画像形成装置
【課題】ロール紙の斜行を防止可能な画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置1は、ロール紙6を記録媒体として用い、該ロール紙6を回転させるとともに搬送ローラ10を回転させることによって用紙部6bの搬送を行う搬送期間を間欠的に繰り返しながら用紙部6bに記録を行う。画像形成装置1は、搬送期間のうち用紙部6bの加速期間後において、用紙部6bに張力を加える第1の制御モードと、用紙部6bに張力を加えない第2の制御モードと、を選択可能な制御部100を有する。
【解決手段】画像形成装置1は、ロール紙6を記録媒体として用い、該ロール紙6を回転させるとともに搬送ローラ10を回転させることによって用紙部6bの搬送を行う搬送期間を間欠的に繰り返しながら用紙部6bに記録を行う。画像形成装置1は、搬送期間のうち用紙部6bの加速期間後において、用紙部6bに張力を加える第1の制御モードと、用紙部6bに張力を加えない第2の制御モードと、を選択可能な制御部100を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール紙に記録を行う画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置には、A2(JIS規格)以上の大判の記録媒体に画像の記録を行う大判画像形成装置がある。大判画像形成装置には、記録媒体として、単票紙以外にもロール紙などの連続紙が用いられるものがある。
【0003】
ロール紙は、長尺の用紙がロール状に巻かれたものである。一般的に、ロール紙の中心には、ロール紙の芯軸となるスプールが通される。このようなロール紙は、外周にある端部が引っぱられると、スプールを中心に回転し、1枚の用紙として引き出される。以下、ロール紙のロール状に巻かれた部分をロール部と呼び、該ロール部の外周から引き出された部分を用紙部と呼ぶこととする。
【0004】
大判のロール紙は、一般的なロール紙よりも重いため、回転させるために大きなトルクが付与される必要がある。したがって、大判のロール紙を回転させるためには、ロール紙のロール部から引き出された用紙部を強い力で引っ張る必要がある。この力により、当該用紙部が破れてしまう場合がある。
【0005】
このような不具合を解消するために、ロール紙に直接トルクを加えて回転させるためのロールモータを設ける構成を採用することができる。ロールモータが設けられた画像形成装置では、ロールモータによってロール紙を回転させながらロール部から用紙部を引き出すことにより、ロール紙の用紙部に強い力が加わらないようにすることができる。
【0006】
特許文献1にロールモータが設けられた画像形成装置が開示されている。この画像形成装置は、ロール紙の用紙部を搬送ローラの回転によって間欠搬送するタイプのものである。この画像形成装置には、ロール紙のロール部を回転させるロールモータと、搬送ローラを回転させる搬送モータと、が設けられている。
【0007】
この画像形成装置には、用紙部の、ロール部から搬送ローラまでの間にある部分に生じる張力を測定する張力測定装置が設けられている。この画像形成装置は、張力測定装置の測定結果に基づいて、用紙部に所定の張力以上の張力がかからないような制御を行う。そのため、この画像形成装置では、用紙部に強い張力が加わらない。
【0008】
特許文献2にもロールモータが設けられた画像形成装置が開示されている。この画像形成装置は、用紙部の、ロール部から搬送ローラまでの間にある部分の常に弛みが生じるような制御を行う。そのため、この画像形成装置では、ロール紙の用紙部に張力が加わらない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−263044号公報
【特許文献2】特開2007−203564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に開示された画像形成装置では、用紙部の、ロール部から搬送ローラまでの間の部分に常に張力が加わっているため、用紙部と搬送ローラとの接触部にて滑りが発生することがある。この滑りの要因は、用紙部に加わっている張力が、用紙部に、搬送方向とは反対方向に働くバックテンションとなることにある。この搬送ローラに対する用紙部の滑り量は、用紙部にバックテンションが加わっている時間や用紙部に加わるバックテンションの大きさなどによって変化する。
【0011】
特許文献1に開示された画像形成装置では、用紙部にバックテンションが加っている時間やそのバックテンションの大きさなどが制御されていない。そのため、用紙部の滑り量が変化することにより、搬送ローラによる用紙部の搬送量が変化してしまう。
【0012】
これに対し、特許文献2に開示された画像形成装置では、用紙部に張力がかからないため、上述の不具合は発生しない。しかし、ロール紙のロール部から用紙部が引き出される方向が、搬送ローラが該用紙部を搬送する搬送方向と一致していない場合、用紙部が搬送ローラに対して斜めに進行する、いわゆる斜行(スキュー)が発生する。
【0013】
用紙部の斜行が発生すると、用紙部が搬送ローラによる搬送に伴って搬送ローラによる搬送方向に交差する方向へ徐々にずれてしまう。これにより、ロール紙の用紙部における記録位置の精度が低下する。
【0014】
そこで、本発明は、ロール紙の斜行を防止可能な画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、本発明の画像形成装置は、シートがロール状に巻かれたロール部から引き出された被記録シート部に記録が行われるロールシートを記録媒体として用い、該ロールシートを回転させるとともに搬送ローラを回転させることによって前記被記録シート部の搬送を行う搬送期間を間欠的に繰り返しながら前記被記録シート部に記録を行う画像形成装置であって、前記搬送期間のうち前記被記録シート部の加速期間の後において、前記被記録シート部の、前記ロール部から前記搬送ローラまでの間の部分に張力を加える第1の制御モードと、前記被記録シート部の、前記ロール部から前記搬送ローラまでの間の部分に張力を加えない第2の制御モードと、を選択可能な制御部を有する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ロール紙の斜行を防止可能な画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の斜視図である。
【図2】図1に示した画像形成装置のA−A’線に沿った断面図である。
【図3】スプールユニットによるロール紙の保持機構の説明図である。
【図4】図1に示した画像形成装置のB−B’線に沿った断面図である。
【図5】図1に示した画像形成装置のC−C’線に沿った断面図である。
【図6】図1に示した画像形成装置の機能ブロック図である。
【図7】ロール紙および搬送ローラの概略構成図である。
【図8】図1に示した画像形成装置の第1の制御モードを示した図である。
【図9】図1に示した画像形成装置の第2の制御モードを示した図である。
【図10】ロール紙および搬送ローラの上面図である。
【図11】搬送パス数によるロール紙の搬送ローラに対する滑り量を示した図である。
【図12】搬送パス数による搬送ローラによる搬送速度の波形を示した図である。
【図13】図1に示した画像形成装置によるロール紙の搬送の流れを示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0019】
図1および図2は本実施形態に係る画像形成装置1の概略構成図であり、図1は斜視図であり、図2は図1のA−A’線に沿った断面図である。画像形成装置1は、たとえばA2(JIS規格)等の大判のロール紙を記録媒体として用いるものである。
【0020】
記録媒体は、紙で形成されたロール紙に限らず、長尺のシートがロール状に巻かれて形成されたロールシートであればよい。ロールシートは、たとえばプラスチック等の樹脂材料で形成される。ロールシートは、ロール部の外周から被記録シート部が引き出され、該被記録シート部に記録が行われる。
【0021】
画像形成装置1は、ロール紙6の被記録シート部である用紙部6bに記録を行う記録ヘッド2を搭載可能なキャリッジ3を備えている。キャリッジ3はキャリッジシャフト4に沿って図1の矢印D1方向に往復走査可能である。キャリッジ3の側面には、キャリッジ3に対向する位置におけるロール紙6の用紙部6bの有無や、ロール紙6の用紙部6bの端部を検出可能な用紙センサ13が設けられている。
