説明

画像記録装置

【目的】 回転体の回転周期や露光ヘッドの副走査方向への移動速度の変動に起因して発生する画像ムラの低減を図る。
【構成】 画像記録装置100は、螺旋状にマルチビームを走査する装置であって、これに所謂インターレース方式という走査方法を適用したものである。LEDホルダ30より出射したn本の光ビームLBは、ズームレンズ24によって、その結像の中心間ピッチが記録線密度の逆数の2倍となる様に、フィルム35上に結像される。LEDホルダ30は記録線密度に応じた傾斜角度だけ回動する。シリンダ36は主走査方向Yへ回転し、露光ヘッド20は副走査方向Xへ記録線密度に応じて定まる速度Vx で移動している。従って、あるブロックラインの走査によって露光された走査線間を、次のブロックラインの走査によって露光することとなり、この様な走査が繰返されることにより、すじ状の画像ムラが低減される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、マルチビームによる高速走査化に対応した画像記録装置に関するものである。特に、螺旋状マルチビーム走査方式を用いた画像記録装置に関している。
【0002】
【従来の技術】画像記録速度の高速化に対応して、従来よりマルチビーム露光が広く行われている。その際に一般的に利用されている走査方法を、図20(a)に示す。この場合には、露光ヘッド40は複数(n)個の発光素子を備えており、シリンダ36の中心軸37に沿って副走査方向Xへ移動する。一方、シリンダ36は所定の回転周期で主走査方向−Yへ回転している。その結果、露光ヘッド40より出た複数本の光ビームはレンズ41を介してフィルム35上に結像されることにより露光ピクセル42が形成されると共に、上記シリンダ36の回転に伴って主走査方向Yへ走査される。主走査方向−Yへのシリンダ36の1回転による光ビームの走査が終了すると、露光ヘッド40を副走査方向Xへ移動し、再び主走査方向Yへの光ビームの走査を行う。この走査をm回繰り返すことによって、図21(a)に示すように、n×m本の光ビームがフィルム35上を走査したこととなる。但し、図21(a)では、図20(a)の露光ヘッド40がn個の発光素子を有しているものとしている。又、スキャンラインエリアSL(ここでは、露光ヘッド40による主走査1回分の露光領域に該当)の数はm個としている。従って、図21では、左側から第1番目、第2番目、第3番目、……第(m−1)番目及び第m番目の各スキャンラインエリアSLを、それぞれSL1、SL2、SL3、……SL(m−1)、SLmとして表わしている。以後、この表わし方によるものとする。
【0003】しかしながら、図21(a)の方法では、露光ヘッド40を副走査方向Xへ移動している間にシリンダ36(図20)もまた1回転しており、この1回転の間、主走査方向Yへの走査が行われないため、無駄な回転が行われていることとなる。その結果、更に一層の高速化を追求するに際して、上記シリンダ36の余分な回転が障害となっていた。
【0004】このような問題を解決する方法として、露光ヘッドを連続送りすることによって螺旋状に光ビームを走査する方法が提案されている。この場合には、図21R>1(b)に示すようにフィルム上の画像形成領域34aは平行四辺形となり、スキャンラインエリアSLは主走査方向Yに対して角度θだけ傾斜し、この結果、形成される画像は歪むこととなる。この傾斜角度θは、ビーム本数nが多いほどに大きな値となる。従って、この画像歪を防止するためには、各スキャンラインエリアSLを図22(a)に示すような長方形の形状にする必要がある。そのため、露光ヘッドを副走査方向Xへ連続送りするに際して、フィルム上に結像される露光ピクセルの配列をシリンダ36の中心軸37(図20)に対して前述の角度θだけ傾ける必要が生じる。
【0005】そのような技術は、特開昭58−111566号公報に開示されている。即ち、n個の発光素子を有する露光ヘッド43自体を中心軸37に対して角度θだけ傾けることとしている(図20(b)参照)。ここで数字45は、フィルム35上に結像された露光ピクセルを示しており、数字44はレンズを示している。この場合では、フィルム35上に形成されるスキャンラインエリアSLは、前述の図22(a)に示すように、隣り合うスキャンラインエリアSLに対してずれを生じさせることとなる。このようなずれは、当該公報に開示されているように、各スキャンラインエリアSL毎に主走査方向Yの露光タイミングを遅延させることによって補正することができる。そのような補正の結果、図22(b)に示す様な画像歪がなく、かつずれのない画像を形成することができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記従来技術は、螺旋状マルチビーム走査に関する原理を開示するものであるが、ここでは、シリンダが主走査方向に等速回転運動をなし、且つ露光ヘッドが、副走査方向に対して所定の角度だけ傾いた状態で、副走査方向に等速並進運動をすることが前提となっている。しかしながら、実際には、上記シリンダの回転や露光ヘッドの移動を制御する各駆動信号のレベルは、常に理想的な一定値に保たれているわけではなく、設定値を中心としたある範囲内で微小ながらも変動している。しかも、これらの駆動信号のレベルは、周囲温度の変化による影響をも受けて変動する。このため、シリンダの回転速度(従って、回転周期)や露光ヘッドの副走査方向の移動速度は、光ビームの走査実行中に変動していることとなる。而して、上記従来技術は、複数本の光ビームを主走査方向に走査しつつ、同時にこれらの光ビームを副走査方向へも走査している。従って、上記速度変化により、隣接する2つのスキャンラインエリアの境界部分に於ける隣り合う走査線間のピッチと当該スキャンラインエリア内に属する各走査線同士のピッチとが異なる結果となる。この相違は、境界部分にすじ状の画像ムラを発生させる。このとき、上記各速度変化そのものは微小であっても、この様な画像ムラがほぼ規則的に各境界毎に発生するため、当該画像ムラが際立って目立つことになり、記録画像の品質劣化をもたらす。
【0007】そこで、シリンダの回転速度や露光ヘッドの移動速度の変動を予め考慮した螺旋状マルチビーム走査が求められるわけであるが、その際に、露光ピクセルの記録線密度(露光ピクセルの配列方向に於ける、単位長さ当たりの露光ピクセルないし走査線の数)の値に応じて、装置内の各部を正確に制御可能とする必要がある。これは、次の様な理由による。
【0008】即ち、各画像記録毎に適切な倍率を設定しているが、このように倍率を変更すると、必然的にフィルム上に結像される露光ピクセルの寸法、従ってその記録線密度も変化する。その結果、スキャンラインエリアSLの幅Δx0(図22(b)参照)の値も変化することとなり、傾斜角度θもまたその影響を受けることとなる。そして、この傾斜角度θの変化に伴い、露光ヘッドの副走査方向の移動速度や主走査方向の露光タイミングへの影響をも考慮しなければならないこととなる。以上述べた問題点については、上記従来技術は何ら開示するところではない。
【0009】
【発明の目的】この発明は、以上のような問題点に着眼してなされたものであり、その目的は、記録線密度の設定に対して適切に各部の制御を可能としつつ、シリンダの回転周期や露光ヘッドの副走査方向の移動速度に多少の変動があったとしても、ムラのない画像を記録することができる装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】請求項1に係る発明は、主走査方向へ回転する回転体上に配置された感光材に対して、n本(nは3以上の奇数)の光ビームを前記主走査方向と直交する副走査方向へ移動させつつ螺旋状に走査することにより画像を記録する画像記録装置であって、画像信号に応じて前記n本の光ビームをそれぞれ発光するn個の発光素子が等間隔で配列されている発光手段と、隣合う結像の中心間ピッチが、当該結像の配列方向に於ける単位長さ当たりの走査線の数に該当する記録線密度の逆数の2倍となる様に、前記n本の光ビームを前記感光材上へ結像する結像手段と、前記n本の光ビームの結像を前記副走査方向に対して前記記録線密度に応じた傾斜角度θで傾斜させる結像配列方向制御手段と、前記回転体の一回転内に、前記記録線密度の逆数のピッチで露光されるn本の前記走査線を含む走査領域であるスキャンラインエリアの幅の前記副走査方向への長さ分だけ、前記発光手段を前記結像手段及び結像配列方向制御手段と共に前記副走査方向へ移動させる移動制御手段と、前記回転体の一回転毎に、前記スキャンラインエリアの幅の前記主走査方向への長さ分だけ前記回転体を回転させるのに要する時間Δtずつ前記画像信号の印加時間を早めながら、前記n個の発光素子に前記画像信号を印加する画像信号印加手段とを備えている。
