説明

画像形成媒体、画像形成媒体を製造する方法及び画像を形成する方法

【課題】本発明の目的は、インクジェット印刷ユーザにとって顕著な改良となるインクカートリッジ交換コスト低減を可能とする画像形成媒体を提供することにある。
【解決手段】本発明の画像形成媒体は、基材と、前記基材上に被覆、または基材に含浸された画像形成層とから成る画像形成媒体において、画像形成層が、光塩基発生剤と、酸−塩基指示薬とを含み、画像形成層を露光すると、前記光塩基発生剤が、前記酸−塩基指示薬と反応する塩基を生成し、画像が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、紙にインクレス印刷を行うための基材、方法、および装置に関する。特に、実施の形態において、本開示は、UV光で画像形成し得る組成物を利用するインクレス印刷用紙のようなインクレス印刷基材に関する。そのような組成物は、光塩基発生剤と酸−塩基指示薬とから成り、ポリマ中に分散され、基材上に乾燥被覆物として被覆、または基材に含浸し得る。画像形成UV光の作用で、光塩基発生剤は、アミンのような塩基を生成し、塩基は、次いで、酸−塩基指示薬と反応し、着色画像が形成される。他の実施の形態は、インクレス印刷基材を使用するインクレス印刷方法、およびそのような印刷を行うための装置とシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット印刷は、マーケットの面でもプロセスの面でも十分に確立した技術である。画像は、基材の上にインク滴を画像通りに噴出することによって形成される。インクジェットプリンタは、家庭とビジネスの両環境中で、特に、家庭環境でインクジェットプリンタの低コスト故に広く使用されている。インクジェットプリンタは、一般に、高品質の画像を、白黒のテキストから写真画像の範囲まで、広範囲の基材、例えば、標準オフィス紙や透明OHP用紙や写真用紙などの上に作成することが可能である。
【0003】
【特許文献1】米国特許第3,961,948号明細書
【特許文献2】米国特許第7,205,088号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、低プリンタコストにもかかわらず、インクジェットカートリッジの交換コストは高く、時にはプリンタ自体のコストより高くなることもあり得る。これらのカートリッジは頻繁に交換しなければならないので、インクカートリッジの交換コストは、インクジェット印刷に関して消費者が不満とする大きな問題である。従って、インクカートリッジ交換コスト低減は、インクジェット印刷ユーザにとって顕著な改良となる。
【0005】
本開示は、UV光で画像形成し得る組成物を利用する画像形成媒体を提供することで、これらおよび他のニーズに対処するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示における組成物は、光塩基発生剤と酸−塩基指示薬とから成り、ポリマ中に分散され、基材上に乾燥被覆物として被覆、または基材に含浸し得る。画像形成UV光の作用で、光塩基発生剤は、アミンのような塩基を生成し、塩基は、次いで、酸−塩基指示薬と反応し、着色画像が形成される。本開示は、他の実施の形態において、インクレス印刷基材を使用するインクレス印刷方法、およびそのような印刷を行うための装置とシステムに関する。
【0007】
従って、本開示は、インクまたはトナーを使用せずに画像を印刷するための印刷媒体、方法、およびプリンタシステムを提供する。前記印刷紙媒体は、特殊な画像形成可能組成物を有し、UV光を使用して印刷される。従って、前記印刷紙媒体を使用すれば、インクまたはトナーの交換を必要とせず、その代わりにLEDのようなUV光源を使用して前記紙に画像を生成するプリンタを使用して画像形成を行うことが可能である。
【0008】
実施の形態の一つでは、本開示は、基材と、前記基材上に被覆、または基材に含浸された画像形成層とから成る画像形成媒体を提供する。前記画像形成層は、光塩基発生剤と、酸−塩基指示薬とを含む。画像形成層を露光すると、前記光塩基発生剤が、前記酸−塩基指示薬と反応する塩基を生成し、画像が形成される。
【0009】
実施の形態の別の一つでは、本開示は、基材に画像形成層組成物を適用するステップを含む画像形成媒体を製造する方法を提供する。本方法では、前記画像形成層組成物は、光塩基発生剤と、酸−塩基指示薬とを含む。画像形成層組成物を露光すると、前記光塩基発生剤が、前記酸−塩基指示薬と反応する塩基を生成し、画像が形成される。
