説明

画像表示装置

【課題】外光反射光を低減させる一方、表示光の輝度を向上させることができ、高コントラスト化を図ることが可能となる画像表示装置を提供する。
【解決手段】複数個の画素で構成された画像表示装置であって、
前記画素は、発光層と前記発光層よりも外光の入射側に設けられた媒質層との間に構造層を備え、
前記構造層は、微粒子が周囲の領域中に配列され、前記画像表示装置の画面と平行な面内において屈折率分布を有する構造を備え、
前記微粒子は、コアと該コアの外周領域を形成するシェルとによって構成され、該コアを形成する媒質、該シェルを形成する媒質、該外光の入射側に設けられた媒質層及び前記周囲の領域を形成する媒質は、それぞれ異なる屈折率を有し、
それらの屈折率が、次式の関係を満たす構成とする。

core(コアの屈折率)>Nshell(シェルの屈折率)>Nlow(周囲領域等の屈折率)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置に関するものであり、特に高いコントラストを有する画像表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、種々の構成の画像表示装置が提案されている。その一例として、図6に断面図として示す構成のものが知られている。
図6は、一つの画素1002を示しており、このような画素構造を複数個配列することで、画像表示装置1000が構成されている。
図6に示す画像表示装置1000は、前面板1001の内面に、画素1002が設けられている。
前面板1001は、可視光に対して透明な媒質で形成され、例えばガラスやプラスチックなどで形成される。
画素1002は、発光層1003と、発光層を励起するための励起源1004で構成されている。
励起源1004は、例えば、基板上に電子放出素子と電極を配列し、前面板1001と発光層1003の間に、電極を設けることで構成される。
このような構成とし、電子放出素子に電界を加えることで電子が放出され、発光層に電子が供給されることで発光層で光が生成される。
あるいは、励起源1004の別の構成として、発光層の前面および裏面に陽極および陰極を設けることで構成される。
発光層で生成された光は、前面板1001を透過し、外部に抽出されることで、表示光1005となる。
【0003】
画像表示装置は、高いコントラストを有することが求められる。
明所下において画像表示装置のコントラストを向上させるためには、表示輝度を向上させると共に、外光反射光を低減させ、黒表示時の最低輝度を低減することが必要である。
ここで、外光反射光とは、外部から画像表示装置に入射した光が、画像表示装置内で反射され、外部に放出される光のことをいう。
画像表示装置1000において、外光1006が入射すると、前面板1001と発光層1003との界面および発光層1003や励起源1004の裏面において強い反射光が発生し、反射光1007となる。
また、画像表示装置1000において、表示光の輝度を高くするためには、発光層1003で発生した光が外部に抽出される間の損失を低減することが重要である。
この損失の要因の一つとして、発光層1003と前面板1001との界面、あるいは前面板1001と外部領域との界面における全反射損失がある。
高屈折率媒質から低屈折率媒質に向けて光が伝搬すると、臨界角よりも大きな角度で伝搬する光は全反射され、高屈折率媒質に閉じ込められる。
このような光は、低屈折率媒質中に抽出されず、高屈折率媒質中を伝搬し、損失となる。
【0004】
全反射損失を低減し、表示光の輝度を増大させる手法として、屈折率が異なる媒質で形成された層と層の間に、微細構造を設ける手法が提案されている。
例えば、特許文献1では、図7に示す構成のものが記載されている。
図7に示す画像表示装置1100は、前面板1101および透明電極1102、発光層1103、電極層1104で構成され、前面板1101と発光層1103の間に微細構造1105を設けた構成が記載されている。
微細構造1105は、領域1107中に、微粒子1106を配列した構造であり、光の波長程度の周期の屈折率分布を有している。
発光層1103の内部で発生した光を回折させることによって、臨界角以内の角度で伝搬する光を増大させ、外部に抽出される表示光1108を増大できることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−243669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来例における特許文献1に記載されている手法では、外光反射光1112が大きいという課題を有している。このような課題について、以下に説明する。
