説明

画像形成装置、及び画像形成方法

【課題】溶媒にトナーを分散した高粘度の液体現像剤を用いて現像されたトナー画像を、記録材に転写し、定着するに際して、溶媒によるトナー画像の定着性低下を抑制し、溶媒による定着時の画像の乱れも防止することができる画像形成装置、及び画像形成方法を提供する。
【解決手段】現像されたトナー画像を、記録材に転写した後、定着する前に、溶媒を含むトナー画像を加熱しながら、同時に荷電することにより、溶媒の粘度を低下させるとともに、流動性を上げて記録材表面に延展させ、定着前のトナー画像に含まれる溶媒の記録材への浸透を促進する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶媒にトナーを分散した液体現像剤を用いて現像されたトナー画像を記録材に転写し、定着する画像形成装置、及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
感光体(感光ドラム)に静電潜像を形成し、それにトナーを付着させて、紙などに転写して定着する電子写真方式の画像形成装置が、広く使用されている。特に、大量プリント用のオフィスプリンタやオンデマンド印刷装置などの、より高画質及び高解像度が要求される画像形成装置では、トナー粒子径が小さく、トナー画像の乱れもおきにくい液体現像剤を用いる湿式現像方式が用いられるようになってきている。
【0003】
近年では、シリコンオイルなどの絶縁性液体「キャリヤ液」中に樹脂及び顔料からなる固形分としてのトナーを高濃度に分散させることで構成される、高粘度で高濃度の液体現像剤を用いる画像形成装置が提案されるようになってきた。
【0004】
この液体現像剤を用いて現像する際には、現像ローラ等の現像剤担持体上に現像剤のミクロン単位の薄層を形成し、この薄層化された現像剤を感光体に接触させて現像するのが一般的である。
【0005】
感光体表面の潜像は、液体現像剤の薄層で現像され、感光体表面にトナー画像が形成される。このトナー画像は、記録材に転写される。あるいは、一旦中間転写体などに一次転写された後、記録材に二次転写される。
【0006】
記録材に転写されたトナー画像は、定着装置により加圧、加熱されるなどして、通常は紙である記録材に定着される。しかしトナー画像は、元々はキャリヤ液にトナーを分散した液体現像剤を用いて現像したものであり、トナーのみならず、トナー間、トナー紙間にはキャリヤ液が含まれている。しかもかなり高粘度である。
【0007】
高粘度のキャリヤ液の存在は、トナー画像定着時の定着性を阻害することが知られている。例えば、トナー画像と記録材がキャリヤ液によって濡れた状態になっているため、トナー画像の定着性を低下させる、また加圧定着時に画像のつぶれや乱れを生じさせたりすることもある。
【0008】
これに対して、定着前に未定着のトナー画像から溶媒(キャリヤ液)を除去しようとする技術が開発されてきた(例えば、特許文献1、2、3及び4参照)。
【0009】
特許文献1に記載の技術によれば、定着装置前に発熱源と、この発熱源からの熱線を記録材の表面に向けて集束照射させる熱線集束ミラーとを設けて、記録材上の溶媒を揮発させることで除去する。
【0010】
しかしながら、安全性や揮発した溶媒を捕集するシステムを準備する必要がある。また気化熱を供給するためのエネルギーが増大してしまうという課題もある。
【0011】
特許文献2に記載の技術によれば、ジョンセン−ラーベック効果により、すなわち記録材上に導電性の低いトナー層がある場合、これらの厚み方向の電界印加により、記録材とトナー間、あるいはトナー間の境界部に電気二重層が形成されて、静電力により記録材とトナー、及びトナー相互が強固に結びつく。
【0012】
しかしながら、溶媒の除去ということではない。電界をかけてトナーと記録材の付着力を高めても、溶媒自体が消滅するわけではなく、定着に対する阻害要因としては残ることになる。
【0013】
特許文献3に記載の技術によれば、記録材表面のトナー画像に、記録材裏面から加熱ローラにより一定温度を加え、トナーを定着、熱延展させるとともに溶媒を効率よく蒸発させ、定着させる。
【0014】
しかしながら、これも安全性や揮発した溶媒を捕集するシステム、そして気化熱を供給するためのエネルギーの増大という課題がある。
【0015】
特許文献4に記載の技術によれば、トナー画像中の溶媒を加熱により表面に析出させ、析出した溶媒をスクイズなどの除去手段で除去する。
【0016】
しかしながら、スクイズ工程で記録材を傷つけたり、画像乱れや荒れを発生させる危険がある。また溶媒も効果的に取り除くことは困難である。
【特許文献1】特開平7−319292号公報
【特許文献2】特開平9−281753号公報
【特許文献3】特開2000−19877号公報
【特許文献4】特開2003−167456号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上述のように、定着前のトナー画像に含まれる高粘度の溶媒(キャリヤ液)による定着性の低下を抑制するため、定着前のトナー画像から溶媒を除去するための技術が開発されてきた。しかしながら、加熱による揮発は大きなエネルギーを要することや安全性の面からの問題がある。物理的に除去しようとすると記録材を痛めたり、トナー画像を乱したりする問題がある。
【0018】
本発明の目的は、上記の課題を解決し、溶媒にトナーを分散した高粘度の液体現像剤を用いて現像されたトナー画像を、記録材に転写し、定着するに際して、定着前のトナー画像に含まれる溶媒の記録材への浸透を促進することで、溶媒によるトナー画像の定着性低下を抑制し、溶媒による定着時の画像の乱れも防止することができる画像形成装置、及び画像形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記の課題を解決するために、本発明は以下のような特徴を有するものである。
【0020】
1. 溶媒にトナーを分散した液体現像剤を用いて現像されたトナー画像を記録材に転写し、定着する画像形成装置において、前記記録材に転写されたトナー画像を加熱する定着前加熱手段と、前記記録材に転写されたトナー画像を荷電する定着前荷電手段と、を有し、前記記録材に転写されたトナー画像を定着する前に、該トナー画像を、前記定着前加熱手段により加熱しながら、同時に前記定着前荷電手段により荷電することを特徴とする画像形成装置。
【0021】
2. 前記定着前荷電手段は、前記記録材のトナー画像面側から、非接触で荷電することを特徴とする1に記載の画像形成装置。
【0022】
3. 前記定着前加熱手段は、前記記録材のトナー画像面と逆側の面から加熱することを特徴とする1または2に記載の画像形成装置。
【0023】
4. 前記液体現像剤に用いる溶媒は、動粘度が40℃で2mm2/s以上、60mm2/s以下であることを特徴とする1乃至3の何れか1項に記載の画像形成装置。
【0024】
5. 溶媒にトナーを分散した液体現像剤を用いて現像されたトナー画像を記録材に転写し、定着する画像形成方法において、前記記録材に転写されたトナー画像を加熱する定着前加熱工程と、前記記録材に転写されたトナー画像を荷電する定着前荷電工程と、を備え、前記定着前加熱工程と前記定着前荷電工程とは、前記記録材に転写されたトナー画像を定着する前に、併行して実行されることを特徴とする画像形成方法。
【0025】
6. 前記定着前荷電工程では、前記トナー画像は、前記記録材のトナー画像面側から非接触で荷電されることを特徴とする5に記載の画像形成方法。
【0026】
7. 前記定着前加熱工程では、前記トナー画像は、前記記録材のトナー画像面と逆側の面から加熱されることを特徴とする5または6に記載の画像形成方法。
【0027】
8. 前記液体現像剤に用いる溶媒は、動粘度が40℃で2mm2/s以上、60mm2/s以下であることを特徴とする5乃至7の何れか1項に記載の画像形成方法。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る画像形成装置、及び画像形成方法によれば、溶媒にトナーを分散した高粘度の液体現像剤を用いて現像されたトナー画像を、記録材に転写した後、定着する前に、溶媒を含むトナー画像を加熱しながら、同時に荷電することにより、溶媒の粘度を低下させるとともに、流動性を上げて記録材表面に延展させ、定着前のトナー画像に含まれる溶媒の記録材への浸透を促進することができる。
【0029】
これにより溶媒を揮発させる必要もなく、安全で、省エネルギーで、かつ接触により記録材を傷つけたり、トナー画像を乱したりすることもなく、溶媒によるトナー画像の定着性低下を抑制し、溶媒による定着時の画像の乱れも防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明に係る実施形態を、図を参照して説明する。
【0031】
液体現像剤を用いる液体現像は、複写機、簡易印刷機、プリンタなどの画像形成装置に利用される。これらには、一般的に電子写真方式の画像形成プロセスが、共通して用いられている。まずその電子写真方式による湿式の画像形成部を、図1を参照して説明し、さらに液体現像剤を用いて現像され、記録材に転写された定着前のトナー画像を加熱する定着前加熱装置と、同じく荷電する定着前荷電装置とについて、その構成と機能動作を説明する(図2及び3参照)。
【0032】
(画像形成部の構成と機能動作)