【0010】
別の一つの態様では、本開示は、遷移する画像を形成する方法を提供する。本方法は、基材と、前記基材上に被覆、または基材に含浸された画像形成層とから成る画像形成媒体を提供するステップと、画像通りに前記画像形成層をUV照射して露光するステップとから成る。本方法では、前記画像形成層は、光塩基発生剤と酸−塩基指示薬とを含み、前記UV照射によって、前記光塩基発生剤が酸−塩基指示薬と反応する塩基を生成し、画像が形成される。
【0011】
本発明の画像形成は、例えば、上記画像形成媒体と、画像通りに画像形成媒体に印刷するUV照射源を備えるプリンタとを備える画像形成システムを使用して行い得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
一般に、多岐にわたる例示の実施の形態において、UV光で画像形成し得る組成物を利用して作製されるインクレス印刷用紙または画像形成媒体が提供される。そのような組成物は、光塩基発生剤と酸−塩基指示薬とを含み、ポリマ中に分散され、基材上に乾燥被覆物として被覆、または基材に含浸し得る。画像形成UV光の作用で、光塩基発生剤は、アミンのような塩基を生成し、塩基は、次いで、酸−塩基指示薬と反応し、着色画像が形成される。従って、前記組成物は、画像形成媒体中で透明状態と着色状態の間で遷移する動きを呈する。着色状態とは、実施の形態では、例えば、可視波長が存在することを称し、同様に、無色状態とは、例えば、可視波長が完全に、または実質的に存在しないことを称する。
【0013】
実施の形態では、画像形成媒体は、一般に、好適な基材の上に被覆、またはその基材に含浸された画像形成層、あるいは第一と第二の基材(すなわち、基材自体と上塗り層)の間にサンドイッチ構造にされた画像形成層を備える。
【0014】
画像形成層は、紫外光線のような活性化エネルギーに曝されるとき、第一の透明状態から第二の着色状態にスイッチするどのような好適な材料も含み得る。実施の形態における着色状態変化は、可逆とし得るので、従って画像は「消去」され、画像形成媒体は、多様な手段で、例えば、画像形成反応を逆転する温度に組成物を加熱することによって、ブランクの状態に戻され、従って前記材料を元の透明の状態に戻すことが可能である。
【0015】
実施の形態では、画像形成層を形成するため、どのような好適な組成物も使用し得る。例えば、画像形成層は、光塩基発生剤と酸−塩基指示薬とを含み、ポリマ中に分散し、基材上に乾燥被覆物として被覆、または基材に含浸し得る。この組成物では、画像形成UV光の作用で、光塩基発生剤は、アミンのような塩基を生成し、塩基は、次いで、酸−塩基指示薬と反応し、着色画像が形成される。活性な画像形成剤は、画像形成層を形成するのに好適などのような媒体にも分散し得る。例えば、溶媒、溶液、ポリマ結着剤などに分散し得る。例えば、ポリマ結着剤のようなキャリアと化学的に結合し得る。例えば、マイクロカプセル化される材料の形で提供し得る。例えば、画像形成組成物を保持するために閉マトリックスに内包し得る。実施の形態では、画像形成反応は可逆にし得る。もっとも、光塩基発生剤と酸−塩基指示薬との多くの組み合わせでは、反応すると、永久的画像が形成される。
【0016】
どのような好適な光塩基発生剤も使用し得る。この場合、光塩基発生剤は、UV光のような活性化エネルギーに曝されると、アミンのような塩基を生成する前駆体である。実施の形態では、前記光塩基発生剤は、UV光に曝されると、アミンを生成する。この場合、アミンはpH>7を有する塩基化合物である。
【0017】
多岐にわたる好適な光塩基発生剤が技術的に既知であり、本明細書に記載の実施の形態に使用し得る。光塩基発生剤の例としては、o−アシルオキシム、ベンゾイルオキシカルボニル誘導体、ベンゾイルカルバメートやベンゾインカルバメートのような光活性のカルバメート、o−カルバモイルオキシムのようなオキシムエステル化合物、第4級アンモニウムテトラフェニルホウ酸塩のようなアンモニウム化合物、ベンゾイン化合物、ジメトキシベンジルウレタン化合物、オルソニトロベンジルウレタン化合物、芳香族系スルホンアミド、α−ラクタム、N−(2−アリールエテニル)アミド、これらの混合物などが挙げられる。これらの化合物は、一般に、UV光のような活性化エネルギービームで照射されると、塩基としてアミンを生成する。しかし、光の作用によってアンモニアまたはヒドロキシイオンを生成させる光塩基発生剤も使用し得る。これらは、例えば、N−置換4−(o−ニトロフェニル)ジヒドロキシピリジン、N−(2−ニトロベンジルオキシカルボニル)ピペリジン、1、3−ビス(N−(2−ニトロベンジルオキシカルボニル)−4−ピペリジル)プロパン、N、N’−ビス(2−ニトロベンジルオキシカルボニル)ジヘキシルアミン、およびo−ベンジルカルボニル−N−(1−フェニルエチリデン)ヒドロキシルアミンから選択される。光酸発生剤と光塩基発生剤に係わる詳細なレビューは、例えば、Prog.Polym.Sci、Vol.21,1-45,1996に見出される。同誌開示全文を本明細書に参考文献として引用する。
