説明

画像形成装置、シート搬送部材およびシート搬送部材製造方法

【課題】シート搬送部材の膨潤によるシート搬送速度の変動を低減すること。
【解決手段】記録シート(S)表面の未定着トナー像を加熱定着する定着装置(F)のシート搬送方向下流側に配置され、前記トナーに含まれて前記定着装置(F)により加熱溶融されて液状になった液状成分が浸透する円筒状のシート搬送ロール(2)と、前記シート搬送ロール(2)の内周側に配置されたシャフト(1)と、前記シャフト(1)と前記シート搬送ロール(2)との境界部に配置され且つ浸透した前記液状成分が貯留される貯留部(1a)と、を有する前記シート搬送部材(Ra1)と、を備えた画像形成装置(U)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタ、FAX、複写機あるいはこれら全てまたは複数の機能を有する複合機等の画像形成装置に関し、特に、記録シート表面の未定着トナー像が加熱定着される定着装置を有する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電子写真方式の画像形成装置では、記録シート表面にトナー像が転写され、定着装置でトナーが加熱、溶融されて記録シートに定着される。前記加熱定着されるトナーは、加熱により溶融する樹脂等の材料により構成されており、最近使用されている乳化重合トナーには、低融点のワックス(パラフィン)が内包されているものもある。
前記低融点のワックスが含まれたトナーでは、定着領域通過後、十分に冷却される前に、定着装置下流側のゴムロール(シート搬送部材)で搬送されると、液状のワックスがゴムロールに接触し、ゴム内部に浸透してしまうことがある。ワックスが浸透すると、ゴムロールが膨潤してしまい、ロール径が大きくなり、ゴムロールの周速が変動してしまう。この結果、ゴムロールの膨潤によって周速度、すなわち、シート搬送速度が変動し、紙詰まり等の障害が発生するという問題がある。
【0003】
溶融したトナーによるゴムロールの膨潤とは異なるが、画像形成装置の技術分野において、液体が浸透して部材が膨潤することを防止するための技術として、下記の従来技術(J01),(J02)が公知である。
(J01)特許文献1(特開平11−219051号公報)記載の技術
特許文献1には、定着ベルト表面に離型剤としてのシリコンオイルを塗布するオイル塗布ユニットを有する定着装置において、定着ベルトがシリコンオイルにより膨潤することを防止するために、ベルトの弾性層を、第1弾性層、離型剤バリア層(フッ素ゴム)、第3弾性層が積層して形成する技術が記載されている。
(J02)特許文献2(特開2004−138743号公報)記載の技術
特許文献2には、液体現像剤(ジメチルポリシロキサンオイル等)を使用する現像装置において、現像剤収容タンクの液体現像剤をくみ上げる塗布ローラと現像ローラとの間に中間ローラを設け、中間ローラを芯金、弾性層、導電層(PTFE分散のコーティング層)の3層構造として、弾性層の材質を、現像剤の溶解度指数(SP値)から2以上離れたもの(ウレタンゴム等)とすることで、弾性層が液体現像剤で膨潤したり溶解したりすることを防止する技術が記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開平11−219051号公報(「0035」〜「0036」、「0047」〜「0048」)
【特許文献2】特開2004−138743号公報(「0006」、「0010」〜「0011」)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
(従来技術の問題点)
前記従来技術(J01),(J02)では、ベルトやロールが複数層で構成されているため、構成が複雑であり、製造上、精度良く層の厚みをコントロールすることや、特性の違う材料を成型することが非常に困難であるという問題がある。また、特性の異なる材料の組み合わせで部品が構成されていることから、経時劣化、熱劣化、通紙による劣化時に、それぞれの層の劣化度合いの違いから、層間で剥離が発生したり、部品の形状が歪んでしまい、部品が故障してしまう問題があった。さらに、オイル類の浸透を防止するためのバリア層に使用されるフッ素ゴムやPTFEコーティングは高価であるという問題がある上に、これらの材料は他の材料との親和性が低いことから、特にベルト形状とする場合には他の材料との接着強度を保持することが難しいという問題があった。
【0006】
本発明は前記事情に鑑み、次の記載内容(O01),(O02)を技術的課題とする。
(O01)シート搬送部材の膨潤によるシート搬送速度の変動を低減すること。
(O02)低コスト且つシンプルで経時的な故障に強い構成で、シート搬送速度の変動を抑えること。
【課題を解決するための手段】
【0007】
次に、前記課題を解決した本発明を説明するが、本発明の構成要素には、後述の実施例の構成要素との対応を容易にするため、実施例の構成要素の符号をカッコで囲んだものを付記する。
なお、本発明を後述の実施例の符号と対応させて説明する理由は、本発明の理解を容易にするためであり、本発明の範囲を実施例に限定するためではない。
【0008】
(第1発明)
前記技術的課題を解決するために第1発明の画像形成装置(U)は、
記録シート(S)表面の未定着トナー像を加熱定着する定着装置(F)と、
前記定着装置(F)のシート搬送方向下流側に配置され且つ前記記録シート(S)を搬送するシート搬送部材(Ra1〜Ra8)であって、前記トナーに含まれて前記定着装置(F)により加熱溶融されて液状になった液状成分が浸透する円筒状のシート搬送ロール(2,62,72)と、前記シート搬送ロール(2,62,72)の内周側に配置されたシャフト(1,11,21,31,41,51,61,71)と、前記シャフト(1,11,21,31,41,51,61,71)と前記シート搬送ロール(2,62,72)との境界部に配置され且つ浸透した前記液状成分が貯留される貯留部(1a,11a,21a,31a,41a,51a,72a)と、を有する前記シート搬送部材(Ra1〜Ra8)と、
を備えたことを特徴とする。
【0009】
(第1発明の作用)
前記構成要件を備えた第1発明の画像形成装置(U)では、定着装置(F)は、記録シート(S)表面の未定着トナー像を加熱定着する。前記定着装置(F)のシート搬送方向下流側に配置されたシート搬送部材(Ra1〜Ra8)は、前記記録シート(S)を搬送する。前記シート搬送部材(Ra1〜Ra8)の円筒状のシート搬送ロール(2,62,72)には、前記トナーに含まれて前記定着装置(F)により加熱溶融されて液状になった液状成分が浸透する。前記シート搬送部材(Ra1〜Ra8)の前記シート搬送ロール(2,62,72)の内周側に配置されたシャフト(1,11,21,31,41,51,61,71)と前記シート搬送ロール(2,62,72)との境界部に配置された貯留部(1a,11a,21a,31a,41a,51a,72a)には、浸透した前記液状成分が貯留される。
