説明

画像処理装置、画像処理方法、およびプログラム

【課題】定着温度を切り替える時のダウンタイムによる印刷の生産性低下を抑制し、かつ、画質劣化を抑制する。
【解決手段】本発明に係る画像形成装置は、定着の対象となるページを定着させるために必要となるトナー量に応じた印刷モードをページごとに判別し(S903)、ページごとに、判別された印刷モードと、当該印刷モードに対応した定着温度とを関連付けて記憶し(S903)、ページの定着温度と、ページの次に定着されるページの定着温度との差が所定の差以上であるかどうかを判定し(S906)、所定の差以上である場合、ページの定着温度を、次に定着されるページの定着温度よりも小さく、当該ページの定着温度よりも大きい値に変更する(S906)ことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナー画像を記録紙上に定着する際の定着温度を制御する画像処理装置、画像処理方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式により形成されたトナー画像を記録紙上に熱定着する画像形成装置において、通常、記録紙上に載せる単位面積当たりの色材量に応じて、定着器による定着温度が定められている。例えば、単位面積当たりの色材量の最大値をあらかじめ決めておき、その最大値以内となるように画像を定着するための定着温度を調整する。
【0003】
フルカラー複写機では、YMCK(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)等の複数の色材を重ね合わせて画像形成を行うため、記録紙上に載せる色材量(以下、トナー量と呼ぶ)が多くなる傾向にある。このため、定着ローラーの熱容量は大きくなり、電源投入後やスリープ明けの際など、予め定められた定着温度より低い状態の時、定められた定着温度に上昇するまでウォームアップする必要があり、印刷開始までの待ち時間が発生する問題があった。また出力する画像によっては、想定するトナー量の最大値を大きく下回る画像、例えばKの色材のみを使うモノクロモードの出力時には過剰な加熱を行うことになり、電力の無駄や転写紙のカールなどの不具合が発生していた。
【0004】
これらの問題に対して、従来、1ページにおける文字、写真等の画像内容に応じて、定着温度を補正する技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−039673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記の従来技術によれば、1ページ毎に定着温度を変化させるため、低い定着温度により印刷されるページの次に高い定着温度により印刷されるページがある場合、定着温度を低い温度から高い温度まで上げる必要がある。そのため、定着温度の差が大きくなるにつれて、待ち時間がより長くなるという問題がある。
【0007】
本発明は、ページ毎の定着温度の変動を抑制し、印刷の生産性低下を抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る画像処理装置は、複数ページからなる印刷ジョブに含まれる各ページの印刷モードから各ページに対応する定着温度を決定する決定手段と、前記印刷ジョブに含まれる第一のページの定着温度と前記第一のページの次ページである第二のページの定着温度との差が所定温度以上であるかを判定する判定手段と、前記判定手段によって前記所定温度以上の差があると判定された場合、前記決定手段によって決定された前記第一のページの定着温度を、前記第二のページの定着温度よりも低く、前記第一のページの定着温度よりも高くなるように変更する変更手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ページ間の定着温度の変動を抑制することでページ毎に定着温度を調整するための時間を削減し、印刷の生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態に係る画像形成システムの構成の一例を示す図である。
【図2】実施形態1に係る画像形成装置の構成を示すブロック図である。
【図3】画像形成装置の概観を示す図である。
【図4】印刷モードと定着温度との関係を示す図である。
【図5】定着温度決定部の処理手順を示すフロー図である。
【図6】温度制御プロファイル作成部の処理手順を示すフロー図である。
【図7】定着温度決定部により決定されたページごとの定着温度の一例を示す図である。
【図8】温度制御プロファイルにおけるページごとに決定された定着温度の一例を示す図である。