図1を用いて、本実施形態の画像形成装置における画像形成部の構成例を説明する。図1は、湿式画像形成装置における画像形成部の概略構成例を示す断面図である。
【0033】
図1において、1は感光体ドラムであり、像担持体として機能する。画像形成部10はこの感光体ドラム1を中心に、その周囲に配設された、前記感光体ドラム1の表面を均一に帯電させる帯電装置2、帯電した感光体ドラム1上にLEDまたはレーザビームを照射して静電潜像を形成する露光装置3、その静電潜像を液体現像剤を用いて現像する液体現像装置4、現像されたトナー像を転写材7に転写する転写装置5、そして転写後の感光体ドラムの表面に残存する液体現像剤を除去するクリーニング装置6などを備える。
【0034】
また、液体現像装置4の前後には、予め液体現像剤の一部を塗布したり、回収したりする装置を設ける場合もある。ここでは、液体現像装置4の後に、現像されたトナー像から余分な液体現像剤を除去するスクイズ装置91を設けている。
【0035】
転写材7は、そのまま記録用紙などの記録材であってもよいし、転写材7として中間転写ベルトなどを用いて、再度記録材に転写するような構成であってもよい。本実施形態では転写材7が記録材、すなわち記録紙であるとして説明する(以後、記録材7と呼ぶ)。
【0036】
液体現像装置4は、一般的には、表面に液体現像剤の薄層を担持し、像担持体である感光体ドラム1上の潜像を現像する現像ローラ41、現像ローラ41に当接して、その表面に液量調整された液体現像剤を転移させる搬送ローラ42、そしてその搬送ローラ42に当接して、その表面に現像剤槽44内の液体現像剤8を供給する供給ローラ43を備える。
【0037】
図1においては、液体現像装置4が1台のみ配置されているが、カラー画像形成のために複数台配置されていてもよい。カラー現像の方式、中間転写の有無などは任意に設定すればよく、それに合わせた任意の構成配置をとることができる。
【0038】
感光体ドラム1は、図1に示す矢印A方向に回転し、帯電装置2は、回転する感光体ドラム1の表面をコロナ放電などにより数百V程度に帯電させる。帯電装置2より感光体ドラム回転方向下流側においては、露光装置3から照射されたレーザビームにより、表面電位が百V程度以下に低下させられた静電潜像が形成される。
【0039】
露光装置3のさらに下流側には、液体現像装置4が配設されており、感光体ドラム1に形成された静電潜像が、液体現像剤8を用いて現像される。
【0040】
液体現像装置4には、絶縁性の溶媒(以後キャリヤ液とも呼称する)中にトナーを分散させた液体現像剤8が現像剤槽44内に収容されており、供給ローラ43によって搬送ローラ42表面に液体現像剤8が供給される。
【0041】
搬送ローラ42は液体現像剤8の薄層を搬送し、現像ローラ41に転移させる。そして現像ローラ41上には液体現像剤8の薄層が担持される。さらに現像ローラ41と感光体ドラム1の静電潜像との電位差により、現像ローラ41上に担持された液体現像剤8の薄層内のトナー粒子が感光体ドラム1上の静電潜像に移動して、静電潜像が現像される。
【0042】
感光体ドラム1上の現像されたトナー像は、トナーとキャリヤ液が含まれている。スクイズ装置91は、例えばスクイズローラであり、現像されたトナー像から余分なキャリヤ液を除去する。スクイズローラ上のキャリヤ液は、ブレード92で除去する。
【0043】
転写装置5(例えば、転写ローラ)では、感光体ドラム1の周速と同速度で搬送される記録材7に帯電を施し、あるいは電圧を印加することで、感光体ドラム1上の現像されたトナー像が記録材7上に転写される。
【0044】
転写装置5の下流側には、感光体ドラム1の表面上に残存する液体現像剤8を除去するクリーニング装置6(例えば、クリーナブレード)が配設されている。このクリーニング装置6により感光体ドラム1上に残存する液体現像剤8が除去される。
【0045】
転写装置5でトナー像が転写された記録材7は、定着前加熱装置93で加熱され、定着前荷電装置94で帯電された後、定着ローラ対9a、9bからなる定着装置へと搬送され、加熱定着の上、排出される。
【0046】
定着前のトナー画像の加熱と荷電についての詳細は、後述する。
【0047】
(現像剤の構成)
現像に用いる液体現像剤8について説明する。液体現像剤8は、溶媒であるキャリヤ液体中に着色されたトナー粒子を高濃度で分散している。また液体現像剤8には、分散剤、荷電制御剤などの添加剤を適宜、選んで添加してもよい。
【0048】
キャリヤ液としては、絶縁性の、常温で不揮発性の溶媒が用いられる。不揮発性の溶媒としては、例えばシリコンオイル、ミネラルオイル、パラフィンオイル、鉱物油等を上げることができる。
【0049】
