説明

画像形成装置、画像形成方法

【課題】液体現像剤を用いてトナー像を形成するとともにスクイーズローラーを用いた画像形成装置および画像形成方法において、潜像担持体ドラムの速度変動の周期性の崩れを抑制可能とする技術を提供する。
【解決手段】回転するとともに潜像が形成される潜像担持体ドラムと、液体キャリアおよびトナーを含む液体現像剤を潜像担持体ドラムに供給して、潜像を現像する現像部と、現像部の現像により潜像担持体ドラムに形成されたトナー像から液体キャリアを取りながら回転するスクイーズローラーと、を備え、潜像担持体ドラムの回転周期が、スクイーズローラーの回転周期の整数倍である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、潜像担持体ドラムに形成された潜像を液体現像剤で現像する画像形成装置および画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液体キャリアにトナーを分散してなる液体現像剤を用いて潜像を現像する画像形成装置が知られている。例えば、特許文献1に記載の画像形成装置では、潜像が形成された感光体ドラムの表面に、現像ユニットが液体現像剤を供給する。これにより感光体ドラム表面の潜像が現像されて、トナー像が形成される。こうして形成されたトナー像は、感光体ドラムの回転に伴って所定の転写位置にまで搬送されて、この転写位置で転写媒体(同文献では「中間転写ベルト」)に転写される。
【0003】
また、特許文献1に記載の画像形成装置は、スクイーズローラーを備えている。このスクイーズローラーは、現像ユニットが液体現像剤を供給する現像位置と転写位置との間に設けられている。そして、転写位置に対して感光体ドラムの回転方向の上流側(つまり、転写位置の前段)で、スクイーズローラーがトナー像から余剰な液体キャリアを搾り取る。これにより、トナー比率が向上したトナー像が転写位置へと搬送されることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−310368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述の感光体ドラムのような潜像担持体ドラムは回転軸に対して偏心する場合があり、このような潜像担持体ドラムの偏心が発生すると、潜像担持体ドラムの表面速度(周速度)が転写位置において変動する場合がある。つまり、潜像担持体ドラムが回転軸に対して偏心すると、回転軸から潜像担持体ドラム表面までの距離が、潜像担持体ドラム表面における位置によって変わってしまう。その結果、潜像担持体ドラム表面において、回転軸からの距離が遠いところでは表面速度が速くなり、回転軸からの距離が近いところでは表面速度が遅くなる。そして、転写位置における潜像担持体ドラム表面の速度変動が引き起こされると、トナー像が転写媒体の所望位置からずれて転写されて、良好な画像が形成できないおそれがあった。
【0006】
ただし、後に詳述するとおり、潜像担持体ドラムの偏心に起因する潜像担持体ドラムの表面速度変動は、潜像担持体ドラムの回転周期で周期的に現れるという性質を有する。したがって、転写媒体でのトナー像の位置ずれは、潜像担持体ドラムの回転周期で周期的に再現すると考えられる。よって、潜像担持体ドラムの回転周期にわたって転写媒体に形成したトナー像の位置ずれを予め検出しておけば、この検出結果に基づいて転写媒体でのトナー像の位置ずれを抑制できると期待できる。
【0007】
しかしながら、液体現像剤を用いてトナー像を形成するとともにスクイーズローラーにより液体キャリアを除去する上述の構成では、潜像担持体ドラム表面の速度変動が潜像担持体ドラムの回転周期で現れない場合があった。つまり、スクイーズローラーは、トナー像から余剰な液体キャリアを除去するものである。したがって、スクイーズローラーの近傍では、(例えば、現像位置の近傍と比較して)液体キャリアの量が少なくなる傾向にある。そして、液体キャリアの量が少なくなると、スクイーズローラーの動作が潜像担持体ドラムの表面速度に影響して、潜像担持体ドラム表面の速度変動の周期性を崩してしまう場合があった。
【0008】
この発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、液体現像剤を用いてトナー像を形成するとともにスクイーズローラーを用いた画像形成装置および画像形成方法において、潜像担持体ドラムの速度変動の周期性の崩れを抑制可能とする技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明にかかる画像形成装置は、上記目的を達成するために、回転軸で回転するとともに潜像が形成される潜像担持体ドラムと、液体キャリアおよびトナーを含む液体現像剤を潜像担持体ドラムに供給して、潜像を現像する現像部と、現像部の現像により潜像担持体ドラムに形成された像から液体キャリアを取りながら回転するスクイーズローラーと、を備え、潜像担持体ドラムの回転周期が、スクイーズローラーの回転周期の整数倍であることを特徴としている。
【0010】
また、この発明にかかる画像形成方法は、上記目的を達成するために、回転軸で回転する潜像担持体ドラムに潜像を形成する第1の工程と、液体キャリアおよびトナーを含む液体現像剤を潜像担持体ドラムに供給して潜像を現像する第2の工程と、第2の工程で潜像担持体ドラムに現像された像から液体キャリアを、回転するスクイーズローラーにより取る第3の工程と、を備え、潜像担持体ドラムの回転周期が、スクイーズローラーの回転周期の整数倍であることを特徴としている。
【0011】
このように構成された発明(画像形成装置、画像形成方法)では、潜像担持体ドラムの回転周期が、スクイーズローラーの回転周期の整数倍となっている。したがって、スクイーズローラーの近傍で液体キャリアの量が少なくなって、スクイーズローラーの動作が潜像担持体ドラムの表面速度に影響したとしても、潜像担持体ドラムの速度変動の周期性の崩れを抑制することが可能となっている。
【0012】
また、潜像担持体ドラムの回転軸を駆動する駆動部と、潜像担持体ドラムの回転軸に配設された第1のギアと、スクイーズローラーに設けられて第1のギアに噛み合う第2のギアと、を備え、第1のギアの歯数が第2のギアの歯数の整数倍であるように構成しても良い。このように構成することで、潜像担持体ドラムの回転周期を、スクイーズローラーの回転周期とすることができ、潜像担持体ドラムの速度変動の周期性の崩れを抑制することが可能となる。
【0013】
このように本発明によると、潜像担持体ドラムの速度変動の周期性の崩れが抑制される。したがって、転写媒体での像の位置のずれは、潜像担持体ドラムの周期で周期的に再現すると考えられる。そこで、潜像担持体に現像された像が転写される転写媒体と、潜像担持体ドラムの回転周期以上の期間で潜像担持体ドラムに現像された像を転写媒体に転写し、転写媒体に転写された像を検出する制御部と、を備えるように構成しても良い。これにより、この検出結果を有効活用することで、以後の画像形成において転写媒体での像の位置ずれを抑制することができるからである。