【0018】
例示のみであるが、具体的に好適な有機光塩基発生剤としては、2−ヒドロキシ−2−フェニルアセトフェノンN−シクロヘキシルカルバメ−ト(すなわち、CC(=O)CH(C)OC(=O)NHC11)、o−ニトロベンジルN−シクロヘキシルカルバメート(すなわち、o−NOCHC(=O)NHC11)、N−シクロヘキシル−2−ナフタレンスルホンアミド(すなわち、C10SONHC11)、3,5−ジメトキシベンジルN−シクロヘキシルカルバメート(すなわち、(CHO)CHC(=O)NHC11)、N−シクロへキシルp−トルエンスルホンアミド(すなわち、p−CHSONHC11)、およびジベンゾインイソホロンジカルバメートが挙げられる。
【0019】
好適な光塩基発生剤(アミン光発生剤)の一例を以下に示す。
【化1】

この図示のプロセスでは、ポリスチレンフィルム中の状態であるが、ベンゾフェノンが感光剤として作用する。水が周囲条件では存在する。
【0020】
さらに、好適な感光剤を任意選択で光塩基発生剤と組み合わせて使用すれば、光塩基発生剤の活性化エネルギービームの感光波長帯域を拡大し得る。多岐にわたる感光剤が技術的に周知であり、本発明の実施の形態にも使用し得る。感光剤の例としては、ベンゾフェノンなどが挙げられる。しかし、実施の形態では、感光剤の使用は省略するのが望ましい。狭い波長帯域の活性化エネルギービームを使用すれば、画像形成剤を偶発的に活性化する危険を防止するのに役立つからである。
【0021】
どのような好適な酸−塩基指示薬も使用し得る。この場合、酸−塩基指示薬とは、光塩基発生剤から生成の塩基と反応して、着色画像を生成するものである。実施の形態では、酸−塩基指示薬が光塩基発生剤から生成した塩基と反応すると、反応サイトの画像形成層が透明または無色の状態から着色状態に変化する。この場合、変化の程度および/または変化による色は、反応物のタイプと相対量に関連して定まる。
【0022】
多岐にわたる好適な酸−塩基指示薬が技術的に既知であり、本明細書に記載の実施の形態に使用し得る。様々な酸−塩基指示薬が、一般に容易に入手可能で、技術的に周知であり、酸−塩基滴定を行う目的で世界中の分析実験室で使用されている。一般に、プロトン付加状態とプロトン除去状態の間で切り替わるときに十分な色の変化が生じるどのような酸−塩基指示薬も好適に使用し得る。酸−塩基指示薬の例としては、ピクリン酸、メチルイェロー、マティウスイェロー、2,6−ジニトロフェノール、2,4−ジニトロフェノール、フェナセトリン、2,5−ジニトロフェノール、イソピクラミン酸、o−ニトロフェノール、m−ニトロフェノール、p−ニトロフェノール、6,8−ジニトロ−2,4−(1H,3H)キナゾリンジオン、ニトロアミン、エチルビス(2,4−ジニトロフェニル)−アセテート、2,4,6−トリニトロトルエン、1,3,5−トリニトロベンゼン、2,4,6−トリブロモ安息香酸、2−(p−ジメチルアミノフェニル)アゾピリジン、メタニルイェロー、p−メチルレッド、4−フェニルアゾジフェニルアミン、ベンゾプルプリン4B、トロペオリンOO、ファストガーネットGBC塩基、アリザリンイェローR、ベンジルオレンジ、m−メチルレッド、4−(m−トリル)−アゾ−N,N−ジメチル−アニリン、オイルイェローII、メチルオレンジ(p−ジメチルアミノアゾベンゼンスルホン酸ナトリウム)、エチルオレンジ、ヘッシアンパープルN、コンゴレッド、N−フェニル−1−ナフチル−アミノアゾベンゼン−p−スルホン酸、4−(4’−ジメチルアミノ−1’−ナフチル)−アゾ−3−メトキシ−ベンゼンスルホン酸、p−エトキシクリソイジン、α−ナフチルレッド、クリソイジン、1−ナフチルアミノアゾベンゼン−p−スルホン酸、メチルレッド、2−(p−ジメチルアミノフェニル)−アゾピリジン、エチルレッド、プロピルレッド、N−フェニル−1−ナフチル−アミノアゾ−o−カルボキシベンゼン、ニトラゾールイェロー、ブリアントイェロー、ブリアントイェローS、オレンジII、プロピル−o−ナフチルオレンジ、オレンジI、オレンジIV、へッシアン、ボルドー、ジアゾバイオレット、α−ナフトールバイオレット、アリザリンイェローGG、クロームオレンジGR、スルホン酸ブルーR、ラナシルバイオレットBF、トロペオリンO、オレンジG、クリスタルバイオレット、メチルバイオレットB、マラカイトグリーン、ブリリアントグリーン、エチルバイオレット、メチルバイオレット6B、エチル/メチルグリーン、塩基性フクシン、酸性フクシン、パテントブルーV、アルカリブルー、ブロモフェノールブルー、アニリンブルー、o−ナフトールベンゼイン、ペンタメトキシレッド、ヘキサメトキシレッド、テトラブロモフェノールフタレインエチルエステルK塩、テトラヨードフェノールスルホフタレイン、ブロモクロロフェノールブルー、ブロモクレゾールグリーン、クロロクレゾールグリーン、クロロフェノールレッド、ブロモクレゾールパープル、スルホナフチルレッド、ブロモフェノールレッド、ジブロモフェノール−テトラブロモフェノール−スルホフタレイン、ブロモチモールブルー、アウリン、フェノールレッド、o−クレゾールベンゼイン、o−クレゾールレッド、α−ナフトールフタレイン、m−クレゾールパープル、p−キシレノールブルー、チモールブルー、フェノールテトラクロロフタレイン、o−クレゾールフタレイン、α−ナフトールベンゼイン、フェノールテトラヨードフタレイン、フェノールフタレイン、チモールフタレイン、エオシンY、エリトロシンB、エリトロシン、ガレオン、ブリリアントクレジルブルー、レサズリン、ラクモイド、リトマス、アゾリトマス、アゾリトミン、ニュートラルレッド、ナイルブルー2B、ナイルブルーA、ヘマトキシリン、キナルジンレッド、ピナクローム、インドオキシン、キノリンブルー、ビス−5−ブロモバニリデンシクロヘキサノン、ビス−(2’−ヒドロキシスチリル)ケトン、クルクミン、ビス−(4−ヒドロキシ−3−エトキシ−ベンジリデン)−シクロヘキサノン、チアゾールイェローG、アリザリンブルーB、アリザリンレッドS、カルミン酸、アリザリンオレンジ、アリザリン、ルフィアン酸、ルフィアンブルー、アリザリンブルーSWR、インジゴカルミン、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0023】
典型例として以下に示すのは、周知の酸性指示薬であるフェノールフタレインに対する化学的着色−脱色反応である。
【化2】

典型例として、ここに示されるのは、反応がフェノールフタレインを含むとき、白紙の基材上で行われると、無色状態(酸性形)では紙に白色状態が示され、一方、着色状態(塩基形)では紙に赤色画像が示される。
【0024】
理解されることであるが、酸−塩基指示薬を適切に選択すれば、画像形成媒体にどのような色でも生成することが可能である。例えば、好適な酸−塩基指示薬を選択すれば、黄から赤に、青に、紫に及ぶカラーを提供し得る。さらに、2種以上の指示薬の組み合わせを使用すれば、広範囲のカラーを提供し得る。例えば、黒またはフルカラー画像は、酸−塩基指示薬の組み合わせ、例えば、シアン、マゼンタ、およびイェローのカラーを提供する酸−塩基指示薬を選択することによって提供し得る。
【0025】
例えば、実施の形態では、以下の酸−塩基指示薬を使用すれば、非着色状態から着色状態まで様々に変化する状態を提供し得る。
【表1】

【0026】
光塩基発生剤と酸−塩基指示薬とは、通常、本開示の画像形成組成物に少量存在するときに有効であるが、それらの含有量は特には限定されない。例えば、実施の形態では、光塩基発生剤と酸−塩基指示薬とは各々、一般に、組成物の全乾燥重量(すなわち、組成物添加に使用される揮発性溶剤は除く)の約0.01%〜約20重量%、例えば、約0.5%〜約10重量%または約0.8%〜約8重量%の量で存在する。
【0027】
