説明

画像表示装置

【課題】 筐体内部の発熱素子の温度上昇および温度ばらつきを低減し、動作不良や画質劣化を発生させずに縦・横配置に対応可能な画像表示装置を提供する。
【解決手段】 筐体内に発熱素子によって暖められた空気が鉛直方向に沿って流れるように制御する制御手段を備え、当該制御手段は、複数の発熱素子よりも画像表示装置の中心に近い位置に設けられており、表示面に対する法線が鉛直方向と交差した状態で、法線を回転軸とした画像表示装置の回転に応じて、その長手方向が鉛直方向と平行に維持されるように回転する、回転板を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テレビジョン放送や、コンピュータやDVDソースなどの外部入力映像や、広告や、医療用画像などの各種画像を表示する画像表示装置に関する。特に、縦・横に配置可能な画像表示装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
画像表示装置に用いられる薄型の表示パネルとして、プラズマ表示パネル(PDPと略記する)、液晶表示パネル(LCDと略記する)、電界放出表示パネル(FEDと略記する)、有機EL表示パネル(OLEDと略記する)等が存在する。
【0003】
このような薄型の画像表示装置では、品質向上、省スペース化などを背景として更なる高画質化、高輝度化、薄型化が要求されており、表示パネルを包む筐体の内部の発熱密度が増大する傾向にある。これにより、表示パネルを駆動するドライバICなどに代表される発熱素子の温度が大きくなると、動作不良や画質劣化を生じる恐れがある。
【0004】
特許文献1には、PDPの背面に設けられた蓋体内で発生する熱気が鉛直方向上向き(鉛直方向上方)に流れる放熱経路が形成されるように、鉛直方向に沿った放熱用溝をPDPの裏面と蓋体との間に固定されたシャーシに設けることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−242442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した画像表示装置は、一般に、表示画面の縦横比が1よりも大きい。そのため、近年では、デジタルサイネージに代表される様々な用途や表示画像に応じて、画像表示装置の向きを変えることが考えられる。具体的には、画像表示装置の表示画面が鉛直方向とは垂直な方向に沿った方向(水平方向)に長くなる横長に配置(「横配置」)されたり、その表示画面が鉛直方向に長くなる縦長に配置(「縦配置」)されたりする場合がある。
【0007】
そのため、例えば表示パネルの表示画面の中心を通る法線を軸に、特許文献1の画像表示装置を90°回転させると、放熱経路は鉛直方向上方(鉛直方向上向き)に形成されず、むしろ熱気の流れを遮断することになり、放熱性能を悪化させてしまう。
【0008】
また、これを防ぐために、鉛直方向に加えて、水平方向にも沿った放熱溝を設けると、水平方向への気流が発生するため、鉛直方向上方への気流が減少したり、水平方向で隣接する発熱素子の熱にあおられたりすることになる。その結果、発熱素子の温度の増大や発熱素子間の温度ばらつきが増大してしまい、画像表示装置の動作不良や画質劣化を生じさせる問題がある。
【0009】
この問題を低減するために、ファンやヒートシンクなどの放熱部材を追加したり、発熱素子付近の空間を拡大したりする方法が考えられる。しかし、この方法は画像表示装置の重量や体積やコストの増大に結びつき、製品の競争力を著しく低下させてしまう。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑み、画像表示装置をその表示画面に対する法線を回転軸として回転させても、発熱素子の温度の増大および発熱素子間の温度ばらつきを低減することができる画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
表示パネルと、該表示パネルに電気的に接続された複数の発熱素子と、該表示パネルと該複数の発熱素子とを覆う筐体と、前記表示パネルの表示面とは反対側に位置する前記表示パネルの裏面と前記筐体との間に設けられ、前記複数の発熱素子によって暖められた空気が鉛直方向に沿って流れるように制御する制御手段と、を含む画像表示装置であって、
