説明

画像形成装置

【課題】低温または高温の環境下において使用される場合であっても良好な画像形成が可能な画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置100は、像保持部材10と、像保持部材10からトナー像が転写される被転写部材20と、トナー像の移動方向において被転写部材20にトナー像が転写される転写部P1よりも下流側に配置され像保持部材10表面の残留物を除去するクリーニング装置30と、残留物が除去された像保持部材10表面に潤滑剤を供給する潤滑剤供給装置40と、潤滑剤を像保持部材10表面に塗布させる均し部材50とを備える。均し部材50は、当接層52と、当接層52が像保持部材10表面に当接するように当接層52を支持する支持層54とを含む。支持層54は、当接層52の像保持部材10表面に当接する側とは反対側に接合される。当接層52の線膨張係数は支持層54のそれよりも大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ、またはこれらの複合機等に内蔵される画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2006−251751号公報(特許文献1)および特開2005−25078号公報(特許文献2)に開示されるように、画像形成装置は、複写機、プリンタ、ファクシミリ、およびこれらの複合機等に内蔵される。画像形成装置は、像保持部材(感光体または中間転写体等)を含む。像保持部材は、トナー像を保持するとともにこのトナー像を所定の方向に向かって移動させる。
【0003】
像保持部材が保持するトナー像は、像保持部材から記録用紙または中間転写体などの被転写部材に転写される。一般的には、トナー像が像保持部材から被転写部材に転写された後、像保持部材の表面にクリーニングブレードが圧接される。クリーニングブレードの圧接によって、像保持部材の表面に残留するトナー等の残留物が除去される。
【0004】
トナー像を被転写部材に転写させた後において、像保持部材の表面にクリーニングブレードを圧接させて像保持部材の表面の残留物を除去するという作業が長く続けられる場合がある。この場合、クリーニングブレードが磨耗してクリーニングブレードのクリーニング性能が低下したり、像保持部材の表面が磨耗して像保持部材の寿命が短くなったりする。
【0005】
クリーニングブレードまたは像保持部材の表面における上記のような磨耗の発生を抑制するために、一般的には金属石鹸等の潤滑剤が用いられる。潤滑剤は、塗布ブラシ等を含む潤滑剤供給装置から、トナー像を被転写部材に転写させた後における像保持部材の表面に供給される。
【0006】
潤滑剤の作用によって、像保持部材の表面とクリーニングブレードとの間の摩擦抵抗が低減され、上記のような磨耗の発生が抑制される。また、潤滑剤の作用によって、像保持部材の表面におけるトナー像に対する離型性が高められる。像保持部材の表面に形成されたトナー像は、被転写部材に適切に転写される。
【0007】
クリーニングブレードを用いて像保持部材の表面に残留するトナー等の残留物を除去する前に、像保持部材の表面に塗布ブラシを接触させ、像保持部材の表面に潤滑剤を供給する場合がある。この場合、像保持部材の表面に残留しているトナー等の残留物は、塗布ブラシに付着するとともに塗布ブラシに次第に蓄積される。塗布ブラシが固形状の潤滑剤からその一部を掻き取る能力が次第に低下し、塗布ブラシは像保持部材の表面に粒状の潤滑剤を適切に付与することができなくなる。
【0008】
特開2006−251751号公報(特許文献1)に開示される画像形成装置においては、ブレード状の均し部材を用いることによって、像保持部材の表面に残留しているトナー等の残留物が塗布ブラシに付着することを抑制している。
【0009】
具体的には、特許文献1の画像形成装置においては、像保持部材の表面に残留しているトナー等の残留物がクリーニングブレードによって除去された後、塗布ブラシが像保持部材に接触される。塗布ブラシの像保持部材への接触によって、像保持部材の表面に潤滑剤が供給される。その後、像保持部材の表面に均し部材の先端部が圧接される。均し部材の先端部が像保持部材の表面に圧接されることによって、潤滑剤粒子は像保持部材の表面に膜状に塗布される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−251751号公報
【特許文献2】特開2005−25078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
画像形成装置は、一般的な室温よりも低い温度環境下または一般的な室温よりも高い温度環境下で使用される場合がある。本発明は、一般的な室温よりも低温または高温の環境下において使用される場合であっても、良好な画像形成を行なうことが可能な画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に基づく画像形成装置は、トナー像を保持するとともに上記トナー像を移動させる像保持部材と、上記像保持部材から上記トナー像が転写される被転写部材と、上記像保持部材が上記トナー像を移動させる方向において上記被転写部材に上記トナー像が転写される位置よりも下流側に設けられ、上記像保持部材の表面に残留する残留物を除去するクリーニングブレードと、上記残留物が除去された上記像保持部材の上記表面に潤滑剤を供給する潤滑剤供給装置と、上記像保持部材の上記表面に当接され、上記像保持部材の上記表面に供給された上記潤滑剤を上記像保持部材の上記表面に塗布させる均し部材と、を備え、上記均し部材は、当接層と、上記当接層が上記像保持部材の上記表面に当接するように上記当接層を支持する支持層と、を含み、上記支持層は、上記当接層の上記像保持部材の上記表面に当接する側とは反対側に接合され、上記当接層の線膨張係数は、上記支持層の線膨張係数よりも大きい。
