説明

画像読取装置

【課題】 本発明は液体などの読取物をラインセンサで移動走査して読取る際に、装置を小型かつ安価に構成することが出来、しかも読取物の装着及び取外しが容易で液体などの読取物が飛散する恐れのない画像読取装置を提供する。
【解決手段】 略箱型形状に構成した装置フレームと、読取物を載置する載置台と、この載置台上の読取物に光を照射する光源と、上記読取物からの光を光電変換する光学読取手段と、上記読取物からの光を上記光電変換手段に導く光学手段と、上記光学手段の少なくとも一部を搭載し、上記載置台に沿って移動する走査キャリッジと、上記走査キャリッジを移動自在に支持するキャリッジ支持手段と、上記載置台を上記装置フレーム内の読取位置と上記装置フレーム外のセット位置との間で移動自在に支持する載置台支持手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシートなどの平面画像或いは流体物の表面などの立体画像を光電変換素子上に光学的に結像し、読取物の表面画像をこの光電変換素子で電気的に読取る画像読取装置に係わり、特に細菌、微生物などの媒体表面を読取って分析する際の画像読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に細菌、微生物などの繁殖状態は液体、或いはシートなどの媒体に培養した物質を顕微鏡で観察して分析しているが、最近この媒体をCCDなどの光電センサで電気的に読取りコンピュータなどの画像処理装置で分析した後、そのデータを保管する検査システムが使用されるに至っている。一方、このような読取物の画像を電気的に読取るスキャナ装置は、プラテン上に載置した読取物に光源から光を照射し、レンズなどの結像光学系で光電センサ上に結像し、この光電センサで画像を電気的データに変換している。そしてこの光電センサは複数の光電変換素子を面状に配列したエリアセンサで構成する場合と線状に配列したラインセンサで構成する場合が知られ、読取装置としての構成及び構造は大きく異なる。
【0003】
前者のエリアセンサで読取る場合にはプラテン上の読取物全面に均一な光を照射する光源と、読取物からの光を面画像として結像する光学系をプラテン上方にレンズ等で構成して面センサ上に結像している。従って装置が大型で光源、レンズ、ミラーなどの構成機能部品を精度良く構成しなければ画像の歪みなどの問題を起こし、大型な装置で高価となる。反面精度良く読取物の画像を面センサ上に結像した場合には正確な読取データが得られる特徴がある。
【0004】
後者のラインセンサで読取る場合には、プラテン上の読取物にライン状の光を照射し、読取物からの光を線画像としてセンサ上に結像する。そして読取物を載置したプラテンを所定速度で移動させながら順次画像を読取るか或いはプラテンを固定し、光源、ミラー、レンズ及びラインセンサの少なくとも一部を移動自在のキャリッジに搭載し、このキャリッジを読取物の表面に沿って移動させながら順次画像を読取るかいずれかの方法で読取物を走査する構造が採用される。このような読取物をラインセンサで走査しながら順次画像を読取る装置は各構成機能部品を小型で安価に構成することが可能である。反面キャリッジなどで読取物を走査する際の移動速度にムラが生ずると読取った画像が歪むなどの問題が知られている。
【0005】
そこで上述の細菌、微生物などの画像を読取る装置は従来面センサを用い、プラテン上に固定した読取物の表面画像をレンズで結像し、この結像面に配置した面センサで読取るものが提案され装置は大型で高価なものとして知られている。ところが最近例えば細菌、微生物などの検出方法が改善され、また読取った画像データをコンピュータで修正することが試みられ、これ等の画像の読取は小型で扱い易く、また安価に提供されることが求められている。
【0006】
従来このような立体物の画像読取装置として、例えば特許文献1(特開平7−140561号公報)には読取物を載置する載置台の上方にレンズ、ミラーなどの光学撮像系とラインセンサを内蔵した読取ユニットを設け、この読取ユニットを移動しながら読取物を走査して読取る装置が提案されている。この装置のように載置台の上方に大きな空間を設けて、この空間で読取物を載置台に取付け或いは取外す場合には装置は大型となり、またシャーレなどに収容した液状の読取物では装着及び離脱する際に飛散したり、液状の画像面(被読取面)が衝撃や振動で変化する恐れがある。
【0007】
また同様に細菌、微生物などのサンプルを読取る装置が特許文献2(特開平9−121837号公報)などで知られている。同文献にはシャーレなどの読取物を収容した容器をホッパー内から読取り位置に搬送し、この読取り位置でCCDカメラで光学的に読取る装置が開示されている。
【特許文献1】特開平7−140561号公報
【特許文献2】特開平9−121837号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の特許文献1の構造にあっては読取物の載置台と、その上方に配置される読取ユニット(読取キャリッジ)との間に大きな空間を必要とし、またこの空間を大きく形成してもシャーレなどに収容した液状読取物を載置台にセット及び取外す際に飛散したり、液状読取物の画像が衝撃などで流動変化する恐れがあり、装置は大型で高価となるうえに読取物のセットが限られた空間の中で面倒であり、取扱いに注意を要する等の問題がある。また特許文献2の装置も読取位置でCCDカメラで読取物全体を一度に露光して読取る構造では装置が大型化し、高価となる。
【0009】
従って本発明は液体などの読取物をラインセンサで移動走査して読取る際に、装置を小型かつ安価に構成することが出来、しかも読取物の装着及び離脱(取外し)が容易で液体などの読取物が飛散する恐れのない画像読取装置の提供をその主な課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は前記課題を解決するために以下の構成を採用したものである。
略箱型形状に構成した装置フレームと、読取物を載置する載置台と、この載置台上の読取物に光を照射する光源と、上記読取物からの光を光電変換する光学読取手段と、上記読取物からの光を上記光電変換手段に導く光学手段と、上記光学手段の少なくとも一部を搭載し、上記載置台に沿って移動する走査キャリッジと、上記走査キャリッジを移動自在に支持するキャリッジ支持手段と、上記載置台を上記装置フレーム内の読取位置と上記装置フレーム外のセット位置との間で移動自在に支持する載置台支持手段とを備え、上記キャリッジ支持手段と上記載置台支持手段とは上記装置フレームに上記載置台と上記走査キャリッジの移動方向が略同一方向となるように配置し、上記載置台を上記セット位置と上記走査位置との間で移動する駆動モータを備える。
【0011】