前記制御手段は、前記複数の発熱素子よりも前記画像表示装置の中心に近い位置に設けられており、前記表示面に対する法線が鉛直方向と交差した状態で、前記法線を回転軸とした前記画像表示装置の回転に応じて、その長手方向が鉛直方向と平行に維持されるように回転する、回転板を含む、ことを特徴とする画像表示装置。
【発明の効果】
【0012】
画像表示装置が縦配置であるか横配置であるかに関わらず、鉛直方向上向き(鉛直方向上方)への放熱経路を形成することができる。従って、画像表示装置を回転させても、発熱素子の温度の増大および発熱素子間の温度ばらつきを低減することができる画像表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】画像表示装置の一例を示す模式図
【図2】図1の画像表示装置を矢印の方向から見た模式図
【図3】回転板を模式的に示す斜視図
【図4】回転板の平面模式図
【図5】画像表示装置の別の一例を示す模式図
【図6】画像表示装置の別の一例を示す模式図
【図7】回転板の有無による発熱素子の平均温度と温度ばらつきの比較
【発明を実施するための形態】
【0014】
画像表示装置の実施形態の一例について図1(a)〜(d)と図2を用いて説明する。ここで、本実施形態における画像表示装置10は、テレビジョン放送や、コンピュータやDVDソースなどの外部入力映像や、広告や、医療用画像や、案内画像や、絵画などの各種画像を表示することのできる表示装置を指す。
【0015】
画像表示装置10は、ディスプレイモジュールと、ディスプレイモジュールを覆う筐体105とを含む。尚、ディスプレイモジュールは、表示パネル101と、表示パネル101に電気的に接続されている回路基板102と、回路基板102に実装された、ドライバICやトランジスタや高圧電源などの複数の発熱素子103と、を少なくとも備える。また、その他の発熱素子103の具体例としては、メモリやコンデンサーや駆動電源FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)なども挙げられる。表示パネル101としては、前述したPDPやLCDやFEDやOLEDなどのフラットパネルディスプレイを用いることができる。ディスプレイモジュールは、さらに、表示パネル101を固定し、回路基板102を支持するシャーシ104を備えることができる。従って、この場合、シャーシ104は発熱素子103を支持することになる。シャーシ104は表示パネル101自体の強度が高い場合などには、省略することができる。その場合には、複数の発熱素子103や回路基板102は、表示パネル101およびまたは筐体105に支持される。
【0016】
そして、画像表示装置10は、筐体105内で複数の発熱素子103によって暖められた空気が鉛直方向に沿って流れるように制御する制御手段を備える。この制御手段は、表示パネル101の裏面(表示パネル101の表示面とは反対側に位置する)と筐体105との間に設けられる。そして制御手段は、複数の発熱素子103よりも画像表示装置の中心に近い位置に設けられている。尚、発熱素子が画像表示装置の中心に近い位置に設けられている場合には、制御手段は、発熱素子と画像表示装置の外周との間(発熱素子と後述する筐体105の側面部分105cとの間)に設けることもできる。また、制御手段は、少なくとも回転板106を備え、回転板106は、発熱素子103の近傍に設置され、画像表示装置10の回転(縦配置、横配置)に応じて回転する。また、制御手段は、後述する実施例で説明するが、回転板106のような回転を行わず、その長手方向が固定された整流板を有する場合もある。
【0017】
ここで説明する態様では、筐体105は、ディスプレイモジュールの背面を覆う背面部分105(a)と、ディスプレイモジュールの側面を覆う側面部分105cと、ディスプレイモジュールの前面部分を覆う前面部分(ベゼル)105dとを少なくとも備えている。そして、筐体105は、さらに、吸排気のための開口105bを複数備えている。開孔105bは、筐体の外部から筐体の内部(筐体105と表示パネル101との隙間)へ空気を取り込み、筐体の内部で暖められた空気を筐体内から排出するためのものである。開孔105bは、画像表示装置10が横配置および縦配置の双方の状態で、鉛直方向上部及び鉛直方向下部に設けることが好ましい。即ち、筐体105の背面部分105aの、中心領域を除く、周辺領域の上下左右に、開孔105bを設けることが望ましい。尚、筐体105の前面部分105dは、表示パネル101の表示面に対向する領域には設けない場合が多い。しかし、表示面に対向する部分に可視光に対して透明な部材を設ける場合もある。この場合には、ディスプレイモジュール全体が、筐体105によって覆われる構成となる。
