説明

画像フィルム用見当あわせのためのレジスターマークと共に、印刷機にセットする為のパンチ穴又は切り欠きを有するオフセット印刷用生版およびその製造方法

【課題】 露光・現像・印刷の流れを改善する事のできる、オフセット印刷用の、未露光生版およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 未露光のオフセット印刷用生版にたいし、レジスターマークとして横線分X1.X2・・及び縦線分Y1.Y2・・、と必要なパンチ孔又は切り欠きを予め設け、オフセット印刷用生版のレジスターマークとフィルムのレジスターが重なるように焼き付け、露光時に用いる画像フィルム用見当あわせのためのレジスターマークと共に、印刷機にセットするためのパンチ穴又は切り欠きを有するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷機にセットする為のパンチ穴又は切り欠きを有する、未露光のオフセット印刷用生版およびその製造方法に関し、特に、露光時の見当合わせ用レジスターマークと共にオフセット印刷機にセットする為のパンチ穴又は切り欠きを有するオフセット印刷用生版およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷機の稼動率を改善する為に、印刷機に刷版を係止する為のパンチ穴やU字型等の切り欠き(以下、パンチ穴等とする)を刷版に設ける等、印刷の前準備時間を短縮することを目的として、従来、レジスターパンチャーが使用されている。このレジスターパンチャーについては従来から多くの改善がなされており、最近においても、例えば「多色印刷用製版フィルムのパンチ装置」(特許文献1)や、「印刷版加工装置及びそのレジスターマーク位置検出方法」(特許文献2)の発明が開示されており、更に、露光現像されて積層された刷版の一枚一枚に、全自動で高精度のレジスターパンチを施すことの出来る装置も実用されるに至った(特許文献3)。
【0003】
【特許文献1】特開平9−254097号公報
【特許文献2】特開2001−1507号公報
【特許文献3】特開2004−25719号公報
【0004】
上記従来のレジスターパンチャーは、何れも露光現像後の刷版にパンチ穴等を設けるために使用されるものであり、露光時に焼き付けられたレジスターマークを頼りに所定の位置にパンチ穴等を設けなければならないために、前記レジスターマークの読み取り精度の高い、高価なレジスターパンチャーを使用しなければならないという欠点があった。
【0005】
そこで本発明者は、上記の欠点を解決するために鋭意検討した結果、パンチ装置にプロッター機能をも搭載させた場合には、画像形成前にレジスターマークを記載することができるので、生版にレジスターマークを記載し次いで同じ装置でパンチ穴を設けた場合には、常にレジスターマークとパンチ穴等の位置関係が一定となるので、これによって露光、現像、印刷の流れを従来以上に速やかなものとする事ができることを見出し、本発明に到達した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って本発明の第1の目的は、露光、現像、印刷の流れを従来以上に速やかにする事ができる、オフセット印刷用生版を提供する事にある。
本発明の第2の目的は、露光、現像、印刷の流れを従来以上に速やかなものとする事ができる、オフセット印刷用生版の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記の諸目的は、露光、現像して刷版とする未露光のオフセット印刷用生版であって、露光時に用いる画像フィルム用見当あわせのためのレジスターマークと共に、印刷機にセットするためのパンチ穴又は切り欠きを有することを特徴とするオフセット印刷用生版、及びその製造方法によって達成された。本発明においては、簡便且つ精度を上げられることから、前記レジスターマークとして、その延長線が互いに直行する、少なくとも1対の短い縦線分および横線分を記載する事が好ましい。本発明は、特に版サイズがA全、B全又は菊全であるときに有効である。
【発明の効果】
【0008】
本発明のオフセット印刷用生版は、露光時に用いる画像フィルム用見当あわせのためのレジスターマークと共に、印刷機にセットするためのパンチ穴又は切り欠きを有するので、露光、現像、印刷の工程がスムースにつながり、製版からオフセット印刷までの作業を、従来以上に滑らかに行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明におけるレジスターマークは、通称トンボと呼ばれる十字のマークなど公知のマークの中から適宜選択する事ができるが、これらの公知のマークは平面図形であるため、2箇所以上にこのマークを設けても、それらの全てのマークで完全に一致させることは不可能である。従って、通常1つのマークのみを位置決めの規準とするので、その精度には限度がある。そこで、本発明においてはその延長線が互いに直行する、少なくとも1対の短い縦線分および横線分を、従来のレジスターマークの代わりに、レジスターマークとして生版の縦及び横の各辺の近傍に設ける事が好ましい。このようにすれば、少なくとも2箇所で基準合わせが同時になされるので精度を高めることができる。上記マークとしての線分を設けた辺の対辺側にも該線分と平行な線分をレジスターマークとして設けると、レジスターマークとして使用することのできる線分が増えるので作業性を向上させることができる。
【0010】
以下本発明を図面によって詳述する。
図1は、レジスターマークと印刷機にセットするためのU字形の切り欠きを有する本発明の生版の典型的な例である。図中のXはレジスターマークとして機能する横線分、Yは、レジスターマークとして機能する縦線分である。2点鎖線はフィルムの外形を表わす。本図は2面付け(フィルム2枚)、9ライン(レジスターマークとして機能する線分が9本)の場合である。
【0011】
図2は、本発明で使用する自動パンチ・プロッター装置の平面概略図、図3は版の排出部を中心とした側面概略図である。図中の符号1は生版積み置き台、2はプロッターによる描画及びパンチングを行うために生版を吸引固定する生版固定台の台板であり、生版の幅の違いによって排気通路を切り替える台版切り替えバルブ16を有している。上記生版積み置き台1には、30枚程度の生版を積み置くことができる。符号3は、レジスターマークが記載されパンチ穴が設けられた本発明の生版を貯える可動式の貯版部である。可動式であるので、版の取り出しが容易である。また、符号4は吸引され移動する生版20の下端によって次の版が傷つけられないように保護するセパレータであり、スクリーン又は布ベルト等からなる。このセパレータ4は、駆動モータ17によって駆動される。
【0012】
符号5は、レジスターマークが記載されパンチ穴が設けられた本発明の生版を貯版部3に導く間隙である。本発明の生版は、一部を除きVベルトで繋がれ駆動モータで回転する排出部駆動ローラ18に乗って排出される。この場合、排出部駆動ローラ18に乗った生版21は、排出部吸引ファン19によって、排出部駆動ローラ18から離れないように吸引されながら貯版部まで導かれ、排出部駆動ローラ18の最後部に達したときに排出部吸引ファン19が停止し、搬送された生版22が貯版部3に自然に倒れ込むようになっている。
【0013】
符号6は、Y軸装置台14のY軸リニアレール13に沿って移動するX軸装置台である。符号7は、Y軸レール上を移動して所定の位置に生版をセット又は排出する吸引装置ユニット8を除く、X軸装置ユニットであり、このX軸装置ユニット7内に、パンチユニットおよびプロッターユニットが配置されている。符号9は、生版の幅の違いによって使用する吸引装置ユニットを切り替える、吸引装置ユニット切り替えバルブ、10は、吸引装置を除くX軸装置をX座標方向に移動させるためのX軸ボールネジ部、11はX軸ボールネジ駆動ステッピングモーター、12は、吸引装置を除くX軸装置をX座標方向に移動させるためのX軸リニアレール、13は、吸引装置を除くX軸装置をY座標方向に移動させるためのY軸ボールネジ部、14は、吸引装置を除くX軸装置をY座標方向に移動させるためのY軸リニアレールである。
【0014】
図4は、本発明で使用する自動パンチ・プロッター装置における、パンチ・プロッターユニットの側面概略図である。図中の符号30はプロッターユニット用エアー・シリンダー、31はプロッターユニット、32はパンチ・プロッターユニット用エアー・シリンダー、33はパンチ用エアー・シリンダー、34はパンチユニットである。
【0015】
図5は、図示しないコントロールパネル部の平面図の例である。図中の符号101は、作業を所定のデータに従って行い、又は作業を中断するときに使用するスタートボタン、102は電源スイッチ、103は、各種設定値の入力音や機械のエラーを音で知らせるブザー、104はデータ入力のためのテン・キー、105は表示部のカーソルを戻すときに使用するボタン、106は表示部のカーソルを進めるときに使用するボタン、107はパンチ・プロッターモード切り替えボタン、108は入力データを確定するためのエンター・キー、109〜112はデータ表示部である。
【0016】
