説明

画像読取装置

【課題】複数の読取部を備える画像読取装置であって,各読取部の有効利用が図られた画像読取装置を提供すること。
【解決手段】MFP100の画像読取部2は,本体部10内のイメージセンサ15と,ADF20内のイメージセンサ25とを備え,1パスで原稿の両面を読み取ることが可能な構成を有している。また,MFP100は,一方のイメージセンサを利用して読み取りを行っている最中に,他方のイメージセンサを利用しての読み取りを指示することができる。そして,MFP100は,その指示に従って,一方のイメージセンサのみを利用している先行ジョブの処理中に,他方のイメージセンサを利用する後続ジョブを処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,両面読み取りが可能な画像読取装置に関する。さらに詳細には,少なくとも2つの読取部を備え,一方の読取部が片面を読み取り,他方の読取部が他面を読み取ることで,1パスで両面読み取りを行うことが可能な画像読取装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から,両面読み取りが可能な画像読取装置において,1回の搬送で原稿の表面と裏面とを読み取るように構成した画像読取装置が知られている。例えば,特許文献1には,用紙搬送路上に2つの読取部を備え,一方の読取部が表面を読み取り,他方の読取部が裏面を読み取るように構成することで,1パスで両面読み取りを行うことが可能な画像読取装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−73036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら,前記した従来の画像読取装置には,次のような問題があった。すなわち,1つの用紙搬送路上に2つの読取部を備えた画像読取装置では,一方の読取部のみを使用して片面読み取りを行うことも可能である。この片面読み取りを行っている際,他方の読取部は読み取りを行っておらず,有効に活用されていない。
【0005】
本発明は,前記した従来の画像読取装置が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,複数の読取部を備える画像読取装置であって,各読取部の有効利用が図られた画像読取装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題の解決を目的としてなされた画像読取装置は,原稿を搬送する搬送装置と,搬送装置によって搬送される原稿の片面の読み取りと,原稿載置面に載置された原稿の読み取りとを行う第1読取手段と,搬送装置によって搬送される原稿の他面の読み取りを行う第2読取手段と,第1読取手段と第2読取手段との一方を使用して読み取りを行っている際に,その使用中の読取手段である先行原稿読取手段が読み取っている原稿とは異なる他の原稿の読取開始を指示する指示手段と,指示手段による読取開始の指示を契機に,他方の読取手段である後続原稿読取手段による読み取りを実行する実行手段とを備えることを特徴としている。
【0007】
上記の画像読取装置は,2つの読取手段(第1読取手段,第2読取手段)を備え,1パスで原稿の両面を読み取ることが可能な構成を有している。第1読取手段は,例えば,原稿載置台の下方に位置し,原稿載置台に載置された原稿を読み取る際には,原稿載置台の下を副走査方向に移動することで読み取りを行い,搬送装置から送られる原稿を読み取る際には,所定位置に固定されて読み取りを行う読取手段である。一方,第2読取手段は,例えば,搬送装置内に固定配置され,搬送装置によって搬送される原稿の,第1読取手段の読取面とは異なる面の読み取りを行う読取手段である。そして,一方の読取手段を利用して読み取りを行っている最中に,他の読取手段を利用しての読み取りを指示することができ,その指示に従って他の読取手段による読み取りが実行される。
【0008】
すなわち,上記の画像読取装置は,一方の読取手段のみを利用している先行ジョブの処理中に,他方の読取手段を利用する後続ジョブを処理する。つまり,原稿の読み取りを含む異なる2つジョブを,異なる読取手段によって同時に実行する。このように,両方の読取手段を同時に利用可能にすることで,両方の読取手段が有効活用される。
【0009】
また,本発明の画像読取装置は,先行原稿読取手段が第1読取手段であり,後続原稿読取手段が第2読取手段であるとよい。この構成は,先行原稿読取手段が第2読取手段である場合と比較して,読み取りの安定性や使い勝手の良さがある。
【0010】
また,本発明の画像読取装置は,実行手段にて読み取りを行う際の,読み取り対象となる原稿面を報知する報知手段を備えるとよい。後続ジョブを実行するにあたって一方の読取手段は既に先行ジョブによって使用中であり,使用が制限される。そのため,他方の読取手段における読み取り対象となる原稿面を報知することが望ましい。