トナー粒子は、主として樹脂と着色のための顔料や染料からなる。樹脂には、顔料や染料をその樹脂中に均一に分散させる機能と、記録材に定着される際のバインダとしての機能がある。
【0050】
樹脂としては、例えば、ポリスチレン樹脂、スチレンーアクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂等の熱可塑性樹脂を用いることができる。また、これらの樹脂を複数、混合して用いてもよい。
【0051】
トナーの着色に用いる顔料及び染料も一般市販のものを用いることができる。例えば、顔料として、カーボンブラック、ベンガラ、酸化チタン、シリカ、フタロシアニンブルー、フタロシア人グリーン、スカイブルー、ベンジジンイエロー、レーキレッドD等を用いることができる。染料としては、ソルベントレッド27やアシッドブルー9等を用いることができる。
【0052】
液体現像剤の調整方法としては、一般に用いられる技法に基づいて調整することができる。例えば、樹脂と顔料とを所定の配合比で、加圧ニーダ、ロールミルなどを用いて溶融混練し、均一に分散させ、得られた分散体を、例えばジェツトミルによって微粉砕する。さらに得られた微粉末を、例えば風力分級機などにより分級することで、所定の粒径の着色トナーを得ることができる。
【0053】
続いて、得られたトナーをキャリヤ液としての絶縁性液体と所定の配合比で混合する。この混合物をボールミル等の分散手段により均一に分散させ、液体現像剤を得ることができる。
【0054】
トナーの体積平均粒子径は、0.1μm以上、5μm以下の範囲が適当である。トナーの平均粒子径が0.1μmを下回ると現像性が大きく低下する。一方、平均粒子径が5μmを超えると画像の品質が低下する。
【0055】
液体現像剤の質量に対するトナー粒子の質量の割合は、10〜50%程度が適当である。10%未満の場合、トナー粒子の沈降が生じやすく、長期保管時の経時的な安定性に問題がある。また必要な画像濃度を得るため、多量の現像剤を供給する必要があり、紙上に付着するキャリヤ液が増加し、定着時に乾燥せねばならず、蒸気が発生し環境上の問題が生じる。50%を超える場合には、液体現像剤の粘度が高くなりすぎ、製造上も、また取り扱いも困難になる。
【0056】
液体現像剤の粘度は、25℃において0.1mPa・s以上、10000mPa・s以下が好ましい。10000mPa・s以上になると、キャリヤ液とトナーの撹拌が困難となり、均一な液体現像剤を得るための装置面での負担が大きい。
【0057】
(定着前加熱装置と定着前荷電装置について)
図2は、湿式画像形成装置における現像されたトナー像の転写から定着に至る装置構成を示す概略構成図である。図3は、湿式画像形成装置における記録材への、現像されたトナー像の転写から定着に至る流れを示すフローチャートである。
【0058】
図2及び図3を用いて、現像されたトナー像の転写から定着に至る装置構成とその機能動作について説明する。
【0059】
図2において、1は感光体ドラムであり、表面に液体現像装置4によって現像されたトナー像を担持する。5は転写装置であり、ここでは転写ローラである。転写ローラには、電源(不図示)によりトナー像を転写するための転写バイアス電圧が印加されるようになっている。
【0060】
71は記録材7を搬送するための搬送装置(搬送ベルト)である。搬送ローラ72a、72bに張架され、少なくとも一方のローラによって駆動する。
【0061】
搬送装置71により、感光体ドラム1の回転と同期して記録材7が搬送されてくる(ステップS1)。記録材7が感光体ドラム1と転写装置5の間を通過する間に、トナー像は、転写装置5によって、記録材7に転写される(ステップS2)。
【0062】
転写装置5によってトナー像を転写された記録材7は、従来ならば、そのまま搬送装置71によって、定着装置(定着ローラ9a、9b)に送り込まれる。
【0063】
しかしながら、記録材7上のトナー像には、トナーのみならず溶媒としてのキャリヤ液が含まれている。
【0064】
液体現像装置4による現像後に感光体ドラム1上のトナー像は、スクイズ装置91によって、余分なキャリヤ液を除去されている。しかしトナー間に含まれるキャリヤ液までは十分に除去し去ることはできない。従ってそのトナー像を記録材7に転写した後も、記録材7に転写されたトナー像にはキャリヤ液が含まれている。
【0065】
溶媒としてのキャリヤ液を含んだトナー像を有する記録材7が定着装置(定着ローラ9a、9b)に送り込まれると、トナーの記録材7への定着を溶媒が阻害する要因となる。トナーの記録材7への定着性を低下させるのみならず、定着ローラによる加圧時にトナーを乱し、画像品質にも影響を与えたりする。
【0066】
