説明

画像形成方法

【構成】感光体を帯電させる帯電工程と、該感光体を露光する露光工程と、該感光体上に形成された静電潜像にトナーを付着させてトナー像を形成する現像工程と、感光体上に形成された該トナー像を記録紙等の記録媒体に同時に転写、定着する工程とからなる画像形成方法において、前記トナーがカプセルトナーであり、前記感光体が表面感光層にフッ素化合物及び/又はフッ素含有樹脂を含むフィルムベルト状耐熱型有機感光体であることを特徴とする画像形成方法。
【効果】本発明の画像形成方法によると、低温定着が可能となり感光体の寿命を延ばすことができ、トナーと感光体との離型性の向上により転写効率が非常に良くなり回収トナーの保存スペースが不要になった。またこれらにより、マシンの小型化及び低価格化が可能となった。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は普通紙複写機やレーザプリンター、及び普通紙ファクシミリ等に用いられる画像形成方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、複写機やレーザプリンター等において画像を形成する場合、一般にカールソン方式が用いられてきた。この方式では、光学的手段によって感光体上に形成された静電潜像は先ず現像工程で現像された後、転写工程で記録紙等の記録媒体に転写され、ついで定着工程で一般に熱と圧力で定着され画像が形成される。そして、上記感光体は繰り返し使用するため、その回転に伴って転写後の残存トナーを清掃するクリーニング装置が設置されている。
【0003】しかし、従来の画像形成方法においては、静電潜像を形成してから記録媒体に定着させるまでの工程が長く、装置が煩雑になるばかりでなく大型になり、また転写工程でのトナーの転写効率が悪いため残存トナーの清掃により回収した回収トナーの廃棄の手間や、装置内外へのトナーの飛散による汚染等の問題があった。さらに、トナーの定着は一般にトナーの溶融温度が高いため、200℃前後の高い温度で行われており、この現状から定着器周辺には高価な耐熱性樹脂、耐熱性ゴム等を使用した耐熱性部材が必要とされている。そして、このような高温下で定着を行うと紙のカール、ジャムり等のトラブルが発生し不都合となるので、装置的にも放熱を考慮し、最適放熱装置が必要とされる。
【0004】これらの問題点に対して誘電体ドラム上に現像されたトナー像を記録媒体に圧力により転写と定着を同時に行う方式が提案さている(米国特許明細書4,448,872 )。この方法によると装置の簡素化を図ることが出来るが、定着工程が圧力のみであるため定着性が悪く、転写効率が改善されないという問題点がある。更に、感光体上に形成されたトナー像を熱と圧力により記録媒体に直接転写、定着する方法が提案されている(特開昭48−93343号公報、特開平3−36581号公報)。しかし、これらの方法は通常のトナーを用いており、定着に200℃近い温度が必要となるため、感光体が熱により劣化してしまうという欠点を有している。これに対し、感光体の熱劣化を避けるために一部の無機感光材料と熱硬化性樹脂よりなる感光体を用いることが提案されているがこれとても転写効率、定着性、熱安定性等において満足いくものではない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】これらの観点からも新しい画像形成方法とそれに適応したトナーの開発と感光体の開発が期待されている。本発明の目的は、かかる課題を解決すべく、有機感光体上に形成されたトナー像を熱と圧力により記録媒体に同時に転写、定着する方法において、低温定着により有機感光体の寿命を延ばしつつ、トナーと感光体との離型性を向上させ、転写効率に優れる画像形成方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】前記のような感光体上に形成されたトナー像を熱と圧力により記録媒体に同時に転写、定着する方法において、転写、定着性、及び耐久性を確保するためには40℃〜120℃で定着を行うのが望ましく、トナーには低温での定着性、有機感光体には耐熱性と離型性が要求される。これらの課題を解決するために鋭意検討した結果、前記画像形成方法のトナーにカプセルトナーを用い、前記有機感光体の表面感光層にフッ素化合物及び/又はフッ素含有樹脂を含むフィルムベルト状耐熱型有機感光体を用いることにより本発明を達成することが出来た。
【0007】即ち、本発明の要旨は、感光体を帯電させる帯電工程と、該感光体を露光する露光工程と、該感光体上に形成された静電潜像にトナーを付着させてトナー像を形成する現像工程と、感光体上に形成された該トナー像を記録紙等の記録媒体に同時に転写、定着する工程とからなる画像形成方法において、前記トナーがカプセルトナーであり、前記感光体が表面感光層にフッ素化合物及び/又はフッ素含有樹脂を含むフィルムベルト状耐熱型有機感光体であることを特徴とする画像形成方法に関する。
【0008】本発明の画像形成方法について、図面を用いて以下に説明する。図1は転写工程及び定着工程にヒートローラと圧力ローラを用いた画像形成方法の概念図である。
【0009】1はフィルムベルト状耐熱型有機感光体であり、帯電、露光による静電潜像の形成を基本的機能とし、本発明において一連の画像形成プロセスに供されるものである。このフィルムベルト状耐熱型有機感光体は、表面感光層にフッ素化合物及び/又はフッ素含有樹脂を含むことを特徴とするものである。
【0010】7は帯電装置であり、フィルムベルト状耐熱型有機感光体1に対向して設けられている。帯電手段としては特に制限されるものではなく、例えばコロナ帯電器やブラシ帯電器等を利用することが出来る。
【0011】2は露光装置であり、フィルムベルト状耐熱型有機感光体1に対向して設置され、該感光体上に静電潜像を形成する装置である。露光装置2としてはレーザ、LED又はELアレイ等の光源を作像光学系と組み合わせて使用される。もしくは一般に複写機に使用されている原稿の反射光を投影する光学系等の装置を用いる事が出来る。
【0012】3は現像器であり、フィルムベルト状耐熱型有機感光体1に対向して設置され、該感光体上に形成された静電潜像をトナーで可視化せしめる為の現像装置である。現像装置としては、通常使用されている2成分磁気ブラシ現像器、1成分磁気ブラシ現像器、1成分非磁性現像器等いずれの現像器も使用する事が出来る。
【0013】現像工程によりフィルムベルト状耐熱型有機感光体上に形成されたトナー像は、現像工程後図示していない所定の駆動手段により、図中に示した方向に一定の周速で移動するフィルムベルト状耐熱型有機感光体の移動に伴って定着部まで搬送される。これに対し、記録紙等の記録媒体6は例えば図1に示すように、該トナー像の始端に同期するように搬送ベルト11で示されるような搬送手段により定着部まで搬送される。
【0014】定着部では、ヒートローラ4と圧力ローラ5からなり、ヒートローラには従来はフッ素樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等の耐熱性樹脂が使用されているが、本発明においては定着温度が低いため、従来の耐熱性フィルムを使用する場合その使用寿命は長くなり、またポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂等のフィルムやセロファンなども使用できる。
【0015】圧力ローラ5は、トナー画像を有するフィルムベルト状耐熱型有機感光体上に記録媒体を圧接させて転写・定着するための手段である。通常の定着装置では高温で定着せしめるため、圧力ローラに耐熱性シリコーンゴムなどを使用することが必要であるが、本発明では定着温度が低いことから圧力ローラには高い熱が伝わらないため特に耐熱性は要求されない。従って、120℃以上の軟化点を持つ弾性体であればその材料は特に制限されるものではなく、通常の安価な弾性材料を使用することができる。また、線圧も4kg/cm未満と小さくてすむため耐用寿命も長くなる。