【0013】
好ましくは、上記均し部材の上記当接層は、上記像保持部材の上記表面に対して、上記像保持部材が上記トナー像を移動させる方向に対向するカウンター方向に当接する。
【0014】
好ましくは、上記均し部材の上記当接層は、上記像保持部材の上記表面に対して、上記像保持部材が上記トナー像を移動させる方向に沿うトレーリング方向に当接する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、一般的な室温よりも低温または高温の環境下において使用される場合であっても、良好な画像形成を行なうことが可能な画像形成装置を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施の形態における画像形成装置の全体構成を模式的に示す断面図である。
【図2】実施の形態における画像形成装置に用いられる均し部材を拡大して示す断面図である。
【図3】実施の形態の画像形成装置に用いられる均し部材(当接層および支持層が相互に接合されていないと仮定するもの)が、低温環境下に置かれた際の様子を示す断面図である。
【図4】実施の形態における画像形成装置に用いられる均し部材(像保持部材に対してカウンター方向に当接するように配置される)が、低温環境下に置かれた際の様子を示す断面図である。
【図5】実施の形態における画像形成装置に用いられる均し部材の像保持部材に対する圧接力と当該均し部材が置かれる環境の温度変化との関係を示す図である。
【図6】従来の画像形成装置に用いられる従来の均し部材の像保持部材に対する圧接力と当該均し部材が置かれる環境の温度変化との関係を示す図である。
【図7】実施の形態における画像形成装置に用いられる均し部材(像保持部材に対してカウンター方向に当接するように配置される)が、高温環境下に置かれた際の様子を示す断面図である。
【図8】実施の形態の変形例における画像形成装置に用いられる均し部材(像保持部材に対してトレーリング方向に当接するように配置される)を拡大して示す断面図である。
【図9】実施例、比較例、および従来例に基づく均し部材の各性状およびこれらの均し部材を使用して行なった耐久試験結果から得られた評価を示す図である。
【図10】実施例に関して行なったシミュレーションに使用された均し部材および像保持部材を示す断面図である。
【図11】実施例に関して行なったシミュレーション結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に基づいた実施の形態および実施例について、以下、図面を参照しながら説明する。実施の形態および実施例の説明において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。実施の形態および実施例の説明において、同一の部品、相当部品に対しては、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。
【0018】
図1は、実施の形態における画像形成装置100の概略構成を示す模式図である。画像形成装置100は、像保持部材10、転写ベルト20(被転写部材)、クリーニング装置30、潤滑剤供給装置40、均し部材50、帯電装置60、露光装置70、および現像装置80を備える。
【0019】
像保持部材10は、ドラム状の感光体から構成され、矢印AR10方向に回転駆動される。像保持部材10は、複数のローラに巻き掛けられて回転駆動される無端ベルト状の部材から構成されてもよい。像保持部材10の表面は、像保持部材10の回転によって帯電装置60の前を通過する際、帯電装置60によって所定の極性に帯電される。
【0020】
露光装置70は、像保持部材10の回転方向(矢印AR10方向)における帯電装置60の下流側に位置する。帯電後の像保持部材10の表面が露光装置70の前を通過する際、像保持部材10の表面には露光装置70からレーザ光が照射される。レーザ光による露光によって、像保持部材10の表面に静電潜像が形成される。
【0021】
現像装置80は、像保持部材10の回転方向(矢印AR10方向)における露光装置70の下流側に位置する。静電潜像が形成された像保持部材10の表面は、現像装置80の現像ローラ82と接触する。所定の極性に帯電されたトナーは、現像ローラ82を通して、像保持部材10の表面に形成された静電潜像に供給される。
【0022】
静電潜像にトナーが付着することによって、像保持部材10の表面には現像された(可視化された)トナー像が形成される。トナー像は、像保持部材10によって保持されるとともに、像保持部材10が矢印AR10方向に回転することによって、転写ベルト20に向かって搬送される。
【0023】
転写ベルト20は、無端ベルト状に構成され、矢印AR20方向に所定の速度で回転駆動される。転写ベルト20と像保持部材10とは転写部P1において相互に接触するように配置される。像保持部材10の表面に形成され矢印AR10方向に移動するトナー像は、転写部P1における静電作用によって、転写ベルト20に転写(一次転写)される。転写ベルト20に転写されたトナー像は、二次転写装置(図示せず)および定着装置(図示せず)等を経て、所定の記録用紙(図示せず)に記録される。
【0024】
クリーニング装置30は、像保持部材10の回転方向(矢印AR10方向)における転写ベルト20の下流側に位置する。換言すると、クリーニング装置30は、像保持部材10がトナー像を移動させる方向(矢印AR10方向)において、転写部P1よりも下流側に設けられる。クリーニング装置30は、クリーニングブレード32および保持部材34を含む。保持部材34は、クリーニングブレード32の先端部が像保持部材10の表面に当接するようにクリーニングブレード32を保持する。
