説明

画像形成装置、画像形成装置用保護方法及びそれを適用したプログラム

【課題】地震発生による長期停電が発生しても定着装置におけるローラの破損を充分に防止できる画像形成装置を提供する。
【解決手段】この画像形成装置では、定着装置4内でCPU4bが地震探知装置4aによる地震探知時に圧力が加えられるローラ4dを圧力が加えられない状態に制御し、ローラ状態探知装置4eでのローラ4dへの加圧探知時にローラ駆動装置4cへ指示してローラ通し部を戻す制御を行う。また、CPU4bは、装置の印刷中の成否をローラ駆動装置4cの駆動状態により判別し、印刷中にローラ通し部を戻す制御を行う。更に、CPU4bは、印刷中の地震探知時に印刷ジョブを中止させる。コントローラ1は、エンジン制御部2を通して紙詰まり探知装置4fで探知された紙詰まり発生の旨、並びにローラ状態探知装置4eで探知されたローラ通し部が離された旨を操作部3の表示部へ表示させ、紙詰まりが解消されたときに装置の再起動を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震発生等の災害発生時に定着装置への保護機能を持たせた画像形成装置、画像形成装置用保護方法及びそれを適用したプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像処理装置(プリンタ、ファクシミリ装置、複合機等の画像形成装置、スキャナ等の画像読取装置を示す)では、地震等の災害発生を想定してそれ対策するための技術開発が行われており、付設される定着装置(印刷中に用紙上に載せられたトナーを熱せられた定着ローラと加圧ローラとで溶かして紙に吸着させる装置)についても、地震を対策した技術が導入されている。
【0003】
このような定着装置の地震対策(保護機能)に係る周知技術としては、例えばスピーカを地震や装置の落下等の異常振動を伴う災害やトラブル時における画像定着ヒータの温度制御を強制停止するための振動検出手段として利用する「多機能画像形成装置」(特許文献1参照)、振動を検出する振動検出手段の出力に応じて制御状態を変更する制御手段を備えた「画像形成装置」(特許文献2参照)等が挙げられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1に係る画像形成装置では、地震を検知したときに定着装置の電源を遮断することにより、定着装置における加熱を停止するものであるが、定着装置の電源を遮断してもローラに対しては何等操作が行われないため、使用状況によっては長期の停電時等で圧力の加わったローラが変形したり、或いは破損してしまうと、それ以降に印刷が正常に行われなくなってしまうという問題がある。
【0005】
具体的に云えば、定着装置における定着ローラ及び加圧ローラは、通常、印刷時に互いが接し合い、これらのローラには圧力が局所的に加わった状態となり、印刷終了時や画像形成装置の電源オフ時にはローラが駆動部により物理的に離され、ローラ通し部に圧力が加わらない状態としている。これは仮にローラ通し部に圧力が加わった状態のまま、ローラが回転されない状態が長時間続くとローラに凹み変形を生じるのを防止するためである。長時間ローラに局所的に圧力が加わった場合を想定すれば、凹み変形が発生する等の要因によりそれ以降の印刷が正常に行われないことが考えられる。
【0006】
引用文献1の画像形成装置では、印刷中に地震が発生し、地震によって予期せぬ停電が直ちに発生すると、定着装置のローラに圧力が加わった状態のまま(ローラ通し部が接触したまま)で定着装置が停止してしまい、更に地震による電源の復旧に時間を要する事態では圧力が加わるローラ(定着ローラ及び加圧ローラ)に局所的に圧力が加えられた状態を維持したまま長時間放置されることになるため、こうした結果として、定着装置のローラの局所に凹み変形を生じたり、或いは破損してしまい、それ以降の印刷が正常に行われなくなってしまう。
【0007】
また、引用文献2の画像形成装置では、振動検出手段の出力に応じて制御手段が制御状態を変更するものであるが、ここでは地震発生時に各部を自動的にシャットダウンさせる技術を開示しているものの、引用文献1の技術の場合と同様に、定着装置への電源遮断時にローラに対する操作が考慮されていないため、長期の停電時等に定着装置におけるローラの破損を充分に防止できないものとなっている。
【0008】
