説明

画像形成装置、画像形成方法

【課題】滲み防止液を用いることなく滲みを抑制し、また被記録材のカールやコックリングを考慮した、ヘッドにより記録液を中間転写体に付与して画像形成を行うインクジェット方式の画像形成装置、これを用いた画像形成方法の提供。
【解決手段】ヘッド61Y、61M、61C、61BK(以下、「ヘッド61Y等」)から吐出された直後の導電性記録液がヘッド61Y等と中間転写体37との間をブリッジした状態でこの状態の導電性記録液が電気分解するように中間転写体37とヘッド61Y等との間に電圧を印加する電圧印加手段33と、A1方向において中間転写体37がヘッド61Y等に対向する領域の下流側且つ中間転写体37が転写手段64に対向する領域の上流側で、中間転写体37から、導電性記録液における、中間転写体37上に形成された画像の余剰液を除去するための余剰液除去手段32とを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドによりインク等の記録液を中間転写体に付与して画像形成を行うインクジェット方式の画像形成装置、これを用いた画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ピエゾ方式に代表される可動アクチュエータ方式、サーマル方式に代表される加熱膜沸騰方式等により、複数の微小ノズルからインク等の記録液を液滴化して吐出するヘッドを備え、インクジェット記録を行うインクジェットプリンタ等のインクジェット方式の画像形成装置が知られている(たとえば、〔特許文献1〕〜〔特許文献4〕参照)。
【0003】
インクジェット方式において、ヘッドから記録紙等の被記録材に記録液を直接吐出する構成では、ヘッドと被記録材とが近接するため、被記録材に付着している紙粉、埃等がノズルに付着しやすい。紙粉等がノズルに付着すると、ノズルから吐出される液滴の飛翔方向が乱れたり、ノズルが閉塞したりして、画像品質や信頼性が低下する。このような問題を回避するための方策としては、ノズルからの吐出安定性を優先し、粘度が小さい、多量の水分を含んだ記録液を使用するのが一般的であるが、このような記録液は、記録液が被記録材に着弾する際に滲みが発生しやすいという問題を生ずる。
【0004】
そこで、かかる滲み対策として、滲み防止用の特殊処理を施された専用の被記録材を用いる技術、インク吐出位置直前で被記録材に滲み防止液を塗布する技術等が提案されているが、これらの技術には、共通して、サプライによる高コスト化の問題があるとともに、前者の技術には、通常の被記録材における滲みに対応できないという問題があり、後者の技術には、装置の複雑化、大型化という問題がある。
【0005】
一方、被記録材に付着している紙粉、埃等がノズルに付着することを抑制する技術として、ヘッドから吐出された記録液を担持する中間転写体を備え、中間転写体に画像を形成した後、被記録材に転写する画像形成装置が提案されており(たとえば、〔特許文献1〕〜〔特許文献4〕参照)、このような画像形成装置において、かかる滲み対策として、中間転写体に滲み防止液を塗布する技術が提案されているが(たとえば、〔特許文献1〕〜〔特許文献4〕参照)、この技術にも、上述の後者の技術と同様にサプライによる高コスト化、装置の複雑化、大型化という問題がある他、滲み防止液の反応に時間を要するため高速化が難しいという問題や、滲み防止液による中間転写体の腐食という問題がある。また、ベタ画像形成時にも十分に滲みを防止したり滲み防止液の反応を促進したりするために滲み防止液の供給量を増加させると、これらの問題のうちサプライによる高コスト化の問題及び中間転写体の腐食の問題が顕著になるという問題がある。
【0006】
さらに、滲み防止液を用いる技術には、被記録材に滲み防止液が付着することで被記録材がカールやコックリングなどを起こして画像のドット位置精度が低下したり、カールした被記録材のハンドリングが難しく、両面に画像形成することが難しくなったりするという問題がある。なお、滲み防止液を中間転写体に塗布する画像形成装置において、記録液と滲み防止液との反応後に、不要な液体成分を除去する技術が知られている(たとえば、〔特許文献4〕参照)が、上述のように滲み防止液の供給量を増加させると、かかる不要な成分を除去する能力が不足し、被記録材がカールやコックリングなどを起こして画像のドット位置精度が低下したり、カールした被記録材のハンドリングが難しく、両面に画像形成することが難しくなったりするという問題の解決が不十分になりやすく、かといってかかる能力を確保しようとすると装置の複雑化、大型化を招いてしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上のように、滲み防止液を用いると、高コスト化、装置の複雑化、大型化、画像形成速度の抑制、中間転写体の腐食という問題があり、また、被記録材がカールやコックリングなどを起こして画像のドット位置精度が低下したり、カールした被記録材のハンドリングが難しく、両面に画像形成することが難しくなったりするという問題がある。そして、被記録材のカールやコックリングは、滲み防止液を用いない構成においても高度に抑制する必要がある。
【0008】
本発明は、滲み防止液を用いることなく滲みを抑制し、また被記録材のカールやコックリングを考慮した、ヘッドにより記録液を中間転写体に付与して画像形成を行うインクジェット方式の画像形成装置、これを用いた画像形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、導電性記録液を吐出するノズルを備えたヘッドと、このヘッドにより吐出された導電性記録液を付与される、少なくとも表面が導電性の中間転写体と、前記ヘッドから吐出された直後の導電性記録液が同ヘッドと前記中間転写体との間を一時的にブリッジした状態でこの状態の導電性記録液が電気分解するように前記中間転写体と前記ヘッドとの間に電圧を印加する電圧印加手段と、導電性記録液によって前記中間転写体上に担持された画像を被記録材に転写する転写手段と、前記中間転写体の移動方向において同中間転写体が導電性記録液を付与される領域の下流側且つ同中間転写体が前記転写手段に対向する領域の上流側で、同中間転写体から、導電性記録液における、同中間転写体上に形成された画像の余剰液成分を除去するための余剰液除去手段とを有する画像形成装置にある。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の画像形成装置において、前記中間転写体は、表面が金属であることを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の画像形成装置において、前記転写手段は、前記中間転写体上に形成された画像を転写され一旦担持する、表面が弾性体の転写画像担持体を有することを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項1ないし3の何れか1つに記載の画像形成装置において、導電性記録液は、インク成分がアニオン性基を有し、前記中間転写体は、前記電圧印加手段によって電圧を印加されたときにアノードとして機能することを特徴とする。