【図9】実施形態1に係る温度制御プロファイルを作成する処理手順を示すフロー図である。
【図10】実施形態1に係る、定着器による定着温度を制御する処理手順を示すフロー図である。
【図11】実施形態2に係る画像形成装置の構成を示すブロック図である。
【図12】実施形態2に係る温度制御プロファイルを作成する処理手順を示すフロー図である。
【図13】実施形態2に係る、定着器温度取得部と定着器温度微調整部の処理手順を示すフロー図である。
【図14】実施形態2における取得された温度値の一例を示す図である。
【図15】実施形態2における2部目以降の温度制御プロファイルの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態1)
以下、本発明の発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。
【0012】
図1は、本発明に係る画像形成システムの構成の一例を示した図である。
【0013】
101は、各種入力データを処理し、画像形成(作像)を行って印刷物を出力する画像形成装置である。画像形成装置101は、電子写真方式により形成されたトナー画像を1ページずつ記録媒体上に熱定着する定着器を備え、定着器における温度が所定温度に達した時に定着動作を行うように構成されている。102は、ネットワークを介して接続されているプリントサーバーである。また、103と104は、プリントサーバー102と同様にネットワークを介して接続されているクライアントPCである。
【0014】
[画像形成装置の構成]
図2は、画像形成装置101の構成を示すブロック図である。
【0015】
図2に示すように、画像形成装置101は、画像処理部204、記憶部205、CPU206、画像出力部207を備える。なお、画像処理部204は、入力画像処理部201、定着温度決定部202、温度制御プロファイル作成部203から成る。本実施形態では、画像処理部204、記憶部205、CPU206を備える装置を画像処理装置とする。
【0016】
記憶部205は、ROM、RAM、ハードディスク(HD)などから構成される。ROMは、CPU206が実行する各種の制御プログラムや画像処理プログラムを格納する。RAMは、CPU206がデータや各種情報を格納する参照領域や作業領域として用いられる。
【0017】
また、RAMとHDは、後述するオブジェクトバッファや、後述する温度制御プロファイルバッファのための記憶などに用いられる。このRAMとHD上で画像データを蓄積し、ページのソートや、ソートされた複数ページにわたる画像を蓄積し、複数部プリント出力を行う。
【0018】
画像出力部207は、記録紙などの記録媒体にカラー画像やモノクロ画像を形成して出力する。
【0019】
次に、本実施形態に係る温度制御プロファイルを作成する処理手順について、図9に示すフローチャートを用いて説明する。
【0020】
まず、ステップS901では、ステップS904までの処理に係る変数iの定義を行う。変数iは、印刷ジョブに係るページ数を表す。
【0021】
最初にiは1に設定され、iがP(ジョブに係る総ページ数)以下となるまで、iを1ずつ増加させながら、S902及びS903の処理のセットを繰り返す。
【0022】
ステップS902では、画像処理部204が、外部装置(例えば、プリントサーバー102、クライアントPC103,104)から入力画像処理部201に入力される画像データを含む印刷情報を中間情報(以下「オブジェクト」と呼ぶ)に変換する。そして、画像処理部204が、当該オブジェクトを、記憶部205のオブジェクトバッファに格納する。さらに、格納したオブジェクトに基づいてビットマップデータを生成し、当該ビットマップデータを記憶部205のバッファに格納する。その際、ビットマップデータを分析することによりオブジェクトの属性を判別し、判別した属性に基づいて、ビットマップデータに対して色変換処理や、画像調整処理などを行う。そして、オブジェクトの属性と、色変換処理のための情報と、を定着温度決定部202に送る。
【0023】
ステップS903では、定着温度決定部202が、入力画像処理部201から受け取ったオブジェクトの属性と、色変換処理のための情報とに基づいて、画像を印刷するための定着温度を印刷ジョブに係るiページについて決定する。この定着温度を決定する処理の詳細については後述する。さらに、定着温度決定部202は、1つの印刷ジョブに対して出力される各ページに係る定着温度を記憶部205の定着温度バッファに格納する。
【0024】
ステップS905では、ステップS901と同様に、ステップS907までの処理における変数iの定義を行う。
【0025】