したがって、第1発明の画像形成装置(U)では、前記浸透した液状成分は前記貯留部(1a,11a,21a,31a,41a,51a,72a)に貯留され、前記シート搬送ロール(2,62,72)の膨潤が低減されるので、シート搬送部材(Ra1〜Ra8)の膨潤によるシート搬送速度の変動を低減することができる。
【0010】
(第1発明の形態1)
第1発明の形態1の画像形成装置(U)は第1発明において、
円柱状の前記シャフト(1)と、
前記シャフト(1)の外周面に前記シャフト(1)の軸方向に沿って形成された貯留溝(1a)により構成された前記貯留部(1a)と、
を備えたことを特徴とする。
【0011】
(第1発明の形態1の作用)
前記構成要件を備えた第1発明の形態1の画像形成装置(U)では、貯留部(1a)の貯留溝(1a)は、円柱状のシャフト(1)の外周面に前記シャフト(1)の軸方向に沿って形成された貯留溝(1a)に前記浸透した液状成分を貯留できる。
【0012】
(第1発明の形態2)
第1発明の形態2の画像形成装置(U)は、第1発明において、
円柱状の前記シャフト(11)と、
前記シャフト(11)の外周面に形成されたリング状の貯留溝(11a)により構成された前記貯留部(11a)と、
を備えたことを特徴とする。
【0013】
(第1発明の形態2の作用)
前記構成要件を備えた第1発明の形態2の画像形成装置(U)では、貯留部(11a)の円柱状の前記シャフト(11)の外周面に形成されたリング状の貯留溝(11a)に前記浸透した液状成分を貯留できる。
【0014】
(第1発明の形態3)
第1発明の形態3の画像形成装置(U)は、第1発明において、
中空円筒状の前記シャフト(21)内部に形成された貯留空間(21b)により構成された前記貯留部(21b)と、
前記シャフト(21)の軸方向に沿って溝状に形成され、前記円筒状のシャフト(21)の外周側と前記貯留空間(21b)とを接続する接続路(21a)と、
を備えたことを特徴とする。
【0015】
(第1発明の形態3の作用)
前記構成要件を備えた第1発明の形態3の画像形成装置(U)では、前記シート搬送ロール(2)の内周面に浸透した液状成分は、前記シャフト(21)の軸方向に沿って溝状に形成された接続路(21a)を通じて前記円筒状のシャフト(21)の外周側から前記シャフト(21)内部の貯留空間(21b)に浸入し、貯留される。したがって、第1発明の形態3の画像形成装置(U)では前記浸透した液状成分を貯留できる。
【0016】
(第1発明の形態4)
第1発明の形態4の画像形成装置(U)は、第1発明において、
中空円筒状の前記シャフト(31)内部に形成された貯留空間(31b)により構成された前記貯留部(31b)と、
前記シャフト(31)の外周面に形成されたリング状の貯留溝(31b)と、
前記貯留溝(31b)と前記貯留空間とを接続する接続路(31c)と、
を備えたことを特徴とする。
【0017】
(第1発明の形態4の作用)
前記構成要件を備えた第1発明の形態4の画像形成装置(U)では、前記シート搬送ロール(2)の内周面に浸透した液状成分は、前記シャフト(31)の外周面に形成されたリング状の貯留溝(31b)から接続路(31c)を通じて中空円筒状の前記シャフト(31)内部に形成された貯留空間(31b)に浸入し、貯留される。したがって、第1発明の形態4の画像形成装置(U)では、前記浸透した液状成分を貯留できる。
【0018】
(第1発明の形態5)
第1発明の形態5の画像形成装置(U)は、第1発明において、
中空円筒状の前記シャフト(41,51)内部に形成された貯留空間(41b,51b)により構成された前記貯留部(41a,51a)と、
前記円筒状のシャフト(41,51)の外周側と前記貯留空間(41b,51b)とを接続する貫通孔(41a,51a)により構成された接続路(41a,51a)と、
を備えたことを特徴とする。
【0019】
(第1発明の形態5の作用)
第1発明の形態5の画像形成装置(U)では、前記シート搬送ロール(2)の内周面に浸入した液状成分は、前記貫通孔(41a,51a)を通じて前記シャフト(41,51)の外周側から前記シャフト(41,51)内部の貯留空間(41b,51b)である前記貯留部(41a,51a)に貯留される。したがって、第1発明の形態5の画像形成装置(U)では、前記浸透した液状成分を貯留できる。
【0020】
(第1発明の形態6)
第1発明の形態6の画像形成装置(U)は第1発明の形態5において、
複数の貫通孔(41a)が形成された板材(41c)を円筒状に変形させて作製された前記シャフト(41)、
を備えたことを特徴とする。
【0021】
(第1発明の形態6の作用)
前記構成要件を備えた第1発明の形態6の画像形成装置(U)では、シート搬送部材(Ra5)のシャフト(41)は、複数の貫通孔(41a)が形成された板材(41c)を円筒状に変形させて作製することができる。
【0022】
(第1発明の形態7)
第1発明の形態7の画像形成装置(U)は、第1発明の形態6において、
前記シャフト(51)の外周に沿って繋ぎ目(51d)が螺旋状になるように、前記円筒状に変形させて作製された前記シャフト(51)、
を備えたことを特徴とする。
【0023】
(第1発明の形態7の作用)
前記構成要件を備えた第1発明の形態7の画像形成装置(U)では、シート搬送部材(Ra6)のシャフト(51)は、外周に沿って繋ぎ目(51d)が螺旋状になるように、前記円筒状に変形させて作製することができる。したがって、前記シャフト(51)の繋ぎ目(51d)が螺旋状に構成されているので、仮に前記繋ぎ目(51d)に段差が形成されても、繋ぎ目(51d)の外周側のシート搬送ロール(2)表面には、螺旋状の段差が発生する。したがって、シート搬送ロール(2)の回転に伴って段差部分が記録シート(S)に順次当接していく。このため、繋ぎ目(51d)が軸方向に沿って形成され、段差部分が周期的に記録シート(S)の位置に移動する場合に比べて、段差による衝撃、振動を緩和できる。
【0024】
(第1発明の形態8)
第1発明の形態8の画像形成装置(U)は、第1発明および第1発明の形態1ないし7のいずれかにおいて、
回転駆動する前記シャフト(61)と、前記シャフト(61)に支持された駆動側シート搬送ロール(62)とを有する前記シート搬送部材(Ra7)と、
前記駆動側シート搬送ロール(62)に当接して従動回転する従動ロール(63)であって、前記駆動側シート搬送ロール(62)の前記シャフト(61)方向の幅よりも短い前記従動ロール(63)と、
前記従動ロール(63)が当接し且つ前記従動ロール(63)との間で記録シート(S)を挟持して搬送するシート搬送部(62a)と、前記シート搬送部のシャフト(61)方向外側に形成され且つ外径が前記シート搬送部(62a)の外径よりも小径に形成された非シート搬送部(62b)と、を有する前記駆動側シート搬送ロール(62)と、
前記シート搬送部(62a)の幅と同幅に形成された前記貯留部(11a)と、
