説明

画像投影表示装置

【課題】画像投影表示装置の画像投影光学ユニットを回動させることなく、スクリーン上での画像の回動位置を調整できる画像投影表示装置を得る。
【解決手段】画像を投影する画像投影光学ユニットと;スクリーンと;上記画像投影光学ユニットから射出した光線を反射して折り曲げ、上記スクリーンに斜めに入射させる少なくとも二枚のミラーと;を備えた画像投影表示装置において、上記スクリーンに最も近い大ミラーとスクリーン法線のなす角をα、その次にスクリーンに近い小ミラーとスクリーン法線のなす角をβとし、上記小ミラーを、スクリーンと平行で、該小ミラーでの反射前後の基準主光線を含む平面内に位置する回転調整軸を中心に回転調整可能とし、その最大回転調整可能角度をCとしたとき、次の条件式(1)を満足するようにα及びβを設定した画像投影表示装置。
(1) |sin(2α+2β)/cosβsinC|>20

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像投影表示装置(リアプロジェクションテレビ)に関し、特にそのスクリーン上での像の回転を調整することができる画像投影表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像投影表示装置(リアプロジェクションテレビ)は、画像投影光学ユニットから射出した光束をスクリーンに投影して画像として観察する。この画像投影表示装置では、小型化、薄型化を図るため、画像投影光学ユニットから射出した光線を反射して折り曲げ、スクリーンに対して斜めに入射させている。
【特許文献1】特開2005−43681号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この斜め投影方式の画像投影表示装置では、画像投影光学ユニットの光軸(正確にはスクリーン中央に向かう光束の主光線、以下「基準主光線」と呼ぶ)がミラーによりスクリーンに対して斜めに折り曲げられているため、組立時にスクリーン上での画像の回転位置を調整するとき、画像投影光学ユニット自体を水平・鉛直ではない斜めな軸を中心に回動調整しなければならなかった。
【0004】
しかし、画像投影光学ユニットは重量があるため、それを保持しつつ斜めの軸中心に回動調整することは機構的に困難である。
【0005】
本発明は、画像投影光学ユニットを斜めな軸を中心に回動させることなく、スクリーン上での画像の回動位置を調整できる画像投影表示装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、画像を投影する画像投影光学ユニットと、スクリーンと、画像投影光学ユニットから射出した光線を反射して折り曲げ、スクリーンに斜めに入射させる少なくとも二枚のミラーと、を備えた画像投影表示装置においては、スクリーンから二番目のミラーを、スクリーンと平行で、該小ミラーでの反射前後の基準主光線を含む平面内に位置する回転調整軸を中心に回転調整すると、スクリーン上での画像の回転調整が可能であること、及びこの画像の回転調整に伴って生じる台形ひずみ(像面の倒れ)は、スクリーン法線と、該スクリーンに近い大ミラーと小ミラーがそれぞれなす角度を、最大回転調整可能量に応じて、所定の関係を満たすように定めることにより、許容値内に収めることができること、を見いだしてなされたものである。
【0007】
すなわち、本発明は、スクリーンに最も近い大ミラーとスクリーン法線のなす角をα、その次にスクリーンに近い小ミラーとスクリーン法線のなす角をβとし、小ミラーを、スクリーンと平行で、該小ミラーでの反射前後の基準主光線を含む平面内に位置する回転調整軸を中心に回転調整可能とし、その最大回転調整可能角度をCとしたとき、次の条件式(1)を満足するようにα及びβを設定したことを特徴としている。
(1) |sin(2α+2β)/cosβsinC|>20
【0008】
条件式(1)は、小ミラーの最大回転調整可能角度Cをそれぞれ、90′以下、60′以下、30′以下としたときには、次の条件式(2)、(3)、(4)と書き換えることができる。
(2) |sin(2α+2β)/cosβ|>0.18
(3) |sin(2α+2β)/cosβ|>0.35
(4) |sin(2α+2β)/cosβ|>0.52
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、スクリーン法線と、該スクリーンに近い大ミラーと小ミラーがそれぞれなす角度を条件式(1)を満足するように設定することにより、像面の倒れを許容値に収めながら、スクリーン上での画像の回転調整を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1(A)は、本発明による斜め入射の画像投影表示装置(リアプロジェクションテレビ)10を示す概念図である。画像投影表示装置10は、筐体11の一面に平面スクリーン12を有し、該筐体11内に、画像投影光学ユニット(画像エンジン)13、小ミラー14及び大ミラー(固定ミラー)15を有している。画像投影光学ユニット13から射出された画像光束(光線)は、小ミラー14で反射して折り曲げられた後、大ミラー15に入射し、大ミラー15でさらに反射して折り曲げられた光線が平面スクリーン12に斜めに入射する。画像投影光学ユニット13と平面スクリーン12の間に、複数のミラーが介在してもよいが、画像投影光学ユニット13からの画像光束が、平面スクリーン12に対して斜めから(直交する方向以外から)入射することが必須である。大ミラー15はスクリーン12に最も近いミラーであり、小ミラー14は次にスクリーン12に近いミラーである。
【0011】
以上の画像投影表示装置10において、本実施形態では、小ミラー14を、スクリーンと平行な鉛直軸(小ミラー14での反射前後の基準主光線を含む平面内にあってスクリーンと平行な軸)14Vを中心に回転調整可能としており、この回転調整軸14Vを中心とする小ミラー14の回転調整Cにより、スクリーン12上で画像を回転させる。そして、スクリーン12上で画像Iを回転させる状態を図1(B)に示している。すなわち、スクリーン12を正面から見た状態で、画像Iは(小ミラー14を軸14Vを中心に回転させることで)スクリーン12に対して、時計回り又は反時計回りに調整される。
【0012】
この回転調整軸14Vを中心とする小ミラー14の回転Cは、スクリーン12上での画像の回転だけでなく、スクリーン12上での台形ひずみ(像面12Pのスクリーン12に対する倒れ)を生じさせる。図1(A)ではこの像面12Pの倒れを誇張して描いている。
【0013】
本実施形態は、スクリーン12に最も近い大ミラー15とスクリーン12の法線のなす角をα、その次にスクリーンに近い小ミラー14とスクリーン12の法線のなす角βとして、小ミラー14に回転調整軸14Vを中心とした最大回転調整可能角度Cに応じて、条件式(1)を満足するようにαおよびβを設定することで、この像面12Pの倒れ(台形ひずみ)を許容値内に収めながら、スクリーン12上での画像の回転調整を行うことができる。
(1) |sin(2α+2β)/cosβsinC|>20
【0014】
以下、この条件式(1)について説明する。図2(A)に示すように、大ミラー15による小ミラー14及びその回転調整軸14Vの鏡像をそれぞれ鏡像小ミラー14’及び鏡像回転調整軸14V’とし、この鏡像に関して、図2(B)のように座標系を定める。座標系は、スクリーン12の法線方向をx軸とするxyz座標系と、鏡像小ミラー14’の鏡像回転調整軸14V’をx’軸とするx’y’z’座標系を考える。図2(B)において、Aは、スクリーン法線と鏡像回転調整軸14’のなす角、Bは、小ミラー14とスクリーン法線のなす角β、Cは鏡像小ミラー14’の鏡像回転調整軸14V’を中心とする回転角である。
なお、以降の説明においては、α、β及びCの単位は、別途明記しない限りは、[ °](degree)とする。
【0015】
小ミラー面の鏡像を表す、二次元ベクトルMは、回転軸に直交する、x'y'z'座標系において次の数1で表される。
【数1】