【0011】
また,本発明の画像読取装置は,指示手段にて読取開始を指示する際,先行原稿読取手段と同じ読取手段を使用する読取開始指示を制限する制限手段を備えるとよい。使用中の読取手段である先行原稿読取手段と同じ読取手段を使うと,先行原稿読取手段を使用中のユーザに不利益となる。そのため,そのような読取処理の指示を制限する。先行原稿読取手段と同じ読取手段を使用する読取開始指示としては,例えば,両面読み取りの開始指示が該当する。なお,制限方法は,例えば,指示できないようにしてもよいし,指示した後にその指示をキャンセルするようにしてもよい。
【0012】
また,本発明の画像読取装置は,実行手段が読み取りを実行するに際し,先行原稿読取手段による読み取りの中断を要求する要求手段を備え,要求手段が中断を要求した場合に,実行手段は,先行原稿読取手段による読み取りを中断した後に後続読取手段による読み取りを開始するとよい。例えば,後続のジョブの緊急性が高い場合には,先行原稿読取手段による読み取りを中断して,後続のジョブの読み取りを優先する方が望ましい。
【0013】
また,上記の画像読取装置は,実行手段による読み取りが完了したことを契機に,中断を解除して先行原稿読取手段による読み取りを再開する再開手段を備えるとよい。このような構成にすることで,先行原稿読取手段を使用するユーザに適正な配慮を行うことができる。
【0014】
また,本発明の画像読取装置は,第1読取手段ないし第2読取手段で読み取った画像を印刷する印刷手段と,先行原稿読取手段が読み取りを実行するジョブが印刷手段を使用するジョブである場合に,指示手段にて読取開始を指示する際に,印刷手段を使用するジョブの開始指示を制限する印刷制限手段を備えるとよい。先行原稿読取手段を使用するジョブが印刷手段を使用するジョブ(例えば,コピー)である場合,後続読取手段を使用するジョブも印刷手段を使用すると,先行原稿読取手段を使用するユーザに不利益となる。そのため,そのような処理の指示を制限することが望ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば,複数の読取部を備える画像読取装置であって,各読取部の有効利用が図られた画像読取装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施の形態にかかるMFPの外観を示す斜視図である。
【図2】図1に示したMFPのADFを開放した状態を示す斜視図である。
【図3】図1に示したMFPの画像読取部の内部構成(図1のA−A断面)を示す断面図である。
【図4】図1に示したMFPの電気的構成を示すブロック図である。
【図5】MFPの同時読取処理の手順を示すフローチャートである。
【図6】原稿読取ガイダンスの表示例を示す図である。
【図7】MFPの緊急読取処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下,本発明にかかる画像読取装置を具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,スキャン機能,プリント機能,およびFAX送受信機能を備えた複合機(MFP:Multi Function Peripheral )に本発明を適用したものである。
【0018】
[MFPの構成]
本形態のMFP100は,図1に示すように,用紙に画像を印刷する画像形成部1(印刷手段の一例)と,原稿の画像を読み取る画像読取部2とを備えている。画像形成部1の画像形成方式は,電子写真方式であっても,インクジェット方式であってもよい。また,カラー画像の形成が可能であっても,モノクロ画像専用であってもよい。
【0019】
また,MFP100は,その前面側に,各種のボタン(例えば,スタートキー,ストップキー,テンキーの各ボタン)によって構成されるボタン群41,液晶ディスプレイからなる表示部42を備えた操作パネル40を備えている。このボタン群41や表示部42により,動作状況の表示やユーザによる操作の入力が可能になっている。
【0020】
[画像読取部の構成]
続いて,画像読取部2の構成について,図1,図2および図3を参照しつつ説明する。なお,図1および図2は,画像読取部2の外観を示し,図3は画像読取部2の内部構成を示している。
【0021】
画像読取部2は,画像の読み取りを行う本体部10と,原稿の自動搬送を行う自動原稿供給装置(ADF:Auto Document Feeder,搬送装置の一例)20とを備えている。ADF20は,本体部10の上方に位置するとともに一辺が本体部10と接続し,本体部10に対して回動自在に設けられている。そのため,ADF20は,本体部10の上面を開閉することができる(図2参照)。また,ADF20は,本体部10の上面を覆うカバーを兼ねる。
【0022】