そして、前記走査キャリッジは前記載置台の上方に配置し、前記キャリッジ支持手段はこの走査キャリッジを前記載置台に沿って移動するように装置フレームに配置する。尚、前記光源は前記載置台上の読取物に光を照射する第1と第2の光源ユニットで構成し、上記第1の光源ユニットは前記載置台の上方に、上記第2の光源ユニットは前記載置台の下方にそれぞれ前記載置台に沿って前記走査キャリッジの移動方向と同一方向に移動自在に配置し、前記載置台は読取物の載置面が透光性部材で構成される。
【0012】
また、前記載置台と前記載置台支持手段と前記駆動モータとは前記装置フレームから分離した載置台ユニットで構成し、この載置台ユニットが前記装置フレームに着脱可能に取付けられる。前記駆動モータは、前記載置台のセット位置から走査位置への移動方向の前方で、前記走査キャリッジの移動領域の下方に位置するよう前記装置フレームに配置される。
【0013】
上記載置台上の読取物に上方から光を照射する光源を具えた第1キャリッジと、上記載置台上の読取物に下方から光を照射する光源を具えた第2キャリッジと、上記読取物からの反射光または透過光を走査する光学読取手段と、上部に上記第1キャリッジを、中央に上記載置台を、下部に上記第2キャリッジを収容する装置フレームと、上記第1キャリッジを上記載置台に沿って移動可能に案内する第1ガイド手段と、上記読取物を走査する走査位置と読取物を着脱するセット位置との間で上記載置台を移動可能に案内する第2ガイド手段と、上記第2キャリッジを上記載置台に沿って移動可能に案内する第3ガイド手段と、上記載置台を上記走査位置と上記セット位置との間を移動させる駆動手段とを備え、上記第1ガイド手段と第2ガイド手段および上記第3ガイド手段とはそれぞれの案内方向が略同一方向となるよう上記装置フレームに取付け、上記駆動モータは少なくともその一部が上下方向において上記第1キャリッジの移動領域の下方及び/又は上記第2キャリッジの移動領域と重なる中央エリア内に配置している。
【0014】
そして、前記載置台は載置台を保持する支持部材を有し、前記支持部材は異なる2つ以上の載置台を選択的に保持可能に構成し、前記第2ガイド手段は上記支持部材の両側部を案内するように前記装置フレームに固定される。前記載置台の下方には、前記第2光源からの光を拡散させるための拡散板を取付ける。更に、前記第1光源および第2光源は、それぞれライン状光源で構成し、前記光学読取手段は複数の光電変換素子がライン状に配置された光電変換素子列で構成し、前記光電変換素子列は、前記第1光電源で照射された読取物からの反射光、または前記第2光源で照射され読取物を透過した光を光電変換する。
【発明の効果】
【0015】
本発明は上述のように読取物を載置する載置台を装置フレームの内部に位置する読取位置と外部のセット位置との間で移動自在に載置台支持手段に支持し、この載置台支持手段と読取物に沿って移動する走査キャリッジのキャリッジ支持手段とを略同一方向に配置したので、走査キャリッジと載置台は同一方向に並んで移動するよう装置フレームに組込まれることとなる。従って、載置台は装置フレームの外部で読取物を装着及び離脱する構成となり装置を小型に構成することが出来る。これと共に走査キャリッジの移動と載置台とは略同一方向に移動自在に装置フレームに組込まれる為、装置フレームを小型に構成できる。
【0016】
また本発明は載置台を読取位置とセット位置との間で移動する駆動モータなどの駆動手段を設けて載置台を自動的に移動する為、移動の際にシャーレなどに収容した液状読取物が飛散、転倒するなどの事故を招くことがない。これと共に駆動モータを走査キャリッジの移動領域の下方の装置フレームに取付けることによって駆動モータは走査キャリッジの移動域とオーバラップして上下に配置され装置フレームを更にコンパクトに構成することが可能である等、細菌などの液状読取物の読取りに適した小型かつ安価な装置の提供が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下図示の好適な実施の形態に基づいて本発明を詳述する。
図1は画像読取装置の外観を示す斜視図、図2はその内部構造を示すレイアウト構造の説明図、図4は装置フレームの斜視図である。尚、図1は載置台(載置台21)が装置外のセット位置に位置している状態を示しており、図2は載置台が装置内の読取位置に位置している状態を示している。さらに、図1に示すように、装置前面には、載置台を開閉(セット位置と読取位置との間を移動)させるためのスイッチ114(プッシュスイッチ)が取付けられている。画像読取装置は適宜形状のケーシング10内に読取物(以下サンプルという)を載置する載置台ユニット20とこの載置台ユニット20上のサンプルに光を照射する光源ユニット30及び40とサンプルからの光を光電変換する光学読取ユニット50とが内蔵されている。そして載置台ユニット20上にセットされたサンプルに光源ユニット30から光を照射し、その反射光又は透過光をミラー、レンズなどの撮像手段で光電センサ上に結像して光電センサから画像情報を電気的に出力するように構成する。
【0018】
図示のケーシング10内には図4に示すような略箱型形状の装置フレーム11が内蔵され、この装置フレーム11に載置台ユニット20、光源ユニット30及び40、光学読取ユニット50が組込まれる。この装置フレーム11は金属板で箱型に堅牢に構成され各ユニットを位置精度良く保持する構造を採用しているが、これはケーシング10と一体に樹脂のモールド成形で構成し、所謂モノコック構造であっても良く、各機能ユニットを堅牢に組込むことが出来ればその形状構造は種々のものが採用可能である。この装置フレーム11にはその上段部空間に第1の光源ユニット30と光学読取ユニット50とが組込まれ、その中段部エリアに載置台ユニット20が組込まれ、その下段部空間に第2の光源ユニット40が組込まれる(図2参照)。
【0019】
そこで第1の光源ユニット30と光学読取ユニット50とはそれぞれ個別のユニットで構成しても良いが図示のものは走査キャリッジ60に一体に以下のように構成してある。走査キャリッジ60(光学走査手段)は例えば樹脂材料で箱型形状のハウジング(図3参照)を形成し、このハウジング内に光源ランプ31と反射ミラー51a、51b、51c、51dと結像レンズ52と光電センサ54とを組込む。この光電センサ54は例えばCCD(チャージカップルディバイス)などの光電変換素子を図3表裏方向(図1に示すY−Y方向)に線状に配列したラインセンサで構成してある。従って、光源ランプ31は蛍光灯などの棒状光源を走査キャリッジ60のランプ収納部32に組込んである。そしてこの光源ランプ31からの光は後述する載置台ユニット20のサンプルに照射され、その反射光が第1の反射ミラー51aに至り、第2、第3、第4の反射ミラー51b乃至51dで結像レンズ52に導く。
【0020】
従って反射ミラー群51は光路長を考慮して適宜数のミラーを走査キャリッジ60内に組込み結像レンズ52にサンプルからの反射光を導くように設計する。この反射ミラー群51も図3表裏方向を長手方向とする板状ミラーで構成されている。結像レンズ52も走査キャリッジ60内にサンプルからの光を光電センサ54に結像するように配置されている。光電センサ54は前述のようにラインセンサで構成され、画像の解像度に応じたビット数の光電変換素子がライン状に配列され走査キャリッジ60に取付けた基板53に固定されている。
