説明

男性器用マッサージ具

【課題】使用に抵抗感が少なく、また性行為に似た正しい性感という見地から適度な刺激を持って射精に導くことができる男性器用マッサージ具を提供する。
【解決手段】非透過性を有する柔軟フィルム製の袋体を二つに折り返し、折り返した向かい側の一辺を挿入口としてその両辺を閉塞することで表裏に気体封入室を構成した略有底筒状の男性器用マッサージ具であって、前記表裏の気体封入室は、一部に流体通路を形成したシール部によって、前記挿入口から男性器を挿入する中央のマッサージ層と、その周囲のクッション層とに分割し、前記マッサージ層の途中には内径を絞った括れ部を設けると共に、表裏何れか一方の気体封入室には閉弁可能な給気口を設けた。マッサージ層の括れ部は、男性器に塗布した潤滑剤が滞留可能な内径であることが好ましく、さらにマッサージ層は、その奥端に流体封入時に内部が密着する閉口部を有することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、男性器を過度に刺激することなく性行為に近い適度な性感をもって射精に導くことを目的とした男性器用マッサージ具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、いわゆるジョークグッズとして販売されている男性器用マッサージ具は、性感の増幅を目的として女性器にはない過度の刺激を与えるものが大半であった。また、この種マッサージ具は一見してそれと分かるような態様であるため、購入や使用に抵抗感をもたらすものであった。
【0003】
これに対して、AIDS(後天性免疫不全症候群)の拡散防止という見地等から男性の不可避な性的欲求を速やかに、且つ、抵抗感のない状態で自己処理させるため、使用時のみ本体を空気や温水などで膨らませることができる伸縮バッグ式の男性器用マッサージ具も提案されている(特許文献1〜3)。こうした伸縮バッグ式のものは、未使用時に扁平となり、小さく折り畳むこともできるため、保管や廃棄の際にもプライバシーが守られやすい。
【0004】
【特許文献1】特表平7−505556号公報
【特許文献2】米国特許第5836865号明細書
【特許文献3】米国特許第6113532号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、少子化傾向が社会的問題となっており、一因として男性側の機能不全が挙げられる。その中でも、本発明者は、明確に治療方法が確立されていない射精障害に着目するものである。ここで射精障害とは、性行為時に女性器内で射精に至らない、あるいは受精が困難な程度に射精に勢いがない症状をいう。こうした射精障害は、男性側の問題でありながら、男女ともに性的コンプレックスをもたらし、結果的にED(勃起不全)に発展したり、セックスレスに繋がるケースもある。
【0006】
そして、この射精障害は20〜30代の健康な男性にも見られ、その原因として、上述したようなジョークグッズを用いた過度な刺激あるいは高頻度で行う自慰行為を挙げることができる。即ち、こうした行き過ぎた自慰行為は、日常化すれば、粘膜が皮膚化して性感が鈍り、強い刺激に対する慣れも生じて、女性器内での射精障害になるものと考えられる。
【0007】
これに対して、特許文献1〜3で提案されるような伸縮バッグ式のマッサージ具によれば、空気等の注入量によって圧迫力や摩擦力を適度なものに調整できるが、男性器を挿入する穴の内壁が平滑であるため、逆に刺激が弱く、射精に至りにくいという課題がある。
【0008】
本発明は上述した課題に鑑みなされたもので、その目的とするところは、使用に抵抗感が少なく、また性行為に似た正しい性感という見地から適度な刺激を持って射精に導くことができる男性器用マッサージ具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成するために本発明では、非透過性を有する柔軟フィルム製の袋体を二つに折り返し、折り返した向かい側の一辺を挿入口としてその両辺を閉塞することで表裏に互いに連通する気体封入室を構成した略有底筒状の男性器用マッサージ具であって、前記表裏の気体封入室は、一部に流体通路を形成したシール部によって、前記挿入口から男性器を挿入する中央のマッサージ層と、その周囲のクッション層とに分割し、前記マッサージ層の途中には内径を絞った括れ部を設けると共に、前記気体封入室に閉弁可能な給気口を設けるという手段を用いた。
【0010】