【0011】請求項2に係る発明では、前記回転体の円周を2πR、前記記録線密度をMとして表すとき、請求項1に於ける結像配列方向制御手段は関係式θ=sin-1〔n/(2πR×M)〕に基づき前記傾斜角度θを決定している。
【0012】請求項3に係る発明では、前記回転体の回転周期をTとして表すとき、請求項2に於ける前記移動制御手段は、関係式Vx =n/(M×T×cosθ)に基づき前記発光手段の移動速度Vxを決定している。
【0013】請求項4に係る発明では、請求項3記載の前記時間Δtは関係式Δt=T×n×sinθ/(M×2πR)に基づき決定される。
【0014】請求項5に係る発明では、請求項4記載の結像配列方向制御手段は、前記結像手段の光軸と平行な軸の周りに前記発光手段を前記傾斜角度θだけ回動させることにより、前記結像の配列方向を制御している。
【0015】請求項6に係る発明では、請求項4記載の結像配列方向制御手段は、前記傾斜角度θの半分の回転角度を与える制御信号に応じて、前記発光手段より放出されたn本の光ビームを前記結像手段の光軸と平行な軸の周りに傾斜角度θだけ回転させる像回転手段である。
【0016】
【作用】
〔請求項1に係る発明〕 n個の発光素子は、それぞれ印加された画像信号に応じて光ビームを発光する。その際、各発光素子は等間隔で配列されているので、放出されたn本の光ビームの中心間ピッチは各発光素子の間隔に等しい。その後、n本の光ビームは結像手段に入射し、この結像手段によって感光材上に結像される。その際、結像手段は、隣合う結像の中心間ピッチが、当該結像の配列方向に於ける単位長さ当たりの走査線数に相当する記録線密度の逆数の2倍となる様に、n本の光ビームを結像する。しかも、結像配列方向制御手段が、n本の光ビームの結像を副走査方向に対して上記記録線密度に応じた傾斜角度θで傾斜した方向へ配列させる。更に、発光手段と結像手段と結像配列方向制御手段とは共に、回転体の主走査方向への一回転内に、移動制御手段の制御によりスキャンラインエリアの幅の副走査方向への長さ分だけ移動する。ここで、スキャンラインエリアとは、記録線密度の逆数のピッチで露光されるn個の走査線を含む走査領域である。その結果、副走査方向と上記傾斜角度θをなす方向へ配列したn本の光ビームの結像は、感光材上をその主走査方向に対して傾斜角度θで傾斜した方向へ走査されることとなる。その際、当該回転体の一回転内に、第1番目から第〔(n−1)/2〕番目迄の発光素子から放出された各光ビームは、隣接する2つのスキャンラインエリアの内の一方に属するn本の走査線の中で、それぞれが両スキャンラインエリアの境界から数えて偶数番目の走査線に該当する、(n−1)/2本の各走査線上に沿って走査される一方、第〔(n+1)/2〕番目から第n番目迄の発光素子から放出された各光ビームは、上記両スキャンラインエリアの内の他方に属するn本の走査線の内で、それぞれが上記境界から数えて奇数番目の走査線に該当する、(n+1)/2個の各走査線上に沿って走査される。加えて、画像信号印加手段は、回転体の一回転内に、スキャンラインエリアの幅の主走査方向への長さ分だけ回転体を回転させるのに要する時間Δtずつ印加時間を早めながら、各発光素子に画像信号を印加する。従って、回転体の次の一回転時においては、同じく主走査方向に対して傾斜角度θで傾斜した方向へ螺旋状に走査されるn本の光ビームの内で、第1番目から第〔(n−1)/2〕番目迄の発光素子から放出された各光ビームは、回転体の前回の一回転時に第〔(n+1)/2〕番目から第n番目迄の発光素子から放出された各光ビームが走査されたスキャンラインエリアに属する偶数番目の各走査線上を走査される一方、第〔(n+1)/2〕番目から第n番目迄の発光素子から放出された各光ビームは、その次の新たなスキャンラインエリアに属する奇数番目の各走査線上を走査される。しかも、前回と今回の一回転時の露光により記録された画像は、隣合うスキャンラインエリア同士の境界でずれること無く、副走査方向と傾斜角度θをなす方向に繋がっている。この様に、一つのスキャンラインエリアは、回転体の二回の回転によって、その全てが露光されることになる。そして、この様なn本の光ビームの走査が、回転体の一回転毎に行われていく。
【0017】〔請求項2に係る発明〕 結像配列方向制御手段は、関係式θ=sin-1〔n/(2πR×M)〕に基づき傾斜角度θを決定した上で、n本の光ビームの結像の配列方向を傾斜角度θだけ傾けさせる。
【0018】〔請求項3に係る発明〕 移動制御手段は、関係式Vx =n/(M×T×cosθ)に基づき発光手段の移動速度Vxを決定し、この移動速度Vx で以て発光手段を副走査方向へ移動させる。その結果、n本の光ビームもまた、回転体の一回転中に上記移動速度Vx で副走査方向へ走査されている。
【0019】〔請求項4に係る発明〕 画像信号印加手段は、関係式Δt=T×n×sinθ/(M×2πR)に基づき時間Δtを決定する。
【0020】〔請求項5に係る発明〕 結像配列方向制御手段は、結像手段の光軸と平行な軸の周りに、発光手段を傾斜角度θだけ回動させる。この結果、n個の発光素子の配列方向は、副走査方向に対して傾斜角度θだけ傾斜した方向となる。
【0021】〔請求項6に係る発明〕 結像配列方向制御手段は、傾斜角度θの半分の回転角度を与える制御信号に応じて、発光手段より放出されたn本の光ビームを結像手段の光軸と平行な軸の周りに、傾斜角度θだけ回転させる。その結果、感光材上でのn本の光ビームの結像もまた、上記軸の周りに傾斜角度θだけ回転した状態となる。
【0022】
【実施例】この発明に係る画像記録装置は、回転体上に配置された感光材を複数本の光ビームで螺旋状に走査して画像を記録する装置であり、しかも、回転体の第i番目の回転時に感光材に上記光ビームが走査された結果生じる後半分の各走査線の間を、次の第(i+1)番目の回転時の走査による前半分の走査線によって内挿してゆき、これにより画像を記録するという、いわゆるインターレース走査方式を採用したものである。以下、図面に基づき、好適な実施例を説明する。
【0023】(1) 画像記録装置100の構成
【0024】A. シリンダ36と露光ヘッド20との構成
【0025】図1は、この発明の一実施例である画像記録装置100における露光ヘッド20とシリンダ36(回転体)との機械的構成を示した斜視図である。その概略動作は、次の通りである。即ち、シリンダ36は、その中心軸37の周りに、一定の回転周期Tで回転する。この回転方向を、主走査方向Yと呼ぶ。但し、実際の回転周期は、当該一定値Tを中心として、微小範囲内で微動している。この点を模式的に例示したのが図2であり、ある時刻tでは設定値Tに回転周期が保たれていても、その後の時間経過と共に、回転周期は(T−ΔT/2)から(T+ΔT/2)の範囲内で微小変動する。ここで記号ΔTは、微小変動範囲を示している。
【0026】一方、図1に於ける露光ヘッド20は、シリンダ36の中心軸37に平行な方向X(副走査方向)へ、一定の移動速度Vx で移動する。但し、露光ヘッド20の移動速度も又、一定値Vxを中心値ないし平均値として、微小な範囲内で変動している。この点を同じく模式的に例示したのが、図3である。本図中の微小変動範囲ΔVは、制御信号のレベルが走査中微小量だけ変動ないしドリフトすることに起因している。その結果、露光ヘッド20より放出された光ビームLBは、上記の回転周期Tと露光ヘッド20の移動速度Vxとの微小変動を伴いながら、シリンダ36に対してスパイラル状に走査される。以下、露光ヘッド20とシリンダ36との構成を詳細に説明する。
【0027】(A−1) シリンダ36の構成
【0028】シリンダ36の表面上には、感光材としてのフィルム35が貼付されている。又、シリンダ36の一端側には、シリンダ回転用モータ6(以後、単にモータと称す)が設けられており、このモータ6の駆動力を受けてシリンダ36は主走査方向Yに回転する。そして、モータ6に取付けられたロータリーエンコーダ18がシリンダ36の回転位置を検知して、ゼロパルス信号VZP及び焼き付け基準クロック信号VSCLKを図6に於いて後述する制御部10へ出力する。このゼロパルス信号VZPは、シリンダ36の回転に同期したパルス信号であり、シリンダ36が1回転する間に1パルスを発生する。また焼き付け基準クロック信号VSCLKは、ピクセル単位周期(一つの露光ピクセルの主走査方向Yの寸法に相当する回転量だけシリンダ36が回転するのに要する時間)のクロック信号である。尚、本実施例では、領域34が画像形成領域となる。この領域34は、中心軸37に対して、わずかに傾斜している。
【0029】(A−2) 露光ヘッド20の構成
