説明

画像記録装置

【課題】 記録媒体の表面の凹部に対する中間画像の転写性を向上させることができ、表面粗さの大きい記録媒体に対しても高画質な画像を記録することができる画像記録装置を提供する。
【解決手段】 記録ヘッド205からインクを吐出して中間転写体203の表面に中間画像を形成し、中間転写体の表面に形成された中間画像を記録媒体208に転写する画像記録装置である。中間転写体をゴム弾性体で形成するとともに中間転写体の内部に熱膨張性マイクロカプセル103を形成する。中間転写体を加熱した状態で中間画像を記録媒体に転写する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録ヘッドからインクを吐出して中間転写体を用いて画像を記録する画像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット式の画像記録装置では、表面平滑性の高い記録媒体を用いた場合に、インクが吸収されずに記録媒体の表面に残存し、隣接して付与されたインク同士が混ざり合うブリーディングと呼ばれる現象が生じることがある。また、先に着弾したインク滴が後に着弾したインク滴に引き寄せられてじゅずつなぎになるビーディングと呼ばれる現象が生じることもある。このようなブリーディングやビーディングの現象は、画像品位の低下や画像インクの乾燥不良の原因となる。
【0003】
このような現象を低減するために、中間転写体の表面に記録ヘッドからインクを吐出して中間画像をいったん形成し、この中間画像を記録媒体に転写して最終画像を記録する転写型の画像記録装置が提案されている。例えば、特許文献1には、ドラム状の中間転写体の表面に染料インクで描画を行い、その中間画像を記録媒体に転写するインクジェットプリンタが開示されている。記録媒体へ中間画像を転写する際の転写効率や、転写後の中間転写体を再生するために洗浄する際の洗浄効率の面から、中間転写体は、表面が平滑で液体吸収性が少なく、表面自由エネルギーが低いことが望ましい。特許文献1には、好ましい中間転写体の材質として、平滑な表面を有するとともにインクに対して高い接触角度を有するテフロン(登録商標)やセラミックが例示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭59−225958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の中間転写体を用いる画像記録装置では、上質紙やエンボス紙といった表面粗さの大きい記録媒体に転写する場合、記録媒体の表面の凹部が中間転写体上のインクに接触しないことがある。このため、記録媒体の凹部にインクが転写されず、画質低下を生じやすいという課題があった。
【0006】
本発明はこのような技術的課題に鑑みてなされたものである。本発明の目的は、記録媒体の表面の凹部に対する中間画像の転写性を向上させることができ、表面粗さの大きい記録媒体に対しても高画質な画像を記録することができる画像記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、記録ヘッドと、前記記録ヘッドからインクが付与され中間画像が形成される中間転写体を含み前記中間転写体の中間画像を記録媒体に転写する手段と、を有する画像記録装置であって、前記中間転写体はゴム弾性体で形成され、且つ前記中間転写体の内部には熱膨張性マイクロカプセルが形成されており、前記中間転写体を加熱する加熱手段を備え、前記加熱手段で前記中間転写体が加熱された状態で前記中間画像が記録媒体に転写されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、記録媒体の表面の凹部に対する中間画像の転写性を向上させることができ、表面粗さの大きい記録媒体に対しても高画質な画像を記録することができる画像記録装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像記録装置の縦断面図
【図2】本発明に係る画像記録装置で用いるのに好適な中間転写体の断面斜視図
