説明

画像形成装置

【課題】装置の大型化せずとも、厚手の用紙による両面画像可能にすることができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】 用紙Pに画像を形成する画像形成部と、前記画像形成部で形成された画像を用紙Pに定着する定着装置7、定着装置7よりも用紙搬送方向下流側に設けられるターン部36とを有する画像形成装置であり、用紙搬送方向において定着装置7を通過後からターン部36までの間に、用紙Pの剛性を低下した状態に維持するため、用紙Pを加熱する加熱手段40を設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着後の転写材をターンさせるターン部を備えた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ、ファクシミリ及びこれら少なくとも2つの機能を有する複合機等の画像形成装置において、転写材の両面に画像を形成する両面機能を備えたものもよく知られている。そして、この種の画像形成装置において、特許文献1に記載されているように、片面に形成した画像の定着後の転写材をスイッチバックさせた後、ターン部でターンさせて再び画像形成部に給紙し、転写材の裏面に画像を形成するものもよく知られている。
【0003】
特許文献1の画像形成装置では、ターン部での反転が反転ローラの周面に沿って行われ、その反転ローラの径が大きいほど、反転曲率が大きいので転写材を支障なく反転することができる。しかしながら、画像形成装置はコンパクト化が要求され、それに伴い反転曲率も小さくすることが望まれている。また、近年の画像形成装置では画像形成する転写材の種類の多様化が要望され、腰のある厚手の用紙に画像を形成することもその1つである。
【0004】
しかしながら、腰のある厚手の用紙は上記したように、反転曲率も小さくした場合、反転できずに搬送トラブルを発生させることがあった。よって、装置を大型化することはできないので、厚手の用紙による両面画像を禁止する等の制限をする措置を講じなければならないという問題が発生した。
【0005】
【特許文献1】特開2001-310824号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記した従来の事情に鑑み、装置の大型化せずとも、厚手の用紙による両面画像可能にすることができる画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、転写材に画像を形成する画像形成部と、前記画像形成部で形成された画像を転写材に定着する定着装置と、前記定着装置よりも転写材搬送方向下流側に設けられるターン部と、を有する画像形成装置において、転写材搬送方向において前記定着装置を通過後から前記ターン部までの間に、転写材の剛性を低下した状態に維持する維持装置を設けたことを特徴とする画像形成装置を提案する。
【0008】
なお、本発明は、前記維持装置が、前記定着装置を通過後の転写材を再度加熱する加熱部を有すると、効果的である。
さらに、本発明は、前記加熱部は、転写材に与える熱量を変更可能であると、効果的である。
【0009】
さらにまた、本発明は、前記維持装置が、前記定着装置を通過後の転写材の熱を保温する保温部を有すると、効果的である。
さらにまた、本発明は、前記定着装置から前記ターン部までに、転写材を反転しながら搬送する反転搬送部と該反転搬送部で反転した転写材をスイッチバックするスイッチバック搬送部が設けられ、前記ターン部が、該スイッチバック搬送部でスイッチバックされた転写材を反転して前記画像形成部に再給紙する再給紙部の一部で構成されており、前記反転搬送部と前記ターン部は、転写材を同じ方向にターンさせるると、効果的である。
【0010】
さらにまた、本発明は、転写材の種類を選択する紙種選択手段と、通紙モードを選択するモード選択手段とを有し、それぞれの選択手段で選択されたの選択結果に応じて、前記加熱部に供給されるエネルギー量を制御すると、効果的である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、定着装置による加熱で低下した用紙の剛性をターン部で維持することできるので、装置を大型化することなく、厚手の用紙による両面画像可能にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って詳細に説明する。
図1は、本発明に係る画像形成装置の転写材の搬送経路を示す説明図である。
図1において、本実施形態の画像形成装置は装置本体に下部に2段の給紙カセット1a,1bが配置され、給紙指令が発せられると、一方の給紙カセット1より転写材としての用紙Pが分離給送手段2によって1枚ずつ給紙される。給紙された用紙Pは、グリップローラ対3を通過し、再給紙搬送路との合流地点の中間ローラ対4を経てレジストローラ対5に達して一端停止する。
【0013】
一方、像担持体としての感光体ドラム6では公知の電子写真プロセスによってトナー像が形成され、レジストローラ対5により一端停止された用紙Pはこのトナー像に同期して感光体ドラム6の転写位置に向けて搬送され、そしてトナー像が転写される。転写を終えた用紙Pは、定着装置7に搬送され、ここで加熱と加圧によってトナー像が用紙Pに定着される。
【0014】
かくして、画像形成を終えた用紙Pは、通常のモードであれば反転しないので、分岐爪8が図示する位置に保持され、そのままストレートに排紙ローラ9に搬送されて機外に排紙される。しかし、裏面排紙若しくは両面印刷のモードが選択されている場合には、分岐爪8の切り替えにより用紙Pは反転装置10へ搬送される。