【0018】
図1(a)は、図1(c)と同様に画像表示装置10を横配置にした際、画像表示装置10を裏側から見た際の模式的な平面図である。尚、図1(c)は図1(a)の画像表示装置10を表側(表示画面側)から見た際の模式的な斜視図である。また、図1(b)は、図1(d)と同様に画像表示装置10を縦配置にした際、画像表示装置10を裏側から見た際の模式的な平面図である。そして、図1(d)は図1(b)の画像表示装置10を表側から見た際の模式的な斜視図である。尚、図1(a)および図1(b)では、ともに、説明の都合上、ディスプレイモジュールを覆う筐体105の一部分である背面部分105bを省いている。
【0019】
一方、図2は、図1(a)において、矢印の方向から画像表示装置10を見た際の模式図である。尚、図2では、筐体105の内部の説明の都合上、ディスプレイモジュールを覆う筐体105の一部分である側面部分105cの一部を省いて示している。また、実際には、回路基板102と表示パネル101とを接続する配線(フレキシブル配線基板)が存在するが、説明の都合上、これについても省略している。
【0020】
ここで、「縦配置」とは、画像表示装置10の長辺が鉛直方向に沿っている状態を示す。言い換えると、画像表示装置10の表示面11が鉛直方向に沿った方向に長くなるように画像表示装置10を配置することを指す。また、「横配置」とは画像表示装置10の長辺が鉛直方向と垂直な方向(水平方向)に沿っている状態を示す。言い換えると、画像表示装置10の表示面11が鉛直方向とは垂直な方向に沿った方向(水平方向)に長くなるように画像表示装置10を配置することを指す。また、「縦配置」は、表示面11に対する法線であって表示面11の中心を通る法線を回転軸として、「横配置」の状態から画像表示装置10を右方向または左方向に90度回転した状態である。尚、当然のことながら、画像表示装置10の表示面は縦横比が異なる(典型的には横:縦=16:9)。画像表示装置10が縦配置された状態および横配置された状態は、どちらも、表示面に対する法線が、鉛直方向と交差した状態にある。また、縦配置された状態および横配置された状態は、一般的には、表示面に対する法線が、鉛直方向とほぼ直交する状態を指す。
【0021】
表示パネル101は複数の画像表示素子と各画像表示素子に接続された配線とを備え、各画像表示素子は上記配線に接続されたフレキシブル配線板などを介して回路基板102に電気的に接続されている。画像表示素子の各々は、例えば、表示パネル101がFEDであれば、電子放出素子と電子放出素子から放出された電子が照射されることで発光する発光体とを含む。尚、FEDの電子放出素子としては、電界放出型電子放出素子や、表面伝導型電子放出素子や、MIM型電子放出素子などが含まれる。
【0022】
尚、図1(a)、図1(b)では、回路基板102を模式的に示している。大抵の場合、回路基板102は、表示パネル101の背面と筐体105の背面部分105aとの間に設けられる。しかし、表示パネル101の側面と筐体105の側面部分105cとの間に設けられ、ドライバICなどの発熱体103もまた表示パネル101の側面と筐体105の側面部分105cとの間に設けられる場合もある。
【0023】
回路基板102と表示パネル101とを接続する配線としては、通常、フレキシブル配線基板が用いられる。このような場合、一般に、フレキシブル配線基板の一端が表示パネル101に、その側面において、接続される。そして、筐体105の側面部分105cと表示パネル101の側面との間を通って、フレキシブル配線基板の他端が、表示パネル101の背面で、回路基板102と接続する。
【0024】
また、回路基板102が、フレキシブル配線基板そのもので構成される場合もある。このような場合には、ドライバICなどの発熱体103はフレキシブル配線基板に実装されることになる。