【0016】
回転調整軸を中心に角度C回転したときの、小ミラー面M'は
同座標系において、次の数2のような小ミラーMの回転変換で表現できる。
【数2】

【0017】
このM'を、x'y'z'座標系からxyz座標系に変換した二次元ベクトルM"は
次の数3の座標変換で表される。
【数3】

【0018】
これを解いて整理すると、次の数4になる。
【数4】

小文字のs,tは任意の値を表す。
【0019】
ここで、
右辺第一項より、x-y断面でのミラー面の傾きy/x、
右辺第二項より、y-z断面でのミラー面の傾きy/z、
を求めると以下の数になる。
y/x = (-sinAsinBcosC+cosAcosB)/(-cosAsinBcosC-sinAcosB)
y/z = sinBsinC/(-cosAsinBcosC-sinAcosB)
角度Cで微分して、微少回転ΔC時の傾き変化Δy/x、Δy/zを求めると、
Δy/x=(sinBcosBsinC)/(-cosAsinBcosC-sinAcosB)
Δy/z=(cosAsinB2-sinAsinBcosBcosC)/(-cosAsinBcosC-sinAcosB)
Δy/z /Δy/x=(cosAsinB-sinAcosBcosC)/(cosBsinC)
=sin(A-B)/cosBsinC-sinAcosB(1-cosC)/(cosBsinC)
右の項は十分小さいとして
=sin(A-B)/(cosBsinC)
【0020】
これは、yz断面上での傾き量と、yx断面上での傾き量の比を表し、すなわち、画像(時計回り)回転量と、像面の前後倒れ量、の比を表す。調整に使う角度範囲C内で、回転を調整した際に、前後倒れが発生する比率は、5%以内が望ましく、
Δy/z/Δy/x>20
を目安とする。換言すると、この式は回転調整量Cによって発生する画像回転量が前後倒れ量の20倍より大きいことを意味している。
【0021】
ここで、
A=90-2α-β
B=β
として書き換えると、
Δy/z/Δy/x=sin(2α+2β)/(cosβsin C)>20
両辺にsin Cを掛けて
sin(2α+2β)/cosβ>20sinC
【0022】
次に、具体的な小ミラー14の回転調整軸14Vを中心とする回転角と画像回転調整量及び像面の倒れ量の実施例を説明する。
実施例1
前提条件として小ミラー14の最大回転調整可能量Cを90′に設定した時、
条件式(1)を満足する範囲で、α及びβを以下のように設定することができる。
α=20゜
β=40゜
この時、以下の通り条件式(2)を満たしている。
|sin(2α+2β)/cosβ|=0.65
この結果、画像回転発生量及び像面の倒れ発生量は以下のような値となる。
画像回転発生量=3゜
像面の倒れ発生量=0.12゜
すなわち、画像回転発生量が像面の倒れ発生量の25倍となり、必要な画像回転調整をしても、発生する像面の倒れ量は僅かである。