【0014】
例えば、発光素子を有して、発光素子からの光により潜像担持体ドラムに潜像を形成する露光ヘッドを備える構成においては、制御部は像の検出結果に基づいて発光素子の発光タイミングを制御するように構成すると良い。これにより、転写媒体での像の位置ずれを抑制することができる。
【0015】
この際、制御部は、転写媒体に転写された像の位置を検出した結果から転写媒体での像の位置ずれを示す位置ずれデータを求め、位置ずれデータに基づいて発光素子の発光タイミングを制御するように構成しても良い。これにより、転写媒体での像の位置ずれを、確実に抑制することができる。
【0016】
さらには、制御部は、位置ずれデータから算出した潜像担持体ドラムの回転周期成分に基づいて発光素子の発光タイミングを制御するように構成しても良い。これにより、潜像担持体ドラムの回転周期で起こる潜像担持体ドラムの速度変動に起因した、転写媒体での像の位置ずれを、より確実に抑制することができる。
【0017】
また、制御部は、潜像担持体ドラムの回転周期の3倍以上で5倍以下の期間で像を形成するように構成しても良い。つまり、像を形成する期間を潜像担持体ドラムの回転周期の3倍以上とすることで、十分な量の位置ずれデータを求めることができる。しかも、像を形成する期間を潜像担持体ドラムの回転周期の5倍以下とすることで、位置ずれデータを求めるのに要する時間を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態にかかる画像形成装置の一実施形態を示す図。
【図2】図1の画像形成装置の電気的構成を示す図。
【図3】ラインヘッドの構造を示す部分斜視図。
【図4】ラインヘッドの幅方向断面を示す部分断面図。
【図5】現像部の構成を示す部分図。
【図6】スクイーズローラーの回転機構を示す部分側面図。
【図7】感光体ドラムの偏心が感光体ドラムの表面速度に与える影響を示す図。
【図8】レジストマークの検出動作で用いられる機械的構成を示す斜視図。
【図9】図8に示した機械的構成の1つであるエンコーダーを示す側面図。
【図10】レジストマークの検出動作を示すフローチャート。
【図11】図10のレジストマークの検出動作を示す斜視図。
【図12】レジストマークの検出動作で形成されるレジストマークを示す平面図。
【図13】レジストマークの位置ずれ量の求め方を示す図。
【図14】レジストマークの位置ずれ量を示すグラフ。
【図15】位置ずれ量の感光体ドラムの回転周期成分をプロットしたグラフ。
【図16】画像形成動作を示すフローチャート。
【図17】レジストプロファイルで補正した水平リクエスト信号を示すグラフ。
【図18】水平リクエスト信号の補正動作の一例を示すタイミングチャート。
【図19】補正済リクエスト信号によるレジストマークの位置ずれ量を示すグラフ。
【図20】感光体速度変動の周期性が崩れた状況でのレジストマークを示すグラフ。
【図21】図20に基づくプロファイルで形成したレジストマークを示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は本実施形態にかかる画像形成装置の一実施形態を示す図である。図2は図1の画像形成装置の電気的構成を示す図である。この装置は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)の4色のトナーを重ね合わせてカラー画像を形成するカラーモードと、ブラック(K)のトナーのみを用いてモノクロ画像を形成するモノクロモードとを選択的に実行可能な画像形成装置である。この画像形成装置では、ホストコンピュータなどの外部装置から画像形成指令がCPUやメモリーなどを有するメインコントローラーMCに与えられると、このメインコントローラーMCがエンジンコントローラーECに制御信号を与え、これに基づき、エンジンコントローラーECがエンジン部ENGおよびヘッドコントローラーHCなど装置各部を制御して所定の画像形成動作を実行し、複写紙、転写紙、用紙およびOHP用透明シートなどの記録材たるシートに画像形成指令に対応する画像を形成する。
【0020】
この実施形態にかかる画像形成装置が有するハウジング本体(図示省略)の内部には、電源回路基板、メインコントローラーMC、エンジンコントローラーECおよびヘッドコントローラーHCを内蔵する電装品ボックス(図示省略)が設けられている。また、画像形成ユニット2、転写ベルトユニット8および二次転写ユニット12もハウジング本体内に配設されている。
【0021】
画像形成ユニット2は、複数の異なる色の画像を形成する4個の画像形成ステーション2Y(イエロー用)、2M(マゼンタ用)、2C(シアン用)および2K(ブラック用)を備えている。なお、図1においては、画像形成ユニット2の各画像形成ステーションは構成が互いに同一のため、図示の便宜上一部の画像形成ステーションのみに符号を付し、他の画像形成ステーションについては符号を省略する。
【0022】
各画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kには、それぞれの色のトナー像がその表面に形成される感光体ドラム21が設けられている。各感光体ドラム21は、その回転軸AR21が主走査方向MD(図1の紙面に対して垂直な方向)に平行もしくは略平行となるように配置されている。また、各感光体ドラム21の回転軸AR21はそれぞれ専用の駆動モーターDMに接続され図中矢印D21の方向に所定速度で回転駆動される。これにより、感光体ドラム21表面が、主走査方向MDに直交もしくは略直交する副走査方向SDに搬送される。このように本実施形態では、感光体ドラム21の回転軸AR21と駆動モーターDMとの間にギア等の動力伝達機構を設けること無く、感光体ドラム21の回転軸AR21を駆動モーターDMで直接駆動するダイレクトドライブ方式が採用されている。
【0023】
また、感光体ドラム21の周囲には、その回転方向に沿って帯電部23、ラインヘッド29、現像部25、スクイーズローラーSQおよび感光体クリーナ27が配設されている。そして、これらの機能部によって帯電動作、潜像形成動作およびトナー現像動作等が実行される。カラーモード実行時は、全ての画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kで形成されたトナー像を転写ベルトユニット8に設けた転写ベルト81に重ね合わせてカラー画像を形成する。また、モノクロモード実行時は、画像形成ステーション2Kのみを動作させてブラック単色画像を形成する。
【0024】
帯電部23はいわゆるコロナ帯電器で構成されており、感光体ドラム21表面に接触しない非接触型の帯電器である。この帯電部23は、帯電電圧発生部(図示省略)に接続されており、帯電電圧発生部からの給電を受けて帯電部23が感光体ドラム21に対向する帯電位置で感光体ドラム21の表面を所定の表面電位に帯電させる。