【図3】本発明に係る画像記録装置の動作例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を具体的に説明する。なお、各図面を通して同一符号は同一または対応部分を示す。図1は本発明の一実施形態に係る画像記録装置の縦断面図である。図1において、中間転写体203は円筒状部材からなり、本実施形態に係る中間転写体203は、回転駆動される円筒状の支持部材201の外周部に保持されている。中間転写体203の周辺には複数(図示の例では4個)の記録ヘッドからなる記録デバイス205が配されている。支持部材201は軸202を中心として矢印方向に回転駆動され、支持部材201の回転に同期して記録デバイス205を作動することにより、各記録ヘッドの吐出口から中間転写体203の表面にインクを吐出してインクによる中間画像を形成していく。
【0011】
中間転写体203の表面に対して、加圧ローラ209によってシート状の記録媒体208が圧着される。加圧ローラ209は、記録媒体208を介して中間転写体203に押圧されることで、中間転写体203の回転に同期して従動回転する。従って、中間転写体203の表面に形成された中間画像は、中間転写体203の回転に伴って、インクが乾く前に記録媒体208に転写されていく。こうして、中間転写体の表面に記録ヘッドからインクを吐出して中間画像を形成する画像形成工程と、中間転写体の表面に形成された中間画像を記録媒体に転写する転写工程とにより記録が行われる。
【0012】
画像記録装置には、CPU、メモリおよびI/O回路等を備えたコントローラからなる制御部300が設けられている。制御部300は、内部メモリに予め格納された制御プログラムに従い、駆動モータや各種装置の動作を制御する。これにより、記録媒体208の給送および搬送の動作を制御するとともに、画像情報に基づいて記録デバイス(記録ヘッド)205を制御することにより、中間転写体に画像を形成するとともに記録媒体208に画像を転写していく。また、制御部300は、中間転写体203の動作や後述する加熱手段を制御する他、装置全体の動作やそのタイミングを制御するものである。
【0013】
回転駆動される中間転写体203は、円筒状の支持部材201の外周部に保持された円筒状部材で形成されている。支持部材201は、転写時の加圧に耐え得る剛性や寸法精度を要求される他、制御の応答性を向上させるために回転時のイナーシャ軽減などを要求される部品である。このため、一般に、アルミニウム合金等の軽量金属製のドラムで構成されている。中間転写体203はその表層が記録媒体208に線接触可能であれば良い。したがって、中間転写体の支持部材としては、装置の形態ないしは記録媒体への転写機能を考慮した上で、例えばローラ状をしたもの、あるいはベルト状をしたものを使用することができる。その際、図示のようなドラム状の支持部材、もしくはベルト状の無端ウエブ構成の支持部材を用いると、同一の中間転写体を連続して繰り返し使用することができ、生産性の面からより好適である。
【0014】
次に、中間転写体203について説明する。図2は本発明に係る画像記録装置で用いるのに好適な中間転写体の断面斜視図である。中間転写体203の本体102はゴム弾性体で形成されており、本体102の内部には多数の熱膨張性マイクロカプセル103が形成されている。ゴム弾性体の本体102は、好ましくはデュロメータ・タイプA(JIS K6253準拠)硬度10〜100°の範囲のものであり、さらに好ましくは40〜80°である。一方、中間転写体203としては、中間画像の転写効率や転写後の洗浄効率の面から、表面が平滑で液体吸収性が少なく(非吸収性でも良い)、表面自由エネルギーが低いことが望ましい。従って、中間転写体203を形成するゴム弾性体(本体)102の材質としては、このような要求特性および加工特性から、合成ゴムが好ましく、特に記録媒体へのインク転写性の観点から、シリコーンゴムもしくはフッ素ゴムが好ましい。
【0015】
熱膨張性マイクロカプセル103は、熱可塑性樹脂を殻とし、内部に低沸点溶媒を含有するものである。例えば、松本油脂製薬製のマツモトマイクロスフェアーシリーズ(商品名)、クレハ製のクレハマイクロスフェアーシリーズ(商品名)、積水化学工業製のアドバンセルEMシリーズ(商品名)、日本フィライト製のエクスパンセルシリーズ(商品名)が挙げられる。これらの熱膨張性マイクロカプセル103の量は、体積比で転写体本体102全体の0.1%から70%であることが望ましい。0.1%より低いと膨張の効果が十分でなく、70%より高いと中間転写体203の強度が十分でなくなる。
【0016】