【0025】
像保持部材10から転写ベルト20にトナー像が転写された後において、像保持部材10の表面に残存するトナーなどの残留物は、クリーニングブレード32によって像保持部材10の表面から除去される。像保持部材10の表面から除去されたトナーは、廃棄または再利用される。
【0026】
潤滑剤供給装置40は、像保持部材10の回転方向(矢印AR10方向)におけるクリーニング装置30の下流側に位置する。潤滑剤供給装置40は、塗布部材42、固形潤滑剤44、および支持部材46を含む。塗布部材42は、ブラシ部材からロール状に形成される。塗布部材42に用いられるブラシ部材は、たとえばナイロン、レーヨン、またはアクリル等の合成繊維から構成される。塗布部材42に用いられるブラシ部材は、導電性を有していてもよく、絶縁性を有していてもよい。
【0027】
塗布部材42は、矢印AR10方向に回転する像保持部材10の表面に対して摺擦するように、矢印AR42方向(いわゆるカウンター方向)に回転する。塗布部材42の回転速度は、像保持部材10の回転速度に比べて遅い。塗布部材42の像保持部材10に対する線速度比は、たとえば0.4倍である。
【0028】
塗布部材42を挟んで像保持部材10の反対側に、固形潤滑剤44が設けられる。固形潤滑剤44は、たとえばステアリン酸亜鉛の粉体を溶融成形することによって得られる。ステアリン酸亜鉛の粉体を溶融成形したものは、脆く割れやすい。固形潤滑剤44を作製する際には、板金成形された枠状の保持部材(図示せず)を別途準備し、ステアリン酸亜鉛の粉体を溶融成形したものにこの保持部材を接着するとよい。
【0029】
固形潤滑剤44は、塗布部材42とは反対側から支持部材46によって支持される。塗布部材42は、支持部材46からの押圧を受けて、固形潤滑剤44および像保持部材10の双方に対して所定の押圧力で接触する。塗布部材42が回転することによって固形潤滑剤44から粒子状の潤滑剤(潤滑剤粒子ともいう)が掻き取られる。塗布部材42によって掻き取られた潤滑剤粒子は、塗布部材42と像保持部材10との摺擦によって像保持部材10の表面に供給される。
【0030】
均し部材50は、像保持部材10の回転方向(矢印AR10方向)における潤滑剤供給装置40の下流側に位置する。均し部材50は、像保持部材10の表面に供給された潤滑剤粒子を、像保持部材10の表面に塗布させる。均し部材50は、像保持部材10の表面に当接する当接層52と、当接層52の像保持部材10の表面に当接する方とは反対側に積層された支持層54とからなる2つの層を少なくとも含む。
【0031】
図2は、画像形成装置100における均し部材50を拡大して示す断面図である。図2に示すように、均し部材50の当接層52は、像保持部材10の表面に対して、像保持部材10がトナー像を移動させる方向(矢印AR10方向)に対向するいわゆるカウンター方向に当接している。
【0032】
当接層52および支持層54は、ポリウレタンゴム等からなるゴム製の部材からそれぞれブレード状(薄板状)に構成される。当接層52の線膨張係数(熱膨張係数ともいう)は、支持層54の線膨張係数よりも大きい。支持層54は、当接層52の像保持部材10の表面に当接する側とは反対の面に接合される。当接層52は、支持層54によって支持される。支持層54は、保持部材53によって支持される。
【0033】
当接層52および支持層54をそれぞれ有する均し部材50は、たとえば次のように製造されることができる。まず、均し部材50の形状に対応した直方体状の凹部を有するドラムが準備される。当該凹部内に、当接層52を形成するための溶融したポリウレタンゴム等の原料が、当接層52を形成する分量だけ均一に流し込まれる。ドラムが遠心されることによって、当該凹部内においてポリウレタンゴム等の原料が硬化し、当該凹部内に当接層52が成形される。
【0034】
次に、上記の凹部内に形成された当接層52を上塗りするように、支持層54を形成するための溶融したポリウレタンゴム等の原料が、支持層54を形成する分量だけ均一に流し込まれる。ドラムが遠心されることによって、当該凹部内の当接層52の上層において、ポリウレタンゴム等の原料が硬化する。当該凹部内において、支持層54が当接層52の上層に成形され、均し部材50が得られる。
【0035】
当接層52の線膨張係数を支持層54の線膨張係数よりも大きくするためには、当接層52および支持層54をそれぞれ構成する原料およびその性質、支持層54を形成するための原料を当接層52上に流し込む際の当接層52の乾燥管理および温度管理、ならびに支持層54を形成するための原料の温度管理等を、当接層52および支持層54の大きさおよび形状などに応じて最適化するとよい。
【0036】
像保持部材10の表面に供給された潤滑剤粒子は、当接層52の像保持部材10の表面に対する当接(押圧)によって、均一な膜状に形成されることが可能となる。均一な膜状に形成された潤滑剤の作用によって、像保持部材10の表面における離型性を向上させることができる。
【0037】
図1を再び参照して、良好な潤滑剤の皮膜が形成された像保持部材10には、上述と同様に、帯電装置60、露光装置70、および現像装置80を通してトナー像が形成される。当該トナー像は、潤滑剤の作用によって良好に像保持部材10の表面から離れ、転写ベルト20に対して適切に転写されることができる。像保持部材10が以上のようなサイクルを繰り返すことによって、画像形成装置100は、所定の記録用紙等に対して画像情報を連続して形成することが可能となる。
【0038】
(作用・効果)
(低温環境下)