ステップS906では、温度制御プロファイル作成部203が、印刷ジョブの全てのページについてS903で決定された定着温度を定着温度バッファから取得する。そして、印刷の生産性と画質の観点に基づいて最適となる定着温度を定めた温度制御プロファイルを作成し、記憶部205の温度制御プロファイルバッファに格納する。この温度制御プロファイルの作成の詳細についても、後述する。
【0026】
[画像形成装置の概観]
図3は画像形成装置101の概観を示す図である。
【0027】
画像読取部301は、原稿台ガラス303及び原稿圧板302の間に置かれた原稿304を光学的に読み取る。このとき、原稿304はランプ305の光に照射される。そして、原稿304からの反射光が、ミラー306と307とを介してレンズ308によって3ラインセンサ310上に像としとて結合される。
【0028】
なお、レンズ308には赤外カットフィルタ331が設けられている。図示しないモータにより、ミラー306とランプ305を含むミラーユニットを速度Vで、ミラー307を含むミラーユニットを速度V/2で矢印の方向に移動する。つまり、3ラインセンサ310の電気的走査方向(主走査方向)に対して垂直方向(副走査方向)にミラーユニットが移動し、原稿304の全面を走査することができる。
【0029】
3ラインのCCDからなる3ラインセンサ310は、入力される光情報を色分解して、フルカラー情報レッドR、グリーンG、及びブルーBの各色成分を読み取り、その色成分信号を画像処理部204へ送る。なお、3ラインセンサ310を構成するCCDはそれぞれ5000画素分の受光素子を有し、原稿台ガラス303に載値可能な原稿の最大サイズであるA3サイズの原稿の短手方向(297mm)を600dpiの解像度で読み取ることができる。
【0030】
標準白色板311は、3ラインセンサ310の各CCD310−1、2、3によって読み取られたデータを補正するためのものである。なお、標準白色板311は、可視光でほぼ均一の反射特性を示す白色である。
【0031】
画像処理部204は、3ラインセンサ310から入力される画像信号を電気的に処理して、イエローY、マゼンタM、シアンC、及びブラックKの各色成分信号を生成し、生成したYMCKの色成分信号を画像出力部305に送る。このとき出力される画像はディザなどのハーフトーン処理が行われたYMCKの画像となっている。
【0032】
画像出力部207において、画像読取部301から送られてくるY、M、CまたはKの画像信号はレーザードライバ312へ送られる。レーザードライバ312は、入力される画像信号に応じて半導体レーザー素子313を変調駆動する。半導体レーザー素子313から出力されるレーザビームは、ポリゴンミラー314、f-θレンズ315及びミラー316を介して感光ドラム317上を走査し、感光ドラム317上に静電潜像を形成する。
【0033】
現像器は、イエロー現像器319、マゼンタ現像器320、シアン現像器321、およびブラック現像器322から構成される。この四つの現像器が交互に感光ドラム317に接することで、感光ドラム317上に形成された静電潜像を対応する色のトナーで現像してトナー像を形成する。記録紙カセット325から供給される記録紙は、転写ドラム323に巻きつけられ、感光ドラム317上のトナー像が記録紙に転写される。
【0034】
このようにして、Y、M、CおよびKの4色のトナー像が順次転写された記録紙は、定着器326を通過することによりトナー像が定着された後に装置外へ排出される。この定着器326は、内部の加圧ローラーからの圧力と熱を転写された記録紙に与えることにより、Y、M、C、Kの4色のトナー像を記録紙に定着させる。この時の熱量がトナー量に対して不十分であると定着不良を起こし正常な画像が得られないため、この定着器には不図示の温度センサが取り付けられており、定着に十分な温度が確認された時初めて定着動作が行われるよう制御する。この温度制御はCPU206にて、定着温度決定部202で決定された定着温度の情報を元にして、温度制御プロファイル作成部203で作成された定着温度と温度センサの情報の関係から制御される。
【0035】
なお、本実施形態では、画像読取部301を搭載した構成としているが、画像処理部302と画像出力部305の構成でも本実施形態は適用できる。
【0036】
次に、定着温度決定部202の処理について説明する。
【0037】
定着温度決定部202は、印刷モードの種類に応じた、定着器326による定着時の定着温度を決定する。印刷モードの種類に対応させる理由は、印刷モードによって、画像上の単位面積当たりのトナー量が異なり、従ってトナーを記録紙に定着するための温度も変わるからである。
【0038】