【0022】
用紙センサ13は、搬送ローラ10によりロール紙6の用紙部6bについて所定距離(たとえば、300mm)の搬送を行った前後における、用紙部6bの搬送方向に直交する方向(図1のD1方向)における両側端を検知する。用紙部6bの両側端を検知は、キャリッジ3を用紙部6bの全幅にわたって往復走査することで行われる。ロール紙6の用紙部6bを搬送する前と所定距離搬送した後における用紙部6bの両側端の位置のズレにより、ロール紙6の用紙部6bの斜行を検出可能である。
【0023】
図3は、ロール紙6およびスプールユニット16の分解斜視図である。ロール紙6は、紙管15に長尺の用紙がロール状に巻き付けられたものである。以下、ロール紙6を保持するためのスプールユニット16について説明する。
【0024】
スプールユニット16は、ロール紙6の芯軸に通されて、ロール紙6の中心軸となるスプール5と、該スプール5の一方の端部に固定された基準側フランジ部材26と、スプール5の他方の端部を固定可能な非基準側フランジ部材27と、を備えている。各フランジ部材26,27は紙管15の両端に嵌め込み可能に形成されている。基準側フランジ部材26の、スプール5とは反対側にはロールギア17が設けられている。
【0025】
スプールユニット16にロール紙6を取り付けるには、まず、ロール紙6の紙管15にスプール5を通し、基準側フランジ部材26をロール紙6の紙管15の一方の端部に嵌め込む。すると、ロール紙6の他方の端部からスプール5が突出する。ロール紙6の他方の端部に突出したスプール5を非基準側フランジ部材27で固定するとともに、非基準側フランジ部材27をロール紙6の紙管15の他方の端部に嵌め込む。このように、ロール紙6はスプールユニット16に固定される。フランジ部材26,27に取り付けられたロール紙6の中心軸は、フランジ部材26,27の中心軸と一致する。
【0026】
ロール紙6が取り付けられたスプールユニット16は画像形成装置1に設けられた不図示の受け台に軸支され、図1および図2に示す位置に設置される。スプールユニット16とロール紙6とは一体として回転する。
【0027】
図4は図1のB−B’線に沿った断面における基準側フランジ部材26近傍を示した図である。画像形成装置1にスプールユニット16が設置されると、基準側フランジ部材26のロールギア17が画像形成装置1に設けられたロール入力ギア18と噛み合う。ロールギア17は、ロールモータ19に取り付けられたギア19aと噛み合っており、ロールモータ19の駆動力により回転する。したがって、ロールモータ19の駆動力は、ギア19a、ロール入力ギア18を介してロールギア17に伝達される。そして、ロールギア17の回転に伴ってロール紙6が回転する。これにより、ロールモータ19はロール紙6のロール部6aから用紙部6bを繰り出す。
【0028】
ロール入力ギア18には、該ロール入力ギア18とともに回転するエンコーダフィルム20が設けられ、エンコーダフィルム20の下部に近接してエンコーダセンサ21が設けられている。エンコーダセンサ21はエンコーダフィルム20に設けられたマーキングを読み取ることにより、ロール入力ギア18の回転数や回転速度を検出可能である。
【0029】
図5は図1のC−C’線に沿った断面における基準側フランジ部材26側(図1における右側)を示した図である。搬送ローラ10の端部には搬送ローラギア22が設けられており、該搬送ローラギア22は搬送入力ギア23と噛み合っている。搬送入力ギア23は、搬送モータ24に取り付けられたギア24aと噛み合っており、搬送モータ24の駆動力により回転する。したがって、搬送モータ24の駆動力は、ギア24a、搬送入力ギア23を介して搬送ローラギア22に伝達される。そして、搬送ローラギア22の回転に伴って搬送ローラ10が回転する。
【0030】
図2に示すように搬送ローラ10はピンチローラ13とともにニップ部を形成し、ピンチローラ13は搬送ローラ10に従動する。搬送ローラ10は、搬送モータ24により間欠的に回転させられ、これによってロール紙6の用紙部6bが周期的に間欠搬送される。
【0031】
図5に示すように、搬送入力ギア23には、該搬送入力ギア23とともに回転するエンコーダフィルム28が設けられ、エンコーダフィルム28の下部に近接してエンコーダセンサ25が設けられている。エンコーダセンサ25はエンコーダフィルム28に設けられたマーキングを読み取ることにより、搬送入力ギア23の回転数や回転速度を検出可能である。
【0032】
ロール紙6から搬送ローラ10に給紙するために、画像形成装置1に保持されたロール紙6のロール部6aから用紙部6bがユーザによって引き出される。さらに、用紙部6bは、外ガイド7と内ガイド8との間の搬送路を経由して、搬送ローラ10とピンチローラ13により形成されたニップ部までユーザによって案内される。
【0033】
搬送ローラ10とピンチローラ13により形成されたニップ部まで用紙部6bがユーザによって案内されると、搬送ローラ10の手前にある不図示の用紙検出手段が用紙部6bを検出する。用紙検出手段が用紙部6bを検出すると、搬送モータ24の駆動が始まる。したがって、ユーザが搬送ローラ10とピンチローラ13との間に用紙部6bを挿入すると、用紙部6bは、搬送ローラ10とピンチローラ13とに挟持され、搬送ローラ10の回転によって搬送されるようになる。
【0034】
搬送ローラ10は、記録部である記録ヘッド2に対向する位置に設けられたプラテン12まで用紙部6bを搬送する。記録ヘッド2は、プラテン12まで搬送された用紙部6bに記録を行う。記録ヘッド2によって記録がなされた用紙部6bはさらにプラテン12上を搬送され、用紙カッタ29によって切断される。用紙カッタ29によって切断された用紙部6bは、排紙カバー14上を滑り、不図示の排紙バスケットに収納される。
【0035】
図6は画像形成装置1の機能の概略を示したブロック図である。キャリッジ3を往復走査させるキャリッジモータ9、ロールモータ19、搬送モータ24は、制御部100によって制御される。制御部100は、主制御部110を有し、該主制御部110に制御されるロールモータ制御部120および搬送モータ制御部130を備えている。また、制御部100は、不図示のCPU、ROM、RAM、モータドライバ等を具備している。
【0036】
主制御部110は、エンコーダセンサ21,25からの情報を用い、ロールモータ19を制御するロールモータ制御部120と搬送モータ24を制御する搬送モータ制御部130とによってロールモータ19と搬送モータ24とを制御する。ロールモータ制御部120は、ロールモータ19の制御モードとして、第1の制御モードと第2の制御モードとを適宜選択可能である。
【0037】
ロールモータ19の回転速度はエンコーダセンサ21によって検出され、その検出結果がロールモータ制御部120に送られる。搬送モータ24の回転速度はエンコーダセンサ25によって検出され、その検出結果が搬送モータ制御部130に送られる。
【0038】
図7はロール紙6と搬送ローラ10とを模式的に示した図である。ここで、搬送ローラ10によって用紙部6bを搬送する際の矢印で示した搬送方向における搬送速度をVlfとし、ロール紙6から用紙部6bを繰り出す際の、矢印で示した繰り出し方向における繰り出し速度をVrollとする。また、用紙部6bの、ロール部6aから搬送ローラ10までの間にある部分の張力をTpapとし、当該部分の弛みの最大値(以下、「弛み量」という。)をSpapとする。
【0039】
用紙部6bの、ロール部6aから搬送ローラ10までの間にある部分の弛みは、図7の破線で示すように、重力方向下側に発生する。弛み量Spapは、用紙部6bが弛んだ量の絶対値とし、弛みが無い状態(図7における実線で示した状態)を0とする。
【0040】
また、搬送速度Vlf、繰り出し速度Vroll、張力Tpapは、図7における矢印方向を正値とする。したがって、張力Tpapの方向は、搬送速度Vlf、繰り出し速度Vrollの方向とは反対方向である。張力Tpapは、搬送ローラ10による用紙部6bの搬送方向とは反対に働くため、バックテンションとも呼ぶこととする。
【0041】
図8はロールモータ制御部120によるロールモータ19の制御モードが第1の制御モードである場合を示し、図9はロールモータ制御部120によるロールモータ19の制御モードが第2の制御モードである場合を示している。
【0042】
