説明

画像形成媒体、画像形成媒体の作製方法および画像形成方法

【課題】周囲の紫外線への露出によって画像または画像コントラストが劣化することなく長時間安定なままである画像再形成可能な画像形成媒体を提供する。
【解決手段】基材と、基材上にコーティングした、または基材に含浸させた画像化層であって、光塩基発生剤と、カップリング剤と、光酸発生剤とを含む画像化層と、を含み、第1の波長の光を画像化層に照射することにより光塩基発生剤が塩基を発生させ、この塩基がカップリング剤と反応して、画像を形成する拡張共役を生成し、第2の波長の光を画像化層に照射することにより光酸発生剤が酸を発生させ、この酸が拡張共役と反応して拡張共役の形成を逆行させて画像を消去する画像形成媒体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般に、画像再形成可能な用紙へのインクレス印刷のための基材、方法および装置を対象とする。特に、諸実施形態では、本開示は、光塩基発生剤、カップリング剤および光酸発生剤を含む組成物など、紫外線によって画像形成可能でかつ消去可能な組成物を利用するインクレス印刷用紙など、画像再形成可能なインクレス印刷基材を対象とし、この組成物は基材上への、または基材内へのドライコーティングとしてポリマに分散させることができる。第1の波長の画像化紫外線により光塩基発生剤がアミンなどの塩基を発生させ、この塩基はアルデヒドなどのカップリング剤と反応して、着色画像を形成する拡張共役(extended conjugation)を生成する。その後、第2の波長の画像化紫外線により光酸発生剤が酸を発生させ、この酸は拡張共役と反応して、着色画像を消去する。他の諸実施形態は、インクレス印刷基材を用いるインクレス印刷法、ならびにこのような印刷のための装置およびシステムを対象とする。
【背景技術】
【0002】
インクジェット印刷は、十分に確立された市場であり、またプロセスであり、基材上にインクの液滴を像様に噴出することによって画像が形成される。インクジェットプリンタは、家庭環境およびビジネス環境で、特に、インクジェットプリンタのコストは低いため家庭環境で広く使用されている。これらのインクジェットプリンタにより通常、標準的な事務用紙、透明紙、印画紙など幅広い基材上に、白黒の文章から写真画像に及ぶ高品質画像を生成することが可能となる。
【0003】
しかしながら、プリンタのコストが低いにもかかわらず、交換インクジェットカートリッジのコストが高いことがあり、時折プリンタ自体のコストよりも高いことがある。これらのカートリッジは頻繁に交換しなければならず、したがってインクカートリッジの交換コストは、インクジェット印刷に関する主な消費者の苦情である。よって、インクカートリッジの交換コストを低減することは、インクジェットプリンタのユーザに対する著しい向上となるはずである。
【0004】
加えて、多くの紙文書が読まれた後、程なく処分される。紙は安価ではあるが、処分される紙文書の量は莫大であり、これら処分される紙文書の処理により、重大なコストの問題および環境問題が浮上する。したがって、所望の画像を含むための新しい媒体を、またこのような媒体を作製し使用するための方法を提供することが引き続き望まれる。その態様において、再利用可能で、コストおよび環境の問題を削減することが望ましいはずであり、また、最終使用者にとって慣習的に受入れ可能で使用および保存が容易である媒体を提供するためにフレキシブルで紙のようであることも望ましい。
【0005】
一時的な画像形成および画像蓄積のために利用可能な技術があるが、これらの技術は通常、紙の代用品としての大部分の用途について望ましいとはいえない結果しかもたらさない。例えば、代替技術には、液晶ディスプレイ、電気泳動ディスプレイおよびジリコン(gyricon)画像媒体が含まれる。しかしながら、これらの代替技術は多くの例において、所望の画像再形成可能性(reimageability)を提供するが、伝統的な紙の外観および感触を有する文書を提供しないことがある。
【0006】
フォトクロミック材料、すなわち、可逆的にまたは不可逆的に光誘起により変色する材料を用いる画像化技法が公知であり、例えば、米国特許第3,961,948号は、有機膜形成結合剤中に分散した少なくとも1種のフォトクロミック材料を含むフォトクロミックな画像化層における可視光誘起による変化に基づく画像化方法を開示している。
【0007】
これらの、また他のフォトクロミックな(あるいは画像再形成可能なまたは電気的な)用紙は、画像および文書を一時的に蓄積するために何度も再利用することができる画像化媒体を提供することができるため望ましい。例えば、フォトクロミックに基づく媒体についての用途には、例えば電子ペーパ文書など、画像再形成可能な文書が含まれる。画像再形成可能な文書により、情報をユーザが望む限り保持することが可能となり、その後、情報を消去することも、または異なる情報を有する画像化システムを用いて画像再形成可能な文書を再画像化することもできる。
【0008】
上述の手法により画像再形成可能な一時的な文書が提供されてきたが、より長い画像寿命、ならびに、より望ましい紙のような外観および感触を提供する画像再形成可能な用紙の設計が望まれる。例えば、フォトクロミック紙向けの公知の手法により一時的な可視画像が提供される場合、これらの可視画像は、周囲の室内光中にも、また特に太陽光中にも存在する紫外線などの紫外線の影響を非常に受けやすい。この紫外線の存在により、可視画像が紫外線による劣化の影響を受けやすくなるため、画像化されていない領域が暗くなり、それにより所望の画像と背景領域または画像化されていない領域との間のコントラストが低下する。
【0009】
すなわち、一時的な文書に関係する問題は、フォトクロミック分子が吸収する周囲の紫外線〜可視光(<420nmなど)に対する画像化されていない領域の感度である。しばらくすると画像化されていない領域が着色し、文書の見栄えが悪くなる。というのは、ホワイトと着色状態との間のコントラストが減少するからである。米国特許出願第10/834,529号に記載されている1つの手法は、材料の異性化(すなわち、着色の誘発)が可能な365nm前後を中心とする入射光の帯域通過窓(band−pass window)を作製することによって波長<420nmの光に対して画像を安定化させることである。しかしながら、これらの文書の画像化されていない領域は、依然として365nm前後を中心とする波長の紫外線〜可視光の影響を受けやすい。
【0010】
【特許文献1】米国特許第3,961,948号明細書
【特許文献2】米国特許出願第10/834,529号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