画像形成剤(光塩基発生剤と酸−塩基指示薬)は、溶媒やポリマ結着剤などのどのような好適なキャリアにも分散し得る。好適な溶媒としては、例えば、直鎖型鎖状脂肪族炭化水素や分岐型鎖状脂肪族炭化水素があり、直鎖型または分岐型鎖状脂肪族炭化水素は約1〜約30の炭素数を有する。例えば、ISOPAR(商標)シリーズ(エクソン社(Exxon Corporation)製造)の非極性液を溶媒として使用し得る。これらの炭化水素液はイソパラフィン系炭化水素留分の狭い沸点留分と考えられる。例えば、ISOPAR G(商標)の沸点範囲は約157℃〜約176℃で、ISOPAR H(商標)は約176℃〜約191℃で、ISOPAR K(商標)は約177℃〜約197℃で、ISOPAR L(商標)は約188℃〜約206℃で、ISOPAR M(商標)は約207℃〜約254℃で、そしてISOPAR V(商標)は約254.4°C〜約329.4°Cである。他の好適な溶剤としては、例えば、エクソン社(Exxon Corporation)から入手可能のn−パラフィンの組成物であるNORPAR(商標)シリーズの液体、フィリップス石油会社(Phillips Petroleum Company)から入手可能のSOLTROL(商標)シリーズの液体、およびシェル石油会社(Shell Oil Company)から入手可能のSHELLSOL(商標)シリーズの液体が挙げられる。複数の溶媒から成る混合物、すなわち、溶媒システムも、所望ならば使用し得る。さらに、より極性の高い溶媒も、所望ならば使用し得る。より極性の高い溶媒の例としては、ハロゲン化溶媒、または非ハロゲン化溶媒、例えば、テトラハイドロフラン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、ジクロロメタン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、トルエン、キシレン、アセトン、メタノール、エタノール、キシレン、ベンゼン、エチルアセテート、ジメチルホルムアミド、シクロヘキサン、N−メチルアセトアミドなどが挙げられる。溶媒は、一種、二種、三種またはそれ以上の種類の相異なる溶媒から構成もし得る。二種またはそれ以上の種類の相異なる溶媒が存在するときは、個々の溶媒は、相等しい量で存在しても、または不均等の量で存在しても差し支えない。量の範囲としては、全溶媒の重量基準で約5%〜90%、特に約30%〜約50%とし得る。
【0028】
有機ポリマに分散し得る組成物も水性ポリマに分散し得る組成物も使用できるが、使用成分に依存して使い分けられる。例えば、水性組成物に対しては、ポリビニルアルコールが好適な適用ポリマであり、ポリメチルメタクリレートは有機物に可溶性の組成物に対して好適である。
【0029】
ポリマ結着剤の好適な例としては、ポリメチルメタクリレート(PMMA)のようなポリアルキルアクリレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、酸化ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリスチレン、ポリ(スチレン−エチレン共重合体)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリールスルホン、ポリアリールエーテル、ポリオレフィン、ポリアクリレート、ポリビニル誘導体、セルロース誘導体、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリ(メタクリル酸)、ポリ〔1−2−(ヒドロキシエチル)アジリジン0〕、ポリ(N−ヒドロキシエチル)エチレンイミン、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(N−アセチル)エチレンイミン、ポリ(アクリルアミド)、ポリアリルアミン、ポリ(スチレンスルホン酸ナトリウム)などが挙げられるが、これらに限定はされない。共重合体、例えば、ポリスチレン−アクリロニトル、ポリエチレン−アクリレート、塩化ビニリデン−塩化ビニル、酢酸ビニル−塩化ビニリデン、スチレン−アルキッド樹脂、ポリ(アクリルアミド−アクリル酸)も好適な結着剤の例である。共重合体は、ブロック重合、ランダム重合、または交互重合による共重合体のいずれでもよい。いくつかの実施の形態では、ポリメチルメタクリレートまたはポリスチレンが、コストと広範な入手可能性の点で使用されるポリマ結着剤である。
【0030】
実施の形態では、画像形成組成物を一つの形で塗布し、その後で乾燥して別の一つの形で使用することが可能である。つまり、例えば、光塩基発生剤と酸−塩基指示薬とポリマ粒子とを含む画像形成組成物を溶媒に溶解または分散してから基材に塗布または含浸し、その後に溶媒を蒸発させて乾燥層を形成することが可能である。
【0031】
一般に、画像形成組成物は、キャリアと画像形成剤とをどのような好適な量、例えば、キャリアの重量基準で約5〜約99.5%、例えば、キャリアの重量基準で約30〜約70%、そして画像形成剤の重量基準で約0.05〜約50%、例えば、画像形成剤の重量基準で約0.1〜約5%の量で含み得る。