【0021】
そこで、走査キャリッジ60はラインセンサの配列方向(図3表裏方向)と直交する図示X−X方向に移動自在に装置フレーム11に取付けられる。装置フレーム11は前述のように箱型形状に構成されその上段部空間に平行な2本のガイドシャフトから成る走査キャリッジ案内ガイド61(キャリッジ支持手段)が図示X−X方向に配置され、この案内ガイド61に走査キャリッジ60は軸受支持され、移動自在に取付けられている。従って走査キャリッジ60はラインセンサから成る光電センサ54と、この光電センサ54にサンプルからの光を結像するミラー、レンズなどの撮像手段と、サンプルに光を照射するこの光源ランプ31とを搭載し、走査キャリッジ案内ガイド61に沿って移動自在に装置フレーム11に組込まれることとなる。
【0022】
また装置フレーム11には案内ガイド61と平行に伝動ベルト62が一対のプーリ63、64間に架渡して取付けてあり、この伝動ベルト62の一部は走査キャリッジ案内ガイド61と固定部材65で結合してある。上記プーリ63には図示しないが正逆転可能なキャリッジ駆動モータが連結してあり、この駆動モータの正逆転で走査キャリッジ60は図2実線位置と2点鎖線位置との間を往復動する。また装置フレーム11には走査キャリッジ60が図2実線位置のときその位置を検出するポジションセンサが設けられ、走査キャリッジ60は同図実線位置をホームポジションに設定され、この位置から所定量同図2点鎖線の位置に移動する。
【0023】
以上のように走査キャリッジ60は装置フレーム11の上段部空間に往復動自在に配置され、装置フレーム11にはこのキャリッジ60の下側に防塵プレート12が設けてある。これは後述する載置台ユニット20側から塵埃が走査キャリッジ60に侵入するのを防止する為である。また、この防塵プレート12の一部は透明ガラス13で構成してあり、光が透過可能となっている。
【0024】
次に、図5乃至図9を用いて載置台ユニット20について説明する。載置台ユニット20は装置フレーム11の中段部エリアに次の構造で取付けられる。まず載置台ユニット20はサンプルを載置する載置台21(図9、図10参照)とこの載置台21を保持する載置台ガイド手段22(支持部材、以下スライド部材22と云う)と、このスライド部材22を摺動自在に支持する載置台案内ガイド23(載置台支持手段)とから構成される。この載置台ユニット20は装置フレーム11に組込まれ、載置台案内ガイド23は上記走査手段60の移動方向と略同一方向に載置台21(スライド部材22)を移動可能に案内支持する。そして、スライド部材22に取付けた載置台21が装置フレーム11内の所定位置(読取位置)と装置フレーム11外部のセット位置に臨むようになっている。
【0025】
さらに、載置台ユニット20には底板25cが取付けられ、この底板25cの開口部にはアクリル板などで構成される拡散板204が取付けられている。これは、後述する第2の光源ユニット40からの光を拡散させて読取位置に位置する載置台21上のサンプルに光(透過光)を照射させるためである。なお、本実施例では、この拡散板204は、ネジなどで底板25cに固定されているが、液状サンプルがこぼれてしまった場合にサンプルの流出を防止するために、底板25cと拡散板204との間にシール材を挟んで固定するなど、防水処理を施しても構わない。さらに、底板25cと拡散板204とを一体に成型するようにすることで、シール材を用いることなく防水効果を得ることができる。
【0026】
載置台ユニット20は図7に全体斜視図で示すように、略箱型形状のユニットフレーム24を有し、このユニットフレーム24が装置フレーム11に固定されている。ユニットフレーム24には対向する側壁25a、25bに一対のガイドレールから成る載置台案内ガイド23(載置台支持手段、以下ガイドレールと云う)が設けてある。このガイドレール23とスライド部材22の両側壁に取付けられた断面コの字状のガイドレール200が係合摺動することで、スライド部材22は図7のユニットフレーム24から外部に突出したセット姿勢と図9のユニットフレーム24内部の所定位置に収容された読取姿勢とにガイドレール23に沿って移動自在となる。
【0027】
このユニットフレーム24は後述するが装置フレーム11に一体に据付けられこの状態でスライド部材22は装置フレーム11内の所定位置(読取位置、図2参照)と装置フレーム11外のセット位置(図1参照)との間で移動可能に装置フレーム11に装着されることとなる。そこでスライド部材22は中央に開口26を有する枠組で構成され、この開口26には載置台21が組込まれる。載置台21は図9に示すようにシャーレ用載置台21a、図10に示すようにシート用載置台21bなど複数準備され、サンプルに応じた構成の載置台21が開口26に組込まれるようになっている。つまりスライド部材22と載置台21とを分離して構成したのは読取物に応じた構造の載置台21をスライド部材22に組合せることによって広汎なサンプルを読取ることが出来るようにする為である。
【0028】
載置台21の構造を例示すると図9に示す載置台21aは読取物であるサンプルが液体若しくは半固体などの流動体である場合に使用され、シャーレなどの容器214を載置する透明トレイ211とこのトレイ上の所定位置に容器214を載置する位置決め部材212を設ける。透明トレイ211をガラスなどの透明部材で構成したのは液体など読取物が透光性の素材である場合にはこの透明トレイ211の下部に配置した第2の光源ユニット40(後述)から光を透過する為である。尚この載置台21aには容器214を保持する押圧部材213を設けることが好ましく、図示のものは内部に付勢スプリングを組込んだ押圧部材213が容器214を位置決め部材212側に押圧して透明トレイ211上で容器214を把持するようになっている。このような液体用載置台21aは培養する容器の形状、大きさ、或いは培養液の液面に応じて複数準備することも可能である。
【0029】
次に図10に示すシート用載置台21bはシートに培養液を含浸させたシート状サンプル或いはデータなどを記録したドキュメントシートを載置する場合の構造を示す。サンプルシートを載置するトレイ218と、このトレイ218上にサンプルシートを押圧保持する押圧板217で構成され、この押圧板217は透明ガラス板で一端をヒンジピン216で支持してある。尚トレイ218は透明のガラス板で構成するか不透明の板部材で構成するかはサンプルシートの性状によっていずれかに選定する。つまりサンプルシートが透明若しくは半透明の素材である場合にはトレイ218を透明のガラス板で構成する。
【0030】