【0025】
ラインヘッド29は、その長手方向LGDが主走査方向MDに平行もしくは略平行となるように、かつ、その幅方向LTDが副走査方向SDに平行もしくは略平行となるように配置されている。ラインヘッド29は、長手方向LGDに配列された複数の発光素子を備えており、感光体ドラム21に対向配置されている。そして、帯電部23により帯電された感光体ドラム21の表面に、発光素子からの光を結像して静電潜像を形成する。
【0026】
図3はラインヘッドの構造を示す部分斜視図である。また、図4はラインヘッドの幅方向断面を示す部分断面図である。これらは部分図であるため、全てのパーツを表しているわけではない。ラインヘッド29が有するヘッド基板294の裏面294−tには、複数の発光素子Eが解像度に応じたピッチで長手方向LGDに並んでいる。各発光素子Eはヘッド基板裏面294−tに形成された有機EL素子であり、いわゆるボトムエミッション型の有機EL素子である。また、ヘッド基板294の表面294−hには、屈折率分布型ロッドレンズアレイ297が対向して配置されている。したがって、発光素子Eが射出した光ビームは、ヘッド基板294の裏面294−tから表面294−hへと透過した後、ロッドレンズアレイ297により正立等倍で結像される。これにより、感光体ドラム21の表面にスポットSPが形成されて、感光体ドラム21表面に潜像が形成される。
【0027】
このようなラインヘッド29による潜像形成動作は、メインコントローラーMCおよびヘッドコントローラーHCにより制御される。なお、メインコントローラーMC、ヘッドコントローラーHCおよび各ラインヘッド29はそれぞれ別ブロックとして構成され、これらは互いにシリアル通信線を介して接続されている。各ブロック間でのデータのやりとり動作について、図2を参照しながら説明する。外部装置からメインコントローラーMCに画像形成指令が与えられると、メインコントローラーMCは、エンジンコントローラーECにエンジン部ENGを起動させるための制御信号を送信する。また、メインコントローラーMCに設けられた画像処理部100が、画像形成指令に含まれる画像データに対して所定の信号処理を行い、各トナー色ごとのビデオデータVDを生成する。
【0028】
一方、制御信号を受けたエンジンコントローラーECは、エンジン部ENG各部の初期化およびウォームアップを開始する。これらが完了して画像形成動作を実行可能な状態になると、エンジンコントローラーECは、各ラインヘッド29を制御するヘッドコントローラーHCに対し画像形成動作の開始のきっかけとなる同期信号Vsyncを出力する。
【0029】
ヘッドコントローラーHCには、各ラインヘッド29を制御するヘッド制御モジュール400と、メインコントローラーMCとのデータ通信を司るヘッド側通信モジュール300とが設けられている。一方、メインコントローラーMCにもメイン側通信モジュール200が設けられている。メイン側通信モジュール200は、ヘッド側通信モジュール300からの要求毎に1ライン分のビデオデータVDをヘッド側通信モジュール300に出力する。ヘッド側通信モジュール300は、このビデオデータVDをヘッド制御モジュール400に受け渡す。そして、ヘッド制御モジュール400は受け取ったビデオデータVDに基づいて各ラインヘッド29の発光素子を発光させる。なお、後述するように、発光素子の発光タイミングは水平リクエスト信号H−reqに基づいて制御される。つまり、この水平リクエスト信号H−reqは発光素子の発光タイミングを与える信号であり、発光素子は水平リクエスト信号H−reqに同期して発光する。こうして、画像形成指令に対応する潜像が感光体ドラム21表面に形成される。そして、この潜像は現像部25(図1)によりトナー像として現像される。
【0030】
図5は現像部の構成を示す部分図である。現像部25は現像剤収容器250を備えており、この現像剤収容器250の内部には液体現像剤ADが貯留されている。液体現像剤ADは、シリコーンオイル等の不揮発性かつ絶縁性の液体キャリア中に、トナー粒子を高濃度(5〜40wt%程度)に分散させた高粘度(100〜10000mPa・s程度)現像剤である。トナー粒子は、平均粒径0.1〜5μm程度の樹脂、顔料等からなり、帯電している。そして、液体キャリアAD中のトナー粒子の分散状態を一様にするために、現像剤収容器250の内部には液体現像剤ADを撹拌する撹拌部材251が設けられている。
【0031】
さらに、現像部25は汲上ローラー252を備えている。この汲上ローラー252は、その一部が現像剤収容器250内の液体現像剤ADに浸かっており、回転方向D252(同図時計回り方向)に回転して液体現像剤ADを汲み上げる。こうして、汲み上げられた液体現像剤ADは、中間ローラー253(供給ローラー)を介してから、現像ローラー254に供給される。
【0032】
中間ローラー253は、汲上ローラー252と現像ローラー254との間に配置されており、回転方向D253(同図反時計回り方向)に回転する。汲上ローラー252の回転方向D252に対しては中間ローラー253の回転方向D253は逆方向であるため、中間ローラー253と汲上ローラー252とが対向する領域において、中間ローラー253の表面と汲上ローラー252の表面とは同方向に移動する。一方、現像ローラー254の回転方向D254(同図反時計回り方向)に対しては、中間ローラー253の回転方向D253は同方向であるため、中間ローラー253と現像ローラー254とが対向する領域(供給位置SR)において、中間ローラー253の表面と現像ローラー254の表面とは逆方向に移動する。そして、中間ローラー253は、供給位置SRで液体現像剤ADを現像ローラー254に供給する。また、供給位置SRを通過した後の中間ローラー253に残留する液体現像剤ADは、クリーナーブレード255により掻き取られる。
【0033】
現像ローラー254は、鉄等の金属製の内心の外周部をウレタン樹脂等の弾性体で被覆した構成を備えており、感光体ドラム21と当接する現像位置DRでニップ部を形成する。この現像ローラー254は、回転方向D254に回転して、供給位置SRから現像位置DRまで液体現像剤ADを搬送する。また、供給位置SRから現像位置DRまでの間には、電圧印加用帯電器256が配設されている。この電圧印加用帯電器256はコロナ帯電器で構成されており、現像ローラー254に接触せずに当該現像ローラー254に電圧を印加する。そして、この印加電圧によって、現像ローラー254に担持される液体現像剤AD中の帯電トナー粒子が、現像ローラー254の表面に追いやられて凝集する。こうして、現像ローラー254の表面に所定の層厚を有するトナー層が形成される。
【0034】