図8および図9は、搬送速度Vlf、繰り出し速度Vroll、弛みSpapの時間変化を示したグラフである。図8と図9とでは、搬送モータ制御部130による搬送モータ24の駆動条件が等しいため搬送速度Vlfの波形は等しく、ロールモータ制御部120によるロールモータ19の駆動条件が異なるため繰り出し速度Vrollの波形は異なる。
【0043】
まず、図8を参照して、ロールモータ制御部120によるロールモータ19の制御モードが第1の制御モードである場合について説明する。
【0044】
搬送ローラ10による1回の搬送期間において、搬送ローラ10の搬送速度Vlfのグラフにおける搬送期間は、加速期間(Ta−Tc)、定速期間(Tc−Te)、減速期間(Te−Tf)の3つの期間に分けられる。
【0045】
搬送ローラ10の回転が始まる時点Taと同時にロール紙6の回転も始まる。加速期間(Ta−Tc)において、搬送速度Vlfは等加速度であるのに対し、繰り出し速度Vrollの加速度は徐々に増加する。これに伴い、加速期間(Ta−Tc)の途中のTbの時点で、繰り出し速度Vrollが搬送速度Vlfを上回る。ロール紙6は搬送ローラ10より重く、ロール紙6の慣性モーメントは搬送ローラ10よりも大きいため、搬送ローラ10については回転速度を急に変更することができるのに対し、ロール紙6については回転速度を急に変更することができない。
【0046】
そのため、ロール紙6による用紙部6bの繰り出し速度Vrollは、加速期間(Ta−Tc)のうちの初期の期間(Ta−Tb)では搬送ローラ10による搬送速度Vlfより小さい。そのため、期間(Ta−Tb)では、用紙部6bの、搬送ローラ10からロール部6aまでの間にある部分かかる張力はTpapがゼロより大きくなる。すなわち、期間(Ta−Tb)では、用紙部6bの、搬送ローラ10からロール部6aまでの間にある部分には、用紙部6bの搬送方向とは反対方向にバックテンションTpapが働く。また、用紙部6bの加速後の期間(Tb−Td)では、繰り出し速度Vrollが搬送速度Vlfを上回る状態が続く。
【0047】
期間(Tb−Td)では、弛みSpapが生じ、バックテンションTpapの値はゼロとなる。期間(Tc−Td)は搬送速度Vlfの定速期間(Tc−Te)内にある。この期間において用紙部6bの弛みSpapを解消しつつ、繰り出し速度Vrollが搬送速度Vlfと等しくなるように、エンコーダセンサ21,25を用いてロールモータ19が制御される。
【0048】
これにより、時点Tdでは、繰り出し速度Vrollと搬送速度Vlfとが等しくなる。その後の定速期間(Tc−Te)内の期間(Td−Tf)では、弛み量Spap=0、かつ、バックテンションTpap>0となるように制御される。
【0049】
ロール紙6および搬送ローラ10は、時点Tfで同時に停止し、この搬送期間が終了する。そして、次の搬送期間が始まる時点Taまでロール紙6および搬送ローラ10の停止状態が保たれ、その後、同様の搬送期間が繰り返される。このように、画像形成装置1では、ロール紙6の用紙部6bが一定の搬送期間での間欠搬送が行われる。
【0050】
次に、図9を参照して、ロールモータ制御部120によるロールモータ19の制御が第2の制御モードである場合について説明する。
【0051】
第1の制御モードと同様に、加速期間(Ta−Tc)のうちの初期の期間(Ta−Tb)において、用紙部6bには、搬送方向とは反対方向のバックテンションTpapが働く。そして、期間(Tb−Td)では、繰り出し速度Vrollが搬送速度Vlfを上回る状態が続く。
【0052】
期間(Tb−Td)では、弛みSpapが生じ、バックテンションTpapの値はゼロとなる。期間(Tc−Td)は搬送速度Vlfの定速期間(Tc−Te)内にあり、この期間において弛みSpapを維持しつつ、繰り出し速度Vrollが搬送速度Vlfと等しくなるようにエンコーダセンサ21,25を用いてロールモータ19が制御される。これにより、時点Tdでは、繰り出し速度Vrollと搬送速度Vlfとが等しくなる。その後の定速期間(Tc−Te)内の期間(Td−Tf)では、弛みSpap>0、かつ、バックテンションTpap=0となるように制御される。
【0053】
搬送ローラ10は時点Tfで停止するが、ロール紙6は、期間(Tf−Tg)で、繰り出し速度Vrollが負となる。すなわち、用紙部6bの弛みSpapを解消するようにロールモータ19を制御して、用紙部6bをロール部6aに巻き取る。これにより、用紙部6bの、搬送ローラ10からロール部6aまでの間にある部分の弛みSpapが解消され、時点TgではSpap=0となる。
【0054】
そして、時点Tgから次の搬送期間が始まる時点Taまでロール紙6および搬送ローラ10の停止状態が保たれ、その後、同様の搬送期間が繰り返される。このように、画像形成装置1では、ロール紙6の用紙部6bが一定の搬送期間での間欠搬送が行われる。
【0055】
次に図10を用いて、本実施形態におけるロール紙6の用紙部6bの斜行補正のメカニズムについて説明する。図10では、図の上側をP1と呼称し、図の下側をP2と呼称することとする。
【0056】
図10はロール紙6および搬送ローラ10を上方から見た概略構成図である。図10は搬送ローラ10によってロール紙6の用紙部6bがP2向きの斜行状態で搬送されているときの、搬送ローラ10による搬送力HとバックテンションTpapとの関係を示した図である。
【0057】
図10に示す矢印は、用紙部6bがP2向きの斜行状態で搬送されているときに用紙部6bに加わる搬送ローラ10の搬送力H、およびバックテンションTpapをベクトルで示している。用紙部6bに加わる搬送ローラ10の搬送力Hはいずれの位置においても等しい。これに対し、用紙部6bの、搬送ローラ10からロール部6aまでの間にある部分の用紙部6bは、P1側ほど張り、P2側ほど弛む傾向にある。そのため、用紙部6bの、搬送ローラ10からロール部6aまでの間にある部分に加わるバックテンションTpapは、P1側ほど大きくなり、P2側ほど小さくなる。
【0058】
したがって、用紙部6bがP2向きの斜行状態で搬送されている場合には、P1側ほど大きいバックテンションTpapが働くため、用紙部6bは搬送ローラ10に対してP1側ほど滑りが発生しやすくなる。用紙部6bは、搬送ローラ10に対してP1側が優先的に滑ることにより、用紙部6bの搬送方向は徐々にP1側に補正される。これにより、用紙部6bの斜行が解消されると、バックテンションTpapは、用紙部6bのP1側からP2側にわたって均一となり、用紙部6bの斜行補正が完了する。
【0059】
逆に、P1向きの斜行状態で搬送されているときには、用紙部6bの、搬送ローラ10からロール部6aまでの間にある部分に加わるバックテンションTpapは、P2側ほど大きくなり、P1側ほど小さくなる。そのため、用紙部6bは搬送ローラ10に対してP2側ほど滑りが発生しやすくなる。用紙部6bは、搬送ローラ10に対してP2側が優先的に滑ることにより、用紙部6bの搬送方向は徐々にP2側に補正される。これにより、用紙部6bの斜行が解消されると、バックテンションTpapは、用紙部6bのP1側からP2側にわたって均一となり、用紙部6bの斜行補正が完了する。
【0060】
本実施形態では、上述のように用紙部6bに加わるバックテンションTpapの作用によって、ロール紙6の用紙部6bの斜行補正がなされる。この斜行補正の効果は、用紙部6bに加わるバックテンションTpapが大きいほど、また、用紙部6bにバックテンションTpapが加わっている時間が長いほど、大きくなる。なお、用紙部6bに加わるバックテンションTpapの大きさが同等であり、用紙部6bにバックテンションTpapが加わっている時間の長さも同等であれば、斜行補正の効果は、用紙部6bにバックテンションTpapが加わる回数が多いほど大きくなる。
【0061】
このような斜行補正を行うことにより、ロール紙6の用紙部6bに記録される画像にスジが発生することなどの画質の低下を防止することができる。また、本実施形態に係る斜行補正は、ユーザによる斜行の手直しによる補正より短時間で行うことができる。
【0062】
図11は、搬送パス数による用紙部6bの1インチあたりの搬送における滑り量の変化を示している。搬送パス数とは、用紙部6bを1インチ搬送する際の、搬送期間の回数である。そのため、搬送パスが多いほど、1インチを多くの搬送期間に分けて搬送することになるため、1回の搬送期間における搬送量は少なくなる。
【0063】
図11は、代表的な搬送パス数として1回、2回、4回、8回、16回を選択し、滑り量の違いを示した図である。横軸は搬送パス数を示し、縦軸は滑り量を示している。縦軸では、下方ほど滑り量が大きいことを示している。なお、図11では、用紙部6bも斜行が発生していないものとしている。