図7において、微粒子1106を構成する媒質は、周囲の領域1107の媒質とは異なる屈折率を有する媒質である。
このような微細構造1105に、外光1109が入射すると、光は微粒子1106と領域1107との界面20、あるいは、前面板1101と微粒子1106との界面21において、屈折率差によって反射される。
反射された光は反射回折光となり、そのうち臨界角以内の角度で伝播する光が前面板の外部に射出され、外光反射光1112となる。
このような従来の構成では、界面20、あるいは、界面21で大きな屈折率差があるため、各界面で強い反射光が発生する。
これらの反射光によって、外光反射光1112が増大し、コントラストの低下の要因となる。
そのため、従来は光吸収フィルタを配置したり、吸収型の偏光フィルタと1/4波長板を配置するなど、別の手段を用いて外光反射の低減が行われている。
しかし、このような手段を用いると、表示光1108も吸収され、表示輝度の低下や消費電力の増大を招くこととなる。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑み、外光反射光を低減させる一方、表示光の輝度を向上させることができ、高コントラスト化を図ることが可能となる画像表示装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の複数個の画素で構成された画像表示装置は、
前記画素は、発光層と前記発光層よりも外光の入射側に設けられた媒質層との間に構造層を備え、
前記構造層は、微粒子が周囲の領域中に配列され、前記画像表示装置の画面と平行な面内において屈折率分布を有する構造を備え、
前記微粒子は、コアと該コアの外周領域を形成するシェルとによって構成され、該コアを形成する媒質、該シェルを形成する媒質、該外光の入射側に設けられた媒質層及び前記周囲の領域を形成する媒質は、それぞれ異なる屈折率を有し、
それらの屈折率が、次の(式1)の関係を満たすことを特徴とする。

core > Nshell > Nlow (式1)

但し、
core:前記コアを構成する媒質の屈折率
shell:前記シェルを構成する媒質の屈折率
low:前記外光の入射側に設けられた媒質層と前記周囲の領域を形成する媒質を比較した際の低い方の屈折率
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、外光反射光を低減させる一方、表示光の輝度を向上させることができ、高コントラスト化を図ることが可能となる画像表示装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例1である画像表示装置の構成例を説明する図であり、図1(a)は画像表示装置のxz断面図、図1(b)は画像表示装置に含まれる微細構造のxy断面。
【図2】本発明の実施例1における外光反射率を計算した結果を示すグラフ。
【図3】本発明の実施例1における外光反射率を計算した結果を示すグラフ。
【図4】本発明の実施例1における外光反射率および光取り出し効率を計算した結果を示すグラフ。
【図5】本発明の実施例2における画像表示装置のxz断面図。
【図6】従来例の画像表示装置のxz断面図。
【図7】従来例である特許文献1の画像表示装置のxz断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態をつぎの各実施例に基づいて説明する。
【実施例】
【0012】
[実施例1]
実施例1として、図1を用いて本発明を適用した画像表示装置の構成例について説明する。
図1(a)に示す画像表示装置のxz断面図において、100は画像表示装置であり、本実施例の画像表示装置100は、前面板101と画素102で構成され、画素102は前面板101の背面に配置されている。
図1には、一つの画素102を示しており、このような画素102を複数個配列することで、画像表示装置100が構成されている。
各画素102は、光吸収性を有する媒質で形成されたブラックマトリクスで区切られている。前面板101は、可視光に対して透明な媒質で形成されており、例えば、ガラスで形成されている。
【0013】
画素102は、発光層104と微細構造層105と励起源(励起手段)103で構成されている。
微細構造層105は、発光層104と該発光層よりも外光の入射側に設けられた媒質層からなる前面板101との間に配置されている。