尚、図示のものは載置台21とスライド部材22を分離して、載置台21は読取物であるサンプルの性状に応じて複数の載置台21a、21bからその1つを選択してスライド部材22に取付けるようにしてあるが、載置台21とスライド部材22を一体に構成しても良く、この場合は載置台上には複数の性状の異なるサンプルを載置出来るように構成すればよい。そこで載置台ユニット20にはスライド部材22(載置台21)をセット位置と読取位置との間で自動的に移動させる駆動モータMが取付けられる。前述のユニットフレーム24には図5に示すように底板25cが設けられ、この底板25cに駆動モータMが取付けられている。そしてこの駆動モータMは、読取位置のセット位置とは反対側の底板25c上に固定されている。つまり後述するように載置台ユニット20が装置フレーム11に装着された状態で駆動モータMはこの装置フレーム11の奥側(リアー側)に位置し、装置フレーム11の前面側にはスライド部材22が読取位置とセット位置との間で移動可能に位置することとなる。
【0031】
従って駆動モータMは装置フレーム11の中段部エリアに配置された載置台ユニット20に取付けられ、スライド部材22の移動領域(セット位置と読取位置との間の領域)を避けた位置、すなわちスライド部材22の移動の妨げとならない装置フレーム11の奥側に配置されることとなる。つまり、スライド部材22は、駆動モータMの上方を移動させる必要がないため、より低い位置でセット位置と読取位置との間を移動することとなり、装置全体の高さをより低くすることができたのである。さらに、セット位置と読取位置との間の距離をより短くすることとなり、処理時間をより短くすることが可能となったものである。そして駆動モータMは正逆転可能なステッピングモータで構成され、その制御は後述するが、駆動モータMの駆動は、その回転軸から駆動軸はベルト80を介して回転軸81に伝達され、この回転軸81からプーリ83、85に架け渡した伝動ベルト84に伝達される。プーリ83、85はユニットフレーム24の一方の側壁25aに取付けられたガイドレール23に沿って配置されている。そして、プーリ85と同軸に取付けられたギヤ201がスライド部材22の側壁内側に形成されたラック202と係合している。
【0032】
従って駆動モータMの回転は伝動ベルト84に伝達され、この伝動ベルト84はガイドレール23に沿って回転走行し、この伝動ベルト84が掛け渡されたプーリ85と同軸のギヤ201とラック202とが係合することで、スライド部材22はガイドレール23に沿って往復動する。回転軸81にはエンコーダ86が取付けられ、エンコーダ86のスリットを検出するホトセンサ82が設けてある。従って回転軸81の回転状況(回転数や角度)はエンコーダ86のスリットをホトセンサ82で検出することで可能となる。一方スライド部材22にはフロントカバー27が一体に取付けられている。また、スライド部材22のリアー側端面には、スライド部材22が読取位置に位置するときユニットフレーム24のリアー面25dに突き当たるストッパ29が取り付けられている。すなわち、このストッパ29がリアー面25dに突き当たった状態で、スライド部材22は所定の読取位置に確実に位置することとなるのである。
【0033】
また、図5、図6に示すように、ユニットフレーム24にはスライド部材22が読取位置近傍(所定の読取位置よりもわずかにセット位置側)に位置するとき作動するリミットセンサ(クローズセンサ、位置検知センサ)87aとセット位置に位置するとき作動するリミットセンサ(オープンセンサ)87bがホトセンサでそれぞれ配置されている。また、図5中点線で示すように、スライド部材22の上面裏側には、フラグ203が取付けられており、このフラグ203を各クローズセンサ87aおよびオープンセンサ87bが検出する。
【0034】
以上説明したように載置台ユニット20は、装置フレーム11とは分離したユニットフレーム24を備え、このユニットフレーム24に載置台21を備えたスライド部材22を摺動自在にガイドレール23で案内保持している。このように載置台ユニット20を装置フレーム11と分離したのは読取物に応じて載置台ユニット20として種々の構成が採用できるようにする為である。
【0035】
例えば大量のサンプルを自動的に読取処理する用途の場合には、この載置台ユニット20を供給ホッパーと収納ホッパーと読取プラテンとで構成し、供給ホッパーから順次1つのサンプルを読取プラテンに給送し、読取後のサンプルを読取プラテンから収納ホッパーに搬出することによって載置台ユニット20を交換すれば種々の用途に適した装置に構成することが可能となる。そこで上述の載置台ユニット20の装置フレーム11の取付および位置決めについて説明すると、装置フレーム11には前述のように中段部エリアに載置台を収容する空間が設けてあり、この空間に載置台ユニット20を収容して装置フレーム11(ケーシング10)にビスなどで固定する。
【0036】
具体的には図5に示すように、ユニットフレーム24には対向するフロント側壁25eとリアー側壁25dにそれぞれ左右2つのピン状突起90a、90b及び91a、91bが設けてある。そして装置フレーム11側にはフロント壁とリアー壁にこれ等の突起90a、90b、91a、91bと係合する係合孔94a、94b及び95a、95bが設けてある。従って装置フレーム11と載置台ユニット20のユニットフレーム24とは一方に形成した突起90a、90b及び91a、91bと他方に形成した係合孔94a、94b及び95a、95bとを嵌合することによって取付位置が規制されることとなる。特に、画像読取りの場合は、良好な画像を取得するために焦点深度内にサンプル(サンプル読取位置)を配置する必要があり、上述のような位置決め方法によってサンプルの高さ方向の位置を規制することで、サンプルを焦点深度内に位置させることができるようになっているのである。
【0037】
またユニットフレーム24のリアー側壁25dにはビス97が螺合するビス穴が形成され、ケーシング10とユニットフレーム24とはビス97で固定される。また、図5に示す93は突起状押圧部材でユニットフレーム24に設けられ、図8に示すように、ケーシング10には突起状押圧部材93が貫通する孔98が形成してあり、装置フレーム11からユニットフレーム24を離脱する際に使用者は、ビス97を外して突起状押圧部材93をフロント側へ向けて手指で押圧することによって、ケーシング10をつけたままの状態で装置フレーム11から簡単に取外すことが出来る。
【0038】
次に第2の光源ユニット40について説明すると、図2、3に示すように、この第2の光源ユニット40は装置フレーム11の下段エリアに以下のように組込まれ、載置台21上のサンプルに下から光を照射する。この第2の光源ユニット40は、棒状の光源ランプ41と、この光源ランプを搭載するキャリッジ42と、このキャリッジ42を往復動自在に案内するキャリッジガイド45と、キャリッジを往復動する伝動ベルト43とから構成される。光源ランプ41は図3表裏方向(図1に示すY−Y方向)を長手方向とする蛍光灯などの棒状ランプから構成され、樹脂で形成したブロック状のキャリッジ42に収容されている。キャリッジ42は装置フレーム11に平行に取付けられた一対のロッドから成るキャリッジガイド45に軸受けされ、図3左右方向に移動自在に支持されている。