【0016】本発明においては、フィルムベルト状耐熱型有機感光体および記録媒体がヒートローラと圧力ローラで挟持されることにより、転写・定着が同時に行われる。即ち、フィルムベルト状耐熱型有機感光体上のトナーをヒートローラ4により通常40〜120℃の温度範囲で加熱し、ヒートローラ4と圧力ローラ5の間を通過させることにより、記録紙等の記録媒体6面上に圧接させて、転写・定着を同時に行う。この場合、ヒートローラ4による加熱温度が40℃よりも低いとトナーの溶融が充分でなくなるので好ましくない。また、120℃を超えると定着温度が高くなり、前記のような従来法での問題点が生じてくる。また、定着時の線圧は、一般に定着温度が低い程、高くする必要があり、従来法では通常4kg/cm以上の線圧が必要とされている。しかし、本発明によれば定着温度が高々120℃であるにも拘らず、線圧は通常0.01〜4kg/cm、好ましくは0.05〜1kg/cmで充分な定着強度が得られる。これにより、転写・定着が同時に行われ、又低線圧で定着する為、トナー飛散による画像のとびちり、細線のつぶれ、画像のにじみがなく高画質となる。また、トナーの紙への転写効率が非常に高い為、廃棄トナーが発生しない。
【0017】転写・定着工程後、フィルムベルト状耐熱型有機感光体上に残存する微量のトナーを除去するため、クリーニングウェブ等のクリーニング装置8を配設することができる。この場合、トナーを溶融状態の間に除去することができるようにクリーニング装置8をヒートローラ4に対向して配設するのが好ましい。これにより、残存するトナーの除去効率が良くなり、またフィルムベルト状耐熱型有機感光体1の表面を損傷することもなくなる。
【0018】フィルムベルト状耐熱型有機感光体1は、図1に示すように少なくとも支持ローラ12およびヒートローラ4により張架されているが、ローラの数は特に限定されるものではない。ヒートローラ4、圧力ローラ5、支持ローラ12、搬送ベルト11は、図示していない所定の駆動手段により図1に示す方向に一定の周速で回転する。その結果、フィルムベルト状耐熱型有機感光体1は図示矢印方向に移動し、帯電工程、露光工程、現像工程、転写・定着工程後、除電ランプなどの除電装置9によって残存の電荷が中和され、再び帯電工程に戻り再使用される。また、このようにして記録媒体6上にトナーが転写・定着された後は、所定の排紙手段により装置外へ排出される。
【0019】次に、転写工程および定着工程において、フィルムベルト状耐熱型有機感光体上のトナーを予熱した後、該フィルムベルト状耐熱型有機感光体および記録媒体が2つの圧力ローラで挟持される本発明の画像形成方法の概念図を図2に示す。帯電工程、露光工程および現像工程は、前記の図1に示される場合と同様であり、フィルムベルト状耐熱型有機感光体上に形成されたトナーは、現像工程後図示していない所定の駆動手段により図中に示した方向に、図1と同様に一定の周速で移動するフィルムベルト状耐熱型有機感光体の移動に伴って移動し、定着部まで搬送される。これに対して、記録紙などの記録媒体6は、図1と同様に該トナー像の始端に同期するように搬送ベルト11で示されるような搬送手段によりフィルムベルト状耐熱型有機感光体の移動とは別に搬送されることにより定着部である圧力ローラ5a,5bまで搬送される。
【0020】このフィルムベルト状耐熱型有機感光体上のトナーは、搬送中にトナーを予熱する加熱手段により予め加熱される。即ち、カプセルトナーの外殻の構造が変化し、圧力を加えられた時点で芯材が放出されて定着できるように処理される。従って、本発明における加熱手段はフィルムベルト状耐熱型有機感光体に対向してその内面側に配設され、移動中のフィルムベルト状耐熱型有機感光体の裏面からトナー表面を40〜120℃の温度範囲に予熱する発熱体が用いられる。加熱温度が40℃よりも低いとトナーの溶融が充分でなくなるので好ましくない。また、120℃を超えると定着温度が高くなり、前記のような従来からの定着方法での問題点が生じてくる。
【0021】フィルムベルト状耐熱型有機感光体面上に与える熱が一般に高すぎると、定着温度が高くなり記録紙がカールし、低すぎるとトナーの定着が不充分になり記録の保存が出来にくくなるが、本発明においては前記のように40℃〜120℃で定着出来るため、そのような問題は発生しにくい。このような発熱体である加熱用ヒータ13としては、フィルムベルト状耐熱型有機感光体面を高々120℃迄熱する事が出来る装置で有ればその方式を問わない。例えば、ホットプレート、石英ヒータランプ、フラッシュランプ、発熱ベルト、発熱素子等の熱源を使用する事が出来る。
【0022】次に、このようにして予熱されたトナーを記録媒体上に転写・定着する手段としては、圧力ローラが用いられ、一対の圧力ローラ5aおよび5bにより記録媒体6がフィルムベルト状耐熱型有機感光体1を介して挟持されて転写・定着が同時に行われる。即ち、圧力ローラ5aおよび圧力ローラ5bは、フィルムベルト状耐熱型有機感光体上のトナー画像を記録媒体面上に圧接させて同時に転写・定着するための手段である。通常の定着方法では高温で定着せしめるため、圧力ローラに耐熱性シリコーンゴムなどを使用することが必要であるが、本発明では圧力ローラには直接に熱が伝わらないため特に耐熱性は要求されない。従って、120℃以上の軟化点を持つ弾性体であればその材料は特に制限されるものではなく、通常の安価な弾性材料を使用することができる。
【0023】また、この場合の圧力ローラによる線圧は、図1の場合と同様に通常0.01〜4kg/cm、好ましくは0.05〜1kg/cmと小さくてすむため耐用寿命も長くなる。定着時の線圧は、一般に定着温度が低い程、高くする必要があり、従来の定着方法では通常4kg/cm以上の線圧が必要とされている。しかし、本発明によれば前記のように定着温度が高々120℃であるにも拘らず、線圧は4kg/cm未満、多くは2kg/cm未満で充分な定着強度が得られる。
【0024】また、本発明の画像形成方法においては、さらに圧力ローラ5aおよび5bにより記録媒体がフィルムベルト状耐熱型有機感光体に圧接されて転写・定着されたのち、フィルムベルト状耐熱型有機感光体1の冷却を兼ねてフィルムベルト状耐熱型有機感光体上に残留する微量なトナーを除去するクリーニング装置8を具備していてもよい。クリーニング装置8としては、例えばクリーニングウエブが用いられ、トナーが溶融状態の間に除去することができるように、圧力ローラ5aに対向して配置するのが好ましい。
【0025】フィルムベルト状耐熱型有機感光体1は、図1に示される場合と同様に図2に示すように少なくとも支持ローラ12および圧力ローラ5aにより張架されているが、ローラの数は特に限定されるものではない。圧力ローラ5a,5b、支持ローラ12、搬送ベルト11は、図示していない所定の駆動手段により図2に示す方向に一定の周速で回転する。その結果、フィルムベルト状耐熱型有機感光体1は図示矢印方向に移動し、帯電工程、露光工程、現像工程、転写・定着工程後、除電ランプなどの除電装置9によって残存の電荷が中和され、再び帯電工程に戻り再使用される。また、このようにして記録媒体6上にトナーが転写・定着された後は、所定の排紙手段により装置外へ排出される。
【0026】本発明は図1や図2に例示された画像形成方法に限定されるものでなく、本発明の原理に基づくいずれの画像形成方法にも適用できる。
【0027】本発明の画像形成方法に用いられるフィルムベルト状耐熱型有機感光体(以下「感光体」と略す。)は、導電性基体上に感光層が設けられたものであり、導電性基体としてはアルミニウム、ニッケル、ステンレス等の金属、又はポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリイミド等の有機フィルムに金属をコーティングしたものが用いられる。これらの内フィルムベルト状の耐熱型有機感光体を作成するためにニッケル、ニッケル合金、及び有機フィルムのガラス転移点が100℃以上のものに金属をコーティングしたものが好ましく用いられる。更に放熱等を考慮すればニッケル又はニッケル合金が導電性基体としてより好ましく用いられる。