【0064】
図11から、搬送パス数が1回や2回のときに滑り量が小さく、搬送パス数が4回や8回のときに滑り量が大きく、搬送パス数が16回のときに滑り量が小さいことがわかる。
【0065】
図12は、各搬送パス数における搬送速度Vlfの波形を示している。図12(A)、図12(B)、図12(C)、図12(D)は、搬送パス数がそれぞれ1回、2回、6回、16回の場合のグラフである。なお、図12のいずれにおいても、用紙部6bに斜行が発生しておらず、ロールモータ19は第2の制御モードで制御されているものとする。したがって、搬送ローラ10の加速期間以外の期間では用紙部6bにバックテンションが加わらない。
【0066】
図12(A)に示す搬送パス数が1回の場合には、各搬送期間において、搬送ローラ10は、加速期間、定速期間および減速期間を経て停止する。搬送ローラ10の各搬送期間における加速期間では、ロール紙6の用紙部6bにバックテンションが加わり、用紙部6bの搬送ローラ10に対する滑りが発生する。用紙部6bの1インチあたりの搬送において、搬送パス数が1回であるので、用紙部6bの搬送ローラ10に対する滑りが発生する回数は1回である。
【0067】
図12(B)に示す搬送パス数が2回の場合にも、搬送ローラ10の各搬送期間における加速期間では、図12(A)に示した場合と同様に、ロール紙6のロール部6aにバックテンションが加わる。そのため、用紙部6bの搬送ローラ10に対する滑りが発生する。用紙部6bの1インチあたりの搬送において、搬送パス数が2回であるので、用紙部6bに滑りが発生する回数は2回である。そのため、図11に示すように、図12(B)に示した搬送パス数が2回の場合には、図12(A)に示した搬送パス数が1回である場合よりも、用紙部6bの1インチあたりの搬送における滑り量が大きくなる。
【0068】
図12(C)に示す搬送パス数が6回の場合には、用紙部6bの搬送ローラ10に対する滑りが発生する回数は6回である。そのため、図11に示すように、図12(C)に示した搬送パス数が6回の場合には、図12(B)に示した搬送パス数が2回である場合よりも、用紙部6bの1インチあたりの搬送における滑り量が大きくなる。
【0069】
図12(D)に示す搬送パス数が16回の場合にも、搬送ローラ10の各搬送期間における加速期間では、ロール紙6の用紙部6bにバックテンションが加わる。しかし、搬送ローラ10の各搬送期間における加速期間は、搬送速度Vlfが定速速度V0に達する前に終了し、減速期間に入る。そのため、ロール紙6も、搬送ローラ10が減速期間に入るとともに減速し始める。これにより、1回の搬送期間における、繰り出し速度Vrollが搬送速度Vlfよりも大きくなる時間、すなわち、ロール紙6の用紙部6bにバックテンションが加わっている時間が短くなる。したがって、図12(D)に示した搬送パス数が16回の場合には、図12(C)に示した搬送パス数が6回である場合と比較して、バックテンションが加わる回数は多いものの、用紙部6bの1インチあたりの搬送における滑り量は小さくなる。
【0070】
上述したように、ロール紙6の用紙部6bの斜行補正の効果は、用紙部6bにバックテンションTpapが加わる回数が多いほど大きくなる。そのため、図12(C)に示した搬送パス数が6回の場合には、十分な用紙部6bの滑りが得られ、用紙部6bの十分な斜行補正が行われる。
【0071】
一方、図12(A)および図12(B)に示した搬送パス数が1回や2回の場合には、用紙部6bの1インチあたりの搬送における滑り量が少ないため、十分な用紙部6bの斜行補正が行われないことがある。そのため、画像形成装置1では、図12(A)および図12(B)に示した搬送パス数が1回や2回の場合にはロールモータ19の制御モードを第1の制御モードとする。これにより、用紙部6bに加わるバックテンションが加わっている時間が長くなるため、用紙部6bの十分な斜行補正が行われるようになる。
【0072】
また、図12(D)に示した搬送パス数が16回の場合には、用紙部6bの1インチあたりの搬送における滑り量は小さいものの、用紙部6bにバックテンションが加わる回数が多い。そのため、ロールモータ19が第2の制御モードでも、用紙部6bの十分な斜行補正が行われる。
【0073】
以上をまとめると、図6に示したロールモータ制御部120は、搬送パス数が1回または2回の場合にロールモータ19の制御モードを第1の制御モードとし、搬送パス数が6または16の場合には、ロールモータ19の制御モードを第2の制御モードとする。
【0074】
なお、ロールモータ制御部120による制御モードの選択は、各搬送期間における搬送ローラ10による搬送量に基づいて行ってもよい。たとえば、ロールモータ制御部120は、各搬送期間における搬送量が所定量より多い図12(A)、図12(B)の場合には第1の搬送モードとし、各搬送期間における搬送量が所定量より少ない図12(C)、図12(D)の場合には第2の搬送モードとする。
【0075】
図13は本実施形態に係る画像形成装置1のロール紙6の用紙部6bを搬送する流れを示したフローチャートである。まず、画像を形成するための記録動作を開始すると(S01)、搬送パス数を判断する(S02)。次に、搬送パス数が1回または2回の場合には第1の制御モードを選択し(S03)、記録動作を開始する(S04)。一方、搬送パス数が6回,16回の場合には第2の制御モードを選択し(S06)、記録動作を開始する(S07)。そして、記録動作が終了すると(S05、S08)、記録を続行するか否かを判断する(S09)。記録を続行する場合にはステップS02に戻り、記録を続行しない場合には記録を終了する。
【0076】
なお、ロールモータ19の制御モードとして第1の制御モードを選択するか第2の制御モードを選択するかの基準は、画像形成装置1の各モータ等の構成に応じて変更可能である。たとえば、搬送パス数が4回未満の場合に第1の制御モードを選択し、搬送パス数が4回以上の場合に第2の制御モードを選択することができる。
【0077】
また、画像形成装置1では、各搬送期間ごとに用紙部6bの斜行補正を行っても、用紙センサ13によって用紙部6bの斜行が検出された場合のみに斜行補正を行ってもよい。
【符号の説明】
【0078】
1 画像形成装置
6 ロール紙
6a ロール部
6b 用紙部
10 搬送ローラ
13 用紙センサ
19 ロールモータ
21,25 エンコーダセンサ
24 搬送モータ
100 制御部
110 主制御部
120 ロールモータ制御部
130 搬送モータ制御部
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール紙に記録を行う画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置には、A2(JIS規格)以上の大判の記録媒体に画像の記録を行う大判画像形成装置がある。大判画像形成装置には、記録媒体として、単票紙以外にもロール紙などの連続紙が用いられるものがある。
【0003】
ロール紙は、長尺の用紙がロール状に巻かれたものである。一般的に、ロール紙の中心には、ロール紙の芯軸となるスプールが通される。このようなロール紙は、外周にある端部が引っぱられると、スプールを中心に回転し、1枚の用紙として引き出される。以下、ロール紙のロール状に巻かれた部分をロール部と呼び、該ロール部の外周から引き出された部分を用紙部と呼ぶこととする。
【0004】
大判のロール紙は、一般的なロール紙よりも重いため、回転させるために大きなトルクが付与される必要がある。したがって、大判のロール紙を回転させるためには、ロール紙のロール部から引き出された用紙部を強い力で引っ張る必要がある。この力により、当該用紙部が破れてしまう場合がある。
【0005】
このような不具合を解消するために、ロール紙に直接トルクを加えて回転させるためのロールモータを設ける構成を採用することができる。ロールモータが設けられた画像形成装置では、ロールモータによってロール紙を回転させながらロール部から用紙部を引き出すことにより、ロール紙の用紙部に強い力が加わらないようにすることができる。
【0006】
特許文献1にロールモータが設けられた画像形成装置が開示されている。この画像形成装置は、ロール紙の用紙部を搬送ローラの回転によって間欠搬送するタイプのものである。この画像形成装置には、ロール紙のロール部を回転させるロールモータと、搬送ローラを回転させる搬送モータと、が設けられている。
【0007】