【0039】
またキャリッジ42は一対のプーリ44a、44bに架渡しされた伝動ベルト43に固定部材47で固定され、プーリ44aには図示しない駆動モータが連結してある。従って駆動モータでプーリ44aを駆動回転すると伝動ベルト43は図3左右方向に走行し、これに連結されたキャリッジ42はキャリッジガイド45に沿って同図左右方向に移動することとなる。尚このキャリッジ42は前述の走査キャリッジ60と同期して同一量ずつ同一方向に移動することが好ましい。この為図示のものは走査キャリッジ60を駆動する駆動側プーリ63と上記キャリッジ42を駆動する駆動側プーリ44aとを同一の駆動モータに連結してある。
【0040】
また第2の光源ユニット40と載置台ユニット20との間には透明ガラス46から成る隔壁が設けてあり、塵埃の進入を防止している。なお、本実施例では、載置台ユニット20の底板25cに拡散板204を取り付けたが、この拡散板204の替わりにこの透明ガラス46を拡散板としても構わない。この場合は、載置台ユニット20の拡散板204を透明ガラスにすればよい。
【0041】
次に第1の光源30を搭載した走査キャリッジ60と第2の光源40を搭載したキャリッジ42との移動領域と載置台ユニット20の移動領域との関係を図14に基づいて説明する。装置フレーム11は上段エリアAR1に走査キャリッジ60(第1のキャリッジ)が走査キャリッジ案内ガイド61(第1ガイド手段)に沿って移動自在に組込まれ、中段エリアAR2に載置台21を備えたスライド部材22がガイドレール23(第2ガイド手段)に沿って移動自在に組込まれている。また下段エリアAR3には第2の光源ランプ40を備えたキャリッジ42(第2のキャリッジ)がキャリッジガイド45(第3ガイド手段)に沿って移動自在に組込まれている。従って箱型形状の装置フレーム11には第1のキャリッジ60、載置台21、第2のキャリッジ42が上下に配置され、第1ガイド手段、第2ガイド手段、第3ガイド手段は、それぞれの移動方向が略同一方向となるようにそれぞれ固定されている。このように第1、第2のキャリッジ60、42及び載置台21を同一方向に移動自在に配置することによって装置フレーム11をコンパクトに構成することが出来る。
【0042】
そして第1のキャリッジ60は光学読取手段を内蔵する関係でその外形ハウジングは第2のキャリッジ42に比べ大型となるが、図14実線のホームポジションから鎖線位置に移動する過程で載置台21上のサンプルを走査して読取る。従って第1のキャリッジ60の往復動作で占有する領域は図示L1であり、装置フレーム11のフロント側壁からの距離はLa1となる。次に載置台21及びこの載置台21を保持するスライド部材22(載置台ガイド手段)が図示実線の読取位置と同鎖線のセット位置との間で移動する際に占有する領域はL2であり、装置フレーム11のフロント側壁からの距離はLa2となる。また第2のキャリッジ42の往復動作で占有する領域はL3であり、装置フレーム11のフロントからの距離はLa3となる。
【0043】
そこで装置フレーム11内部の空間はLa1≧La3>La2の関係に各キャリッジの移動範囲を設定する。これはまず載置台21を略々装置フレーム11の左右方向中央に読取位置を設定し、この載置台21の読取位置を基準に第1のキャリッジ60(走査キャリッジ)を載置台21上のサンプルをスキャンする十分な移動範囲に移動領域L1を設定する。同様に第2のキャリッジ42(第2光源キャリッジ)の移動領域L3を定める。このとき第1のキャリッジ60は第2のキャリッジ42に比べて大型であり、L1>L3となるが、これはL1=L3に設定しても良い。このような位置関係に設定すると第1のキャリッジ60の移動領域の下方及び第2のキャリッジ42の移動領域の上方に載置台21の移動で占有されない領域(La1−La2)及び領域(La3−La2)が生ずる。この領域に駆動モータMを配置すること(この領域を駆動モータMの載置領域として使用すること)によって装置フレーム11内の実装密度を上げることができ、装置をよりコンパクトに構成できる。すなわち、駆動モータMの少なくとも一部が上下方向において第1キャリッジの移動領域または第2キャリッジの移動領域と重なる中段エリアAR2に配置することで、中段エリアAR2のデッドスペースをモータMの載置領域として使用し、より装置を小型にできるのである。
【0044】
次に前述の載置台ユニット20の駆動モータM及び第1のキャリッジ60、第2のキャリッジ42の制御について説明する。載置台ユニット20の駆動モータMは前述のようにステッピングモータで構成してあり、正逆方向への回転と回転速度を駆動電源のパルス数を変更することによって制御することが可能であり、また図示しないが第1のキャリッジ60及び第2のキャリッジ42もステッピングモータに連結してあり、正逆方向への回転を制御することが可能になっている。
【0045】
図11のブロック図について説明する。
まず装置の制御コントローラ100は制御CPU110で各ユニットの駆動を制御するのと同時に、光電センサ54から出力された画像データを外部装置(コンピュータなど)101に転送する(図11参照)。制御CPU110には第1のキャリッジ60のホームポジションセンサ111の検知信号と載置台ユニット20のオープンセンサ87bとクローズセンサ87aの検知信号と、駆動モータMのエンコーダ86に配置したホトセンサ82の検知信号が伝達されるように接続されている。またこの制御CPU110は第1のキャリッジ60及び第2のキャリッジ42の駆動モータCMのドライバ回路112にコマンド信号を伝達し、また駆動モータMのドライバ回路115にコマンド信号を伝達するように接続されている。さらに、制御CPU110には、装置前面に設けられたスイッチ114が接続され、このスイッチ114からの信号が入力されるようになっている。
【0046】
また制御CPU110はインバータを介して第1光源の光源ランプ31に点灯/消灯の制御を行なう。また、この光源ランプ31にはインバータを介して電源が接続してある。同様に第2光源の光源ランプ41も制御CPU110で点灯/消灯制御が行なわれている。従って制御CPU110はコントロールパネル若しくはコンピュータなど外部装置101からのコマンドで第1の光源31又は第2の光源41を点灯/消灯し、キャリッジ駆動モータCMを駆動及び停止することが可能となる。また光電センサ54の出力値(アナログデータ)はA/Dコンバータ118でデジタルデータに変換され、画像処理用ASIC119で各種補正処理が施され、送信バッファ用SDRAM121に転送される。この読取データは送信バッファ用SDRAM121からメモリ制御ASIC120を介してUSBコントローラ122に転送され外部装置101に送られる。
【0047】
