説明

画像形成装置

【課題】インクの影響を受けず、高精度なキャリッジの移動制御を行うことが可能な画像形成装置を提供する。
【解決手段】スケール41には、所定のピッチPで形成された複数のスリット孔41aをそれぞれ含む2段のスリット孔群41A、41Bが形成されている。そして、各段の各スリット孔41aが、段間でP/4ずらして形成されている。また、2段のスリット孔群41A、41Bには、各々対応付けられた段におけるスリット孔41aの有無を検出するセンサ42A、42Bが対応付けて配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、記録ヘッドを搭載したキャリッジを主走査方向で往復移動させ、記録ヘッドによりインクを吐出することで記録媒体に画像を形成するインクジェット式の画像形成装置が知られている。
【0003】
この種の画像形成装置では、キャリッジの移動量や位置を検出するエンコーダとして、キャリッジの移動方向(主走査方向)に沿って配置され、所定のパターンが形成されたリニア型のエンコーダスケールと、キャリッジに搭載され、エンコーダスケールに形成された所定のパターンを検出するエンコーダセンサとを備えている。
【0004】
そして、前記エンコーダスケールとしては、所定のピッチで明暗パターンが形成されたものと、所定のピッチでスリット孔が形成されたものとが知られている。
【0005】
ところが、明暗パターンが形成されたエンコーダスケールを実装した画像形成装置では、加工技術的に明暗パターンのピッチを高精細化してエンコーダの分解能を高精細化することが可能であるものの、インクの付着により明暗パターンの検出性能が劣化するなどの不都合がある。
【0006】
一方、スリット孔が形成されたスケールを実装した画像形成装置では、インクの付着によりスリット孔の検出性能が劣化する虞は無いものの、加工技術的にスリット孔のピッチを高精細化することが困難であるため、エンコーダの分解能を高精細化できないなどの不都合がある。
【0007】
また、近年の画像形成装置では、高精度化に伴って使用されるインクが小液滴化されることにより、記録媒体に着弾せずに筐体内を舞う微小なインク(以下、単に「インクミスト」という場合がある。)がエンコーダスケールに付着し易くなっており、従来に比べ、エンコーダスケールがより汚れ易くなっている。
【0008】
このような問題を解決する従来技術として、例えば、エンコーダスケールを清掃する清掃手段を有する画像形成装置(特許文献1参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−361901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1の画像形成装置では、清掃手段のウレタン樹脂が汚れていない初期の段階では、エンコーダスケールに付着したインクミストを精度良く取り除くことができるものの、使用するに連れてウレタン樹脂に汚れが溜まっていくため、インクミストの汚れを取り除くという効果は経時的に低下する可能性が高いなどの不都合がある。
【0011】
また、特許文献1の画像形成装置では、清掃手段のウレタン樹脂によりエンコーダスケールに付着したインクミストを完全に拭き取ることができなかった場合には、かえってエンコーダスケールの汚れを拡げてしまうなどの不都合がある。
【0012】
即ち、従来の画像形成装置では、前記した不都合によって高精度なキャリッジの移動制御を行うことができず、画像形成の品質が低いなどの課題がある。
【0013】
そこで、本発明は、前記従来の課題を解決するものであり、インクの影響を受けず、高精度なキャリッジの移動制御を行うことが可能な画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の画像形成装置は、インクを吐出するヘッドを備えるキャリッジと、前記キャリッジの移動方向に沿って配置され、複数段にそれぞれ所定のピッチで複数のスリット孔が形成され、各段のスリット孔が段間で前記所定のピッチを所定数で割った分数値分ずらして形成されるリニア型のスケールと、前記複数の段にそれぞれ対応付けて前記キャリッジに設けられ、前記キャリッジと共に移動可能であり、各段のスリット孔の有無を検出する複数のセンサと、前記複数のセンサから出力される複数の信号に基づいて前記キャリッジの移動を制御する制御手段とを備える。
【0015】