【0025】
発熱素子103は、ランダムに配置されていてもよく、また、図1や図5などに示すように、水平方向およびまたは鉛直方向に整列して配置されていてもよい。
【0026】
シャーシ104は、表示パネル101を固定し、回路基板またはフレキシブル配線板102を支持することができる。シャーシ104は、一般に、金属からなる。シャーシ104は、例えば接着剤や両面接着テープなどにより表示パネル101と固定されるが、固定方法はこれらに限定されるものではない。ネジやボルトおよびナットによるシャーシ104と表示パネル101の締結、シャーシ104への表示パネル101のはめ込み、などであってもよい。シャーシ104の形状は、ここで示す例では表示パネル101の背面の形状と同じ形状にしているが、シャーシ104は必ずしも表示パネル101の背面全体を覆う必要はなく、画像表示装置10の強度を維持できる範囲で、厚みや形状を変化させることができる。
【0027】
画像表示装置10は、配置形態(縦配置と横配置)を変更しても、発熱素子103から鉛直方向に沿って、発熱素子103によって暖められた空気が上方に流れる放熱経路を維持する制御手段としての回転板106を、表示パネルと筐体との間に備えている。
【0028】
回転板106は、図1などで示す例では、長方形または略長方形の板状の部材で形成されている。そして、板状の部材の長手方向(あるいは主面)が、表示パネル101の背面(あるいはシャーシの表面、あるいは筐体の背面部105(a))に対して垂直になるように設けられている。回転板106は、画像表示装置10の配置形態(縦配置か横配置か)に応じて、回転板106の長手方向あるいは回転板の主面が鉛直方向と平行に維持されるように(鉛直方向に沿うように)、回転する機能を有している。
【0029】
ここで、回転板106の厚みTは、筐体の背面部105(a)とシャーシ104或は表示パネル101の背面とが対向する方向における長さで定義される。また、回転板106の長さLは、回転板106の長手方向における長さ(あるいは鉛直方向に沿った長さ)で定義される。また、回転板106の幅Wは、回転板106の長手方向および厚み方向の双方に対して垂直な方向における長さで定義される。
【0030】
回転板106の回転機能は、例えば、回転板106をディスプレイモジュールに対して回転可能に支持されることで実現される。そのため、制御手段は、回転板106の回転軸を成し、且つ、ディスプレイモジュールを構成する表示パネルの裏面あるいは表示パネルの裏面に固定されているシャーシに、回転板106を支持する回転支持軸106aを備えている。あるいはまた、回転支持軸106aは、筐体に設けることもできる。
【0031】
回転板106の重心と回転板106の回転支持軸106aとを異ならせる(交わらせないまたは離す)構造にすることで構成することができる。これにより、画像表示装置10の配置形態(縦配置か横配置か)によらず、重力によって、回転板106の長手方向(あるいは回転板106の主面)を、常に鉛直方向に沿うようにすることができる。
【0032】
回転板106の重心と回転板106の回転支持軸106aとを異ならせる形態の一例としては、例えば図4(a)〜(d)に示す形態が挙げられる。尚、図4(a)〜(d)は、図3の回転板をシャーシ104の上方(背面方向)から見た際の平面模式図である。図4(a)は、回転板106の一方の端部と他方の端部との真中に回転支持軸106aを設け、一方の端部にのみ重りを設けた構成である。図4(b)と図4(c)は、回転支持軸106aから回転板106の一方の端部までの体積と回転支持軸から他方の端部までの体積を異ならせた構成である。即ち、図4(b)と図4(c)は、回転板の、回転支持軸106aから回転板106の一方の端部までの間に位置する部分の質量が、回転支持軸から他方の端部までの間に位置する部分の質量よりも、大きい構成である。図4(b)は回転板106の幅(断面積)が一方の端部が他方の端部よりも大きい構成であり、ここでは台形形状としている。図4(c)は、回転板105の幅を一定とし、回転支持軸106aと他方の端部との間に空孔(中空部)を設けた構成である。図4(c)の構成では回転板106の重量の増加を押さえられ、画像表示装置全体の軽量化に寄与する。また、図4(a)〜(c)のように回転支持軸106aを一方の端部と他方の端部の双方から離すのではなく、図4(d)のように、回転支持軸106aを回転板106のどちらかの端部と重ねる構成としてもよい。