【0013】
請求項5記載の発明は、請求項1ないし4の何れか1つに記載の画像形成装置を用いて画像形成を行う画像形成方法にある。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、導電性記録液を吐出するノズルを備えたヘッドと、このヘッドにより吐出された導電性記録液を付与される、少なくとも表面が導電性の中間転写体と、前記ヘッドから吐出された直後の導電性記録液が同ヘッドと前記中間転写体との間を一時的にブリッジした状態でこの状態の導電性記録液が電気分解するように前記中間転写体と前記ヘッドとの間に電圧を印加する電圧印加手段と、導電性記録液によって前記中間転写体上に担持された画像を被記録材に転写する転写手段と、前記中間転写体の移動方向において同中間転写体が導電性記録液を付与される領域の下流側且つ同中間転写体が前記転写手段に対向する領域の上流側で、同中間転写体から、導電性記録液における、同中間転写体上に形成された画像の余剰液成分を除去するための余剰液除去手段とを有する画像形成装置にあるので、ヘッドから吐出される記録液のほかに記録液を凝集させる剤を使用しなくても記録液の電気分解により記録液を凝集させることができ、滲みを抑制ないし防止できるとともに、かかる剤を使用しないと余剰液性分量が抑制され、かかる凝集を効率よく速やかに生じさせることができるとともに余剰液成分の除去効率が向上して簡易な余剰液除去手段を用いても余剰液を十分に除去することが可能になるため装置の大型化を抑制可能となるうえに中間転写体の腐食抑制も向上可能となり、余剰液除去手段によって被記録材に付着する余剰液成分量を抑制して被記録材のカールやコックリングを抑制ないし防止できるとともに高精細の画像形成が可能になり、高速で高画質の画像形成を行うことが可能な画像形成装置を提供することができる。
【0015】
前記中間転写体は、表面が金属であることとすれば、ヘッドから吐出される記録液のほかに記録液を凝集させる剤を使用しなくても記録液の電気分解とともに中間転写体のイオン化により記録液をより効率よく凝集させることができ、滲みを抑制ないし防止できるとともに、かかる剤を使用しないと余剰液性分量が抑制され、かかる凝集を効率よく速やかに生じさせることができるとともに余剰液成分の除去効率が向上して簡易な余剰液除去手段を用いても余剰液を十分に除去することが可能になるため装置の大型化を抑制可能となるうえに中間転写体の腐食抑制も向上可能となり、余剰液除去手段によって被記録材に付着する余剰液成分量を抑制して被記録材のカールやコックリングを抑制ないし防止できるとともに高精細の画像形成が可能になり、高速で高画質の画像形成を行うことが可能な画像形成装置を提供することができる。
【0016】
前記転写手段は、前記中間転写体上に形成された画像を転写され一旦担持する、表面が弾性体の転写画像担持体を有することとすれば、ヘッドから吐出される記録液のほかに記録液を凝集させる剤を使用しなくても記録液の電気分解とともに中間転写体のイオン化により記録液をより効率よく凝集させることができ、滲みを抑制ないし防止できるとともに、かかる剤を使用しないと余剰液性分量が抑制され、かかる凝集を効率よく速やかに生じさせることができるとともに余剰液成分の除去効率が向上して簡易な余剰液除去手段を用いても余剰液を十分に除去することが可能になるため装置の大型化を抑制可能となるうえに中間転写体の腐食抑制も向上可能となり、余剰液除去手段によって被記録材に付着する余剰液成分量を抑制して被記録材のカールやコックリングを抑制ないし防止できるとともに高精細の画像形成が可能になり、また中間転写体に担持された画像の転写性を転写画像担持体によって向上することができるから、高速で高画質の画像形成を行うことが可能な画像形成装置を提供することができる。
【0017】
導電性記録液は、インク成分がアニオン性基を有し、前記中間転写体は、前記電圧印加手段によって電圧を印加されたときにアノードとして機能することとすれば、ヘッドから吐出される記録液のほかに記録液を凝集させる剤を使用しなくても、汎用性の高い記録液の電気分解により記録液を凝集させることができ、滲みを抑制ないし防止できるとともに、かかる剤を使用しないと余剰液性分量が抑制され、かかる凝集を効率よく速やかに生じさせることができるとともに余剰液成分の除去効率が向上して簡易な余剰液除去手段を用いても余剰液を十分に除去することが可能になるため装置の大型化を抑制可能となるうえに中間転写体の腐食抑制も向上可能となり、余剰液除去手段によって被記録材に付着する余剰液成分量を抑制して被記録材のカールやコックリングを抑制ないし防止できるとともに高精細の画像形成が可能になり、高速で高画質の画像形成を行うことが可能な画像形成装置を提供することができる。
【0018】
本発明は、かかる画像形成装置を用いて画像形成を行う画像形成方法にあるので、ヘッドから吐出される記録液のほかに記録液を凝集させる剤を使用しなくても記録液の電気分解により記録液を凝集させることができ、滲みを抑制ないし防止できるとともに、かかる剤を使用しないと余剰液性分量が抑制され、かかる凝集を効率よく速やかに生じさせることができるとともに余剰液成分の除去効率が向上して簡易な余剰液除去手段を用いても余剰液を十分に除去することが可能になるため装置の大型化を抑制可能となるうえに中間転写体の腐食抑制も向上可能となり、余剰液除去手段によって被記録材に付着する余剰液成分量を抑制して被記録材のカールやコックリングを抑制ないし防止できるとともに高精細の画像形成が可能になり、高速で高画質の画像形成を行うことが可能な画像形成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明を適用した画像形成装置の概略正面図である。
【図2】図1に示した画像形成装置においてヘッドから中間転写体に導電性記録液が付与される様子を示す概略図である。
【図3】図1に示した画像形成装置においてヘッドから吐出された導電性記録液中の顔料がプロトンを介して凝集した状態を示す概念図である。
【図4】図1に示した画像形成装置においてカソードとアノードとの間に形成される導電性記録液による液柱の状態を示す概念図である。
【図5】本発明適用の効果を確かめるための実験において中間転写体表面に形成した画像を示した概略斜視図である。
【図6】中間転写体表面が金属の画像形成装置においてヘッドから吐出された導電性記録液中の顔料がプロトン及び金属カチオンを介して凝集した状態を示す概念図である。
【図7】中間転写体表面が金属の画像形成装置において表面が弾性体の転写画像担持体を有する画像形成装置の構成例を示す概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1に本発明を適用した画像形成装置の概略を示す。画像形成装置100は、インクジェットプリンタとしてのプリンタであってフルカラーの画像形成を行うことができるようになっている。画像形成装置100は、外部から受信した画像情報に対応する画像信号に基づき画像形成処理を行なう。