本実施形態では、定着の前に、トナー像を転写された記録材7は、搬送装置71によって、互いに対向するよう配置された定着前加熱装置93と定着前荷電装置94の間に搬送され、送り込まれる(ステップS3)。
【0067】
従ってトナー像を転写された記録材7は、定着前に定着前加熱装置93によって加熱される(ステップS4の定着前加熱工程)。すなわち、定着前加熱装置93は定着前加熱手段として機能する。
【0068】
定着前加熱装置93は、内部にヒータを有する加熱ローラであり、不図示の電源により所定の温度に加熱されるものとする。加熱ローラは記録材7のトナー像のある面と逆の面から、接触回転し、記録材7を加熱し、その表面のトナー像を加熱する。
【0069】
加熱ローラを用いるのであれば、このように記録材7のトナー像のある面と逆の面に配置することが、接触によるトナー像の乱れを引き起こすこともなく、好ましい。また、加熱ローラの所定の温度は、安全面からキャリヤ液を揮発させることがないような温度に設定することが望ましい。
【0070】
また定着前加熱装置93による加熱と同時に、記録材7上のトナー像は、定着前荷電装置94によって荷電される(ステップS4の定着前荷電工程)。すなわち、定着前荷電装置94は定着前荷電手段として機能する。
【0071】
定着前荷電装置94は、コロトロンチャージャを用いる非接触の帯電器であり、不図示の電源により所定の条件で電荷を放電するものとする。帯電器は記録材7のトナー像のある面の上から放電し、記録材表面のトナー像を荷電する。
【0072】
スコロトロンチャージャの代わりに、電荷を記録材7上のトナー像に付与できる任意の帯電器を使用できるが、トナー像を乱さないように非接触であることが好ましい。
【0073】
これらの定着前加熱装置93による加熱と、定着前荷電装置94による荷電とを同時に行うことによって、すなわち定着前加熱工程と定着前荷電工程とを併行して実行することにより、記録材7上のトナー像に含まれる溶媒を紙である記録材7に浸透させる(ステップS4)。
【0074】
これにより、トナーの間、及びトナーと記録材間の溶媒を極力減少させ、上記の定着性への悪影響を抑制する。記録材への溶媒浸透については、後述する。
【0075】
定着前加熱装置93と、定着前荷電装置94とを通過した、トナー像に含まれる溶媒を浸透させた記録材7は、そのまま搬送装置71で、回転する定着ローラ9aと9b間に送り込まれる(ステップS5)。定着ローラ9aと9bは、少なくとも一方が内部にヒータを有する、加熱ローラであり、図示しない電源により表面が所定の温度になるよう制御されている。
【0076】
記録材7は定着ローラ9aと9b間を圧接されながら通過し、記録材7上のトナー像は、熱と圧力により、記録材7に溶融定着される(ステップS5)。定着された記録材7は、排紙トレイなどへ搬出される(ステップS6)。
【0077】
(溶媒の記録材への浸透効果)
図4は、図3のステップS4、すなわち定着前加熱工程と定着前荷電工程とにおける、トナー像に含まれる溶媒の記録材への浸透の過程を模式的に示す図である。図4を用いて、定着前の加熱と荷電によりトナー像に含まれる溶媒が記録材へと浸透していく過程を説明する。
【0078】
図4(a)は、記録材7にトナー像8aが転写された状態(図3のステップS3)を模式的に示す断面図である。
【0079】
トナー像8aはトナー粒子81とキャリヤ液82とからなり、記録材7の表面に付着している。トナー像8aの内部において、トナー粒子81の表面はキャリヤ液82によりかなり厚めに覆われ、トナー粒子81の間も、トナー粒子81と記録材7の間も、キャリヤ液82が厚めに充満している。
【0080】
図4(b)は、記録材7上のトナー像8aが、定着前加熱装置93により加熱されながら、同時に定着前荷電装置94により荷電されている状態(図3のステップS4)を模式的に示す断面図である。図の上方より定着前荷電装置94により電荷が与えられ、下方から定着前加熱装置93により熱が与えられている。
【0081】
トナー像8aにおいては、キャリヤ液82の液分子が上方からの荷電により帯電(図では正帯電)する。液分子同士の静電反発力によりキャリヤ液82は流動化し、記録材7の表面に拡がるように移動していく。それにつれてトナー粒子81を覆うキャリヤ液82も薄くなる方向に変化していく。
【0082】
一方記録材7の下方からの加熱により、記録材7とともにキャリヤ液82も加熱される。キャリヤ液82の粘度は低下し、記録材7の表面に拡がったキャリヤ液82が記録材7へと浸透していく。
【0083】
図4(c)は、記録材7上のトナー像8aが、定着前加熱装置93による加熱と定着前荷電装置94による荷電を経た後、定着に向かう前の状態(図3のステップS5)を模式的に示す断面図である。
【0084】