本発明は、このような問題点を解決すべくなされたもので、その技術的課題は、地震発生による長期停電が発生しても定着装置におけるローラの破損を充分に防止できる画像形成装置、画像形成装置用保護方法及びそれを適用したプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記技術的課題を解決するため、本発明の画像形成装置は、地震発生の有無を検知する地震検知手段と、地震検知手段により地震発生が検知されたときに定着装置における圧力が加えられるローラを圧力が加えられない状態に制御する制御手段と、を有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の画像形成装置用保護方法は、画像形成装置内で地震検知手段により地震発生の有無を検知する第1のステップと、地震検知手段で地震発生が検知されたときに画像形成装置内で制御手段により定着装置における圧力が加えられるローラを圧力が加えられない状態に制御する第2のステップと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、地震発生の有無を検知して地震が発生したときに、制御手段により定着装置における圧力が加えられるローラを圧力が加えられない状態にする制御を行うため、地震発生による長期停電が発生しても、定着装置におけるローラ(加圧ローラ、定着ローラ)に局所的な圧力が加えられることに起因するローラの破損を充分に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例1に係る画像形成装置の機能構成を示した概略ブロック図である。
【図2】図1に示す画像形成装置の制御系機能部に係る動作処理を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の画像形成装置、画像形成装置用保護方法及びそれを適用したプログラムについて、図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は、本発明の実施例1に係る画像形成装置の機能構成を示した概略ブロック図である。
【0015】
この画像形成装置は、装置の操作を行うためボタンやLCD等の表示部(表示手段)を搭載した操作部3と、操作部3に接続されて各部を制御するコントローラ(CPU)1と、印刷中に用紙上に載せられたトナーを熱せられた定着ローラと加圧ローラとで溶かして紙に吸着させる定着装置4と、定着装置4やトナーを紙に映す書き込み装置等の装置の機械部分全体を制御するエンジン制御部(CPU)2と、を備えている。
【0016】
このうち、定着装置4は、定着ローラ、加圧ローラを含む印刷時に圧力が加えられるローラ4dと、通常印刷時にはエンジン制御部2により制御されてローラ4dのローラ通し部を駆動するローラ駆動装置4cと、加速度センサ等の地震を検知する機能を有する地震検知手段としての地震探知装置4aと、地震探知装置4aに接続されて地震発生の有無を判断し、地震が発生したときにローラ駆動装置4cを制御して圧力が加えられたローラ4dに圧力が加えられないようにローラ通し部を物理的に引き離す制御を行う制御手段としてのCPU4bと、ローラ4dに圧力が加わっているか否かの状態を探知する機能を有するローラ状態探知装置4eと、紙詰まり発生の有無や印刷中の用紙が装置内に残留しているか否かを探知する機能を有する紙詰まり探知装置4fと、を備えて構成される。
【0017】
また、コントローラ1は、中央演算処理機能やメモリ等の記憶機能を持ち、操作部3やエンジン制御部2への制御を行う以外、略図するタイマ部等の計時部への制御も行う。更に、コントローラ1は、エンジン制御部2経由で定着装置4の紙詰まり探知装置4fにより紙詰まりが認識された場合には、操作部3への表示制御を行って紙詰まりを知らせるための旨(警告)やローラ駆動装置4cによりローラ通し部が離された旨を搭載されたLCD等の表示部(表示手段)に表示させる。
【0018】
図2は、この画像形成装置の制御系機能部(定着装置4のCPU4bを中心とする)に係る動作処理を示したフローチャートである。
【0019】
ここでの動作処理は、まず定着装置4のCPU4bが地震探知装置4aからの地震発生の有無を示す探知信号を受けることにより、地震発生であるか否かの判定(ステップS1)を行う。この判定の結果、地震発生が無ければ、この地震発生であるか否かの判定(ステップS1)の前にリターンして地震発生の探知を続けるが、地震発生であれば、ローラ駆動装置4cのローラ駆動状態に基づいてエンジン制御部2による画像形成装置の印刷中か否かの判定(ステップS2)を行う。この判定の結果、印刷中で無ければ、通常ローラ4d(定着ローラ、加圧ローラ)のローラ通し部が離され、圧力がローラ4dに加わっていない状態のため、仮にそのままの状態で長時間停電発生して画像形成装置が停止しても、ローラ4dは損傷しないことにより、再び地震発生であるか否かの判定(ステップS1)の前にリターンして地震発生の検知を続けるが、印刷中であれば、印刷ジョブの中止(ステップS3)を行う。