【0021】
画像形成装置100は、一般にコピー等に用いられる普通紙の他、OHPシートや、カード、ハガキ等の厚紙や、封筒等の何れをもシート状の記録媒体としてこれに画像形成を行なうことが可能である。画像形成装置100は、記録媒体である被記録材たる用紙としての記録体である転写紙Sの片面に画像形成可能な片面画像形成装置であるが、転写紙Sの両面に画像形成可能な両面画像形成装置であってもよい。
【0022】
画像形成装置100は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色に色分解された色にそれぞれ対応する像としての画像を形成可能な、当該色のインクとしての導電性記録液である記録液を吐出する記録液吐出体としてのインクヘッドである記録ヘッドとしてのヘッド61Y、61M、61C、61BKを有している。
【0023】
ヘッド61Y、61M、61C、61BKは、画像形成装置100の本体99の略中央部に配設された中間転写ドラムである中間転写体37の外周面に対向する位置に配設されている。ヘッド61Y、61M、61C、61BKは、中間転写体37の移動方向であって図1において時計回り方向であるA1方向の上流側からこの順で並んでいる。同図において各符号の数字の後に付されたY、M、C、BKは、イエロー、マゼンタ、シアン、黒用の部材であることを示している。
【0024】
ヘッド61Y、61M、61C、61BKはそれぞれ、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(BK)の画像を形成するための記録液吐出装置であるインク吐出装置60Y、60M、60C、60BKに備えられている。なお、各ヘッド61Y、61M、61C、61BKは、図1の紙面に垂直な方向に複数が並設された態様で、インク吐出装置60Y、60M、60C、60BKに備えられている。
【0025】
中間転写体37は、A1方向に回転している状態で、各ヘッド61Y、61M、61C、61BKに対向する領域で、各ヘッド61Y、61M、61C、61BKからイエロー、マゼンタ、シアン、黒の記録液が順次重ね合わされる態様で吐出されて付与され、その表面上に画像が形成されるようになっている。このように、画像形成装置100は、ヘッド61Y、61M、61C、61BKを中間転写体37に対向させA1方向に並設したタンデム構造となっている。
【0026】
ヘッド61Y、61M、61C、61BKによる中間転写体37に対する記録液の吐出すなわち付与は、イエロー、マゼンタ、シアン、黒の各色の画像領域が中間転写体37上の同じ位置に重なるよう、A1方向上流側から下流側に向けてタイミングをずらして行われる。
【0027】
図1に示すように、画像形成装置100は、ヘッド61Y、61M、61C、61BKをそれぞれ備えたインク吐出装置60Y、60M、60C、60BKと、中間転写体37を備え中間転写体37のA1方向への回転に伴って転写紙Sを搬送する用紙搬送ユニットとしての搬送ユニット10と、転写紙Sを多数枚積載可能であり積載した転写紙Sのうち最上位の転写紙Sのみを搬送ユニット10に向けて給送する給紙ユニット20と、搬送ユニット10によって搬送されてきた画像形成済み言い換えるとプリント済みの転写紙Sを多数積載可能な排紙台25とを有している。
【0028】
画像形成装置100はまた、中間転写体37に対向して配置され、中間転写体37から、記録液における、中間転写体37上に形成された画像の余剰液成分を除去するための余剰液除去手段32と、図2(b)に示すようにヘッド61Y、61M、61C、61BKから吐出された直後の記録液による液柱がヘッド61Y、61M、61C、61BKと中間転写体37との間を一時的にブリッジした状態で、中間転写体37とヘッド61Y、61M、61C、61BKとの間に電位差が形成されるように、かかる液柱の状態の記録液の内部に電極酸化反応もしくは電極還元反応に起因する電流成分を含んだ通電を行いかかる状態の記録液に後述のように含まれている色剤の凝集を促進する電圧印加手段としての通電手段33を有している。
【0029】
画像形成装置100はまた、図1に示すように、記録液等が転写紙Sに転写された後の中間転写体37から、中間転写体37上に残留している記録液等を除去してクリーニングするためのクリーニング手段としての清掃手段34と、ヘッド61Y、61M、61C、61BKを一体に支持したヘッド支持体としてのキャリッジ50と、画像形成装置100の動作全般を制御するCPU、メモリ等を含む制御手段としての図示しない制御部とを有している。
【0030】
搬送ユニット10は、中間転写体37の他に、中間転写体37に対向して配置され中間転写体37との間の領域である転写部31を転写紙Sが通過するときに中間転写体37上に担持された記録液による画像をその転写紙Sに転写する転写手段64と、給紙ユニット20から給送されてきた転写紙Sを転写部31に案内するとともに、転写部31を通過した転写紙Sを排紙台25に案内するガイド板39と、中間転写体37をA1方向に回転駆動する図示しない駆動手段としてのモータ等とを有している。このように、画像形成装置100は、転写紙Sへの画像形成を中間転写体37を用いて間接的に行う間接方式の画像形成装置となっている。
【0031】
転写手段64は、中間転写体37に従動回転する転写ローラ38を備えている。なお、転写ローラ38は転写紙Sに転写される画像を転写紙Sに定着させるためのヒータを内蔵していても良い。また、搬送ユニット10は、転写ローラ38によって中間転写体37から転写紙Sに転写された画像を転写紙Sに定着させるための定着手段としての定着ローラを備えていてもよい。
【0032】
余剰液除去手段32は、A1方向において中間転写体37がヘッド61Y、61M、61C、61BKに対向し記録液を付与される領域の下流側且つ中間転写体37が転写ローラ38に対向した領域である転写部31の上流側の位置において、中間転写体37に対向している。
【0033】
余剰液除去手段32は、かかる位置において中間転写体37に当接し中間転写体37に従動回転する液除去部材としての液除去ローラ32aと、液除去ローラ32aに対していわゆるカウンター当接の態様で当接した、ステンレス製の除去液清掃部材としてのブレード32bとを有している。
【0034】
液除去ローラ32aは、記録液における、中間転写体37上に形成された画像の余剰液成分、具体的には、記録液のうち、後述のように中間転写体37上に凝集して画像を形成した成分を除く液体成分を中間転写体37から除去するための部材である。そのため、液除去ローラ32aの材質は、かかる液体成分の濡れ性が良いもの及び/又はかかる液体成分を毛細管現象によって吸収しやすいものがよい。液体の濡れ性が良い部材としては、アルミニウム、ステンレスなどの金属、テフロン(登録商標)など腐食に強い材質等の表面に親水化処理を行った部材が挙げられ、液体を毛細管現象によって吸収しやすい素材としては、繊維状、多孔状の構造を備えているもの等が挙げられ、このようなものとしては、綿、セルロース、アクリル、ナイロン、ポリエステル、アラミド、ポリウレタン及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0035】