ここで、トナー量とは画像上の単位面積当たりのトナー量の事を意味し、単位を%として説明する。具体的には、Y、M、C、Kの各色の最大値を100%とした時に、例えばその最大値を2色重ねた場合にそのエリアでは200%のトナー量と定義する。各色は、階調性を持っているため0〜100%までの間の値を取りうる。
【0039】
次に印刷モードの例として、4つの印刷モードについて図4を用いて説明する。また、各印刷モードにおける、トナー量と定着温度との関係について説明する。
【0040】
フルカラー高画質印刷モードは、YMCKの4色のトナーをフルに利用したモードであり、任意の色をそのトナーで再現できる範囲で再現し、高画質なカラー印刷を行うモードである。そのため、その時の最大トナー量は240%ほどが確保されれば必要十分である。また、高画質なカラー印刷を行うモードであるため、最大トナー量240%が記録紙に定着できるのはもちろんのこと、定着の温度によって変動しうる画像のグロス性も重要視することが必要となる。そのため、4つの印刷モードのうち一番高温で定着する必要があり、これに対応するのがフルカラー高画質印刷モードである。
【0041】
次にフルカラー印刷モードは、YMCK4色のトナーをフルに利用したモードであり、任意の色をそのトナーで再現できる範囲で再現し、カラー印刷を行うモードである。その時の最大トナー量は、フルカラー高画質印刷モード同様、240%ほどが確保されていれば必要十分であるが、高画質印刷を必要としないため、グロス性などを重視する必要はない。したがって、フルカラー高画質印刷モードの次に高い温度で画像を定着できれば十分である。
【0042】
次に単色印刷モードは、モノクロ印刷に代表される1色のトナーのみを使った印字モードである。従って、トナー量の最大値は100%になる。このモードでは、単色で文字だけではなく、写真などを印刷する場合にも使用されるため、1枚の転写紙内でトナーが印字される画素数が比較的多いモードである。したがって、次に挙げる単色文字印刷モードよりは高いがフルカラー印刷モードよりは低い温度で画像を転写紙に定着する。
【0043】
最後に単色文字印刷モードは、単色印刷モード同様、1色のトナーのみを使った印字モードであるため、トナー量の最大値は100%になる。しかし、単色で写真を使用しない印刷をする場合に使用されるため、1枚の転写紙内でトナーが印字される画素数が少ないモードである。したがって、単色印刷モードよりは低い温度で画像を転写紙に定着する。
【0044】
このように4つの印刷モードごとに定着温度が異なるように設定される。ここで、フルカラー高画質印刷モードの定着温度をT1、フルカラー印刷モードの定着温度をT2、単色印刷モードの定着温度をT3、単色文字印刷モードをT4とすると、T1>T2>T3>T4の順になる。図4は、この関係を示す表である。定着温度決定部は、印刷モードに応じて定着温度を決定するため、各印刷モードに対応する定着温度を記憶部205に記憶しておく。
【0045】
なお、本実施形態において、T1の状態からT2の状態、T2の状態からT3の状態、T3の状態からT4の状態といったように、定着温度が1段階変化する際にかかる時間がt1以内となるように設定されている。このt1は、定着器326から用紙が排紙されてから、次の用紙が定着器326に投入されるまでの時間(紙間と称する)である。
【0046】
次に定着温度決定部202の処理手順について、図5のフローチャートを用いて説明する。なお、図5に示す処理手順は、CPU206からの命令に基づいて、定着温度決定部202により実行される。また、当該処理は、図9に示すS903に係る処理に対応するものである。
【0047】
まず、画像データが外部装置から入力画像処理部201に入力された後、ステップS501において、CPU206は印刷ジョブに係る総ページ数(Pページ)を取得し、記憶部205のページ数バッファに格納する。
【0048】
次に、ステップS502において、S501で取得したPページの各iページについて、定着温度決定処理が繰り返し実行される。
【0049】
ステップS503では、iページについて、入力画像処理部201で処理された画像の属性のうち「Image」を含むか否かをCPU206が判断する。
【0050】
ステップS504では、ステップS503で「Image属性を含む画像」と判断された画像に対して、入力画像処理部201で処理された色処理結果から、K単色の画像か否かをCPU206が判断する。
【0051】
ステップS505では、CPU206が該当ページの定着温度をT3と決定し、iページと関連付けた定着温度T3を記憶部205の定着温度バッファに格納する。
【0052】
ステップS506では、CPU206が該当ページの定着温度をT1と決定し、iページと関連付けた定着温度T1を記憶部205の定着温度バッファに格納する。