図3〜図5を参照して、実施の形態における画像形成装置100(図1参照)が、一般的な室温(たとえば18℃〜20℃)よりも低い温度環境下で使用される場合の作用および効果について説明する。画像形成装置100によれば、一般的な室温よりも低い環境下において使用される場合であっても、良好な画像形成を行なうことが可能となる。具体的には、上述のとおり、均し部材50は、当接層52および支持層54を含む。当接層52の線膨張係数は、支持層54の線膨張係数よりも大きい。
【0039】
図3を参照して、仮に、当接層52および支持層54が相互に接合されていないとする。均し部材50(当接層52および支持層54)が低温環境下に置かれた場合、当接層52および支持層54はそれぞれ独立して熱収縮する。当接層52は、矢印AR52に示すように寸法L52だけ収縮し、支持層54は、矢印AR54に示すように寸法L54だけ収縮する。
【0040】
上述のとおり、当接層52の線膨張係数は、支持層54の線膨張係数よりも大きい。当接層52には、支持層54に比べてより多く縮もうとする力が作用するため、寸法L52>寸法L54の関係が成立する。
【0041】
図4を参照して、画像形成装置100においては、実際には当接層52および支持層54が相互に接合されている。画像形成装置100(均し部材50)が低温環境下に置かれた場合、当接層52は支持層54に比べてより多く縮もうとする。均し部材50は、矢印AR1に示すように当接層52側(像保持部材10側)に向かって撓む。均し部材50(当接層52)の像保持部材10に対する圧接力は、当該撓みによって増大する。
【0042】
図5を参照して、より具体的には、均し部材50(当接層52)の像保持部材10に対する圧接力(N/m)は、均し部材50が置かれる温度環境に応じて、ラインL100に示すように変化する。均し部材50の置かれる温度が低くなるほど、均し部材50が像保持部材10側に向かって撓む。均し部材50(当接層52)の像保持部材10に対する圧接力(N/m)は増大する。
【0043】
均し部材50の上流側に配置されるブラシ状の塗布部材42(図1参照)は、温度が低下することによって剛性が高くなる。塗布部材42の剛性が高くなることによって、塗布部材42はより多くの潤滑剤粒子を固形潤滑剤44から掻き取る。均し部材50の先端には、(室温環境下に比べて)多量の潤滑剤粒子が供給される。これに対して、上述のとおり、当接層52の像保持部材10に対する圧接力は増大しているため、像保持部材10の表面に供給された多量の潤滑剤粒子は、均し部材50によって適切に圧接されることができる。
【0044】
図5中において、潤滑剤粒子の皮膜化に必要な圧接力は、ラインL2によって示される。ラインL2に示されるように、画像形成装置100(像保持部材10)の置かれる温度が低くなるほど、潤滑剤粒子の皮膜化に必要な圧接力は大きくなる。また、均し部材50の像保持部材10に対する圧接力は、低温環境下において、潤滑剤粒子の皮膜化に必要な圧接力よりも大きい。換言すると、均し部材50の像保持部材10に対する圧接力を示すラインL100は、低温環境下においても、潤滑剤粒子の皮膜化に必要な圧接力を示すラインL2と適切な間隔を空けてその上方に推移している。
【0045】
したがって、像保持部材10の表面に供給された潤滑剤粒子は、均し部材50(当接層52)からの適切な圧接を受けることによって、良好に皮膜化されることが可能となる。潤滑剤粒子は、粒子の状態を維持したまま均し部材50の先端部を通過することはない。画像形成装置100が低温環境下において使用される場合であっても、良好に皮膜化された潤滑剤粒子の作用によって、像保持部材10の表面のトナー像の離型性が低下したり、クリーニング不良が発生したりすることは抑制される。画像形成装置100によれば、一般的な室温よりも低い環境下において使用される場合であっても、良好な画像形成を行なうことが可能となる。
【0046】
一方、従来の画像形成装置(特許文献1:特開2006−251751号公報参照)は、低温環境下において良好な画像形成を行なうことが困難となる。具体的には、従来の画像形成装置においては、均し部材が、本実施の形態における均し部材50とは異なり単一の部材から構成される。従来の均し部材が低温環境下に置かれた場合、従来の均し部材は、その長さがほとんど変わらないか、若しくは図4中の矢印AR2に示すように直線状にわずかに収縮する。従来の均し部材が低温環境下に置かれた場合、従来の均し部材の像保持部材に対する圧接力は、変化しないか、若しくはわずかに減少する。
【0047】
図6を参照して、より具体的には、従来の均し部材の像保持部材10に対する圧接力(N/m)は、従来の均し部材が置かれる温度(℃)が変化したとしても、ラインL200に示すようにほとんど変化しない。従来の均し部材の置かれる温度が低くなったとしても、従来の均し部材は像保持部材10側に向かって撓むことがなく、像保持部材10に対する圧接力(N/m)は増大しない(ラインL200とラインL2との間隔が小さくなる)。
【0048】
結果として、温度低下によって剛性が高くなったブラシ状の塗布部材から多量に供給された潤滑剤粒子は、十分に圧接されることなくそのほとんどが従来の均し部材をすり抜けてしまう。従来の画像形成装置が低温環境下に置かれた場合には、潤滑剤の皮膜が像保持部材10の表面に適切に形成されず、良好な画像形成を行なうことは困難となる。
【0049】
従来の画像形成装置において、像保持部材の表面に供給された潤滑剤粒子が良好に皮膜化されるために、予め像保持部材の表面に対する均し部材の圧接力を高く設定することが考えられる。この場合、室温環境下においても、均し部材の像保持部材に対する圧接力が高い状態となる。均し部材と像保持部材との間の摩擦抵抗も高い状態となる。予め像保持部材の表面に対する均し部材の圧接力を高く設定することによって、(特に室温環境下において)像保持部材を駆動させるためのトルクが増大するだけでなく、均し部材および像保持部材の表面の磨耗も増大する。均し部材に永久ひずみが発生し易くなり、安定した画像形成を行なうことはやはり困難となる。