この画像形成装置には、用紙部の、ロール部から搬送ローラまでの間にある部分に生じる張力を測定する張力測定装置が設けられている。この画像形成装置は、張力測定装置の測定結果に基づいて、用紙部に所定の張力以上の張力がかからないような制御を行う。そのため、この画像形成装置では、用紙部に強い張力が加わらない。
【0008】
特許文献2にもロールモータが設けられた画像形成装置が開示されている。この画像形成装置は、用紙部の、ロール部から搬送ローラまでの間にある部分の常に弛みが生じるような制御を行う。そのため、この画像形成装置では、ロール紙の用紙部に張力が加わらない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−263044号公報
【特許文献2】特開2007−203564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に開示された画像形成装置では、用紙部の、ロール部から搬送ローラまでの間の部分に常に張力が加わっているため、用紙部と搬送ローラとの接触部にて滑りが発生することがある。この滑りの要因は、用紙部に加わっている張力が、用紙部に、搬送方向とは反対方向に働くバックテンションとなることにある。この搬送ローラに対する用紙部の滑り量は、用紙部にバックテンションが加わっている時間や用紙部に加わるバックテンションの大きさなどによって変化する。
【0011】
特許文献1に開示された画像形成装置では、用紙部にバックテンションが加っている時間やそのバックテンションの大きさなどが制御されていない。そのため、用紙部の滑り量が変化することにより、搬送ローラによる用紙部の搬送量が変化してしまう。
【0012】
これに対し、特許文献2に開示された画像形成装置では、用紙部に張力がかからないため、上述の不具合は発生しない。しかし、ロール紙のロール部から用紙部が引き出される方向が、搬送ローラが該用紙部を搬送する搬送方向と一致していない場合、用紙部が搬送ローラに対して斜めに進行する、いわゆる斜行(スキュー)が発生する。
【0013】
用紙部の斜行が発生すると、用紙部が搬送ローラによる搬送に伴って搬送ローラによる搬送方向に交差する方向へ徐々にずれてしまう。これにより、ロール紙の用紙部における記録位置の精度が低下する。
【0014】
そこで、本発明は、ロール紙の斜行を防止可能な画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、本発明の画像形成装置は、シートがロール状に巻かれたロール部から引き出された被記録シート部に記録が行われるロールシートを記録媒体として用い、該ロールシートを回転させるとともに搬送ローラを回転させることによって前記被記録シート部の搬送を行う搬送期間を間欠的に繰り返しながら前記被記録シート部に記録を行う画像形成装置であって、前記搬送期間のうち前記被記録シート部の加速期間の後において、前記被記録シート部の、前記ロール部から前記搬送ローラまでの間の部分に張力を加える第1の制御モードと、前記被記録シート部の、前記ロール部から前記搬送ローラまでの間の部分に張力を加えない第2の制御モードと、を選択可能な制御部を有する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ロール紙の斜行を防止可能な画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の斜視図である。
【図2】図1に示した画像形成装置のA−A’線に沿った断面図である。
【図3】スプールユニットによるロール紙の保持機構の説明図である。
【図4】図1に示した画像形成装置のB−B’線に沿った断面図である。
【図5】図1に示した画像形成装置のC−C’線に沿った断面図である。
【図6】図1に示した画像形成装置の機能ブロック図である。
【図7】ロール紙および搬送ローラの概略構成図である。
【図8】図1に示した画像形成装置の第1の制御モードを示した図である。
【図9】図1に示した画像形成装置の第2の制御モードを示した図である。
【図10】ロール紙および搬送ローラの上面図である。
【図11】搬送パス数によるロール紙の搬送ローラに対する滑り量を示した図である。
【図12】搬送パス数による搬送ローラによる搬送速度の波形を示した図である。
【図13】図1に示した画像形成装置によるロール紙の搬送の流れを示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0019】
図1および図2は本実施形態に係る画像形成装置1の概略構成図であり、図1は斜視図であり、図2は図1のA−A’線に沿った断面図である。画像形成装置1は、たとえばA2(JIS規格)等の大判のロール紙を記録媒体として用いるものである。
【0020】
記録媒体は、紙で形成されたロール紙に限らず、長尺のシートがロール状に巻かれて形成されたロールシートであればよい。ロールシートは、たとえばプラスチック等の樹脂材料で形成される。ロールシートは、ロール部の外周から被記録シート部が引き出され、該被記録シート部に記録が行われる。
【0021】
画像形成装置1は、ロール紙6の被記録シート部である用紙部6bに記録を行う記録ヘッド2を搭載可能なキャリッジ3を備えている。キャリッジ3はキャリッジシャフト4に沿って図1の矢印D1方向に往復走査可能である。キャリッジ3の側面には、キャリッジ3に対向する位置におけるロール紙6の用紙部6bの有無や、ロール紙6の用紙部6bの端部を検出可能な用紙センサ13が設けられている。
【0022】
用紙センサ13は、搬送ローラ10によりロール紙6の用紙部6bについて所定距離(たとえば、300mm)の搬送を行った前後における、用紙部6bの搬送方向に直交する方向(図1のD1方向)における両側端を検知する。用紙部6bの両側端を検知は、キャリッジ3を用紙部6bの全幅にわたって往復走査することで行われる。ロール紙6の用紙部6bを搬送する前と所定距離搬送した後における用紙部6bの両側端の位置のズレにより、ロール紙6の用紙部6bの斜行を検出可能である。
【0023】
図3は、ロール紙6およびスプールユニット16の分解斜視図である。ロール紙6は、紙管15に長尺の用紙がロール状に巻き付けられたものである。以下、ロール紙6を保持するためのスプールユニット16について説明する。
【0024】
スプールユニット16は、ロール紙6の芯軸に通されて、ロール紙6の中心軸となるスプール5と、該スプール5の一方の端部に固定された基準側フランジ部材26と、スプール5の他方の端部を固定可能な非基準側フランジ部材27と、を備えている。各フランジ部材26,27は紙管15の両端に嵌め込み可能に形成されている。基準側フランジ部材26の、スプール5とは反対側にはロールギア17が設けられている。
【0025】
スプールユニット16にロール紙6を取り付けるには、まず、ロール紙6の紙管15にスプール5を通し、基準側フランジ部材26をロール紙6の紙管15の一方の端部に嵌め込む。すると、ロール紙6の他方の端部からスプール5が突出する。ロール紙6の他方の端部に突出したスプール5を非基準側フランジ部材27で固定するとともに、非基準側フランジ部材27をロール紙6の紙管15の他方の端部に嵌め込む。このように、ロール紙6はスプールユニット16に固定される。フランジ部材26,27に取り付けられたロール紙6の中心軸は、フランジ部材26,27の中心軸と一致する。
【0026】
ロール紙6が取り付けられたスプールユニット16は画像形成装置1に設けられた不図示の受け台に軸支され、図1および図2に示す位置に設置される。スプールユニット16とロール紙6とは一体として回転する。
【0027】
図4は図1のB−B’線に沿った断面における基準側フランジ部材26近傍を示した図である。画像形成装置1にスプールユニット16が設置されると、基準側フランジ部材26のロールギア17が画像形成装置1に設けられたロール入力ギア18と噛み合う。ロールギア17は、ロールモータ19に取り付けられたギア19aと噛み合っており、ロールモータ19の駆動力により回転する。したがって、ロールモータ19の駆動力は、ギア19a、ロール入力ギア18を介してロールギア17に伝達される。そして、ロールギア17の回転に伴ってロール紙6が回転する。これにより、ロールモータ19はロール紙6のロール部6aから用紙部6bを繰り出す。
【0028】
ロール入力ギア18には、該ロール入力ギア18とともに回転するエンコーダフィルム20が設けられ、エンコーダフィルム20の下部に近接してエンコーダセンサ21が設けられている。エンコーダセンサ21はエンコーダフィルム20に設けられたマーキングを読み取ることにより、ロール入力ギア18の回転数や回転速度を検出可能である。