一時的な文書など画像再形成可能な媒体上に形成される画像が、周囲の紫外線への露出によって画像または画像コントラストが劣化することなく長時間安定なままであることが一部の用途では望ましい。しかしながら、媒体の再画像化を可能にするために、必要に応じて、この画像を消去することができることも望まれる。電子ペーパ文書は紙面画像を、ユーザがその紙面画像を見る必要がある限り、周囲の光によって画像を劣化させることなく維持すべきである。その後、ユーザがコマンドで、この画像を消去する、または異なる画像と置き換えることができることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示は、諸実施形態において、紫外線によって画像形成可能でも消去可能でもあり、光塩基発生剤、カップリング剤および光酸発生剤を含む組成物を利用する画像再形成可能な画像形成媒体を提供することによって、これらの、また他の要求に対処することができる。この組成物は、基材上への、または基材内へのドライコーティングとしてポリマに分散させることができる。第1の波長の画像化紫外線により光塩基発生剤がアミンなどの塩基を発生させ、この塩基はアルデヒドなどのカップリング剤と反応して、着色画像を形成する拡張共役を生成する。消去では、第2の波長の画像化紫外線により光酸発生剤が酸を発生させ、この酸は拡張共役と反応して、着色画像を消去する。本開示は、他の諸実施形態において、画像再形成可能なインクレス印刷基材を用いるインクレス印刷法、ならびにこのような印刷のための装置およびシステムを提供する。
【0013】
本開示はそれにより、インクまたはトナーを使用することなく画像を印刷するための印刷媒体、方法および印刷システムを提供する。この紙媒体は特殊な画像形成可能な組成物を有し、この組成物を印刷し、また紫外線で消去することができる。したがって、この紙媒体により、インクまたはトナー交換を必要とせず、代わりにLEDなどの紫外線源を用いて紙を画像化するプリンタを用いる画像形成および画像消去が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
一般に、様々な例示的な諸実施形態において、光塩基発生剤、カップリング剤および光酸発生剤を含む組成物など、紫外線によって画像形成可能でも消去可能でもある組成物を用いて形成されるインクレスで画像再形成可能な用紙または画像形成媒体が提供され、この組成物は基材上への、または基材内へのドライコーティングとしてポリマに分散させることができる。第1の波長の画像化紫外線により光塩基発生剤がアミンなどの塩基を発生させ、この塩基はアルデヒドなどのカップリング剤と反応して、着色画像を形成する拡張共役を生成する。消去では、第2の波長の画像化紫外線により光酸発生剤が酸を発生させ、この酸は拡張共役と反応して、着色画像を消去する。したがって、この組成物は、画像形成媒体において、透明状態と着色状態の間で可逆的な転移を示す。着色状態とは、諸実施形態において、例えば、可視波長が存在することを指し、同様に、無色状態とは、諸実施形態において、例えば、可視波長が全くまたは実質的に存在しないことを指す。
【0015】
諸実施形態では、この画像形成媒体が一般に、適切な基材材料上にコーティングした、もしくは適切な基材材料に含浸させた、または第1の基材材料と第2の基材材料(すなわち、基材材料とオーバーコート層)との間にはさまれた画像化層(imaging layer)を含む。
【0016】
この画像化層は、第1の波長の紫外線などの活性化エネルギにさらされると第1の無色状態から第2の着色状態に切り替える任意の適切な第1の材料と、第2の波長の紫外線などの活性化エネルギにさらされると第2の着色状態から第1の無色状態に切り替える任意の適切な第2の材料とを含むことができる。諸実施形態における着色状態の変化は可逆的であり、したがって画像を「消去する」ことができ、画像形成媒体をブランク状態に戻すことができる。
【0017】
諸実施形態において、画像化層を形成するために任意の適切な組成物を使用することができる。例えば、画像化層は光塩基発生剤、カップリング剤および光酸発生剤を含むことができ、この組成物は基材上への、または基材内へのドライコーティングとしてポリマに分散させることができる。この組成物では、画像化紫外線により光塩基発生剤がアミンなどの塩基を発生させ、この塩基はアルデヒドなどのカップリング剤と反応して、着色画像を形成する拡張共役を生成する。その後、第2の波長の画像化紫外線により光酸発生剤が酸を発生させ、この酸は拡張共役と反応して、着色画像を消去する。これらの活性画像化材料は、溶媒、溶液、ポリマ結合剤等に分散させる、ポリマ結合剤などのキャリアと化学結合させる、マイクロカプセル化した材料の形で提供する、閉じたマトリックスに組み込んで画像化組成物を定位置に保持するなど、画像化層を形成するための任意の適切な媒体に分散させることができる。諸実施形態において、この画像形成反応は、画像状態が変化するたびに画像化材料が少量しか消費されないため、限られた回数可逆的となることができる。
【0018】
任意の適切な光塩基発生剤を使用することができ、この光塩基発生剤は、紫外線などの活性化エネルギにさらされるとアミンなどの塩基を発生させる前駆体である。諸実施形態において、この光塩基発生剤は、紫外線にさらされると、pH>7の塩基性化合物であるアミンを生成する。
【0019】
様々な適切な光塩基発生剤が当技術分野では公知であり、また本明細書中の諸実施形態において使用することができる。例示的な光塩基発生剤には、o−アシルオキシム類、ベンゾイルオキシカルボニル誘導体、カルバミン酸ベンジル類やカルバミン酸ベンゾイン類などの光活性カルバミン酸塩類、o−カルバモイルオキシム類のようなオキシムエステル化合物、第四アンモニウムテトラフェニルホウ酸塩類のようなアンモニウム化合物、ベンゾイン化合物、ジメトキシベンジルウレタン系化合物、オルトニトロベンジルウレタン系化合物、芳香族スルホンアミド類、α−ラクタム類、N−(2−アリールエテニル)アミド類、N−置換4−(o−ニトロフェニル)ジヒドロキシピリジン類、N−(2−ニトロベンジルオキシカルボニル)ピペリジン、1,3−ビス(N−(2−ニトロベンジルオキシカルボニル)−4−ピペリジル)プロパン、N,N’−ビス(2−ニトロベンジルオキシカルボニル)ジヘキシルアミン、O−ベンジルカルボニル−N−(1−フェニルエチリデン)ヒドロキルアミン、これらの混合物等が含まれる。これらの化合物は一般に、紫外線などの活性エネルギビームを照射することによって、塩基としてのアミンを発生させる。光酸発生剤および光塩基発生剤のさらなる調査は、例えば、Prog.Polym.Sci.第21巻、1〜45頁、1996年に見ることができる。
【0020】