そこで、中間転写体203の表面に形成された中間画像を記録媒体208に転写する転写工程においては、熱膨張性マイクロカプセル103を有する中間転写体203を加熱した状態で記録媒体208に中間画像を転写する。図1の装置では、記録媒体208は加圧ローラ209により中間転写体203の外周面に押圧されている。そして、中間転写体203の加熱は、加圧ローラ209に内蔵されたヒータ207を有する加熱手段により行われる。熱膨張性マイクロカプセル103が気泡である場合は、加熱時に膨張した気体が外部に抜けにくくするために、それぞれの気泡が連通せずに独立している独立気泡型が好ましい。中間転写体203においては、熱膨張性マイクロカプセル103は表面から露出せず、平滑な面で覆われていることが好ましい。そのため、中間転写体203の表面に、熱膨張性マイクロカプセルを表面に露出させないための平滑なスキン層104が形成されている。
【0017】
スキン層104の厚さは薄い目の層であることが好ましい。その理由は、表面粗さが大きい記録媒体に中間画像転写する場合に、熱膨張性マイクロカプセル103の膨張により、記録媒体の表面の凹部に対しても画像インクを接触させて効率の良い転写を行うためである。一方、スキン層104は、層としての強度を保持するために5μm以上であることが好ましい。そのため、一例として、スキン層104の厚さは5μmから30μmの範囲に選定される。また、熱膨張性マイクロカプセル103は、中間転写体203を加熱状態にしたときの直径、つまり熱膨張したときの直径が100μm以下であることが好ましい。その理由は、中間画像を転写する際に、一般に使用されているほとんどの紙の表面の凹凸への対応を可能にするためである。中間転写体203は表面自由エネルギーが低いことが望ましいことから、表面自由エネルギーの調節を目的として、中間転写体203の表面に対してUV照射処理、プラズマ処理もしくはコロナ処理などの活性化処理を行っても良い。
【0018】
インクとしては、染料や顔料を溶解させたり、分散させたりしたインクが用いられる。特に、顔料インクによれば堅牢性にすぐれた記録画像が得られる。顔料としては、例えば、三菱化成製のC.Iピグメントブルー1、2、3、15:3、16、22、C.Iピグメントレッド5、7、12、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、112、122、C.Iピグメントイエロー1、2、3、13、16、83、カーボンブラックNo2300、900、33、40、52、MA7、8、MCF88が挙げられる。また、コロンビア製のRAVEN1255、キャボット製のREGAL330R、660R、MOGUL、デグッサ製のColor Black FW1、FW18、S170、S150、Printex35などが挙げられる。
【0019】
これらの顔料は、形態を限定されることなく、例えば、自己分散タイプ、樹脂分散タイプ、マイクロカプセルタイプなど、いずれの形態でも使用することができる。また、最終的に記録媒体に記録された画像の堅牢性を向上させるために、水溶性樹脂や水溶性架橋剤を添加することもできる。添加する材料としては、インク成分と共存できるものであれば制限を受けることなく使用できる。
【0020】
インクを構成する水系液媒体中には、上記した色材と共に有機溶剤を含有させることができる。この有機溶剤の量は中間画像を転写するときの記録画像の物理物性を決める要因となる。中間転写体を用いる画像記録においては、記録媒体に転写するときのインクはほぼ色材と高沸点有機溶剤だけとなるため、色材および高沸点有機溶剤の量を適正値に設定することになる。使用する有機溶剤としては、下記に示すような高沸点で蒸気圧の低い水溶性の材料が好ましい。例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、グリセリンなどである。これらの中から選択した2種類以上のものを混合して用いることもできる。また、粘度、表面張力等を調整する成分として、エチルアルコールやイソプロピルアルコール等のアルコール類や界面活性剤をインク中に添加することもできる。
【0021】
インクを構成する成分の配合比についても特に制限はなく、インクジェット記録ヘッドのインク吐出力やノズル(吐出口)の径などから、吐出可能な範囲で適宜に調製することができる。一般的には、質量基準で、色材0.1〜10%、溶剤5〜40%、界面活性剤0.01〜5%以下とし、残りを純水で調整したインクを用いることができる。
【0022】