そこで制御CPU110は、フラッシュメモリ150に記憶された制御用プログラムにしたがって載置台ユニット20の駆動モータMを高速、低速など2段階以上の回転速度に制御し、載置台21がセット位置と読取位置との間を移動する速度を選択する速度選択手段としての機能も有している。制御CPU110には記憶素子117が設けてあり、図示のものは書換可能なEEPROM等のSRAMメモリ(以下メモリという)で構成してある。このメモリ117(記憶手段)には予め設定した複数の速度データが記憶してあり、制御CPU110はこのメモリに記憶された速度データの1つを選択し、その速度に合わせて駆動モータMを制御する。本実施例では、メモリ117には載置台21の二つの移動速度、低速130mm/sec(サンプルが液体の場合などに使用される)と高速210mm/sec(サンプルがシート状の場合などに使用される)の2段階の速度が記憶されている。このメモリ117の速度データは3段階或いはそれ以上に読取るサンプルの性状に応じて定めれば良く、速度データは速度に限らず、速度に対応するパルス周期など複数の速度情報(載置台の移動速度に対応するデータ)を記憶すれば良い。
【0048】
そこで制御CPU110はメモリ117に記憶された速度データの1つを選択し、駆動モータMのドライバ回路115にこの選択した速度に応じた周期のパルス信号を発信する。なお、この制御CPU110の速度選択は次のように構成する。装置のコントロールパネルに使用者が速度選択する入力スイッチ(プッシュスイッチ)を設け、そのスイッチからの信号に応じて速度を選択するか、或いは自動的に載置台の種類を検出し、その検出結果に応じて速度を選択する。なお、本実施例では、載置台21(スライド部材22)を開閉(移動)させるためのスイッチ114を設け、このスイッチ114の操作時間(押下時間)を制御CPU110で検出し、この操作時間に応じて速度データを選択するようにしてありその詳細は後述する。このように1つのスイッチで2つ以上の速度から一つの速度を選択することにより、スイッチの数を少なくしその操作方法も簡便にすることが可能となる。またさらに、ダイヤルを設け、このダイヤルを操作者が回転さえることで速度を連続的に選択できるようにしても構わない。
【0049】
またメモリ117に記憶した速度データは予め初期値が設定してあるが、操作パネル或いはコンピュータなどの外部装置の入力手段から使用状態に合った速度データを設定して書き換えるように構成する。図示のものは制御CPU110は予め初期値として記憶されている速度データをメモリ117から呼び出して外部装置であるコンピュータに送り、コンピュータ側で新たに速度データを入力ボードで入力し、この速度データをメモリ117に記憶するようになっている。この速度データの変更は、例えば制御CPU110と外部装置との間で「速度を速くする」「速度を遅くする」などの感覚情報でやり取りし、その結果で制御CPU110がメモリ117の速度データを書き換えるようにしても良い。
【0050】
次に制御CPU110は、載置台ユニット20を読取位置で高精度に停止させるために駆動モータMの停止制御を次のように行なっている。載置台ユニット20にはクローズセンサ87aが設けられ、載置台21が読取位置近傍(クローズ位置)に位置するか否かを検出するようになっている。従って制御CPU110はクローズセンサ87aからの検知信号に基いて駆動モータMを停止し、載置台21を読取位置に停止させるようにしても良いが、この場合には、載置台21の停止位置はセンサの取り付け位置精度に左右されてしまう。そのため、停止位置が所定の停止位置からずれてしまうと読取開始位置が狂ってしまい読み取りデータ精度に影響を及ぼすなどの問題が発生してしまう。
【0051】
そこで図示のものは上述したように、スライド部材22にはストッパ29が設けられているので、このストッパ29を装置フレーム11の内壁に突き当ててわざと駆動モータMを脱調させ、この駆動モータMの脱調を検出してから駆動モータMを停止させることで、スライド部材22(載置台21)を所定の読取位置で正確に停止させるようにしたのである。なお、詳細は後述する。
【0052】
次に前述の載置台21の移動速度の設定と載置台21の移動制御の詳細を図12、図13に基づいて説明する。図12は載置台21の移動速度の選択のフローチャートである。本実施例では、前述の載置台21の移動速度は、装置前面に設けられたスイッチ114(プッシュスイッチ)の操作時間の検出結果によって高速と低速の二つの速度から選択されるように構成されている。詳細には、オペレータが、読取位置にある載置台21をセット位置に移動させようとするとき、或いはセット位置にある載置台21を読取位置に移動させようとするとき、スイッチ114を操作(押下)するが、その操作時間(押下時間)が所定時間以上の場合は載置台21の移動速度は高速を、所定時間未満の場合は載置台21の移動速度は低速を選択されるように取り決められている。なお、本実施例では、制御CPU110は、スイッチ114の状態を所定時間ごと(例えば5secごと)に監視するよう設定されており、図12に示すスイッチ監視処理フローを繰り返すことで、スイッチ114の操作時間を検出するようになっている。
【0053】
まず制御CPU110は、ステップS100でスイッチ114がON状態であるか(押下されているか)否かを判断し、ON状態であると判断された場合は、前回の監視のときOFFであったか否かを判断(S101)する。ステップS101で前回がOFFであったと判断された場合は、制御CPU110内に構成したカウンタのカウント値をクリアしゼロにする(S102)。つまり、ステップS101でOFFであると判断された場合は、スイッチ114がOFF状態からON状態に移行した、すなわちスイッチ114の操作(押下)が開始されたと判断し、そこから操作時間を測定するためにときカウンタをゼロにリセットするのである。
【0054】
またステップS101で前回がONであったと判断された場合は、カウンタのカウント値をインクリメントする(S103)。つまりスイッチ114が前回の監視時からON状態を維持していると判断し、操作時間の測定を継続するためにカウント値をプラスするのである。このように、スイッチ114が操作されている間は、ステップS100、S101、103を繰り返すことで、スイッチ114の操作時間を測定するのである。
ステップS100でスイッチ114がOFF状態であると判断された場合、前回の監視のときONであったか否かを判断する(S104)。前回がOFFであったと判断された場合、つまりOFF状態が前回の監視時から継続されているときはそのまま監視を終了する。すなわち、ユーザーによってスイッチ114が操作されていない状態であると判断されるのである。
【0055】