また、本発明の画像形成装置は、インクを吐出するヘッドを備えるキャリッジと、前記キャリッジの移動方向に沿って配置され、所定のピッチで複数のスリット孔が形成されるリニア型のスケールと、前記複数のスリット孔に共通に対応付けて前記キャリッジで複数段に配置され、各段のセンサが段間で前記所定のピッチを所定数で割った分数値分ずらして配置される複数のセンサと、前記複数のセンサから出力される複数の信号に基づいて前記キャリッジの移動を制御する制御手段とを備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、インクの影響を受けず、高精度なキャリッジの移動制御を行うことができ、画像形成の品質が高い画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、第1の実施形態に係る画像形成装置の筐体内の概略的な構成を示す正面図である。
【図2】図2は、第1の実施形態の画像形成装置におけるスケールおよびセンサユニットの詳細な構成を示す拡大平面図である。
【図3】図3は、図1に示すX−X線より矢印方向に視た場合の断面図である。
【図4】図4は、各センサから出力される信号を示す模式図である。
【図5】図5は、画像形成装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図6】図6は、画像形成装置における全体的な処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】図7は、キャリッジの移動制御に係る処理の詳細を示すフローチャートである。
【図8】図8は、第2の実施形態に係る画像形成装置の筐体内の概略的な構成を示す正面図である。
【図9】図9は、第2の実施形態の画像形成装置におけるスケールおよびセンサユニットの詳細な構成を示す拡大平面図である。
【図10】図10は、図8に示すY−Y線より矢印方向に視た場合の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。
【0019】
なお、以下では、本実施形態の画像形成装置として、ヘッドを備えたキャリッジが記録媒体上を走査移動しながらインクを吐き出すことにより、記録媒体に画像を形成するインクジェット型のプリンタの場合について説明する。
【0020】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る画像形成装置の筐体内の概略的な構成を示す正面図である。
【0021】
図1に示すように、この画像形成装置1は、筐体2内に、キャリッジ3と、エンコーダ部4と、主制御基板5とを備えている。
【0022】
ここで、キャリッジ3は、インクを吐出するインクジェット式の記録ヘッド(以下、単に「ヘッド」という。)6を備えており、そのヘッド6を主走査方向(移動方向)Aに搬送するものである。
【0023】
キャリッジ3には、筐体2の左右の側壁に平行に掛け渡されたガイド軸7が当該キャリッジ3に対して摺動可能に貫通されているとともに、筐体2内に設けられた駆動プーリ8および従動プーリ9に掛け回された無端状のタイミングベルト10の一部が取り付けられている。なお、タイミングベルト10は、ガイド軸7と略平行となるように設けられている。
【0024】
即ち、キャリッジ3は、駆動モータ11により駆動プーリ8および従動プーリ9が回動駆動されてタイミングベルト10が走行されることにより、ガイド軸7に沿って摺動されながら主走査方向Aで移動可能となっている。
【0025】
また、キャリッジ3は、略直方体状のハウジング3Aを有しており、このハウジング3A内には、ヘッド6にインクを供給するための着脱可能なインクカートリッジ31が装着されている。なお、例えば、本実施形態のインクカートリッジ31は、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの4色のインクをそれぞれ個別に供給する4つのインクカートリッジ(不図示)から構成されている。
【0026】
キャリッジ3に搭載されるヘッド6は、前記した4色のインクカートリッジから供給されるインクをそれぞれ個別に吐出するための4つのインクジェットヘッド(不図示)から構成されている。なお、それら4つのインクジェットヘッドは、主走査方向Aに並列に配置されており、各インクジェットヘッドは、下向きのノズル面に複数のノズルを直線状に並べたノズル列を有している。
【0027】