【0028】感光層は、一般に電荷発生物質(電荷発生材)、電荷輸送物質(電荷輸送材)、及び結着剤からなり、本発明においては、それらが同一層を形成する単層型、または電荷発生物質を含む電荷発生層と電荷輸送物質を含む電荷輸送層からなる積層型のいずれであってもよい。また、積層型感光体の場合には導電性基体の上に電荷発生層、電荷輸送層の順で積層された感光体、または導電性基体の上に電荷輸送層、電荷発生層の順で積層された感光体のいずれであってもよい。
【0029】本発明において表面感光層とは、フッ素化合物及び/又はフッ素含有樹脂を含有する層であって、感光体の表面に設けられた層をいう。従って、単層型感光体の場合は感光層が表面感光層であり、又、積層型感光体の場合には電荷発生層若しくは電荷輸送層のうち、いずれか表面に設けられた層が表面感光層であり、それがフッ素化合物及び/又はフッ素含有樹脂を含有している。
【0030】本発明における感光体の表面感光層に含有されるフッ素化合物としては、例えば2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロパノール、1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプタノール、2−(パーフルオロオクチル)エタノール、6−(パーフルオロエチル)ヘキサノール、6−(パーフルオロオクチル)ヘキサノール(ダイキン工業(株)製、商品名Aシリーズ)等のフルオロアルキルアルコール;3−パーフルオロオクチル−1,2−エポキシプロパン、3−パーフルオロデシル−1,2−エポキシプロパン、3−(パーフルオロ−7−メチルヘキシル)−1,2−エポキシプロパン、3−(1H,1H,9H−ヘキサデカフルオロノニロキシ)−1,2−エポキシプロパン(ダイキン工業(株)製、商品名Oシリーズ)等のエポキシ変性フルオロアルキル化合物;2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルメチルエーテル、1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−トリフルオロメチルプロピルメチルエーテル(ダイキン工業(株)製、商品名Eシリーズ)等のフルオロアルキルエーテル;メチルパーフルオロオクタネート、エチルパーフルオロオクタネート、エチル5H−オクタフルオロペンタネート、エチル11H−イコサフルオロウンデカネート(ダイキン工業(株)製、商品名Eシリーズ)等のフッ素化カルボン酸エステル等を挙げることが出来る。このうち好ましくは結着剤との相溶性からエポキシ変性フルオロアルキル化合物が選ばれる。これらのフッ素化合物は単独で、若しくは2種以上を混合して用いることができる。
【0031】フッ素含有樹脂としては、例えばフッ素化ポリカーボネート、フッ素化エポキシ樹脂、フッ素化アルキル(メタ)アクリレート重合体、フッ素化ビニル重合体、フッ素化ポリエステル、フッ素化アルキッド樹脂、及びフッ素化メラミン樹脂、並びにこれらを共重合組成とする共重合体が挙げられる。フッ素化ビニル重合体としてはフッ化エチレン重合体、フルオロアルキルスチレン重合体が挙げられ、またその共重合体としてはフッ化エチレン/アルキルアクリレート共重合体、フッ化エチレン/アルキルメタクリレート共重合体、フッ化エチレン/スチレン共重合体、フッ化エチレン/アクリルニトリル共重合体、フルオロアルキルスチレン/アルキルアクリレート共重合体、フルオロアルキルスチレン/アルキルメタアクリレート共重合体、フルオロアルキルスチレン/スチレン共重合体等を挙げることが出来る。フッ素化アルキル(メタ)アクリレート共重合体としてはフルオロアルキル(メタ)アクリレート/アルキル(メタ)アクリレート共重合体、フルオロアルキル(メタ)アクリレート/スチレン共重合体等を挙げることが出来る。このうち好ましくは結着剤との相溶性からフッ素化ポリカーボネート、フッ素化エポキシ樹脂、フッ素化アルキル(メタ)アクリレート共重合体、又はフッ素化ビニル共重合体が選ばれる。これらのフッ素含有樹脂は単独で、若しくは2種以上を混合して用いることができる。ここで、樹脂の分子量としては数平均分子量で数千から数十万のものが用いられる。
【0032】以上のフッ素化合物とフッ素含有樹脂は併用してもよく、これらフッ素化合物及び/又はフッ素含有樹脂の総添加量は作製される表面感光層に対して0.05〜10重量%であり、好ましくは0.1〜8重量%である。添加量が0.05重量%より少ないと形成された感光体からのトナーの離型性が低下し、反対に10重量%より多いと感光体の感度低下等を招き好ましくない。
【0033】本発明に用いられる電荷発生物質としては、例えばセレン、アモルファスシリコン、アモルファスシリコンカーバイト等の無機材料、並びにアゾ顔料、ペリレン顔料、キノン顔料、無金属フタロシアニン顔料、金属フタロシアニン顔料、スクアリリウム顔料、ピロールピロール顔料等の有機材料が用いられる。このうち低毒性およびデバイス設計の容易性のため有機材料が好適に使用される。
【0034】積層型の場合、電荷発生層は蒸着、CVD、及び塗工により作製され、電荷発生物質が有機材料の場合には塗工により電荷発生層を形成するのが望ましい。具体的には、主に電荷発生物質、結着剤を溶剤に分散、溶解させ、それを塗布、乾燥させる。結着剤としては、例えばポリエステル、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル−酢酸ビニル、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリアミドイミド、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ジアリルフタレート樹脂等が用いられる。溶剤としては、例えばベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤;ジクロロエタン、クロロホルム、クロロベンゼン等のハロゲン系溶剤;酢酸エチル、酢酸プロピル等のエステル系溶剤;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤;エタノール、ブタノール等のアルコール系溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
【0035】電荷発生層が表面に設けられる場合は、塗工法が用いられ、前記の電荷発生物質等を含む塗液に前記のフッ素化合物及び/又はフッ素含有樹脂が添加される。このとき溶剤としては、前記の溶剤のうち電荷輸送層が溶解しないものが用いられる。またこの場合、電荷発生層のガラス転移点が100℃以上であることが耐熱性の点から望ましい。電荷発生層が表面感光層であるかどうかにかかわらず、電荷発生物質と結着剤の重量比は30:70〜80:20であり、作製される電荷発生層の膜厚は0.05〜2μm程度である。
【0036】本発明に用いられる電荷輸送物質としては、例えばヒドラゾン誘導体、ブタジエン誘導体、トリフェニルアミン誘導体、スチルベン誘導体、ピラゾリン誘導体、オキサジアゾール誘導体等を挙げることが出来る。積層型の場合、電荷輸送層は電荷発生層と同様にして、主に電荷輸送物質、結着剤及び溶剤を用いて作製され、結着剤としてはポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリスチレン−アクリレート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリアミドイミド、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、ジアリルフタレート樹脂等が用いられる。これらの結着剤のうち、ガラス転移点が120℃以上のものが好適に用いられる。