【0032】
画像形成層を画像形成媒体基材に適用するためには、画像形成層組成物をどのような好適な方法で適用してもよい。例えば、画像形成層組成物を好適な溶媒またはポリマ結着剤とともに混合し、塗布し、後で硬化したり、または乾燥したりして所要の層を形成し得る。さらに、画像形成層組成物を、別個の明確な層として支持基材に被膜するように適用し得るし、あるいは支持基材に含浸させるように適用し得る。
【0033】
画像形成媒体は、支持基材と画像形成層とから成り、支持基材の少なくとも一面に画像形成層を被覆、または含浸したものとし得る。所望に応じて、基材の一面のみ、あるいは両面に画像形成層を被覆、または含浸し得る。画像形成層が両面に被覆、または含浸されるとき、あるいは画像のより高い可視性が所望されるとき、支持基材と画像形成層(複数を含む)との間に、または被覆された画像形成層から見て支持基材の反対側に不透明な層を設け得る。従って、例えば、一面が画像形成媒体であることが所望される場合は、画像形成媒体は、支持基材の一面に画像形成層が被覆、または含浸され、他の面に不透明層、例えば、白色層が被覆された支持基材を備え得る。また、画像形成媒体は、支持基材の一面に画像形成層が被覆、または含浸され、基材と画像形成層との間に不透明層を有する支持基材を備え得る。両面が画像形成媒体であることが所望される場合は、画像形成媒体は、支持基材の両面に画像形成層が被覆、または含浸され、二枚の被覆された画像形成層の間に挟み込まれた少なくとも一枚の不透明層を有する支持基材を備え得る。もちろん、所望ならば、別個の支持基材と不透明層との組み合わせの代わりに、それ自体が不透明の支持基材、例えば、従来のペーパーを使用することもできる。
【0034】
どのような好適な支持基材も使用し得る。例えば、支持基材の好適な例としては、ガラス、セラミック、木材、プラスチック、紙、布、織物、ポリマフィルム、無機基材、例えば、金属などが挙げられるが、これらに限定はされない。プラスチックとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホンのようなプラスチック製フィルムがある。紙としては、例えば、ゼロックス(XEROX)(登録商標)4024のような普通紙、罫線付ノートブック紙、ボンド紙、シャープ社シリカ被覆紙のようなシリカ被覆紙、十条紙などがある。基材は、単一層でも多重層でもよく、個々の層が、同一材質でも相異なる材質でも差し支えない。実施の形態では、基材は、例えば、0.3mm〜約5mmの範囲の厚さを有する。もっとも、所望なら、これより薄いのも厚いのも使用し得る。
【0035】
不透明層が画像形成媒体に使用されるとき、どのような好適な材料でも使用し得る。例えば、白い紙のような外観が所望ならば、不透明層は、二酸化チタン、または他の好適な材料、例えば、酸化亜鉛、無機炭酸塩などのような薄い被膜から形成し得る。不透明層は、例えば、約0.01mm〜約10mm、例えば、約0.1mm〜約5mmの厚さを有し得る。もっとも他の厚さも使用し得る。
【0036】
所望ならば、上塗り層も、被覆された画像形成層の上に成膜し得る。この上塗り層は、下地となっている層を基材の上にしっかりと接着することによって、耐摩耗性の付与、外観や感触の改善などを行うために適用し得る。上塗り層は、基材層と同じ材質でも相異なる材質でも差し支えない。もっとも、実施の形態では、上塗り層と基材層の少なくとも一層は、クリアで、透明とし、形成された画像が見えるようにする。上塗り層は、例えば、約0.01mm〜約10mm、例えば、約0.1mm〜約5mmの厚さを有し得る。もっとも、他の厚さも、使用し得る。
【0037】
画像形成剤が基材上に被覆、または基材に含浸される実施の形態では、被覆または含浸は、技術に利用可能のどのような好適な方法によっても実施し得る。被覆または含浸方法は、特には限定されない。例えば、画像形成剤を基材上に被覆、または基材に含浸するには、画像形成剤組成物の溶液中に基材を浸漬して成膜して次いで必要な乾燥を行ったり、あるいは基材を画像形成組成物で塗布したりして実施し得る。同様に、保護被膜も同様な方法で適用し得る。
【0038】
方法という点では、本開示は、基材を備える画像形成媒体と、光塩基発生剤と酸−塩基指示薬とを含む画像形成層とを提供するステップを含むものである。そのような組成物は、ポリマ中に分散し、基材上に乾燥被覆物として被覆、または基材に含浸し得る。画像形成UV光の作用で、光塩基発生剤は、アミンのような塩基を生成し、塩基は、次いで、酸−塩基指示薬と反応し、着色画像が形成される。