トナー像8aの内部において、トナー粒子81の表面のキャリヤ液82は極めて微量となり、表面を薄く覆っている。トナー粒子81の間も、またトナー粒子81と記録材7の間も、充填されるキャリヤ液82はかなり少なくなっている。キャリヤ液82が減少した分は、記録材7に浸透したものである。
【0085】
このようにして、記録材にトナー像が転写された後、定着前に、定着前加熱手段による加熱(定着前加熱工程)と定着前荷電手段による荷電(定着前荷電工程)とが併行して実行されることにより、溶媒(キャリヤ液)の粘度を低下させるとともに、流動性を上げて記録材表面に延展させ、定着前のトナー画像に含まれる溶媒の記録材への浸透を促進することができる。
【0086】
これにより記録材上のトナー像を定着させるに際して、溶媒を揮発させる必要もなく、安全で、省エネルギーで、かつ接触により記録材を傷つけたり、トナー画像を乱したりすることもなく、溶媒によるトナー画像の定着性低下を抑制し、溶媒による定着時の画像の乱れも防止することができる。
【実施例】
【0087】
上述の図1、図2を用いて述べてきた湿式画像形成装置を使用して、同じく図3、図4を参照して述べてきた画像処理方法を実施した例を説明する。
【0088】
(実験条件)
実施例、比較例に共通する装置条件について述べる。
【0089】
像担持体として、直径210mmのアルミドラムに有機感光体(膜厚35μm)を形成した感光体ドラムを使用した。回転周速(プロセス速度)は350mm/sに設定した。
【0090】
帯電装置はスコロトロンチャージャを用いて、像担持体の表面電位が−450Vになるよう設定した。露光装置は半導体レーザを使用し、画像部分を露光したときに像担持体の表面電位が−100Vになるように設定した。
【0091】
液体現像剤は、コニカミノルタビジネステクノロジー(株)のカラー複写機C350のブラックトナーを粉砕して体積平均粒径3μmとし、キャリヤ液に添加したものを用いた。キャリヤ液は、流動パラフィンで動粘度を変えて実験した。また分散剤はアビシア社製ソルスパース13940をトナー量に対して25質量%添加した。
【0092】
上記液体現像剤のトナー帯電量は−100μC/gであった。
【0093】
液体現像装置の現像ローラには、トナーと同極性のバイアス電圧を印加した。印加する電位は、記録材に転写されたトナー付着量が3g/m2、そのときのキャリヤ液量が2g/m2となるように調整した。
【0094】
転写装置としては転写ローラを用いて、定電流−200μAを印加した。
【0095】
記録材は、吸油性の遅いコート紙として、王子製紙株式会社製のOKトップコート+127を使用した。
【0096】
定着装置は定着ローラ対を用いて、それぞれのローラの表面温度が180℃となるよう設定した。ローラの圧接は、記録材がニップを通過する時間が25msになるよう調整した。また定着前加熱装置や定着前荷電装置を用いる実験は、そこから定着ローラまでの距離をそれぞれ35cmと設定した。
【0097】
定着前加熱装置は、すでに述べたように内部にヒータを有する加熱ローラであり、実験により設定温度を変更した。定着前荷電装置も、すでに述べたようにコロトロンチャージャを用いる非接触の帯電器であり、実験により設定電流を変更した。
【0098】
評価実験は、後述する各実験条件において画像形成を行い、記録材上に定着された黒ベタ部分(トナー付着量の大きい部分)に対してテープ剥離試験を行った。
【0099】
評価は、剥離したテープを目視して、定着性評価ランク見本と比較し、ランク付けを行った。ランク5がトナー剥離なしで良好な状態、ランク4以下は小さくなるほどトナー剥離が多くなる。定着性の許容範囲はランク5のみである。
【0100】
(実験内容)
実施例1は、上記の定着前加熱装置と定着前荷電装置を用いた、本実施形態に係る画像形成方法での実験である。実施例1は、実施例1−1から実施例1−12の12実験であり、それぞれキャリヤ液の動粘度(40℃)を2mm2/sから70mm2/sまで変化させた液体現像剤を用いている。
【0101】
定着前加熱装置(加熱ローラ)の温度設定は120℃、定着前荷電装置(スコロトロンチャージャ)の荷電電流は400μAに設定した。加熱ローラとスコロトロンチャージャは記録材を挟んで対向するように配置した。荷電電流とは、スコロトロンチャージャから対向する加熱ローラに流れ込む電流である。
【0102】
比較例1は、上記の定着前加熱装置のみを使用した。定着前荷電装置は用いない。定着前加熱装置(加熱ローラ)の温度設定は、実施例と同様120℃に設定した。
【0103】
比較例1も実施例と同様に、比較例1−1から比較例1−12の12実験であり、それぞれキャリヤ液の動粘度(40℃)を2mm2/sから70mm2/sまで変化させた液体現像剤を用いている。