本体部10は,その上面に,コンタクトガラス11,12を備えている。さらに,本体部10の内部であってコンタクトガラス11,12の下方には,原稿の画像を読み取るイメージセンサ15(第1読取手段の一例)が設けられている。イメージセンサ15は,主走査方向(用紙搬送方向に直交方向,図3の奥行き方向)に光学素子が一列に並んで配置されており,原稿からの反射光を電気信号に変換して出力する。イメージセンサ15としては,例えば,CIS(Contact Image Sensor)やCCD(Charge Coupled Device)が適用可能である。
【0023】
イメージセンサ15は,スライド軸13に対してスライド自在に支持されている。このスライド軸13は,副走査方向(図3中の左右方向)に延び,両端部が本体部10の筐体に固定されている。そのため,イメージセンサ15は,図3中の左右方向に移動可能に設けられている。
【0024】
ADF20は,読み取り前の原稿を載置する原稿トレイ21と,読み取り後の原稿を載置する排出トレイ22とを備えている。具体的に,原稿トレイ21は,排出トレイ22の上方に配設されている。
【0025】
また,ADF20の内部には,原稿が搬送される経路として,原稿トレイ21と排出トレイ22とを連結する略U字状の搬送路30が設けられている。搬送路30には,原稿搬送方向の上流側から,搬入ローラ31,メインローラ32,排出ローラ33が設けられている。
【0026】
また,ADF20は,その下面に開口部23が設けられ,その開口部23から原稿押さえ板24が露出するように配置されている。この原稿押さえ板24は,原稿搬送方向の,メインローラ32よりも下流で排出ローラ33よりも上流に位置し,ADF20を閉じた状態でコンタクトガラス12と対向している。
【0027】
ADF20は,原稿トレイ21に載置された原稿を搬入ローラ31によって1枚ずつ取り出し,その原稿をメインローラ32に沿ってUターンさせる。そして,その原稿を本体部10のコンタクトガラス12(以下,「ADFガラス12」とする)に対向する位置に搬送する。具体的には,原稿を原稿押さえ板24とコンタクトガラス12との間を通過させる。その後,その原稿を排出ローラ33を介して排出トレイ22上に排出する。
【0028】
また,イメージセンサ15を利用した原稿の読取方式としては,フラットベッド(原稿固定走査)方式と,ADF(原稿移動走査)方式とがある。フラットベッド方式の場合,原稿を1枚ずつコンタクトガラス11(以下,「FBガラス11」とする)上に載置する。その状態で,イメージセンサ15が副走査方向(主走査方向に直交方向,図3の左右方向)に移動し,その際に主走査方向に1ラインずつ原稿の画像が読み取られる。一方,ADF方式の場合,原稿を纏めて原稿トレイ21に載置する。そして,イメージセンサ15がADFガラス12に対向する位置に移動し,固定される。その状態で,ADF20によって原稿が原稿押さえ板24の下側であってADFガラス12に対向する位置に搬送され,その際に主走査方向に1ラインずつ原稿の画像が読み取られる。
【0029】
また,ADF20は,原稿搬送方向の,搬入ローラ31よりも下流でメインローラ32よりも上流に,原稿の画像を読み取るイメージセンサ25(第2読取手段の一例)およびそのイメージセンサ25に対向する原稿押さえ板26を備え,イメージセンサ25と原稿押さえ板26との間を原稿が通過するように配置される。イメージセンサ25についても,本体部10のイメージセンサ15と同様に,CISやCCDが適用可能である。
【0030】
イメージセンサ25は,ADF方式によってイメージセンサ15に読み取られる面とは反対の面を読み取ることができる位置に配置される。そのため,本形態の画像読取部2は,1回の原稿搬送で,本体部10のイメージスキャナ15によって一方の面を,ADF20のイメージスキャナ25によって他方の面を,それぞれ読み取ることができる。つまり,1パスで両面読み取りを行うことが可能な構成になっている。
【0031】
[MFPの電気的構成]
続いて,MFP100の電気的構成について説明する。MFP100は,図4に示すように,CPU31と,ROM32と,RAM33と,NVRAM34と,ASIC35と,ネットワークインタフェース36と,USBインターフェース37と,FAXインタフェース38とを備えた制御装置30を有している。
【0032】
ROM32には,MFP100を制御するための各種制御プログラムや画像処理プログラム,各種設定,初期値等が記憶されている。RAM33は,各種制御プログラムが読み出される作業領域として,あるいは画像データを一時的に記憶する記憶領域として利用される。
【0033】
ASIC35は,画像形成部1,画像読取部2,操作パネル40等と電気的に接続されている。例えば,ASIC35は,画像読取部2から画像データの信号を取得する。また,画像形成部1へ所望の画像を作成するための信号を出力する。また,ボタン群41に入力される各種ボタンの信号を受け付ける。また,表示部42に表示する内容の信号を出力する。
【0034】