【0037】電荷輸送層が表面に設けられる場合は、前記の電荷輸送物質等を含む塗液に前記のフッ素化合物及び/又はフッ素含有樹脂が添加される。また用いられる溶剤としては、電荷発生層が溶解しないものであれば特に限定されることはない。この場合、電荷輸送層のガラス転移点が100℃以上であることが耐熱性の点から望ましい。電荷輸送層が表面感光層であるかどうかにかかわらず、電荷輸送物質と結着剤との重量比は30:70〜70:30であり、作製される電荷輸送層の膜厚は10〜30μm程度である。
【0038】単層型感光体の場合は、前記の電荷発生物質、電荷輸送物質、結着剤、フッ素化合物及び/又はフッ素含有樹脂、並びに溶剤を用いて、塗工法等により作製される。各成分の種類、電荷発生物質と結着剤との重量比、電荷輸送物質と結着剤との重量比等は積層型の場合と同様である。得られる感光層の膜厚は10〜30μm程度である。また本発明における有機感光体は、必要により導電性基体と感光層との間に中間層、接着層を設けてもよい。
【0039】以上のようにして、本発明に用いられるフィルムベルト状耐熱型有機感光体は作製されるが、該有機感光体はフッ素化合物及び/又はフッ素含有樹脂を表面感光層に含有するため、トナーと感光体との離型性を著しく向上させることができる。このため本発明のように転写・定着を同時に行うような画像形成方法においても、トナーの融着等を起こすことなく、転写効率を良好に維持することができる。
【0040】本発明の画像形成方法では、低温定着を行う目的でトナーとしてカプセルトナーを用いる。本発明で用いるカプセルトナーはその原料、製造方法により多種存在するが、熱特性が所定の要求される範囲に入っているものであれば特にその製造工程、材料は限定されるものではない。即ち、トナーが40℃〜120℃の範囲で予熱された後、圧力ローラからの圧力により定着できるような熱特性を有するものが選ばれる。
【0041】これらのカプセルトナーは、通常次の製造方法により容易に製造できる。
(1)芯物質をポリマー非水溶液またはポリマーエマルジョン中に分散させた後この分散液を噴霧乾燥するスプレードライ法(噴霧乾燥法)、(2)イオン性ポリマーコロイドの混合水溶液中から芯物質の周囲に相分離をおこさせ単純エマルジョンから複合エマルジョンを経てマイクロカプセルを作る相分離法(コアセルベーション法)、(3)芯物質溶液または分散液をW/OまたはO/W型乳化系に分散し、同時に界面に殻材用モノマー(A)を集め、次の工程で界面にてモノマー(B)とモノマー(A)が反応する界面重合法、他にin situ重合法、液中硬化被覆法、気中懸濁被覆法、静電合体法、真空蒸着被覆法等が挙げられる。
【0042】殻材としてはスチレン系樹脂(特開昭58ー205162号公報)、ポリアミド系樹脂(特開昭58ー66948号公報)、エポキシ系樹脂(特開昭59ー148066号公報)、ポリウレタン系樹脂(特開昭57ー179860号公報)、ポリウレア系樹脂(特開昭62ー150262号公報)等多数のものが考案されている。また、芯材に含有される熱圧力定着性物質としては、ガラス転移点(Tg)が10℃以上50℃以下のポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステルポリアミド樹脂、ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。本発明では、熱解離型カプセルトナーまたは外殻が非晶質ポリエステルよりなるカプセルトナーが好適に用いられる。
【0043】熱解離型カプセルトナーとは熱により殻の構造が弱くなる性質の殻を有し、低温で圧力により定着させることが出来る芯材を内包するトナーであって、フィルムベルト状耐熱型有機感光体上で熱により殻の構造が変化し、圧力を加えられた時点で芯材が放出されて記録媒体に定着される。このカプセルトナーは界面重合法、in situ 重合法やスプレードライ法により製造される。本発明では、いずれの方法で製造した熱解離型カプセルトナーであっても良く、中でも界面重合法は芯材と殻材の機能分離が容易であるばかりでなく、水系で均一なトナーが製造でき、且つ芯材に低軟化点の物質を使用できる等、トナーの定着性の面で好ましい性質を有するトナーを得ることが出来る。
【0044】このような熱解離型カプセルトナーとして特開平4−212169号公報に記載された如く、着色剤及び必要によりワックスを含有せしめた単量体に2価以上のイソシアネート化合物、及び/又はイソチオシアネート化合物を加えた重合性組成物を2価以上のフェノール性ヒドロキシル基、及び/又はチオール基を有する化合物とを同時に分散剤の存在下において水系分散媒中に懸濁せしめた状態で重合することにより得られる熱解離型カプセルトナーを挙げることができる。
【0045】用いられる分散剤としては、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ポリアクリル酸等の高分子分散剤、又はリン酸塩、ポリリン酸塩、シリカ等の難水溶性若しくは不溶性無機分散剤等が挙げられる。
【0046】単量体としては、例えば疎水性エチレン性不飽和単量体が用いられ、具体的にはスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン等のスチレン誘導体、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル誘導体、ブタジエン誘導体等を挙げることができる。これらの単量体から重合して得られる芯材となる熱可塑性樹脂のガラスの転移点は、10℃〜50℃であることが好ましい。
【0047】着色剤としてはサーマルブラック法、アセチレンブラック法、チャンネルブラック法、ランプブラック法等により製造される各種のカーボンブラック、カーボンブラックの表面を樹脂で被覆しているグラフト化カーボンブラック、ニグロシン染料、フタロシアニンブルー、パーマネントブラウンFG、ブリリアントファーストスカーレット、ピグメントグリーンB、ローダミン−Bベース、ソルベントレッド49等を挙げることが出来、添加量としては単量体に対して1〜15重量%が好ましい。磁性トナーを得る場合にはチタンカプリング剤、シランカプリング剤等により処理された磁性粉を加えれば良い。
【0048】また、イソシアネート化合物としては2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、トリフェニルメタン−トリイソシアネート等の芳香族イソシアネート化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート化合物;イソホロンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)等の脂環式イソシアネート化合物等が挙げられる。また、イソチオシアネート化合物としては、キシリレン−1,4−ジイソチオシアネート、エチリジンジイソチオシアネート等を挙げることが出来る。
【0049】フェノール性ヒドロキシル基、又はチオール基を有する化合物としてはカテコール、4−メチルカテコール、4−アセチルカテコール、4−メトキシカテコール、4−フェニルカテコール等のカテコール誘導体;レゾルシン、4−メチルレゾルシン、4−エチルレゾルシン、4−ヘキシルレゾルシン、4−クロロレゾルシン、4−ベンジルレゾルシン等のレゾルシン誘導体、またはこれらのチオフェノール誘導体等を挙げることが出来る。
【0050】必要により用いられるワックスとしては、ポリオレフィン、脂肪酸金属塩、高級脂肪酸、高級アルコール、パラフィンワックス、アミド系ワックス、脂肪族フロロカーボン等を挙げることが出来、添加量は単量体に対して1〜20重量%が好ましい。このようにして合成された熱解離型カプセルトナーの軟化点は80〜150℃であるものが好ましく用いられる。