液除去ローラ32aが余剰液成分を中間転写体37から除去する度合いとしては、中間転写体37上に担持された画像を転写手段64によって転写紙Sに転写するときに画像とともに転写紙Sに転写される余剰液成分が転写紙Sのカールやコックリングを防止ないし高度に抑制する程度であればよく、中間転写体37上の余剰液成分をすべて除去しなければならないというものではない。
【0036】
ブレード32bは、液除去ローラ32aの、中間転写体37からの余剰液成分の除去性能を、上述した程度に維持するために設けられた部材であり、液除去ローラ32a上の、中間転写体37から回収された余剰液成分を、液除去ローラ32aの回転に伴って液除去ローラ32aに摺接することで液除去ローラ32aから除去し、液除去ローラ32aをクリーニングする。除去液清掃部材は、ブレード32bのように、液除去ローラ32aへの摺接によって余剰液成分を液除去ローラ32aから回収するものに限らず、吸引によって液除去ローラ32a上の余剰液成分を回収するものであっても良いし、液除去ローラ32aへの送風によって液除去ローラ32a上の余剰液成分を除去及び/又は液除去ローラ32aを乾燥するものであっても良いし、液除去ローラ32aを加熱することによって液除去ローラ32aを乾燥するものであっても良いし、これらを組み合わせたものであっても良い。
【0037】
余剰液除去手段32は、液除去ローラ32aを中間転写体37との対向領域において中間転写体37と等速で回転駆動する駆動手段を備えていても良い。液除去部材は、中間転写体37の劣化が十分に抑制されるのであれば、液除去ローラ32aのようなローラ状でなく、無端ベルト状をなしていても良いし、ブレード状をなしていても良い。
【0038】
図2に示すように、中間転写体37は、導電性基体であるアルミニウム製の支持体37aと、支持体37a上に形成されたシリコーンゴム製の表面層37bとを有している。支持体37aの材質はアルミニウムに限られるものではなく、機械的強度があれば、たとえばアルミ合金、銅、ステンレス等の金属によって形成しても良い。表面層37bの材質はシリコーンゴムに限られるものではなく、記録液の剥離性が高いという利点のためには表面エネルギーが低く転写紙Sへの追随性が高い弾性材料であればよく、たとえばウレタンゴム、フッ素ゴム、ニトリルブタジエンゴムなどによって形成しても良い。
【0039】
表面層37bは、中間転写体37に導電性を付与するために、かかるゴム材料に導電剤としてのカーボン、白金、金などの金属微粒子を分散して混入させた導電性ゴムとされ、導電層となっている。ただし、導電性微粒子を増やすと導電性は向上するが、離型性が低下するトレードオフの関係であるので、適宜、調整が必要である。後述するように、ヘッド61Y、61M、61C、61BKと中間転写体37とが一時的にブリッジした記録液による液柱に所望の電位差を形成するには、導電性ゴムの体積抵抗率は10Ω・cm未満であることが好ましく、また、記録液の体積抵抗率よりも小さいことが望ましい。
【0040】
表面層37bの厚みは0.1〜1mm程度がよく、0.2〜0.6mmが好適である。ただし、表面層37bは必須の構成でなく、支持体37aのみを中間転写体37としても良い。また、中間転写体37は、ドラム状でなく、無端ベルト状、その他可能であればシート状であっても良い。
【0041】
図1に示すように、給紙ユニット20は、転写紙Sを多数枚積載可能な給紙トレイ21と、給紙トレイ21に積載された転写紙Sのうち最上位の転写紙Sのみを搬送ユニット10に向けて給送する給紙ローラ22と、給紙トレイ21及び給紙ローラ22を支持した筐体23と、給紙ローラ22を、ヘッド61Y、61M、61C、61BKにおける記録液の吐出タイミングに合わせるように回転駆動し転写紙Sを給送させる図示しない駆動手段としてのモータ等とを有している。
【0042】
キャリッジ50は、ヘッド61Y、61M、61C、61BKに劣化等が生じたときにこれらが新規のものに交換可能であるように、またメンテナンスを容易にするために、ヘッド61Y、61M、61C、61BKと一体で、本体99に対して着脱可能となっている。ヘッド61Y、61M、61C、61BKもそれぞれ、劣化等が生じたときに新規のものに交換可能であるように、またメンテナンスを容易にするために、独立して本体99に対して着脱可能となっている。これによって、交換作業、メンテナンス作業が容易化されている。
【0043】
インク吐出装置60Y、60M、60C、60BKは、用いる記録液の色が異なるものの、その余の点では互いに略同様の構成となっている。インク吐出装置60Y、60M、60C、60BKはそれぞれ、ヘッド61Y、61M、61C、61BKをそれぞれ複数、主走査方向に並設され、インク吐出装置60Y、60M、60C、60BK、画像形成装置100はヘッド固定式のフルライン型となっている。
【0044】
インク吐出装置60Y、60M、60C、60BKは、複数のヘッド61Y、61M、61C、61BKに供給される当該色の記録液を収容したメインタンクとしての記録液カートリッジであるインクカートリッジ81Y、81M、81C、81BKと、インクカートリッジ81Y、81M、81C、81BK内に収容された記録液を各ヘッド61Y、61M、61C、61BKに向けて圧送し給送するための供給ポンプとしての図示しないポンプと、ポンプによってインクカートリッジ81Y、81M、81C、81BK側から供給されてきた記録液を各ヘッド61Y、61M、61C、61BKに分配して供給する記録液供給部であるインク供給部としてのディストリビュータである図示しないディストリビュータタンクとを有している。
【0045】
インク吐出装置60Y、60M、60C、60BKはまた、ディストリビュータタンク内の記録液量の不足を検出するために同記録液量を検知する記録液量検知手段であるインク量検知手段としての図示しないインク量検知センサと、インクカートリッジ81Y、81M、81C、81BKとディストリビュータタンクとの間の記録液の給送路をポンプとともに形成している図示しないパイプと、ディストリビュータタンクと各ヘッド61Y、61M、61C、61BKとの間の記録液の給送路を形成している図示しないパイプとを有している。
【0046】
インクカートリッジ81Y、81M、81C、81BKは、内部の記録液が消費されて残り少なくなったときあるいはなくなったとき等に新規のものに交換可能であるように、またメンテナンスを容易にするために、本体99に対して着脱可能となっている。
【0047】