また、エンコーダ部4は、キャリッジ3の移動量や位置を検出するエンコーダであり、エンコーダスケール(以下、単に「スケール」という。)41とエンコーダセンサユニット(以下、単に「センサユニット」という。)42とを主体に構成される。なお、スケール41は、キャリッジ3の移動方向に沿って配置され、所定のピッチ(所定の間隔)P(図2参照)でスリット孔41aが形成されたリニア型のスケールである。また、センサユニット42は、キャリッジ3に設けられ、スケール41を基準としてキャリッジ3の移動量を検出するものであり、スケール41に形成されたスリット孔41aの有無を検出して所定の信号を出力するものである。
【0028】
スケール41は、筺体2の左右の側壁にそれぞれ設けられたブラケット12と板ばね13とにより適当な張力で引っ張られて、ガイド軸7と平行となるように支持されている。
【0029】
また、スケール41には、このスケール41の長手方向、即ち、主走査方向Aで一列状に、同一の幅W1を有する長方形状のスリット孔41aが所定のピッチPで形成されている。特に、本実施形態のスケール41では、一列状の複数のスリット孔41a(以下、単に「スリット孔群」という場合がある。)が、主走査方向Aに直交する上下方向Bで2段分形成されている。
【0030】
図2は、第1の実施形態の画像形成装置1におけるスケール41およびセンサユニット42の詳細な構成を説明するための拡大平面図である。
【0031】
図2に示すように、本実施形態のスケール41には、スリット孔群41Aとスリット孔群41Bとが形成されている。そして、スリット孔群41Aの各スリット孔41aと、スリット孔群41Bの各スリット孔41aとが、所定のピッチPの4分の1の幅「P/4」だけ主走査方向Aでずれる位置関係となるように形成されている。
【0032】
より具体的には、所定のピッチPとして、例えば、現状の加工技術の限界とされる最小のピッチ「70μm」を採用した場合には、スリット孔群41Aの各スリット孔41aと、スリット孔群41Bの各スリット孔41aとは、P/4=70μm/4=「17.5μm」だけ主走査方向Aでずれる位置関係となる。
【0033】
また、本実施形態のセンサユニット42は、スリット孔群毎にセンサが設けられており、スリット孔群41Aには、該スリット孔群41Aの各スリット孔41aの有無を検出するセンサ42Aが対応付けて設けられ、一方、スリット孔群41Bには、該スリット孔群41Bの各スリット孔41aの有無を検出するセンサ42Bが対応付けて設けられている。
【0034】
図3は、図1に示すX−X線より矢印方向に視た場合の断面図であり、センサユニット42の構成を説明するための図である。
【0035】
図3に示すように、各センサ42A、42Bは、光源としての発光部421と、光を受光する受光部422とを備えた透過型のセンサであり、両者は、発光部421と受光部422との間でスケール41を挟むように対向配置されている。
【0036】
より具体的には、キャリッジ3の一端面(上面)3aには、スケール41を挟むスペースを形成するように所定距離隔てて、各センサ42A、42Bの発光部421および受光部422をそれぞれ保持するための直方体状の2つのホルダ部材420A、420Bが設けられている。
【0037】
図3の例では、ホルダ部材420Aには、各センサ42A、42Bの発光部421が設けられ、ホルダ部材420Bには、各センサ42A、42Bの受光部422が設けられている。
【0038】
また、図2および図3を参照して、各センサ42A、42Bの発光部421は、横幅W2および縦幅W3が同一で、同一の面積を有する発光面421aを有しており、一方、各センサ42A、42Bの受光部422は、発光部421と同様の幅および面積を有する受光面422aを有している。
【0039】
なお、発光面421aは、光を発射する半導体の発光素子で構成され、一方、受光面422aは、光を受光する半導体の受光素子で構成される。
【0040】
また、発光面421aおよび受光面422aは、上下方向Bで同一ライン上に並ぶ位置関係となっている。図2の例では、発光面421aおよび受光面422aの主走査方向Aの一端がラインL1上に配置され、他端がラインL2上に配置される態様となっている。
【0041】
更に、発光面421aおよび受光面422aは、センサ毎に、キャリッジ3の一端面(上面)3aから上下方向Bにおける高さ位置が、同一となっている(図3参照)。
【0042】
即ち、各センサ42A、42Bは、キャリッジ3と共に移動する場合に、受光部421の受光面421aが、発光部422の発光面422aから発せられた光を、スケール41のスリット孔41aを介して受光するか否かに応じて所定の信号(図4参照)を後述のセンサコントローラ42C(図5参照)に出力するものである。