【0033】
また、画像表示装置10の配置形態(縦配置と横配置)を検知するセンサーを画像表示装置が備え、上記センサーの検知結果に基づいて、アクティブに回転板106を回転させる構成としても良い。上記センサーとしては、例えば重力センサ(3軸方向での加速度を検出する加速度センサ)や磁気センサなどが挙げられる。
【0034】
回転板106の材質は、断熱性能の高い、樹脂または合成樹脂(プラスティック、ウレタン、発砲スチロールなど)などが好ましいが、所望の温度低減効果が得られれば、アルミニウム合金や鉄などの金属でも構わない。また、回転板106の形状は、長方形形状で、厚みTが2mm以上のものが望ましいが、放熱性能および筐体105のレイアウトの観点から問題がなければ特に限定されるものではない。
【0035】
上記の構成により、本実施形態の画像表示装置10では、配置形態(縦配置と横配置)を変更しても、発熱素子103から鉛直方向に沿って上方へ向かう放熱経路を維持することができる。これにより、画像表示装置10を回転させても、発熱素子103から発生した熱を吸収した空気が、遮断されることなく鉛直上方へ移動することができる。そのため、画像表示装置10を縦配置にした場合において、従来技術と比較して、発熱素子103の放熱量が増大する。従って、発熱素子103の温度および温度ばらつきを従来技術に比べて低減することができる。そして、発熱素子103の温度を低減することができるので、画像表示装置の製品使用温度範囲における高温側の規制を緩和することができる。また、発熱素子103の温度ばらつきを低減することができるので、表示画像の輝度ムラを低減することができる。また、発熱素子103から発生した熱を良好に放熱することができるので、ファンやヒートシンクなどの放熱部材を追加したり、発熱素子103付近の空間(筐体とディスプレイモジュールとの間)を拡大したりする必要性が低減する。従って、画像表示装置の重量、コスト、体積を大きく増加させることがなく、縦・横配置に対応した画像表示装置を提供することができる。
【0036】
以下、変形例を含めて具体的な実施例について説明する。
【実施例】
【0037】
(実施例1)
実施例1の画像表示装置を図1〜図4を用いて説明する。本実施例では、表示パネル101として表示画面の縦横比が16:9のFEDを用いた。
【0038】
また、表示パネル101と回路基板102は、フレキシブル配線板によって電気的に接続されており、回路基板102は、表示パネル101の裏面に接着剤により接着された金属の板からなるシャーシ104に、ボス部130にネジ止め固定されている(図2参照)。発熱素子103はドライバICであり、回路基板102に電気的に接続されている。本実施例では、画像表示装置10を横配置した状態で、発熱素子103は、鉛直方向に沿って複数個(ここでは3個)整列されているものが左右に1組づつ合計2組存在する。
【0039】
シャーシ104は、表示パネル101と回路基板102を支持しているため、発熱素子103も、シャーシ104に支持されていることになる。
【0040】
筐体105には、複数の開孔105bが設けられている。本実施例では、画像表示装置10が横配置および縦配置の双方の状態で、鉛直方向上部及び鉛直方向下部に設けてある。即ち、ここでは、筐体の背面部105aの、中心領域を除く、周辺領域の上下左右に、開孔105bが設けられている。
【0041】
筐体105のベゼル105dは、表示パネル101の前面の画像表示領域外にて、表示パネル101の前面の電位規定を担うガスケットを挟んで表示パネル101と機械的、電気的に接触している。
【0042】
本実施例では、画像表示装置10は、各々が3つの回転板106からなる2つのユニットを備えている。第1ユニットと第2ユニットは、画像表示装置10を横配置した状態において、画像表示装置の左側と右側に設けられている。
【0043】
画像表示装置10を横配置した状態において、第1ユニットを構成する回転板106の各々の長手方向が、鉛直方向に沿って、1列に並んでいる。第2ユニットも同様である。そして、第1ユニットおよび第2ユニットは、2組の発熱素子103よりも、画像表示装置10の中心(あるいはシャーシの中心)の近く(あるいは画像表示装置の内側)に設けられている。