また、ステップS104で前回の監視時ONであったと判断された場合は、カウンタ値と予め設定しておいた設定値(所定値)とを比較し、カウンタ値が設定値以上か否かを判断する(S105)。つまりスイッチ114がON状態からOFF状態に移行した、すなわちスイッチ114の操作(押下)が終了したと判断し、操作時間が設置値(所定時間)以上か否かを判断するのである。本実施例では、設定値は800msecに対応する160(=800msec/5msec)に設定されている。このカウント値が設定値以上のときには制御CPU110は高速を選択して高速移動の条件を設定し(S106)、所定値未満のときには低速を選択して低速移動の条件を設定する(S107)。すなわち制御CPU110は、スイッチ114が800msec以上操作(押下)されていると判断した場合には、メモリ117から速いほうの載置台速度(本実施例では210mm/sec)を選択し、この速度に応じたパルス周期(本実施例では500pps)などの条件を設定し、800msec未満と判断した場合には、メモリ117から遅いほうの載置台速度(本実施例では130mm/sec)を選択し、この速度に応じたパルス周期(本実施例では300pps)などの条件を設定するのである。
【0056】
このように本実施例では、サンプルの性状に応じて実験値から最適値を求め、初期値として130mm/secと210mm/secを設定してあるが、使用環境及びサンプルの状況に応じて更に高速に或いは更に低速に設定することが出来る。この場合は、例えば画像読取装置に接続した外部装置から入力されたデータに基づいて制御CPU110はメモリ117のデータを書き換える。このように載置台21の移動速度を設定(選択)した後、制御CPU110は駆動モータMのドライバ回路115に選択した載置台移動速度に応じた周期のパルス信号を入力することで駆動モータMを駆動させるのである。
【0057】
次に図13に示す載置台21の移動制御フローについて説明する。制御CPU110は先の移動速度の設定の後、次の動作を実行する。まず、クローズセンサ87aがONしているか否かを判断する(S200)。クローズセンサ87aがON状態のとき(すなわち載置台21が読取位置に位置しているとき)制御CPU110は、先に設定(選択)された移動速度に応じた駆動パルス信号を駆動モータMに入力して正転駆動させて載置台21をセット位置に向けて移動させる。(S201)。
【0058】
次に制御CPU110はオープンセンサ87bからON信号が送られるまで駆動モータMを回転し続け、載置台21はセット位置に向かって設定された速度で移動する(S202)。次に制御CPU110はオープンセンサ87bがONした信号で駆動モータMへの駆動パルス信号の発信を停止して駆動モータを停止する(S203)。すなわち、載置台21はセット位置で停止されるのである。
【0059】
一方、ステップS200でクローズセンサ87aがOFF状態のとき(すなわち載置台21がセット位置に位置しているとき)、制御CPU110は、先に設定(選択)された移動速度に応じた駆動パルス信号を駆動モータMに入力して逆転駆動させて載置台21を読取位置に向けて移動させる(S204)。そして制御CPU110はクローズセンサ87aからON信号が送られるまで駆動モータMを回転し(S205)続け、クローズセンサ87aからON信号が送られると、駆動モータMに過負荷がかけられたか、すなわちストッパ29がユニットフレーム24のリアー面25dに当接して、駆動モータMが脱調している状態か否かを判断し(S206)、脱調が検出された場合、制御CPU110は駆動モータMへの駆動パルス信号の発信を停止して駆動モータを停止する(S203)。
【0060】
ステップS206の脱調検出判断は、以下の手順で行なわれる。
まず制御CPU110は、クローズセンサ87aからのON信号で(1)駆動モータMに入力されるパルス信号(以下、駆動パルス信号という)のカウントを開始する。これと同時に制御CPU110は駆動軸81に設けたエンコーダ86のスリット検出によるホトセンサ82からのパルス信号(以下、回転パルス信号という)のカウントを開始する。本実施例では、エンコーダ86には10個のスリットが形成してあり、駆動パルス信号9カウント(9パルス)に対し、回転パルス信号2パルスがカウントされるようになっている。
【0061】
そして(2)駆動パルス信号が18パルスとなったとき、回転パルス信号のカウント数が所定範囲内(本実施例では、設計上厳密には2回であるが、センサの取付け誤差やセンサの精度等を考慮して、1〜5としている)であるかないかの判断をし、(3)所定範囲内であると判断された場合は、駆動モータMは正常に回転している(すなわちストッパ29がユニットフレーム24のリアー面25dに当接しておらず、駆動モータMが脱調していない)と判断して駆動モータMの駆動を継続させ、(4)所定範囲外であると判断された場合は、駆動モータMは脱調していると判断する。このように駆動モータMの脱調が検出されるまで上記の(1)乃至(4)のステップを制御CPU110からの駆動パルス信号18カウント毎に行なうことで、モータの脱調(過負荷状態)を検出している。このようにして載置台21は所定の読取位置に正確に停止されるのである。
【0062】
また、上述した脱調検出ルーチン(1)〜(4)を所定時間ごとに定期的に行なうようにさせることで以下のような制御も可能である。
【0063】
ステップS200でクローズセンサ87aがOFF状態であると判断され、載置台21を読取位置に向けて移動させるが(ステップS204)、この移動の途中で駆動モータMの脱調(駆動モータMの過負荷)が検出されたとき、クローズセンサ87aが載置台21を検出していない場合は、制御CPU110は駆動モータMを逆回転させて載置台21をセット位置方向へ移動させるよう制御する。すなわち、載置台21をセット位置から読取位置へ移動している最中に、定期的に前記の(1)〜(4)のステップを実行して駆動モータMに異常な負荷が生じないか否かを監視し、ステップ(4)で脱調と判断した場合は駆動モータMを停止させた後、駆動モータMを逆回転させて載置台21をセット位置側に向かって移動させるのである。
【0064】
この場合、脱調が検出され、クローズセンサ87aが載置台21を検出していない状態とは、載置台21がセット位置と読取位置の間にあり、サンプルや操作者の手等を挟んでしまって、駆動モータMに駆動パルスを入力しているにも関わらず駆動モータMが回転していない(載置台21が停止した)状態である。したがって、このような制御によって、載置台21上に載置したサンプルが転倒している場合は、装置内にサンプルが散乱するのを軽減することが出来、また操作者の怪我などを防止することができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本願発明に係わる画像読取装置の外観を示した斜視図。
【図2】本願発明に係わるキャリッジの移動を示した説明図。
【図3】図1の装置の内部構造を示すレイアウト構造の説明図。
【図4】本願発明に係わる装置フレームの斜視図。
【図5】本願発明に係わる載置台ユニットの平面図。
【図6】本願発明に係わる載置台ユニットの斜視図。