【0020】
この後、CPU4bは、ローラ状態探知装置4eからのローラ状態探知信号を受け、ローラ4d(定着ローラ、加圧ローラ)が接し、ローラ4dに圧力が加わっているか否かについて、ローラ加圧状態であるか否かの判定(ステップS4)を行う。この判定の結果、ローラ加圧状態であれば、直ちにローラ駆動装置4cへローラ通し部を離す指令を発出してローラ4dの引き離し(ステップS5)を行い、ローラ4dに圧力が加わらない状態にするが、ローラ加圧状態でなければ、係るローラ4dの引き離し(ステップS5)をジャンプして次の処理へ移行する。ここでは、その後に間もなく発生した停電により画像形成装置が停止したとしても、ローラ通し部が離されているためにローラ4dが損傷する問題は発生しない。因みに、更に電源復旧後に停電が発生した場合、画像形成装置内に紙が詰まったり、或いは印刷中の用紙残留が発生するが、次回に電源をオンにするときには、紙詰まりが生じたことを知らせる旨(警告)が操作部3の表示部からユーザに伝えられるため、通常の紙詰まりの時と同様にユーザが用紙を除去することで印刷可能な状態へ戻ることになる。
【0021】
そこで、次の処理では、コントローラ1がエンジン制御部2を通して紙詰まり探知装置4fからの紙詰まり探知信号を受け、紙が詰まっているか否かを判定(ステップS6)する。この判定の結果、紙が詰まっていれば、操作部3の表示部へ紙詰まりを表示(ステップS7)した後、紙詰まりは解消されたか否かを判定(ステップS8)し、解消されなければ、係る紙詰まりは解消されたか否かを判定(ステップS8)の前にリターンして解消されるまで待機し続けるが、解消されれば、上述した紙が詰まっているか否かを判定(ステップS6)の結果、紙が詰まっていない場合と同様に、画像形成装置を再起動(ステップS9)してから動作処理を終了する。画像形成装置の再起動では、ローラ4d上に残ったトナー等の除去が行われる。尚、操作部3の表示部へ紙詰まりを表示(ステップS7)する処理では、同時にローラ状態探知装置4eで探知されたローラ通し部が離された旨を表示させても良い。
【0022】
以上に説明した実施例1に係る画像形成装置では、定着装置4内で地震検知手段である地震探知装置4aにより地震発生が探知されたときに圧力が加えられるローラ4dを圧力が加えられない状態に制御する制御手段としてのCPU4bを有することを基本的な特徴とする。また、CPU4bは、ローラ4dに圧力が加わっているか否かの状態を検知するローラ状態検知手段であるローラ状態探知装置4eにおいて、ローラ4dに圧力が加わっていることが探知されたときにローラ駆動装置4cへ指示してローラ通し部を戻す制御を行う。この機能はローラ4dに圧力が加わっているか否かを判別し、確実にローラ4dに圧力が加わっているときにローラ4dを圧力が加えられない状態にするものである。更に、CPU4bは、装置が印刷中であるか否かをローラ駆動装置4cの駆動状態により判別し、印刷中であればローラ通し部を戻す制御を行う。この機能は印刷中でない場合、ローラ駆動装置4cによりローラ4dを引き離す動作は必要ないため、無駄な動作を省くものである。加えて、CPU4bは、印刷中に地震探知装置4aにより地震発生が探知されたときに印刷ジョブを中止させる。この機能はローラ駆動装置4cによりローラ4dを引き離す動作させると印刷が不可能になるため、印刷がそもそも不要であることにより、不要な動作を省くものである。
【0023】
他の制御手段であるコントローラ1は、印刷ジョブの中止時にエンジン制御部2を通して紙詰まりの有無を検知する紙詰まり検知手段である紙詰まり探知装置4fから伝送される紙詰まりが探知されたときに紙詰まり発生の旨、並びにローラ状態探知装置4eから伝送されるローラ通し部が離された旨を操作部3の表示部へ表示させる。この機能はユーザに紙詰まり状態にあると共に、ローラ4dの圧力は解放されている状態にあることを通知させるものである。また、コントローラ1は、紙詰まりが解消されたときに装置の再起動を行う。この機能は再起動時に画像形成装置を初期状態に戻すことを可能とするもので、ローラ4d(特に定着ローラ)上に残留したトナーを自動的に排除する機能であり、多くの画像処理装置の機種に搭載されている。