ちなみに、この際に形成されるトナー層の層厚は、中間ローラー253の回転速度を調整することにより制御可能となっている。つまり、中間ローラー253の回転速度が変化すると、現像ローラー254に対する液体現像剤ADの単位時間あたりの供給量が変化するため、この液体現像剤ADに含まれるトナー粒子の単位時間あたりの供給量(現像ローラー254に対する供給量)も変化する。その結果、トナー粒子が凝集して成るトナー層の層厚も変化することとなる。要するに、層厚の厚いトナー層を形成したい場合は中間ローラー253の回転速度を速くすれば良く、逆に層厚の薄いトナー層を形成したい場合は中間ローラー253の回転速度を遅くすれば良い。なお、中間ローラー253の速度調整はエンジンコントローラーECにより実行することができる。
【0035】
現像ローラー254の内心には、現像バイアス発生部(図示省略)が電気的に接続されている。そして、現像バイアス発生部が現像ローラー254の内心に現像バイアスを印加すると、現像位置DRにおいて帯電トナーが現像ローラー254から感光体ドラム21表面に移動する。こうして、感光体ドラム21表面の潜像が現像されて、トナー像が形成される。また、現像位置DRを通過した後の現像ローラー254に残留する液体現像剤ADは、クリーナーブレード257により掻き取られる。
【0036】
現像位置DRにおいて顕在化されたトナー像は、感光体ドラム21の回転方向D21(同図時計回り方向)に搬送された後、転写ベルト81と感光体ドラム21とが当接する一次転写位置TR1において転写ベルト81に一次転写される。ただし、本実施形態では、現像位置DRと一次転写位置TR1との間には、スクイーズローラーSQが感光体ドラム21に対向して配置されている。このスクイーズローラーSQは、その表面が弾性部材で仕上げられた弾性ローラーであり、回転方向Ds(同図反時計回り方向)に回転しながら感光体ドラム21に当接する。
【0037】
図6はスクイーズローラーの回転機構を示す部分側面図である。同図では、感光体ドラム21およびスクイーズローラーSQは破線で示されている。同図に示すように、感光体ドラム21には、動力伝達用ギアG21が取り付けられている。したがって、駆動モーターDM(図2)からの駆動力を受けて感光体ドラム21が回転方向D21に回転すると、これに伴って動力伝達用ギアG21も回転方向D21に回転する。一方、スクイーズローラーSQにはスクイーズローラー用ギアGsが取り付けられており、このスクイーズローラー用ギアGsはスクイーズローラーSQの回転に伴って回転する。そして、動力伝達用ギアG21とスクイーズローラー用ギアGsとは互いに噛み合っている。したがって、動力伝達用ギアG21が回転方向D21に回転すると、スクイーズローラー用ギアGsは、回転方向D21と逆方向の回転方向Dsに回転する。このようにスクイーズローラーSQの回転方向は感光体ドラム21の回転方向D21に対して逆方向であるため、スクイーズローラーSQと感光体ドラム21とが当接する領域において、スクイーズローラーSQ表面の移動方向と感光体ドラム21表面の移動方向とは同じとなる。
【0038】
また、動力伝達用ギアG21の歯数は60本であり、スクイーズローラー用ギアの歯数(15本)の4倍(整数倍)となっている。したがって、感光体ドラム21の回転周期はスクイーズローラーSQの回転周期の4倍(整数倍)となる。ここで、回転周期とは、回転物(感光体ドラム21、スクイーズローラーSQ)が1回転するのに要する時間である。さらに、感光体ドラム21の径R21とスクイーズローラーSQの径Rsとの比も、上述の歯数の比と同じ4倍となっている。したがって、感光体ドラム21の表面速度とスクイーズローラーSQの表面速度とは、等しいもしくは略等しい。
【0039】
図5に戻って説明を続ける。スクイーズローラーSQは上述のように回転しながら、感光体ドラム21に当接する。これにより、スクイーズローラーSQは、感光体ドラム21表面に形成されたトナー像から余分な液体キャリアを搾り取る(スクイーズする)。こうして、トナー粒子率が向上したトナー像が一次転写位置TR1に搬送されて、転写ベルト81に1次転写される。
【0040】
また、感光体ドラム21の回転方向D21の一次転写位置TR1の下流側で且つ帯電部23の上流側に、感光体ドラム21の表面に当接して感光体クリーナ27が設けられている。この感光体クリーナ27は、感光体ドラムの表面に当接することで一次転写後に感光体ドラム21の表面に残留するトナーをクリーニング除去する。
【0041】
画像形成装置全体の説明を図1に戻って続ける。転写ベルトユニット8は、駆動ローラー82と、図1において駆動ローラー82の左側に配設される従動ローラー83(ブレード対向ローラ)と、これらのローラーに張架され駆動ローラー82の回転により図示矢印D81の方向(搬送方向)へ循環駆動される転写ベルト81とを備えている。また、転写ベルトユニット8は、転写ベルト81の内側に、カートリッジ装着時において各画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kが有する感光体ドラム21各々に対して一対一で対向配置される、4個の一次転写ローラー85Y、85M、85Cおよび85Kを備えている。これらの一次転写ローラーは、それぞれ一次転写バイアス発生部(図示省略)と電気的に接続される。
【0042】
カラーモード実行時は、図1に示すように全ての一次転写ローラー85Y、85M、85Cおよび85Kを画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2K側に位置決めすることで、転写ベルト81を画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kそれぞれが有する感光体ドラム21に押し遣り当接させて、各感光体ドラム21と転写ベルト81との間に一次転写位置TR1を形成する。そして、適当なタイミングで一次転写バイアス発生部から一次転写ローラー85Y等に一次転写バイアスを印加することで、各感光体ドラム21の表面上に形成されたトナー像を、それぞれに対応する一次転写位置TR1において転写ベルト81表面に転写する。すなわち、カラーモードにおいては、各色の単色トナー像が転写ベルト81上において互いに重ね合わされてカラー画像が形成される。
【0043】
さらに、転写ベルトユニット8は、ブラック用一次転写ローラー85Kの下流側で且つ駆動ローラー82の上流側に配設された転写ベルトスクイーズ部87を備える。この転写ベルトスクイーズ部87は、中間転写ベルト81表面から余分なキャリア液を除去して、中間転写ベルト81表面に転写されたトナー像のトナー粒子率を向上させる機能を果たす。
【0044】
また、転写ベルト81の表面に対向してレジストセンサーRSが設けられている。レジストセンサーRSは、転写ベルト81表面の反射率の変化を光学的に検出することにより、必要に応じて転写ベルト81上に形成されるレジストマークの位置などを検出する。
【0045】