を備えたことを特徴とする。
【0025】
(第1発明の形態8の作用)
前記構成要件を備えた第1発明の形態8の画像形成装置(U)では、前記シート搬送部材(Ra7)の回転駆動するシャフト(61)は、駆動側シート搬送ロール(62)を支持する。前記駆動側シート搬送ロール(62)のシャフト(61)方向の幅よりも短く形成された従動ロール(63)は、前記駆動側シート搬送ロール(62)に当接して従動回転する。前記シャフト(61)のシート搬送部(62a)と前記従動ロール(63)は当接し、前記記録シート(S)を挟持して搬送する。
前記駆動側シート搬送ロール(62)の前記シート搬送部(62a)の幅と同幅に形成された前記貯留部(11a)のシャフト(61)方向外側の前記従動ロール(63)が当接しない非シート搬送部(62b)のロール外径は、前記従動ロール(63)が当接するシート搬送部(63)のロール外径よりも小径に形成されている。
したがって、前記シート搬送部(62a)に浸透した液状成分は、貯留部(11a)に貯留される。また、非シート搬送部(62b)に浸透した液状成分により前記非シート搬送部(62b)が膨潤し、ロール外径が増加しても、記録シート(S)に当接せず、シート搬送速度に影響しない。この結果、記録シート(S)の搬送速度の変動を低減することができる。
【0026】
(第1発明の形態9)
第1発明の形態9の画像形成装置(U)は、第1発明において、
前記シート搬送ロール(72)の内周面に前記シート搬送ロール(72)の軸方向に沿って形成された貯留溝(72a)により構成された前記貯留部(72a)と、
を備えたことを特徴とする。
【0027】
(第1発明の形態9の作用)
前記構成要件を備えた第1発明の形態9の画像形成装置(U)では、前記貯留部(72a)の前記シート搬送ロール(72)の内周面に前記シート搬送ロール(72)の軸方向に沿って形成された貯留溝(72a)に前記浸透した液状成分を貯留できる。
【0028】
(第2発明)
第2発明のシート搬送部材(Ra5,Ra6)は、
多数の貫通孔(41a,51a)が形成された板材(41c,51c)を円筒状に変形させて作製されたシャフト(41,51)と、
前記シャフト(41,51)の外周に支持されたシート搬送ロール(62)と、
を備えたことを特徴とする。
【0029】
(第2発明の作用)
前記構成要件を備えた第2発明のシート搬送部材(Ra5,Ra6)では、シート搬送ロール(62)を外周に支持するシャフト(41,51)が、多数の貫通孔(41a,51a)が形成された板材(41c,51c)を円筒状に変形させて作製される。
したがって、第2発明のシート搬送部材(Ra5,Ra6)により搬送されるシートに付着した液状成分が前記シート搬送ロール(62)の外周面から内周面に浸入した場合には、前記液状成分は、前記貫通孔(41a,51a)を通じて前記シャフト(41,51)の外周側から前記シャフト(41,51)内部の貯留空間(41b,51b)である貯留部(41b,51b)に貯留される。
この結果、第2発明のシート搬送部材(Ra5,Ra6)では、前記浸透した液状成分がシャフト(41,51)の貯留部(41b,51b)に貯留されるので、前記シート搬送ロール(62)の膨潤を低減することができる。
【0030】
(第3発明)
第3発明のシート搬送部材製造方法は、
多数の貫通孔(41a,51a)が形成された板材(41c,51c)を円筒状に変形させてシャフト(41,51)を作製するシャフト作製工程と、
前記シャフト(41,51)に円筒状のシート搬送ロール(62)を装着するシート搬送ロール装着工程と、
を実行することを特徴とするシート搬送部材製造方法。
【0031】
(第3発明の作用)
前記構成要件を備えた第3発明のシート搬送部材製造方法では、シャフト作製工程では、多数の貫通孔(41a,51a)が形成された板材(41b,51b)を円筒状に変形させてシャフト(41,51)が作製される。また、搬送ロール装着工程では、前記シャフト(41,51)に円筒状のシート搬送ロール(62)が装着される。
したがって、第3発明のシート搬送部材製造方法により製造されたシート搬送部材(Ra5,Ra6)により搬送されるシートに付着した液状成分が前記シート搬送ロール(62)の外周面から内周面に浸入した場合には、前記液状成分は、前記貫通孔(41a,51a)を通じて前記シャフト(41,51)の外周側から前記シャフト(41,51)内部の貯留空間(41b,51b)である貯留部(41b,51b)に貯留される。
この結果、第3発明のシート搬送部材製造方法により作製されたシート搬送部材(Ra5,Ra6)では、前記浸透した液状成分がシャフト(41,51)の貯留部(41b,51b)に貯留されるので、前記シート搬送ロール(62)の膨潤を低減することができる。
【発明の効果】
【0032】
前述の本発明は、下記の効果(E01),(E02)を奏する。
(E01)シート搬送部材の膨潤によるシート搬送速度の変動を防止することができる。
(E02)低コスト且つシンプルで経時的な故障に強い構成で、シート搬送速度の変動を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
次に図面を参照しながら、本発明の実施の形態の具体例(実施例)を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、以後の説明の理解を容易にするために、図面において、前後方向をX軸方向、左右方向をY軸方向、上下方向をZ軸方向とし、矢印X,−X,Y,−Y,Z,−Zで示す方向または示す側をそれぞれ、前方、後方、右方、左方、上方、下方、または、前側、後側、右側、左側、上側、下側とする。
また、図中、「○」の中に「・」が記載されたものは紙面の裏から表に向かう矢印を意味し、「○」の中に「×」が記載されたものは紙面の表から裏に向かう矢印を意味するものとする。
なお、以下の図面を使用した説明において、理解の容易のために説明に必要な部材以外の図示は適宜省略されている。
【実施例1】
【0034】
図1は、本発明の実施例1の画像形成装置の全体説明図である。
図1において、本発明の実施例1の画像形成装置としてのプリンタUでは、プリンタ本体U1の上面に排出トレイTRhが設けられ、プリンタ本体U1の下部には画像が記録される記録シートSが収容される給紙カセットTR1が収容される。前記プリンタ本体U1は、フロント回転中心U2aを中心として回転可能に支持されたフロントカバーU2を有し、紙詰まり(ジャム)が発生した場合等に、ユーザがフロントカバーU2を回動させて紙詰まりを解消できる。前記フロントカバーU2の上面には、ユーザが入力操作を行うためのUI(ユーザインタフェース)が設けられている。
【0035】
図1において、プリンタ本体U1はマイクロコンピュータにより構成されたコントローラCと、コントローラCにより作動を制御されるIPS(イメージプロセッシングシステム)、レーザ駆動回路DL、および電源装置E等を有している。電源装置Eは、後述の帯電ローラCR、現像ローラGRy〜GRkおよび転写ローラ(T1,T2b)等にバイアス電圧を印加する。