【0051】一方、外殻が非晶質ポリエステルよりなるカプセルトナーとは、少なくとも熱可塑性樹脂と着色剤を含有する熱溶融性芯材と、その芯材の表面を被覆するよう設けた外殻とにより構成され、該外殻が非晶質ポリエステルよりなることを特徴とし、熱によりトナーの殻の構造が変化し、圧力を加えられた時点で芯材が放出されて定着されるカプセルトナーである。ここで、非晶質ポリエステルは、1種以上のアルコール単量体および1種以上のカルボン酸単量体の縮重合によって得られるものであって、少なくとも3価以上の多価アルコール単量体および/または3価以上の多価カルボン酸単量体を含有する単量体を用いて縮重合によって得られるものである(特願平4−259088号)。
【0052】2価アルコール成分としては、例えばポリオキシプロピレン(2.2) −2,2 −ビス (4−ヒドロキシフェニル) プロパン、ポリオキシプロピレン(3.3) −2,2 −ビス (4−ヒドロキシフェニル) プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0) −2,2−ビス (4−ヒドロキシフェニル) プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0) −ポリオキシエチレン(2.0) −2,2 −ビス (4−ヒドロキシフェニル) プロパン、ポリオキシプロピレン(6) −2,2 −ビス (4−ヒドロキシフェニル) プロパン等のビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2 −プロピレングリコール、1,3 −プロピレングリコール、1,4 −ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5 −ペンタンジオール、1,6 −ヘキサンジオール、1,4 −シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールAのプロピレン付加物、ビスフェノールAのエチレン付加物、水素添加ビスフェノールA等が挙げられる。
【0053】3価以上のアルコール成分としては、例えばソルビトール、1,2,3,6 −ヘキサンテトロール、1,4 −ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4 −ブタントリオール、1,2,5 −ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4 −ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5 −トリヒドロキシメチルベンゼン等が挙げられる。好ましくは、3価のアルコールが用いられる。本発明においては、これらの2価のアルコール単量体及び3価以上の多価アルコール単量体から単独であるいは複数の単量体を用いることができる。
【0054】また、酸成分としては、カルボン酸成分で2価の単量体として、例えばマレイン酸、フマール酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、マロン酸、n−ドデセニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、n−オクチルコハク酸、イソオクテニルコハク酸、イソオクチルコハク酸、及びこれらの酸の無水物、もしくは低級アルキルエステル等が挙げられる。
【0055】3価以上のカルボン酸成分としては、例えば1,2,4 −ベンゼントリカルボン酸、2,5,7 −ナフタレントリカルボン酸、1,2,4 −ナフタレントリカルボン酸、1,2,4 −ブタントリカルボン酸、1,2,5 −ヘキサントリカルボン酸、1,3 −ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4 −シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ (メチレンカルボキシル) メタン、1,2,7,8 −オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、エンポール三量体酸及びこれらの酸無水物、低級アルキルエステル等が挙げられる。好ましくは、3価のカルボン酸もしくはその誘導体が用いられる。本発明においては、これらの2価のカルボン酸単量体及び3価以上のカルボン酸単量体から単独であるいは複数の単量体を用いることができる。
【0056】本発明における非晶質ポリエステルの製造方法は、特に限定されることなく、上記の単量体を用いてエステル化、エステル交換反応により製造することができる。ここで、非晶質とは明確な融点を有しないものであり、本発明において結晶質のポリエステルを用いると融解に必要なエネルギー量が大きく、トナー定着性が向上できず好ましくない。
【0057】このようにして得られる非晶質ポリエステルは、さらにガラス転移点が50〜80℃であることが好ましい。50℃未満であるとトナーの保存安定性が悪くなり、80℃を越えるとトナーの定着性が悪くなる。なお本発明において、ガラス転移点とは示差走査熱量計(セイコー電子工業社製)を用い、昇温速度10℃/min で測定した際に、ガラス転移点以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの間での最大傾斜を示す接線との交点の温度をいう。
【0058】また、該非晶質ポリエステルの酸価は、3〜50(KOHmg/g)であることが好ましく、より好ましくは10〜30(KOHmg/g)である。3(KOHmg/g)未満であると、殻材となる非晶質ポリエステルがin situ重合法において界面に出にくくなり、トナーの保存安定性が悪く、50(KOHmg/g)を越えるとポリエステルが水相へ移行しやすく製造安定性が悪くなる。ここで酸価の測定方法は、JIS K0070によるものである。
【0059】本発明に好適に用いられる外殻が非晶質ポリエステルよりなるカプセルトナーは、in situ重合法などの公知の方法により製造される。このカプセルトナーは少なくとも熱可塑性樹脂と着色剤を含有する熱溶融性芯材と、その芯材の表面を被覆するよう設けた外殻とにより構成される。
【0060】本発明における外殻が非晶質ポリエステルよりなるカプセルトナーの熱溶融性芯材の主成分として用いられる樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリエステル・ポリアミド樹脂、ポリアミド樹脂、ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられ、好ましくは、ビニル系樹脂が挙げられる。このような熱溶融性芯材の主成分となる熱可塑性樹脂に由来するガラス転移点は、10〜50℃であることが好ましいが、ガラス転移点が10℃未満ではカプセルトナーの保存安定性が悪化し、50℃を越えるとカプセルトナーの定着強度が悪化し好ましくない。
【0061】前記の熱可塑性樹脂のうち、ビニル樹脂を構成する単量体としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4 −ジメチルスチレン、p−クロルスチレン、ビニルナフタレン等のスチレン若しくはスチレン誘導体、例えばエチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等の如きエチレン系不飽和モノオレフィン類、例えば塩化ビニル、臭化ビニル、弗化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ギ酸ビニル、カプロン酸ビニル等の如きビニルエステル類、例えばアクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸デシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニル、α−クロルアクリル酸メチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸イソオクチル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等の如きエチレン性モノカルボン酸及びそのエステル、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等の如きエチレン性モノカルボン酸置換体、例えばマレイン酸ジメチル等の如きエチレン性ジカルボン酸及びその置換体、例えばビニルメチルケトン等の如きビニルケトン類、例えばビニルメチルエーテル等の如きビニルエーテル類、例えばビニリデンクロリド等の如きビニリデンハロゲン化物、例えばN−ビニルピロール、N−ビニルピロリドン等の如きN−ビニル化合物類が挙げられる。