CPU31は,ROM32から読み出した制御プログラムに従って,その処理結果をRAM33またはNVRAM34に記憶させながら,ASIC35を介してMFP100の各構成要素を制御する。また,CPU31は,例えば,ROM32から読み出した画像処理プログラムに従って,画像読取部2から得られる画像データに画像処理を施す。
【0035】
ネットワークインタフェース36には,情報機器が接続され,このネットワークインタフェース36を介して相互のデータ通信が可能になっている。また,FAXインタフェース38は,電話回線に接続され,このFAXインタフェース38を介して外部のFAX装置等とデータ通信が可能になっている。
【0036】
[MFPの2ジョブ同時読取動作]
続いて,MFP100の画像読取部2において,2つの異なるジョブの原稿を同時に読み取る動作について説明する。
【0037】
本形態のMFP100は,2つのイメージセンサ15,25を備えるため,読取動作を含むジョブを2つ同時に実行する同時読取機能を有している。すなわち,MFP100は,一方のジョブについて一方のイメージセンサによって原稿の読み取りを行い,当該一方のジョブ(以下,「先行ジョブ」とする)の読み取り中に,他方のジョブ(以下,「後続ジョブ」とする)について他方のイメージセンサによって原稿の読み取りを行うことができる。
【0038】
例えば,FB方式によって原稿の読み取りを高解像度で行っている最中に,つまりイメージセンサ15を使用している最中に,ADF20に他の原稿をセットし,イメージセンサ25を使用してその原稿を読み取る。あるいは,ADF20内のイメージセンサ25によって大量の原稿の連続読み取りを行っている最中に,FBガラス11上に原稿をセットし,イメージセンサ15を使用してその原稿を読み取る。
【0039】
なお,後続ジョブの原稿をFBガラス11上にセットする方法としては,例えば,(方法1)ADF20と本体部10との隙間から原稿を挿入する,(方法2)ADF20の読み取り動作を一時停止し,ADF20を開いて原稿を載置する,(方法3)先行ジョブの読み取り開始前にあらかじめ原稿を載置しておく,のいずれかが適用可能である。
【0040】
上記の同時読取機能を利用する際,ユーザは先行ジョブの読取処理中に操作パネル40を介して後続ジョブの投入を指示する同時読取指示を入力する。その後,後続ジョブの原稿をセットし,後続ジョブの処理開始を指示する開始指示を入力する。MFP100は,読取開始指示の入力を契機に同時読取を開始する。
【0041】
[MFPの同時読取処理]
以下,上記の同時読取機能を実現する同時読取処理(指示手段,実行手段,報知手段,制限手段,印刷制限手段の一例)の手順について,図5のフローチャートを参照しつつ説明する。この同時読取処理は,先行ジョブの読み取り処理が開始されたことを契機に実行される。
【0042】
まず,同時読取指示が入力されたか否かを判断する(S101)。同時読取指示がなかった場合には(S101:NO),先行ジョブが終了したか否かを判断する(S111)。先行ジョブが終了していなければ(S111:NO),S101に戻る。先行ジョブが終了している場合には(S111:YES),本処理を終了する。
【0043】
同時読取指示が有った場合には(S101:YES),後続ジョブの処理内容の設定を受け付ける。そして,ユーザの設定動作の過程を監視し,先行ジョブと後続ジョブとが同じ処理部を利用する設定を行ったか否かを判断する。
【0044】
具体的に本形態では,両ジョブが画像形成を含むジョブであるか否かを判断する(S102)。画像形成を含むジョブとしては,例えば,コピーが該当する。画像形成をMFP100は,画像形成部1が1つしかなく,画像形成を同時行うことができない。そこで,両ジョブが画像形成を含むジョブである場合には(S102:YES),同時読み取りが不可であることを報知する(S121)。報知手段としては,表示部42へのメッセージ表示や警告音が該当する。S121の報知後は,本処理を終了する。なお,先行ジョブの他,読み取りを行っていない他のジョブ(例えば,FAX受信ジョブ)が画像形成部1を利用している場合にも,S121と同様に同時読取不可を報知してもよい。
【0045】
また,両ジョブが画像形成を含むジョブでない場合には(S102:NO),両ジョブが同じ読取部を利用するジョブであるか否かを判断する(S103)。例えば,先行ジョブがFB方式によって読み取りを行っている際に,ADF20による両面読み取りを指定した場合には同じ読取部を利用すると判断される。両ジョブが同じ読取部を利用する場合も(S103:YES),同時読み取りが不可であることを報知する(S121)。S121の報知後は,本処理を終了する。
【0046】