前記IPS(イメージプロセッシングシステム)は、外部のホストコンピュータ等から入力された印字データを潜像形成用の画像データに変換して所定のタイミングでレーザ駆動回路DLに出力する。レーザ駆動回路DLは、入力された画像データに応じてレーザ駆動信号を潜像形成装置ROS(光走査装置)に出力する。前記ROSは、レーザ駆動信号に応じて画像書き込み用のレーザビーム(画像書込光)Lを照射する。
【0036】
前記ROSの上方に配置された回転駆動する像担持体(感光体ドラム)PRは、その表面が帯電ロールCRにより一様に帯電された後、潜像書込位置Q1において前記ROS(潜像形成装置)のレーザビームLにより露光走査されて静電潜像が形成される。フルカラー画像を形成する場合は、K(黒),Y(イエロー),M(マゼンタ),C(シアン)の4色の画像に対応した静電潜像が順次形成され、モノクロ画像の場合はK(黒)画像に対応した静電潜像のみが形成される。
前記静電潜像が形成された像担持体PR表面は回転移動して現像領域Q2、1次転写領域Q3を順次通過する。
【0037】
前記ROSの上方には、ロータリ式の現像装置Gが配置されている。前記ロータリ式の現像装置Gは、回転軸Gaの回転に伴って前記現像領域Q2に順次回転移動するK(黒),Y(イエロー),M(マゼンタ),C(シアン)の4色の現像器GK,GY,GM,GCを有している。前記各色の現像器GK,GY,GM,GCは、前記現像領域Q2に現像剤を搬送する現像ロール(現像剤担持体)GRk,GRy,GRm,GRcを有しており、現像領域Q2を通過する像担持体PR上の静電潜像をトナー像に現像する。
画像形成装置Uの動作時には、前記現像装置Gの回転に伴って、前記各現像器GK〜GCは前記像担持体PRと対向する現像位置(第1停止位置)GP1、前記現像位置GP1から時計回り方向に90°回転した第2停止位置GP2、180°回転した第3停止位置GP3、および270°回転した第4停止位置GP4に順次回転し、停止する。
前記現像位置GP1に停止した現像器GY〜GKの現像ロールGRy〜GRkには回転力が伝達され、現像動作の実行が可能となる。また、前記現像位置GP1に停止した現像器GK,GY,GM,GCには、トナー補給用カートリッジTCk,TCy、TCm、TCcから新しい現像剤の補給が行われる。なお、実施例1の現像装置Gでは、現像剤として、低融点のワックスであるパラフィンを内包する乳化重合トナーを使用している。
【0038】
前記像担持体PRの前方には像担持体PRに巻き付けられた中間転写ベルトBと、複数の従動ロールRj、巻き付き開始位置に配置されたラップインロールRW1、1次転写バイアスが印加される1次バイアスロール(1次転写ロール)T1、巻き付き終了位置に配置されたラップアウトロールRW2およびバックアップロールT2aを含む複数のベルト支持ロール(Rj,RW1,RW2,T1,T2a)と、それらを支持するベルトフレーム(図示せず)とを有している。
そして、前記中間転写ベルトBは前記ベルト支持ロール(Rj,RW1,RW2,Rt1,T2a)により回転移動可能に支持されており、画像形成動作時には像担持体PRの回転に従動して矢印Yb方向に回転する。
【0039】
フルカラー画像を形成する場合、潜像書込位置Q1において第1色目の静電潜像が形成され、現像領域Q2において1色目のトナー像が形成される。このトナー像は、ラップインロールRW1からラップアウトロールRW2の間の1次転写領域Q3を通過する際に、1次バイアスロールT1によって中間転写ベルトB上に静電的に1次転写される。その後同様にして、第1色目のトナー像を担持した中間転写ベルトB上に、第2色目、第3色目、第4色目のトナー像が順次重ねて1次転写され、最終的にフルカラーの多重トナー像が中間転写ベルトB上に形成される。
単色のモノカラー画像を形成する場合には1個の現像器のみを使用し、単色トナー像が中間転写ベルトB上に1次転写される。
1次転写後、像担持体PR表面は、像担持体クリーナCL1によりクリーニングされる。
【0040】
前記バックアップロールT2aに対向する位置には、2次転写ロールT2bが前記バックアップロールT2aに対して離隔した位置と接触した位置との間で移動可能に配置されている。前記バックアップロールT2aおよび2次転写ロールT2bにより2次転写器T2が構成されている。前記バックアップロールT2aおよび2次転写ロールT2bの接触領域により2次転写領域Q4が形成されている。前記2次転写ロールT2bに付着しトナーは、2次転写ロールクリーナCLtによりクリーニングされる。
前記2次転写ロールT2bには、現像装置Gで使用するトナーの帯電極性と逆極性の2次転写電圧が電源回路Eから供給され、前記電源回路EはコントローラCにより制御される。
【0041】
プリンタ本体U1の下部には、記録シートSを収容する給紙トレイ(手差し給紙トレイ)TR1が配置されており、給紙トレイTR1内の記録シートSはシート載置プレートTR1aにより、シート最上面がピックアップロールRpに当接する給紙位置に保持されている。給紙トレイTR1に収容された記録シートSは、所定のタイミングでピックアップロールRpにより取り出され、フィードロールRs1およびリタードロールRs2を有するさばきロールRsで1枚づつ分離されて、シート搬送路SHの搬送ロールRaによりレジロールRrに搬送される。また、手差しトレイTR0から給紙されたシートSは、手差し給紙ロールRp0によりレジロールRrに搬送される。
前記レジロールRrに搬送された記録シートSは、前記1次転写された多重トナー像または単色トナー像が2次転写領域Q4に移動するのにタイミングを合わせて、転写前シートガイドSG1から2次転写領域Q4に搬送される。
前記2次転写領域Q4において前記2次転写器T2は、中間転写ベルトB上のトナー像を記録シートSに静電的に2次転写する。2次転写後の中間転写ベルトBはベルトクリーナCL2により残留トナーが除去される。
【0042】
なお、前記2次転写ロールT2bおよびベルトクリーナCL2は、中間転写ベルトBと離接(離隔および接触)自在に配設されており、カラー画像が形成される場合には最終色の未定着トナー像が中間転写ベルトBに1次転写されるまで、中間転写ベルトBから離隔している。
前記像担持体PR、帯電ロールCR、現像装置G、1次転写ロールT1、中間転写ベルトB、2次転写器T2等により、記録シートSにトナー像を転写して形成するするトナー像形成装置(PR+CR+G+T1+B+T2)が構成されている。
【0043】