ほんの一例であるが、具体的な適切な有機ベースの光塩基発生剤には、2−ヒドロキシ−2−フェニルアセトフェノンN−カルバミン酸シクロヘキシル(すなわち、CC(=O)CH(C)OC(=O)NHC11)、o−ニトロベンジルN−カルバミン酸シクロヘキシル(すなわち、o−NOCHC(=O)NHC11)、N−シクロヘキシル−2−ナフタレンスルホンアミド(すなわち、C10SONHC11)、3,5−ジメトキシベンジルN−カルバミン酸シクロヘキシル(すなわち、(CHO)CHC(=O)NHC11)、N−シクロヘキシルp−トルエンスルホンアミド(すなわち、p−CHSONHC11)およびジベンゾインイソホロンジカルバメートが含まれる。
【0021】
適切な光塩基発生剤(アミン光発生(amine photogeneration))の実例を以下に示す。
【0022】
【化1】

【0023】
ポリスチレン膜中で、記載されているここに示したプロセスにおいて、ベンゾフェノンは増感剤として作用する。水は周囲条件に存在する。
【0024】
加えて、光塩基発生剤の活性エネルギビームの光増感波長域を広げるために、光塩基発生剤と組み合わせて適切な光増感剤を任意選択で使用することができる。様々な光増感剤が当技術分野で周知であり、また諸実施形態で使用することができる。これらの光増感剤の例には、ベンゾフェノン等が含まれる。しかしながら、諸実施形態において、画像化材料の偶発的な活性化の防止の助けになるように活性エネルギビームの波長域を狭くするため、光増感剤を望ましくは省く。
【0025】
任意の適切なカップリング剤を使用することもでき、このカップリング剤は光塩基発生剤から発生した塩基と反応して拡張共役を生成して着色画像を生成し、拡張共役はその後、光酸発生剤から発生した酸と反応して、この反応を逆行させて無色画像を形成することができ、それにより着色画像が消去される。諸実施形態において、光塩基発生剤から発生した塩基とのカップリング剤の反応により、反応部位にある画像形成層が透明または無色状態から着色状態に変化し、この変化の程度および/または色は、反応する材料のタイプおよび反応する材料の相対量に関係している。同様に、光酸発生剤から発生した酸との拡張共役の反応により、反応部位にある画像形成層が着色状態から透明または無色状態に変化し、この変化の程度および/または色は、反応する材料のタイプおよび反応する材料の相対量に関係している。
【0026】
様々な適切なカップリング剤が当技術分野で公知であり、本明細書中の諸実施形態において使用することができる。例えば、適切なカップリング剤は、光塩基発生剤から発生した無色の塩基と反応して着色した拡張共役またはシッフ塩基化合物(Schiff base compound)を形成することができるカップリング剤であり、得られた拡張共役またはシッフ塩基化合物はその後、光酸発生剤から発生した酸と反応して、この反応を逆行させて無色画像を形成することができ、それにより着色画像が消去される。これらの反応を例示的に次のように示す。
【0027】
【化2】

【0028】
一般に、発生した塩基と反応するとかなり十分な色変化をもたらし、発生した酸と反応すると反応および色変化が可逆的となる任意のカップリング剤が適切である。例示的なカップリング剤には、アルデヒド類、ケトン類およびこれらの混合物が含まれる。例えば、アリールアルデヒド類、アルキルアルデヒド類、アリールアルキルアルデヒド類、1,2−キノン類、1,4−キノン類、環状ケトン類、ジアリールケトン類、アリールアルキルケトン類などが挙げられ、これらは電子求引官能基または電子供与官能基などのアルキルラジカルで任意選択に置換されていてもよい。例えば、使用することができる適切なアルデヒドには、アドキサール(adoxal)、アニスアルデヒド、サイマール(cymal)、エチルバニリン、フロルヒドラル(florhydral)、ヘリオナール、ヘリオトロピン、ヒドロキシシトロネラール、コアボン(koavone)、ラウリンアルデヒド、リラール、メチルノニルアセトアルデヒド、P.T.ブシナール(P.T.bucinal)、フェニルアセトアルデヒド、ウンデシレンアルデヒド、バニリン、2,6,10−トリメチル−9−ウンデセナール、3−ドデセン−1−アール、α−n−アミルシンナムアルデヒド、4−メトキシベンズアルデヒド、ベンズアルデヒド、3−(4−tertブチルフェニル)−プロパナール、2−メチル−3−(パラ−メトキシフェニルプロパナール、2−メチル−4−(2,6,6−トリメチル−2(1)−シクロヘキセン−1−イル)ブタナール、3−フェニル−2−プロペナール、シス−/トランス−3,7−ジメチル−2,6−オクタジエン−1−アール、3,7−ジメチル−6−オクテン−1−アール、[(3,7−ジメチル−6−オクテニル)オキシ]アセトアルデヒド、4−イソプロピルベンジルアルデヒド、1,2,3,4,5,6,7,8−オクタヒドロ−8,8−ジメチル−2−ナフトアルデヒド、2,4−ジメチル−3−シクロヘキセン−1−カルボキシアルデヒド、2−メチル−3−(イソプロピルフェニル)プロパナール、1−デカナール、デシルアルデヒド、2,6−ジメチル−5−ヘプテナール、4−(トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]−デシリデン−8)−ブタナール、オクタヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデンカルボキシアルデヒド、3−エトキシ4−ヒドロキシベンズアルデヒド、パラ−エチル−α,α−ジメチルヒドロシンナムアルデヒド、α−メチル−3,4−(メチレンジオキシ)−ヒドロシンナムアルデヒド、3,4−メチレンジオキシベンズアルデヒド、α−n−ヘキシルシンナムアルデヒド、m−シメン−7−カルボキシアルデヒド、α−メチルフェニルアセトアルデヒド、7−ヒドロキシ−3,7−ジメチルオクタナール、ウンデセナール、2,4,6−トリメチル−3−シクロヘキセン−1−カルボキシアルデヒド、4−(3)(4−メチル−3−ペンテニル)−3−シクロヘキセン−カルボキシアルデヒド、1−ドデカナール、2,4−ジメチルシクロヘキセン−3−カルボキシアルデヒド、4−(4−ヒドロキシ−4−メチルペンチル)−3−シクロヘキセン−1−カルボキシアルデヒド、7−メトキシ−3,7−ジメチルオクタン−1−アール、2−メチルウンデカナール、2−メチルデカナール、1−ノナナール、1−オクタナール、2,6,10−トリメチル−5,9−ウンデカジエナール、2−メチル−3−(4−tertブチル)プロパナール、ジヒドロシンナムアルデヒド、1−メチル−4−(4−メチル−3−ペンテニル)−3−シクロヘキセン−1−カルボキシアルデヒド、5または6メトキシ0ヘキサヒドロ4,7−メタノインダン−1または2−カルボキシアルデヒド、3,7−ジメチルオクタン−1−アール、1−ウンデカナール、10−ウンデセン−1−アール、