【0044】
各々の回転板106の長手方向の中心位置には回転軸となる回転支持軸106aが設けられている。回転支持軸106aは、回転板106の長手方向の中心部に貫通孔(不図示)を設け、貫通孔を通して、金属シャーシ104のボス部にボルトによって回転板106を回転可能に固定することにより形成している。回転板106には断熱性の高い合成樹脂(プラスティック)からなる長方形の平板を用いており、厚みTを10mm、幅Wを2mm、長さLを50mmとした(図3)。また、その長手方向の一方の端部にアルミニウム合金の重り106bを設けた(図4(a))。
【0045】
これにより、回転板106の重心と回転支持軸106aを離す(ずらす)ことができる。その結果、重力により、回転板106の長手方向が鉛直方向に沿うように、自然に回転する機構が構成される。この構成により、画像表示装置10の配置形態(縦配置・横配置)に関わらず、常に、回転板106の重り106bが付けられた端部を鉛直方向下方に位置し、重り106bが付いていない他方の端部を鉛直方向上方に位置せしめることができた。
【0046】
以上の構成により、回転板106が画像表示装置10の回転に対応して回転することにより、常に鉛直方向上方への放熱経路が維持される。これにより、発熱素子から発生した熱を吸収した空気が、回転板106に遮断されることなく鉛直上方へ移動することができる。一方、比較例として、本実施例の画像表示装置10を横配置の状態にし、回転板106が鉛直方向に沿った状態で回転板106を固定し、そのまま画像表示装置10を縦配置の状態にして駆動した。その結果を図7(a)に示す。本実施例の画像表示装置は比較例の画像表示装置に比べて、発熱素子103の平均温度を6℃程度、温度ばらつきを1.5℃程度低減することができた(図7(a))。
【0047】
(実施例2)
本実施例の画像表示装置の概要を図5(a)と図5(b)を用いて説明する。図5(a)は画像表示装置を横配置した状態を示し、図5(b)は画像表示装置を縦配置した状態を示す。実施例1と共通の構造については説明を省略する。
【0048】
本実施例では、回転板106は、実施例1と同じ形状とした。また、実施例1と異なり、本実施例では制御手段として、回転板106に加えて整流板107を設けている。整流板107の各々は、実施例1の回転板を構成する長方形の板と同じ形状である。即ち、厚みTが10mm、幅Wが2mm、長さLが50mmである。また、本実施例では、発熱素子103は、画像表示装置10を横配置した状態で、鉛直方向に沿って複数個(ここでは3個)整列されているものが左右に1組づつ合計2組と、水平方向に沿って複数個(ここでは3個)整列されているものが1組存在する。
【0049】
本実施例では、画像表示装置10は、各々が2つの整流板107と1つの回転板106とからなる3つのユニットを備えている。第1ユニットと第2ユニットは、画像表示装置10を横配置した状態において、画像表示装置の左側と右側に設けられている。そして、第3ユニットは、画像表示装置の下側に設けられている。
【0050】
画像表示装置10を横配置した状態において、第1ユニットを構成する整流板107と回転板106の各々の長手方向が、鉛直方向に沿って、1列に並んでいる。第2ユニットも同様である。そして、第3ユニットを構成する整流板107と回転板106は、水平方向に1列に並んでいる。そして、第3ユニットを構成する整流板107の長手方向はともに水平方向に沿って、1列に並んでいる。尚、第3ユニットを構成する回転板106は、画像表示装置10を横配置した状態では、その長手方向が鉛直方向に沿っている。
【0051】
第1、第2、第3ユニットの各々は、3組の発熱素子103よりも、画像表示装置10の中心(あるいはシャーシの中心)の近く(あるいは画像表示装置の内側)に設けられている。
【0052】
整流板107は、金属シャーシ104に設けた整流板107をはめ込むためのスリットに、嵌め込まれ、金属シャーシ104に固定されている。整流板107の材質は断熱性の高い合成樹脂(プラスティック)を用いた。
【0053】