二次転写ローラー121は、転写ベルト81に対して離当接自在に設けられ、二次転写ローラー駆動機構(図示省略)により離当接駆動される。そして、二次転写ローラー121が転写ベルト81に当接した状態において、二次転写ローラー121と中間転写ベルト81との間に二次転写位置TR2が形成される。レジストローラー対80は給紙タイミングを調整しながら排紙経路Dpeに沿ってシートを送り出し、当該シートを二次転写位置TR2に給紙する。そして、二次転写位置TR2において、中間転写ベルト81表面のトナー像がシートに二次転写される。
【0046】
ところで、このような画像形成装置では、感光体ドラム21が回転軸AR21に対して偏心することで、感光体ドラム21の表面速度が、感光体ドラム21の回転周期で周期的に変動する場合がある(図7)。ここで、図7は、感光体ドラムの偏心が感光体ドラムの表面速度に与える影響を示す図である。同図の「感光体ドラム側面図」の欄は長手方向LGDから感光体ドラム21の側面を見た場合に相当する。同欄が示すように、感光体ドラム21の中心CT21が、回転軸AR21の中心CTcyに対して同図右側にずれてしまっており、感光体ドラム21の偏心が発生している。このような偏心が発生すると、回転軸AR21の中心CTcy(回転中心)から感光体ドラム21表面までの距離が、当該表面における位置によって変わってしまう。その結果、感光体ドラム21表面において、回転中心CTcyからの距離が遠いところでは周速度が速くなり、回転中心CTcyからの距離が近いところでは周速度が遅くなる場合がある。
【0047】
この様子を示したものが、同図の「感光体ドラム表面速度」の欄に示すグラフである。このグラフの横軸は感光体ドラムの回転角度θ(deg)を示し、縦軸は感光体ドラム21の周速度V[SP]を表している。感光体ドラム21の回転角度θは、感光体ドラム21に固定された原点θ0からラインヘッド29がスポットSPを形成する位置までの角度であり、感光体ドラム21の回転に伴って変化する値である(「感光体ドラム側面図」)。なお、原点θ0のとり方は任意であり、図7で示す原点θ0のとり方は一例である。そして、同グラフでは、スポットSPの形成位置での感光体ドラム21表面速度V[TR1]が示されている。同グラフが示すように、感光体ドラム21の偏心のため、感光体ドラム21の表面速度は平均表面速度Vavを中心として周期360°で略正弦波的に変動している。つまり、感光体ドラム21の表面速度は、感光体ドラム21の回転周期で変動することとなる。
【0048】
そして、このような感光体ドラム21の表面速度変動は、スポットSPの形成位置のみならず一次転写位置TR1においても同様に発生する。そして、1次転写位置TR1においてこのような感光体ドラム21の表面速度変動が発生すると、中間転写ベルト81に転写されたトナー像の位置ずれが発生するおそれがある。ただし、上述のとおり、感光体ドラム21の表面速度変動は感光体ドラム21の回転周期で周期的に現れる。したがって、中間転写ベルト81でのトナー像の位置ずれも感光体ドラム21の回転周期で周期的に再現すると考えられる。そこで、本実施形態では、感光体ドラム21の回転周期以上にわたって、複数のレジストマークを中間転写ベルト81の表面に形成して、各レジストマークの位置ずれを検出する。次に、このレジストマークの検出動作について説明する。
【0049】
図8は、レジストマークの検出動作で用いられる機械的構成を示す斜視図であり、図9は、図8に示した機械的構成の1つであるエンコーダーを示す側面図である。レジストマークの検出動作では、エンコーダーECDで感光体ドラム21の回転角度θを計測しながら複数のレジストマークが形成され、各レジストマークの位置がレジストセンサーRSで検出される。ここで、感光体ドラム21の回転角度θは、後述する基準スリットSL1からスポットSPまでの角度である(図9)。図8に示すように、中間転写ベルト81の搬送方向D81において、各色に対応して設けられた4個の感光体ドラム21の下流側に、2個のレジストセンサーRS、RSが設けられている。これらレジストセンサーRS、RSは、主走査方向MDに並んで配置されている。
【0050】
図8、図9に示すように、主走査方向MDに平行もしくは略平行な回転軸AR21の一端部に、エンコーダーECDが設けられている。エンコーダーECDは、円盤状のエンコーダーディスクEDと、透過型のフォトセンサーSCとを有している。エンコーダーディスクEDは、その中心部が感光体ドラム21の回転軸AR21に取り付けられており、感光体ドラム21の回転に伴って回転自在に構成されている。
【0051】
エンコーダーディスクEDには、回転軸AR21を中心として放射状に複数本(64本)のスリットSLが設けられている。そして、このスリットSLを検出したフォトセンサーSCが出力するスリット検出信号が、エンジンコントローラーECに出力される。また、64本のスリットSLのうち、原点に対応する位置にあるスリットSL1(基準スリットSL1)は、他のスリットSL(SL2〜SL64)と比べて長い。したがって、基準スリットSL1のスリット検出信号は、基準スリットSL1以外のスリットSL(SL2〜SL64)のスリット検出信号と異なる。そのため、エンジンコントローラーECは、フォトセンサーSCから受け取ったスリット検出信号が、基準スリットSL1のスリット検出信号から何回目のものであるかを判断して、感光体ドラム21の回転角度θを検出することができる。言わば、エンジンコントローラーECは、基準スリットSL1を基点に回転角度θを検出することができる。また、エンジンコントローラーECは、この回転角度θの時間変化から角速度を検出することもできる。
【0052】
図10は、レジストマークの検出動作を示すフローチャートである。図11は、図10のレジストマークの検出動作を示す斜視図である。同図では、イエロー(Y)のラインヘッド29(Y)および感光体ドラム21(Y)のみが実線で表され、他の色(M)、(C)、(K)のラインヘッド29(M)、29(C)、29(K)および感光体ドラム21(M)、21(C)、21(K)は破線で表されている。また、図12は、レジストマークの検出動作で形成されるレジストマークを示す平面図である。
【0053】
ステップS101では、感光体ドラム21(Y)、21(M)、21(C)、21(K)それぞれの表面に、主走査方向MDに伸びるライン状の潜像LI(ラインパターン潜像LI)が形成される。このラインパターン潜像LIは、ラインヘッド29(Y)、29(M)、29(C)、29(K)により所定の時間間隔を空けて複数形成される。また、各ラインパターン潜像LIが形成される度に、感光体ドラム21(Y)、21(M)、21(C)、21(K)の回転角度θが計測されて(ステップS102)、メモリーMMに格納される(ステップS103)。こうして感光体ドラム21(Y)等に形成されたラインパターン潜像LIが、それぞれ対応する色のトナーにより現像されて、レジストマークRMが形成される(ステップS104)。そして、これらレジストマークRMは、中間転写ベルト81表面に転写される(ステップS105)。こうして、図12に示すように、各色(Y)、(M)、(C)、(K)のレジストマークRM(Y)、RM(M)、RM(C)、RM(K)が、ベルト搬送方向D81(副走査方向SD)に間隔を空けて形成される。なお、レジストマークの形成動作は、感光体ドラム21の回転周期の5倍の周期のあいだ実行される。その結果、感光体ドラム21の周長L21の5倍の長さにわたって、レジストマークRM(Y)、RM(M)、RM(C)、RM(K)が並んで形成されることとなる。