4−ヒドロキシ−3−メトキシベンズアルデヒド、1−メチル−3−(4−メチルペンチル)−3−シクロヘキセンカルボキシアルデヒド、7−ヒドロキシ−3,7−ジメチル−オクタナール、トランス−4−デセナール、2,6−ノナジエナール、パラ−トリルアセトアルデヒド、4−メチルフェニルアセトアルデヒド、2−メチル−4−(2,6,6−トリメチル−1−シクロヘキセン−1−イル)−2−ブテナール、オルト−メトキシシンナムアルデヒド、3,5,6−トリメチル−3−シクロヘキセンカルボキシアルデヒド、3,7−ジメチル−2−メチレン−6−オクテナール、フェノキシアセトアルデヒド、5,9−ジメチル−4,8−デカジエナール、ペオニーアルデヒド(6,10−ジメチル−3−オキサ−5,9−ウンデカジエン−1−アール)、ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダン−1−カルボキシアルデヒド、2−メチルオクタナール、α−メチル−4−(1−メチルエチル)ベンゼンアセトアルデヒド、6,6−ジメチル−2−ノルピネン−2−プロピオンアルデヒド、パラメチルフェノキシアセトアルデヒド、2−メチル−3−フェニル−2−プロペン−1−アール、3,5,5−トリメチルヘキサナール、ヘキサヒドロ−8,8−ジメチル−2−ナフタアルデヒド、3−プロピル−ビシクロ[2.2.1]−ヘプト−5−エン−2−カルバルデヒド、9−デセナール、3−メチル−5−フェニル−1−ペンタナール、メチルノニルアセトアルデヒド、1−p−メンテン−q−カルボキシアルデヒド、シトラール、リリアル(lilial)、フロルヒドラル(florhydral)、メフロラル(mefloral)およびこれらの混合物が含まれる。他の例には、4−ニトロ−ベンズアルデヒド、2−ニトロ−ベンズアルデヒド、4−メトキシ−ベンズアルデヒド等の芳香族アルデヒド類が含まれる。
【0029】
脂肪族ケトン類、環状ケトン類、芳香族ケトン類等を含めた、使用することができる適切なケトン類には、ブコキシム(buccoxime)、イソジャスミン(iso jasmine)、メチルベータナフチルケトン、ムスクインダノン(musk indanone)、トナリド(tonalid)/ムスク付加物、α−ダマスコン、β−ダマスコン、δ−ダマスコン、イソ−ダマスコン、ダマセノン、ダマロース(Damarose)、ジヒドロジャスモン酸メチル、メントン、カルボン、カンファー(Camphor)、フェンコン、α−イオノン、β−イオノン、γ−メチルいわゆるイオノン、フロウラモン(Fleuramone)、ジヒドロジャスモン、シス−ジャスモン、イソ−E−スーパー(Iso−E−Super)、メチル−セドレニル−ケトンまたはメチル−セドリロン(Methyl−Cedrylone)、アセトフェノン、メチル−アセトフェノン、パラ−メトキシ−アセトフェノン、メチル−β−ナフチル−ケトン、ベンジル−アセトン、ベンゾフェノン、パラ−ヒドロキシ−フェニル−ブタノン、セロリーケトンまたはライブスコーン(Livescone)、6−イソプロピルデカヒドロ−2−ナフトン、ジメチル−オクテノン、フレスコメンテ(Freskomenthe)、4−(1−エトキシビニル)−3,3,5,5,−テトラメチル−シクロヘキサノン、メチル−ヘプテノン、2−(2−(4−メチル−3−シクロヘキセン−1−イル)プロピル)−シクロペンタノン、1−(p−メンテン−6(2)−イル)−1−プロパノン、4−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−2−ブタノン、2−アセチル−3,3−ジメチル−ノルボルナン、6,7−ジヒドロ−1,1,2,3,3−ペンタメチル−4(5H)−インダノン、4−ダマスコール、ダルシニル(Dulcinyl)またはカシオン(Cassione)、ゲルソン(Gelsone)、ヘキサロン(Hexalon)、イソシクレモン E(Isocyclemone E)、メチルシクロシトロン、メチル−ラベンダー−ケトン、オリボン(Orivon)、パラ−第3ブチル−シクロヘキサノン、ベルドン(Verdone)、デルフォン(Delphone)、ムスコン、ネオブテノン(Neobutenone)、プリカトン(Plicatone)、ベロウトン(Veloutone)、2,4,4,7−テトラメチル−オクト−6−エン−3−オン、テトラメラン(Tetrameran)、へディオン(hedione)、1,4−ベンゾキノンおよび2−クロル−1,4−ベンゾキノンのような置換誘導体、1,2−ベンゾキノンおよびその置換誘導体、ベンゾフェノン誘導体のようなジアリール−ケトン類、任意選択で電子求引官能基または電子供与官能基を有する、アセトフェノンのようなアルキル−アリールケトン類および誘導体、およびこれらの混合物が含まれる。他の適切な芳香族ケトン類には、アセトフェノン、エチルフェニルケトンおよびジフェニルケトン、ベンゾフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、ジメトキシアセトフェノン、キサントン、チオキサントン、p−メチルアセトフェノン、プロピオフェノン、1−フェニル−1−ブタノン、イソプロピルフェニルケトン、ベンズアルデヒド、o−ヒドロキシベンズアルデヒド、m−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、ベンジルメチルケトン、それらの誘導体、ならびにこれらの混合物が含まれる。シクロブタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、ヘプタノン、メチルシクロヘキサノン、シクロオクタノン、シクロノナノン、シクロデカノン、シクロウンデカノン、シクロドデカノン、シクロトリデカノンなどの環状ケトン類もまた、使用に適していることがある。
【0030】
塩基とカップリング剤との間の反応における副生成物として水が発生するため、この形成された水を除去するために画像化印刷基材に熱を加えることができる。
【0031】
カップリング剤またはカップリング剤の混合物を適切に選択することにより、画像形成媒体で任意の色を生成することが可能であることが理解されよう。例えば、適切なカップリング剤を選択して、イエローからレッドに、ブルーに、シアンに、パープルに及ぶ色を提供することができる。さらに、2種以上のカップリング剤の組合せを使用して、幅広い色を提供することができる。例えば、シアン、マゼンタおよびイエローの色を提供する着色剤の組合せを選択することによって、ブラックまたはフルカラー画像を提供することができる。
【0032】
任意の適切な光酸発生剤を使用することができ、この光酸発生剤は、紫外線などの活性化エネルギにさらされると酸を発生させる前駆体である。諸実施形態において、この光酸発生剤は、紫外線にさらされると水素イオンを生成する。