一方,両ジョブが異なる読取部を利用する場合(S103:NO),先行ジョブがFB方式の読み取りか否かを判断する(S104)。先行ジョブがFB方式である,すなわちイメージセンサ15による読み取りであった場合は(S104:YES),ADF20に原稿をセットするガイダンスを表示部42に報知する(S105)。特に,図6に示すように,原稿をセットする際の読み取り面が把握できるように報知する。すなわち,後続ジョブは,イメージセンサ25による読み取りを行うことになる。そのため,イメージセンサ25が読み取り可能な面を報知することで,ユーザの誤操作を抑制できる。
【0047】
S105のガイダンス報知後は,開始指示が入力されるまで待機する(S106)。そして,開始指示が入力された後は,S107に移行する。なお,S106の待機の際,同時読み取りを中止するキャンセルキーが押下された場合にはS101に戻る。
【0048】
一方,先行ジョブがFB方式ではない,すなわちADF20を利用した読み取りの場合は(S104:NO),先行ジョブの読み取り動作を停止する(S141)。読み取り動作の停止としては,例えば,新たな原稿の搬入を中断する。すなわち,ADF20は,原稿押さえ板24付近で下面が開口している。そのため,ADF20内に原稿を流したままにすると,FBガラス11に原稿をセットするためにADF20を開放した際に,原稿が原稿押さえ板24付近の開口から流出するおそれがある。そこで,ADF20の原稿搬送を中断する。
【0049】
次に,FBガラス11に原稿をセットするガイダンスを表示部42に報知する(S142)。S142のガイダンス報知後は,開始指示が入力されるまで待機する(S143)。そして,開始指示が入力された後は,先行ジョブの読み取り動作を再開し(S144),S107に移行する。
【0050】
なお,後続ジョブの原稿をFBガラス11上にセットする方法が,前述した(方法1)や(方法3)の場合には,先行ジョブの読み取り動作を停止しなくてもよい。すなわち,前述した原稿の流出のおそれがない場合には,S141およびS144の処理を省略してもよい。
【0051】
S106またはS144の後,後続ジョブが緊急性の高いジョブであるか否かを判断する(S107)。MFP100では,開始指示を入力する際には,緊急度合を設定することが可能である。そこで,S107では,その緊急度合を確認して緊急性の高低を判断する。
【0052】
後続ジョブの緊急性が低い場合には(S107:NO),後続ジョブの読み取り動作を開始する(S108)。これにより,先行ジョブと後続ジョブとが同時に動作することになる。つまり,一方のジョブがイメージセンサ15を利用して原稿を読み取り,他方のジョブがイメージセンサ25を利用して原稿を読み取る。後続ジョブの読み取り動作の開始後は,本処理を終了する。
【0053】
一方,後続ジョブの緊急性が高い場合には(S107:YES),後続ジョブの読み取り動作を優先的に行う後続緊急処理を実行する(S171)。図7は,S171の後続緊急処理(要求手段,再開手段の一例)の手順を示している。
【0054】
後続緊急処理では,まず,先行ジョブの動作を停止する(S181)。そして,先行ジョブのデータを保存する(S182)。例えば,先行ジョブがFB方式の読み取りであれば,停止した位置,読み取り途中の画像データ等を保存する。また,ADF20のイメージセンサ25を利用した読み取りであれば,読み取りが完了した原稿分の画像データ等を保存する。
【0055】
次に,後続ジョブの読み取り動作を開始する(S183)。これにより,先行ジョブに優先して後続ジョブが動作することになる。その後,後続ジョブの読み取り動作が完了するまで待機する(S143)。
【0056】
後続ジョブの読み取り完了後は,S182で保存した先行ジョブのデータを読み出す(S185)。そして,その読み出したデータに基づいて,先行ジョブの動作を再開する(S186)。再開後は,後続緊急処理,さらには同時読取処理を終了する。
【0057】
このように後続緊急処理では,先行ジョブの読み取りを中断し,読み取り途中の画像データを保存することで,後続ジョブがCPU,メモリ等を優先的に使用することになる。そのため,後続ジョブの処理を早期に完了できる。
【0058】
以上詳細に説明したように本形態のMFP100の画像読取部2は,本体部10内のイメージセンサ15と,ADF20内のイメージセンサ25とを備え,1パスで原稿の両面を読み取ることが可能な構成を有している。そして,一方のイメージセンサを利用して読み取りを行っている最中に,他方のイメージセンサを利用しての読み取りを指示することができる。そして,MFP100は,その指示に従って,一方のイメージセンサを利用している先行ジョブの処理中に,他方のイメージセンサを利用する後続ジョブを処理することができる。これにより,両方のイメージセンサが有効活用される。
【0059】
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,MFPに限らず,複写機,スキャナ,FAX等,画像読み取り機能を備えるものであれば適用可能である。
【0060】