また、中間転写体の表面に付与したインクを流動させずに、形成した中間画像を良好に保持することを目的として、画像を形成する前に、インクの流動性を低下させるための液体を中間転写体の表面に付与(塗布)してもよい。インクの流動性を低下させるための液体には、インクの粘度を高度化(増大)する成分が含まれている。このインクの高粘度化は、インクを構成している組成物の一部である色材や樹脂などがインク高粘度化成分と接触することによって化学的に反応したり、物理的に吸着したりすることによって、インク全体が粘度上昇する場合をいう。このインクの高粘度化には、インクの組成物の固形分の凝集により局所的に粘度上昇を生じる場合も含まれる。
【0023】
インク高粘度化成分には、中間転写体203のインクの流動性を低下せしめることで、画像形成の際のブリーディングやビーディングを抑制する効果がある。使用するインク高粘度化成分は、画像形成に使用するインクの種類によって適切に選択することが好ましい。例えば、染料系のインクに対しては、高分子凝集剤を用いることが有効である。一方、色材の微粒子が分散されてなる顔料系のインクに対しては、金属イオンを含有する液体を用いることが有効である。さらに、インク高粘度化成分として酸緩衝液などのpH調整剤を用いても良く、例えばカチオンポリマーなど複数のイオン性基を有する化合物を用いることができる。
【0024】
インク高粘度化成分として使用する高分子凝集剤の具体例としては、陽イオン性高分子凝集剤、陰イオン性高分子凝集剤、非イオン性高分子凝集剤、両性高分子凝集剤などが挙げられる。また、インク高粘度化成分に使用する金属イオンとしては、例えば、Ca2+、Cu2+、Ni2+、Mg2+およびZn2+等の二価の金属イオンや、Fe3+およびAl3+などの三価の金属イオンが挙げられる。これらの金属イオンを含有する液体を塗布する場合には、金属塩水溶液として塗布することが好ましい。金属塩の陰イオンとしては、Cl-、NO3-、SO42-、I-、Br-、ClO3-、RCOO-(Rはアルキル基)などが挙げられる。
【0025】
最終的に記録された画像の堅牢性を向上させるために、インクの流動性を低下させるための液体に水溶性樹脂や水溶性架橋剤を添加することもできる。添加する材料には、インク高粘度化成分と共存できるものであれば特に制限はない。また、インクの流動性を低下させるための液体には、中間転写体の表面へのインクの付着性(付与性)を高めるために界面活性剤を添加することも有効である。図1の記録装置では、中間転写体203の周辺に、インクの流動性を低下させるための液体を付与(塗布)するための液体付与手段204が配されている。また、加圧ローラ209と液体付与手段204との間には、転写後の中間転写体203を再生させるための洗浄手段210が配されている。
【0026】
液体付与手段204としては、スプレーコーターあるいはバーコーターなどの従来技術を適用することができるが、塗布量のコントロールと生産性の観点からロールコーター形態の塗布装置を用いるのが好適である。さらに、同様の理由から、インクの流動性を低下させるための液体を記録ヘッドから中間転写体203へ吐出する構成を採っても良い。また、インクの流動性を低下させるための液体を付与した後に乾燥工程を加え、中間転写体203の表面に付着した液体量をコントロールしても良い。
【0027】
図3は本発明に係る画像記録装置の動作例のフローチャートである。記録動作が開始され、ホストコンピュータ等の画像情報供給装置(不図示)から画像データや動作信号が送られてくると、記録デバイス205で、画像データにより画像を形成するための画像処理(ステップS1)が行われる。記録デバイス205により画像形成を行う準備が整ったところで、ステップS2で、支持部材201を駆動して中間転写体203の回転を開始する。そして、ステップS3で、中間転写体203の回転に同期して記録デバイス205の各記録ヘッドを駆動することにより、各記録ヘッドのノズルから中間転写体203の表面にインクを吐出して中間画像を形成する。
【0028】
次いで、ステップS4において、中間転写体203上の中間画像の液体成分を減少させる処理を行う。この液体成分の低減化処理は、次の圧着転写による記録工程(画像転写工程)において余剰液体がはみ出したり溢れ出したりして記録画像を乱したり画質低下を招くことを防止するための処理である。この画像インクからの液体成分の低減化手段としては、従来技術による各種手法を適用することができ、例えば、加熱により液体成分を蒸発させる加熱蒸発方法、あるいは乾燥空気を送風して液体成分を蒸発させる乾燥蒸発方法などがある。図1の画像記録装置では、中間転写体203の周辺に配された送風装置206により液体成分を乾燥させる乾燥蒸発方法が採られている。
【0029】