発光層104は、例えば、蛍光体を含む膜となっており、可視波長域である波長350nm以上、800nm以下の波長を含む光を発生する。
微細構造層105は、微粒子106を画面に平行なxy平面内に配置した構造である。
微粒子106は、中心部と外周部とで異なる媒質で構成されている。ここでは微粒子106の中心部をコア、外周部をシェルと記す。
微細構造層105は、コア107と該コアの外周領域を形成するシェル108によって構成された微粒子106が、その周囲の領域中109に配列された構造を備えている。
これらのコア107、シェル108及び周囲の領域109は、それぞれ互いに異なる屈折率を有する媒質で構成されている。
【0014】
図1(b)は、微細構造層105のyz平面における構成の一例を示した図である。
微細構造層105は、図中で示したベクトルA1およびA2を基本格子ベクトルとし、基本格子ベクトルの和あるいは差で表される位置に微粒子106を配列した、三角格子構造を有している。
ベクトルA1は、格子周期13の長さをaとすると、(0.5a、√3a/2、0.0)のベクトルであり、ベクトルA2は(0.5a、−√3a/2、0.0)のベクトルである。
励起源103は、発光層104に電子を注入する手段を含んでいる。
例えば、励起源103は、基板上に電子放出素子と電極を配置し、発光層104の表面に透明電極を設けることで構成される。
このような構成において、電子放出素子に電界を加えると、発光層104に向けて電子が放出され、発光層104に電子が供給され、光が発生する。
発生した光は、微細構造層105および前面板101を透過し、外部に抽出されることで、+z方向に伝搬する表示光110となる。
【0015】
本発明における画像表示装置100において、高コントラスト化を図ることが可能となる理由を次に述べる。
図1(a)において、画像表示装置100に外光111が入射すると、光は外部領域と前面板101との界面を透過し、微細構造層105に到達する。
微細構造層105に到達した光は、前面板101とシェル108との界面10、シェル108と周囲の領域109との界面11、コア107とシェル108との界面12で、屈折率差によって反射光が発生する。
各界面で発生した反射光は反射回折光となり、このうち前面板と外部領域との界面における臨界角以内の角度で伝播する光を積算することで外光反射光115となる。
コア107、シェル108、領域109を構成する媒質がつぎの式(1)を満たすように、各媒質を選択する。

core > Nshell > Nlow (式1)

式(1)において、Ncoreはコア107を形成する媒質の屈折率、Nshellは、シェル108を形成する媒質の屈折率、Nlowは、前面板101と領域109を形成する媒質を比較した際の小さい方の屈折率を表している。
このような構成とすることで、各界面における屈折率差が小さくなり、各界面で発生する反射光の強度を小さくすることができ、外光反射光115を低減することができる。
コア107とシェル108で構成された微粒子106を配置し、シェル108を構成する媒質を適切に選択する。
これにより、微粒子106と前面板101との界面および微粒子106と領域109との界面における反射光を低減し、外光反射光115を低減することができる。
【0016】
また、微細構造層105は、発光層104の内部で発生した光を回折させ、発光層104と前面板101との界面および前面板101と外部との界面における臨界角以内の角度で伝搬する光を増大させ、表示光110の輝度を向上させることができる。
このように外光反射光115を低減させる一方、表示光110の輝度を向上させるように、微細構造層105の構造や構成する媒質を適切に設定することよって、高いコントラストを有する画像表示装置100を得ることができる。
本実施例の構成において、微粒子106を作製した後、溶媒中に微粒子106を分散させ、その溶液を前面板101に塗布して、溶媒を除去することで、微粒子106が配列した構造を作製することができる。
このとき、各工程の条件を適切に設定することで、微粒子106が三角格子状に分布し、最近傍の微粒子106が互いに接する状態で配置された最密充填構造を簡単に作製することができる。
微粒子106の直径14およびコアの直径15が適切な長さを有する微粒子106を予め作製し、配列することで、簡易な方法で、最適な微粒子径14、コア径15、周期間隔13を有する微細構造層105を作製することができる。
【0017】
図7に示す従来の構成では、上記の工程で得られる構造は、微粒子1106の直径と周期間隔が同じ構造となり、外光反射が大きい構造となる。