【0033】
マイクロエレクトロニクス産業におけるフォトレジストエッチング用や、光開始カチオン重合反応用の触媒としてなど、様々な適切な光酸発生剤が当技術分野で公知であり、本明細書中の諸実施形態において使用することができる。例示的な一般的クラスの光酸発生剤には、イオン性光酸発生剤ならびに非イオン性光酸発生剤が含まれる。より具体的には、例示的な光酸発生剤には、アリールジアゾニウム塩類、ジアリールハロニウム塩類、トリアリールスルホン酸塩類、アリールスルホニウム塩類、アリールヨードニウム塩類、ニトロベンジルエステル類などのニトロベンジル化合物、スルホニルアセトフェノン類などのアセトフェノン誘導体化合物、スルホン類、リン酸塩、ジアゾメタン化合物、オニウム塩化合物、スルホンイミド化合物、ジスルホン化合物、スルホン酸誘導体化合物、トシル酸ベンゾイン化合物、鉄アレーン錯体、ハロゲン含有トリアジン化合物、シアン含有オキシムスルホン酸塩化合物等が含まれる。
【0034】
ほんの一例であるが、具体的な適切な光酸発生剤には、塩化ジフェニルヨードニウム、トリフルオロメタンスルホン酸ジフェニルヨードニウム、メシル酸ジフェニルヨードニウム、トシル酸フェニルヨードニウム、臭化ジフェニルヨードニウム、テトラフルオロホウ酸ジフェニルヨードニウム、ヘキサフルオロアンチモン酸ジフェニルヨードニウム、ヘキサフルオロヒ酸ジフェニルヨードニウム、ヘキサフルオロリン酸ビス(p−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム、メシル酸ビス(p−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム、トシル酸ビス(p−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム、トリフルオロメタンスルホン酸ビス(p−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム、テトラフルオロホウ酸ビス(p−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム、塩化ビス(p−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム、塩化ビス(p−クロロフェニル)ヨードニウム、テトラフルオロホウ酸ビス(p−クロロフェニル)ヨードニウム、塩化トリフェニルスルホニウム、臭化トリフェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸トリフェニルスルホニウム、テトラフルオロホウ酸トリ(p−メトキシフェニル)スルホニウム、ヘキサフルオロホスホン酸トリ(p−メトキシフェニル)スルホニウム、テトラフルオロホウ酸トリ(p−エトキシフェニル)スルホニウム、塩化トリフェニルホスホニウム、臭化トリフェニルホスホニウム、テトラフルオロホウ酸トリ(p−メトキシフェニル)ホスホニウム、ヘキサフルオロホスホン酸トリ(p−メトキシフェニル)ホスホニウム、テトラフルオロホウ酸トリ(p−エトキシフェニル)ホスホニウム等が含まれる。これらの化合物は一般に、紫外線などの活性エネルギビームが照射されることによって、水素イオンなどの酸を発生させる。
【0035】
加えて、光塩基発生剤と同様に、光酸発生剤の活性エネルギビームの光増感波長域を広げるために、光酸発生剤と組み合わせて適切な光増感剤を任意選択で使用することができる。様々な光増感剤が当技術分野で周知であり、また諸実施形態で使用することができる。これらの光増感剤の例には、ベンゾフェノン等が含まれる。しかしながら、諸実施形態において、画像化材料の偶発的な活性化の防止の助けになるよう活性エネルギビームの波長域を狭くするために、光増感剤を望ましくは省く。
【0036】
光塩基発生剤、カップリング剤および光酸発生剤は通常、本開示の画像形成組成物中に少量存在すると効果的であるが、それらの含有量は特に限定されない。例えば、諸実施形態において、光塩基発生剤、カップリング剤および光酸発生剤は各々、組成物の乾燥総重量(すなわち、組成物を塗布するために使用する揮発性溶媒はいずれも除く)の、約0.5重量%〜約10重量%または約0.8重量%〜約8重量%など、約0.01重量%〜約20重量%の量で一般に存在する。例えば、変色反応が時間をかけて不可逆的に反応体の一部を消費するように材料を選択する場合には、画像形成組成物はそれぞれの材料をより多量に、またはより高濃度で含むことができるが、変色反応が時間をかけても不可逆的に反応体の一部を消費することのないように材料を選択する諸実施形態においては、画像形成組成物はそれぞれの材料をより少量またはより低濃度で含むことができる。
【0037】
これらの画像形成材料(光塩基発生剤、カップリング剤および光酸発生剤)を、溶媒、ポリマ結合剤、マイクロカプセル、液晶材料、マトリクス材料など任意のキャリアに分散させることができる。適切な溶媒には、例えば、炭素数が約1〜約30の直鎖または分岐鎖脂肪族炭化水素など、直鎖脂肪族炭化水素、分岐鎖脂肪族炭化水素等が含まれる。例えば、ISOPAR(商標)シリーズ(Exxon Corporation製)の非極性液体を、溶媒として使用することができる。これらの炭化水素液は、狭い一部分のイソパラフィン系炭化水素画分であると考えられている。例えば、ISOPAR G(商標)の沸点範囲は約157℃〜約176℃、ISOPAR H(商標)の沸点範囲は約176℃〜約191℃、ISOPAR K(商標)の沸点範囲は約177℃〜約197℃、ISOPAR L(商標)の沸点範囲は約188℃〜約206℃、ISOPAR M(商標)の沸点範囲は約207℃〜約254℃、ISOPAR V(商標)の沸点範囲は約254.4℃〜約329.4℃である。他の適切な溶媒材料には、例えば、Exxon Corporationから入手可能なn−パラフィン類の組成物であるNORPAR(商標)シリーズの液体、Phillips Petroleum Companyから入手可能であるSOLTROL(商標)シリーズの液体、およびShell Oil Companyから入手可能であるSHELLSOL(商標)シリーズの液体が含まれる。1種または複数の溶媒の混合物、すなわち、溶媒系を必要に応じて使用することもできる。加えて、より極性の高い溶媒を必要に応じて使用することもできる。使用することができるより極性の高い溶媒の例には、テトラヒドロフラン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、ジクロロメタン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、トルエン、キシレン類、アセトン、メタノール、エタノール、キシレン類、ベンゼン、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド、シクロヘキサノン、N−メチルアセトアミドなどのハロゲン化溶媒および非ハロゲン化溶媒が含まれる。溶媒は、1種、2種、3種またはそれ以上の異なる溶媒で構成することができる。2種以上の異なる溶媒が存在する場合、各溶媒は、すべての溶媒の重量に基づき、例えば、約5%〜90%、特に約30%〜約50%の量で、同じ量または異なる量存在することができる。