次いで、ステップS5において、中間転写体203を加熱しながら、中間転写体の表面に形成された中間画像を記録媒体208に転写して画像を記録する転写工程を行う。図1の装置では、転写工程における中間転写体203の加熱は、中間転写体203に押圧(圧着)される加圧ローラ209に内蔵されたヒータ207からなる加熱手段により、記録媒体208を介して行われている。図1に示すように、加圧ローラ209を用いて中間転写体203と記録媒体208の表裏両面とを加圧しながら加熱することにより、記録媒体208に対する転写記録を効率良く行うことができる。図示の加熱手段に代えて、支持部材201の側から中間転写体203を加熱する加熱手段を用いても良い。
【0030】
上記の転写工程における加熱温度は、中間転写体203の内部の熱膨張性マイクロカプセル103が特異的に膨張する温度以上であることが望ましい。この場合、転写時に加熱によって熱膨張性マイクロカプセル103が膨張することで、中間転写体203の記録媒体208に圧接されている面が膨れあがるが、このことが記録媒体への画像記録に好適である理由は次のとおりである。すなわち、従来技術では、上質紙やエンボス紙といった表面粗さの大きい記録媒体に転写記録する場合、記録媒体と中間転写体を圧着しても記録媒体の表面の凹部と中間転写体の表面との間に空隙が生じていた。このため、中間転写体上の中間画像と記録媒体が接触できない部分が生じ、適正な転写記録が行われないことがあった。これに対し、本実施形態では、加熱圧着時に中間転写体203の表面が膨れあがることで、記録媒体の表面の凹部に対して中間転写体の表面が接触することになる。これにより、表面粗さの大きい記録媒体に対しても、中間転写体の表面上の中間画像を適正に転写することが可能となり、適正かつ高品位の画像記録が可能となる。
【0031】
このようにして画像データ供給装置から送信された画像情報についての処理が終了したところで、一連の記録動作を終了する。なお、追加工程として、転写による画像記録を行った後に記録媒体を定着ローラで加圧することにより、表面平滑性を高めるようにしても良い。その際に、定着ローラを加熱して画像に堅牢性を持たせるようにしても良い。
【実施例1】
【0032】
以下に本発明に係る中間転写体について、実施例を挙げて具体的に説明する。本実施例では、中間転写体203を次の手順で作成した。モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ製の付加型シリコーンゴムTSE3453(商品名)の主剤と、硬化剤を用意する。そして、これら主剤、硬化剤、および松本油脂製薬製の熱膨張性マイクロカプセルマツモトマイクロスフェアーF−30VS(商品名)(平均粒子径3〜7μm)とを100:0.5:5で混合し、十分に攪拌した。その後、攪拌時に巻き込んだ気泡を除去するため、真空チャンバーにて30分間静置した。これを、0.5mmのPETフィルム上に、アプリケーターを用いて1.0mmでコーティングした後、24時間室温で静置し、硬化させて中間転写体とした。
【0033】
この中間転写体を用いて、以下に説明する工程(a)〜(c)を実施することにより、記録媒体に画像を記録した。
(a)中間転写体の表面にインクの流動性を低下させるための液体を付与する工程:
作製した中間転写体の表面に対して平行平板型プラズマ処理装置にて下記条件で表面改質を行った。
(表面改質条件)
使用ガス;流量:air;1000cc/min
N2 ;6000cc/min
入力電圧:230V
周波数:10kHz
処理速度:300mm/min
次いで、ロールコーターを用いて中間転写体上に下記組成の反応液を塗布した。
(インクの流動性を低下させるための液体組成)
CaCl2・2H2O:10%
界面活性剤(川研ファインケミカル製 アセチレノールEH):1%
ジエチレングリコール:30%
純水:59%
【0034】
(b)中間転写体の表面に中間画像を形成する工程:
インクジェット記録装置(ノズル配列密度1200dpi、吐出量4.8pl、駆動周波数12kHz)にて、反応液が塗布されている中間転写体の表面にミラー反転させた文字画像を形成した。ここでは、下記処方のインク(色材として各色顔料をそれぞれ含む4色のインク)を用いた。
(インク処方)
下記の各顔料: 3部
ブラック:カーボンブラック(三菱化学製:MCF88)
シアン: ビグメントブルー15
マゼンタ:ピグメントレッド7
イエロー:ピグメントイエロー74
スチレン−アクリル酸−アクリル酸エチル共重合体: 1部