ポンプは、制御部によって作動を制御される。具体的には、インク量検知センサによってディストリビュータタンク内の記録液量の不足が検出されたことを条件として、この不足が検出されなくなるまで駆動され、インクカートリッジ81Y、81M、81C、81BK内の記録液をディストリビュータタンクに供給する。この点、制御部は記録液供給制御手段であるインク供給制御手段として機能する。制御部は、画像形成装置100において駆動される構成については、特に説明しない場合であっても、その駆動を制御するようになっている。
【0048】
記録液は、イエロー、マゼンタ、シアン、黒に対応した色剤と、この色剤の分散剤であるアニオン性分散剤と、溶媒とを少なくとも含んでいる。かかる色剤とかかる分散剤とにより、記録液のインク成分はアニオン性基を有している。溶媒は安全性の観点及び後述する電気分解を生じせしめるための導電性の観点から水を含んでおり、記録液は導電性インクであり水溶性インクである水溶性記録液となっている。なお、記録液は、保存安定性の観点から、アルカリ性であることが望ましい。
【0049】
記録液に用いられる色剤である顔料としては、特に限定されないが、オレンジ又はイエロー用の顔料として、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー151、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185等が挙げられる。
また、レッド又はマゼンタ用の顔料として、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222等が挙げられる。
また、グリーン又はシアン用の顔料として、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
また、ブラック用の顔料として、C.I.ピグメントブラック1、C.I.ピグメントブラック6、C.I.ピグメントブラック7等が挙げられる。
記録液中の顔料の含有量は、通常、0.1〜40質量%であり、1〜30質量%が好ましく、2〜20質量%がさらに好ましい。
【0050】
アニオン性分散剤としては、特に限定されないが、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0051】
記録液は、転写性の点から、カルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン酸基等が塩基を用いて中和されたアニオン性基を有する樹脂をさらに含むことが好ましい。
記録液は、水に可溶な溶媒をさらに含んでもよい。水に可溶な溶媒としては、特に限定されないが、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1、5−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、グリセリン等の多価アルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジグリセリンのエチレンオキサイド付加物等の多価アルコール誘導体;ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、トリエタノールアミン等の含窒素溶媒;エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール類;チオジエタノール、チオジグリセロール、スルフォラン、ジメチルスルホキシド等の含硫黄溶媒;炭酸プロピレン、炭酸エチレン等の炭酸アルキレンが挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0052】
図2に示すように、各ヘッド61Y、61M、61C、61BKは、同図において下方を向く記録液吐出側に配設された導電性のノズル板61aと、ノズル板61aに形成されたノズル61bと、ディストリビュータタンクから記録液を供給され記録液を充填されたインク室61cと、インク室61c内の記録液をノズル61bから吐出させる図示しないインク吐出手段とを有している。ノズル61b、インク室61c、インク吐出手段はこれらが1組となって、それぞれ各ヘッド61Y、61M、61C、61BKに多数備えられているが、同図においてはそのうちの1組のみを図示している。
【0053】
ノズル板61aは、全体が導電性であるが、これに限らず、インク室61c側の面のみを導電処理された部材であっても良いし、インク室61c側に配設された導電性部材と中間転写体37側に配設された絶縁性部材とによって構成しても良いし、後述する電気分解の際の気泡の発生を抑制するためにインク室61c側に配設された絶縁性部材と中間転写体37側に配設された導電性部材とによって構成しても良いし、同様の理由によりインク質61c側を絶縁処理しても良い。
【0054】
ノズル板61aの導電性の部分は、後述するようにカソードとして備えられるため、金属溶出に対して耐性を有する材質によって構成する必要はなく、金属、カーボンなど導電性の高い材料によって構成されればよい。
【0055】
ノズル板61aは、中間転写体37とのギャップが50〜200μmの間で設定される。かかるギャップが50μm未満であると、回転体である中間転写体37とノズル板61aとのギャップを維持することが困難になることがあり、またかかるギャップが200μmを超えると、後述する液注のブリッジが形成されにくくなることがあるためである。
【0056】
インク吐出手段は、ノズル61bから記録液を液滴化して吐出させ転写紙Sに着弾させるためのアクチュエータとして圧電素子を有し、圧電素子に印加される電圧パルスに応じてノズル61bから記録液を吐出するようになっている。インク吐出手段のアクチュエータはピエゾ方式等の、形状変形素子方式である他の方式の可動アクチュエータであってもよいし、サーマル方式等の加熱ヒータ方式によってノズル61bから記録液を吐出させるものであっても良い。
【0057】
図2に示すように、通電手段33は、電源33aと、電源33aを支持体37aとノズル板61aとに接続した特に図示しない電気回路と、制御部の機能の一部として実現され電源33aによる電圧の印加タイミング、印加時間を制御する電圧印加制御手段とを有している。電圧印加制御手段としての制御部は、電源33aの電圧を変更する電圧変更手段としても機能する。
【0058】
電源33aは、電気回路により、陽極を支持体37aに接続され、陰極をノズル板61aに接続されている。よって、通電手段33は、中間転写体37をアノードとして備え、ノズル板61aをカソードとして備えている。
【0059】
図1に示すように、清掃手段34は、中間転写体37に対していわゆるカウンター当接の態様で当接した、弾性体としてのゴムによって形成された清掃部材としてのクリーニングブレードによって構成されている。清掃手段34はクリーニングブレードとともに、清掃部材としてのクリーニングローラを備えていてもよい。
【0060】
