説明

畦付け機

【課題】耕耘ロータリー直後の土溜まりを防止して円滑な畦付けと、良好で固着力の強い畦法面の成形とを可能にする。
【解決手段】本発明の畦付け機1は、耕作地5の地面5aを掘削し、側部外方Bに盛り土Aを形成する耕耘ロータリー31と、耕耘土Gの後方への移動を規制する前面板33と、前記盛り土Aの表面を押圧して畦法面7bを成形する揺動板35と、成形された畦法面7bの表面を叩いて押し固める撓み変形が可能な叩き板37と、前記耕耘ロータリー31と揺動板35と叩き板37とを駆動する動力伝達機構39と、前記叩き板37の先端部背面に当接するストッパ143を備えた叩き板撓み規制機構141と、を具備し、前記前面板33と揺動板35と叩き板37の取付け角度を耕耘姿勢において、前記ストッパ143の当接によって叩き板37先端部38の浮きを小さくしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、田、畑に畦を形成するのに使用される畦付け機に係り、特に耕耘ロータリー直後の土溜まりに起因する耕耘抵抗の減少と、良好な畦法面の成形とを可能にする叩打式の畦付け機に関する。
【背景技術】
【0002】
畦付け機には、回転ドラム式と叩打式があり、前者は、畦法面と常時密着し、均一な畦法面が成形できるが、固着力が弱く、成形した畦法面が崩れ易いという欠点を有している。一方、叩打式は、間欠的ではあるが下記の特許文献1に示すように成形した畦法面の表面を土押体によって押し固めるため、固着力が強く成形した畦法面が崩れにくいという特徴を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−84807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の叩打式の畦付け機には、耕耘ロータリー直後に耕耘によって跳ね上げられた耕耘土の後方への移動を規制する前面板と揺動板と叩き板とが設けられており、前記耕耘によって跳ね上げられた耕耘土が側面に回り込み、畦法面を成形する揺動板や成形された畦法面の表面を押し固める叩き板が耕耘土を畦に押しつけて畦法面を成形するように構成されていた。その際、上記叩き板は撓み変形が可能な一例として樹脂製で形成されており、叩き板のしなりが畦法面の良好な成形に大きく貢献して、耕耘土を畦法面に密着させるように構成されている。
【0005】
ところが、上記撓み変形が可能な叩き板は畦法面に対して揺動運動していることから、畦法面の表面を押し固める際に先端部が畦法面の表面から1cm程度離れてしまい、該畦法面に対する押付け力が低下し、畦の締まりが悪くなるという問題が生じていた。
この場合、叩き板を撓み変形しない剛性の強い材料に変更すれば、上記叩き板先端部の浮きは押さえられるが、叩き板のしなりが畦法面の良好な成形に大きく貢献していることを考えると、叩き板自体の剛性の強化は難しい。また、モータ等の他の動力で上記叩き板の浮きを小さくすることも考えられるが、畦法面成形時にかかる土圧が大き過ぎてモータにかかる負荷が大きくなり、モータが回らなくなってしまう。
【0006】
本発明はこのような点に基づいてなされたものでその目的とするところは、良好で固着力の強い畦法面の成形が可能な叩打式の畦付け機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するべく本発明の請求項1による畦付け機は、耕作地の地面を掘削し、側部外方に掘削した耕耘土を跳ね上げて盛り土を形成する耕耘爪を備えた耕耘ロータリーと、前記耕耘ロータリーによって跳ね上げられた耕耘土の後方への移動を規制して側部外方に導くように案内する前面板と、前記耕耘ロータリーによって形成された盛り土の表面を押圧して畦法面を成形する揺動板と、前記揺動板によって成形された畦法面の表面を叩いて押し固める撓み変形が可能な叩き板と、走行車両のドライブシャフトから動力を得て前記耕耘ロータリーと揺動板と叩き板とを駆動する動力伝達機構と、前記叩き板の先端部背面に当接することで前記叩き板先端部の撓み量を制限するストッパを備えた叩き板撓み規制機構と、を具備し、前記叩き板の先端部背面が前記ストッパに当接することによって畦法面に対する前記叩き板先端部の浮きを小さくするようにしたことを特徴とするものである。
【0008】
また、請求項2による畦付け機は、請求項1記載の畦付け機において、前記動力伝達機構は、走行車両のドライブシャフトからの動力をチェーン駆動伝達手段とクランク軸とを介して昇降ロッドの昇降動作に変換する昇降動作変換機構と、リンク機構を介して前記昇降ロッドの昇降動作を、前記リンク機構の最終出力端に取り付けられている押圧体の叩打動作に変換して前記叩き板背面の受圧体を介して前記叩き板の回動軸を中心とする回動動作に変換する叩打変換機構と、を備えていることを特徴とするものである。
【0009】
また、請求項3による畦付け機は、請求項2記載の畦付け機において、前記叩き板撓み規制機構は、前記回動軸を中心に回動する回動アームと、前記回動アームの先端部に取り付けられる前記ストッパと、前記回動アームの中間部に設けられ、前記押圧体に当接することによって前記回動アームが畦法面から離間する内方への回動を規制する当接バーと、を備えており、前記押圧体が前記受圧体に当接し、前記叩き板に畦法面への押込み動作を開始した直後は、前記押圧体と前記当接バーとの間に空隙部が形成されており、当該押込み動作が進んで前記押圧体が前記当接バーに当接した時点で、前記叩き板先端部の撓みを規制するようにしたことを特徴とするものである。