上記自動パンチ・プロッター装置を用いて本発明の生版を作成するに際しては、先ず電源スイッチ102を入れて、自動的に機械をスタート位置に移動させると共に、生版積み置き台1に生版を必要枚数セットする。次いで、セットした生版のサイズ、描画すべきレジスターマークの位置などのデータをコントロールパネルから入力し、生版の幅に対応させて吸引装置および生版固定台の台板切り替えバルブ、それぞれ9および16をセットする。
【0017】
コントロールパネルのデータが正しいことを確認してからスタートボタン101を押すと、吸引装置ユニット8が生版積み置き台1の最上部の生版を吸引すべく図3のDの位置に移動し、1枚目を吸引して引き上げたところでセパレーター4が次の生版との間に入り込み、1枚目の生版と2枚目の生版が完全に分離される。生版を吸引した吸引装置ユニット8は、生版を生版固定台台板2の所定の位置(図3のBの位置)にセットするためにY軸リニアレール14に沿って移動し、生版が生版固定台台板2の所定の位置に吸引固定された後前記吸引装置ユニット8による吸引が解かれ、入力データに従って最初のレジスターマークの位置にプロッターユニット31が移動して、レジスターマークが描画される。
【0018】
レジスターマークの描画が終了すると、正確に関連付けられた位置に一穴型パンチユニット34が移動し、印刷機にセットするためのパンチ穴または切り欠きを設ける。その後の作業を行う者の安全のために、面取り専用のカッター(図示せず)で角を丸く切り落とすことが好ましい。尚、パンチユニット34が生版上部を移動する場合には、パンチ・プロッターユニット用エア・シリンダー32によって、生版を傷つけないように生版の上方に移動している。穿孔する場合には、パンチユニット34全体が下方に移動し、パンチを完了する。この場合のパンチの形状は任意であるが、通常は、円形状、楕円形状又はU字形状である。レジスターマークの描画とパンチングの全ての作業が終了すると、得られた本発明の生版を貯版部3に搬出する。
【0019】
従来、レジスターマークとしては通常十字の印が用いられるが、本発明においては、延長線はそれぞれ互いに直交するものの、何れも単なる短い線分である横線および縦線をレジスターマークの代わりに使用することが好ましい。このようにすることによって、露光フィルムの見当あわせの場合の基準点を複数にする事ができるので、基準としての精度が高まる。
【0020】
また一般に、ポスターのような大判の場合は別として、オフセット印刷の刷版を作成する場合、一枚の画像フィルムが一枚の刷版に対応するという事はなく、例えば図6に示すように、一枚の印刷原版は4つの区画に分割され、各区画にそれぞれ画像フィルムを並べてテープで貼り付け、焼き付けが行われる。この画像が4色刷りのカラー画像である場合には、16枚のポジフィルムが使用され、それぞれが上記の様に貼り付けられ焼き付けられる事になる。従来は、画像及び画像位置を示すレジスターマークが焼き付けられた、いわば画像として完成された刷版に、前記レジスターマークに基づいて正しい位置にパンチ穴をあけるということがなされて来たが、各フィルムにおける画像位置が必ず正確に一致するという事はないので、各画像に色ずれを生じさせないようにすることは著しく困難となっていた。
【0021】
しかしながら本発明によれば、焼付け前の生版に、直接、X1、X2・・、Y1、Y2・・等のレジスターマークおよび必要なパンチ穴等を予め設けておくので、記載したレジスターマークとフィルムのレジスターマークがぴったり重なるようにフィルムを固定して焼き付け・現像すれば、印刷機にかけられる刷版が直接得られる。このように、現像後にパンチ穴等を設ける必要がないので、作業性が向上する上精度も向上し、前記色ずれは殆ど生じない。
本発明においては、現像後にレジスターマークを使用することはないので、焼付け光線を遮らない水色で描画することが好ましく、また、現像時には消失するような水性インクを用いて行う事が好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明のオフセット印刷用生版は、露光時に用いる画像フィルム用見当あわせのためのレジスターマークと共に、印刷機にセットするためのパンチ穴又は切り欠きを有するので、露光、現像、印刷の各工程がスムースにつながり、製版からオフセット印刷までの流れが極めて滑らかになるので、産業上極めて有意義である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】レジスターマークと印刷機にセットするためのU字形の切り欠きを有する、本発明の生版の典型的な例である。
【図2】本発明で使用する自動パンチ・プロッター装置の平面概念図である。