【0050】
(高温環境下)
図7(および図5)を参照して、実施の形態における画像形成装置100(図1参照)が、一般的な室温(たとえば18℃〜20℃)よりも高い温度環境下で使用される場合の作用および効果について説明する。画像形成装置100によれば、一般的な室温よりも高い環境下において使用される場合であっても、良好な画像形成を行なうことが可能となる。具体的には、上述のとおり、均し部材50は、当接層52および支持層54を含む。当接層52の線膨張係数は、支持層54の線膨張係数よりも大きい。
【0051】
図7に示すように、画像形成装置100が高温環境下に置かれた場合には、当接層52には、支持層54に比べてより多く伸びようとする力が作用する。低温環境下の場合(図4参照)とは反対に、均し部材50は図7中の矢印AR3に示すように支持層54側に向かって(像保持部材10から離れる方向に)撓む。均し部材50の置かれる温度が高くなるほど、均し部材50(当接層52)の像保持部材10の表面に対する圧接力は減少する(図5中のラインL100参照)。
【0052】
画像形成装置100が高温環境下に置かれた場合、均し部材50の上流側に配置されるブラシ状の塗布部材42(図1参照)は、温度が上昇することによって剛性が低くなる。塗布部材42が固形潤滑剤44から掻き取る潤滑剤粒子の量も少なくなる。均し部材50の先端には、(室温環境下に比べて)少量の潤滑剤粒子が供給される。
【0053】
図5中のラインL2に示されるように、画像形成装置100(像保持部材10)の置かれる温度が高くなるほど、潤滑剤粒子の皮膜化に必要な圧接力は小さくなる。均し部材50(当接層52)の像保持部材10の表面に対する圧接力(図5中のラインL100参照)は減少するものの、均し部材50の像保持部材10に対する圧接力は、高温環境下においても、潤滑剤粒子の皮膜化に必要な圧接力よりも大きい。均し部材50の像保持部材10に対する圧接力を示すラインL100は、高温環境下においても、潤滑剤粒子の皮膜化に必要な圧接力を示すラインL2と適切な間隔を空けてその上方に推移している。
【0054】
したがって、像保持部材10の表面に供給された潤滑剤粒子は、均し部材50(当接層52)からの適切な圧接を受けることによって、良好に皮膜化されることが可能となる。潤滑剤粒子は、粒子の状態を維持したまま均し部材50の先端部を通過することはない。画像形成装置100が高温環境下において使用される場合であっても、良好に皮膜化された潤滑剤粒子の作用によって、像保持部材10の表面におけるトナー像の離型性が低下したり、クリーニング不良が発生したりすることは抑制される。画像形成装置100によれば、一般的な室温よりも高い環境下において使用される場合であっても、良好な画像形成を行なうことが可能となる。
【0055】
画像形成装置100が高温環境下で使用される場合、画像形成装置100によれば、均し部材50におけるめくれ現象の発生を抑制することも可能となる。図7を再び参照して、めくれ現象とは、図7中の矢印AR10方向に回転駆動される像保持部材10に当接された均し部材50の先端が、像保持部材10との摩擦によって同図中の矢印AR方向に反転する(反り返る)現象のことである。
【0056】
図5を再び参照して、均し部材50の像保持部材10の表面上におけるめくれ現象に対する耐力は、ラインL3によって示される。ラインL3に示されるように、均し部材50の置かれる温度が高くなるほど、均し部材50の像保持部材10の表面上におけるめくれ現象に対する耐力は低くなる。換言すると、均し部材50の像保持部材10に対する圧接力が比較的小さな値であっても、めくれ現象が発生し易くなる。
【0057】
これに対して、図5中のラインL100に示すように、均し部材50の置かれる温度が高くなるほど、均し部材50の像保持部材10に対する圧接力は、均し部材50が支持層54側に向かって撓むことによって減少する。均し部材50の像保持部材10に対する圧接力を示すラインL100は、高温環境下においても、均し部材50の像保持部材10に対するめくれ耐力を示すラインL3と適切な間隔を空けてその下方に推移している。したがって、高温環境下で使用される場合であっても、画像形成装置100によれば、均し部材50におけるめくれ現象の発生が抑制され、良好な画像形成を行なうことが可能となる。
【0058】
一方、従来の画像形成装置(特許文献1:特開2006−251751号公報参照)は、高温環境下においては良好な画像形成を行なうことが困難となる。具体的には、従来の画像形成装置においては、均し部材が、本実施の形態における均し部材50とは異なり単一の部材から構成される。従来の均し部材が高温環境下におかれた場合、従来の均し部材は、その長さがほとんど変化しないか、若しくは図7中の矢印AR4に示すように直線状にわずかに伸長する。
【0059】
図6を再び参照して、従来の均し部材の像保持部材10に対する圧接力(N/m)は、従来の均し部材が置かれる温度(℃)が変化したとしても、ラインL200に示すようにほとんど変化しない。従来の均し部材の置かれる温度が高くなったとしても、均し部材は像保持部材10から離れる方向に向かって撓むことはなく、像保持部材10に対する圧接力(N/m)は減少しない。均し部材の像保持部材10に対する圧接力を示すラインL200は、高温環境下においては、均し部材50の像保持部材10に対するめくれ耐力を示すラインL3と接近しており、めくれ現象が発生し易くなっている。
【0060】
高温環境下に置かれることによって従来の均し部材が直線状に伸長した場合には、均し部材と像保持部材10の表面との接触面積が増大し、均し部材の像保持部材10の表面に対する摩擦抵抗が増大する。その結果、めくれ現象が発生し易くなるだけでなく、均し部材の磨耗が促進される。均し部材に永久ひずみが発生し易くなるだけでなく、均し部材の耐用期間も短くなり、良好な画像形成を行なうことは困難となる。