【0062】本発明に係る芯材用の樹脂を構成する成分の内、樹脂の主骨格形成にスチレンもしくはスチレン誘導体を50〜90重量%用い、樹脂の軟化温度等の熱特性の調節にエチレン性モノカルボン酸もしくはそのエステルを10〜50重量%用いることが、芯材用樹脂のガラス転移点を制御し易く好ましい。
【0063】本発明に係る芯材用の樹脂を構成する単量体組成物中に架橋剤を添加する場合、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3 −ブチレングリコールジメタクリレート、1,6 −ヘキシレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、2,2'−ビス(4−メタクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2'−ビス(4−アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ジブロムネオペンチルグリコールジメタクリレート、フタル酸ジアリルなど、一般の架橋剤を適宜(必要に応じて2種以上組み合わせて)用いることができる。
【0064】これらの架橋剤の使用量は、重合性単量体を基準にして0.001 〜15重量%、好ましくは0.1 〜10重量%で使用するのが良い。これらの架橋剤の使用量が15重量%より多いとトナーが熱で溶融しにくくなり、熱定着性又は熱圧力定着性が劣ることとなる。また使用量が0.001 重量%より少ないと、熱圧力定着において、トナーの一部が紙に完全に固着しないでローラー表面に付着し、次の紙に転移するというオフセット現象を防ぎにくくなる。また、上記単量体を、不飽和ポリエステルの存在下に重合させてグラフトもしくは架橋重合体とし、芯材用の樹脂としても良い。
【0065】また、芯材用の熱可塑性樹脂を製造する際使用される重合開始剤としては、2,2'−アゾビス(2,4 −ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、1,1'−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2'−アゾビス−4−メトキシ−2,4 −ジメチルバレロニトリル、その他のアゾ系又はジアゾ系重合開始剤:ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、イソプロピルパーオキシカーボネート、キュメンハイドロパーオキサイド、2,4 −ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイドの如き過酸化物系重合開始剤が挙げられる。
【0066】重合体の分子量及び分子量分布を調節する目的で、又は反応時間を調節する目的等で、二種類又はそれ以上の重合開始剤を混合して使用することもできる。重合開始剤の使用量は、重合単量体100 重量部に対して0.1 〜20重量部、好ましくは1〜10重量部である。
【0067】以下、in situ重合法による外殻が非晶質ポリエステルよりなるカプセルトナーの製造方法について述べる。この製造方法において、外殻形成は、芯材構成材料と非晶質ポリエステルよりなる外殻構成材料の混合液を分散媒中に分散させ、外殻構成材料が液滴の表面に偏在するという性質を利用して行うことができる。即ち、溶解度指数の差によって混合液の液滴中で芯材構成材料と外殻構成材料の分離が起こり、その状態で重合が進行してカプセル構造が形成される。この方法によると、外殻がほぼ均一な厚みを持った非晶質ポリエステルよりなる層として形成されるため、トナーの帯電特性が均質になるという特長を有する。
【0068】この方法による場合、分散質の凝集、合体を防ぐ為に、分散媒中に分散安定剤を含有させておく必要がある。分散安定剤としては、例えばゼラチン、ゼラチン誘導体、ポリビニルアルコール、ポリスチレンスルホン酸、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、アリル−アルキル−ポリエーテルスルホン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、カプリル酸ナトリウム、カプロン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウム、3,3 −ジスルホンジフェニル尿素−4,4 −ジアゾ−ビス−アミノ−β−ナフトール−6−スルホン酸ナトリウム、オルト−カルボキシベンゼン−アゾ−ジメチルアニリン、2,2,5,5 −テトラメチル−トリフェニルメタン−4,4 −ジアゾ−ビス−β−ナフトール−ジスルホン酸ナトリウム、コロイダルシリカ、アルミナ、リン酸三カルシウム、水酸化第二鉄、水酸化チタン、水酸化アルミニウム、その他を使用することができる。これらの分散安定剤は二種以上を併用してもよい。
【0069】前記分散安定剤の分散媒としては、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、グリセリン、アセトニトリル、アセトン、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等が挙げられる。これらを単独あるいは混合して用いることも可能である。
【0070】前記の非晶質ポリエステルの添加量は、芯材100重量部に対し、通常3〜50重量部、好ましくは5〜40重量部である。3重量部未満であると外殻の膜厚が薄くなりすぎて保存安定性が悪くなり、50重量部を越えると高粘度になり微粒化が困難となり製造安定性が悪くなる。
【0071】なお、本発明のカプセルトナーの粒径は別段制約を受けるものではないが、平均粒径は通常3〜30μm とされる。カプセルトナーの外殻の厚みは0.01〜1μmが好ましく、0.01μm 未満では耐ブロッキング性が悪化し、1μm を超えると熱溶融性が悪化し好ましくない。
【0072】本発明におけるカプセルトナーには必要に応じて流動性向上剤、クリーニング性向上剤等を用いることが出来る。流動性向上剤としてはシリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、酸化亜鉛、クレー、雲母、酸化ジルコニウム、炭化珪素、窒化珪素等を挙げることが出来、好ましくはシリカの微粉末である。又このシリカはシランカプリング剤、チタンカプリング剤、フッ素樹脂等により表面処理されたものも好ましく用いられる。クリーニング性向上剤としてはステアリン酸亜鉛に代表される高級脂肪酸の金属塩、フッ素系樹脂の微粉末などがある。
【0073】
【実施例】以下、実施例、比較例および試験例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例等によりなんら限定されるものではない。