【0030】露光ヘッド20は、その一端に副走査送り用モータ7(以後、単にモータと称す)が取付けられたボールネジ29とレール28とに取付けられており、モータ7の回転力を受けて、レール28に沿って副走査方向Xへ移動する。その際、移動速度Vx は、後述する数式5で与えられる最適な一定値に制御されている。但し、厳密には、その一定値を中心とした微小範囲内で、移動速度Vxは微動する。この点は、既述した通りである。
【0031】露光ヘッド20の内部構成は、次の通りである。先ず、露光ヘッド20の移動台21上にはL字型のブラケット23が固着されており、当該ブラケット23の上端側にはLED回転用モータ9(サーボモータ;以後、単にモータと称す)が取付けられている。このモータ9の駆動は、後述する制御信号VCONT4 によって行われる。更に当該モータ9の回転軸の一端にはネジ25が取付けられており、しかもこのネジ25は移動台21上に取付けられている。
【0032】又、LEDホルダー30(発光装置部)の一端が、移動台21上に固着された支持部27によって軸支されている。このLEDホルダー30の中心部31には、発光素子としてのn個(nは3以上の奇数)の発光ダイオード(LED1〜LEDn)が、中心間隔d0 で一列に配列するように取付けられている。この配列状態を模式的に示したのが、図4である。
【0033】更に、図1に示す通り、LEDホルダー30の他端側は、ネジ25によって螺合されたナット26に取付けられている。しかも当該ナット26の下面には、その一端が移動台21に取付けられたスプリング22の他端が固着されている。従って、モータ9の回転力によってナット26がネジ25に沿って上下運動を行うと、その上下運動に応じてLEDホルダー30が支持部27の軸27a(後述するズームレンズ24の光軸と平行である)を回動軸として回動することとなる。その結果、n個の発光ダイオードの配列方向は、副走査方向Xないしは中心軸37に対して、LEDホルダー30の回動角度だけ傾斜することとなる。この回動角度を、以後、傾斜角度θと呼ぶ。
【0034】更に、移動台21上には、結像手段としてのズームレンズ24が設けられている。しかも、このズームレンズ24の光軸上に、前述のLEDホルダー30の中心部31が配置されている。ズームレンズ24の倍率は、同じく移動台21上に固設された倍率変換用モータ8(以後、単にモータと称す)によって調整される。ズームレンズ24に入射したn本の光ビームは、ズームレンズ24に設定された倍率に応じた大きさの像に結像される。即ち、ズームレンズ24への入射前の段階では、光ビームLBのビーム間ピッチ(中心間ピッチ)はd0であるが、ズームレンズ24は、予めモータ8により調整された倍率に応じて、フィルム35上のn個の結像の中心間距離が後述する記録線密度の逆数の2倍に一致するように、光ビームLBのビーム間ピッチを縮小する。
【0035】ここで、その様なフィルム35上に結像されたn本の光ビームLBによる露光ピクセル50の配列状態の一例を、図5に示す。同図では、フィルム35(図1)上での露光ピクセル50同士の中心間距離を距離d(d<d0 )と記載している。しかも、当該中心間距離dは、各露光ピクセル50の幅寸法(d/2)の2倍に当たる。従って、各露光ピクセル50間に、更にもう一つ別の露光ピクセルを挿入できる状態に、n個の光ビームLBは結像されるわけである。以後、この各露光ピクセル間の中心間距離dを、ビーム間ピッチdと呼ぶことにする。
【0036】B. 電気的構成
【0037】(B−1) 全体構成
【0038】図6は、画像記録装置100の電気的構成を模式的に示したブロック図である。先ず、ワークステーション19内の画像メモリ1には、予め記録すべき画像信号VIMA が格納されている。この画像メモリ1の出力端は、トグルラインメモリ2に接続されている。そして、当該トグルラインメモリ2の出力端は、n個のラッチ回路31 〜3n の各入力端に接続されている。
【0039】更に、各ラッチ回路31〜3nの出力端は、それぞれn個のパラレル/シリアル変換器(以後、P/S変換器と称す)41〜4nの入力端に接続されており、各P/S変換器41〜4nの出力端は、それぞれドライバ5を介して、各発光ダイオードLED1〜LEDnの入力端に接続されている。
【0040】制御部10は、上記各装置1、2、31〜3n、41〜4nを制御する部分である。即ち、制御部10は、アドレス信号VADR1を画像メモリ1へ出力して、画像メモリ1からの画像信号VIMAの読出しを制御する。これにより、フィルム35(図1)上に走査すべき走査線に関する画像信号VIMAが順次に画像メモリ1より読出されて、トグルラインメモリ2へ出力される。制御部10は、このトグルラインメモリ2に対して、セレクタ信号VS1、VS2及びアドレス信号VADR2を出力する。
【0041】ここで図7は、トグルラインメモリ2の内部構成を模式的に示したブロック図である。トグルラインメモリ2は、3つのラインメモリ2A、2B、2Cと3つのスイッチ回路S1、S2、S3とを有しており、更にスイッチ回路S3は、3つのスイッチ回路S4〜S6より成る。先ず、入力端T1は前述の画像メモリ1(図6)の出力端に、出力端T16は各ラッチ回路31〜3n(図6)の入力端に、それぞれ接続されている。しかも、両スイッチ回路S1及びS2は、それぞれ3つの端子T2〜T4及びT13〜T15を有しており、共にセレクタ信号VS1のLレベルからHレベルへの立上がりに応じてスイッチング動作を行う。そして、端子T2〜T4は、それぞれスイッチ回路S4の入力端T5、スイッチ回路S5の入力端T8、スイッチ回路S6の入力端T11に接続されている。又、端子T13〜T15は、それぞれラインメモリ2A〜2Cの出力端に接続されている。一方、スイッチ回路S3に含まれる3つのスイッチ回路S4〜S6は、共にセレクタ信号VS2のLレベルからHレベルへの立上がりに応じてスイッチング動作を行なう。スイッチ回路S4の端子T6、T7は、それぞれラインメモリ2A、2Cの入力端に接続されている。これに対して、両スイッチ回路S5、S6は、端子T10を共有しており、端子T9、T10、T12は、それぞれラインメモリ2A、2B、2Cの入力端に接続されている。又、ラインメモリ2A、2B、2Cは、共にアドレス信号VADR2が与えるアドレス指定に応じて、送信されてくる各画像信号VIMAを順次に書き込むと共に、格納済みの各画像信号VIMAを順次に読出す。
【0042】この様に、トグルラインメモリ2に3つのラインメモリ2A〜2Cと3つのスイッチ回路S1〜S3を備える様にしたのは、次の理由によるものである。その第一は、あるブロックライン(ブロックラインとは、n本の光ビームで並列に1回の主走査を行なう走査領域のことで、より詳しくは後述参照)に関する画像信号VIMAをトグルラインメモリ2に書込んでいる間に並行して、その前のブロックラインに関する格納済みの画像信号VIMAをトグルラインメモリ2から読出し可能とすることであり、その第二は、画像メモリ1(図6)は、第1番目の走査線に関する画像信号から最後の第(m×n)番目の走査線に関する画像信号まで、順次に各走査線に関する画像信号をその記憶領域から読出して、それを画像信号VIMAとして出力するので、トグルラインメモリ2側では、所望のブロックラインに属する画像信号を送信されてくる各画像信号VIMAの中から選別して、選別後の画像信号VIMAを各ラインメモリ2A〜2Cへ振り分けて記憶する必要がある。そのために、大別して3つのスイッチ回路S1〜S3を、トグルラインメモリ2は有しているのである。その結果、各ラインメモリ2A〜2Cには、各ブロックラインに属すべき画像信号VIMAが順次に書込まれることになる。この点の詳細は、後述するタイミングチャート(図15、図16R>6)を用いた説明でより明らかとなる。又、上記走査線の概念についても、後述の説明で明らかとなる。
【0043】再び図6に示す通り、制御部10は、各ラッチ回路31〜3nに対してアドレス信号VADR2、セレクタ信号VS1及び焼き付けクロック信号VCLKを出力する。しかも、焼付けクロック信号VCLKは、各P/S変換器41〜4nにも入力されている。
【0044】ここで、図8は、ラッチ回路31の内部構成をP/S変換器41と共に模式的に示したブロック図である。勿論、他のラッチ回路32〜3nの構成も又、ラッチ回路31の構成と同一である。従って、ラッチ回路31の構成の説明を以て、他のラッチ回路32〜3nの構成の説明に代える。本図に示す通り、ラッチ回路31は、第1及び第2ラッチ回路31A、31Bと、2つのスイッチ回路SW1、SW2と、分周回路31Cとを有している。この内、スイッチ回路SW1の端子T17は、第1番目の発光ダイオードLED1(図6)に対応した画像信号VIMA1(パラレル信号である)を受信するものであり、端子T18、T19は、各々第1及び第2ラッチ回路31A、31Bの入力端に接続されている。又、スイッチ回路SW2の端子T22は、ラッチ回路31の出力端であり、端子T20、T21は各々、第1及び第2ラッチ回路31A、31Bの出力端に接続されている。そして、両スイッチ回路SW1、SW2は共に、セレクタ信号VS1の立上がりに応じてスイッチング動作を行なう。又、第1及び第2ラッチ回路31A、31Bは、共にアドレス信号VADR2のタイミングに応じて、受信した画像信号VIMA1をラッチする。これに対して、分周回路31Cは、焼き付けクロック信号VCLKを8分の1分周して、クロック信号VDCLKを生成する。