【0061】
[実施の形態の変形例]
図8を参照して、上述の実施の形態の変形例における画像形成装置101ついて説明する。ここでは、上述の実施の形態との相違点について説明する。図8は、本変形例における画像形成装置101に用いられる均し部材50Aを示す断面図である。上述のとおり、実施の形態の画像形成装置100(図2参照)における当接層52は、像保持部材10の表面に対して、像保持部材10がトナー像を移動させる方向(矢印AR10方向)に対向するいわゆるカウンター方向に当接している。
【0062】
図8に示すように、本変形例における均し部材50Aの当接層52は、像保持部材10の表面に対して、像保持部材10がトナー像を移動させる方向(矢印AR10方向)に沿ういわゆるトレーリング方向に当接している。
【0063】
(作用・効果)
(低温環境下)
本変形例における画像形成装置101が、一般的な室温(たとえば18℃〜20℃)よりも低い温度環境下で使用される場合の作用および効果について説明する。画像形成装置101によれば、上述の実施の形態における画像形成装置100と同様に、一般的な室温よりも低い環境下において使用される場合であっても、良好な画像形成を行なうことが可能となる。
【0064】
具体的には、当接層52が像保持部材10の表面に対してトレーリング方向に当接する均し部材50Aが、一般的な室温よりも低い温度環境下に置かれたとする。当接層52の線膨張係数は、支持層54の線膨張係数よりも大きいため、均し部材50Aは、矢印AR5方向(当接層52側)に向かって撓む。均し部材50A(当接層52)の像保持部材10に対する圧接力は、当該撓みによって増大する。
【0065】
上述のとおり、均し部材50Aの上流側に配置されるブラシ状の塗布部材42(図1参照)は、温度が低下することによって剛性が高くなる。均し部材50Aの先端には、(室温環境下に比べて)多量の潤滑剤粒子が供給される。これに対して、当接層52の像保持部材10に対する圧接力は増大しているため、像保持部材10の表面に供給された多量の潤滑剤粒子は、均し部材50Aによって適切に圧接されることができる。
【0066】
像保持部材10の表面に供給された潤滑剤粒子は、均し部材50A(当接層52)からの適切な圧接を受けることによって、良好に皮膜化されることが可能となる。潤滑剤粒子は、粒子の状態を維持したまま均し部材50Aの先端部を通過することはない。画像形成装置101が低温環境下において使用される場合であっても、良好に皮膜化された潤滑剤粒子の作用によって、像保持部材10の表面のトナー像の離型性が低下したり、クリーニング不良が発生したりすることは抑制される。画像形成装置101によれば、一般的な室温よりも低い環境下において使用される場合であっても、良好な画像形成を行なうことが可能となる。
【0067】
一方、従来の画像形成装置において、本変形例における均し部材50Aと同様に、均し部材が像保持部材10の表面に対してトレーリング方向に当接するように配置されたとする。この従来の画像形成装置が低温環境下に置かれた場合、従来の均し部材の長さはほとんど変わらないか、若しくは図8中の矢印AR6に示すように直線状に収縮する。従来の均し部材が低温環境下に置かれた場合、従来の均し部材の像保持部材に対する圧接力は、変化しないか、若しくはわずかに減少する。
【0068】
結果として、温度低下によって剛性が高くなったブラシ状の塗布部材から多量に供給された潤滑剤粒子は、圧接されることなくそのほとんどが従来の均し部材をすり抜けてしまう。従来の画像形成装置が低温環境下に置かれた場合には、潤滑剤の皮膜が像保持部材10の表面に適切に形成されず、良好な画像形成を行なうことは困難となる。
【0069】
(高温環境下)
本変形例における画像形成装置101が、一般的な室温(たとえば18℃〜20℃)よりも高い温度環境下で使用される場合の作用および効果について説明する。画像形成装置101によれば、上述の実施の形態における画像形成装置100と同様に、一般的な室温よりも高い環境下において使用される場合であっても、良好な画像形成を行なうことが可能となる。
【0070】
具体的には、当接層52が像保持部材10の表面に対してトレーリング方向に当接する均し部材50Aが、一般的な室温よりも高い温度環境下に置かれたとする。当接層52の線膨張係数は、支持層54の線膨張係数よりも大きいため、均し部材50Aは、矢印AR7方向(支持層54側)に向かって撓む。均し部材50A(当接層52)の像保持部材10の表面に対する圧接力は、当該撓みによって減少する。
【0071】
画像形成装置101が高温環境下に置かれた場合、ブラシ状の塗布部材42(図1参照)は、温度が上昇することによって剛性が低くなる。塗布部材42が固形潤滑剤44から掻き取る潤滑剤粒子の量も少なくなる。均し部材50Aの先端には、(室温環境下に比べて)少量の潤滑剤粒子が供給される。
【0072】
上述の実施の形態において述べたとおり、温度が高くなるほど、潤滑剤粒子の皮膜化に必要な圧接力は小さくなる。均し部材50A(当接層52)の像保持部材10の表面に対する圧接力は減少するものの、均し部材50Aの像保持部材10に対する圧接力は、潤滑剤粒子の皮膜化に必要な圧接力よりも大きくなる。
【0073】
したがって、像保持部材10の表面に供給された潤滑剤粒子は、均し部材50A(当接層52)からの圧接を受けることによって、良好に皮膜化されることが可能となる。潤滑剤粒子は、粒子の状態を維持したまま均し部材50Aの先端部を通過することはない。画像形成装置101が高温環境下において使用される場合であっても、良好に皮膜化された潤滑剤粒子の作用によって、像保持部材10の表面のトナー像の離型性が低下したり、クリーニング不良が発生したりすることは抑制される。画像形成装置101によれば、一般的な室温よりも高い環境下において使用される場合であっても、良好な画像形成を行なうことが可能となる。