【0074】カプセルトナー■の合成スチレン70重量部、アクリル酸2−エチルヘキシル29.5重量部、ジメチルアミノエチルメタクリレート0.5重量部、ジビニルベンゼン1重量部、カーボンブラック“Monarch880”(キャボット(株)製)10重量部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル4重量部、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート“ミリオネートMT”(日本ポリウレタン工業(株)製)9.5重量部をサンドミルで良く混合して重合性組成物を得た。この重合性組成物を燐酸三カルシウム4重量%を含む水中に30重量%になるように加え、ホモジナイザーにて平均粒径が9μmになるように分散させて懸濁液を得た。その後、この懸濁液を攪拌機と滴下ロートを備えた4ツ口フラスコに入れ、攪拌下にレゾルシノール22重量部、マロン酸ジエチル3.6重量部、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン0.5重量部、イオン交換水40重量部からなる混合溶液を滴下した後、80℃で10時間加熱して反応せしめた。冷却後、塩酸水溶液にて燐酸三カルシウムを除去し、水洗浄の後、乾燥させて熱解離型カプセルトナーを得た。このカプセルトナー100重量部に疎水性シリカ微粉末“アエロジルR−972”(アエロジル(株)製)0.3重量部を加えて混合し本発明におけるカプセルトナー■を得た。
【0075】カプセルトナー■の合成スチレン70重量部、アクリル酸2−エチルヘキシル29.5重量部、ジメチルアミノエチルメタクリレート0.5重量部、ジビニルベンゼン1重量部、磁性粉“BL−120”(チタン工業(株)製)30重量部、カーボンブラック“Monarch880”(キャボット(株)製)5重量部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル4重量部、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート“ミリオネートMT”(日本ポリウレタン工業(株)製)9.5重量部をサンドミルで良く混合して重合性組成物を得た。この重合性組成物を燐酸三カルシウム4重量%を含む水中に30重量%になるように加え、ホモジナイザーにて平均粒径が9μmになるように分散させて懸濁液を得た。その後、この懸濁液を攪拌機と滴下ロートを備えた4ツ口フラスコに入れ、攪拌下にレゾルシノール22重量部、マロン酸ジエチル3.6重量部、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン0.5重量部、イオン交換水40重量部からなる混合溶液を滴下した後、80℃で10時間加熱して反応せしめた。冷却後、塩酸水溶液にて燐酸三カルシウムを除去し、水洗浄の後、乾燥させて熱解離型カプセルトナーを得た。このカプセルトナー100重量部に疎水性シリカ微粉末“アエロジルR−972”(アエロジル(株)製)0.3重量部を加えて混合し本発明におけるカプセルトナー■を得た。
【0076】カプセルトナー■の合成ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物367.5g、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物146.4g、テレフタル酸126.0g、ドデセニル無水コハク酸40.2g、無水トリメリット酸77.7gをガラス製2リットルの4つ口フラスコに入れ、温度計、ステンレス製攪拌棒、流下式コンデンサー、及び窒素導入管を取り付け、マントルヒーター中で、窒素気流下にて220℃にて反応せしめた。
【0077】重合度は、ASTM E28−67に準拠した軟化点より追跡を行い、軟化点が110℃に達したとき、反応を終了した。また、得られた樹脂のガラス転移点を、示差走査熱量計(セイコー電子工業社製)で測定したところ、65℃であった。また、軟化点および酸価を測定し、それぞれ110℃および18KOHmg/gであった。なお、酸価はJIS K0070に準ずる方法により測定した。
【0078】スチレン69.0重量部、2−エチルヘキシルアクリレート31.0重量部、ジビニルベンゼン 0.9重量部、カーボンブラック「#44 」(三菱化成社製)7.0 重量部に、前記のようにして得られた樹脂を20重量部、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル3.5 重量部を添加し、アトライター(三井三池化工機社製)に投入し、10℃にて5時間分散し、重合性組成物を得た。これを、2リットルのガラス製セパラブルフラスコに予め調製したリン酸三カルシウム4重量%の水性コロイド溶液800g中に30重量%になる量だけ添加し、TKホモミキサー(特殊機化工業社製)を用いて、5℃にて回転数12000rpmで5分間乳化分散させた。
【0079】次に、4つ口のガラス製の蓋をし、還流冷却管、温度計、窒素導入管、ステンレススチール製撹拌棒を取り付け、電熱マントルヒータ中に設置した。窒素下にて撹拌を続けながら、85℃まで昇温し、10時間反応せしめた。冷却後、10%塩酸水溶液にて分散媒を溶かし、濾過、水洗を経て、45℃にて12時間、20mmHgで減圧乾燥し、風力分級機にて分級し、平均粒径8μm の外殻が非晶質ポリエステルであるカプセルトナーを得た。
【0080】このカプセルトナー 100重量部に、疎水性シリカ微粉末「アエロジル R-972」(日本アエロジル社製)0.4 重量部を加えて混合し、本発明のカプセルトナーを得た。芯材中の樹脂に由来するガラス転移点は30.6℃、また、軟化点は125.5 ℃であった。これをカプセルトナー■とする。
【0081】実施例1シームレスニッケルベルト上にアルコール可溶性ポリアミド“アミランCM8000”(東レ(株)製)10重量部とメタノール/ブタノール(7/3)190重量部から成る溶液を浸漬塗布し、100℃で30分間乾燥して、膜厚0.6μmの下引き層を形成した。次いで、X型無金属フタロシアニン“8120B”(大日本インキ工業(株)製)7重量部、ポリビニルブチラール“エスレックBM−1”(積水化学工業(株)製)7重量部、及びシクロヘキサノン336重量部から成る混合物をボールミルにて分散液を得た。この分散液を下引き層の上に浸漬塗布し、100℃で30分間乾燥して、膜厚0.5μmの電荷発生層を形成した。次にポリカーボネート“ユーピロンE−2000”(三菱瓦斯化学工業(株)製)30重量部、ブタジエン系電荷輸送材“T−405”(アナン(株)製)20重量部、エポキシ変性フルオロアルキル化合物“O−110”(ダイキン工業(株)製)0.8重量部、及び1,2−ジクロロエタン168重量部から成る溶液を上記電荷発生層上に浸漬塗布し、100℃で30分間乾燥して膜厚20μmの電荷輸送層を形成してフィルムベルト状耐熱型有機感光体を得た。得られた感光体の表面感光層のガラス転移点をセイコー電子工業(株)製“DSC210”により測定した。
【0082】実施例2シームレスニッケルベルト上にアルコール可溶性ポリアミド“アミランCM8000”(東レ(株)製)10重量部とメタノール/ブタノール(7/3)190重量部から成る溶液を浸漬塗布し、100℃で30分間乾燥して、膜厚0.6μmの下引き層を形成した。次いで、X型無金属フタロシアニン“8120B”(大日本インキ工業(株)製)7重量部、ポリビニルブチラール“エスレックBM−1”(積水化学工業(株)製)7重量部、及びシクロヘキサノン336重量部から成る混合物をボールミルにて分散液を得た。この分散液を下引き層の上に浸漬塗布し、100℃で30分間乾燥して、膜厚0.5μmの電荷発生層を形成した。次にポリアリレート“Uポリマー U−100”(ユニチカ(株)製)28重量部、フッ素化ポリカーボネート“PC−AF”(帝人化成(株)製)2重量部、ブタジエン系電荷輸送材“T−405”(アナン(株)製)20重量部、及び1,2−ジクロロエタン168重量部から成る溶液を上記電荷発生層上に浸漬塗布し、100℃で30分間乾燥して膜厚20μmの電荷輸送層を形成してフィルムベルト状耐熱型有機感光体を得た。得られた感光体の表面感光層のガラス転移点を実施例1と同様の方法で測定した。