また、従来の構成として、微粒子1106の直径と周期間隔とが異なる長さを有する微細構造が考えられる。
しかしながら、このような構造を作製するには、微粒子を配列した後、エッチング等の手段を用いて微粒子の外形を小さくするプロセスが新たに必要となり、作製工程が増加する。
本実施例の構成では、簡易なプロセスで、最適な構造を有する微細構造を得ることができ、これにより、外光反射光を低減する効果と表示光の輝度を増大する効果によって、高いコントラストを有する画像表示装置を得ることができる。
【0018】
つぎに、本実施例における画像表示装置100に含まれる微細構造層105の一例について説明する。
図1の微細構造層105において、格子周期13は2300nm、微粒子の直径14は2300nmの長さを有し、コアの直径15は1150nmの長さを有している。
微粒子106のコアを構成する媒質の屈折率を2.6、領域109を構成する媒質の屈折率は1.0となっている。
前面板101は屈折率が1.46の媒質、発光層104は屈折率が1.5の媒質で形成されている。
また、励起源103として、発光層104と微細構造層105の間に屈折率1.8の媒質で形成された透明電極が配置され、発光層104の背面に電子源が配置されている。発光層104の背面の領域は真空となっている。
【0019】
図2は、このような画像表示装置において、外光を入射させたときの外光反射光の強度を示した図である。
図2の横軸は、シェル108を構成する媒質の屈折率を表しており、縦軸は外光反射光の強度を示している。
さらに、図2には、従来の構成における微細構造を含む画像表示装置の外光反射率を破線で示した。
従来の構成における微細構造は、図7の微細構造1105において、格子周期の長さを2300nmとし、微粒子の直径が2300nmの長さを有している。
また、微粒子1106を構成する媒質の屈折率を2.6とし、領域1107、前面板1101、発光層1103、透明電極1102を構成する媒質の屈折率は、本実施例と同じ屈折率を有している。
【0020】
図2において、破線は、従来の構成の特性を示しており、実線は、本発明における構成の特性を示している。
なお、前面板101と外部領域との界面における反射光および発光層104と背面領域との界面からの反射光は、本発明と従来の構成とで同じ構成であるため、無視している。
また、実際の画像表示装置の外光反射率は、ブラックマトリクスやカラーフィルタなどを用いて更に低減され、低い値となるが、図には示していない。外光反射率の計算は、転送行列法を用いて行った。
図2に示すように、本発明の構成で、シェル108を、コア107を構成する媒質の屈折率よりも小さく、領域109を構成する媒質の屈折率よりも大きい媒質とする。
すなわち、2.6よりも小さく、1.1よりも大きい屈折率を有する媒質とすると、従来よりも外光反射率を低下することができる。
これにより、外光反射が低く、高いコントラストを有する画像表示装置を得ることが出来る。
【0021】
さらに、図1の構成において、領域109を構成する媒質の屈折率を1.8としたときの外光反射光の強度を図3に示す。
図3の横軸は、シェル108を構成する媒質の屈折率を表しており、縦軸は外光反射光の強度を示している。
さらに、図3には、従来の構成における微細構造を含む画像表示装置の外光反射率を破線で示した。
本実施例の構成で、格子周期13、微粒子の直径14は図1と同様の構成となっている。
前面板101、発光層104、透明電極103、コア107を構成する媒質は図1の構成と同じ屈折率を有している。
同じく、従来の構成における微細構造1105は、領域1107の屈折率を1.8とし、前面板1101、透明電極1102、発光層1103、微粒子1106、領域1107の屈折率は、本実施例と同じ屈折率を有している。
なお、前面板101と外部領域との界面における反射光および発光層104と背面領域との界面からの反射光は無視している。
また、外光反射率の計算は、転送行列法を用いて行った。図3に示すように、本発明の構成で、シェル108をコア107を構成する媒質よりも小さく、前面板101よりも大きい屈折率を有する媒質とする。
すなわち、2.6よりも小さく、1.46よりも大きい屈折率を有する媒質とすると、従来よりも外光反射を低下することができる。
これにより、外光反射が低く、高いコントラストを有する画像表示装置を得ることが出来る。
【0022】
さらに、図1の微細構造層105において、コア107の直径15を微粒子106の直径14で除算した値を、ここではコア対シェルの比と記す。