【0043】
図4は、各センサ42A、42Bから出力される信号を説明するための模式図であり、図4(a)が、センサ42Aから出力される信号を示し、図4(b)が、センサ42Bから出力される信号を示している。
【0044】
図4に示すように、「T1」のタイミングでは、センサ42Aの出力が「OFF」で、センサ42Bの出力が「ON」である状態を示している。また、「T2」のタイミングでは、センサ42Aの出力が「ON」で、センサ42Bの出力が「ON」である状態を示している。また、「T3」のタイミングでは、センサ42Aの出力が「ON」で、センサ42Bの出力が「OFF」である状態を示している。また、「T4」のタイミングでは、センサ42Aの出力が「OFF」で、第2のセンサ42Bの出力が「OFF」である状態を示している。
【0045】
図1に戻って、主制御基板5は、画像形成装置1の処理動作を制御するためのCPU(Central Processing Unit)51(図5参照)などの各種電子部品を搭載した基板であり、例えば、後述の駆動コントローラ32と協働してセンサユニット42から出力される信号に基づいてキャリッジ3の移動を制御するものである。
【0046】
また、画像形成装置1は、筐体2内に、用紙搬送部14を更に備えている。
【0047】
この用紙搬送部14は、駆動モータ15により搬送ローラ16を回動駆動することにより、不図示の給紙トレイから記録媒体としての記録用紙MPを搬送方向C(図1を視る側に向う方向)に搬送するものである。
【0048】
図5は、画像形成装置1のハードウェア構成を説明するためのブロック図であり、特に、主制御基板5の回路構成と、その主制御基板5以外のその他の回路構成を示している。
【0049】
図5に示すように、この画像形成装置1は、筐体2内に、主制御基板5を有しており、具体的には、CPU51と、このCPU51とバスラインBLを介して接続されるROM(Read Only Memory)52と、RAM(Random Access Memory)53と、不揮発性メモリ54と、センサユニット42と、ヘッド駆動部60と、キャリッジ駆動部30と、用紙搬送部14と、通信I/F部55とを備えるとともに、それら各構成部に電力を供給する電力供給部56を備えている。
【0050】
ここで、CPU51は、ROM52に格納されたプログラムをRAM53に展開して実行することにより、この画像形成装置1の全体を制御する。
【0051】
ROM52は、後述のフローチャートにおける処理手順を実行するためのプログラムなどの各種のプログラムや、それら各種のプログラムの処理で用いられる各種のデータなどのファイルを記憶する。RAM53は、作業中のデータを一時記憶する。不揮発性メモリ54は、通信I/F部55を介して不図示のホストコンピュータから受信したPDL形式の印刷データやその印刷データを解析して得られた画像データなどを記憶する。
【0052】
センサユニット42は、センサ42Aと、センサ42Bと、それらと電気的に接続され、それら各センサ42A、42Bをコントロールするセンサコントローラ42Cとを備えている。例えば、センサコントローラ42Cは、キャリッジ3のハウジング30内の一端面3a寄りに設けられる。
【0053】
そして、センサコントローラ42Cは、CPU51の制御のもと、各センサ42A、42Bの発光部421の発光を制御したり、各センサ42A、42Bの受光部422からの出力信号の入力処理を制御したりして、キャリッジ3の位置検出処理を制御する。
【0054】
ヘッド駆動部60は、ヘッド6と、そのヘッド6と電気的に接続され、ヘッド6をコントロールするヘッドコントローラ61とを備えている。例えば、ヘッドコントローラ61は、キャリッジ3のハウジング3A内に設けられる。
【0055】
そして、ヘッドコントローラ61は、CPU51の制御のもと、ヘッド6からインクを吐出するタイミングや、ヘッド6から吐出されるインクの吐出量などを制御する。
【0056】
キャリッジ駆動部30は、駆動モータ11と、その駆動モータ11と電気的に接続され、駆動モータ11をコントロールする駆動コントローラ32とを備えている。例えば、駆動コントローラ32は、主制御基板5に搭載される。
【0057】
そして、駆動コントローラ32は、CPU51の制御のもと、駆動モータ11の回動量を制御してキャリッジ3の移動を制御する。
【0058】