【0053】
ステップS507では、ステップS503で「Image属性を含まない画像」と判断された画像に対して、CPU206が、入力画像処理部201で処理された色処理結果から、K単色の画像か否かを判断する。
【0054】
ステップS508では、CPU206が該当ページの定着温度をT4と決定し、iページと関連付けた定着温度T4を記憶部205の定着温度バッファに格納する。
【0055】
ステップS509では、CPU206が該当ページの定着温度をT2と決定し、iページと関連付けた定着温度T2を記憶部205の定着温度バッファに格納する。
【0056】
ステップS510では、記憶部205のページ数バッファに格納されているページ数分、上述の処理を繰り返したかどうかを判定し、全てのページについて処理が終了していれば図5に示すフローが終了する。
【0057】
上記の処理手順に従って、各ページにおける印刷モード及び印刷モードに対応した定着温度が決定される。
【0058】
例えば、1ページ目から6ページ目までが単色印刷モード、7ページ目以降がフルカラー高画質印刷モードであった場合に定着温度決定部202で決定した各ページに対する定着温度の一例を図7に示す。
【0059】
従来技術では、定着温度決定部202で決定された各ページにおける定着温度に基づいて定着器326の温度を設定するため、ダウンタイムが発生するという課題が生じうる。
【0060】
ダウンタイムの発生は、例えば、図7に示すように6ページ目から7ページ目の間の定着温度の変化が2段階以上である場合に生じうる。このような急激な定着温度の変化を回避するために、本実施形態の特徴である温度制御プロファイル作成部203による処理が必要となる。
【0061】
次に、温度制御プロファイル作成部203の処理について説明する。なお、当該処理は、S906の温度制御プロファイル作成処理に相当する。
【0062】
定着温調スケジュール作成部203は、定着温度決定部202で決定された印刷ジョブの全ページに対して設定された定着温度を元に、ジョブの印刷の生産性と画質の観点で最適な温度制御プロファイルを作成する。
【0063】
例えば、ある印刷ジョブにおいて、単色印刷モードによる印刷ページが複数枚連続した後、フルカラー高画質印刷モードによる印刷ページが存在する場合について説明する。この場合、単色印刷モードからフルカラー印刷モードに印刷モードを切り替える時、定着温度を2段階切り替える必要がある。しかし、定着温度を2段階分上げるには、t1+αの時間が必要となり、1段階の切り替えよりもより多くの時間を必要とする。
【0064】
従来、定着器による温度が所望の温度に上がるまで印刷を中止し、定着器による温度が所望の温度に到達した時から印刷を開始していたため、印刷の生産性が落ちていた(すなわち、ダウンタイムが発生していた)。
【0065】
そこで、本実施形態に係る温度制御プロファイル作成部203により、ジョブ中の各ページの定着温度の連続性や順番を考慮した温度制御プロファイルを作成して、生産性、さらには消費電力を改善する。
【0066】
次に、具体的な温度制御プロファイル作成部203の処理について、図6を用いて説明する。
【0067】
ステップS601では、定着温度決定部202で決定され、記憶部205の定着温度バッファから呼び出されるジョブの全ページについて、以下の処理を繰り返す。すなわち、iページを選択し、iページごとに処理を行う。
【0068】
まず、ステップS602では、対象となるiページ(第一のページ)の定着温度と、その次のi+1ページ(第二のページ)の定着温度とが同一であるか否かをCPU206が判断する。同一の場合(S602;YES)、S603において、iページの定着温度を基準にして、iページ以降の何ページが、iページの定着温度と連続して同一であるかをCPU206が判定する。一方、同一ではない場合(S602;NO)、ステップS604に進む。
【0069】
ステップS604では、iページの定着温度と、その次のi+1ページの定着温度との差が、図4に示す定着温度を4段階としたときに、2段階以上の差があるかどうかをCPU206が判断する。すなわち、差が所定の差以上であるかどうかが判断される。ステップS604で、定着温度の差が2段階以上あると判断された場合(S604;YES)、ステップS605に進む。一方、定着温度の差が2段階よりも小さいと判断された場合(S604;NO)、ステップS608へ進む。ステップS604では、iページの定着温度とその次のi+1ページの定着温度の差が所定温度以上であるか否かを判定してもよい。ステップS604において、差が所定温度以上であると判定された場合、ステップS605に進む。差が所定温度未満であると判定された場合S608に進み、定着温度決定部202で決定されたiページの定着温度を変更することなく、定着温度の制御を行う。