【0024】
ところで、上述した実施例1に係る画像形成装置の処理機能は、画像形成装置用保護方法として換言することができる。この場合の画像形成装置用保護方法は、画像形成装置内で地震検知手段により地震発生の有無を検知する第1のステップと、地震検知手段で地震発生が検知されたときに画像形成装置内で制御手段により定着装置における圧力が加えられるローラを圧力が加えられない状態に制御する第2のステップと、を有するものである。但し、第2のステップでは、制御手段によりローラに圧力が加わっている印刷中であるときにローラ通し部を戻す制御を行うことが好ましい。因みに、コンピューター機能を持つ制御手段(CPU4b)では、これらの第1のステップ及び第2のステップの情報を実行可能に構築したプログラムを、内蔵する記憶部、或いは図示しない外部のROM等の記憶部に格納しておき、そのプログラムを読み取って動作させることも可能である。
【符号の説明】
【0025】
1 コントローラ(CPU)
2 エンジン制御部(CPU)
3 操作部
4 定着装置
4a 地震探知装置
4b CPU
4c ローラ駆動装置
4d ローラ
4e ローラ状態探知装置
4f 紙詰まり探知装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【特許文献1】特開平11−184327号公報
【特許文献2】特開平8−146843号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地震発生の有無を検知する地震検知手段と、前記地震検知手段により前記地震発生が検知されたときに定着装置における圧力が加えられるローラを圧力が加えられない状態に制御する制御手段と、を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像形成装置において、前記ローラに圧力が加わっているか否かの状態を検知するローラ状態検知手段を備え、前記制御手段は、前記ローラ状態検知手段で前記ローラに圧力が加わっていることが検知されたときにローラ通し部を戻す制御を行うことを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項2記載の画像形成装置において、前記制御手段は、装置が印刷中であるか否かを前記ローラの駆動状態により判別し、当該印刷中であるときに前記ローラ通し部を戻す制御を行うことを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項3記載の画像形成装置において、前記制御手段は、前記印刷中に前記地震検知手段により前記地震発生が検知されたときに印刷ジョブを中止させることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項4記載の画像形成装置において、紙詰まりの有無を検知する紙詰まり検知手段と、前記印刷ジョブの中止時に前記紙詰まり検知手段により前記紙詰まりが検知されたときの当該紙詰まり発生の旨、並びに前記ローラ通し部が離された旨を表示手段へ表示させる他の制御手段と、を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項5記載の画像形成装置において、前記他の制御手段は、前記紙詰まりが解消されたときに再起動を行うことを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
画像形成装置内で地震検知手段により地震発生の有無を検知する第1のステップと、前記地震検知手段で前記地震発生が検知されたときに前記画像形成装置内で制御手段により定着装置における圧力が加えられるローラを圧力が加えられない状態に制御する第2のステップと、を有することを特徴とする画像形成装置用保護方法。
【請求項8】
請求項7記載の画像形成装置用保護方法において、前記第2のステップでは、前記制御手段により前記ローラに圧力が加わっている印刷中であるときにローラ通し部を戻す制御を行うことを特徴とする画像形成装置用保護方法。
【請求項9】
請求項7又は8記載の画像形成装置用保護方法における前記第1のステップ及び前記第2のステップの情報をコンピューター機能を持つ制御手段により実行可能に構築して成ることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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