また、同じミラー構成において、最大回転調整可能量Cを60′に設定した時、
以下の通り、条件式(3)を満たしている。
|sin(2α+2β)/cosβ|=0.75
この結果、画像回転発生量及び像面の倒れ発生量は以下のような値となる。
画像回転発生量=2゜
像面の倒れ発生量=0.046゜
すなわち、画像回転発生量が像面の倒れ発生量の43倍となり、必要な画像回転調整をしても、発生する像面の倒れ量は僅かである。

さらに、同じミラー構成において、最大回転調整可能量Cを30′に設定した時、以下の通り、条件式(4)を満たしている。
|sin(2α+2β)/cosβ|=1.31
この結果、画像回転発生量及び像面の倒れ発生量は以下のような値となる。
画像回転発生量=1゜
像面の倒れ発生量=0.007゜
すなわち、画像回転発生量が像面の倒れ発生量の143倍となり、必要な画像回転調整をしても、発生する像面の倒れ量は僅かである。
【0023】
実施例2
上記と同様に 前提条件として小ミラー14の最大回転調整可能量Cを90′に設定した時、条件式(1)を満足する範囲で、α及びβを以下のように設定することができる。
α=25゜
β=51.5゜
この時、この時、以下の通り条件式(2)を満たしている。
|sin(2α+2β)/cosβ|=1.43
この結果、画像回転発生量及び像面の倒れ発生量は以下のような値となる。
画像回転発生量=3゜
像面の倒れ発生量=0.055゜
すなわち、画像回転発生量が像面の倒れ発生量の55倍となり、必要な画像回転調整をしても、発生する像面の倒れ量は僅かである。
また、同じミラー構成において、最大回転調整可能量Cを60′に設定した時、
以下の通り、条件式(3)を満たしている。
|sin(2α+2β)/cosβ|=1.65
この結果、画像回転発生量及び像面の倒れ発生量は以下のような値となる。
画像回転発生量=2゜
像面の倒れ発生量=0.021゜
すなわち、画像回転発生量が像面の倒れ発生量の95倍となり、必要な画像回転調整をしても、発生する像面の倒れ量は僅かである。
さらに、同じミラー構成において、最大回転調整可能量Cを30′に設定した時、以下の通り、条件式(4)を満たしている。
|sin(2α+2β)/cosβ|=2.86
この結果、画像回転発生量及び像面の倒れ発生量は以下のような値となる。
画像回転発生量=1゜
像面の倒れ発生量=0.003゜
すなわち、画像回転発生量が像面の倒れ発生量の3000倍以上となり、必要な画像回転調整をしても、発生する像面の倒れ量はほとんど発生しない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明による画像投影表示装置の概念図である。
【図2】同装置の原理を示す図である。
【符号の説明】
【0025】
10 画像投影表示装置
11 筐体
12 平面スクリーン
13 画像投影光学ユニット
14 小ミラー
14V 回転調整軸(スクリーン平行鉛直軸)
15 大ミラー(固定ミラー)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を投影する画像投影光学ユニットと;
スクリーンと;
上記画像投影光学ユニットから射出した光線を反射して折り曲げ、上記スクリーンに斜めに入射させる少なくとも二枚のミラーと;
を備えた画像投影表示装置において、
上記スクリーンに最も近い大ミラーとスクリーン法線のなす角をα、その次にスクリーンに近い小ミラーとスクリーン法線のなす角をβとし、
上記小ミラーを、スクリーンと平行で、該小ミラーでの反射前後の基準主光線を含む平面内に位置する回転調整軸を中心に回転調整可能とし、その最大回転調整可能角度をCとしたとき、次の条件式(1)を満足するようにα及びβを設定したことを特徴とする画像投影表示装置。
(1) |sin(2α+2β)/cosβsinC|>20
【請求項2】
請求項1記載の画像投影表示装置において、上記最大回転調整可能角度Cが、90′以内の時、次の条件式(2)を満足する画像投影表示装置。
(2) |sin(2α+2β)/cosβ|>0.18
【請求項3】
請求項1記載の画像投影表示装置において、上記最大回転調整可能角度Cは、60′以内の時、次の条件式(3)を満足する画像投影表示装置。
(3) |sin(2α+2β)/cosβ|>0.35
【請求項4】
請求項1記載の画像投影表示装置において、上記最大回転調整可能角度Cは、30′以内の時、次の条件式(4)を満足する画像投影表示装置。
(4) |sin(2α+2β)/cosβ|>0.52

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−33303(P2008−33303A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−173660(P2007−173660)
【出願日】平成19年7月2日(2007.7.2)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】