【0038】
有機ポリマまたは水性ポリマに分散可能な組成物は共に、使用する成分に応じて使用することができる。例えば、水性の組成物にはポリビニルアルコールが適切な適用溶媒であり、有機可溶性組成物にはポリメチルメタクリレートが適している。
【0039】
ポリマ結合剤の適切な例には、ポリメチルメタクリレート(PMMA)のようなポリアルキルアクリレート類、ポリカーボネート類、ポリエチレン類、酸化ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリスチレン類、ポリ(スチレン)−co−(エチレン)、ポリスルホン類、ポリエーテルスルホン類、ポリアリールスルホン類、ポリアリールエーテル類、ポリオレフィン類、ポリアクリレート類、ポリビニル誘導体、セルロース誘導体、ポリウレタン類、ポリアミド類、ポリイミド類、ポリエステル類、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸等が含まれるが、これらに限定されない。ポリスチレン−アクリロニトリル、ポリエチレン−アクリレート、塩化ビニリデン−塩化ビニル、酢酸ビニル−塩化ビニリデン、スチレン−アルキド樹脂、ポリ(メタクリル酸)、ポリ[1−2−(ヒドロキシエチル)アジリジン0]、ポリ(N−ヒドロキシエチル)エチレンイミン、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(N−アセチル)エチレンイミン、ポリ(アクリルアミド)、ポリアリルアミン、ポリ(スチレンスルホン酸ナトリウム)などの共重合体材料も、適切な結合剤材料の例である。これらの共重合体は、ブロック共重合体であっても、ランダム共重合体であっても、交互共重合体であってもよい。一部の諸実施形態では、ポリメチルメタクリレートまたはポリスチレンが、コストおよび広い利用可能性の点でポリマ結合剤となる。
【0040】
諸実施形態において、画像化組成物をある形で適用し、使用するために別の形に乾燥させることができる。したがって、例えば、光塩基発生剤、カップリング剤、光酸発生剤を含む画像化組成物と、ポリマ粒子とを、基材に塗布する、または基材に含浸させるために溶媒に溶解させる、または分散させることができ、この溶媒を後に蒸発させて乾燥層を形成する。
【0041】
一般に、画像化組成物は、約30〜約70重量パーセントのキャリアなど約5〜約99.5重量パーセントのキャリアと、約0.1〜約5重量パーセントの画像化材料など約0.05〜約50重量%の画像化材料と、など、適切な量でキャリアおよび画像化材料を含むことができる。
【0042】
画像形成媒体基材に画像化層を適用するために、画像形成層組成物を任意の適切なやり方で塗布することができる。例えば、画像形成層組成物を任意の適切な溶媒またはポリマ結合剤と混合塗布し、後に硬化または乾燥させて所望の層を形成する。さらに、この画像形成層組成物を、別個の異なる層として支持基材に適用する、あるいは支持基材に含浸させるように塗布することができる。
【0043】
画像形成媒体は、少なくとも一方の面に画像化層がコーティングまたは含浸された支持基材を含むことができる。要望に応じて、基材のいずれか一方の面のみに、または両方の面に画像化層をコーティングまたは含浸することができる。画像化層の両方の面にコーティングまたは含浸する場合、あるいは画像のより高い可視性が望まれる場合、支持基材と画像化層(1つまたは複数)との間、またはコーティングした画像化層とは反対の支持基材面に不透明な層を含めることができる。したがって、例えば、片面の画像形成媒体が望まれる場合、画像形成媒体は、一方の面に画像化層をコーティングまたは含浸し、他方の面に例えば白色層など不透明な層をコーティングした支持基材を含むことができる。また、画像形成媒体は、一方の面に画像化層がコーティングまたは含浸され、画像化層との間に不透明な層を有する支持基材を含むことができる。両面の画像形成媒体が望まれる場合、画像形成媒体は、両面に画像化層がコーティングまたは含浸され、コーティングされた2つの画像化層間に少なくとも1つの不透明な層が挿入された支持基材を含むことができる。もちろん、必要に応じて、従来の紙など不透明な支持基材を、別個の支持基材および不透明な層の代わりに使用することもできる。
【0044】
任意の適切な支持基材を使用することができる。例えば、支持基材の適切な例には、ガラス、セラミックス、木、プラスチック、紙、繊維、織物製品、ポリマ膜、金属などの無機基材等が含まれるが、これらに限定されない。プラスチックは、例えば、ポリエチレン膜、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホンなどのプラスチック膜でよい。紙は、例えば、XEROX(登録商標)4024用紙などの普通紙、罫線入りノート用紙、ボンド紙、Sharp Companyのシリカコート紙などコート紙、Jujo紙等でよい。基材は単層、または各層が同一もしくは異なる材料である多層であってよい。諸実施形態において、基材は、例えば、約0.3mm〜約5mmの範囲の厚さを有するが、必要に応じて、これ以上またはこれ以下の厚さも使用することができる。
【0045】
画像形成媒体において不透明な層を使用する場合、任意の適切な材料を使用することができる。例えば、白い紙のような外観が望まれる場合、二酸化チタン、または酸化亜鉛、無機炭酸塩等のような他の適切な材料の薄いコーティングにより不透明な層を形成することができる。不透明な層は、例えば、約0.1mm〜約5mmなど約0.01mm〜約10mmの厚さを有することができるが、他の厚さを使用することもできる。
【0046】
必要に応じて、塗布された画像化層の上にさらなるオーバーコーティング層を塗布することもできる。例えば、さらなるオーバーコーティング層を塗布して、基材の上の定位置で下層をさらに接着させる、耐摩耗性を提供する、外観および感触を改善すること等ができる。オーバーコーティング層は基材材料と同一であっても異なっていてもよいが、諸実施形態において、オーバーコーティング層および基材層の少なくとも一方は、形成された画像の可視化を可能にするために透明である。オーバーコーティング層は、例えば、約0.1mm〜約5mmなど約0.01mm〜約10mmの厚さを有することができるが、他の厚さも使用できる。しかしながら、諸実施形態において、画像化工程時に形成される水の容易な蒸発を画像化後の加熱工程において可能にするためには、オーバーコーティング層を使用しない。