【0054】
こうして形成されたレジストマークRMは、ベルト搬送方向D81に移動しながらレジストセンサーRSに検出される(ステップS106)。そして、レジストセンサーRSの検出結果に基づいて、エンジンコントローラーECがレジストマークRMの位置ずれ量を求める。具体的には、基準色であるブラック(K)のレジストマークRM(K)に対する、各色(Y)、(M)、(C)のレジストマークRM(Y)、RM(M)、RM(C)それぞれの位置ずれ量が求められる(ステップS107)。この位置ずれ量を求める処理(ステップS107)およびステップS107に続く処理(ステップS108、S109)は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)それぞれについて同様である。そこで、以下では、ステップS107以後の処理の説明を、イエロー(Y)について具体的に行なうこととする。
【0055】
図13はレジストマークの位置ずれ量の求め方を示す図である。同図において、実線で示すレジストマークRM(K)、RM(Y)は実際に中間転写ベルト81表面に形成されたレジストマークであり、破線で示すレジストマークRM(Y)−idは位置ずれの無い理想的な位置にある仮想のイエロー(Y)のレジストマークである。そして、基準色であるブラック(K)のレジストマークRM(K)と仮想のイエロー(Y)のレジストマークRM(Y)−idとの間隔IV−idは、予めメモリーMM等に記憶されている。そして、エンジンコントローラーECでは、レジストセンサーRSの検出結果に基づいて、基準色であるブラック(K)のレジストマークRM(K)と実際に形成されたイエロー(Y)のレジストマークRM(Y)との間隔IV−rlが算出され、こうして算出された間隔IV−rlとメモリーMMに記憶される間隔IV−idとの差分が、位置ずれ量ΔIVとして求められる(図14)。ここで、図14はレジストマークの位置ずれ量を示すグラフであり、同図では、ベルト搬送方向D81における位置[mm](横軸)に対して、イエロー(Y)のレジストマークRM(Y)の位置ずれ量ΔIV[μm](縦軸)がプロットされている。図14に示すように、レジストマークRM(Y)の位置ずれ量ΔIVは、感光体ドラム21の周長L21毎に略再現している。これは、レジストマークRM(Y)の位置ずれ量ΔIVが感光体ドラム21の回転周期で現れていることを示している。
【0056】
ステップS108では、図14に示す位置ずれ量ΔIVから、感光体ドラム21の回転周期で変動する成分がフーリエ解析により抽出される(図15)。ここで図15は、位置ずれ量から感光体ドラムの回転周期成分を抽出した結果をプロットしたグラフである。なお、図15では、ベルト搬送方向における位置[mm]と、当該位置に対応するブラック(K)の感光体ドラム21(K)の回転角度θ[deg]とが、横軸として併記されている。この図15に示すような抽出結果は、イエロー(Y)以外の色(M)、(C)についても求められ、レジストプロファイルとして各色(Y)、(M)、(C)毎にメモリーMMに格納される(ステップS109)。そして、以後の画像形成は、このレジストプロファイルに基づいて制御される。詳述すると次のとおりである。
【0057】
図16は、画像形成動作を示すフローチャートである。まず、ステップS201では、初期設定として、基準色であるブラック(K)の感光体ドラム21(K)の回転角度θに対する、各色(Y)、(M)、(C)の感光体ドラム21(Y)、21(M)、21(C)の回転角度θの位相差Δθy、Δθm、Δθcが設定される。これにより、以後に実行される画像形成動作において、各色(Y)、(M)、(C)の感光体ドラム21(Y)、21(M)、21(C)は、ブラック(K)の感光体ドラム21(K)に対して所定の位相差Δθy、Δθm、Δθcをもって回転することとなる。
【0058】
そして、ブラック(K)の感光体ドラム21(K)の回転角度θを計測しながら(ステップS203)、各ラインヘッド29(Y)、29(M)、29(C)、29(K)がそれぞれ対応する感光体ドラム21(Y)、21(M)、21(C)、21(K)に潜像を形成する(ステップS204)。このとき、ブラック(K)以外の各色(Y)、(M)、(C)のラインヘッド29(Y)、29(M)、29(C)の発光タイミングは、各色(Y)、(M)、(C)のレジストプロファイルに基づいて調整される。具体的には、各ラインヘッド29(Y)、29(M)、29(C)に供給される水平リクエスト信号H−reqが、レジストプロファイルに基づいて補正される。この水平リクエスト信号H−reqの補正動作は各色(Y)、(M)、(C)について同様であるので、以下では、水平リクエスト信号H−reqの補正動作の説明を、イエロー(Y)についてのみ行い、他の色(M)、(C)についは省略する。
【0059】
図17は、図15に示すレジストプロファイルに基づいて補正した水平リクエスト信号を示すグラフである。図17では、水平リクエスト信号H−req間隔の補正量ΔTreqが縦軸として記されている。ここで、水平リクエスト信号H−req間とは、水平リクエスト信号H−reqが出力される時間間隔である。また、図17では、ベルト搬送方向D81における位置[mm]と、当該位置に対応するブラック(K)の感光体ドラム21(K)の回転角度θ[deg]とが、横軸として併記されている。図17に示すように、水平リクエスト信号H−req間隔は、図15のレジストプロファイルでのレジストマークRMの位置ずれ量を打ち消すように、補正されている。
【0060】
図18は、水平リクエスト信号の補正動作の一例を示すタイミングチャートである。同図は、ブラック(K)の感光体ドラム21(K)の回転角度θが回転角度θ1となる時刻t1に、イエロー(Y)のラインヘッド29(Y)に対して水平リクエスト信号H−reqが出力された場合を示している。この場合、エンジンコントローラーECは、回転角度θ1に対応する補正量ΔTreq(図17)をメモリーMMから読み出し、この補正量ΔTreqを標準H−req間隔Treq−idに加算して、補正済H−req間隔Treq−rlを求める。ここで、標準H−req間隔Treq−idは、補正がされていない水平リクエスト信号H−reqが出力される時間間隔である。そして、補正済H−req間隔Treq−rlを空けて次の水平リクエスト信号H−reqが出力され、この水平リクエスト信号H−reqに同期して、ラインヘッド29(Y)の発光素子Eが発光して潜像を形成する。このように、本実施形態のエンジンコントローラーECは、水平リクエスト信号H−reqを補正することで、発光素子Eの発光タイミングを調整している。