【0015】
反転装置10は、スイッチバック路12に通ずる反転往路11と、スイッチバック路12から上記排紙ローラ9に通ずる反転復路13とを有する。反転往路11に送り込まれた用紙Pは、搬送ローラ対14を経由してローラ対15,16に挟持され、その搬送作用によりスイッチバック路12に送られる。スイッチバック路12には、送り込まれた用紙Pを整合するジョガーフェンス18と、スイッチバックローラ対20,21が設けられている。
【0016】
上記反転往路11には、ローラ対15,16の上流側に入口センサ22が設けられ、該入口センサ22が用紙Pの先端を検知すると、その検知をトリガとしてジョガーフェンスおよび上スイッチバックローラ20が用紙Pを受け入れるように動作する。すなわち、用紙Pがスイッチバック路12に進入することを妨げないように、上スイッチバックローラ20はソレノイドにより下スイッチバックローラ21から離し、ジョガーフェンス18は移動機構によって進入する用紙Pの幅より大きい間隔に広げられる。そして、入口センサ22が用紙Pの後端を検知すると、そのある一定時間後ジョガーフェンスをジョギング動作して用紙Pを正しく位置させる。そして、上スイッチバックローラ20は図2の鎖線で示すように、降下して下スイッチバックローラ21とで用紙Pを挟持するとともに、用紙Pの進入する方向に回転駆動している下スイッチバックローラ21が逆方向の回転して用紙Pは後端が前端となって進入方向と逆方向に搬送される。
【0017】
裏面排紙モードにより逆搬送される用紙Pは、スイッチバック路12に続いて設けられた切り換え爪23により、反転排出する場合と、両面コピーする場合とで搬送方向が切り換えられる。切り換え爪23が図1および図2の実線の位置にあるとき、スイッチバックされる用紙Pはスイッチバックローラ20,21、ローラ16と反転ローラ17により反転復路を搬送され、図1に示す搬送ローラ対24および14を介し、そして排紙ローラ9に搬送されて機外に排紙される。
【0018】
また、両面印刷のモード時では切り換え爪23が図1の鎖線の位置に移動し、用紙Pは反転ローラ17に沿ったターン部19を介してスイッチバック路12の下方に設けられた再給紙搬送路25に送られる。そして、用紙Pは再給紙搬送路25から中間ローラ対4を経てレジストローラ対5へ送られ、その裏面に画像形成されて両面印刷されるとそのまま機外に排紙される。
【0019】
図2は、反転装置30の変形例であり、本例では反転ローラ17の代わりに反転前ローラ対31,32、反転ガイド板33及び反転後ローラ対34,35とを設け、反転ガイド板33の曲率がターン部36の反転径になっている。
【0020】
このように構成される反転装置10,30では、スイッチバック路12から再給紙搬送路25への反転が図1の装置では反転ローラ17に沿って行われ、図2の装置では反転ガイド板33に沿って行われる。このとき、ターン部19,36の反転径を小さくする、すなわち図1に示す装置では反転ローラ17の径を小さくし、図2に示す装置では反転前ローラ対31,32に反転後ローラ対34,35を近づけると、画像形成装置全体をコンパクト化することができる。
【0021】
ところで、近年の市場では転写材として厚紙の使用が要望されているが、例えば図2の反転装置30で厚紙を使用すると、図3に示すように、厚紙は腰が強い、すなわち剛性が大きいため反転しきれずにジャム等を発生させる。このため、図4に示すように、反転前ローラ対31,32と反転後ローラ対34,35を離し、反転径を大きくすれば、厚紙でも支障なく反転することができるが、これでは装置の大型化を招くため到底受け入れ難い。
【0022】
かかる事情から、本発明者は図5に示すような一般的な用紙Pの特性に着目し、厚紙を反転経路に搬送する際に、用紙Pを加熱して紙の剛性を低減させた上で反転させることで、機器を大型化させることなく、搬送停止や用紙ジャムを抑制することを見出した。図1に示す画像形成装置では、定着装置7を通過直後は加熱され、用紙Pに十分な熱量が残っていることから剛性が低下した状態である。しかし、この用紙Pが反転装置10に送り込まれてスイッチバック路12に搬送されたときにはその搬送途中で熱量が奪われ、用紙Pの剛性が元に戻ろうとしていることが判明した。特に、厚紙を定着した後、反転装置10,30内で自然冷却されると強い剛性が戻る。具体的には定着後、図2の反転往路11で下方向に凸状のカールが付いた後、厚紙が自然冷却されて剛性が戻ると、その先のターン部36でカールと逆方向のカーブがあるため、搬送不良やジャムが生じる可能性が高い。また、反転部で用紙Pは一時的に停止したり、速度が遅くなったりするように制御することがあり、その結果、用紙Pが冷えて剛性が戻りやすいことがある。
【0023】
そこで、本発明では用紙搬送方向において、定着装置7を通過後からターン部19,36までの間に、用紙Pの剛性を低下した状態に維持するための各種維持装置を設けている。
【0024】
図6に示す維持装置は、ターン部19,36手前のスイッチバック路12に加熱手段40を設け、該加熱手段40によってスイッチバック路12に搬送される途中で熱量が奪われた用紙Pを再加熱することにより、剛性が小さい状態で用紙Pがターン部19,36を通過するものである。
【0025】