【0083】実施例3シームレスのアルミニウム蒸着ポリイミドベルト上にアルコール可溶性ポリアミド“アミランCM8000”(東レ(株)製)10重量部とメタノール/ブタノール(7/3)190重量部から成る溶液を浸漬塗布し、100℃で30分間乾燥して、膜厚0.6μmの下引き層を形成した。次いで、4,10−ジブロモアントアントロン“Monolite Red 2Y"(ICI社製)7重量部、ポリビニルブチラール“エスレックBM−1”(積水化学工業(株)製)7重量部、及びシクロヘキサノン336重量部から成る混合物をボールミルにて分散液を得た。この分散液を下引き層の上に浸漬塗布し、100℃で30分間乾燥して、膜厚0.5μmの電荷発生層を形成した。次にポリカーボネート“Z−500”(三菱瓦斯化学工業(株)製)30重量部、ヒドラゾン系電荷輸送材“CTC−191”(アナン(株)製)20重量部、フッ素化アルキルアクリレート共重合体“モディパーF100”(日本油脂(株)製)0.8重量部、及び1,2−ジクロロエタン168重量部から成る溶液を上記電荷発生層上に浸漬塗布し、100℃で30分間乾燥して膜厚20μmの電荷輸送層を形成してフィルムベルト状耐熱型有機感光体を得た。得られた感光体の表面感光層のガラス転移点を実施例1と同様の方法で測定した。
【0084】実施例4シームレスのアルミニウム蒸着ポリアリレートベルト上にアルコール可溶性ポリアミド“アミランCM8000”(東レ(株)製)10重量部とメタノール/ブタノール(7/3)190重量部から成る溶液を浸漬塗布し、100℃で30分間乾燥して、膜厚0.6μmの下引き層を形成した。次いで、オキシチタニルフタロシアニン7重量部、ポリビニルブチラール“エスレックBM−1”(積水化学工業(株)製)7重量部、及びシクロヘキサノン336重量部から成る混合物をボールミルにて分散液を得た。この分散液を下引き層の上に浸漬塗布し、100℃で30分間乾燥して、膜厚0.3μmの電荷発生層を形成した。次にポリカーボネート“ユーピロンE−2000”(三菱瓦斯化学工業(株)製)20重量部、トリスチリル系電荷輸送材(特開平2−279767の合成例■に準じて合成)20重量部、フッ素化ビニル共重合体“GF−150”(東亜合成化学工業(株)製)1.2重量部、及び1,2−ジクロロエタン168重量部から成る溶液を上記電荷発生層上に浸漬塗布し、100℃で30分間乾燥して膜厚25μmの電荷輸送層を形成してフィルムベルト状耐熱型有機感光体を得た。得られた感光体の表面感光層のガラス転移点を実施例1と同様の方法で測定した。
【0085】比較例1実施例1において、電荷輸送層作製時にエポキシ変性フルオロアルキル化合物“O−110”を添加しないこと以外は同様にしてフィルムベルト状有機感光体を作製した。得られた感光体の表面感光層のガラス転移点を実施例1と同様の方法で測定した。
【0086】比較例2実施例3において、電荷輸送層作製時にフッ素化アルキルアクリレート共重合体“モディパーF100”を添加しないこと以外は同様にしてフィルムベルト状有機感光体を作製した。得られた感光体の表面感光層のガラス転移点を実施例1と同様の方法で測定した。
【0087】比較例3実施例2において、電荷輸送層作製時にポリアリレートをポリスチレン“スタイロンGP693”(旭化成(株)製)に変えて用いた以外は同様にしてフィルムベルト状有機感光体を作製した。得られた感光体の表面感光層のガラス転移点を実施例1と同様の方法で測定した。
【0088】試験例図1に例示した画像形成装置(プロセス速度:40mm/sec、転写、定着時のローラ線圧:1.5kg/cm)を用いて、帯電、露光、現像の工程を経てトナーを可視像化した後、フィルムベルト状耐熱型有機感光体上で記録媒体である紙に転写・定着を同時に行った。この時、フィルムベルト状耐熱型有機感光体として、実施例及び比較例で得られたものをそれぞれ用い、またトナーとして、表1に示すものを用い、以下の方法で定着性、転写効率、画像品質、安定性等の評価を行った。尚、カプセルトナー■を用いる場合は樹脂コートされたフェライトキャリアとの二成分現像法(トナー/現像剤=6重量%)にて、カプセルトナー■の場合は磁性一成分現像法にて、ともに正帯電トナーによる正規現像方式により現像を行った。カプセルトナー■の場合は、非磁性一成分現像法にて負帯電トナーによる反転現像方式により現像を行った。
【0089】(1)定着性は砂消しゴムによる擦り試験でトナーが紙から剥離するか否かにより評価した。尚、定着温度は、カプセルトナーの定着性および感光体の表面層のガラス転移点(Tg)が異なるため、それぞれ表1に示す温度とした。
(2)転写効率は、次式より求めた。
転写効率(%)=(転写前の感光体上のトナー濃度−転写後の感光体上のトナー濃度)/転写前の感光体上のトナー濃度×100ここで、感光体上のトナー濃度は、感光体上のトナーをセロテープで剥離し、セロテープに付着したトナーをマクベス濃度計でトナー濃度(画像濃度)を測定することにより求めた。
(3)画像品質は、画像濃度(マクベス濃度計により測定)、解像度により評価した。
(4)安定性は、転写効率及び画像濃度の初期値と1000枚印刷後の値の比較により評価した。
(2)〜(4)の結果について、感光体の表面感光層のガラス転移点(Tg)とともに、表1に示した。
【0090】
【表1】


【0091】表1の結果が示すように、本発明の実施例1〜4で得られた感光体を用いた場合は、転写効率、画像品質、安定性がいずれも良好であった。これに対し比較例1〜3では、感光体の離型性、耐熱性が十分でないため1〜100枚印刷後にトナーの感光体表面への融着が起こった。また実施例1〜4については、定着性も良好であった。
【0092】
【発明の効果】本発明の画像形成方法において、トナーにカプセルトナーを用いることにより、低温定着が可能となったため、有機感光体の寿命を延ばすことができた。更に、フッ素化合物及び/又はフッ素含有樹脂を含有したフィルムベルト状耐熱型有機感光体を用いることにより、トナーと感光体との離型性が著しく向上したため、転写効率が非常に良くなり回収トナーの保存スペースが不要になると共に耐久性が向上した。更に低温定着が可能になったこと、ならびに回収トナーボックスが不要になったことにより、マシンの小型化及び低価格化が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の画像形成方法の概念図を示す。
【図2】本発明の画像形成方法の概念図を示す。
【符号の説明】
1 フィルムベルト状耐熱型有機感光体
2 露光装置
3 現像器
4 ヒートローラ
5、5a、5b 圧力ローラ
6 記録媒体
7 帯電装置
8 クリーニング装置
9 除電装置
10 トナー
11 搬送ベルト
12 支持ローラ
13 加熱用ヒ−タ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 感光体を帯電させる帯電工程と、該感光体を露光する露光工程と、該感光体上に形成された静電潜像にトナーを付着させてトナー像を形成する現像工程と、感光体上に形成された該トナー像を記録紙等の記録媒体に同時に転写、定着する工程とからなる画像形成方法において、前記トナーがカプセルトナーであり、前記感光体が表面感光層にフッ素化合物及び/又はフッ素含有樹脂を含むフィルムベルト状耐熱型有機感光体であることを特徴とする画像形成方法。
【請求項2】 フッ素化合物がエポキシ変性フルオロアルキル化合物であり、フッ素含有樹脂がフッ素化ポリカーボネート、フッ素化エポキシ樹脂、フッ素化アルキル(メタ)アクリレート共重合体、及びフッ素化ビニル共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、表面感光層のガラス転移点が100℃以上である請求項1記載の画像形成方法。
【請求項3】 カプセルトナーが、熱解離型カプセルトナーである請求項1又は2記載の画像形成方法。
【請求項4】 カプセルトナーが、外殻が非晶質ポリエステルよりなるカプセルトナーである請求項1又は2記載の画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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