用紙搬送部14は、駆動モータ15と、その駆動モータ15と電気的に接続され、駆動モータ15をコントロールする駆動コントローラ17とを備えている。例えば、駆動コントローラ17は、主制御基板5に搭載される。
【0059】
そして、駆動コントローラ17は、CPU51の制御のもと、駆動モータ15の回動量を制御して記録用紙MPの搬送を制御する。
【0060】
通信I/F部55は、不図示の通信ケーブルなどを介して接続されるホストコンピュータとの間で各種データの送受信を行うインタフェースであり、ホストコンピュータから印刷データを受信する。
【0061】
電力供給部56は、商用電源などからの電力を各構成部に必要な電力に変換して供給する。
【0062】
なお、前記したプログラムは、ROM52などに予め組み込んで提供される以外にも、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルで、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供されたり、ネットワーク経由で提供されたりすることが可能である。
【0063】
次に、画像形成装置1の処理動作について説明する。
【0064】
図6は、画像形成装置1における全体的な処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【0065】
図6に示すように、画像形成装置1は、まず、ステップS1において、CPU51の制御のもと、通信I/F部55を介してホストコンピュータからPDL形式の印刷データを受信すると、RAM53や不揮発性メモリ54に受信した印刷データを記憶する。
【0066】
続いて、画像形成装置1は、CPU51の制御のもと、ステップS1で受信した印刷データに基づく全ての画像形成が終了するまで、ステップS2およびステップS3の処理を繰り返し実行する。
【0067】
具体的には、ステップS2の処理では、画像形成装置1は、CPU51の制御のもと、RAM53に記憶したPDL形式の印刷データのデータ解析を行って、例えば、ページ単位の画像データを生成する。
【0068】
ステップS3の処理では、画像形成装置1は、ステップS2で生成したページ単位の画像データに基づいて、記録用紙MPに画像を形成するための画像形成処理を実行する。
【0069】
具体的には、ステップS3の画像形成処理では、画像形成装置1は、CPU51の制御のもと、センサユニット42のセンサコントローラ42Cが、各センサ42A、42Bの駆動を制御する処理や、キャリッジ駆動部30の駆動コントローラ32が、キャリッジ3の移動を制御する処理や、ヘッド駆動部60のヘッドコントローラ61がヘッド6の駆動を制御する処理や、用紙搬送部14の駆動コントローラ17が、記録用紙MPの搬送を制御する処理などを実行する。
【0070】
そして、ステップS1で受信した印刷データに基づく全ての画像形成が終了した場合に、ここでの処理を終了する。
【0071】
図7は、図6のステップS3の各種処理のうちのキャリッジ3の移動制御に係る処理の詳細を説明するためのフローチャートである。
【0072】
図7に示すように、画像形成装置1では、ページ単位の画像形成が終了するまで、ステップS31〜ステップS33の処理を繰り返し実行する。
【0073】
具体的には、ステップS31の処理では、CPU51の制御のもと、センサコントローラ42Cが、上下2段の各センサ42A、42Bからそれぞれ出力される計2つの出力信号(図4参照)を入力する。
【0074】
そして、ステップS32の処理では、センサコントローラ42Cが、ステップS31で入力した計2つの出力信号の「ON」/「OFF」のずれに基づいて、キャリッジ3の位置情報を算出し、該算出した位置情報をCPU51に受け渡す。
【0075】
そして、ステップS33の処理では、CPU51が、受け取った位置情報と、ページ単位の画像データとに基づいて、キャリッジ駆動部30の駆動コントローラ32に対してキャリッジ3の移動量を示す制御信号を出力する。すると、駆動コントローラ32が、入力した制御信号に基づいて駆動モータ11の回動量を制御してキャリッジ3の移動を制御する。
【0076】
即ち、第1の実施形態によれば、インクの影響を受けず、高精度(高分解能)なキャリッジの移動制御を行うことが可能であり、それにより、画像形成の品質(即ち、印刷品質)が高い画像形成装置を提供することができる。より具体的には、第1の実施形態によれば、高精度(高分解能)なキャリッジの移動制御としては、加工技術の限界とされるスリット孔のピッチ(例えば、「70μm」)の半分の幅単位でキャリッジの移動の調節を行うことができる。