【0045】この様に、焼き付けクロック信号VCLKを8分の1分周するのは、次の理由による。即ち、第1及び第2ラッチ回路31A、31Bは8ビット(8画素分の画像データに該当)単位で画像信号VIMA1を保持するため、これらの画像信号VIMA1を8ビット単位の画像データとして読出して、後段のP/S変換器41によって1ビットの画像信号V(シリアル信号)に変換可能とするために、上記2つのクロック信号が必要となるのである。
【0046】又、ラッチ回路31をこの様な構成としたのは、送信されて来た、あるブロックラインに関する画像信号VIMA1をラッチしている間に、並行してその前のブロックラインに関する画像信号VIMA1を読出してP/S変換すると共に、変換後の画像信号V1をドライバ5(図6)を介して第1番目の発光ダイオードLED1に印加するためである。図8では、丁度、第1ラッチ回路31Aが画像信号VIMA1をラッチしており、これに対して、第2ラッチ回路31Bは、クロック信号VDCLKのタイミングでラッチ済みの画像信号VIMA1を出力している。制御部10の詳細な構成については、次に述べる。
【0047】(B−2) 制御部10の構成
【0048】図9は、制御部10とその周辺部分の構成を示すブロック図である。本制御部10は、CPU11を中心として構成されている。また、ロータリーエンコーダ18及び操作部17が、当該制御部10に接続されている。ロータリーエンコーダ18は、ゼロパルス信号VZP及び焼き付け基準クロック信号VSCLKを、I/Oポート13を介してCPU11へ出力する。操作部17もまた、入力信号VIN1及びVIN2 を、I/Oポート13を介してCPU11へ出力する。この操作部17は、キーボードやマウスやタッチパネルキー等の入力装置(図示せず)を備えている。操作部17から入力された入力信号VIN1 及びVIN2 は、CPU11を介してメモリ12に格納される。
【0049】一方、制御部10の出力側には、モータ6〜9が接続されている。CPU11は、I/Oポート14を介して、各モータ6〜9に対して制御信号VCONT1 〜VCONT4 を出力する。又、CPU11は、焼き付け基準クロック信号VSCLKをカウントして、トリミング・マスク信号VTMを生成し、ANDゲート回路15の一方の入力端へ出力する。ここで、トリミング・マスク信号VTMは、トリミング範囲のスタート位置及びエンド位置を与える信号である。このANDゲート回路15の他方の入力端はロータリーエンコーダ18に接続されている結果、焼き付け基準クロック信号VSCLKを受け取り、その出力端からは、基準信号V0 が遅延回路16の入力端に出力される。遅延回路16の出力端は、図6に示したn個のラッチ31 〜3n に接続されており、CPU11が出力する遅延信号VDLY (遅延時間を指令する信号)を受けて、基準信号V0 を遅延した焼き付けクロック信号VCLK を出力する。
【0050】(2) 傾斜角度θとスキャンラインエリアのずれ補正方法
【0051】以下では、記録線密度(インターレース走査された光ビームLBの結像の配列方向に於ける、単位長さ当りの走査線ないし露光ピクセルの数に該当)と傾斜角度θとの関係、及び記録線密度とスキャンラインエリアのずれ補正量との関係について検討する。なお、ここでは、記録線密度をM(本/mm)、発光ダイオードの数をn(個)、シリンダ36の半径をR(mm)、スキャンラインエリアの数をm(個)、ブロックラインの数をk(k=m+1)(個)、ビーム間ピッチをd(mm/本)、ブロックラインの幅をL(mm)、シリンダ36(図1)の回転周期をT(秒/回転)と定義した場合について、説明する。但し、nは3以上の奇数である。又、上記ブロックラインとは、図4に示したn個の発光ダイオードLED1〜LEDnより放出されたn本の光ビームを主走査方向Yに走査して得られるn本の走査線を含む走査領域に該当する。そして、走査線とは、各光ビームの結像ないし露光ピクセルを走査して得られる露光領域である。又、スキャンラインエリアとは、仮にn本の光ビームを丁度記録線密度Mの逆数に当たるビーム間ピッチで以てフィルム35(図1)上に結像したものとして、これらのn個の結像を同時に主走査方向Yに走査して得られるべきn本の走査線を含む走査領域に該当している。ところで、この画像記録装置100(図1R>1)はインターレース走査方式を採用しているため、d=2/Mの関係式が成立する。従って、隣り合う2つのスキャンラインエリアを含むエリアが、丁度、ブロックラインに該当していることとなる。以下では、ブロックラインの総称としてブロックラインBLを、スキャンラインエリアの総称としてスキャンラインエリアSLを適宜用いる。
【0052】■ 傾斜角度θについて
【0053】図10は、ブロックラインBLの数kを5とした場合における、シリンダ36に固定されたフィルム35に形成される画像形成領域34を示している。n本の光ビームLB(図1)は傾斜角度θで以て螺旋状に走査されるので、ブロックラインBL及びスキャンラインエリアSLも又、主走査方向Yないし副走査方向Xに対して傾斜角度θで傾く。この図は、シリンダ36を仮想的に展開した図である。また、図中の点線Ej(j=1、2、・・・、k+2)は、隣り合うスキャンラインエリアSL同士の境界線を示している。但し、点線E1は、対応するスキャンラインエリアSLが実在しないため、仮想的な境界線に該当しているが、ブロックラインBL1の一端(スタートライン)を画するものである。
【0054】本画像記録装置100は、螺旋状走査型で且つインターレース走査方式(先に走査・露光されるブロックラインBL内の後半分の各走査線間に該当する未露光部分を、次のブロックラインの走査において走査する方式)を採用した記録装置である。従って、点線E1の終了点Aと点線E2の開始点Bは一致しなければならないし、また第i番目のブロックラインBLi(1≦i≦k)においては、第1番目から第{(n−1)/2}番目までの発光ダイオードLD1〜LD{(n−1)/2}のそれぞれの放出した{(n−1)/2}本の光ビームによって、当該ブロックラインBLiに属する一方のスキャンラインエリアSL(i−1)を走査すると共に、第{(n+1)/2}番目から第n番目までの発光ダイオードLED{(n+1)/2}〜LEDnの各々から放出された{(n+1)/2}本の光ビームによって、他方のスキャンラインエリアSLiを走査し、この走査を各ブロックラインBL毎に繰り返すことになる。また、線分ABは、主走査方向Yと平行でかつ2πRの長さを有している。さらに、点Aから点線E2に垂線を下ろした際の交点を点Cとすると、線分ACの長さは、L/2(=(n・d)/2=n/M)となる。ただし、d=2/Mである。従って、三角形ABCに注目すれば、傾斜角度θは数1によって表されることがわかる。
【0055】
【数1】


【0056】このように、傾斜角度θは、ブロックラインBLの幅Lに、すなわち、記録線密度M(またはビーム間ピッチd)および発光ダイオードの数nに依存している。なお、一般的には発光ダイオードの数nを変更しないことが多く、この場合には、記録線密度M(またはビーム間ピッチd)のみに依存することとなる。
【0057】スキャンラインエリアSL1、スキャンラインエリアSL2、スキャンラインエリアSL3、スキャンラインエリアSL4は、それぞれブロックラインBL1とBL2,ブロックラインBL2とBL3,ブロックラインBL3とBL4,ブロックラインBL4とBL5に関する2回の走査により露光される。但し、仮想的なスキャンラインエリアSL0は、ブロックラインBL1に関する1回の走査により、白画像が形成される領域である。
【0058】■ スキャンラインエリアのずれ補正量について
【0059】以下、図11に基づいて、ずれ補正量を導出する。ここで、図11は、主走査方向Yに対する露光ピクセル50の配列方向の角度を傾斜角度θと定義した場合における各ブロックラインBLと各スキャンラインエリアSLとの関係を示したものであり、説明を容易にするために、光ビームの本数(n)を5本とした場合の例である。そして、図中に示した記号N1〜N17の各々は、走査線の番号を意味している。又、記号Wは仮想的な走査線を示すものであって、実際上は白画像を描画する部分である。以下では、各走査線を走査線W、走査線N1、…、走査線N17と称することにする。