【0047】
画像化材料を基材上にコーティングする、または基材に含浸させる諸実施形態では、当技術分野において利用可能な任意の適切な方法によってコーティングを行うことができ、コーティング方法は特に限定されない。例えば、画像化材料組成物の溶液に基材をディップコーティングし、その後、任意の必要な乾燥を行うことによって画像化材料を基材上にコーティングする、または基材に含浸させることも、あるいは基材を画像化組成物でコーティングしてその層を形成することもできる。同様に、類似の方法によって保護コーティングを適用することもできる。
【0048】
その方法の態様において、本開示は、基材と、光塩基発生剤、カップリング剤および光酸発生剤を含む画像化層とで構成される画像形成媒体を提供することを含み、この組成物は基材上への、または基材内へのドライコーティングとしてポリマに分散させることができる。別個の書込みおよび消去プロセスを提供するために、光塩基発生剤および光酸発生剤が紫外線または他の照射源に敏感であるが、望ましくはこれら別々の材料が、異なる波長、異なるエネルギ強度など異なる照射特性で敏感である。したがって、例えば、画像化層全体は、光酸発生剤に影響を与えることなく光塩基発生剤に後の反応のための塩基を発生させる第1の紫外線で敏感になることができ、一方、光塩基発生剤に影響を与えることなく光酸発生剤に後の反応のための酸を発生させる第2の異なる紫外線で敏感になることができる。
【0049】
例えば、一実施形態において、少なくとも約10nm、少なくとも約20nm、少なくとも約30nm、少なくとも約40nmまたは少なくとも約50nm分離された波長など、異なる波長で紫外線に敏感となるように光塩基発生剤および光酸発生剤を選択する。したがって、例えば、光塩基発生剤が約360nmの波長で敏感となる場合には、光酸発生剤は望ましくは約350nm未満または約370nmを超える波長で敏感となる。もちろん、増感波長の相対的な分離は、例えば、露光装置の比較的狭い波長に依存することがある。したがって、第1の波長またはパラメータの画像化紫外線により、光塩基発生剤がアミンなどの塩基を発生させ、この塩基はその後、アルデヒドなどのカップリング剤と反応して、着色画像を形成する拡張共役着色化合物を生成する。同様に、第2の波長またはパラメータの画像化紫外線により、光酸発生剤が酸を発生させ、この酸はその後、拡張共役着色化合物と反応して着色画像を消去する。
【0050】
書込みプロセスでは、発光ダイオード(LED)などの紫外線源や可視光源など、適切な活性化波長の画像化光に、画像形成媒体を像様にさらす。画像化光は光塩基発生剤に十分なエネルギを供給して、光塩基発生剤にアミンなどの塩基を発生させ、この塩基はその後、アルデヒドなどのカップリング剤と反応して画像化位置に着色像を生成する。画像形成媒体の特定の位置に照射されるエネルギの量は、その位置で生成される色の強度または濃さに影響を与えることができる。したがって、例えば、この位置により少ない量のエネルギを与え、したがってより少ない量の塩基を発生させることによって、より弱い強度の画像を形成することができ、この位置により多くの量のエネルギを与え、したがってより多くの量の塩基を発生させることによって、より強い強度の画像を形成することができる。ブラック画像または他の着色画像を提供するための適切なカップリング剤を選択すると、画像形成媒体の特定の位置に照射されるエネルギの量の変化により階調画像の形成が可能となることがあるが、他の適切なカップリング剤を選択するとフルカラー画像の形成が可能となることがある。
【0051】
一時的な画像を形成し、その一時的な画像を消去するために使用する別々の画像化光は、例えば単一波長または波長帯域など、任意の適切な所定の波長範囲を有することができる。様々な例示的な諸実施形態において、これらの画像化光は、約365nmの単一波長や約360nm〜約370nmの波長帯域など、約200nm〜約475nmの紫外線波長域から選択される単一波長または狭い波長帯域を有する紫外線(UV)である。画像を形成するために、また画像を消去するために、画像形成媒体をそれぞれ画像化光および消去光に約10ミリ秒〜約5分、特に約30ミリ秒〜約1分の範囲の時間さらすことができる。画像化光および消去光は、約0.1mW/cm〜約100mW/cm、特に約0.5mW/cm〜約10mW/cmの範囲の強度を有することができる。必要に応じて、または有用である場合には、所望の変色反応を助けるために、画像化プロセス前にまたは画像化プロセス時に印刷媒体を加熱することができる。
【0052】
様々な例示的な諸実施形態では、例えばコンピュータまたは発光ダイオード(LED)アレイスクリーンによって、所定の画像に対応する画像化光を発生させることができ、画像形成媒体をLEDスクリーン上にまたはLEDスクリーンに近接させて所望の期間置くことによって、画像形成媒体上に画像を形成する。他の例示的な諸実施形態では、紫外線ラスタ出力スキャナ(ROS:Raster Output Scanner)を使用して、像様パターンに紫外線を発生させることができる。この実施形態は、例えば、別の従来のやり方で印刷画像を生成するためにコンピュータで駆動することができるプリンタ装置に特に適用可能である。すなわち、このプリンタは一般に、インク滴を像様に噴出するインクジェットプリントヘッドを、画像形成媒体を像様に露光する適切な紫外線プリントヘッドに置き換えることができること以外は、従来のインクジェットプリンタに対応することができる。この実施形態では、紫外線源を用いて書込みを行うので、インクカートリッジの交換は不要となる。使用することができる他の適切な画像化技法には、マスクを通して画像形成媒体に紫外線を照射すること、ライトペンを用いるなどによって画像形成媒体にピンポイント紫外線源を像様に照射すること等が含まれるが、これらに限定されない。
【0053】
画像化基材を再利用するために画像を消去するには、様々な例示的な諸実施形態において、基材を適切な画像化光にさらして画像を消去することができる。基材全体を瞬時に消去光にさらす、基材を走査するなどによって連続的に基材全体を消去光にさらすなど、任意の適切なやり方でこのような消去を行うことができる。他の諸実施形態では、ライトペンを用いるなどによって、基材上の特定の点で消去を行うことができる。
【0054】