グリセリン: 10部
エチレングリコール: 5部
界面活性剤: 1部
(川研ファインケミカル製:アセチレノールEH)
イオン交換水: 80部
【0035】
(c)中間転写体の表面に形成された中間画像を記録媒体に転写する工程:
ドライヤーを用いて中間転写体上の中間画像の水分を除去し、流動性を低下させた後に記録媒体を加圧ローラにて接触させて中間画像を転写した。転写の際、中間転写体を100℃に加熱した。
【0036】
「比較例」:
転写時の温度を常温とした以外は実施例1と同様の工程で、比較例としての画像記録を行った。
記録画像の画質評価を次の基準に基づいて行った。
画質評価の基準
○:好ましいと評価した評価者が6割以上
△:好ましいと評価した評価者が3割〜6割未満
×:好ましいと評価した評価者が3割未満
その結果、実施例1の評価が比較例の評価より明らかに高いことが実証された。
上記の結果から明らかなように、本発明を適用した画像記録装置によれば、記録媒体の表面の凹部に対する中間画像の転写性を向上させることができ、表面粗さの大きい記録媒体に対しても高画質な画像を記録することができる。
【0037】
なお、本発明に係る画像記録装置は、インクで画像記録を行う装置であれば、記録媒体の大小、記録媒体の幅の種類、記録ヘッドの数、使用するインクの種類や性状数などに関わらず、同様に適用可能である。また、本発明は、記録ヘッドで主走査するシリアルタイプ、あるいは記録媒体の搬送による副走査のみによるラインタイプなどの記録方式に関わらず、同様に適用可能である。また、本発明は、ロール紙等の長尺のシートあるいは一定寸法のカットシートなどの記録媒体の種類にも関係なく、同様に適用可能である。さらに、本発明は、紙、プラスチックフィルム、印画紙、不織布など、記録媒体の材質にも関わりなく、同様に適用可能である。
【符号の説明】
【0038】
102 中間転写体の本体(ゴム弾性体)
203 中間転写体
103 熱膨張性マイクロカプセル
104 スキン層
201 支持部材
205 記録デバイス(記録ヘッド)
207 ヒータ
208 記録媒体
209 加圧ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録ヘッドと、前記記録ヘッドからインクが付与され中間画像が形成される中間転写体を含み前記中間転写体の中間画像を記録媒体に転写する手段と、を有する画像記録装置であって、
前記中間転写体はゴム弾性体で形成され、且つ前記中間転写体の内部には熱膨張性マイクロカプセルが形成されており、
前記中間転写体を加熱する加熱手段を備え、前記加熱手段で前記中間転写体が加熱された状態で前記中間画像が記録媒体に転写されることを特徴とする画像記録装置。
【請求項2】
前記中間転写体は回転駆動される円筒状部材からなり、さらに前記記録媒体を前記中間転写体の外周面に押圧するための加圧ローラを有することを特徴とする請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項3】
前記加熱手段は前記加圧ローラに内蔵されるヒータを有することを特徴とする請求項2に記載の画像記録装置。
【請求項4】
前記中間転写体の表面に、前記熱膨張性マイクロカプセルを表面に露出させないための平滑なスキン層が形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の画像記録装置。
【請求項5】
前記スキン層の厚さは5μmから30μmの範囲であることを特徴とする請求項4に記載の画像記録装置。
【請求項6】
前記中間転写体を加熱したときの前記熱膨張性マイクロカプセルの直径が100μm以下であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の画像記録装置。
【請求項7】
前記中間転写体を形成するゴム弾性体がシリコーンゴムもしくはフッ素ゴムであることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の画像記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−101979(P2011−101979A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−257620(P2009−257620)
【出願日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】