このような構成の画像形成装置100においては、画像形成開始の旨の所定の信号の入力により、中間転写体37が各ヘッド61Y、61M、61C、61BKに対向しながらA1方向に回転し、この過程で、イエロー、マゼンタ、シアン、黒の各色の画像領域が中間転写体37の同じ位置に重なるよう、各ヘッド61Y、61M、61C、61BKから、イエロー、マゼンタ、シアン、黒の記録液が、A1方向上流側から下流側に向けてタイミングをずらして順次重ね合わされる態様で吐出され、中間転写体37上に一時的に画像が担持される。
【0061】
このとき、電圧印加制御手段としての制御部により、通電手段33が駆動され、電源33aから支持体37aとノズル板61aとの間に電圧が印加されている。
この状態で、記録液が、各ヘッド61Y、61M、61C、61BKから中間転写体37上に付与されるが、そのときには、まず、ヘッド61Y、61M、61C、61BKから、図2(a)に示すように、ノズル61bにおいてメニスカスを形成している記録液が、図2(b)に示すように、中間転写体37に向けて移動し、ノズル61cと中間転写体37との間に、記録液からなる液柱のブリッジが一時的に形成され、次いで、図2(c)に示すように、記録液からなる液柱のブリッジが分断されることによって中間転写体37に担持され、中間転写体37上に記録液による画像が形成される。
【0062】
そして、図2(b)に示した、記録液からなる液注のブリッジが形成された状態では、通電手段33により、記録液中の色剤成分が凝集作用を受ける。具体的には、通電手段33の電圧印加により、カソードであるノズル板61aとアノードである中間転写体37とにはそれぞれ次の電極反応が生じ、記録液の液柱のブリッジに含まれる水が電気分解される。
カソード:4HO+4e→2H+4OH・・・反応式(1)
アノード:2HO→4H+O+4e・・・反応式(2)
【0063】
これにより、アノードとして機能する中間転写体37の表面で、記録液の液柱のブリッジに含まれる水が酸化してプロトン(H+)が生成するため、図3に示すように、アニオン性分散剤Dにより分散されている顔料Pが、プロトンを介して凝集する。これにより、隣接するドット間の滲みの発生が抑制され、高精細な画像が形成される。また、かかる電圧印加によりノズル61bの目詰まりが予防されるという利点もある。なお、かかるブリッジを形成する時間は、圧電素子に印加される電磁パルスのピーク電圧とパルス幅等により制御可能である。
【0064】
ここで、図4を用いて、カソード及びアノードの間に形成される液柱のブリッジについて説明する。液柱のブリッジBの内部では、カチオン及びアニオンは、それぞれカソードC及びアノードAの近傍に移動する。その結果、カソードC及びアノードAの表面に、それぞれ電気二重層E及びEが形成されるが、電気二重層E及びEの充電速度は、液柱のブリッジBの導電率、記録液に含まれるイオンの濃度でほぼ決定される。このとき、電気二重層Eの電圧が数Vに達すると、水が電気分解してファラデー電流が流れる。その結果、アノードAの表面では、水が酸化してプロトンが生成し、アニオン性分散剤により分散されている顔料が凝集する。すなわち、かかるブリッジが形成された瞬間に、ブリッジに、顔料の凝集作用をもたらすイオンが効率よく生成することで、記録液の中間転写体37への着液と同時に顔料の凝集が行われる。その結果、隣接する記録液ドット間における顔料の滲みが発生せず、非常に高精細な溶質画像が形成される。
【0065】
一方、電気二重層Eの容量EECは、電気二重層Eの容量EACよりも十分に大きいため、カソードCの表面では、水が還元しにくい。これは、カソードCとしてのノズル板61aの面積が、アノードAとしての、液柱が接触する部分の中間転写体37の面積よりも十分に大きいためである。
【0066】
顔料の凝集の度合いは、プロトンの生成量、即ち、液柱のブリッジを形成する時間、通電手段33による印加電圧等により制御することが可能である。また、水が酸化してプロトンが生成する際に、酸素も発生するが、微量であることに加え、水に溶解すると考えられるため、画像形成を阻害しない。
【0067】
液柱のブリッジBが形成されてから分断されるまでの時間は、通常、数マイクロ秒〜数十マイクロ秒であり、記録液の導電率は、通常、数十mS/m〜数百mS/mである。このため、中間転写体37に記録液による画像を形成するためには、通電手段33による印加電圧は、水の理論分解電圧である1.23Vや一般的な水の電気分解の条件である数V〜十数Vでは不十分であり、数十V〜数百Vであることが好ましい。
【0068】
ヘッド61Y、61M、61C、61BKから中間転写体37上に付与された記録液に含まれる顔料の凝集による凝集成分の生成及びこれに伴う余剰液成分の生成は、中間転写体37のA1方向への回転に伴って記録液が余剰液除去手段32に対向する位置に到達するまでに完了しており、この位置に到達した余剰液成分は余剰液除去手段32によって中間転写体37から除去される。これによって、A1方向への更なる回転により転写部31に到達した中間転写体37上には凝集成分からなる画像及び少量の余剰液成分のみが担持されている。
【0069】
中間転写体37上に担持された画像の先端が転写部31に到達するタイミングに合わせて、給紙ユニット20から給送された一枚の転写紙Sが転写部31に供給され、転写ローラ38が連れ回りしながら、転写部31を通過する転写紙Sに、中間転写体37上に担持されている画像が転写され、転写紙Sの表面に画像が形成される。画像が形成された転写紙Sは、排紙台25に案内され排紙台25上に積載される。
【0070】
このようにして画像が転写紙Sに転写されるときには、凝集成分及び少量の余剰液成分が転写紙Sに転写される。転写紙Sに転写する余剰液成分量はカールやコックリングが防止ないし高度に抑制される程度の最小限に減じられ余剰液成分の転写紙Sへの吸収量が最小限に減じられていることから、転写紙Sのジャム等の不具合が防止ないし抑制され、転写紙Sの搬送性が良好であり、排紙台25への転写紙Sの排出、排紙台25上における転写紙Sの積載が良好に行われ、またその他の、画像形成後の転写紙Sの取り扱いが容易化する。この利点は、かかる凝集作用により生じた凝集成分によって余剰液成分の転写紙Sへの吸収性が低減されていることによっても得られる。
【0071】
高速の画像形成を行うには、記録液を速乾性とすることを要するため、記録液は転写紙Sへの吸収性が一般に高く、この場合には記録液が転写紙Sの奥深くまで浸透し、いわゆる裏移りを生じ、両面画像形成に不向きとなり得るが、余剰液除去手段32によって余剰液成分が最小限に減じられているとともに凝集作用により凝集成分が生成されることで、余剰液成分の転写紙Sへの吸収量、吸収性が最小限に低減されているため、速乾性を担保しつつ、凝集成分が転写紙Sの奥深くまで到達することが防止ないし抑制されていることから、かかる裏移りが防止ないし抑制され、両面画像形成にも適している。
【0072】
また、上述の凝集作用により凝集した色剤によって画像が形成されることにより、転写紙Sが普通紙である場合であっても、フェザリングやブリーディングを防止ないし抑制しつつ、高速で高画像濃度、高画質の画像形成が可能である。
【0073】
