように大径部803Bに形成され、保持ブロック801Aの穴の台形形状部に係合する。従って、ピン803は支持板701C及び保持ブロック801Aに対して、穴にガイドされて上下に移動可能であるが、上方に抜けないように構成されている。ピン803にはストッパ803Aが形成され、ストッパ803Aと用紙押さえ部材701との間には、圧縮型のコイルバネ805が介在する。コイルバネ805Aの付勢力により、保持部材801は上方に押し上げられて、図10(a)に示す状態、すなわち、刃受け部材701Aが用紙押さえ部材701に密着し両者は結合される。
【0115】
刃受け部材701Aと用紙押さえ部材701とは、前記に説明したようにバネ804、805の付勢力により相互に密着結合し、一体化される。
【0116】
図11は刃受け部材701Aの下面図である。
【0117】
図11に示すように、レール形成部材800B、801Bはそれぞれ3本のネジ800C、801Cにより、保持ブロック800A、801Aに固定される。
【0118】
保持ブロック800A、801Aには、長穴800D、801Dが形成され、長穴800Dには2本のピン802が、長穴801Dには2本のピン803がそれぞれ嵌入する。
【0119】
図10(a)の状態で用紙束を断裁する断裁工程が実行される。所定回数(たとえば、700回)の断裁工程が実行された段階で、前記に説明したモータ709を駆動源とする押さえ部材駆動機構により用紙押さえ部材701が上昇する。用紙押さえ部材701が上限位置まで上昇した状態を図10(b)に示す。
【0120】
図10(b)の状態では、断裁装置の枠に設けられた解除手段としての突起806にピン802の上端が突き当たり、解除手段としての突起807にピン803の上端が突き当たる。
【0121】
これによって、ピン802、803がバネ804、805の付勢力に抗して、用紙押さえ部材701に対して相対的に下降する。その結果、刃受け部材701Aが用紙押さえ部材701から離れる。従って、刃受け部材701Aは用紙押さえ部材701に対して移動可能となり、この段階で前記に説明した刃受け部材701Aを移動させる刃受け部材駆動機構が作動して、刃受け部材701Aを図10の紙面に直角な方向に移動させて、刃受け部材701Aの未使用部が刃を受ける位置に設定される。この刃受け部材の更新においては、刃受け部材701Aは、ピン802と長穴800Dとのガイド及びピン803と長穴801Dとのガイドにより図8,9,11における方向Kに移動する。
【0122】
図10、11を用いて説明したように、ピン802、803、バネ804、805は、刃受け部材701Aを用紙押さえ部材701に解除可能に結合する結合手段を構成し、該結合手段により、用紙断裁工程においては、刃受け部材701Aが用紙押さえ部材701に結合されて両者が一体化されるとともに、用紙押さえ部材701が退避した状態では、前記結合が解除されて、刃受け部材701Aの未使用部が刃受け位置に設定される。
【0123】
また、前記結合を解除した状態において、刃受け部材701Aを新しい物に交換することもできる。
【0124】
小口断裁処理される用紙束SSは図7における紙面奥側から手前側に向けて搬送され、断裁装置700に導入されるが、用紙束SSの導入を案内する案内面が刃受け部材701Aに形成される。即ち、図9に示すように、刃受け部材701Aの用紙進入側端部には、斜面からなる案内面701ASが形成される。
【0125】
断裁位置において用紙束SSを支持する支持台702は枠体700Aに固定されるが、支持台702の用紙進入側端部にも斜面からなる案内面702Sが形成されるとともに、枠体700Aの用紙進入側端部にも斜面からなる案内面700ASが形成される。
【0126】
これらの案内面701AS、700AS、702Sにより、用紙SSが図9における矢印Dのように進行し、断裁装置700に円滑に導入され、紙曲がり、不規則な断裁面の形成、用紙の引っかかり、切り残し等が良好に防止される。
【0127】
前記に説明したように、刃受け部材701Aは、断裁作業の進行とともに変位するが、断裁位置に用紙を案内する案内面を固定部材に設けた場合、刃受け部材701Aの変位に伴って、固定の案内部材と刃受け部材701Aとの間の間隙が変化して、用紙の案内が不安定になるが、刃受け部材701Aに用紙の案内面を形成したので、刃受け部材701Aの各位置で用紙の案内が円滑に行われる。
【0128】
図12は用紙断裁部の他の例を示す。
【0129】
本例では、刃受け部材に形成された斜面701AS及び枠体700Aの斜面700ASに弾性案内片701AF、700AFが固定される。
【0130】
弾性案内片701AF、700AFはPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムからなる。
【0131】