【図3】図2の自動パンチ・プロッター装置の、版排出部を中心とした側面概略図である。
【図4】本発明で使用する自動パンチ・プロッター装置における、パンチ・プロッターユニットの、拡大説明図である。
【図5】本発明で使用する自動パンチ・プロッター装置のコントロールパネルの一例を示す図である。
【図6】印刷原版が4つの区画に分割される場合の例である。
【符号の説明】
【0024】
1.生版積み置き台
2.自動パンチ・プロッタ装置における生版固定台の台板
3.貯版部
4.セパレータ
5.版排出のための間隙
6.X軸装置台
7.X軸装置ユニット
8.吸引装置ユニット
9.吸引装置ユニット切り替えバルブ
10.X軸ボールネジ部
11.X軸ボールネジ駆動ステッピングモーター
12.X軸リニアレール
13.Y軸ボールネジ部
14.Y軸リニアレール
15.Y軸駆動装置台
16.生版固定台の台板切り替えバルブ
17.セパレータ駆動モーター
18.排出部駆動ローラ
19.排出部吸引用ファン
20.生版積み置き台にセットされた生版
21.排出部に送り込まれた生版
22.貯版部に収納された生版
30.プロッターユニット用エアー・シリンダ
31.プロッターユニット
32.パンチ・プロッターユニット用エアー・シリンダ
33.パンチ用エアー・シリンダ
34.パンチユニット
101.スタートボタン
102.電源スイッチ
103.ブザー
104.テン・キー
105.表示部のカーソルを戻すときのボタン
106.表示部のカーソルを進めるときのボタン
107.パンチ・プロッターモード切り替えボタン
108.エンター・キー
109.データ表示部
110.データ表示部
111.データ表示部
112.データ表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
露光、現像して刷版とする未露光のオフセット印刷用生版であって、露光時に用いる画像フィルム用見当あわせのためのレジスターマークと共に、印刷機にセットするためのパンチ穴又は切り欠きを有することを特徴とするオフセット印刷用生版。
【請求項2】
前記レジスターマークとして、その延長線が互いに直行する、少なくとも1対の短い縦線分および横線分が設けられた、請求項1に記載されたオフセット印刷用生版。
【請求項3】
前記印刷用生版のサイズが、A全、B全又は菊全である、請求項1又は2に記載されたオフセット印刷用生版。
【請求項4】
未露光のオフセット印刷用生版に、パンチ機能とプロッター機能を兼ね備えた、自動パンチ・プロッター装置を用いて所定位置にレジスターマークを記載した後、該レジスターマークと正確に対応した、印刷機にセットするためのパンチ穴又は切り込みを設けることを特徴とする、露光時に用いる画像フィルム用見当あわせのためのレジスターマークと共に、印刷機にセットするためのパンチ穴又は切り欠きを有するオフセット印刷用生版の製造方法。
【請求項5】
前記自動パンチ・プロッター装置が、レジスターマークの記載およびパンチ穴又は切り欠きを設ける前の生版を重ね積みし得る生版積置き台、最上部の生版のみを吸引し移動可能に上方に持ち上げる吸引装置、吸引した生版を吸引装置ごと生版パンチ・プロッター部へ移動させる為の駆動装置、移動させられた生版を非可動に固定すべく吸引し得る吸引孔を有する生版固定台、指定された位置にレジスターマークを記載し得るプロッター装置、および前記レジスターマークと正確に関連付けられた所定箇所にパンチする為の一穴型パンチ装置からなるパンチ・プロッターユニットを有する、請求項4に記載されたオフセット印刷用生版の製造方法。
【請求項6】
前記、記載されるべきレジスターマークの位置を予めコンピュータに入力することにより、前記自動パンチ・プロッターユニットを速やかに前記位置に移動させ、プロッター機能を用いてレジスターマークを記載すると共に印刷機にセットするための穴又は切り欠きを設けることを特徴とする、請求項4又は5に記載されたオフセット印刷用生版の製造方法。
【請求項7】
載置された生版が常に所定の位置に収まるように、少なくとも前記生版積置き台が傾斜している、請求項4〜6の何れかに記載されたオフセット印刷用生版の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−33629(P2007−33629A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−214282(P2005−214282)
【出願日】平成17年7月25日(2005.7.25)
【出願人】(000154657)株式会社平河工業社 (2)
【Fターム(参考)】