【0061】
各ラインヘッド29(Y)、29(M)、(C)がこのようにして形成した潜像およびラインヘッド29(K)が形成した潜像のそれぞれが、対応する色のトナー像として現像される(ステップS204)。続いて、各色(Y)、(M)、(C)、(K)のトナー像が中間転写ベルト81表面で重ね合わされてカラー画像が形成される(ステップS205)。そして、中間転写ベルト81表面のカラー画像が用紙に二次転写される(ステップS206)。
【0062】
以上のように本実施形態では、レジストプロファイルに基づいて、水平リクエスト信号H−reqが補正され、この補正済の水平リクエスト信号H−reqに同期してラインヘッド29が潜像を形成する。したがって、感光体ドラム21の表面速度が変動したとしても、中間転写ベルト81表面でのトナー像の位置ずれを抑制することができる。かかる効果は、補正済の水平リクエスト信号H−reqでレジストマーク検出動作を実行した場合のレジストマークRMの位置ずれを測定することで、確認することができる。
【0063】
図19は、補正済の水平リクエスト信号で形成したイエローのレジストマークの位置ずれ量を示すグラフである。図19に示すレジストマークRM(Y)の位置ずれ量ΔIVは10[mm]以下となっている。一方、図14に示したように、補正前の水平リクエスト信号で形成したレジストマークRM(Y)の位置ずれ量ΔIVは最大40[mm]であった。このように、水平リクエスト信号H−reqをレジストプロファイルにより補正することで、位置ずれ量ΔIVを4分の1程度にまで抑制することができる。
【0064】
上述したとおり、本実施形態では、感光体ドラム21の回転周期以上にわたって形成されたレジストマークRMからレジストマークRMの位置ずれ量ΔIVが求められ、さらに位置ずれ量ΔIVの感光体周期成分がレジストプロファイルとして抽出される。そして、このレジストプロファイルにより補正した水平リクエスト信号H−reqで画像形成が実行される。これにより、中間転写ベルト81表面のトナー像の位置ずれを抑制することができる。ただし、このような手法が有効に機能するためには、感光体ドラム21の表面速度変動が感光体ドラム21の回転周期で周期的に変動することが重要となる。しかしながら、液体現像剤ADを用いてトナー像を形成するとともにスクイーズローラーSQにより液体キャリアを除去する構成では、感光体ドラム21表面の速度変動が感光体ドラム21の回転周期で現れない場合があった。
【0065】
図20は、スクイーズローラーの影響により感光体ドラム表面の速度変動の周期性が崩れた状況で形成されたレジストマークの位置ずれ量を示すグラフである。同図が示すように、レジストマークRM(Y)の位置ずれ量ΔIVは感光体ドラム21の周長L21で再現せず、感光体ドラム21の回転周期での周期性を有していない。したがって、図20の位置ずれ量ΔIVから感光体ドラム21の回転周期成分を抽出してレジストプロファイルを求め、このレジストプロファイルにより水平リクエスト信号H−reqを補正したとしても、中間転写ベルト81表面でのトナー像の位置は大きくずれてしまう(図21)。ここで、図21は、図20から求めたレジストプロファイルで補正した水平リクエスト信号によって形成したレジストマークの位置ずれ量を示すグラフである。同図が示すように、レジストマークRM(Y)の位置ずれ量ΔIVは、スクイーズローラーSQの周長Lsqで略正弦波的に変動してしまっている。
【0066】
このような問題は、スクイーズローラーSQの回転周期が適切でないことに起因している。これに対して、本実施形態では、感光体ドラム21の回転周期が、スクイーズローラーSQの回転周期の整数倍となっている。したがって、スクイーズローラーSQの近傍で液体キャリアの量が少なくなって、スクイーズローラーSQの動作が感光体ドラム21の表面速度に影響したとしても、感光体ドラム21の速度変動の周期性の崩れを抑制することが可能となっている。その結果、中間転写ベルト81表面でのトナー像の位置ずれを抑制することが可能となっている(図19)。
【0067】
また、本実施形態では、位置ずれ量ΔIVから抽出した感光体ドラム21の回転周期成分に基づいて発光素子Eの発光タイミングを制御している。したがって、感光体ドラム21の回転周期で起こる感光体ドラム21の速度変動に起因した、中間転写ベルト81でのトナー像の位置ずれを、より確実に抑制することが可能となっている。
【0068】
また、本実施形態は、感光体ドラムの回転周期の3倍以上で5倍以下のあいだレジストマークRMを形成しており、好適である。つまり、レジストマークRMを形成する期間を感光体ドラム21の回転周期の3倍以上とすることで、レジストマークRMの位置ずれ量ΔIVを示すデータ(位置ずれデータ)を十分な量求めることができる。しかも、レジストマークRMを形成する期間を感光体ドラム21の回転周期の5倍以下とすることで、位置ずれデータを求めるのに要する時間を抑制することができる。
【0069】
以上のように、本実施形態では、感光体ドラム21が本発明の「潜像担持体ドラム」に相当し、駆動モーターDMが本発明の「駆動部」に相当し、動力伝達用ギアG21が本発明の「第1のギア」に相当し、スクイーズローラー用ギアGsが本発明の「第2のギア」に相当し、中間転写ベルト81が本発明の「転写媒体」に相当し、エンジンコントローラーECが本発明の「制御部」に相当し、ラインヘッド29が本発明の「露光ヘッド」に相当し、図14に示したレジストマークRMの位置ずれ量が本発明の「位置ずれデータ」に相当している。
【0070】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したものに対して種々の変更を加えることが可能である。例えば、レジストマークRMを形成する時間は上記のものに限られず、感光体ドラム21の回転周期以上であれば良い。
【0071】
また、上記実施形態では、1本のスクイーズローラーSQが設けられているが、スクイーズローラーの本数はこれに限られず、2本以上であっても良い。この場合、感光体ドラム21の回転周期が各スクイーズローラーの回転周期に対して整数倍であれば良い。
【0072】
また、上記実施形態では、感光体ドラム21の回転周期はスクイーズローラーSQの回転周期の4倍であったが、感光体ドラム21の回転周期とスクイーズローラーSQの回転周期の比は4に限られず、整数であれば良い。
【0073】