【図7】本願発明に係わる載置台ユニットの全体斜視図。
【図8】図1の装置の後側からの斜視図。
【図9】図7の載置台ユニットにシャーレ用載置台を搭載する状態を示した説明図。
【図10】本願発明に係わるシート用載置台の説明図。
【図11】本願発明に係わる制御を示すブロック図。
【図12】載置台の移動速度設定フローチャート。
【図13】載置台の移動制御フローチャート
【図14】本願発明に係わる第1、第2のキャリッジの移動領域と載置台ユニットとの移動領域との関係を示す説明図。
【符号の説明】
【0066】
10 ケーシング
11 装置フレーム
20 載置台ユニット
21 載置台
21a 液体用載置台
21b シート用載置台
22 スライド部材(載置台ガイド手段)
23 ガイドレール(載置台案内ガイド)(第2ガイド手段)
24 ユニットフレーム
30 第1の光源ユニット
40 第2の光源ユニット
42 キャリッジ(第2のキャリッジ)
45 キャリッジガイド(第3ガイド手段)
50 読取ユニット
54 光電センサ
60 走査キャリッジ(第1のキャリッジ)
61 走査キャリッジ案内ガイド(キャリッジ支持手段)(第1ガイド手段)
81 回転軸
82 ホトセンサ
86 エンコーダ
87a リミットセンサ(クローズセンサ)(位置検知センサ)
87b リミットセンサ(オープンセンサ)
110 制御CPU
M 駆動モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置フレームと、
読取物を載置する載置台と、
この載置台上の読取物に光を照射する光源と、
上記読取物からの光を光電変換する光学読取手段と、
上記読取物からの光を上記光電変換手段に導く光学手段と、
上記光学手段の少なくとも一部を搭載し、上記載置台に沿って移動する走査キャリッジと、
上記走査キャリッジを移動自在に支持するキャリッジ支持手段と、
上記走査キャリッジの移動で上記読取物の走査を行う上記装置フレーム内の走査位置と前記読取物を着脱する上記装置フレーム外のセット位置との間で上記載置台を移動自在に支持する載置台支持手段と、
上記載置台を上記セット位置と上記走査位置との間を移動させる駆動モータとを備え、
上記キャリッジ支持手段と上記載置台支持手段とは上記装置フレームに上記載置台と上記走査キャリッジの移動方向が略同一方向となるように配置され、上記駆動モータは上記装置フレームに配置されていることを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記走査キャリッジは、前記載置台の上方を前記載置台に沿って移動するように前記キャリッジ支持手段に支持されていることを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記光源は前記載置台上の読取物に光を照射する第1と第2の光源ユニットで構成され、上記第1の光源ユニットは前記載置台の上方に、上記第2の光源ユニットは前記載置台の下方にそれぞれ前記載置台に沿って前記走査キャリッジの移動方向と同一方向に移動自在に配置され、
前記載置台は読取物の載置面が透光性部材で構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記載置台と前記載置台支持手段と前記駆動モータとで載置台ユニットを構成し、この載置台ユニットが前記装置フレームに着脱可能に取付けられていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかの項に記載の画像読取装置。
【請求項5】
前記駆動モータは、前記走査キャリッジの下方で、かつ上下方向において少なくともその一部が前記走査キャリッジの移動領域と重なるよう前記装置フレームに固定されていることを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項6】
前記駆動モータは、前記走査キャリッジの移動領域の下方で、前記走査位置の前記セット位置と反対側に位置するよう前記装置フレームに配置されていることを特徴とする請求項4に記載の画像読取装置。
【請求項7】
読取物を載置する透光性の載置台と、
上記載置台上の読取物に上方から光を照射する光源を具えた第1キャリッジと、
上記載置台上の読取物に下方から光を照射する光源を具えた第2キャリッジと、
上記読取物からの反射光または透過光を走査する光学読取手段と、
上部に上記第1キャリッジを、中央に上記載置台を、下部に上記第2キャリッジを収容する装置フレームと、
上記第1キャリッジを上記載置台に沿って移動可能に案内する第1ガイド手段と、
上記読取物を走査する前記装置フレーム内の走査位置と読取物を着脱する前記装置フレーム外のセット位置との間で上記載置台を移動可能に案内する第2ガイド手段と、
上記第2キャリッジを上記載置台に沿って移動可能に案内する第3ガイド手段と、
上記載置台を上記走査位置と上記セット位置との間を移動させる駆動モータとを備え、
上記第1ガイド手段と第2ガイド手段および上記第3ガイド手段とはそれぞれの案内方向が略同一方向となるよう上記装置フレームに取付けられ、
上記駆動モータは、その少なくとも一部が上下方向において上記第1キャリッジの移動領域及び/又は上記第2キャリッジの移動領域と重なる中央エリア内に配置されていることを特徴とする画像読取装置。
【請求項8】
前記駆動手段は、前記走査位置の前記セット位置と反対側の前記中央エリアに配置されていることを特徴とする請求項7に記載の画像読取装置。
【請求項9】
前記載置台は、この載置台を保持する支持部材を有し、
前記第2ガイド手段は、上記支持部材の両側部を案内するように前記装置フレームに固定されていることを特徴とする請求項8に記載の画像読取装置。
【請求項10】
前記載置台の下方には、前記第2光源からの光を拡散させるための拡散板が取り付けられていることを特徴とする請求項7に記載の画像読取装置。
【請求項11】
前記第1光源および第2光源は、それぞれライン状光源で構成され、前記光学読取手段は複数の光電変換素子がライン状に配置された光電変換素子列で構成され、
前記光電変換素子列は、前記第1光電源で照射された読取物からの反射光、または前記第2光源で照射され読取物を透過した光を光電変換することを特徴とする請求項7に記載の画像読取装置。
【請求項12】
前記載置台は載置台を保持する支持部材を有し、
上記支持部材は異なる2つ以上の載置台を選択的に保持可能に構成されていることを特徴とする請求項7に記載の画像読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−50118(P2006−50118A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−226355(P2004−226355)
【出願日】平成16年8月3日(2004.8.3)
【出願人】(000231589)ニスカ株式会社 (568)
【Fターム(参考)】