コア対シェルの比を変化させたときの外光反射光の強度を図4に示す。
発光層で発生した光のうち、表示光として外部に抽出される光の割合を、ここでは光取り出し効率と記す。
図4には、光取り出し効率も示している。図中の実線は光取り出し効率、破線は外光反射率を示している。
図4の横軸はコア対シェルの比を表しており、左側の縦軸は光取り出し効率、右側の縦軸は外光反射率を表している。
格子周期13、微粒子の直径14の長さ、前面板101、発光層104、透明電極103、コア107、領域109を構成する媒質は図1と同じ構成とし、シェル108を構成する媒質の屈折率を1.8としている。
【0023】
図4に示すように微粒子のコア対シェルの比を大きくすると、高い光取り出し効率が得られ、表示光の輝度を増大することができる。
また、微粒子のコア対シェルの比を小さくすると、外光反射率を低減することができる。
本実施例の構成において、微粒子のコア対シェルの比は、0.3以上、0.95以下が望ましく、この範囲の値にすることで、表示光の輝度を増大させる効果と外光反射を低減する効果の両方について、高い効果を得ることができる。
より好ましくは、微粒子の微粒子のコア対シェルの比は、0.5以上、0.9以下にすることで更に高い効果を得ることができる。
以上より、本発明にかかる画像表示装置100において、図1で示したコア107とシェル108を含む微粒子106とその周囲の領域109で構成された微細構造層105を前面板101と発光層104の間に設ける。
そして、コア107、シェル108、領域109、前面板101が、式1の条件を満たすように、各構造を構成する媒質を選択する。これにより外光反射率を低減できることを示した。
【0024】
なお、微細構造層105における画像表示装置の画面と平行な面内において屈折率分布の周期を構成する格子周期をΛとするとき、この格子周期Λは以下の(式2)に示す関係を満たすことが好ましい。

【0025】
このような格子周期を有する構造に対して、外光107が入射すると、反射回折光と透過回折光に分配される。
このとき、反射光は2次以上の多数の反射回折光に分配されるため、各光線の強度は小さい値となる。同様に、透過光も2以上の多数の透過回折光に分配される。
各透過回折光は発光層の裏面で反射されたのち、微細構造層105に入射し、さらに多数の透過回折光に分配されたのち、一部の透過回折光が外光反射光となる。
外光は、外部に射出される間に多数の透過回折光に分配されるため、各光線の強度は非常に小さい値となる。外光反射光は、これら多数の強度が小さい反射回折光および透過回折光を積算した光となる。
外光の入射角度や波長が変動しても、外光は多数の反射回折光および透過回折光に分配されるため、各光線の強度の変動が小さく、これら多数の光線を積算した光である外光反射光の変動も小さくなる。
また、格子周期を大きくすると、微細構造層105の回折効率が低下し、高次の回折光に分配される光が少なくなるため、上記の効果が低減する。
これにより、本実施例における画像表示装置100の構成によって、周囲の環境によらず、コントラストの変動が小さい画像表示装置を得ることができる。
【0026】
なお、本発明に含まれる微細構造層105は、図1で示した構造に制限されるものではなく、格子周期13、微粒子106の直径14およびコアの直径15は、本実施例で示した長さとは異なる長さでもよい。
三角格子構造は、構造の対称性がよく、微細構造に入射する光の角度依存性が少ないため、画像表示装置100からの外光反射光あるいは表示光の強度の角度依存性を低減することができる。
あるいは、格子周期13と微粒子106の直径14は異なる長さでもよく、微粒子106が互いに接しないように配置してもよい。
格子周期13、微粒子106の直径14およびコアの直径15を適切に選択することで、微細構造層105で発生する高次の回折光の強度を強くすることができ、発光層で発生した光を回折させ、表示光の輝度の増大効果を向上させることができる。
あるいは、微細構造層105は、微粒子106を前面板に並行な面内において、ランダムな位置に配置した構造であってもよい。
局所的に異なる角度依存性を有する微細構造の特性が、面内において画素内で平均化され、微細構造に入射する光の角度依存性を少なくし、画像表示装置100からの外光反射光あるいは表示光の強度の角度依存性を低減することができる。
【0027】
なお、本発明に含まれる前面板101は、可視光に対して透明な材料であればよく、プラスチックで形成してもよい。