また,実施の形態では,先行ジョブがイメージセンサ25によるADF読み取りであった場合,その読み取りを一旦停止した後,後続ジョブとの同時読み取りを開始しているが,これに限るものではない。例えば,原稿押さえ板24付近の開口からの流出を防止する機構(例えば,ADF20の下面に開口部23を被覆する透明フィルムや流出を防止する透明なワイヤを配置し,その透明フィルムやワイヤと原稿押さえ板24との間に原稿を通過させる)があれば,一旦停止しなくてもよい。
【0061】
また,実施の形態では,S102やS103で先行ジョブとの同時読み取りができない条件を設定した場合,同時読み取りの不可を報知する構成になっているが,これに限るものではない。例えば,あらかじめそのようなジョブの設定ができないようにしてもよい。
【0062】
また,実施の形態では,先行ジョブと後続ジョブとが同じイメージセンサを利用する場合や,両ジョブともに印刷を行う場合には,後続ジョブの同時読み取りを制限しているが,これに限るものではない。すなわち,そのような組合せであっても後続ジョブの同時読み取りを許可してもよい。ただし,両ジョブを同時実行すると出力物の振り分けに手間がかかるため,例えば,後続ジョブの実行開始前に先行ジョブの動作を停止し,後続ジョブの実行完了後に先行ジョブの動作を再開するように後続ジョブを優先的に処理する。また,印刷後の用紙を保持する排紙トレイが複数ある場合には,先行ジョブと後続ジョブとを振り分けて排紙することでユーザの手間をなくすことができる。
【符号の説明】
【0063】
1 画像形成部
2 画像読取部
10 本体部
15 イメージセンサ
20 ADF
25 イメージセンサ
30 制御装置
41 ボタン群
42 表示部
100 MFP

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿を搬送する搬送装置と,
前記搬送装置によって搬送される原稿の片面の読み取りと,原稿載置面に載置された原稿の読み取りとを行う第1読取手段と,
前記搬送装置によって搬送される原稿の他面の読み取りを行う第2読取手段と,
前記第1読取手段と前記第2読取手段との一方を使用して読み取りを行っている際に,その使用中の読取手段である先行原稿読取手段が読み取っている原稿とは異なる他の原稿の読取開始を指示する指示手段と,
前記指示手段による読取開始の指示を契機に,他方の読取手段である後続原稿読取手段による読み取りを実行する実行手段と,
を備えることを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
請求項1に記載する画像読取装置において,
前記先行原稿読取手段は,前記第1読取手段であり,
前記後続原稿読取手段は,前記第2読取手段であることを特徴とする画像読取装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載する画像読取装置において,
前記実行手段にて読み取りを行う際の,読み取り対象となる原稿面を報知する報知手段を備えることを特徴とする画像読取装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1つに記載する画像読取装置において,
前記指示手段にて読取開始を指示する際,前記先行原稿読取手段と同じ読取手段を使用する読取開始指示を制限する制限手段を備えることを特徴とする画像読取装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1つに記載する画像読取装置において,
前記実行手段が読み取りを実行するに際し,前記先行原稿読取手段による読み取りの中断を要求する要求手段を備え,
前記要求手段が中断を要求した場合に,前記実行手段は,前記先行原稿読取手段による読み取りを中断した後に前記後続読取手段による読み取りを開始することを特徴とする画像読取装置。
【請求項6】
請求項5に記載する画像読取装置において,
前記実行手段による読み取りが完了したことを契機に,中断を解除して前記先行原稿読取手段による読み取りを再開する再開手段を備えることを特徴とする画像読取装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1つに記載する画像読取装置において,
前記第1読取手段ないし前記第2読取手段で読み取った画像を印刷する印刷手段と,
前記先行原稿読取手段が読み取りを実行するジョブが前記印刷手段を使用するジョブである場合に,前記指示手段にて読取開始を指示する際に,前記印刷手段を使用するジョブの開始指示を制限する印刷制限手段を備えることを特徴とする画像読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−160078(P2011−160078A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−18392(P2010−18392)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】