【0070】
ステップS605では、iページの定着温度を、i+1ページの定着温度から1段階下げた定着温度に設定する。そして、CPU206は、iページについて新たに設定した定着温度をiページと関連付けた温度制御プロファイルを、記憶部205の温度制御プロファイルバッファに格納する。
【0071】
例えば、iページに設定されているモードが単色印刷モードであり、i+1ページのモードがフルカラー高画質印刷モードである場合、iページの定着温度をフルカラー高画質印刷モードから1段階下げたフルカラー印刷モードと同じ定着温度に再設定する。つまり、定着温度を上げるようにスケジューリングする。
【0072】
ステップS606では、iページよりも前のページにおける印刷モードを判定し、iページよりも前のページについて、所定数のページが連続してiページと同一の印刷モードであるかどうかを判定する。
【0073】
ステップS607では、S606でYESであった場合に、i−1ページの定着温度をi+1ページの定着温度から1段階下げた定着温度に設定する。例えば、図7に示すように、1ページ目から6ページ目までが単色印刷モードで、7ページがフルカラー高画質印刷モードである場合について説明する。ここで、i=6であり、S606で説明した所定数が6であると仮定する。この場合、図7に示すように、1ページから6ページまで、所定数6である6ページが連続して同じ印刷モードなので、5ページの定着温度が、7ページの定着温度よりも1段階下げた温度に再設定される。その結果、図8に示すように、5ページと6ページの定着温度が、7ページの定着温度よりも1段階下げた温度に再設定される。これにより、6ページ目を定着したときから7ページ目を定着するまでにかかっていた定着器の温度を上昇させるための時間を削減することができる。
【0074】
ステップS608では、定着温度の連続性を測るために用いたカウンターをクリアする。
【0075】
このように、定着温度を再設定して、各ページに再設定した定着温度を関連付けた温度制御プロファイルが作成される。
【0076】
最後に図10を用いて、本実施形態に係る温度制御の処理手順を説明する。
【0077】
ステップS1001では、記憶部205の温度制御プロファイルバッファに記憶されている温度制御プロファイルを読み出す。
【0078】
次にステップS1002では、温度制御プロファイルに基づいて、CPU206が、印刷ジョブに係るページごとに、各ページに対して設定されている定着温度にするように定着器に命令する。
【0079】
この処理によって、印刷ジョブの各ページの定着温度を制御することにより、印刷の生産性、画質、さらには使用電力量を加味した効率のよい温度制御を行うことが可能となる。
【0080】
(実施形態2)
実施形態1は、印刷ジョブに対して定着器326の定着温度をページごとに定めた温度制御プロファイルを作成する。そして、その温度制御プロファイルに従って定着器を制御するものであった。
【0081】
実施形態2では、複数ページから成るジョブを複数部定着する場合、まず、実施形態1で説明した処理手順に従って1部目のジョブに係る画像を転写紙に定着させる。そして、2部目以降のジョブに係る処理は、1部目を印刷する際に作成された温度制御プロファイルを利用しつつ、さらに精度良く転写紙に画像を定着できるようにするものである。
【0082】
このような処理を実行する理由は、画像を転写紙に定着させる際に定着器を通過した転写紙が熱を奪ってしまうため、その奪われる熱を考慮した定着器の温度制御が必要となるからである。
【0083】
なお、実施形態1と同様の構成および要素については、説明を省略する。
【0084】
図11は、本実施形態に係る画像形成装置101の構成を示すブロック図である。図11に示すように実施形態2における画像処理部204は、実施形態1の構成に加え、定着器温度取得部1101と、定着器温度微調整部1102と、を更に備える。
【0085】
定着器温度取得部1101は、画像出力部305が備える定着器326の温度センサにより測定された測定温度として温度値を取得する。
【0086】
定着器温度微調整部1102は、定着器温度取得部1101が取得した温度値と、温度制御プロファイルが示す定着温度とを比較し、差がある場合に温度制御プロファイルが示す定着温度を変更する。
【0087】
次に、実施形態2に係る処理手順について、図12に示すフロー図を用いて説明する。
【0088】