本発明の男性器用マッサージ具は、給気口から息を吹き込むなどして気体封入室に空気を注入し、ある程度膨らませた状態とした上、潤滑剤(ローション)を塗布した男性器をマッサージ層に挿入して使用するものである。そして、マッサージ層による圧迫感および摩擦力によって射精に導くものである。また、マッサージ層は、その中途に内径を絞った括れ部を備えるため、この括れ部によって締め付け感が増すと共に、ここを通過する亀頭部分に刺激を与えることができる。なお、より確実に上記刺激を付与するには、括れ部を男性器の挿入方向に対して90〜45度の角度で形成することが好ましく、また、複数列設けることが好ましい。さらにマッサージ層とクッション層は、シール部の一部を未シールとした流体通路によって連通しているため、内圧がマッサージ層とクッション層に分散され、本マッサージ具の握る力を加減することで、マッサージ層における圧迫感や摩擦力を調整することができる。
【0011】
また、本マッサージ具では、従来のマッサージ具と同様、男性器に潤滑剤(ローション)を塗布した上で使用することを予定している。これに鑑み、マッサージ層の括れ部は、男性器に塗布した潤滑剤が滞留可能な内面形状とすることが好ましい。潤滑剤が挿入口から極力漏洩することを防止することで、マッサージ中に潤滑剤を塗り直す必要をなくすためである。
【0012】
また、マッサージ層は、その奥端に流体封入時に内部が密着する閉口部を有することが好ましい。当該構成によれば、閉口部に達するまで男性器を挿入し、これを引き抜く段階で吸引力が発生し、この吸引力や閉口部の内壁との摩擦抵抗によって、別異の刺激をもたらすことができるからである。
【0013】
なお、シール部の流体通路は、上述のように未シールとすることによって形成されるが、この流体通路を、マッサージ層の奥端側に設けることによって、余剰の潤滑剤をマッサージ層からクッション層に排出できて、より好ましい。
【0014】
また、本マッサージ具は、給気口から気体を注入することによって、先ずクッション層がある程度膨らんだ段階で、流体通路を介してマッサージ層に気体が流入し、フィルムの柔軟性等によって気体封入室全体が膨張するのであるが、給気口は閉弁可能であるため、封入した気体が給気口が漏れることがない。また、本マッサージ具は非透過性であるため、フィルムからも気体が漏洩することがなく、膨張した状態を持続するものである。なお、本マッサージ具に封入する流体は、注入のしやすさ、注入後の重さなどから、気体が好ましいが、湯や水など、他の流体であってもよく、また、一部を気体、残部を液体という注入方法も排除しない。
【0015】
給気口は、逆止弁を備えることが好ましく、特に、2枚のフィルムを重ね合わせたスリット弁とすることによって、逆止弁機能を備えたセルフシール型の給気口を簡易に構成することができる。
【0016】
さらに、本マッサージ具の製造段階で、フィルムのシールは超音波融着または熱融着によって行うことが好ましい。シール部を迅速、且つ簡易に形成することができるからである。なお、本発明において接着剤を用いてシール部を形成することは完全に排除されないが、接着剤によるアレルギー反応など、人体への影響を考慮すれば、接着剤の使用は極力避けることが好ましい。
【0017】
また、フィルムは、流体封入時にある程度伸縮する柔軟性を有し、その封入状態を一定時間保持できる疎水性を有するものであれば、特に素材を限定することなく、ゴムシートなども採用することができるが、安全性、生産性、廃棄性を考慮して低密度ポリエチレン製のフィルムを用いることが好ましい。
【0018】
さらに、異物混入を判別するため、フィルムは気体封入室の内部が視認可能な透明性を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明のマッサージ具によれば、使用前は一枚のシート物と同じ外観を有し、また、使用後もフィルムを破いて内部の流体を排出するだけで元のシート状に戻るため、購入や使用に抵抗感が小さく、小さく丸めたり折り畳んで保管・廃棄することができるため、プライバシーも守られやすい。また、流体を注入するだけで簡単に使用でき、クッション層によってマッサージ層に伝わる握り方やその強さが緩和されるため、刺激が過剰とならず、適度な圧迫感および摩擦抵抗によって射精に導くことができる。
【0020】