【0029】
図5は図1のC−C’線に沿った断面における基準側フランジ部材26側(図1における右側)を示した図である。搬送ローラ10の端部には搬送ローラギア22が設けられており、該搬送ローラギア22は搬送入力ギア23と噛み合っている。搬送入力ギア23は、搬送モータ24に取り付けられたギア24aと噛み合っており、搬送モータ24の駆動力により回転する。したがって、搬送モータ24の駆動力は、ギア24a、搬送入力ギア23を介して搬送ローラギア22に伝達される。そして、搬送ローラギア22の回転に伴って搬送ローラ10が回転する。
【0030】
図2に示すように搬送ローラ10はピンチローラ13とともにニップ部を形成し、ピンチローラ13は搬送ローラ10に従動する。搬送ローラ10は、搬送モータ24により間欠的に回転させられ、これによってロール紙6の用紙部6bが周期的に間欠搬送される。
【0031】
図5に示すように、搬送入力ギア23には、該搬送入力ギア23とともに回転するエンコーダフィルム28が設けられ、エンコーダフィルム28の下部に近接してエンコーダセンサ25が設けられている。エンコーダセンサ25はエンコーダフィルム28に設けられたマーキングを読み取ることにより、搬送入力ギア23の回転数や回転速度を検出可能である。
【0032】
ロール紙6から搬送ローラ10に給紙するために、画像形成装置1に保持されたロール紙6のロール部6aから用紙部6bがユーザによって引き出される。さらに、用紙部6bは、外ガイド7と内ガイド8との間の搬送路を経由して、搬送ローラ10とピンチローラ13により形成されたニップ部までユーザによって案内される。
【0033】
搬送ローラ10とピンチローラ13により形成されたニップ部まで用紙部6bがユーザによって案内されると、搬送ローラ10の手前にある不図示の用紙検出手段が用紙部6bを検出する。用紙検出手段が用紙部6bを検出すると、搬送モータ24の駆動が始まる。したがって、ユーザが搬送ローラ10とピンチローラ13との間に用紙部6bを挿入すると、用紙部6bは、搬送ローラ10とピンチローラ13とに挟持され、搬送ローラ10の回転によって搬送されるようになる。
【0034】
搬送ローラ10は、記録部である記録ヘッド2に対向する位置に設けられたプラテン12まで用紙部6bを搬送する。記録ヘッド2は、プラテン12まで搬送された用紙部6bに記録を行う。記録ヘッド2によって記録がなされた用紙部6bはさらにプラテン12上を搬送され、用紙カッタ29によって切断される。用紙カッタ29によって切断された用紙部6bは、排紙カバー14上を滑り、不図示の排紙バスケットに収納される。
【0035】
図6は画像形成装置1の機能の概略を示したブロック図である。キャリッジ3を往復走査させるキャリッジモータ9、ロールモータ19、搬送モータ24は、制御部100によって制御される。制御部100は、主制御部110を有し、該主制御部110に制御されるロールモータ制御部120および搬送モータ制御部130を備えている。また、制御部100は、不図示のCPU、ROM、RAM、モータドライバ等を具備している。
【0036】
主制御部110は、エンコーダセンサ21,25からの情報を用い、ロールモータ19を制御するロールモータ制御部120と搬送モータ24を制御する搬送モータ制御部130とによってロールモータ19と搬送モータ24とを制御する。ロールモータ制御部120は、ロールモータ19の制御モードとして、第1の制御モードと第2の制御モードとを適宜選択可能である。
【0037】
ロールモータ19の回転速度はエンコーダセンサ21によって検出され、その検出結果がロールモータ制御部120に送られる。搬送モータ24の回転速度はエンコーダセンサ25によって検出され、その検出結果が搬送モータ制御部130に送られる。
【0038】
図7はロール紙6と搬送ローラ10とを模式的に示した図である。ここで、搬送ローラ10によって用紙部6bを搬送する際の矢印で示した搬送方向における搬送速度をVlfとし、ロール紙6から用紙部6bを繰り出す際の、矢印で示した繰り出し方向における繰り出し速度をVrollとする。また、用紙部6bの、ロール部6aから搬送ローラ10までの間にある部分の張力をTpapとし、当該部分の弛みの最大値(以下、「弛み量」という。)をSpapとする。
【0039】
用紙部6bの、ロール部6aから搬送ローラ10までの間にある部分の弛みは、図7の破線で示すように、重力方向下側に発生する。弛み量Spapは、用紙部6bが弛んだ量の絶対値とし、弛みが無い状態(図7における実線で示した状態)を0とする。
【0040】
また、搬送速度Vlf、繰り出し速度Vroll、張力Tpapは、図7における矢印方向を正値とする。したがって、張力Tpapの方向は、搬送速度Vlf、繰り出し速度Vrollの方向とは反対方向である。張力Tpapは、搬送ローラ10による用紙部6bの搬送方向とは反対に働くため、バックテンションとも呼ぶこととする。
【0041】
図8はロールモータ制御部120によるロールモータ19の制御モードが第1の制御モードである場合を示し、図9はロールモータ制御部120によるロールモータ19の制御モードが第2の制御モードである場合を示している。
【0042】
図8および図9は、搬送速度Vlf、繰り出し速度Vroll、弛みSpapの時間変化を示したグラフである。図8と図9とでは、搬送モータ制御部130による搬送モータ24の駆動条件が等しいため搬送速度Vlfの波形は等しく、ロールモータ制御部120によるロールモータ19の駆動条件が異なるため繰り出し速度Vrollの波形は異なる。
【0043】
まず、図8を参照して、ロールモータ制御部120によるロールモータ19の制御モードが第1の制御モードである場合について説明する。
【0044】
搬送ローラ10による1回の搬送期間において、搬送ローラ10の搬送速度Vlfのグラフにおける搬送期間は、加速期間(Ta−Tc)、定速期間(Tc−Te)、減速期間(Te−Tf)の3つの期間に分けられる。
【0045】
搬送ローラ10の回転が始まる時点Taと同時にロール紙6の回転も始まる。加速期間(Ta−Tc)において、搬送速度Vlfは等加速度であるのに対し、繰り出し速度Vrollの加速度は徐々に増加する。これに伴い、加速期間(Ta−Tc)の途中のTbの時点で、繰り出し速度Vrollが搬送速度Vlfを上回る。ロール紙6は搬送ローラ10より重く、ロール紙6の慣性モーメントは搬送ローラ10よりも大きいため、搬送ローラ10については回転速度を急に変更することができるのに対し、ロール紙6については回転速度を急に変更することができない。
【0046】
そのため、ロール紙6による用紙部6bの繰り出し速度Vrollは、加速期間(Ta−Tc)のうちの初期の期間(Ta−Tb)では搬送ローラ10による搬送速度Vlfより小さい。そのため、期間(Ta−Tb)では、用紙部6bの、搬送ローラ10からロール部6aまでの間にある部分かかる張力はTpapがゼロより大きくなる。すなわち、期間(Ta−Tb)では、用紙部6bの、搬送ローラ10からロール部6aまでの間にある部分には、用紙部6bの搬送方向とは反対方向にバックテンションTpapが働く。また、用紙部6bの加速後の期間(Tb−Td)では、繰り出し速度Vrollが搬送速度Vlfを上回る状態が続く。
【0047】
期間(Tb−Td)では、弛みSpapが生じ、バックテンションTpapの値はゼロとなる。期間(Tc−Td)は搬送速度Vlfの定速期間(Tc−Te)内にある。この期間において用紙部6bの弛みSpapを解消しつつ、繰り出し速度Vrollが搬送速度Vlfと等しくなるように、エンコーダセンサ21,25を用いてロールモータ19が制御される。
【0048】
これにより、時点Tdでは、繰り出し速度Vrollと搬送速度Vlfとが等しくなる。その後の定速期間(Tc−Te)内の期間(Td−Tf)では、弛み量Spap=0、かつ、バックテンションTpap>0となるように制御される。
【0049】
ロール紙6および搬送ローラ10は、時点Tfで同時に停止し、この搬送期間が終了する。そして、次の搬送期間が始まる時点Taまでロール紙6および搬送ローラ10の停止状態が保たれ、その後、同様の搬送期間が繰り返される。このように、画像形成装置1では、ロール紙6の用紙部6bが一定の搬送期間での間欠搬送が行われる。
【0050】
次に、図9を参照して、ロールモータ制御部120によるロールモータ19の制御が第2の制御モードである場合について説明する。