また、上記実施形態では、感光体ドラム21に取り付けられた動力伝達用ギアG21に、スクイーズローラー用ギアGsを従動させることで、スクイーズローラーSQを駆動していた。しかしながら、スクイーズローラーSQの駆動機構はこれに限られず、感光体ドラム21の駆動機構とは全く別に、スクイーズローラーSQの駆動機構を設けても良い。要するに、感光体ドラム21の回転周期が、スクイーズローラーSQの回転周期の整数倍となっていれば良く、スクイーズローラーSQおよび感光体ドラム21それぞれの駆動機構は上述のものと別の構成であっても良い。
【0074】
また上記実施形態では、スクイーズローラーSQと感光体ドラム21とが当接する領域において、スクイーズローラーSQ表面の移動方向と感光体ドラム21表面の移動方向とは同じとなっており、しかも、感光体ドラム21の表面速度とスクイーズローラーSQの表面速度とは、等しいもしくは略等しい。しかしながら、スクイーズローラーSQの回転方向や表面速度はこれに限られない。要するに、感光体ドラム21の回転周期が、スクイーズローラーSQの回転周期の整数倍となっていれば良い。
【0075】
また、上記実施形態では、複数の発光素子Eを長手方向LGDに直線状に並べているが、複数の発光素子Eを長手方向LGDに2列千鳥あるいは3列以上の千鳥で並べても良い。
【0076】
また、上記実施形態では、有機EL素子を発光素子Eとして用いたが、LED(Light-Emitting Diodes)を発光素子Eとして用いても良い。
【0077】
また、ラインヘッド29の構成も上述のものに限られず、例えば、特開2008−036937号公報、特開2008−36939号公報等に記載されているラインヘッド29を用いることもできる。ただし、これらの公報に記載のラインヘッド29では、複数の発光素子を千鳥状に配置して1個の発光素子グループが構成され、さらに複数の発光素子グループが2次元的に配置されている。したがって、副走査方向SDにおいて互いに異なる位置に複数の発光素子が配置されることとなる。したがって、例えば、特開2008−36937の図12に記載されているように、このようなラインヘッド29では副走査方向SDにおいて互いに異なる位置に配置された発光素子の発光を、異なる発光タイミングで制御している。そこで、このようなラインヘッド29に本発明を適用する場合は、副走査方向SDにおいて互いに異なる位置に配置された複数の発光素子それぞれに対して、水平リクエスト信号H−reqを設けると良い。そして、各水平リクエスト信号H−reqを、図15等に示したレジストプロファイルに応じて補正すれば良い。
【0078】
また、上記実施形態では、各感光体ドラム21の回転軸AR21はそれぞれ専用の駆動モーターDMにより直接回転駆動される。しかしながら、回転軸AR21と駆動モーターDMとの間にギア等の駆動力伝達系を備えても良い。
【符号の説明】
【0079】
21…感光体ドラム、 25…現像部、 250…現像剤収容器、 251…撹拌部材251、 252…汲上ローラー、 253…中間ローラー、 254…現像ローラー、 256…電圧印加用帯電器、 29…ラインヘッド、 81…中間転写ベルト、 AD…液体現像剤、 AR21…(感光体ドラムの)回転軸AR21、 DM…駆動モーター、 E…発光素子、 EC…エンジンコントローラー、 ECD…エンコーダー、 G21…動力伝達用ギア、 Gs…スクイーズローラー用ギア、 H−req…水平リクエスト信号、 MM…メモリー、 RM…レジストマーク、 RS…レジストセンサー、 SQ…スクイーズローラー、 TR1…一次転写位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸で回転するとともに潜像が形成される潜像担持体ドラムと、
液体キャリアおよびトナーを含む液体現像剤を前記潜像担持体ドラムに供給して、前記潜像を現像する現像部と、
前記現像部の現像により前記潜像担持体ドラムに形成された像から前記液体キャリアを取りながら回転するスクイーズローラーと、
を備え、
前記潜像担持体ドラムの回転周期が、前記スクイーズローラーの回転周期の整数倍であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記潜像担持体ドラムの前記回転軸を駆動する駆動部と、
前記潜像担持体ドラムの前記回転軸に配設された第1のギアと、
前記スクイーズローラーに設けられて前記第1のギアに噛み合う第2のギアと、を備え、
前記第1のギアの歯数が前記第2のギアの歯数の整数倍である請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記潜像担持体に現像された像が転写される転写媒体と、
前記潜像担持体ドラムの回転周期以上の期間で前記潜像担持体ドラムに現像された前記像を前記転写媒体に転写し、前記転写媒体に転写された前記像を検出する制御部と、
を備えた請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
発光素子を有して、前記発光素子からの光により前記潜像担持体ドラムに潜像を形成する露光ヘッドを備え、
前記制御部は前記像の検出結果に基づいて前記発光素子の発光タイミングを制御する請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記転写媒体に転写された前記像の位置を検出した結果から前記転写媒体での前記像の位置ずれを示す位置ずれデータを求め、前記位置ずれデータに基づいて前記発光素子の発光タイミングを制御する請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記位置ずれデータから算出した潜像担持体ドラムの回転周期に基づいて前記発光素子の発光タイミングを制御する請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記潜像担持体ドラムの回転周期の3倍以上で5倍以下の期間で前記像を形成する請求項5または6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
回転軸で回転する潜像担持体ドラムに潜像を形成する第1の工程と、
液体キャリアおよびトナーを含む液体現像剤を前記潜像担持体ドラムに供給して前記潜像を現像する第2の工程と、
前記第2の工程で前記潜像担持体ドラムに現像された像から前記液体キャリアを、回転するスクイーズローラーにより取る第3の工程と、
を備え、
前記潜像担持体ドラムの回転周期が、前記スクイーズローラーの回転周期の整数倍であることを特徴とする画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2010−185983(P2010−185983A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−29023(P2009−29023)
【出願日】平成21年2月10日(2009.2.10)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】