また、図7に示す維持装置は、ターン部19,36手前の反転前ローラ対31,32の少なくとも一方(図7の例では下部ローラ)を例えば加熱手段としてのヒータHを内蔵した加熱ローラとして構成し、該加熱ローラによってスイッチバック路12に搬送される途中で熱量が奪われた用紙Pを再加熱することにより、剛性が小さい状態で用紙Pがターン部19,36を通過するものである。なお、図示していないが図1に示す反転装置10の場合、反転ローラ17にヒータHを内蔵すればよい。また、図6及び図7に示す維持装置においては加熱手段の加熱量の変更切り替えを可能に構成し、用紙P等の条件に応じて再加熱する熱量を調整するようにしてもよい。
【0026】
さらにまた、図8に示す維持装置は図6、図7に示す装置のように用紙Pを再加熱するものでなく、定着によって得られた熱量をそのまま維持しようとするものであって、反転往路11の一部又は全部、スイッチバック路12及び反転部36である反転ガイド板33において熱が逃げにくい断熱手段Dで構成する。この場合、断熱手段Dはこれらガイド板自体を断熱材で構成してもよいし、通常の部材の表面を断熱効果が得られるコーティングを施したり、断熱層を付加したものでも良い。
【0027】
このように、定着装置による加熱で低下した用紙Pの剛性が、ターン部や、ターン部より上流で、もとに戻らないように再加熱(保熱)することができ、ターン部19,36の径が小さい急ターンであっても厚紙の使用を可能にすることができる。
【0028】
ところで、図6及び図7に示す維持装置の場合、用紙Pを再加熱する構成上、加熱手段の作動は再加熱が必要な用紙使用時と両面印刷モード時のみに設定することが好ましい。
【0029】
図6、図7に示す維持装置の加熱手段40及びヒータHは図9に示すように、トレイ1の厚紙が選択され、さらに図10に示すように両面印刷モードが選択されたときに作動するようにオン・オフ制御したり、用紙Pや印刷モードの条件に応じて加熱手段40及びヒータHの作動の強弱を制御することで、不必要な加熱をなくして無駄なエネルギーの消費を防止している。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る画像形成装置の搬送経路を示す概略図である。
【図2】図1の画像形成装置と異なる形態の反転装置を示す説明図である。
【図3】ターン部での搬送不良を説明する説明図である。
【図4】ターン部での搬送不良を抑制するターン部を示す説明図である。
【図5】紙の温度と剛性の関係を示すグラフである。
【図6】本発明の一実施形態を示す反転装置の説明図である。
【図7】本発明の他の実施形態を示す反転装置の説明図である。
【図8】本発明のさらに他の実施形態を示す反転装置の説明図である。
【図9】用紙種類選択表示の一例を示す図である。
【図10】印刷モード選択表示の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0031】
7 定着装置
10,30 反転装置
12 スイッチバック路
17 反転ローラ
19,36 ターン部
31,32 反転前ローラ対
33 反転ガイド板
34,35 反転後ローラ対
40 加熱手段
D 断熱手段
H ヒータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
転写材に画像を形成する画像形成部と、
前記画像形成部で形成された画像を転写材に定着する定着装置と、
前記定着装置よりも転写材搬送方向下流側に設けられるターン部と、
を有する画像形成装置において、
転写材搬送方向において前記定着装置を通過後から前記ターン部までの間に、転写材の剛性を低下した状態に維持する維持装置を設けたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記維持装置が、前記定着装置を通過後の転写材を再度加熱する加熱部を有することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記加熱部は、転写材に与える熱量を変更可能であることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記維持装置が、前記定着装置を通過後の転写材の熱を保温する保温部を有することを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記定着装置から前記ターン部までに、転写材を反転しながら搬送する反転搬送部と該反転搬送部で反転した転写材をスイッチバックするスイッチバック搬送部が設けられ、前記ターン部が、該スイッチバック搬送部でスイッチバックされた転写材を反転して前記画像形成部に再給紙する再給紙部の一部で構成されており、前記反転搬送部と前記ターン部は、転写材を同じ方向にターンさせることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
転写材の種類を選択する紙種選択手段と、通紙モードを選択するモード選択手段とを有し、それぞれの選択手段で選択されたの選択結果に応じて、前記加熱部に供給されるエネルギー量を制御することを特徴とする、請求項5記載の画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2009−249115(P2009−249115A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−99307(P2008−99307)
【出願日】平成20年4月7日(2008.4.7)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】