【0051】
第1の制御モードと同様に、加速期間(Ta−Tc)のうちの初期の期間(Ta−Tb)において、用紙部6bには、搬送方向とは反対方向のバックテンションTpapが働く。そして、期間(Tb−Td)では、繰り出し速度Vrollが搬送速度Vlfを上回る状態が続く。
【0052】
期間(Tb−Td)では、弛みSpapが生じ、バックテンションTpapの値はゼロとなる。期間(Tc−Td)は搬送速度Vlfの定速期間(Tc−Te)内にあり、この期間において弛みSpapを維持しつつ、繰り出し速度Vrollが搬送速度Vlfと等しくなるようにエンコーダセンサ21,25を用いてロールモータ19が制御される。これにより、時点Tdでは、繰り出し速度Vrollと搬送速度Vlfとが等しくなる。その後の定速期間(Tc−Te)内の期間(Td−Tf)では、弛みSpap>0、かつ、バックテンションTpap=0となるように制御される。
【0053】
搬送ローラ10は時点Tfで停止するが、ロール紙6は、期間(Tf−Tg)で、繰り出し速度Vrollが負となる。すなわち、用紙部6bの弛みSpapを解消するようにロールモータ19を制御して、用紙部6bをロール部6aに巻き取る。これにより、用紙部6bの、搬送ローラ10からロール部6aまでの間にある部分の弛みSpapが解消され、時点TgではSpap=0となる。
【0054】
そして、時点Tgから次の搬送期間が始まる時点Taまでロール紙6および搬送ローラ10の停止状態が保たれ、その後、同様の搬送期間が繰り返される。このように、画像形成装置1では、ロール紙6の用紙部6bが一定の搬送期間での間欠搬送が行われる。
【0055】
次に図10を用いて、本実施形態におけるロール紙6の用紙部6bの斜行補正のメカニズムについて説明する。図10では、図の上側をP1と呼称し、図の下側をP2と呼称することとする。
【0056】
図10はロール紙6および搬送ローラ10を上方から見た概略構成図である。図10は搬送ローラ10によってロール紙6の用紙部6bがP2向きの斜行状態で搬送されているときの、搬送ローラ10による搬送力HとバックテンションTpapとの関係を示した図である。
【0057】
図10に示す矢印は、用紙部6bがP2向きの斜行状態で搬送されているときに用紙部6bに加わる搬送ローラ10の搬送力H、およびバックテンションTpapをベクトルで示している。用紙部6bに加わる搬送ローラ10の搬送力Hはいずれの位置においても等しい。これに対し、用紙部6bの、搬送ローラ10からロール部6aまでの間にある部分の用紙部6bは、P1側ほど張り、P2側ほど弛む傾向にある。そのため、用紙部6bの、搬送ローラ10からロール部6aまでの間にある部分に加わるバックテンションTpapは、P1側ほど大きくなり、P2側ほど小さくなる。
【0058】
したがって、用紙部6bがP2向きの斜行状態で搬送されている場合には、P1側ほど大きいバックテンションTpapが働くため、用紙部6bは搬送ローラ10に対してP1側ほど滑りが発生しやすくなる。用紙部6bは、搬送ローラ10に対してP1側が優先的に滑ることにより、用紙部6bの搬送方向は徐々にP1側に補正される。これにより、用紙部6bの斜行が解消されると、バックテンションTpapは、用紙部6bのP1側からP2側にわたって均一となり、用紙部6bの斜行補正が完了する。
【0059】
逆に、P1向きの斜行状態で搬送されているときには、用紙部6bの、搬送ローラ10からロール部6aまでの間にある部分に加わるバックテンションTpapは、P2側ほど大きくなり、P1側ほど小さくなる。そのため、用紙部6bは搬送ローラ10に対してP2側ほど滑りが発生しやすくなる。用紙部6bは、搬送ローラ10に対してP2側が優先的に滑ることにより、用紙部6bの搬送方向は徐々にP2側に補正される。これにより、用紙部6bの斜行が解消されると、バックテンションTpapは、用紙部6bのP1側からP2側にわたって均一となり、用紙部6bの斜行補正が完了する。
【0060】
本実施形態では、上述のように用紙部6bに加わるバックテンションTpapの作用によって、ロール紙6の用紙部6bの斜行補正がなされる。この斜行補正の効果は、用紙部6bに加わるバックテンションTpapが大きいほど、また、用紙部6bにバックテンションTpapが加わっている時間が長いほど、大きくなる。なお、用紙部6bに加わるバックテンションTpapの大きさが同等であり、用紙部6bにバックテンションTpapが加わっている時間の長さも同等であれば、斜行補正の効果は、用紙部6bにバックテンションTpapが加わる回数が多いほど大きくなる。
【0061】
このような斜行補正を行うことにより、ロール紙6の用紙部6bに記録される画像にスジが発生することなどの画質の低下を防止することができる。また、本実施形態に係る斜行補正は、ユーザによる斜行の手直しによる補正より短時間で行うことができる。
【0062】
図11は、搬送パス数による用紙部6bの1インチあたりの搬送における滑り量の変化を示している。搬送パス数とは、用紙部6bを1インチ搬送する際の、搬送期間の回数である。そのため、搬送パスが多いほど、1インチを多くの搬送期間に分けて搬送することになるため、1回の搬送期間における搬送量は少なくなる。
【0063】
図11は、代表的な搬送パス数として1回、2回、4回、8回、16回を選択し、滑り量の違いを示した図である。横軸は搬送パス数を示し、縦軸は滑り量を示している。縦軸では、下方ほど滑り量が大きいことを示している。なお、図11では、用紙部6bも斜行が発生していないものとしている。
【0064】
図11から、搬送パス数が1回や2回のときに滑り量が小さく、搬送パス数が4回や8回のときに滑り量が大きく、搬送パス数が16回のときに滑り量が小さいことがわかる。
【0065】
図12は、各搬送パス数における搬送速度Vlfの波形を示している。図12(A)、図12(B)、図12(C)、図12(D)は、搬送パス数がそれぞれ1回、2回、6回、16回の場合のグラフである。なお、図12のいずれにおいても、用紙部6bに斜行が発生しておらず、ロールモータ19は第2の制御モードで制御されているものとする。したがって、搬送ローラ10の加速期間以外の期間では用紙部6bにバックテンションが加わらない。
【0066】
図12(A)に示す搬送パス数が1回の場合には、各搬送期間において、搬送ローラ10は、加速期間、定速期間および減速期間を経て停止する。搬送ローラ10の各搬送期間における加速期間では、ロール紙6の用紙部6bにバックテンションが加わり、用紙部6bの搬送ローラ10に対する滑りが発生する。用紙部6bの1インチあたりの搬送において、搬送パス数が1回であるので、用紙部6bの搬送ローラ10に対する滑りが発生する回数は1回である。
【0067】
図12(B)に示す搬送パス数が2回の場合にも、搬送ローラ10の各搬送期間における加速期間では、図12(A)に示した場合と同様に、ロール紙6のロール部6aにバックテンションが加わる。そのため、用紙部6bの搬送ローラ10に対する滑りが発生する。用紙部6bの1インチあたりの搬送において、搬送パス数が2回であるので、用紙部6bに滑りが発生する回数は2回である。そのため、図11に示すように、図12(B)に示した搬送パス数が2回の場合には、図12(A)に示した搬送パス数が1回である場合よりも、用紙部6bの1インチあたりの搬送における滑り量が大きくなる。
【0068】
図12(C)に示す搬送パス数が6回の場合には、用紙部6bの搬送ローラ10に対する滑りが発生する回数は6回である。そのため、図11に示すように、図12(C)に示した搬送パス数が6回の場合には、図12(B)に示した搬送パス数が2回である場合よりも、用紙部6bの1インチあたりの搬送における滑り量が大きくなる。
【0069】
図12(D)に示す搬送パス数が16回の場合にも、搬送ローラ10の各搬送期間における加速期間では、ロール紙6の用紙部6bにバックテンションが加わる。しかし、搬送ローラ10の各搬送期間における加速期間は、搬送速度Vlfが定速速度V0に達する前に終了し、減速期間に入る。そのため、ロール紙6も、搬送ローラ10が減速期間に入るとともに減速し始める。これにより、1回の搬送期間における、繰り出し速度Vrollが搬送速度Vlfよりも大きくなる時間、すなわち、ロール紙6の用紙部6bにバックテンションが加わっている時間が短くなる。したがって、図12(D)に示した搬送パス数が16回の場合には、図12(C)に示した搬送パス数が6回である場合と比較して、バックテンションが加わる回数は多いものの、用紙部6bの1インチあたりの搬送における滑り量は小さくなる。