【0060】更に図11においては、理解を容易にする観点から、各露光ピクセル50に数字1〜5を付記している。これは、各走査線W、W、N1〜N17に属する露光ピクセル50が何番目のブロックラインBLに関する走査によって形成されているかを示すものである。そして、特に丸印で囲んだ数字は、第i番目(1≦i≦k)のブロックラインBLiの走査に於いて、第(n+1)/2番目〜第n番目の発光ダイオードLED{(n+1)/2}〜LEDnが放出した光ビームの結像によって各露光ピクセル50が形成されることを示している。
【0061】本実施例(n=5)に則してより具体的に言えば、第3〜第5番目の発光ダイオードLED3〜LED5より放出した各光ビームLB(図1)はそれぞれ、第1番目のブロックラインBL1の走査時においては、走査線N1、N3及びN5上の露光ピクセル50を形成し、ブロックラインBL2の走査時においては、走査線N6、N8及びN10上の露光ピクセル50を形成し、ブロックラインBL3の走査時においては、走査線N11、N13及びN15上の露光ピクセル50を形成する。その他面において、第1及び第2番目の発光ダイオードLED1及びLED2はそれぞれ、ブロックラインBL1の走査時には、両走査線W上に白画像を描画し、ブロックラインBL2の走査時には、未露光である走査線N2、N4上に露光ピクセル50を形成し、ブロックラインBL3の走査時には、未露光である走査線N7、N9上に露光ピクセル50を形成すると共に、ブロックラインBL4の走査時には、同じく未露光である走査線N12、N14上に露光ピクセル50を形成する。尚、図11では図示していないが、最後のブロックラインBLkの走査時においては、第3〜第5番目の発光ダイオードLED3〜LED5より放出された光ビームは、ブロックラインBL1の走査時に第1及び第2番目の発光ダイオードLED1、LED2より放出された光ビームと同様に、仮想的なスキャンラインエリアSL(m+1)内に白画像を形成する。
【0062】図11より明らかなように、各光ビームを出力する時間間隔(焼き付け基準クロック信号VSCLK(図9)の周期)tCLK は、一走査線に属する隣り合う2つの露光ピクセル50の中心間距離の主走査方向Yへの成分ΔyCLKに対応付けられる量であるから、次の数2によって表される。
【0063】
【数2】


【0064】又、隣り合うブロックラインBL間の主走査方向Yへのずれ量Δyは、数3によって表される。
【0065】
【数3】


【0066】従って、上記ずれ量Δy分だけシリンダ36(図1)を回転するのに要する時間Δt(遅延タイミングのずれ時間とも称す)は、数4によって、記録線密度Mと関係づけられる。
【0067】
【数4】


【0068】そこで、上記時間Δtずつ、各ブロックラインBLの主走査方向Yにおける露光開始時間を遅延させていけば良いこととなる。又、その時の露光ヘッド20(図1)の副走査方向Xの移動速度Vx は、数5によって記録線密度Mと関係づけられる。但し、移動速度Vxは、既述した通り、実際には微小変動しているので(図3参照)、数5で与えられる移動速度Vxは、平均値としての意味を有している。
【0069】
【数5】


【0070】従って、図1に示すズームレンズ24の倍率を変更する毎に、傾斜角度θ、主走査方向Yの遅延タイミングのずれ時間Δt及び露光ヘッド20の移動速度Vxを適切に調整しなければならないこととなる。この調整によって、隣接するブロックラインBL間にずれが生じない画像を、所定の画像形成領域34(図10)へ記録することが可能となる。
【0071】■ Δy補正方法
【0072】ずれ量Δyの補正方法を、図12に基づき説明する。ここで、図12は、各ブロックラインBL毎の焼き付けクロック信号VCLK の相対的関係を表したタイミングチャートである。
【0073】ずれ量Δyを補正するには、露光ピクセルを焼き付けるために必要な画像信号V1 〜Vn の出力を、各ブロックラインBL毎に、つまりシリンダ36(図1)の一回転毎に順次時間Δtずつ早めていけばよい。そこで、第1番目のブロックラインBL1を基準にすると、第2番目のブロックラインBL2における画像信号の出力タイミングを、ブロックラインBL1における画像信号の出力タイミングよりも時間Δtだけ早めさせ、更に第3番目のブロックラインBL3に関しては時間(2・Δt)だけ早めさせ、同様にブロックラインBL4以後の各ブロックラインBLに関しても、出力タイミングをその直前のブロックラインBLのそれよりも時間Δtずつ早めさせてゆけばよいこととなる。その結果、最後のブロックラインBLk(=BL(m+1))については、ブロックラインBL1と比較して、時間Δt・(k−1)〔=Δt・m〕だけ出力タイミングを早めさせる必要がある。
【0074】これらの関係を明示しているのが図12であり、同図中、(a)がゼロパルス信号VZPを、(b)が焼き付け基準クロック信号VSCLKを、(c)がトリミング・マスク信号VTMを、(d)が基準信号VO を、それぞれ示している。トリミング・マスク信号VTMは、ブロックラインBLにかかわらず一定区間で”H”となる信号である。又、同図(e)、(g)、(i)及び(k)は、それぞれ、ブロックラインBL1、ブロックラインBL2、ブロックラインBL3及びブロックラインBLkにおける焼き付けクロック信号VCLK を、それぞれ示している。又、同図(f)、(h)、(j)、(l)は、それぞれブロックラインBL1、BL2、BL3及びBLkに関する画像信号のデータを示している。
【0075】上記焼き付けクロック信号VCLK の遅延時間設定については、図9に示すように、トリミング・マスク信号VTMと焼き付け基準クロック信号VSCLKとを入力信号とするANDゲート回路15と、遅延時間を指令する遅延信号VDLY とを用いて実現することができる。ここで遅延信号VDLY は、ブロックライン(BL1、・・・、BL(k−2)、BL(k−1)、BLk毎に、数4に基づく遅延時間Δtdi(Δtd1、・・・、Δtdk-2、Δtdk-1、Δtdk)を与える信号である。
【0076】本実施例では、上記検討■、■、■の結果に基づき、画像記録装置を適切に構成すると共に、適切な動作を行わしめている。
【0077】(3) 画像記録装置100の動作
【0078】以下、画像記録装置100(図1)の動作手順を、図1、図6〜図9を参照しつつ、図13ないし図14に示すフローチャートに基づき説明する。
【0079】A. 準備ステップ
【0080】ステップS1ないしステップS10は、画像記録走査のための準備段階を示すステップである。
【0081】先ず、ステップS1では、画像記録に必要な各種のデータを、入力信号VIN1として、CPU11へ入力する。即ち、シリンダ36の半径R、ビーム本数n(発光ダイオードの数に相当)、シリンダ36の回転周期T及び基準遅延時間Dtを、入力信号VIN1 として操作部17より入力し、CPU11を介してメモリ12へ格納する。ここで、基準遅延時間Dt とは、ブロックラインBL1の走査開始位置を示すもので、最後のブロックラインkの遅延時間Δtdkが”0”または正の値となるよう設定される。これらのデータは、後述する演算処理において必要なデータである。
【0082】次に、ステップS2では、記録すべき画像信号VIMA を、画像メモリ1へ格納する。この格納動作は、ワークステーション60内で処理される。
【0083】ステップS3では、操作部17により、記録線密度Mを示す入力信号VIN2 を入力し、CPU11は、当該記録線密度Mをメモリ12へ格納する。この記録線密度Mは、既述したように、ビーム間ピッチdの逆数の2倍に相当しており、ズームレンズ24の倍率を決定する値である。
【0084】次にステップS4において操作部17の走査開始スイッチ(図示せず)をオペレータが操作すると、CPU11は上記記録線密度Mに対応した倍率を与える制御信号VCONT3 を決定し、当該制御信号VCONT3 をモータ8へ出力する。この制御信号VCONT3 に応じてモータ8は駆動され、ズームレンズ24は所定の倍率に調整される。
【0085】次にステップS5では、CPU11は数1に基づいて傾斜角度θを算出する。更に、CPU11は、数5より副走査方向Xの移動速度Vx を算出すると共に(ステップS6)、数4に基づき主走査方向Yの遅延タイミングのずれ時間Δtを算出する(ステップS7)。
【0086】また、ステップS8では、CPU11は、メモリ12内に格納された基準遅延時間Dt 、遅延タイミングのずれ時間Δt、ブロックライン数kに基づいて、当該ブロックラインBLi(1≦i≦k)の遅延時間Δtdiを算出する。この遅延時間Δtdiの算出は、数6によって行われる。
【0087】
【数6】


【0088】続いて、ステップS9では、CPU11は、算出された傾斜角度θを与える制御信号VCONT4 を生成し、当該制御信号VCONT4 をモータ9へ出力する。これにより、LEDホルダー30は中心軸37に対して傾斜角度θだけ傾斜することとなる。