【0104】
比較例2は、比較例1とは逆に、上記の定着前荷電装置のみを使用した。定着前加熱装置は用いない(常温23℃設定とした)。定着前荷電装置(スコロトロンチャージャ)の荷電電流は、実施例と同様400μAに設定した。
【0105】
比較例2も実施例と同様に、比較例2−1から比較例2−12の12実験であり、それぞれキャリヤ液の動粘度(40℃)を2mm2/sから70mm2/sまで変化させた液体現像剤を用いている。
【0106】
実施例1−1から1−12、比較例1−1から1−12、及び比較例2−1から2−12の実験条件と定着性の評価結果を表1に示す。
【0107】
【表1】

【0108】
比較例1−13から1−19は、やはり上記の定着前加熱装置のみを使用し、定着前荷電装置は用いていない。但し、定着前加熱装置(加熱ローラ)の温度設定は、それぞれ80℃から200℃まで変化させた。使用する液体現像剤は、キャリヤ液の動粘度(40℃)が12.35mm2/sのものに固定した。
【0109】
比較例1−13から1−19の実験条件と定着性の評価結果を表2に示す。
【0110】
【表2】

【0111】
比較例2−13から2−19は、上記の定着前荷電装置のみを使用し、定着前加熱装置は用いない(常温23℃設定とした)。但し、定着前荷電装置(スコロトロンチャージャ)の荷電電流は、それぞれ200μAから800μAまで変化させた。使用する液体現像剤は、キャリヤ液の動粘度(40℃)が12.35mm2/sのものに固定した。
【0112】
比較例2−13から2−19の実験条件と定着性の評価結果を表3に示す。
【0113】
【表3】

【0114】
(評価結果)
表1から表3に示した各実施例、比較例の定着性評価結果を、それぞれ図5から図7にグラフ化して示す。
【0115】
図5には、実施例1−1から実施例1−12の定着性評価結果が示されている。キャリヤ液の動粘度(40℃)を2mm2/sから60mm2/sまで変化させても、すべて定着性評価はランク5(良好、許容範囲内)である。但し、70mm2/sになるとランク4に落ちている。
【0116】
また図5には、比較例1−1から比較例1−12の定着性評価結果も示されている。定着前に加熱のみ行った場合であるが、キャリヤ液の動粘度(40℃)が2mm2/sのときには定着性評価はランク4、動粘度が高くなるにつれて評価ランクは下がり、15mm2/s以上になると最悪のランク1となる。定着性はすべて許容範囲外となる。
【0117】
図5には、比較例2−1から比較例2−12の定着性評価結果も示されている。定着前に荷電のみ行った場合であるが、キャリヤ液の動粘度(40℃)が2mm2/sのときでも定着性評価はランク2と悪く、動粘度が6mm2/s以上になると最悪のランク1となる。もちろん定着性はすべて許容範囲外となる。
【0118】
図6には、比較例1−13から比較例1−19の定着性評価結果を示す。定着前に加熱のみ行った場合であるが、加熱ローラの温度設定が100℃以下のときには定着性評価は最悪のランク1であり、120℃以上200℃まで上げても評価ランクは2までしか上がらない。もちろん定着性はすべて許容範囲外である。
【0119】
図7には、比較例2−13から比較例2−19の定着性評価結果を示す。定着前に荷電のみ行った場合であるが、荷電電流設定を200μAから800μAまで変化させても、定着性評価は最悪のランク1である。もちろん定着性はすべて許容範囲外である。
【0120】
上述の比較例に示すように、定着前に加熱、あるいは荷電の一方のみを実施するだけでは、条件を変更してみても定着性の向上は見られない。ところが、こういった定着性のよくない従来の画像形成装置、及び画像形成方法においても、本実施形態に係る画像形成装置、及び画像形成方法に修正すれば、良好な定着性を得ることができた。
【0121】
また使用する液体現像剤(キャリヤ液)が高粘度であっても、定着性を向上することができる。特に、40℃での動粘度が2mm2/sから60mm2/sまでの範囲の液体現像剤(キャリヤ液)を使用することが好ましい。
【0122】
すなわち、本実施形態に係る画像形成装置、及び画像形成方法によれば、溶媒にトナーを分散した高粘度の液体現像剤を用いて現像されたトナー画像を、記録材に転写した後、定着する前に、溶媒を含むトナー画像を加熱しながら、同時に荷電することにより、溶媒の粘度を低下させるとともに、流動性を上げて記録材表面に延展させ、定着前のトナー画像に含まれる溶媒の記録材への浸透を促進することができた。
【0123】
これにより溶媒を揮発させる必要もなく、安全で、省エネルギーで、かつ接触により記録材を傷つけたり、トナー画像を乱したりすることもなく、溶媒によるトナー画像の定着性低下を抑制し、溶媒による定着時の画像の乱れも防止することができた。