本実施例では、発熱素子103の発熱量または発熱密度が、周囲と比較して大きな部位の近傍に回転板106を設け、発熱素子103の発熱量または発熱密度が周囲と比較して小さな部位には整流板107を設けている。即ち、各ユニットにおいて、回転板106を一対の整流板107の間に配置している。このようにすることで、回転板106近傍の発熱素子103を流れる鉛直方向上向きの空気量は増大し、整流板107近傍の発熱素子103を流れる鉛直方向上向きの空気量は制限される。従って、発熱素子103からの放熱量を発熱素子103の発熱量または発熱密度ごとに調整することができる。
【0054】
一方、比較例として、本実施例の画像表示装置10の回転板106の長手方向を両脇に配置されている整流板107と同じ向きに固定し、そのまま画像表示装置10を縦配置の状態にして駆動した。その結果を図7(b)に示す。本実施例の画像表示装置は比較例の画像表示装置に比べて、発熱素子の平均温度を5℃程度、発熱素子103の温度ばらつきを6℃程度低減することができた。また、参考例として、本実施例の整流板107を、本実施例の回転板106と同じものに変更したところ、発熱素子の温度バラツキは本実施例に比べて増したが、発熱素子の平均温度は本実施例に比べて低下させることができた。
【0055】
(実施例3)
*FPC接続例*
本実施例に係る画像表示装置の概要を図6に示す。図6(a)は画像表示装置の横配置を示し、図6(b)は画像表示装置の縦配置を示す。
【0056】
本実施例では、表示パネルに接続されたフレキシブル配線板自体が回路基板102を構成している。そして、発熱素子103であるICドライバがフレキシブル配線板の端部に実装されている。それ以外は実施例3と同様であるため、説明を省略する。
【0057】
フレキシブル配線板102は、厚み12μmから50μmのフィルム状の絶縁体(ベースフィルム)の上に接着層を形成し、さらにその上に厚み12μmから50μm程度の導体(銅)箔を形成した構造である。フレキシブル配線板102の端子部やはんだ付け部以外には絶縁体(ポリイミド膜やフォトソルダ−レジスト膜)を被せることにより、保護している。これにより、フレキシブル配線板102は小さい力で繰り返し変形させることが可能であり、変形した場合にもその電気的特性を維持する。フレキシブル配線板102は、異方性導電フィルム(Anisotropic Conductive Film)を用いて、表示パネル101の配線にアウターリードボンディング(Outer Lead Bonding)されている。発熱素子103はフレキシブル配線板102と電気的に接続されるが、その接続方式としては、テープキャリアパッケージ(Tape Carrier Package)方式やチップオンフィルム(Chip On Film)方式を採用することができる。
【0058】
フレキシブル配線板102の一方の端部は表示パネル101に電気的に接続される。そして、フレキシブル配線板102は表示パネル101の外周より外側に伸び、表示パネル101の背面方向に向かいながら表示パネル101の内側方向へ折り返される。そして、その他方の端部に発熱素子103が接続されている。このようにして、フレキシブル配線板102および発熱素子103は表示パネル101の側面と筐体105の側面部分105cとの間に存在する。回転板106および整流板107については実施例2と同様の構成であるため、実施例2と同様の放熱作用、均熱作用を発揮する。
【0059】
整流板107の材質には、金属であるアルミニウム合金を用いた。アルミニウムは、合成樹脂(と比較して熱伝導率が高いため、断熱性は低くなるが、整流作用は十分に満足できるため、鉛直方向への放熱経路の確保および遮断を行うことができる。発熱素子103と、回転板106の回転支持軸106aおよび整流板107の中心との距離を、40mm確保することで、回転板106および整流板107の材質による影響は小さくなり、材質が合成樹脂の場合と、ほぼ同様の温度および温度ばらつき効果が得られた。
【0060】
以上のような構成により、実施例2と同様、発熱素子の温度を5℃程度、発熱素子103の温度ばらつきを6℃程度低減することができた。
【0061】
本発明によれば、発熱素子から発生した熱を吸収した空気が、鉛直上方へスムーズに移動するため、画像表示装置の縦配置・横配置に関わらず発熱素子の温度を低減することができる。そのため、画像表示装置の縦・横配置に関わらず発熱素子103の温度を低減することができる。従って、画像表示装置の製品使用温度範囲における高温側の規制を緩和することができる。