【0089】更に、ステップS10において、CPU11は入力された回転周期Tを与える制御信号VCONT1 を生成し、当該制御信号VCONT1 をモータ6へ出力する。これにより、シリンダ36は回転周期Tで主走査方向Yへ回転することとなる。
【0090】更に、CPU11は、算出された移動速度Vx を与える制御信号VCONT2 を生成し、当該制御信号VCONT2 をモータ7へ出力する。これにより、露光ヘッド20は移動速度Vx で副走査方向Xへ移動する(ステップS11)。その後、シリンダ36の回転速度が安定すると共に、露光ヘッド20の副走査方向Xの位置が露光開始位置に到達することとなる。この到達検知は、前述したロータリーエンコーダ33によって行われる。以上の各ステップを通じて、準備段階は終了する。
【0091】B. 走査手順
【0092】以下では、説明の一般化を図るため、走査すべきブロックラインBLが第i番目(i=1、2・・・、k)にあるものとして、説明を進めることにする(ステップS12)。従って、まず第1番目のブロックラインBL1を、ブロックラインBLiと定める。しかも、以下のステップS13からステップS16までは、ブロックラインBLiに関する走査手順のみを示している。実際には、ステップS13〜ステップS16までの各ステップを実行している間に、CPU11は、並行して次の3つの手順を行っている。その一つは、ブロックラインBL(i+2)に関する画像信号の残りを、トグルラインメモリ2中の3つのラインメモリ2A〜2Cの内で対応する一つのラインメモリへ書込む作業であり、その第二は、ブロックラインBL(i+3)に関する画像信号の一部を残る2つのラインメモリの内の一方に書込む作業であり、その第三は、ブロックラインBL(i+1)に関する画像信号VIMA1〜VIMAnを、当該画像信号を格納している、残る1つのラインメモリより読出して、対応するラッチ回路31〜3nへ格納する作業である。これら3つの作業については、ここでは説明しないこととし、後述する図15及び図16のタイミングチャートの説明の際に併せて説明することとする。
【0093】先ず、CPU11がロータリーエンコーダ18から出力されるゼロパルス信号VZPを検出すると、ステップS14に進む(ステップS13)。
【0094】ステップS14で、CPU11は遅延時間Δtdiを与える遅延信号VDLY を生成し、当該信号VDLY を遅延回路16へ出力し、遅延時間Δtdiを設定する。
【0095】その後、ステップS15において、シリンダ36がトリミング領域のスタート位置に達したのを、CPU11は焼き付け基準クロック信号VSCLKのカウント結果から検出し、その検出結果をトリミング・マスク信号VTMとして出力する。この場合、トリミング・マスク信号VTMがLレベルからHレベルへ立ち上がるのに同期して、焼き付け基準クロック信号VSCLKもまたLレベルからHレベルへ立ち上がると共に、数2で与えられる時間間隔tCLK で当該立ち上がりを繰り返しているため、ANDゲート回路15からの基準信号V0 、即ち、遅延前の焼き付けクロック信号は、ゼロパルス信号VZPが立ち上がった後、トリミング・マスク信号VTMが立ち上がる迄の時間内ではLレベルにあり、それ以降は、焼き付け基準クロック信号VSCLKに同期した、周期tCLK を有する信号となる。
【0096】尚、CPU11は、トリミング範囲のエンド位置をも検出して、その結果をトリミング・マスク信号VTMとして同じく出力する(HレベルからLレベルへの立ち下がりに該当)。
【0097】ここで、遅延回路16は、基準信号V0 及び遅延信号VDLY を受けて、基準信号V0 に対して遅延時間Δtdiだけ遅延した信号を作成し、当該信号を焼き付けクロック信号VCLK として出力する。
【0098】焼き付けクロック信号VCLK は、各ラッチ回路31 〜3n 及びP/S変換器41 〜4n へ入力される。ここで、各ラッチ回路31 〜3n は、前述した通り、8ビット(8画素分)単位で対応する画像信号VIMA1〜VIMAnを保持しており、各ラッチ回路31 〜3n は、焼き付けクロック信号VCLK を8分の1分周したクロック信号VDCLKのタイミングに応じて、8ビットの画像信号を出力する。
【0099】これに対して、各P/S変換器41 〜4n は、焼き付けクロック信号VCLKに応じて、送られてきた8画素分の画像信号を1ビット(1画素分)の画像信号V1 〜Vn (シリアル信号)へ変換する。そして、各シリアル変換された画像信号V1 〜Vn (1ビット信号)は、ドライバ5を介して、それぞれ発光ダイオードLED1〜LEDnへ印加される。その結果、各発光ダイオードLED1〜LEDnは、駆動信号VDR1 〜VDRn のレベルに応じて光ビームを放出し、ブロックラインBLiに属する各走査線の露光が実行される。その際、露光ヘッド20は移動速度Vxで副走査方向Xに移動しているので、ブロックラインBLiに属する各走査線は螺旋状となる(ステップS17)。
【0100】以上の各ステップを通じてブロックラインBLiにおける走査が終了すると、ステップS17で変数iに”1”を加算して、i≦kならばステップS13に戻り(ステップS18)、次のブロックラインBL(i+1)における走査を行うこととなる。次のブロックラインBL(i+1)における走査手順もまた、ステップS13〜ステップS16と同一のステップとなる。そして、最後のブロックラインBLk(k=m+1)の走査が終了すると、本画像記録装置100の動作が終了する(ステップS18)。
【0101】以上説明した動作手順をより明確化するため、図15及び図16に示したタイミングチャートに基づいて説明する。但し、両図は、発光ダイオードの数nを5とした場合の一例である。両図(a)は、メモリ2Aに入力される画像信号VIMAを示しており、図中に示した「W、1、3、5」は前述の走査線の番号を表わしている。この点は、両図(b)、(c)及び(f)でも同様である。以下、両図の(b)及び(c)は、それぞれメモリ2B、2Cへ入力される画像信号VIMAを示しており、(d)及び(e)は、それぞれセレクタ信号VS1及びVS2を示しており、(f)はトグルラインメモリ2から順次に出力される画像信号VIM1〜VIM5を示している。又、両図の(g)はゼロパルス信号VZPを、(h)はトリミング・マスク信号VTMを、(i)は特にラッチ31 より出力される画像信号VIMA1を、(j)は焼き付けクロック信号VCLK を、(k)は時間軸を、それぞれ示している。
【0102】先ず時刻t0においてロータリーエンコーダ18(図1)が基準位置を検出して、ゼロパルス信号VZPがLレベルからHレベルへ立ち上がるものとする。この立ち上がりに同期して、CPU11(図5)は、アドレス信号VADR1及びVADR2をそれぞれ画像メモリ1及びトグルラインメモリ2へ出力する。そして、セレクタ信号VS1がLレベルからHレベルへ立上がる。このセレクタ信号VS1の立上がりに同期して、図7に示したスイッチ回路S1は入力端T1と端子T2とを接続し、他方、スイッチ回路S2は、端子T14と出力端T16とを接続する。このとき、スイッチ回路S3内では、端子T5とT6、T8とT9、及びT11とT10とが、それぞれ接続された状態にある。その結果、画像メモリ1(図6)から送信されてきた走査線W、W及びN1に関する画像信号VIMA(図7)が、時刻t0〜t01までの時間内に、ラインメモリ2Aに順次に書込まれる。
【0103】次に時刻t01においてセレクタ信号VS2がLレベルからHレベルへと立上がると、その立上がりに同期して、図7の各スイッチ回路S4、S5、S6が、それぞれ端子T7、T10、T12側へと切替わる。
【0104】シリンダ36(図1)が一回転した直後の時刻t1で再びゼロパルス信号VZPがHレベルへ立上がり、これに応じて再びセレクタ信号VS1も立上がる。その結果、図7のスイッチ回路S1及びS2はそれぞれ端子T3、T15側へと切替わり、走査線N2に関する画像信号VIMAがラインメモリ2Bへ格納される。その後、セレクタ信号VS2が時刻t11、t12、t13、t14においてHレベルへの立上がりを繰返す結果、その立上がりに同期して、図7のスイッチ回路S3、S4、S5がスイッチング動作を行うこととなる。その結果、時刻t11〜t12及びt13〜t14の各時間内に、それぞれ走査線N3及びN5に関する画像信号VIMAがラインメモリ2Aに書込まれる。一方、時刻t12〜t13及びt14〜t15の各時間内に、それぞれ走査線N4及びN6に関する画像信号VIMAが書込まれることとなる。即ち、時刻t0〜t14までの時間をかけて、第1番目のブロックラインBL1に関する画像信号VIMAの全てが、走査線W、W、N1、N3、N5の順序でラインメモリ2A(図7)に書込まれたわけである。