弾性案内片701AF、700AFを用紙導入部に設けることにより、用紙束SSがより安定して用紙断裁部に導入される。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】本発明の実施の形態に係る用紙後処理装置を有する画像形成システムの全体構成図。
【図2】本発明の実施の形態に係る後処理装置の概略正面図。
【図3】図2の後処理装置の右側面図。
【図4】図2の後処理装置の左側面図。
【図5】後処理装置における用紙の流れの一部を示す模式図。
【図6】断裁コンベア600及び用紙束SSの搬送機構の模式図。
【図7】本発明の実施の形態に係る用紙断裁装置700の正面図。
【図8】用紙押さえ部材701の斜視図である。
【図9】用紙断裁部の断面図である。
【図10】用紙押さえ部材701の両端部を示す図である。
【図11】刃受け部材701Aの下面図である。
【図12】用紙断裁装置の他の例における用紙断裁部の断面図である。
【符号の説明】
【0133】
A 画像形成装置
B 後処理装置
700 用紙断裁装置
700AF、701AF 弾性案内片
700AS、701AS 案内面
701 用紙押さえ部材
701A 刃受け部材
702 支持台
703 断裁刃
【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙束に対して、その紙面に直角な方向の移動成分と平行な方向の移動成分が合成された斜め方向の移動により用紙を断裁する断裁刃、
該断裁刃を受ける刃受け部材、
用紙を断裁位置に支持する支持台及び、
前記刃受け部材を介して前記支持台との間に用紙を押さえる用紙押さえ部材
を有する用紙断裁装置であって、
前記刃受け部材の用紙進入側端部に、斜面からなり、用紙の進入を案内する案内面を設けたことを特徴とする用紙断裁装置。
【請求項2】
前記斜面に弾性案内片を固定したことを特徴とする請求項1に記載の用紙断裁装置。
【請求項3】
前記支持台の用紙進入側端部に、用紙の進入を案内する案内面を設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の用紙断裁装置。
【請求項4】
前記支持台の前記案内面に弾性案内片を固定したことを特徴とする請求項3に記載の用紙断裁装置。
【請求項5】
前記刃受け部材をその未使用部が用紙押さえ位置に設定されるように、駆動する受け部材駆動機構を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の用紙断裁装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の用紙断裁装置を有することを特徴とする用紙後処理装置。
【請求項1】
用紙束に対して、その紙面に直角な方向の移動成分と平行な方向の移動成分が合成された斜め方向の移動により用紙を断裁する断裁刃、
該断裁刃を受ける刃受け部材、
用紙を断裁位置に支持する支持台及び、
前記刃受け部材を介して前記支持台との間に用紙を押さえる用紙押さえ部材
を有する用紙断裁装置であって、
前記刃受け部材の用紙進入側端部に、斜面からなり、用紙の進入を案内する案内面を設けたことを特徴とする用紙断裁装置。
【請求項2】
前記斜面に弾性案内片を固定したことを特徴とする請求項1に記載の用紙断裁装置。
【請求項3】
前記支持台の用紙進入側端部に、用紙の進入を案内する案内面を設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の用紙断裁装置。
【請求項4】
前記支持台の前記案内面に弾性案内片を固定したことを特徴とする請求項3に記載の用紙断裁装置。
【請求項5】
前記刃受け部材をその未使用部が用紙押さえ位置に設定されるように、駆動する受け部材駆動機構を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の用紙断裁装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の用紙断裁装置を有することを特徴とする用紙後処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−102883(P2006−102883A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−293480(P2004−293480)
【出願日】平成16年10月6日(2004.10.6)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年10月6日(2004.10.6)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】
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