【0039】
書き込みプロセスでは、画像形成媒体は、適切な活性化波長を有する画像形成光、例えば、発光ダイオードのようなUV源または可視光源に対して、画像通りに露光される。画像形成光は、十分なエネルギーを光塩基発生剤に供給し、アミンのような塩基を生成させる。すると、塩基は次いで、酸−塩基指示薬と反応し、着色画像が、画像形成位置に生成される。画像形成媒体の特定の位置に照射される光のエネルギー量は、その位置で生成された色の強度または度合いに影響し得る。つまり、例えば、より弱い強度の画像を形成するには、より小さい量のエネルギーをその位置に供給し、従って、より少量の塩基を生成させて行い得るし、一方、より強い強度の画像を形成するには、より大きい量のエネルギーをその位置に供給し、従って、より大量の塩基を生成させて行い得る。好適な酸−塩基指示薬の選択がブラック画像の提供目的に行われているとき、画像形成媒体の特定の位置に照射される光のエネルギー量変化に伴って、グレースケールの画像形成が可能となり、一方、他の好適な酸−塩基指示薬を選択すれば、フルカラーの画像形成が可能となる。
【0040】
遷移する画像を形成するために使用される画像形成光は、どのような好適な既定の波長範囲、例えば、単一波長、またはある帯域の波長を有し得る。多岐にわたる実施の形態の例で使用される画像形成光は、単一波長、または狭い範囲の帯域の波長を有する紫外線(UV)光である。UV光波長は、約200nm〜約475nmの範囲、例えば、約365nmの単一波長または約360nm〜約370nmの帯域を有する波長から選択される。画像形成には、画像形成媒体は、約10ミリ秒〜約5分、特に約30ミリ秒〜約1分の範囲の時間で画像形成光に曝し得る。画像形成光は、約0.1mW/cm〜約100mW/cm、特に約0.5mW/cm〜約10mW/cmの範囲の強度とし得る。
【0041】
多岐にわたる実施の形態の例では、既定の画像に対応する画像光は、例えば、コンピュータまたは発光ダイオード(LED)アレイスクリーンを使用して形成でき、画像を画像形成媒体上に形成するには、所望の時間だけLEDスクリーン上にまたはその近くに前記媒体を設置することによって行われる。他の実施の形態の例では、UVラスタアウトプットスキャナ(ROS)を使用して、画像通りのパターンでUV光を発生し得る。この実施の形態は、例えば、他は従来のようであるが、印刷される画像を形成するにはコンピュータ駆動が可能なプリンタ装置に特に適用し得る。すなわち、このプリンタは、一般に、従来のインクジェットプリンタに対応するものでよいが、相違は、画像通りにインク滴を噴出するインクジェット印刷ヘッドが、画像通りに画像形成媒体を露光する好適なUV光印刷ヘッドと置き換え得るということだけである。この実施の形態では、インクカートリッジ交換は最早陳腐化し不要となる。書き込みはUV光源使用で行われるからである。他の好適な画像形成技法としては、限定はしないが、マスクを通じ画像形成媒体の上にUV光を照射する方法や光ペンを使用するなどして画像通りに画像形成媒体の上にUV光をピンポイント照射する方法などがある。
【0042】
実施の形態では、UV光露出で形成された画像は永久的であり、従来のインク印刷の文書と大差ない。すなわち、形成された塩基と酸−塩基指示薬との反応は、画像形成媒体では可逆ではないので、画像が逆反応で消去されることはあり得ない。しかし、光塩基発生剤と酸−塩基指示薬とを適切に選択すれば、例えば、熱や光などを適用することで反応を可逆とし、従って画像を消去し得るということも考えられる。
【0043】
多岐にわたる実装の例に基づいて述べると、見る人に画像を可視化させる色のコントラストは、例えば、二種、三種、またはそれ以上の種類の相異なる色の間のコントラストと考え得る。「色」という用語は、色相、明度、および飽和度といった多くのカラー要素を包含するものと考え得るので、二つの色が少なくとも一つのカラー要素で相異なれば、一方の色は他方の色とは相異なるとし得る。例えば、同じ色相と飽和度を有するが、明度が相異なる二つの色は、互いに相異なる色と考えられることになる。どのような好適な色も、例えば、レッド、ホワイト、ブラック、グレー、イェロー、シアン、マゼンタ、ブルー、バイオレットの色も、画像がユーザの肉眼に可視化される限りでは色のコントラストを作るのに使用し得る。しかし、所望の最大の色コントラストという点では、望ましい色コントラストは、明るい、または白い背景上のダークグレーまたはブラックの画像、例えば、白い背景上のグレー、ダークグレーまたはブラックの画像であり、あるいは明るいグレーの背景上のグレー、ダークグレーまたはブラックの画像である。