【0077】
また、第1の実施形態によれば、上下2つのセンサを基板に配置する際に、上下2つの検出エリアが上下で同一ライン上に並ぶように配置すれば良いので、センサの位置決めを簡単化し、画像形成装置の製造を簡単化することができる。
【0078】
(第2の実施形態)
以下、第1の実施形態の画像形成装置1の変形例である第2の実施形態について図8〜図10を用いて説明する。
【0079】
図8は、第2の実施形態に係る画像形成装置1Aの筐体2内の概略的な構成を示す正面図であり、図9は、第2の実施形態の画像形成装置1Aにおけるスケール410およびセンサユニット420の詳細な構成を説明するための拡大平面図であり、図10は、図8に示すY−Y線より矢印方向に視た場合の断面図であり、センサユニット420の構成を説明するための図である。
【0080】
即ち、第2の実施形態の画像形成装置1Aでは、第1の実施形態の画像形成装置1と比較して、スケール410に形成されるスリット孔41bの形状およびレイアウト構成が異なるとともに、センサユニット420を構成するセンサ42Aの発光部421および受光部422と、センサ42Bの発光部421および受光部422の位置関係が異なっている。
【0081】
このため、以下の説明では、前記した相違点以外である図1と同様の符号を付した同一の構成については説明を省略する。
【0082】
図8および図9に示すように、スケール410には、このスケール410の長手方向、即ち、主走査方向Aで一列状に、同一の幅W1を有して上下方向Bに長い長方形状のスリット孔41bが所定のピッチPで形成されている。即ち、第2の実施形態のスケール410には、第1の実施形態のスケール41とは異なり、スケール孔群が1段のみ形成されている。
【0083】
そして、一つのスケール孔群41Dには、センサユニット420を構成する2つのセンサ42A、42Bが共通に対応付けて設けられている。この第2実施形態における2つのセンサ42A、42Bは、第1の実施形態における2つのセンサ42A、42Bと同様の構成を有している。
【0084】
しかしながら、第2の実施形態では、センサ42Aの発光面421aおよび受光面422aと、センサ42Bの発光面421aおよび受光面422aとが、図9に示すように、所定のピッチP(例:「70μm」)の4分の1の幅「P/4」(例:「17.5μm」)だけ主走査方向Aでずれる位置関係となるようにして設けられている。
【0085】
更に、発光面421aおよび受光面422aは、センサ毎に、キャリッジ3の一端面(上面)3aから上下方向Bにおける高さ位置が、同一となっている(図10参照)。
【0086】
なお、第2の実施形態の各センサ42A、42Bは、第1の実施形態の各センサ42A、42Bと略同様の出力信号(図4参照)をセンサコントローラ42C(図5参照)に出力する。
【0087】
第2の実施形態によれば、前記した第1の実施形態の効果と略同様の効果を奏することができる。即ち、第2の実施形態によれば、インクの影響を受けず、高精度(高分解能)なキャリッジの移動制御を行うことが可能であり、それにより、画像形成の品質(印刷品質)が高い画像形成装置を提供することができる。より具体的には、第2の実施形態によれば、高精度(高分解能)なキャリッジの移動制御としては、加工技術の限界とされるスリット孔のピッチ(例えば、「70μm」)の半分の幅単位でキャリッジの移動の調節を行うことができる。
【0088】
また、第2の実施形態によれば、スケールの製造を簡単化し、画像形成装置の製造を簡単化することができる。
【0089】
以上、例示的な実施形態に基づいて説明したが、本実施形態は、前記した実施形態により限定されるものではない。
【0090】
例えば、前記した第1の実施形態および第2の実施形態では、ずらし幅として所定のピッチPの4分の1の幅「P/4」を例にして説明したが、これに限定されず、その他のずらし幅であっても良い。即ち、所定のピッチPを所定数で割った分数値の幅だけずらせば良いものとする。
【0091】
前記した第1の実施形態では、2段のスリット孔群およびセンサを備える形態について説明したが、これに限定されず、3段以上のスリット孔群およびセンサを備える形態とすることも可能である。なお、その形態では、複数段の各スリット孔が、段階的に、所定のピッチPを所定数で割った分数値(例えば、P/4)の幅ずつずれるように形成する。
【0092】