【0074】
画像形成装置101が高温環境下で使用される場合、画像形成装置101によれば、均し部材50Aにおけるめくれ現象の発生を抑制することも可能となる。均し部材50Aの置かれる温度が高くなるほど、均し部材50Aの像保持部材10に対する圧接力は、均し部材50Aが支持層54側に向かって(図8中の矢印AR7方向に)撓むことによって減少する。したがって、高温環境下で使用される場合であっても、画像形成装置101によれば、均し部材50Aにおけるめくれ現象の発生が抑制され、良好な画像形成を行なうことが可能となる。
【0075】
一方、従来の画像形成装置において、本変形例における均し部材50Aと同様に、均し部材が像保持部材10の表面に対してトレーリング方向に当接するように配置されたとする。この従来の画像形成装置が高温環境下に置かれた場合、従来の均し部材は、その長さがほとんど変化しないか、若しくは図8中の矢印AR8に示すように直線状にわずかに伸長する。従来の均し部材の置かれる温度が高くなったとしても、均し部材は像保持部材10から離れる方向(矢印AR7方向)に向かって撓むことはなく、像保持部材10に対する圧接力(N/m)は減少しない。
【0076】
高温環境下に置かれることによって従来の均し部材が直線状に伸長した場合には、均し部材と像保持部材10の表面との接触面積が増大し、均し部材の像保持部材10の表面に対する摩擦抵抗が増大する。その結果、めくれ現象が発生し易くなるだけでなく、均し部材の磨耗が促進される。均し部材に永久ひずみが発生し易くなるだけでなく、均し部材の耐用期間も短くなり、良好な画像形成を行なうことは困難となる。
【0077】
[実施例]
図9を参照して、実施例1〜3、その比較例、およびその従来例に基づき行なった耐久試験結果についてそれぞれ説明する。実施例1〜3は、上述の実施の形態における画像形成装置100(図1参照)に基づいている。耐久試験においては、まず、図9中の実施例1〜3、比較例、および従来例に示される5種類の均し部材を準備した。5種類の均し部材を市販の複写機(コニカミノルタ社製 Bizhub PRO C6500)にそれぞれ組み込んで、耐久試験を行なった。
【0078】
耐久試験に使用された複写機においては、上述の実施の形態における画像形成装置100(図1参照)と同様に、転写ベルト20への転写位置(転写部P1)の下流にクリーニング装置30を配置した。クリーニング装置30の下流に潤滑剤供給装置40を配置した。潤滑剤供給装置40の下流に、実施例1〜3、比較例、および従来例における均し部材をそれぞれ配置した。実施例1〜3、比較例、および従来例における各均し部材は、図2に示す態様と同様に、像保持部材10の表面に対して、像保持部材10がトナー像を移動させる方向(矢印AR10方向)に対向するいわゆるカウンター方向に当接させた。
【0079】
実施例1〜3における均し部材は、ポリウレタン製のゴムから厚さ2mmのブレード状に作製した。実施例1〜3における均し部材の支持層は、厚さがいずれも1mmであり、線膨張係数がいずれも1.2×10−5(℃)である。
【0080】
実施例1〜3における均し部材の当接層は、厚さがいずれも1mmであり、線膨張係数については、実施例1が5.5×10−5(℃)、実施例2が1.1×10−4(℃)、実施例3が1.6×10−4(℃)である。実施例1〜3のいずれにおいても、当接層52の線膨張係数は支持層54の線膨張係数よりも大きい。
【0081】
比較例における均し部材は、ポリウレタン製のゴムから厚さ2mmのブレード状に作製した。比較例における均し部材の支持層は、厚さが1mmであり、線膨張係数が1.6×10−4(℃)である。比較例における均し部材の当接層は、厚さが1mmであり、線膨張係数が1.2×10−5(℃)である。比較例における均し部材においては、当接層の線膨張係数が、支持層の線膨張係数よりも小さい。比較例における均し部材は、実施例3における均し部材に対して、当接層および支持層における線膨張係数の大小関係が反対である。
【0082】
従来例における均し部材は、ポリウレタン製のゴムから、一層構造のブレード状に作製した。ブレード状に作製した層は、厚さが2mmであり、線膨張係数が1.2×10−5(℃)である。従来例における均し部材は、JIS(Japanese Industrial Standards)規格に基づく硬度(JIS−A硬度)が72度であり、反発弾性が25%である。
【0083】
実施例1〜3における均し部材の像保持部材に対する圧接力は、いずれも25N/mである。比較例における均し部材の像保持部材に対する圧接力は、35N/mである。従来例における均し部材の像保持部材に対する圧接力は、30N/mである。実施例1〜3における圧接力よりも、比較例および従来例における圧接力の方を高く設定した理由は、低温環境下における潤滑剤の均し部材に対するすり抜けを抑制し、クリーニング性を高くするためである。
【0084】
耐久試験としては、2種類の試験を行なった。その1つ(試験1)は、23℃×65%RHの環境下において、面積率が5%のチャートを、モノクロモードの4枚間欠で10万枚プリントした。その後さらに、23℃×65%RHの環境下において、ハーフトーン画像を1枚プリントした。
【0085】
他の1つ(試験2)は、試験1と同様に、23℃×65%RHの環境下において、面積率が5%のチャートを、モノクロモードの4枚間欠で10万枚プリントした。その後さらに、10℃×15%RHの環境下(低温環境下)において、ハーフトーン画像を1枚プリントした。
【0086】