また、マッサージ層に括れ部を設けたので、ここを通過する男性器に適度な刺激を与えると共に、奥端に閉口部を設けたものは、吸引力による別異に刺激を付与することが可能となる。さらに、括れ部の内面形状を潤滑剤が滞留可能なものとしたので、マッサージ層の内部の潤滑剤が挿入口から無駄に排出されることがない。また、マッサージ層の奥端側にシール部の流体通路を設けたものは、マッサージ層から潤滑剤の余剰分をクッション層へと排出できて、マッサージ層における潤滑剤を適量なものに調節することができる。
【0021】
他方、逆止弁内蔵型の給気口を備えたものは、流体を簡単に封入でき、特に2枚のフィルムからなるスリット弁によって給気口を構成したものは、給気口をも本体と同じ材質のフィルムによって成型できて、容易に量産化できる。
【0022】
また、シール部を超音波融着または熱融着によって形成したものは、成型が容易で、しかも、シール部の剥離強度が高まる上、接着剤を必要としないため、人体への影響もない。
【0023】
さらに、低密度ポリエチレン製のフィルムを用いることで、安全性・生産性・廃棄性に優れ、また透明または半透明のフィルムを用いることで、異物混入を容易に判別できて、より安全性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の好ましい実施の形態を添付した図面に従って説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るマッサージ具の使用状態(膨張状態)を示したものであり、表裏の気体封入室1の両側1a・1bをシールして、一辺1cを挿入口とした略有底筒状の外観を呈するものである。なお、表裏の流入封入層1は、図2に示すように、同一構成であることを前提にさらに詳述する。
【0025】
より具体的に、表裏の気体封入室1は、例えば四辺を閉じた密閉型の袋体、あるいは一組の対辺のみを閉じた両側開放型の袋体を基体として、これを二つ折りの状態とした上で両側1a・1bをシールによって閉塞してなるもので、折返し部となる底部側1dでは表裏の気体封入室1が連通する一方、その向かい側の一辺1cは表裏の気体封入室1の間が男性器の挿入口となる。そして、両側を閉塞する際、気体封入室1の外側一箇所は未シールとすると共に、当該未シール部分に給気口としてセルフシール型のスリット弁1eを設けている。なお、スリット弁1eは、未シール部分に2枚の舌片状フィルムを重ね設けたものであり、流体の注入方向のみ開弁し、これと逆方向では閉弁する逆止弁機能を有するが、流体の給気口は他の逆止弁であってもよい。
【0026】
さらに、上記構成において、表裏の気体封入室1は、図3に示すように、シール部2によって、挿入口から男性器を挿入する中央のマッサージ層3と、その周囲のU字状に形成されるクッション層4とに分割している。ここで、シール部2の一部は未シールの状態として、気体封入室1の内部においてマッサージ層3とクッション層4が連通する流体通路5を構成している。従って、流体は先ずクッション層4に注入されるが、その後は、流体通路5を介してマッサージ層3にも注入される。
【0027】
また、この実施形態においてマッサージ層3は、奥端部3a・中間部3b・根元部の3つの膨らみによって構成されるよう、やや男性器を象った輪郭を有する。そして、中間部3bには内径を絞った括れ部6を三段設けている。この括れ部6は、表裏の気体封入室1について、それぞれ外側のフィルムを線状に溶融させることで構成できる。そして、この括れ部6は、その内面形状によって男性器を適度に締め付け、男性器に塗布した潤滑剤を滞留させることができると共に、ここを通過する際に男性器の亀頭部分に刺激を付与するものである。この括れ部6の角度は、男性器の挿入方向に対して90〜45度の範囲とすることが好ましい。また、段数は2以上とすることが好ましいが、特に限定されない。ただし、括れ部6を二段以上設ける場合は、5〜30mmの間隔とすること好ましい。さらに、括れ部6の形状は、図示した直線状に限らず、波形・歯形・V字型等でもよい。
【0028】
一方、マッサージ層3の奥端部3aは、流体封入時に内部が密着して閉口することが好ましい。この閉口に強制的に男性器を突入させることで、その引き抜き時に吸引力が発生し、別異の刺激を付与することができるからである。また、閉口部分に男性器を突入させる際に適度な圧迫感と摩擦力を与えることができるからである。
【0029】