また、同様に、前記した第2の実施形態では、1段のスリット孔群および2段のセンサを備える形態について説明したが、これに限定されず、1段のスリット孔群に3段以上のセンサを対応付けるような形態とすることも可能である。なお、その形態では、複数段のセンサが、段階的に、所定のピッチPを所定数で割った分数値(例えば、P/4)の幅ずつずれるように形成する。
【0093】
また、前記した実施形態では、スケール41に形成されるスリット孔41aの所定のピッチPとして加工技術の限界とされる最小のピッチ「70μm」を適用する場合について説明したが、これに限定されず、前記最小のピッチ「70μm」でスリット孔が形成されるスケールを実装した従来の画像形成装置に比べ、より高精度なキャリッジの移動制御を行うことができるピッチであれば良いものとする。
【0094】
また、前記した実施形態では、プリンタ機能(画像形成機能)のみを有するインクジェット式の画像形成装置の場合について説明したが、これ以外にも、例えば、プリンタ機能に加えて、ファクシミリ機能や、スキャナ機能などのその他の機能を有する複合機タイプの画像形成装置とすることも可能である。
【0095】
その他、前記した実施形態における画像形成装置のハードウェア構成や、スケールにおける各スリット孔の形状や、センサの種別や検知エリアの形状や、記録媒体およびインクの種別などは、単なる例として記載したものであり、本実施形態は、それらにより限定されない。
【符号の説明】
【0096】
1、1A 画像形成装置
2 筐体
3 キャリッジ
4 エンコーダ部
5 主制御基板(制御手段)
6 記録ヘッド(ヘッド)
7 ガイド軸
8 駆動プーリ
9 従動プーリ
10 タイミングベルト
11 駆動モータ
12 ブラケット
13 板ばね
14 用紙搬送部
15 駆動モータ
16 搬送ローラ
3A ハウジング
31 インクカートリッジ
41、410 スケール
41a、41b スリット孔
41A、41B スリット孔群
42、420 センサユニット
42A、42B センサ
42C センサコントローラ(制御手段)
421 発光部
422 受光部
420A、420B ホルダ部材
51 CPU
52 ROM
53 RAM
54 不揮発性メモリ
55 通信I/F部
56 電力供給部
BL バスライン
60 ヘッド駆動部
61 ヘッドコントローラ
30 キャリッジ駆動部
32 駆動コントローラ
17 駆動コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出するヘッドを備えるキャリッジと、
前記キャリッジの移動方向に沿って配置され、複数段にそれぞれ所定のピッチで複数のスリット孔が形成され、各段のスリット孔が段間で前記所定のピッチを所定数で割った分数値分ずらして形成されるリニア型のスケールと、
前記複数の段にそれぞれ対応付けて前記キャリッジに設けられ、前記キャリッジと共に移動可能であり、各段のスリット孔の有無を検出する複数のセンサと、
前記複数のセンサから出力される複数の信号に基づいて前記キャリッジの移動を制御する制御手段とを備える画像形成装置。
【請求項2】
前記複数のセンサは、共通の検出ラインの検出を行うように配置される請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
インクを吐出するヘッドを備えるキャリッジと、
前記キャリッジの移動方向に沿って配置され、所定のピッチで複数のスリット孔が形成されるリニア型のスケールと、
前記複数のスリット孔に共通に対応付けて前記キャリッジで複数段に配置され、各段のセンサが段間で前記所定のピッチを所定数で割った分数値分ずらして配置される複数のセンサと、
前記複数のセンサから出力される複数の信号に基づいて前記キャリッジの移動を制御する制御手段とを備える画像形成装置。
【請求項4】
前記複数のセンサは、検出ラインの幅が、前記段間で前記複数のスリット孔が形成される方向において前記分数値分ずれるように配置される請求項3に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−131101(P2012−131101A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−284690(P2010−284690)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(000006932)リコーエレメックス株式会社 (708)
【Fターム(参考)】