ステップS1001とステップS1002は、実施形態1と同様であるため、説明を省略する。なお、本実施形態は、ジョブに係る命令が、原稿を複数部印刷する場合の例であるため、ステップS1201からステップS1205は、2部目以降の印刷ジョブについての処理となる。
【0089】
ステップS1202では、定着温度取得部1101が、定着器の温度値を取得し、記憶部205の定着器温度バッファに記憶させる。
【0090】
ステップS1203では、定着温度取得部1101が取得した温度値と、温度制御プロファイルが示す定着温度との差分を算出する。そして、差分に基づいた補正値を算出して、当該補正値を記憶部205の補正値バッファに記憶させる。そして、CPU206は、記憶部205の温度制御プロファイルにおける定着温度に、補正値を加算することにより温度制御プロファイルを更新する。なお、更新した温度制御プロファイルは、記憶部205の温度制御プロファイルバッファに記憶される。
【0091】
次に、定着器温度取得部1101及び定着器温度微調整部1102の処理について、図13を用いて説明する。
【0092】
ステップS1301からステップS1304は、ジョブの各ページに係る処理である。
【0093】
ステップS1302では、CPU206が、定着器326の温度値を定着温度取得部1101から取得する。
【0094】
ステップS1303では、iページについて温度制御プロファイルにより特定される定着温度と、ステップS1302で取得した定着器326の温度センサとの差分を算出し、その差分値を補正値として記憶部205の補正値バッファに格納する。
【0095】
次に、本実施形態における処理の例を図8、図14、図15を用いて説明する。
【0096】
例えば、実施形態1について説明した図7のように、1ページ目から6ページ目までが単色印刷モード、7ページ目以降がフルカラー高画質モードであるようなジョブを複数部印刷する場合である。まず、1部目は、図8に示す温度制御プロファイルに従って定着器326に対する温度制御が行われる。
【0097】
しかし、前述したように、定着器326を転写紙が通過する際に定着器326の熱を奪ってしまうため、奪われる熱の量を把握する必要がある、そこで、1部目の印刷中に、ページ毎に定着器326の温度値を温度センサにより取得する。
【0098】
ここで、定着器326の温度センサにより取得した温度値の一例を図14に示す。温度値は、記憶部205の定着器温度バッファに格納される。
【0099】
なお、2部目以降の温度制御プロファイルを作成する際、記憶部205の定着器温度バッファに格納された温度値が考慮される。すなわち、1部目について使用した温度制御プロファイルが示す定着温度と、1部目の印刷ジョブを印刷時に取得した記憶部205の定着器温度バッファに書き込まれている温度値の差が定着器を転写紙が通過した際に奪われる温度となる。したがって、定着器温度微調整部1102では、この差分を考慮した2部目以降の定着器温度制御プロファイルを作成することとなる。2部目以降の定着器温度制御プロファイルの様子を示したのが図15となる。図15では、2部目以降の定着器温度制御プロファイルにおける定着温度は、1部目の定着器温度制御プロファイルにおける定着温度に補正値を加えた温度になる。ここで、補正値は、1部目の定着器温度制御プロファイルにおける定着温度から、定着器温度取得部1101が取得した定着器の定着温度を引いた値である。
【0100】
このようにして、温度制御プロファイルから、定着器326による定着温度を各ページ毎に取得し、補正値を算出する。そして、補正値を用いて更新された温度制御プロファイルを2部目以降の印刷ジョブに用いることで、印刷制度を向上することができる。
【0101】
なお、印刷モードの数、S604の段階の差、S606の連続するページの数、は本明細書で説明した数に限定されず、任意に設定することができる。
【0102】
<その他の実施形態>
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
【符号の説明】
【0103】
302 原稿圧板
303 原稿台ガラス
304 原稿
305 ランプ
306 ミラー
307 ミラー
308 レンズ
310 ラインセンサ
311 標準白色板
312 レーザードライバ
313 半導体レーザー素子
314 ポリゴンミラー
315 f−θレンズ
316 ミラー
317 感光ドラム
319 マゼンタ現像機
320 シアン現像機
321 イエロー現像機
322 ブラック現像機
323 転写ドラム
325 記録紙カセット
326 定着器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数ページからなる印刷ジョブに含まれる各ページの印刷モードから各ページに対応する定着温度を決定する決定手段と、