【0105】シリンダ36(図1)が再び一回転し終えた時刻t2において、再びゼロパルス信号VZPがHレベルへと立上がると、それに同期してセレクタ信号VS1も立上がり、図7のスイッチ回路S1及びS2がそれぞれ端子T4及びT13側へとスイッチングする。これにより、ラインメモリ2Aの出力端が出力端T16と接続されたこととなり、ラインメモリ2AからのブロックラインBL1に関する画像信号VIMAの読出しが可能となる。即ち、時刻t2〜t25までの時間内に、走査線W、W、N1、N3、N5に関する各画像信号VIMAが順次に読出されて、トグルラインメモリ2より対応する各ラッチ回路31〜35(図6)へ出力される。そして、ラッチ回路31〜35は、アドレス信号VADR2のタイミングで対応する画像信号VIMAをラッチしてゆく。これに対して、時刻t2〜t25の時間内にセレクタ信号VS2がHレベルへの立上がりを繰り返す結果、図7のラインメモリ2Bは走査線N8、N10に関する画像信号VIMAを、ラインメモリ2Cは走査線N7、N9、N11に関する画像信号VIMAを、それぞれ格納することとなる。従って、時刻t1〜t24までの時間をかけて、ブロックラインBL2に関する画像信号VIMAが、全てラインメモリ2Bに書込まれたわけである。
【0106】シリンダ36(図1)の第4回転目のスタート時刻に当たる時刻t3以降の各ブロックラインBLに関する画像信号VIMAの書込み及び読出しについては、時刻t1〜t3までの時間内について上述した動作と同一である。従って、時刻t3以降の書込み・読出しの説明については割愛する。
【0107】時刻t3においてロータリーエンコーダ18(図1)が基準位置を検出し、ゼロパルス信号VZPがLレベルからHレベルへ立ち上がる。その後、時刻tTM1 において、トリミング・マスク信号VTMがLレベルからHレベルへ立ち上がる。ここでブロックラインBL1における遅延時間Δtd1は、Δtd1=Dt によって与えられ、時刻tTM1 より上記遅延時間Δtd1だけ遅延した時刻、即ち時刻t1Sにおいて、焼き付けクロック信号VCLK が出力される。これにより、各ラッチ回路31〜35から、それぞれ走査線W、W、N1、N3、N5に関する画像信号が読出されてシリアル信号へと変換された上で、ドライバ5(図6)を介して、各発光ダイオードLED1〜LED5に印加される。その結果、時刻tISよりブロックラインBL1における走査露光が開始され、時刻t1Eにおいて当該走査露光が終了する。
【0108】次に、シリンダ36(図1)が1回転した時刻t4において、再びゼロパルス信号VZPがLレベルからHレベルへ立ち上がり、時刻tTM2 において再びトリミング・マスク信号VTMがLレベルからHレベルへ立ち上がると、当該時刻tTM2から遅延時間Δtd2(Δtd2<Δtd1)だけ遅延した時刻t2Sにおいて、焼き付けクロック信号VCLK がHレベルへ立ち上がり、周期tCLK でHレベルとLレベルとを繰り返すこととなる。ブロックラインBL2の走査は、時刻t2Sから時刻t2Eまで行われる。ここで、遅延時間Δtd2は、Δtd2=Dt −Δtによって与えられる。ブロックラインBL3以降の各ブロックラインBLの走査に関しても、同様となる。この場合、各遅延時間Δtd3〜Δtdk-1は、Δtd3>Δtd4>…>Δtdk-1の関係を満たしており、最後のブロックラインkの遅延時間Δtdkは、Δtdk=Dt −Δt・(k−1)=Dt−Δt・mとなる。
【0109】尚、基準遅延時間、即ち、ブロックラインBL1の遅延時間Dt は、Δt・(k−1)以上の値に設定しておく必要がある。又、ブロックラインの数k及び遅延タイミングのずれ時間Δtは画像形成領域の副走査方向Xのサイズと傾斜角度θ等によって変化するので、これらの点をも考慮して基準遅延時間Dt を設定するか、又は、それらの変化に応じて可変する様にしてもよい。
【0110】以上の構成及び手順によって、本画像記録装置では、走査線数(m×n)本の主走査方向の走査を行うことができ、その際、倍率の変更にも対応可能となる様に移動速度Vxやずれ量Δyを適切に制御可能としたので、隣接する両スキャンラインエリアSLの境界にずれを生じさせることなく画像を記録することができる。そして、螺旋状マルチビーム走査にいわゆるインターレース走査方式を適用したので、各スキャンラインエリアSLについて、その内の奇数番目の走査線が先ず露光されると、次のブロックラインBLの走査により偶数番目の走査線が露光され、逆に、先ず偶数番目の走査線が露光されると、次のブロックラインBLの走査により奇数番目の走査線が露光されることとなる。従って、あるスキャンラインエリアSLに属する全ての走査線に沿って当該スキャンラインエリアSLが同時に露光されることとはならない。そのため、走査中に回転周期Tや移動速度Vxが微動したとしても、画像ムラが不規則的に生じることとなり、しかも、時には画像ムラ同士が相殺しあう態様となる結果、画像形成領域内に記録される画像を全体として見た場合には、上記画像ムラが目立たなくなり、記録画像の品質劣化を防止することが可能となる。得られた画像形成領域34は、図17に示すように、シリンダ36の中心軸37(図1)に対して傾斜角度θだけ傾斜した領域となる。この場合、画像形成領域34は傾斜しているけれども、当該領域34内に形成されている画像には歪みが生じていない。
【0111】(4) 変形例
【0112】■ 前実施例では、シリンダ36の回転周期Tが一定値(回転速度が一定:但し、その一定値を中心として微動はしている。)であることを前提に、記録線密度Mの値に応じて移動速度Vx 等を調整していた。これに対して本発明では、シリンダ36の回転速度に対する露光ヘッド20(図1)の移動速度を調整すればよいので、シリンダの回転周期Tを制御する方法も可能である。即ち、移動速度Vx は一定で記録線密度Mの変化に応じて回転周期Tを変化させることもできる(数5参照)。この場合、回転周期Tを記録線密度Mに応じて変更することとなるので、数2及び数4より明らかなように、時間間隔tCLK 及び遅延タイミングのずれ時間Δtをも変更する必要が生じる。
【0113】■ 前実施例では、焼き付けクロック信号VCLK の作成に当り、トリミング・マスク信号VTMが示すスタート値から遅延時間Δtdi分だけ、遅延回路16(図8)で基準信号V0 を遅延させていたが、これに限定されるものではない。例えば、次のような遅延方法を用いることもできる。ブロックラインBLiにおける遅延時間Δtdiを焼き付けクロック信号VCLK の周期tCLK で割った値をk、その時の余りをtEXT とする。そして、トリミング・マスク信号VTMがLレベルからHレベルへ立ち上がる時刻(スタート位置を検出する時刻)から前述の割り算値kに相当する時間が経過する時刻を焼き付け基準クロックVSCLKのパルス数をカウントすることにより測定し、カウント後にトリミング・マスク信号VTMをANDゲート回路へ出力するとともに、上記余りに相当する時間tEXT を示す遅延信号を図9の遅延回路16に出力して、遅延回路16から焼き付けクロック信号VCLK を出力するようにしてもよい。この場合には、遅延回路16は最大遅延時間が時間tCLK のものであればよく、安価な回路で実現できるという利点がある。
【0114】■ 前実施例では、図4に例示したように、発光ダイオードLED1〜LEDnを一列に配列した場合であったが、発光素子としてはこのような配列のものに限定されるものでもない。例えば、図18に示すように、千鳥状にn1 ×n2 個の発光ダイオードを配列したものを用いてもよい。即ち、図1に示したLEDホルダー30の中心部31Aには、間隔d1 で一列に配列されたn1 個の発光ダイオードをシリンダ36の中心軸37(図1)に沿ってn2 列だけ間隔d2 ずつ順次にずらして配列した発光ダイオードアレイが備えつけられている。ただし、名列の間隔はd3 とする。この場合、図1R>1のフィルム35上に結像されるときにはn1 ×n2 個の露光ピクセルが一列に配列されていなければならないため、間隔d3 に基づいて各列の発光タイミングを相対的にシフトさせる必要が生じる。この点は、ラッチと遅延回路とを更に設けることによって実現可能である。
【0115】■ 前実施例では、露光ピクセルの配列方向を傾斜角度θだけ傾斜させるために、図1に示したように、LEDホルダー30を機械的に回動させる方法を採用していた。しかし、本発明はこのように機械的方法のみならず、次に示すように光学的方法によっても実現可能である。