また、励起源103は、前面板101と発光層104との間および発光層104の裏面に陽極と陰極を設けた構成であってもよい。
両電極間に電流を印加し、電子と正孔を注入することで、発光層104で光を発生させることができる。あるいは、励起源103は、基板上に電極を配置し、発光層104の前面あるいは背面に、セルと電極を配列した構成としてもよい。
セルには、電流を流すことによって、プラズマを発生し、紫外線を発生するガスが封入されている。
このような構成とし、セルに含まれるガスに電流を流すと、紫外線が発生し、蛍光体粒子に照射されることで、蛍光体粒子が励起される。さらに、発光層104は、蛍光体粒子を、蛍光体粒子と同じ屈折率を有する媒質中に分散させて配置することで構成してもよい。
このような構成にすることで、蛍光体粒子とその周囲との境界で、屈折率の差によって発生する散乱反射を低減することができ、発光層104で発生する拡散反射を抑制することができる。
発光層104は、本実施例で示した屈折率を有する媒質以外の媒質でもよい。
【0028】
[実施例2]
実施例2として、図5を用いて実施例1とは異なる形態の画像表示装置の構成例について説明する。
図5に示す画像表示装置のxz断面図において、200は画像表示装置であり、本実施例の画像表示装置200は、前面板201と、赤色、緑色、青色の各色を表示する画素202、203、204で構成されている。
また、画素202、203、204は前面板201の背面に配置されている。
各画素は光吸収性を有する媒質で形成された隔壁212によって区切られている。
図5には、3つの画素202、203、204を示しており、このような画素を複数個配列することで、画像表示装置200が構成されている。
前面板201は、可視光に対して透明な媒質で形成されており、例えば、ガラスで形成されている。
【0029】
画素202、203、204は、発光層205、206、207と微細構造209、210、211と励起源208で構成されている。
微細構造209は、発光層205、206、207の前面に配置され、励起源203は、発光層205、206、207と前面板201との間に配置されている。
各画素の発光層205、206、207には、赤色、緑色、青色の各波長の光を発生する蛍光体を含んでいる。
【0030】
微細構造209は、コア216とシェル219で構成された微粒子213を、領域222中に配列した構造である。
コア216とシェル219と領域222は、互いに異なる屈折率を有する媒質で構成されている。
また、シェル219を構成する媒質は、コア216を構成する媒質よりも低い屈折率を有し、前面板201あるいは領域222よりも高い屈折率を有している。同様に、微細構造210、211は、コア217、218とシェル220、221で構成された微粒子214、215を、領域223、224中に配列した構造である。
コア217とシェル220と領域223、およびコア218とシェル221と領域224は、互いに異なる屈折率を有する媒質で構成されている。
また、シェル220、221を構成する媒質は、コア217、218を構成する媒質よりも低い屈折率を有し、前面板201あるいは領域223、224よりも高い屈折率を有している。
【0031】
各画素202、203、204には、異なる構造あるいは異なる媒質で構成された微細構造209、210、211が配置されている。
励起源208は、発光層205、206、207に電子を注入する手段を含む層である。
例えば、励起源208は、基板上に電子放出素子と電極を配置し、発光層102の表面に電極を設けることで構成される。
このような構成において、電子放出素子に電界を加えると、発光層に向けて電子が放出され、発光層205、206、207に電子が供給され、発光する。
発生した光は、微細構造209、210、211および前面板201を透過し、外部に抽出されることで、表示光となる。
【0032】
本実施例2にかかる画像表示装置200で、各画素において、コア216、217、218、シェル219、220、221、領域222、223、224、を構成する媒質を選択する。
そして、微細構造209、210、211中に含まれる微粒子の直径、配置、各媒質の充填率を適切に設定する。
これにより、各画素において、表示光の輝度を向上させる効果と外光反射率を低減する効果を最大限得ることができ、全画素で同じ微細構造を用いた場合と比べて、高いコントラストを有する画像表示装置を得ることが出来る。
本実施例の画像表示装置200においては、各画素202、203、204で、画素を構成する各媒質や発光波長に応じて、最適な媒質あるいは構造で構成された微細構造209、210、211が用いられる。