トナー像が2次転写された前記記録シートSは、定着装置Fの加熱ロールFhと加圧ロールFpとが圧接する領域(ニップ)により構成された定着領域Q5に搬送される。定着領域Q5を通過する記録シートSは、定着装置Fにより加熱定着される。トナー像が加熱定着された記録シートSは、定着装置Fのシート搬送方向下流側に配置された定着装置下流側搬送ロール(上流側シート搬送部材)Ra1により搬送される。前記定着装置下流側搬送ロールRa1により搬送された記録シートSは、定着装置下流側搬送ロールRa1のシート搬送方向下流側に配置されたシート排出ロール(下流側シート搬送部材)Rhにより、画像形成装置U1の上端部に形成されたシート排出口Kaから排紙トレイTRhに排出される。
なお、実施例1の定着装置下流側搬送ロールRa1およびシート排出ロールRhは、芯材の外周に材質がEPDM(エチレン・プロピレンゴム)製の弾性ゴムが被覆されたゴムロールにより構成されている。また、実施例1では、定着装置下流側搬送ロールRa1およびシート排出ロールRhの初期のロール径は同一のロール径に設定され、同一のシート搬送速度で搬送されるように設定されている。
【0044】
また、両面印刷を行う場合、片面記録済みの記録シートSは、シート排出ローラRhによりスイッチバックされてシート反転路SH2に搬送され表裏が反転した状態でレジロールRrに再送される。
前記ピックアップロールRp、さばきロールRs、搬送ロールRa、定着領域下流側搬
送ロールRa1、シート排出ロールRh等により実施例1のシート搬送装置が構成されている。
【0045】
図2は、本発明の実施例1の要部拡大図である。
図2において、定着装置Fのシート搬送方向下流側に配置された一対の定着器下流側搬送ロールRa1は、前後方向(X軸方向)に延びる金属製のシャフト1を有する。前記シャフト1の外周面には、外周面の円周方向に30°間隔で前後方向(X軸方向)に平行に延びるワックス貯留溝1aが形成されている。前記シャフト1の外周面には、円筒状のゴムロール2が支持されている。実施例1のゴムロール2は、EPDM(エチレンプロピレンゴム、SP値8.00)により構成されている。したがって、EPDMによって構成されたゴムロール2には、トナーに含まれ且つ、EPDMとSP値(溶解度指数)が近似しているパラフィン(石ロウ、SP値8.00)が内部に浸入し易くなっている。実施例1のゴムロール2の厚さは、前記ゴムロール2表面に付着した液状のパラフィンが液状のままシャフト1の外周面まで浸透できる厚さに設定されている。よって、前記ゴムロール2表面から浸入した液状のパラフィンは、前記シャフト1の外周面に形成されたワックス貯留溝1aまで移送され、ワックス貯留溝1aで冷却されて固体化し、前記ワックス貯留溝1aに貯留される。
【0046】
(実施例1の作用)
前記構成を備えた実施例1の画像形成装置Uでは、低融点(90℃程度)のパラフィンが含まれた乳化重合トナーが使用されており、未定着トナー像が転写された記録シートSが定着領域Q5を通過する際に、トナーが溶融されて、定着される。この時、低融点のパラフィンも溶融して液状となる。定着領域Q5(200℃程度)を通過した記録シートSが、十分に冷却される前に、定着装置下流側の定着器下流側搬送ロールRa1で搬送されると、液状のパラフィンが前記定着器下流側搬送ロールRa1に接触し、前記定着器下流側搬送ロールRa1のゴムロール2内部に浸透する。しかし、実施例1の定着器下流側搬送ロールRa1では、シャフト1にワックス貯留溝1aが形成されているので、前記ゴムロール2内部に浸透した液状のパラフィン(石ロウ)は、シャフト1の外周面に形成されたワックス貯留溝1aに貯留される。これにより、前記パラフィンがゴムロール2内部に浸透することにより生じる前記ゴムロール2の膨潤を低減することができる。
また、前記定着器下流側搬送ロールRa1のロール部分は、単一の材料で構成されているため、生産、加工が容易である。したがって、実施例1の定着器下流側搬送ロールRa1では、低コスト且つシンプルで経時的な故障に強い構成で、シート搬送速度の変動を低減することができる。
【0047】
(実施例2)
図3は、本発明の実施例2のシャフトの要部拡大図である。
次に、本発明の実施例2の説明を行うが、この実施例2の説明では、下記の点で前記実施例1と相違しているが、他の点では前記実施例1と同様に構成されている。
図3において、定着装置Fのシート搬送方向下流側に配置された一対の定着器下流側搬送ロールRa2のシャフト11の外周面には、リング状のワックス貯留溝11aが軸方向に沿って複数形成されている。
【0048】
(実施例2の作用)
前記構成を備えた実施例2の画像形成装置Uでは、トナーに含まれるパラフィン(石ロウ)は、前記定着器下流側搬送ロールRa2のゴムロール2内部に浸透し、シャフト11の外周面に形成された複数のリング状のワックス貯留溝11aに貯留される。したがって、実施例2の画像形成装置Uは、実施例1と同様に前記ゴムロール2の内部に浸透することにより生じる前記ゴムロール2の膨潤を低減することができる。
また、一般的にシャフトの加工は、実施例1のように溝を軸方向に形成するよりも実施例2のように円周方向に形成するほうが容易である。したがって、実施例2のシャフト11は、前記実施例1のシャフト1よりもシャフトの加工を容易に行うことができる。
【0049】
(実施例3)
図4は、本発明の実施例3のシャフトの要部拡大図であり、図4Aは実施例3のシャフトの斜視図、図4Bは図4AのIVB−IVB線断面図である。
次に、本発明の実施例3の説明を行うが、この実施例3の説明において、前記実施例1の構成要素に対応する構成要素には同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。この実施例3の説明では、下記の点で前記実施例1と相違しているが、他の点では前記実施例1と同様に構成されている。
図4において、定着装置Fのシート搬送方向下流側に配置された一対の定着器下流側搬送ロールRa3のシャフト21は、中空円筒状に形成されている。前記シャフト21の内部の中空部には、貯留空間21bが形成されている。前記定着器下流側搬送ロールRa3のゴムロール2の内側の前記シャフト21の外周面には、外周面の円周方向に30°間隔で前後方向(X軸方向)に平行に延び、前記貯留空間21bに貫通するワックス貫通孔21aが形成されている。前記貯留空間21bには、前記貯留空間21bに貯留されたワックスを吸収する、ワックス吸収体22(例えばスポンジ等)が配置されている。
【0050】
(実施例3の作用)
前記構成を備えた実施例3の画像形成装置Uでは、トナーに含まれるパラフィン(石ロウ)は、前記定着器下流側搬送ロールRa3のゴムロール2内部に浸透し、シャフト21の外周面に形成されたワックス貫通スリット21aから、前記シャフト21の内部にある貯留空間21b内部に浸透する。前記貯留空間21b内部に浸透したパラフィンは、前記貯留空間21b内部に配置されたワックス吸収体22に吸収され、貯留される。したがって、実施例3の画像形成装置Uは、前記実施例1と同様にパラフィンが前記ゴムロール2の内部に浸透することにより生じる前記ゴムロール2内部の膨潤を低減することができる。
また、シャフト21,1,11が同径の場合、実施例3のシャフト21は、前記実施例1のシャフト1や、実施例2のシャフト11よりも多量のパラフィンを貯留することができる。