【0044】
多岐にわたる実施の形態の例では、色コントラストは、変化し得るもので、例えば、見ている時間の間に褪色することもある。しかし、「色コントラスト」という語句は、ユーザに画像を認識させるに十分な色コントラストのどんな程度も包含するものとし得る。見ている時間の間に色コントラストが変化しようが、一定であろうが色コントラストであることに変わりはないのである。
【実施例1】
【0045】
実施例を以下に記載する。実施例は、本開示を実施するのに利用し得る相異なる組成と条件とを説明するものである。比率はすべて特記なき限り重量基準である。しかし、明らかなことであるが、本開示は、多くのタイプの組成物で実施可能であり、上記に記載の開示に基づいて、そして以下に指摘されるように、多くの相異なる用途を有し得る。
【0046】
<実施例1−白色背景、赤色画像>
画像形成媒体を、ペーパー基材に画像組成物を被覆することによって作製する。画像形成組成物は、酸−塩基指示薬としてフェノールフタレインを、光塩基発生剤としてo−アシルオキシムを混合することによって形成した。ペーパー基材を、上記の成分を有しアルコール基剤のポリビニルアルコール溶液に溶解した組成物を使用して均一に被覆した。アルコール溶液は成分すべてを確実に可溶化させる。最初、ペーパー基材は白色である(塩基は存在しない)。UV光に露光すると、アミンが生成する。UV光は、UVLED印刷バーから得られる。生成したアミンは、酸−塩基指示薬からプロトンを抽出し、赤に着色する原因化合物を生成する。印刷画像は、ペーパー上で安定(永久的プリント)である。
【0047】
<実施例2−白色背景、青色画像>
画像形成媒体を、実施例1と同様に作製する。ただし、チモールフタレインを、酸−塩基指示薬としてフェノールフタレインの代わりに使用する。最初、ペーパー基材は白色である(塩基は存在しない)。UV露光の後、生成したアミンは、酸−塩基指示薬からプロトンを抽出し、青に着色する原因化合物を生成する。プリントされた画像は、ペーパー上で安定(永久的プリント)である。
【0048】
<実施例3−黄色背景、赤色画像>
画像形成媒体を、実施例1と同様に作製する。ただし、フェノールレッドブルーを、酸−塩基指示薬としてフェノールフタレインの代わりに使用する。最初、ペーパー基材は黄色の外観である。フェノールレッドブルーの未反応状態だからである(塩基は存在しない)。UV露光の後、生成したアミンは、酸−塩基指示薬からプロトンを抽出し、赤に着色する原因化合物を生成する。印刷画像は、ペーパー上で安定(永久的プリント)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材上に被覆、または基材に含浸された画像形成層とから成る画像形成媒体において、
画像形成層が、光塩基発生剤と、酸−塩基指示薬とを含み、
画像形成層を露光すると、前記光塩基発生剤が、前記酸−塩基指示薬と反応する塩基を生成し、画像が形成されることを特徴とする画像形成媒体。
【請求項2】
基材に画像形成層組成物を適用するプロセスを含む画像形成媒体を製造する方法において、
画像形成層組成物が、光塩基発生剤と、酸−塩基指示薬剤とを含み、
画像形成層組成物を露光すると、前記光塩基発生剤が、酸−塩基指示薬と反応する塩基を生成し、画像が形成されることを特徴とする画像形成媒体を製造する方法。
【請求項3】
基材と、前記基材上に被覆、または基材に含浸された画像形成層とから成る画像形成媒体を提供するステップと、画像通りに前記画像形成層をUV照射して露光するステップとを含む遷移する画像を形成する方法において、
前記画像形成層が光塩基発生剤と酸−塩基指示薬とを含み、
前記UV照射により、前記光塩基発生剤が酸−塩基指示薬と反応する塩基を生成し、画像が形成されることを特徴とする遷移する画像を形成する方法。

【公開番号】特開2008−310318(P2008−310318A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−153939(P2008−153939)
【出願日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】