【0124】
なお本発明の範囲は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、それらの変更された形態もその範囲に含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】本発明に係る画像形成装置の画像形成部10の概略構成例を示す断面図である。
【図2】図1における現像されたトナー像の転写から定着に至る装置の概略構成例を示す配置図である。
【図3】図2における記録材への、現像されたトナー像の転写から定着に至る流れを示すフローチャートである。
【図4】図3の定着前加熱工程と定着前荷電工程とにおける、トナー像に含まれる溶媒の記録材への浸透の過程を模式的に示す図である。
【図5】実施例1、比較例1及び比較例2について、それぞれ12通りの実験の定着性評価結果を示すグラフである。
【図6】比較例1−13から比較例1−19の定着性評価結果を示すグラフである。
【図7】比較例2−13から比較例2−19の定着性評価結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0126】
1 感光体ドラム(像担持体)
2 帯電装置
3 露光装置
4 液体現像装置
5 転写装置(転写ローラ)
6 クリーニング装置(クリーナブレード)
7 転写材(記録材)
8 液体現像剤
8a 転写されたトナー像
9a、9b 定着装置(定着ローラ)
10 画像形成部
41 現像ローラ(現像剤担持体)
42 搬送ローラ
43 供給ローラ
44 現像剤槽
45 規制部材
46 除去部材
71 搬送装置(搬送ベルト)
72a、72b 搬送ローラ
81 トナー粒子
82 キャリヤ液(溶媒)
91 スクイズローラ
92 ブレード
93 定着前加熱装置(加熱ローラ)
94 定着前荷電装置(スコロトロンチャージャ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒にトナーを分散した液体現像剤を用いて現像されたトナー画像を記録材に転写し、定着する画像形成装置において、
前記記録材に転写されたトナー画像を加熱する定着前加熱手段と、
前記記録材に転写されたトナー画像を荷電する定着前荷電手段と、を有し、
前記記録材に転写されたトナー画像を定着する前に、該トナー画像を、前記定着前加熱手段により加熱しながら、同時に前記定着前荷電手段により荷電する
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記定着前荷電手段は、前記記録材のトナー画像面側から、非接触で荷電する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記定着前加熱手段は、前記記録材のトナー画像面と逆側の面から加熱する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記液体現像剤に用いる溶媒は、動粘度が40℃で2mm2/s以上、60mm2/s以下である
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
溶媒にトナーを分散した液体現像剤を用いて現像されたトナー画像を記録材に転写し、定着する画像形成方法において、
前記記録材に転写されたトナー画像を加熱する定着前加熱工程と、
前記記録材に転写されたトナー画像を荷電する定着前荷電工程と、を備え、
前記定着前加熱工程と前記定着前荷電工程とは、前記記録材に転写されたトナー画像を定着する前に、併行して実行される
ことを特徴とする画像形成方法。
【請求項6】
前記定着前荷電工程では、前記トナー画像は、前記記録材のトナー画像面側から非接触で荷電される
ことを特徴とする請求項5に記載の画像形成方法。
【請求項7】
前記定着前加熱工程では、前記トナー画像は、前記記録材のトナー画像面と逆側の面から加熱される
ことを特徴とする請求項5または6に記載の画像形成方法。
【請求項8】
前記液体現像剤に用いる溶媒は、動粘度が40℃で2mm2/s以上、60mm2/s以下である
ことを特徴とする請求項5乃至7の何れか1項に記載の画像形成方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−69758(P2009−69758A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−240719(P2007−240719)
【出願日】平成19年9月18日(2007.9.18)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】