塩基とカップリング剤との間の反応における副生成物として水が生成されるため、画像化後の加熱工程を画像化印刷基材に適用することができる。この加熱工程を採用して、生成された水の一部またはすべてを蒸発させる、または追い出すことができる。残留水により逆反応が起こることがあるため、望ましくは画像化印刷基材から水を蒸発させる。このような加熱工程は、輻射ヒータや加熱加圧ローラなど任意の適切な加熱装置を用いて任意の適切なやり方で行うことができ、約100℃、約110℃または約120℃〜約150℃、約175℃または約200℃など、約100℃〜約300℃以上の温度まで画像化印刷基材を加熱する。この加熱は、任意の適切な所望の時間行うことができ、約50ミリ秒〜約10秒の加熱時間で通常十分である。
【0055】
様々な例示的な諸実施形態によれば、観測者に対して画像を可視化する色コントラストとは、例えば、2つ、3つまたはそれ以上の異なる色の間のコントラストでよい。用語「色」は、色相、明度、彩度など複数の態様を包含することができ、2つの色が少なくとも1つの態様で異なる場合には、一方の色は他方の色とは異なることがある。例えば、色相および彩度は同じであるが明度が異なる2つの色は、異なる色とみなされるはずである。画像がユーザの肉眼で見える限り、例えば、レッド、ホワイト、ブラック、グレー、イエロー、シアン、マゼンタ、ブルー、パープルなど任意の適切な色を使用して色コントラストを生成することができる。しかしながら、望ましい最大色コントラストの点では、所望の色コントラストは、白い背景にグレー、ダークグレーまたはブラックの画像、明るいグレーの背景にグレー、ダークグレーまたはブラックの画像など、明るいまたは白い背景にダークグレーまたはブラックの画像である。
【0056】
様々な例示的な諸実施形態において、色コントラストは、例えば可視時間中に減少するなど、変化することがあるが、語句「色コントラスト」は、可視時間中に変化するのか一定であるのかにかかわらず、画像をユーザに対して識別可能にするのに十分な任意の程度の色コントラストを包含することができる。
【0057】
さらに他の諸実施形態では、紫外線露光を使用せずに画像化基材への書込みプロセスを行うことができる。例えば、ペンなど、アミンなどの塩基性物質を含有する筆記用具を使用する場合、この筆記用具を使用して塩基性物質を直接、画像化基材に塗布することができる。塩基性物質を直接塗布することによって、塗布した塩基性物質がカップリング剤と反応して着色画像を提供することができる。同様に、紫外線露光を使用せずに基材上の画像の消去を行うことができる。例えば、ペンなど、酸性物質を含有する筆記用具を使用する場合、この筆記用具を使用して酸性物質を直接、画像化基材に塗布することができる。酸性物質を直接塗布することによって、塗布した酸性物質が既存の拡張共役材料と反応して画像形成反応を逆行させ、したがって着色画像を消去することができる。これらの諸実施形態では、光塩基発生剤と光酸発生剤とを両方、またはいずれか一方含む、あるいはどちらも含まない画像化基材を提供することができ、塗布した塩基性または酸性物質のみを利用して書込みおよび/または消去を行うことができる。
【実施例】
【0058】
<実施例1:白い背景にシアン画像>
紙基材上に画像化組成物をコーティングすることによって画像形成媒体を作製する。この画像化組成物は、溶媒としてのテトラヒドロフランに溶解させたポリメチルメタクリレートを含む溶液中に、カップリング剤としての2−クロロ−1,4−ベンゾキノン、光塩基発生剤としてのO−アシルオキシム、および光酸発生剤としての2−ニトロベンジルエステルを混合することによって形成される。Xerox4024白色用紙を、ギャップが5ミルであるブレードを用いることによって、この溶液でコーティングする。この用紙を室内条件で乾燥させる、または、より速く蒸発させるために約50℃で加熱する。このコーティング層中の成分は、第1の紫外線露光を受け反応して、次のように着色画像を形成する。
【0059】
【化3】

【0060】
コーティング層中の成分は、第2の紫外線露光を受け反応して、拡張共役化合物(3)を形成する反応を逆行させることによって、形成された画像を消去する。
【0061】
最初は、この用紙は白色である(シッフ塩基は存在しない)。波長365nmの紫外線にさらすことにより、アミンが生成する。紫外線は紫外線LED印字バーにより生成される。この紫外線露光によりアミン(1)が生成し、このアミンがカップリング剤(2)と反応して、シアン着色に関与するシッフ塩基化合物(3)を生成する。印刷画像は、用紙の環境暴露に対して安定である。一方、波長254nmなど異なる紫外線にさらすことにより酸が生成し、この酸がシッフ塩基化合物(3)と反応して、シアン着色の消去に関与する別々の光塩基発生剤およびカップリング剤を再生する。消去画像もまた、用紙の環境暴露に対して安定である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材上にコーティングした、または前記基材に含浸させた画像化層であって、光塩基発生剤と、カップリング剤と、光酸発生剤とを含む画像化層と、
を含み、
第1の波長の光を前記画像化層に照射することにより前記光塩基発生剤が塩基を発生させ、この塩基が前記カップリング剤と反応して、画像を形成する拡張共役を生成し、第2の波長の光を前記画像化層に照射することにより前記光酸発生剤が酸を発生させ、この酸が前記拡張共役と反応して前記拡張共役の形成を逆行させて前記画像を消去することを特徴とする画像形成媒体。
【請求項2】
画像形成媒体を作製する方法であって、
基材に画像化層組成物を塗布する工程を含み、
前記画像化層組成物が、光塩基発生剤と、カップリング剤と、光酸発生剤と、を含み、
第1の波長の光を前記画像化層に照射することにより前記光塩基発生剤が塩基を発生させ、この塩基が前記カップリング剤と反応して、画像を形成する拡張共役を生成し、第2の波長の光を前記画像化層に照射することにより前記光酸発生剤が酸を発生させ、この酸が前記拡張共役と反応して前記拡張共役の形成を逆行させて前記画像を消去することを特徴とする画像形成媒体の作製方法。
【請求項3】
画像を形成する方法であって、
基材と、
前記基材上にコーティングした、または前記基材に含浸させた画像化層であって、光塩基発生剤と、カップリング剤と、光酸発生剤とを含む画像化層と、
を含む画像形成媒体を設ける工程と、
前記画像形成媒体を第1の波長の紫外線照射に像様にさらす工程と、
を含み、
前記紫外線照射により前記光塩基発生剤が塩基を発生させ、この塩基が前記カップリング剤と反応して画像を形成する拡張共役を生成することを特徴とする画像形成方法。

【公開番号】特開2008−310320(P2008−310320A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−153941(P2008−153941)
【出願日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】