前記印刷ジョブに含まれる第一のページの定着温度と前記第一のページの次ページである第二のページの定着温度との差が所定温度以上であるかを判定する判定手段と、
前記判定手段によって前記所定温度以上の差があると判定された場合、前記決定手段によって決定された前記第一のページの定着温度を、前記第二のページの定着温度よりも低く、前記第一のページの定着温度よりも高くなるように変更する変更手段と
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
さらに、前記変更手段によって変更された後の定着温度に従って、定着装置の定着温度の制御を行う制御手段とを有することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記変更手段は、前記決定手段によって決定された前記第一のページの定着温度と前記第一のページの前のページである第三のページの定着温度が等しい場合、前記第三のページの定着温度を、前記前記第二のページの定着温度よりも低く、前記第三のページの定着温度よりも高くなるように変更することを特徴とする請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
さらに、前記判定手段によって前記差が前記所定温度未満であると判定された場合、前記決定手段によって決定された前記第一のページの定着温度に従って、前記第一のページを定着するときの定着温度の制御を行う制御手段とを有することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記印刷モードは、フルカラー高画質印刷モード、フルカラー印刷モード、単色印刷モード、単色文字印刷モードのうち少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項6】
さらに、N部目(Nは1以上の整数)の前記各ページを定着するときの定着装置の温度の測定結果を取得する取得手段を備え、
前記取得手段によって取得された各ページに対応する定着装置の測定温度と前記変更手段によって変更された後の各ページに対応する定着温度との差分値を対応するページ毎に求め、前記差分値に基づき(N+1)部目以降の各ページに対応する定着温度決定することを特徴する請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項7】
複数ページからなる印刷ジョブに含まれる各ページの印刷モードから各ページに対応する定着温度を決定する決定工程と、
前記印刷ジョブに含まれる第一のページの定着温度と前記第一のページの次ページである第二のページの定着温度との差が所定温度以上であるかを判定する判定工程と、
前記判定工程によって前記所定温度以上の差があると判定された場合、前記決定工程によって決定された前記第一のページの定着温度を、前記第二のページの定着温度よりも低く、前記第一のページの定着温度よりも高くなるように変更する変更工程と
を有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項8】
コンピュータを、
複数ページからなる印刷ジョブに含まれる各ページの印刷モードから各ページに対応する定着温度を決定する決定手段と、
前記印刷ジョブに含まれる第一のページの定着温度と前記第一のページの次ページである第二のページの定着温度との差が所定温度以上であるかを判定する判定手段と、
前記判定手段によって前記所定温度以上の差があると判定された場合、前記決定手段によって決定された前記第一のページの定着温度を、前記第二のページの定着温度よりも低く、前記第一のページの定着温度よりも高くなるように変更する変更手段
として機能させるためのプログラム。
【請求項9】
原稿を複数部定着する場合、
1部目の各ページの定着時における前記定着器の温度を測定する手段、
をさらに備え、
前記記憶手段は、ページごとに、前記温度を測定温度としてさらに関連付けて記憶し、
前記変更手段は、前記記憶手段を参照して、ページに関連付けられている定着温度と、測定温度との差分値を求め、ページごとに、関連付けされている定着温度を、当該定着温度に前記差分値を加算した新たな値に変更する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−76890(P2013−76890A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217335(P2011−217335)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】