【0062】
本発明によれば、画像表示装置の縦・横配置に関わらず発熱素子103の温度ばらつきを低減することができる。これにより、発熱素子103の間の電気抵抗値が均一化するため、表示パネル101の輝度ムラが低減する。従って、表示パネルの画質性能を向上させることができた。
【0063】
本発明によれば、画像表示装置の縦・横配置に関わらず、発熱素子103から発生した熱を良好に放熱することができる。これにより、ファンやヒートシンクなどの放熱部材を追加したり、発熱素子103付近の空間を拡大したりする必要性が低減する。従って、画像表示装置の重量、コスト、体積を大きく増加させることがなく、発熱素子の温度および温度ばらつきを低減することで、動作不良や画質劣化を発生させずに縦・横配置に対応した画像表示装置を提供することができた。
【符号の説明】
【0064】
101 表示パネル
103 発熱素子
105 筐体
106 回転板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示パネルと、該表示パネルに電気的に接続された複数の発熱素子と、該表示パネルと該複数の発熱素子とを覆う筐体と、前記表示パネルの表示面とは反対側に位置する前記表示パネルの裏面と前記筐体との間に設けられ、前記複数の発熱素子によって暖められた空気が鉛直方向に沿って流れるように制御する制御手段と、を含む画像表示装置であって、
前記制御手段は、前記複数の発熱素子よりも前記画像表示装置の中心に近い位置に設けられており、前記表示面に対する法線が鉛直方向と交差した状態で、前記法線を回転軸とした前記画像表示装置の回転に応じて、その長手方向が鉛直方向と平行に維持されるように回転する、回転板を含む、ことを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記回転板の長手方向における一方の端部と他方の端部との間に、前記回転板を支持し且つ前記回転板の回転軸を成す回転支持軸を有しており、前記回転板の重心が前記回転板の前記回転支持軸と前記一方の端部との間に位置することを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記回転板は、前記回転支持軸から前記回転板の前記一方の端部までの間の前記回転板の質量が、前記回転支持軸から前記回転板の前記他方の端部までの間の前記回転板の質量よりも、大きいことを特徴とする請求項2に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記回転板は、前記回転板の前記一方の端部に重りを備えていることを特徴とする請求項2に記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記回転板は、前記回転板の前記一方の端部の断面積が他方の端部の断面積よりも大きいことを特徴とする請求項2に記載の画像表示装置。
【請求項6】
前記回転板は、前記回転支持軸から前記回転板の前記一方の端部までの間において、その一部に空孔を有することを特徴とする請求項2に記載の画像表示装置。
【請求項7】
前記制御手段は、さらに、前記複数の発熱素子が並んでいる方向に沿って、その長手方向が固定された、複数の整流板を備えており、該複数の整流板の間に前記回転板が設けられていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項8】
前記発熱素子が、ドライバICおよびトランジスタおよび高圧電源のいずれかであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の画像表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−170201(P2011−170201A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−35250(P2010−35250)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】