また、前記貯留空間21b内部に浸透したパラフィンは、前記ワックス吸収体22に吸収されるため、実施例3の画像形成装置Uは、前記貯留空間21b内部に浸透したパラフィンが再び貯留空間21b外部に漏れ出すことを防止することができる。このため、実施例3のシャフト21では、前記貯留空間21bにパラフィンを貯留することが可能であり、さらに、もし前記貯留空間21bが、パラフィンにより満杯になった場合でも、ワックス貫通スリット21aに貯留することが可能である。
(実施例4)
図5は、本発明の実施例4のシャフトの要部拡大図であり、図5Aは、実施例3の、シャフトの斜視図、図5Bは、前記シャフトの横面図である。
次に、本発明の実施例4の説明を行うが、この実施例4の説明において、前記実施例1の構成要素に対応する構成要素には同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。この実施例4の説明では、下記の点で前記実施例1と相違しているが、他の点では前記実施例1と同様に構成されている。
図5において、定着装置Fのシート搬送方向下流側に配置された一対の定着器下流側搬送ロールRa4のシャフト31は、中空円筒状に形成されている。前記シャフト31の内部の中空部には、貯留空間31bが形成されており、ワックス吸収体22が収容されている。前記シャフト31の外周面には、リング状のワックス貯留溝31aが軸方向に沿って複数形成されている。前記シャフト31の外周面には、軸方向一端側のワックス貯留溝31aから軸方向他端側のワックス貯留溝31aにかけて、軸方向(X軸方向)に横断するように延び且つ、前記シャフト31の外周面から前記貯留空間31bに貫通するワックス貫通スリット31c(接続路)が形成されている。
【0051】
(実施例4の作用)
前記構成を備えた実施例4の画像形成装置Uでは、前記定着器下流側搬送ロールRa4のゴムロール2内部に浸透したトナーに含まれるパラフィン(石ロウ)は、前記ゴムロール2内部からシャフト31の外周面に形成された前記ワックス貯留溝31aに貯留された後、ワックス貫通スリット31cを通じて貯留空間31bに移送され、貯留される。これにより、実施例4の画像形成装置Uは、前記実施例1と同様にパラフィンが前記ゴムロール2の内部に浸透することにより生じる前記ゴムロール2内部の膨潤を低減することができる。
また、実施例4のシャフト31は、前記実施例3と同様に同径の場合、前記実施例1のシャフト1や、実施例2のシャフト11よりも多量のパラフィンを貯留することができる。
また、実施例4の画像形成装置Uでは、前記実施例3と同様に前記貯留空間31b内部に浸透したパラフィンは、ワックス吸収体22に吸収されるため、前記貯留空間31b内部に浸透したパラフィンが再び貯留空間31b外部に漏れ出すことを防止することができる。さらに、仮に前記貯留空間31bが、パラフィンにより満杯になった場合でも、ワックス貫通スリット31cやワックス貯留溝31aに貯留することが可能である。
【0052】
(実施例5)
図6は、本発明の実施例5のシャフトの説明図であり、図6Aは円筒状に成形されたシャフトの説明図、図6Bはシャフトに成形される前の板材の説明図である。
次に、本発明の実施例5の説明を行うが、この実施例5の説明において、前記実施例1の構成要素に対応する構成要素には同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。この実施例5の説明では、下記の点で前記実施例1と相違しているが、他の点では前記実施例1と同様に構成されている。
図6において、定着装置Fのシート搬送方向下流側に配置された一対の定着器下流側搬送ロールRa5のシャフト41は、複数のワックス貫通孔41aが形成された直方体の板材41c(図6B参照)を円筒状(パイプ状)に丸めて成形されている。前記シャフト41の内部の中空部には、貯留空間41bが形成されており、前記貯留空間41bには、ワックス吸収体22が収容されている。
【0053】
(実施例5の作用)
前記構成を備えた実施例5の画像形成装置Uでは、前記定着器下流側搬送ロールRa5のゴムロール2内部に浸透したトナーに含まれるパラフィン(石ロウ)は、前記ゴムロール2内部からシャフト41の外周面に形成されたワックス貫通孔41aを通じて貯留空間41bに移送され貯留される。これにより、前記ゴムロール2の内部に浸透することにより生じる前記ゴムロール2の膨潤を低減することができる。
また、実施例5のシャフト41は、前記実施例3と同様に同径の場合、前記実施例1のシャフト1や、実施例2のシャフト11よりも多量のパラフィンを貯留することができる。
また、実施例5の画像形成装置Uでは、前記実施例3,4と同様に前記貯留空間41b内部に浸透したパラフィンは、ワックス吸収体22に吸収されるため、前記貯留空間41b内部に浸透したパラフィンが再び貯留空間41b外部に漏れ出すことを防止することができる。
【0054】
(実施例6)
図7は、本発明の実施例6のシャフトの説明図であり、図7Aは円筒状に成形されたシャフトの説明図、図7Bはシャフトに成形される前の板材の説明図である。
次に、本発明の実施例6の説明を行うが、この実施例6の説明において、前記実施例5の構成要素に対応する構成要素には同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。この実施例6の説明では、下記の点で前記実施例5と相違しているが、他の点では前記実施例5と同様に構成されている。
図7において、定着装置Fのシート搬送方向下流側に配置された一対の定着器下流側搬送ロールRa6のシャフト51は、複数のワックス貫通孔51aが形成された底面が平行四辺形に形成された板材51c(図7B参照)を円筒状(パイプ状)に丸めて成形されている。前記シャフト51の内部の中空部には、貯留空間51bが形成されており、前記貯留空間51bには、ワックス吸収体22が収容されている。
【0055】
(実施例6の作用)
前記構成を備えた実施例6の画像形成装置Uでは、シャフト51は、底面が平行四辺形の板材51c(図7B参照)を円筒状(パイプ状)に丸めて成形されているので、成形時に繋ぎ目51dが軸方向に対して螺旋状に形成されている。これに対し、前記実施例5のシャフト41では、板材41cが直方体に形成されており、成形時に形成されるシャフト41の接合部分である繋ぎ目は軸方向に平行に形成される。前記実施例5において、前記シャフト41の設計誤差や製造誤差等により、繋ぎ目に段差が生じてしまったような場合には、定着器下流側搬送ロールRa5の回転時に、前記シャフト41の繋ぎ目が前記一対の定着器下流側搬送ロールRa5のニップ位置を通過する度に、前記定着器下流側搬送ロールRa5が周期的に振動してしまう。これに対し、実施例6のシャフト51は、繋ぎ目51dが螺旋状(軸方向に対して斜め)に構成されているので、仮に繋ぎ目51dに段差が形成されても、繋ぎ目51dの外周側のゴムロール2の回転に伴って段差部分が記録シートSに順次当接していく。このため、前記繋ぎ目51dが軸方向に沿って形成され、段差部分が周期的に記録シートSの位置に移動する場合に比べて、段差による衝撃、振動を緩和できる。