さらに、本実施形態では、この奥端部3aにシール部2の未シール部分(流体通路5)を設けているため、余剰となった潤滑剤をクッション層4に排出することができる。即ち、この実施形態において流体通路5は、封入流体の通路の他、潤滑剤の排出路としても機能する。なお、流体通路5は奥端部3a以外の部分に設けることも可能であるが、潤滑剤の排出路として機能させる場合は、挿入口から100mm以上離れた部分に設けることが好ましい。挿入口から100mm未満の位置であると、使用中に必要な潤滑剤を排出することになるからである。
【0030】
上記マッサージ具は、流体を注入した上、潤滑剤を塗布した男性器をマッサージ層3に挿入して使用するものであり、マッサージ層3による適度な圧迫感および摩擦抵抗によって射精に導くことができる。また、マッサージ層3の周囲にはクッション層4が設けられているため、本マッサージ具を握る力が強まったとしても圧力が分散されて、マッサージ層3による圧迫感や摩擦抵抗が過剰に高まることがない。
【0031】
また、使用後は、適当な箇所に穴を空けることで、封入流体が排出され、元のシート状となり、廃棄が容易である。本マッサージ具が使用前にシート状であることはもちろんであり、この場合、保管に場所を取らない。
【0032】
なお、図面上で明確に表れない部分について、先ず本マッサージ具は気体や液体に対して非透過性を有し、流体封入によってある程度膨張する柔軟性をも備えたフィルムから成型されるものであって、特に好ましい材質は低密度ポリエチレンである。また、各シール部は接着剤を用いず、超音波融着または熱融着によって形成することが好ましい。さらに、フィルムは気体封入室1への異物混入を判別するため、その内部が視認可能な透明性を有することが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明のマッサージ具は、正しい性感という見地から射精障害を予防する他、性行為の擬似的な事前体験や、体が不自由な者に対する性介護にも利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態に係るマッサージ具の使用状態を示した斜視図
【図2】同、側面図
【図3】同、平面図
【符号の説明】
【0035】
1 気体封入室
1e セルフシール型スリット弁
2 シール部
3 マッサージ層
4 クッション層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非透過性を有する柔軟フィルム製の袋体を二つに折り返し、折り返した向かい側の一辺を挿入口としてその両辺を閉塞することで表裏に互いに連通する気体封入室を構成した略有底筒状の男性器用マッサージ具であって、前記表裏の気体封入室は、一部に流体通路を形成したシール部によって、前記挿入口から男性器を挿入する中央のマッサージ層と、その周囲のクッション層とに分割し、前記マッサージ層の途中には内径を絞った括れ部を設けると共に、前記気体封入室には閉弁可能な給気口を設けたことを特徴とする男性器用マッサージ具。
【請求項2】
マッサージ層の括れ部は、男性器に塗布した潤滑剤が滞留可能な内面形状である請求項1記載の男性器用マッサージ具。
【請求項3】
マッサージ層は、その奥端に流体封入時に内部が密着する閉口部を有する請求項1または2記載の男性器用マッサージ具。
【請求項4】
シール部の流体通路は、マッサージ層の奥端側に設けた請求項1、2または3記載の男性器用マッサージ具。
【請求項5】
給気口は、逆止弁を備える請求項1から4のうち何れか一項記載の男性器用マッサージ具。
【請求項6】
給気口は、2枚のフィルムを重ね合わせたスリット弁である請求項1から4のうち何れか一項記載の男性器用マッサージ具。
【請求項7】
シール部は、超音波融着または熱融着により形成した請求項1から6のうち何れか一項記載の男性器用マッサージ具。
【請求項8】
フィルムは、低密度ポリエチレンである請求項1から7のうち何れか一項記載の男性器用マッサージ具。
【請求項9】
フィルムは、気体封入室の内部が視認可能な透明性を有する請求項1から8のうち何れか一項記載の男性器用マッサージ具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−268805(P2009−268805A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−123665(P2008−123665)
【出願日】平成20年5月9日(2008.5.9)
【出願人】(000107284)ジェクス株式会社 (26)
【Fターム(参考)】