転写部31における転写により、転写部31を通過した中間転写体37上には、記録液に起因する成分はほとんど残っていないが、中間転写体37は清掃手段34によるクリーニングを受けることで、記録液のオフセットが高度に防止ないし抑制され、繰り返し画像形成を行っても、オフセットによる地肌汚れが防止ないし抑制され、画像劣化、中間転写体37の劣化が抑制ないし防止されて、経時的に良好な画像形成を行うことが可能である。
【0074】
なお、かかる電気分解を用いたインクの凝集効果と同様のインクの凝集効果を得るために、後述するように、記録液と異なる滲み防止液である第2の液として中間転写体等に酸を付与するシステムがある。しかし、このようなシステムは、インク量の少ないドット画像には有効であるものの、記録液と第2の液とが混ざり拡散する時間を要するため、ベタ画像のようにインクが大量の場合、凝集効果を得るのに時間がかかり、滲みが生じる。また、このようなシステムを用いた画像形成装置では、ベタ画像でも効果的な凝集効果を得るために第2の液の量を増やすなど、インク画像の液分が増加する傾向にあるため、後述するように、画像形成装置100のように余剰液除去手段32によって余剰液成分を除去しようとしても、十分な除去ができないという問題がある。
【0075】
以上の条件を考慮した次の実験により画像形成が良好に行われるか否かを確かめたところ、表1に示すようになった。
実験の条件は次のとおりである。
【0076】
実験に用いた画像形成装置は、次の条件を満たす、画像形成装置100と同様の構成の、インクジェットプリンタGX5000(リコー社製)を用いた画像形成装置である。
ただし、実験にあたっては、ヘッド61Y、61Mのみを使用して画像形成を行った。また、同表における実施例では通電手段33による印加電圧を120Vとして顔料の凝集を行ったが、同表における比較例では、顔料の凝集を行うのには、通電手段33による電圧印加を行わず、上述の第2の液に相当する酸性溶液である凝集液を用いた。
【0077】
中間転写体37は、支持体37aとしてのアルミニウム素管の外周に、表面層37bとして、体積抵抗率が5Ω・cm、厚さが0.2mmの、カーボンが分散されているシリコーンゴム層を有しており、外周の線速が100mm/秒でA1方向に回転駆動される。
【0078】
液除去ローラ32aは、ヘッド61Mが中間転写体37に記録液を吐出する位置からA1方向において中間転写体37周面上の距離で80mm下流側で、中間転写体37に当接している。
【0079】
各ヘッド61Y、61M、61C、61BKと中間転写体37とのギャップは100μmとした。
清掃手段34としては、フッ素ゴムからなるブレードを用いた。
転写ローラ38は、金属製の芯金に厚さが5mmのゴム層を形成したものである。
【0080】
使用した各色の記録液すなわち導電性インクは以下のようにして調製した。
【0081】
[イエローの導電性インクの調製]
固形分が10質量%のスルホン酸基結合型イエロー顔料分散液CAB−O−JET−270Y(キャボット・スペシャルティ・ケミカルズ・インク社製)40.0質量%、トリエチレングリコール15.0質量%、グリセリン25.0質量%、プロピレングリコールモノブチルエーテル6.0質量%、デヒドロ酢酸ソーダ0.1質量%及び蒸留水(残余)からなる混合液を得た。次に、水酸化リチウムの5質量%水溶液を用いて、混合液のpHを9.1に調整した後、平均孔径が0.8μmのメンブレンフィルターを用いて加圧濾過し、イエローの導電性インクを得た。
【0082】
[マゼンタの導電性インク]
固形分が10質量%のスルホン酸基結合型マゼンタ顔料分散液CAB−O−JET−260M(キャボット・スペシャルティ・ケミカルズ・インク社製)40.0質量%、ジエチレングリコール20.0質量%、プロピレングリコールモノブチルエーテル3.0質量%、デヒドロ酢酸ソーダ0.1質量%及び蒸留水(残余)からなる混合液を得た。次に、水酸化リチウムの5質量%水溶液を用いて、混合液のpHを9.1に調整した後、平均孔径が0.8μmのメンブレンフィルターを用いて加圧濾過し、マゼンタの導電性インクを得た。
【0083】
評価に用いた画像は、図5に示すように、中間転写体37上に次のようにして形成した画像PA、PBである。
画像PAは、ヘッド61Yにより、中間転写ドラム37に、ドット径が50μmの孤立ドットからなるイエローの網点パターンを100mm角で形成してから、ヘッド61Mにより、中間転写ドラム37に形成されたイエローの網点パターンから35μmシフトさせて、ドット径が50μmの孤立ドットからなるマゼンタの網点パターンを100mm角で形成した網点画像である。
画像PBは、中間転写ドラム37上の、画像PAを形成したのとは別の領域に、イエローとマゼンタインクの混合ベタ画像を100mm角で形成したベタ画像である。
【0084】
評価にあたっては、余剰液除去手段32を経た中間転写体37上の画像PA、PBを、転写紙Sに転写した。評価は、同表における「カール、しわ」の項目については転写紙S上の画像PA、PBの形成領域の目視により行い、同表における「液除去ローラへの画像転移」の項目については液除去ローラ32a表面への画像の転移の有無の確認を目視により行い、同表における「転写紙上の画像」の項目については転写紙S上の画像PA、PBの状態の確認を目視により行った。
【0085】
比較例における凝集液は、〔特許文献4〕の記載を参考にして、
・2−ピロリドン−5−カルボン酸(東京化成製) 10質量部
・水酸化リチウム一水和物(和光純薬製) 2質量部
・グリセリン(和光純薬製) 13質量部
・ジエチレングリコール(和光純薬製) 10質量部
・オルフィンE1010(日信化学製) 1.5質量部
・イオン交換水 73.5質量部
を成分とし、これを中間転写体37上に5μmの厚みとなるよう、バーコーターで塗布した。
比較例において、中間転写体37への記録液の付与は、中間転写体37上に凝集液を塗布した状態で行った。その余の点では、実施例と同条件である。
【0086】
【表1】

【0087】
実施例では、網点画像である画像PA、ベタ画像である画像PBの何れにおいても、転写紙Sのカール、しわがないことが確認された。このことにより余剰液成分の除去効果的に行われたことが確かめられた。また、液除去ローラ32aへの画像PA、PBの転移がないとともに、転写紙S上の全ての画像PA、PBにおいて滲みもなく高精度の画質が得られることも確認された。このことにより色剤の凝集が効果的に行われたことが確かめられた。
【0088】
これに対し、比較例では、網点画像である画像PAにおいて僅かに転写紙Sのカール、しわが確認されるとともに、ベタ画像である画像PBにおいて転写紙Sのカール、しわが確認された。これらのことにより、比較例では凝集液の塗布により余剰液成分量が多いため、液除去ローラ32aによる余剰液成分の液除去が十分でないことが分かった。また、液除去ローラ32aへの画像PA、PBの転移がみられるとともに、転写紙S上の画像PAと画像PBとにかすれ、乱れがみられた。これにより、色剤の凝集が十分でないことが分かった。