また、実施例6の前記シャフト51の繋ぎ目51d部分の構成を除く全ての構成は前記実施例5と同様である。したがって、実施例6は、前記実施例5と同様の作用を奏する。
【0056】
(実施例7)
図8は、本発明の実施例7の要部拡大図である。
次に、本発明の実施例7の説明を行うが、この実施例7の説明において、前記実施例2の構成要素に対応する構成要素には同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。この実施例7の説明では、下記の点で前記実施例2と相違しているが、他の点では前記実施例2と同様に構成されている。
図8において、定着装置Fのシート搬送方向下流側に配置された一対の定着器下流側搬送ロールRa7のシャフト(駆動側シート搬送ロール)11は、図示しないギヤを有する。前記シャフト11は、前記ギヤを介して、図示しない駆動モータからの回転力が伝達され回転駆動する。前記シャフト11の外周面には、複数のリング状のワックス貯留溝11a(貯留部)が軸方向に沿って複数形成されている。
前記シャフト11の外周面には、前記シャフト11の軸方向の幅よりも短いゴムロール62が支持されている。前記ゴムロール62の外周面の軸方向中央部には、前記複数のリング状のワックス貯留溝11aの軸方向一端部から他端部までの幅と同幅のシート搬送部62aが形成されている。前記シート搬送部62aの軸方向両端部には、それぞれ、前記シート搬送部62aの軸方向両端部に連続し且つ、ゴムロール62の軸方向外側に行くにしたがって凹形状の弧を描きながら小径化する非シート搬送部62bが形成されている(図8参照)。前記ゴムロール62のシート搬送部62aには、軸方向の幅が前記シート搬送部62aよりも短く形成され、前記ゴムロール62に従動回転するピンチロール(従動ロール)63が当接している。定着装置Fにおいて、トナー像が加熱定着された記録シートSは、前記ゴムロール62のシート搬送部62bとピンチロール63とに狭持され、搬送される。
【0057】
(実施例7の作用)
前記構成を備えた実施例7の画像形成装置Uでは、記録シートS表面の融解したトナーに含まれるパラフィンは、ゴムロール62のシート搬送部62aに浸透する。浸透したパラフィン(石ロウ)は、シャフト11の外周面に形成された複数のリング状のワックス貯留溝11aに貯留される。また、ゴムロール62に浸入し、シート搬送部62aから非シート搬送部62bに浸透したパラフィンは、前記非シート搬送部62bを膨潤させ、前記非シート搬送部62bのロール外径を増加させる。
実施例7では、シート搬送部62aに浸透したパラフィン(石ロウ)が、シャフト11の外周面に形成された複数のリング状のワックス貯留溝11aに貯留されるので、シート搬送部62aでの膨潤は防止される。また、非シート搬送部62b近傍に浸透したパラフィンにより、前記非シート搬送部62bが膨潤し、ロール外径が増加しても、記録シートSに当接せず、シート搬送速度に影響しない。したがって、実施例7では、実施例2と同様に前記定着器下流側搬送ロールRa7の膨潤による記録シートSの搬送速度の変動を防止することができる。
【0058】
(実施例8)
図9は、本発明の実施例8のシャフトの要部拡大図である。
次に、本発明の実施例8の説明を行うが、この実施例8の説明において、前記実施例1の構成要素に対応する構成要素には同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。この実施例8の説明では、下記の点で前記実施例1と相違しているが、他の点では前記実施例1と同様に構成されている。
図9において、前記実施例1の定着器下流側搬送ロールRa1のシャフト1の外周面にはワックス貯留溝1aが形成されているが、実施例8の定着器下流側搬送ロールRa8では、前記実施例1のワックス貯留溝1aの替わりに、ゴムロール71の内周面の円周方向に30°間隔で前後方向(X軸方向)に平行に延びるワックス貯留溝72aが形成されている。
【0059】
(実施例8の作用)
前記構成を備えた実施例8の画像形成装置Uでは、前記定着器下流側搬送ロールRa8のゴムロール72の内周面にワックス貯留溝72aが形成されているので、前記ゴムロール72内部に浸透した液状のパラフィン(石ロウ)は、前記ワックス貯留溝72aに貯留される。これにより、実施例8は、実施例1と同様に前記パラフィンがゴムロール72内部に浸透することにより生じる前記ゴムロール72の膨潤を低減することができる。
【0060】
(変更例)
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内で、種々の変更を行うことが可能である。本発明の変更例を下記に例示する。
(H01)前記実施例において、画像形成装置としてのプリンタを例示したが、これに限定されず、FAXや複写機あるいはこれらすべてまたは複数の機能を備えた複合機とすることも可能である。また、カラーの画像形成装置に限定されず、モノクロの画像形成装置により構成することも可能であり、いわゆるロータリ式の画像形成装置に限定されず、タンデム式等の画像形成装置にも適用可能である。
【0061】
(H02)前記実施例において、定着器下流側搬送ロールのシャフト径は、任意に変更可能である。また、ゴムロールの径や、ワックス貯留溝、ワックス貫通スリット、ワックス貫通孔の幅や長さや、および中空円筒状に形成されたシャフトの貯留空間の径は、設計に応じてそれぞれ任意に変更可能である。例えば、前記実施例において、ワックス貯留溝1a,11a,31a,72aおよびワックス貫通スリット21aが円周方向または軸方向に沿って形成されているのに替えて、軸方向に対し螺旋状に形成することも可能である。また、前記実施例1,2,8において、ワックス貯留溝1a,11a、72aは定着器下流側搬送ロールRa1,Ra2,Ra8の円周方向に30°おきに合計12個並べられているが、これに限定されず、任意の間隔や数とすることも可能である。
(H03)前記実施例4において、シャフト31の外周面に形成された複数のリング状のワックス貯留溝31aの軸方向一端側から他端側に横断するワックス貫通スリット31cを使用して、前記複数のリング状のワックス貯留溝31aに貯留されたパラフィンをシャフト31の内部の貯留空間31bに搬送しているが、ワックス貯留溝31aに貯留されたパラフィンを貯留空間31b内部に搬送することが可能であれば、任意の形状に変更可能である。例えば、複数のワックス貯留溝31aの各底面に形成された複数の各ワックス貯留溝から貯留空間31b内部にパラフィンを搬送するような貫通孔にすることも可能である。