試験1および試験2における評価として、それぞれプリントされたハーフトーン画像における濃度ムラの発生の有無を調べた。プリントされたハーフトーン画像において、良好なハーフトーン画像が形成されたものを評価Aとして図示している。画像上は認識可能なハーフトーン画像が形成されたものを評価Bとして図示している。画像上は認識できるものの、市場においてはクレームの対象となる可能性があるハーフトーン画像が形成されたものを評価Cとして図示している。
【0087】
実施例1〜3における均し部材を使用した耐久試験結果としては、得られたハーフトーン画像には濃度ムラがほとんど発生せず、いずれも評価Aまたは評価Bとなった。一方、比較例および従来例における均し部材を使用した耐久試験結果としては、得られたハーフトーン画像にはいずれも濃度ムラが発生し、評価Bまたは評価Cとなった。
【0088】
実施例1〜3、比較例、および従来例の比較から、実施例1〜3における均し部材を使用することによって、潤滑剤による良好な皮膜が形成され、高いクリーニング性を長期間維持することが可能となると考えられる。
【0089】
ここで、一般的な室温環境下(たとえば約25℃)では、上記の従来例としての均し部材であっても、耐久試験の開始から耐久試験の終了時までの間、所望の摩擦係数を得ることができる。しかしながら、低温環境下(たとえば約5℃)では、上記の従来例としての均し部材は、均し部材の磨耗および低温環境という負荷条件が重畳的に揃うため、耐久試験の終了時には所望の摩擦係数を得ることができない。
【0090】
一方、上記の実施例1〜3としての均し部材は、一般的な室温環境下(たとえば約25℃)では、耐久試験の開始から耐久試験の終了時までの間、所望の摩擦係数を得ることができる。加えて、低温環境下において均し部材の磨耗および低温環境という負荷条件が重畳的に揃った場合であっても、耐久試験の終了時には所望の摩擦係数を得ることができる。これは、実施例1〜3としての均し部材は、均し部材としての磨耗が発生したとしても像保持部材の表面への圧接力が向上するためである。
【0091】
図10および図11を参照して、本実施例に関連するシミュレーション結果について説明する。図10に示すように、自由長L50が9mm、当接層52の厚さT52が1mm、当接層52の厚さT54が1mm、ヤング率が6MPaの均し部材50を準備し、像保持部材10の表面に当接させた。均し部材50の厚さは全体として2mmであり、均し部材50(当接層52)の像保持部材10に対する当接角θは20°である。
【0092】
図11は、この均し部材50および像保持部材10が配置される環境の温度を25℃から50℃に変化させた際の、線膨張係数差と当接力増減率との関係を示している。図11に示すシュミレーション結果から、線膨張係数差が1.4×10−4(N/m)だけ大きくなる毎に、均し部材50(当接層52)の像保持部材10に対する当接力は20%だけ減少することがわかる。当該シュミレーションの結果に基づき、像保持部材10の表面に潤滑剤粒子による良好な皮膜が形成されるように、像保持部材10に対する均し部材50の当接力が設定されるとよい。
【0093】
以上、本発明に基づいた実施の形態および実施例について説明したが、今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0094】
10 像保持部材、20 転写ベルト(被転写部材)、30 クリーニング装置、32 クリーニングブレード、34,53 保持部材、40 潤滑剤供給装置、42 塗布部材、44 固形潤滑剤、46 支持部材、50,50A 均し部材、52 当接層、54 支持層、60 帯電装置、70 露光装置、80 現像装置、82 現像ローラ、100,101 画像形成装置、AR,AR1,AR2,AR3,AR4,AR5,AR6,AR7,AR8,AR10,AR20,AR42,AR52,AR54 矢印、L2,L3,L100,L200 ライン、L50 自由長、L52,L54 寸法、P1 転写部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を保持するとともに前記トナー像を移動させる像保持部材と、
前記像保持部材から前記トナー像が転写される被転写部材と、
前記像保持部材が前記トナー像を移動させる方向において前記被転写部材に前記トナー像が転写される位置よりも下流側に設けられ、前記像保持部材の表面に残留する残留物を除去するクリーニング装置と、
前記残留物が除去された前記像保持部材の前記表面に潤滑剤を供給する潤滑剤供給装置と、
前記像保持部材の前記表面に当接され、前記像保持部材の前記表面に供給された前記潤滑剤を前記像保持部材の前記表面に塗布させる均し部材と、
を備え、
前記均し部材は、当接層と、前記当接層が前記像保持部材の前記表面に当接するように前記当接層を支持する支持層と、を含み、
前記支持層は、前記当接層の前記像保持部材の前記表面に当接する側とは反対側に接合され、
前記当接層の線膨張係数は、前記支持層の線膨張係数よりも大きい、
画像形成装置。
【請求項2】
前記均し部材の前記当接層は、前記像保持部材の前記表面に対して、前記像保持部材が前記トナー像を移動させる方向に対向するカウンター方向に当接する、
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記均し部材の前記当接層は、前記像保持部材の前記表面に対して、前記像保持部材が前記トナー像を移動させる方向に沿うトレーリング方向に当接する、
請求項1に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−163887(P2012−163887A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−25833(P2011−25833)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】