これにより、外光反射率が低く、高いコントラストを有する画像表示装置を得ることが出来る。
各画素に応じて、微粒子の直径、コアの直径、各媒質を適切に設定した微粒子を作製し、それを用いて、実施例1と同様の工程で、各画素に微細構造209、210、211を作製する。
これによって、各画素で構造あるいは媒質が異なる微細構造を容易に作製することができる。
【0033】
なお、本実施例2にかかる画像表示装置200において、各画素に含まれる微細構造209、210、211は、すべての画素で異なる構造でなくても良い。赤色、緑色あるいは青色に相当する画素の、いずれか一つの画素に設ける微細構造と、他の画素に設ける微細構造とが異なる構成であってもよい。
これによって、同じ構造を有する微細構造を各画素に配置した場合と比べて、正反射光、拡散反射光の抑制効果および表示光の増大効果をより向上させ、高いコントラストを有する画像表示装置を得ることができる。
また、各画素に設ける微細構造は、同じ構造であってもよい。同じ構造を用いることで、上記の効果が低減する代わりに、画素ごとに作製方法や条件を変える必要がなく、作製が容易となる。
実施例1と同様に、本実施例に含まれる微細構造は、三角格子構造でなくてもよく、例えば、微粒子をランダムな位置に配置した構造を用いることができる。
微細構造を構成する微粒子は、異なる屈折率を有する3種類以上の媒質で構成してもよい。
【符号の説明】
【0034】
100:画像表示装置
101:前面板
102:画素
103:励起手段
104:発光層
105:微細構造層
106:微粒子
107:コア
108:シェル
109:微粒子の周囲の領域
110:表示光
111:外光
115:外光反射光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個の画素で構成された画像表示装置であって、
前記画素は、発光層と前記発光層よりも外光の入射側に設けられた媒質層との間に構造層を備え、
前記構造層は、微粒子が周囲の領域中に配列され、前記画像表示装置の画面と平行な面内において屈折率分布を有する構造を備え、
前記微粒子は、コアと該コアの外周領域を形成するシェルとによって構成され、該コアを形成する媒質、該シェルを形成する媒質、該外光の入射側に設けられた媒質層及び前記周囲の領域を形成する媒質は、それぞれ異なる屈折率を有し、
それらの屈折率が、次の(式1)の関係を満たすことを特徴とする画像表示装置。

core > Nshell > Nlow (式1)

但し、
core:前記コアを構成する媒質の屈折率
shell:前記シェルを構成する媒質の屈折率
low:前記外光の入射側に設けられた媒質層と前記周囲の領域を形成する媒質を比較した際の低い方の屈折率
【請求項2】
前記発光層は、波長350nm以上、800nm以下の光を発光する媒質で形成され、
前記構造層における前記画像表示装置の画面と平行な面内において屈折率分布の周期をΛとするとき、屈折率分布の周期Λが次の(式2)の関係を満たすことを特徴とする画像表示装置。

【請求項3】
前記構造層は、前記微粒子が前記画像表示装置の画面と平行な面内において最密充填して配列された構造を有していることを特徴とする請求項1乃至2のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記微粒子は、コア対シェルの比が、0.3以上、0.95以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記発光層は、蛍光体粒子を該蛍光体粒子の屈折率と同じ屈折率を有する媒質中に分散させた層で構成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項6】
前記画像表示装置は、赤色、緑色、青色の光を発生する前記色ごとの各画素を備え、該各画素は互いに隔壁によって区切られており、
前記構造層は、該各画素ごとに配置され、各画素ごとに異なる構造を有していることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−128357(P2011−128357A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−286478(P2009−286478)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】