【0070】
上述したように、ロール紙6の用紙部6bの斜行補正の効果は、用紙部6bにバックテンションTpapが加わる回数が多いほど大きくなる。そのため、図12(C)に示した搬送パス数が6回の場合には、十分な用紙部6bの滑りが得られ、用紙部6bの十分な斜行補正が行われる。
【0071】
一方、図12(A)および図12(B)に示した搬送パス数が1回や2回の場合には、用紙部6bの1インチあたりの搬送における滑り量が少ないため、十分な用紙部6bの斜行補正が行われないことがある。そのため、画像形成装置1では、図12(A)および図12(B)に示した搬送パス数が1回や2回の場合にはロールモータ19の制御モードを第1の制御モードとする。これにより、用紙部6bに加わるバックテンションが加わっている時間が長くなるため、用紙部6bの十分な斜行補正が行われるようになる。
【0072】
また、図12(D)に示した搬送パス数が16回の場合には、用紙部6bの1インチあたりの搬送における滑り量は小さいものの、用紙部6bにバックテンションが加わる回数が多い。そのため、ロールモータ19が第2の制御モードでも、用紙部6bの十分な斜行補正が行われる。
【0073】
以上をまとめると、図6に示したロールモータ制御部120は、搬送パス数が1回または2回の場合にロールモータ19の制御モードを第1の制御モードとし、搬送パス数が6または16の場合には、ロールモータ19の制御モードを第2の制御モードとする。
【0074】
なお、ロールモータ制御部120による制御モードの選択は、各搬送期間における搬送ローラ10による搬送量に基づいて行ってもよい。たとえば、ロールモータ制御部120は、各搬送期間における搬送量が所定量より多い図12(A)、図12(B)の場合には第1の搬送モードとし、各搬送期間における搬送量が所定量より少ない図12(C)、図12(D)の場合には第2の搬送モードとする。
【0075】
図13は本実施形態に係る画像形成装置1のロール紙6の用紙部6bを搬送する流れを示したフローチャートである。まず、画像を形成するための記録動作を開始すると(S01)、搬送パス数を判断する(S02)。次に、搬送パス数が1回または2回の場合には第1の制御モードを選択し(S03)、記録動作を開始する(S04)。一方、搬送パス数が6回,16回の場合には第2の制御モードを選択し(S06)、記録動作を開始する(S07)。そして、記録動作が終了すると(S05、S08)、記録を続行するか否かを判断する(S09)。記録を続行する場合にはステップS02に戻り、記録を続行しない場合には記録を終了する。
【0076】
なお、ロールモータ19の制御モードとして第1の制御モードを選択するか第2の制御モードを選択するかの基準は、画像形成装置1の各モータ等の構成に応じて変更可能である。たとえば、搬送パス数が4回未満の場合に第1の制御モードを選択し、搬送パス数が4回以上の場合に第2の制御モードを選択することができる。
【0077】
また、画像形成装置1では、各搬送期間ごとに用紙部6bの斜行補正を行っても、用紙センサ13によって用紙部6bの斜行が検出された場合のみに斜行補正を行ってもよい。
【符号の説明】
【0078】
1 画像形成装置
6 ロール紙
6a ロール部
6b 用紙部
10 搬送ローラ
13 用紙センサ
19 ロールモータ
21,25 エンコーダセンサ
24 搬送モータ
100 制御部
110 主制御部
120 ロールモータ制御部
130 搬送モータ制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートがロール状に巻かれたロール部から引き出された被記録シート部に記録が行われるロールシートを記録媒体として用い、該ロールシートを回転させるとともに搬送ローラを回転させることによって前記被記録シート部の搬送を行う搬送期間を間欠的に繰り返しながら前記被記録シート部に記録を行う画像形成装置であって、
前記搬送期間のうち前記被記録シート部の加速期間の後において、前記被記録シート部の、前記ロール部から前記搬送ローラまでの間の部分に張力を加える第1の制御モードと、前記被記録シート部の、前記ロール部から前記搬送ローラまでの間の部分に張力を加えない第2の制御モードと、を選択可能な制御部を有する画像形成装置。
【請求項2】
前記ロールシートを回転させるロールモータと、前記搬送ローラを回転させる搬送モータと、を備え、
前記制御部は、前記ロールモータおよび前記搬送モータの回転速度をそれぞれ検出可能であり、該各回転速度に基づいて、前記被記録シート部の、前記ロール部から前記搬送ローラまでの間の部分に加わる張力を制御する、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記被記録シート部の搬送パス数に基づいて前記第1の制御モードまたは前記第2の制御モードを選択する、請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記搬送パス数が、所定の数より少ない場合に前記第1の制御モードを選択し、所定の数より多い場合に前記第2の制御モードを選択する、請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記搬送期間における前記被記録シート部の搬送量に基づいて前記第1の制御モードまたは前記第2の制御モードを選択する、請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記搬送期間における前記被記録シート部の搬送量が、所定量より多い場合に前記第1の制御モードを選択し、所定量より少ない場合に前記第2の制御モードを選択する、請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項1】
シートがロール状に巻かれたロール部から引き出された被記録シート部に記録が行われるロールシートを記録媒体として用い、該ロールシートを回転させるとともに搬送ローラを回転させることによって前記被記録シート部の搬送を行う搬送期間を間欠的に繰り返しながら前記被記録シート部に記録を行う画像形成装置であって、
前記搬送期間のうち前記被記録シート部の加速期間の後において、前記被記録シート部の、前記ロール部から前記搬送ローラまでの間の部分に張力を加える第1の制御モードと、前記被記録シート部の、前記ロール部から前記搬送ローラまでの間の部分に張力を加えない第2の制御モードと、を選択可能な制御部を有する画像形成装置。
【請求項2】
前記ロールシートを回転させるロールモータと、前記搬送ローラを回転させる搬送モータと、を備え、
前記制御部は、前記ロールモータおよび前記搬送モータの回転速度をそれぞれ検出可能であり、該各回転速度に基づいて、前記被記録シート部の、前記ロール部から前記搬送ローラまでの間の部分に加わる張力を制御する、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記被記録シート部の搬送パス数に基づいて前記第1の制御モードまたは前記第2の制御モードを選択する、請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記搬送パス数が、所定の数より少ない場合に前記第1の制御モードを選択し、所定の数より多い場合に前記第2の制御モードを選択する、請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記搬送期間における前記被記録シート部の搬送量に基づいて前記第1の制御モードまたは前記第2の制御モードを選択する、請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記搬送期間における前記被記録シート部の搬送量が、所定量より多い場合に前記第1の制御モードを選択し、所定量より少ない場合に前記第2の制御モードを選択する、請求項5に記載の画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−28007(P2013−28007A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164172(P2011−164172)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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