【0116】ここで、図19は、そのような光学的方法の一例を示した斜視図である。本変形例における露光ヘッド20Aは、中心軸37に平行となるように配列されたn個の発光ダイオードを有するLEDホルダー30Aと、当該LEDホルダー30Aとズームレンズ24との間に配置された像回転プリズム43(イメージローテータ)を備えている。当該像回転プリズム43は、CPU11が出力する制御信号VCONT4 に応じて回転する。例えば、像回転プリズム43を角度αだけ回転させると、当該像回転プリズム43及びズームレンズ24を介してフィルム35上に結像される露光ピクセルの配列方向は、中心軸37に対して角度2αだけ傾いた方向となる。従って、露光ピクセルの配列方向(スキャンラインエリアの傾斜方向)を中心軸37に対して角度θだけ傾いた方向とするためには、像回転プリズム43を角度θ/2だけ回転させるように制御すればよいこととなる。
【0117】尚、ブロックラインの傾斜角度を角度θとするには、上記以外に、図1に示したシリンダ36の中心軸37自身を傾けることによっても実現できる。
【0118】■ 前実施例では、発光素子として発光ダイオードを用いていたが、発光ダイオードに替えて、例えばレーザーダイオードを用いることもできる。この場合には、各レーザーダイオードの出射面側にアパーチャを設けて、各レーザーダイオードより放出される光ビームの径を調整することが好ましい。
【0119】■ 前実施例のように、傾斜角度θ、移動速度Vx、遅延時間Δtは、記録線密度M、光ビーム本数n、回転周期T、回転体の半径Rにより決定されるものなので、各記録線密度Mに対する傾斜角度θ、移動速度Vx、遅延時間Δtのデータを事前にメモリに格納しておいて、記録線密度Mの変更毎にそのメモリから傾斜角度θ等のデータを読み出し、光ビームの結像の配列方向の傾斜角度等を制御してもよい。
【0120】
【発明の効果】請求項1〜6に係る発明では、回転体の回転周期や発光手段の副走査方向への移動速度に変動が生じたとしても、それらの変動に起因して隣合うスキャンラインエリアの境界に生じる画像ムラを十分に低減することができ、画質劣化の無い画像を記録することが出来る。
【0121】特に請求項2に係る発明では、記録線密度に基づき傾斜角度θを決定しているので、記録線密度を変更したとしても、新たな記録線密度に対応した適切な傾斜角度θで以てn本の光ビームの結像を副走査方向に対して正確に傾斜させることが出来るという効果もある。
【0122】更に請求項3に係る発明では、記録線密度に基づき移動速度Vx を決定しているので、記録線密度を変更したとしても、常に新たな記録線密度に対応した適切な移動速度Vx で以て発光手段を副走査方向へ移動させることが出来るという効果もある。
【0123】更に請求項4に係る発明では、記録線密度に基づき時間Δtを決定しているので、記録線密度を変更したとしても、常に新たな記録線密度に対応した適切な時間Δtずつ画像信号の印加時間を早めていくことができ、隣合うスキャンラインエリア間にずれを発生させなくすることが出来るという効果もある。
【0124】更に請求項5に係る発明では、発光手段自体を機械的に回動させるだけで、n本の光ビームの結像の配列方向を副走査方向に対して傾斜角度θで傾斜させることが出来るという効果もある。
【0125】更に請求項6に係る発明では、像回転手段を用いることにより光学的にn本の光ビームの結像の配列方向を副走査方向に対して傾斜角度θで以て傾斜させることが出来るという効果もある。
【0126】
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例である画像記録装置における露光ヘッドとシリンダとの関係を示した構成図である。
【図2】シリンダの回転周期の微動を示す説明図である。
【図3】露光ヘッドの移動速度の微動を示す説明図である。
【図4】n個の発光ダイオードの配列の一例を示した説明図である。
【図5】露光ピクセルの配列を示した説明図である。
【図6】画像記録装置における電気的構成を示したブロック図である。
【図7】トグルラインメモリの構成を示すブロック図である。
【図8】ラッチ回路の構成を示すブロック図である。
【図9】制御部の電気的構成を示したブロック図である。
【図10】ブロックラインの数を5とした場合の画像形成領域を示した説明図である。
【図11】ブロックラインとスキャンラインエリアとの関係を示した説明図である。
【図12】各ブロックラインに対する焼付けクロック信号の遅延時間の相対的関係を示したタイミングチャートである。
【図13】画像記録装置における動作を示したフローチャートである。
【図14】画像記録装置における動作を示したフローチャートである。
【図15】画像記録装置における動作を示したタイミングチャートである。
【図16】画像記録装置における動作を示したタイミングチャートである。
【図17】得られた画像形成領域を示した説明図である。
【図18】LEDホルダの他の構成例を示した説明図である。
【図19】露光ピクセルの配列方向を傾斜させるための光学的方法を示した説明図である。
【図20】従来技術の一例を示した斜視図である。
【図21】従来技術における問題点を示した説明図である。
【図22】従来技術の一例を示した説明図である。
【符号の簡単な説明】
1 画像メモリ
2 トグルラインメモリ
1 ラッチ回路
1 パラレル/シリアル変換器
6 シリンダ回転用モータ
7 副走査送り用モータ
8 倍率変換用モータ
9 LED回転用モータ
11 CPU
12 メモリ
16 遅延回路
17 操作部
18 ロータリーエンコーダ
20 露光ヘッド
24 ズームレンズ
30 LEDホルダー
35 フィルム
36 シリンダ
37 中心軸
38 像回転プリズム
50 露光ピクセル
BL ブロックライン
SL スキャンラインエリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】 主走査方向へ回転する回転体上に配置された感光材に対して、n本(nは3以上の奇数)の光ビームを前記主走査方向と直交する副走査方向へ移動させつつ螺旋状に走査することにより画像を記録する画像記録装置であって、画像信号に応じて前記n本の光ビームをそれぞれ発光するn個の発光素子が等間隔で配列されている発光手段と、隣合う結像の中心間ピッチが、当該結像の配列方向に於ける単位長さ当たりの走査線の数に該当する記録線密度の逆数の2倍となる様に、前記n本の光ビームを前記感光材上へ結像する結像手段と、前記n本の光ビームの結像を前記副走査方向に対して前記記録線密度に応じた傾斜角度θで傾斜させる結像配列方向制御手段と、前記回転体の一回転内に、前記記録線密度の逆数のピッチで露光されるn本の前記走査線を含む走査領域であるスキャンラインエリアの幅の前記副走査方向への長さ分だけ、前記発光手段を前記結像手段及び結像配列方向制御手段と共に前記副走査方向へ移動させる移動制御手段と、前記回転体の一回転毎に、前記スキャンラインエリアの幅の前記主走査方向への長さ分だけ前記回転体を回転させるのに要する時間Δtずつ前記画像信号の印加時間を早めながら、前記n個の発光素子に前記画像信号を印加する画像信号印加手段とを、備えたことを特徴とする画像記録装置。
【請求項2】 前記回転体の半径をR、前記記録線密度をMとして表すと、前記結像配列方向制御手段は関係式θ=sin-1〔n/(2πR×M)〕に基づき前記傾斜角度θを決定することを特徴とする、請求項1記載の画像記録装置。
【請求項3】 前記回転体の回転周期をTとして表すと、前記移動制御手段は、関係式Vx =n/(M×T×cosθ)に基づき前記発光手段の移動速度Vxを決定することを特徴とする、請求項2記載の画像記録装置。
【請求項4】 前記時間Δtは関係式Δt=T×n×sinθ/(M×2πR)に基づき決定されることを特徴とする、請求項3記載の画像記録装置。
【請求項5】 前記結像配列方向制御手段は、前記結像手段の光軸と平行な軸の周りに前記発光手段を前記傾斜角度θだけ回動させることにより、前記結像の配列方向を制御することを特徴とする、請求項4記載の画像記録装置。
【請求項6】 前記結像配列方向制御手段は、前記傾斜角度θの半分の回転角度を与える制御信号に応じて、前記発光手段より放出されたn本の光ビームを前記結像手段の光軸と平行な軸の周りに前記傾斜角度θだけ回転させる像回転手段であることを特徴とする、請求項4記載の画像記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図11】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図17】
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【図15】
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【図16】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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