(H04)前記実施例3〜6において、貯留空間21b,31b,41b,51bの内部には、貯留空間21b,31b,41b,51bに貯留されたワックスを吸収するワックス吸収体22が収容されているが、前記ワックス吸収体22を使用せずに、ワックスを貯留空間21b,31b,41b,51bに貯留することも可能である。
(H05)前記実施例では、定着装置Fのシート搬送方向下流側に配置された一対の定着器下流側搬送ロールRa1〜Ra8に本発明が適用されているが、本発明はこれに限定されず、ワックス等の液状成分がロールに浸透し、膨潤する可能性が有るロールにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】図1は、本発明の実施例1の画像形成装置の全体説明図である。
【図2】図2は、本発明の実施例1の要部拡大図である。
【図3】図3は、本発明の実施例2のシャフトの要部拡大図である。
【図4】図4は、本発明の実施例3のシャフトの要部拡大図であり、図4Aは実施例3のシャフトの斜視図、図4Bは図4AのIVB−IVB線断面図である。
【図5】図5は、本発明の実施例4のシャフトの要部拡大図であり、図5Aは、実施例3の、シャフトの斜視図、図5Bは、前記シャフトの横面図である。
【図6】図6は、本発明の実施例5のシャフトの説明図であり、図6Aは円筒状に成形されたシャフトの説明図、図6Bはシャフトに成形される前に板材の説明図である。
【図7】図7は、本発明の実施例6のシャフトの説明図であり、図7Aは円筒状に成形されたシャフトの説明図、図7Bはシャフトに成形される前の板材の説明図である。
【図8】図8は、本発明の実施例7の要部拡大図である。
【図9】図9は、本発明の実施例8のシャフトの要部拡大図である。
【符号の説明】
【0063】
F・・・定着装置、
Ra1〜Ra8・・・シート搬送部材、
S・・・記録シート、
U・・・画像形成装置、
1,11,21,31,41,51,61,71・・・シャフト、
1a,11a,21a,31a,41a,51a,72a・・・貯留部、
2,62,72・・・シート搬送ロール、
21a,31c・・・接続路、
21b,31b,41b,51b・・・貯留空間、
41a,51a・・・貫通孔、
41c,51c・・・板材、
51d・・・繋ぎ目、
62a・・・シート搬送部、
62b・・・非シート搬送部、
63・・・従動ロール、
72a・・・貯留溝。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録シート表面の未定着トナー像を加熱定着する定着装置と、
前記定着装置のシート搬送方向下流側に配置され且つ前記記録シートを搬送するシート搬送ロールであって、前記トナーに含まれて前記定着装置により加熱溶融されて液状になった液状成分が浸透する円筒状のシート搬送ロールと、前記シート搬送ロールの内周側に配置されたシャフトと、前記シャフトと前記シート搬送ロールとの境界部に配置され且つ浸透した前記液状成分が貯留される貯留部と、を有する前記シート搬送部材と、
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
円柱状の前記シャフトと、
前記シャフトの外周面に前記シャフトの軸方向に沿って形成された貯留溝により構成された前記貯留部と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
円柱状の前記シャフトと、
前記シャフトの外周面に形成されたリング状の貯留溝により構成された前記貯留部と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
中空円筒状の前記シャフト内部に形成された貯留空間により構成された前記貯留部と、
前記シャフトの軸方向に沿って溝状に形成され、前記円筒状のシャフトの外周側と前記貯留空間とを接続する接続路と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
中空円筒状の前記シャフト内部に形成された貯留空間により構成された前記貯留部と、
前記シャフトの外周面に形成されたリング状の貯留溝と、
前記貯留溝と前記貯留空間とを接続する接続路と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項6】
中空円筒状の前記シャフト内部に形成された貯留空間により構成された前記貯留部と、
前記円筒状のシャフトの外周側と前記貯留空間とを接続する貫通孔により構成された接続路と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項7】
複数の貫通孔が形成された板材を円筒状に変形させて作製された前記シャフト、
を備えたことを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記シャフトの外周に沿って繋ぎ目が螺旋状になるように、前記円筒状に変形させて作製された前記シャフト、
を備えたことを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
回転駆動する前記シャフトと、前記シャフトに支持された駆動側シート搬送ロールとを有する前記シート搬送部材と、
前記駆動側シート搬送ロールに当接して従動回転する従動ロールであって、前記駆動側シート搬送ロールの前記シャフト方向の幅よりも短い前記従動ロールと、
前記従動ロールが当接し且つ前記従動ロールとの間で記録シートを挟持して搬送するシート搬送部と、前記シート搬送部のシャフト方向外側に形成され且つ外径が前記シート搬送部の外径よりも小径に形成された非シート搬送部と、を有する前記駆動側シート搬送ロールと、
前記シート搬送部の幅と同幅に形成された前記貯留部と、
を備えたことを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記シート搬送ロールの内周面に前記シート搬送ロールの軸方向に沿って形成された貯留溝により構成された前記貯留部と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項11】
多数の貫通孔が形成された板材を円筒状に変形させて作製されたシャフトと、
前記シャフトの外周に支持されたシート搬送ロールと、
を備えたことを特徴とするシート搬送部材。
【請求項12】
多数の貫通孔が形成された板材を円筒状に変形させてシャフトを作製するシャフト作製工程と、
前記シャフトに円筒状のシート搬送ロールを装着する搬送ロール装着工程と、
を実行することを特徴とするシート搬送部材製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−279580(P2007−279580A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−108682(P2006−108682)
【出願日】平成18年4月11日(2006.4.11)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】