【0089】
実施例、比較例それぞれの実験結果の比較により、通電手段33による印加電圧によって記録液中にプロトンを生成させるシステムは、凝集液を必要とするシステムと比較して、凝集液を付与したことによる余剰液成分の増加がないため、連続印字を行うインクジェットシステムにおいて、余剰液成分の除去が、小型で簡易なローラ状の液除去部材である液除去ローラ32aで十分効果が得られることが確認された。さらに画像PBのようにインク量が多いベタ画像においても記録液と凝集液との拡散、混合のための時間を要しないことから、凝集スピードが速く、効率的に滲みが抑えられることが分かった。
【0090】
ここで、すでに述べたように、中間転写体37が表面層37bを備えておらず支持体37aからなる構成においては、支持体37aがアノードとして機能することとなる。この場合、支持体37aの表面で、水とともに、金属である支持体37aを酸化するようにすることが可能である。金属である支持体37aを酸化するようにすると、色剤を凝集するのに優れた金属カチオンが生成するため、図6に示すように、プロトン及び金属カチオン(Mn+)を介して、アニオン性分散剤Dにより分散されている顔料Pが凝集することとなり、凝集性が高くなる。
【0091】
このような構成においては、図7に示すように、転写手段64が、転写ローラ38のみならず、中間転写体37上に形成された画像を転写され一旦担持する、表面に弾性体層としてのゴム層63aを備えた転写画像担持体としての中間転写ドラム63を備えていることが望ましい。中間転写ドラム63は中間転写体37に連れ回りし、転写ローラ38は中間転写ドラム63に連れ回りする。中間転写ドラム63の表面が弾性体であることにより、金属製で表面硬度の高い中間転写体37からの画像の転写が良好に行われ、転写性が向上する。
【0092】
中間転写ドラム63は、ゴム層63aと、ゴム層63aに覆われた基体63bとを有している。基体63bを構成する材料としては、特に限定されないが、アルミニウム、アルミ合金、銅、ステンレス等の金属が挙げられる。ゴム層63aを構成する材料としては、特に限定されないが、シリコーンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム等が挙げられる。
【0093】
なお、この構成においては、余剰液除去手段32は、中間転写体37に代えて、あるいは中間転写体37とともに、中間転写ドラム63に対して配設しても良い。中間転写ドラム63に対して配設される余剰液除去手段32の位置は、中間転写ドラム63の回転方向において転写部31の下流側且つ中間転写ドラム63が転写ローラ38に対向した領域の上流側の位置において、中間転写体37に対向する。この構成における中間転写ドラム63は実質的に中間転写体として機能する。
【0094】
以上本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、上述の説明で特に限定していない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0095】
たとえば、導電性記録液は、インク成分がカチオン性基を有し、カソードとして機能する中間転写体の表面で生成した水酸化物イオンを介して、凝集させてもよい。
中間転写体は、全体が導電性である必要はなく、少なくとも表面が導電性であればよい。
【0096】
本発明を適用する画像形成装置は、上述のタイプの画像形成装置に限らず、他のタイプの画像形成装置、すなわち、ヘッドに関してシャトル型であってもよいし、また、複写機、ファクシミリの単体、あるいはこれらの複合機、これらに関するモノクロ機等の複合機、その他、電気回路形成に用いられる画像形成装置、バイオテクノロジー分野において所定の画像を形成するのに用いられる画像形成装置であっても良い。ヘッドの数は画像形成装置の用途に応じて増減されるものであり、1つであっても、複数であってもよい。
【0097】
本発明の実施の形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0098】
32 余剰液除去手段
33 電圧印加手段
37 中間転写体
61b ノズル
61Y、61M、61C、61BK ヘッド
63 転写画像担持体
64 転写手段
100 画像形成装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0099】
【特許文献1】特開2008−62397号公報
【特許文献2】特開2006−205677号公報
【特許文献3】特開2008−19286号公報
【特許文献4】特開2009−13394号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性記録液を吐出するノズルを備えたヘッドと、
このヘッドにより吐出された導電性記録液を付与される、少なくとも表面が導電性の中間転写体と、
前記ヘッドから吐出された直後の導電性記録液が同ヘッドと前記中間転写体との間を一時的にブリッジした状態でこの状態の導電性記録液が電気分解するように前記中間転写体と前記ヘッドとの間に電圧を印加する電圧印加手段と、
導電性記録液によって前記中間転写体上に担持された画像を被記録材に転写する転写手段と、
前記中間転写体の移動方向において同中間転写体が導電性記録液を付与される領域の下流側且つ同中間転写体が前記転写手段に対向する領域の上流側で、同中間転写体から、導電性記録液における、同中間転写体上に形成された画像の余剰液成分を除去するための余剰液除去手段とを有する画像形成装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像形成装置において、
前記中間転写体は、表面が金属であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項2記載の画像形成装置において、
前記転写手段は、前記中間転写体上に形成された画像を転写され一旦担持する、表面が弾性体の転写画像担持体を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れか1つに記載の画像形成装置において、
導電性記録液は、インク成分がアニオン性基を有し、
前記中間転写体は、前記電圧印加手段によって電圧を印加されたときにアノードとして機能することを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れか1つに記載の画像形成装置を用いて画像形成を行う画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−260263(P2010−260263A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−112822(P2009−112822)
【出願日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】