【0010】
また、請求項4による畦付け機は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の畦付け機において、前記ストッパの突出量は、調整可能に構成されていることを特徴とするものである。
【0011】
また、請求項5による畦付け機は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の畦付け機において、前記ストッパは、複数個、設けられていることを特徴とするものである。
【0012】
また、請求項6による畦付け機は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の畦付け機において、前記ストッパが当接する前記叩き板の背面には、補強部材が設けられていることを特徴とするものである。
【0013】
また、請求項7による畦付け機は、請求項2〜6のいずれか1項に記載の畦付け機において、前記叩打変換機構は、前記昇降ロッドの1行程の昇降動作の間に前記叩き板の叩打動作を複数回実行する増速リンク機構を備えていることを特徴とするものである。
【0014】
そして、前記手段によって以下のような作用が得られる。耕耘ロータリー直後に耕耘によって跳ね上げられた耕耘土の後方への移動を規制する前面板と揺動板と叩き板とが設けられており、前記耕耘によって跳ね上げられた耕耘土が側面に回り込み、畦法面を成形する揺動板や成形された畦法面の表面を押し固める叩き板が耕耘土を畦に押しつけて畦法面を成形するように構成されている。その際、上記叩き板は撓み変形が可能な一例として樹脂製で形成されており、叩き板のしなりが畦法面の良好な成形に大きく貢献して、耕耘土を畦法面に密着させるように構成されている。なお、前記前面板と揺動板と叩き板の取付け角度を耕耘作業を行っている耕耘姿勢において前記前面板と揺動板と叩き板の下縁が所定の後傾角度分、前方に突出した後傾姿勢になるように設定されていることにより、前記耕耘によって跳ね上げられた耕耘土が前面板と揺動板と叩き板により持ち上げられながら上部に溜められた状態でより後側に持っていく力が出る。つまり、土の落下位置が前面板より後ろ側に移行し、畦付け機の進行により側部外方に回り込むようになる。
【0015】
また、耕耘ロータリーに詰まる土は少なくなるので畦付け機の進行はスムーズになる。そして、土が側部外方に回り込むことにより豊富に揺動板や叩き板側に供給されることによって、畦法面を成形する揺動板や成形された畦法面の表面を押し固める叩き板の効果が一層向上し、その結果、良好な畦法面の成形と固着力の向上とが図られる。
【0016】
そして、前記叩き板の先端部背面に当接することで、叩き板先端部の撓み量を制限するストッパを備えた叩き板撓み規制機構を設け、前記叩き板の先端部背面が前記ストッパに当接することによって畦法面に対する叩き板先端部の浮きを小さくしているから、叩き板先端部での押付け力の低下が防止されて、畦の締まりが良くなる。
【0017】
また、動力伝達機構を昇降動作変換機構と叩打変換機構とを備えることによって構成し、叩打変換機構としてリンク機構を介して押圧体ないし叩き板に叩打動作を実行させる機構を採用した場合には、単一の駆動手段の動力を利用して耕耘ロータリーの回転動作と揺動板の揺動動作と叩き板の叩打動作とを同時に実行できるようになる。
【0018】
また、前記叩き板撓み規制機構を回動軸を中心に回動する回動アームと、回動アームの先端部に取り付けられるストッパと、回動アームの中間部に設けられ、押圧体に当接する当接バーと、を備えることによって構成し、押圧体の押込み動作開始時には押圧体と当接バーとの間に空隙部を形成しておき、押込み動作が進んだ時に押圧体が当接バーに当接して叩き板先端部の撓みを規制するようにした場合には、ストッパは叩き板の叩打動作が開始されてから少し離れたタイミングで動作するようになる。
従って、ストッパが動作する前の段階では、叩き板のしなりを利かした畦法面の成形及び押し固めが実行され、ストッパが動作した後は、叩き板先端部の過剰な撓み変形を防止して叩き板の押し固め不足を回避するように作用する。
【0019】
また、前記ストッパの突出量を調整可能に構成した場合には、叩き板の厚さや材質等の違いに対応してストッパが動作を開始するタイミングを調整することが可能になる。
また、前記ストッパを複数個、設けた場合には、叩き板は複数の当接点で荷重が分散された状態でストッパに当接するようになる。従って、荷重の集中や偏りによって生じる叩き板の変形や破損が防止される。
【0020】
また、前記ストッパが当接する叩き板の背面に補強部材を設けた場合には、叩き板先端部の機械的強度が向上するから、例えば厚さの薄い叩き板を使用した場合でも必要な叩き板の剛性を確保することができる。また、この場合、押圧板の押さえ力は補強部材を介して叩き板に伝達されるから、押圧板が叩き板に直接、当接する場合に比べて叩き板に与えるダメージが小さくなる。
【0021】
また、前記叩打変換機構が、前記昇降ロッドの1行程の昇降動作の間に前記叩き板の叩打動作を複数回実行する増速リンク機構を備えている場合には、叩き板による畦法面の押し固め回数が昇降ロッドの1行程の昇降動作を速めることなく、複数倍に増加するから別段の増速機構を設けなくても、リンク機構のみで畦法面の固着力が増強される。
【発明の効果】
【0022】
本発明による畦付け機によると、前記叩き板の先端部背面に当接することで、叩き板先端部の撓み量を制限するストッパを備えた叩き板撓み規制機構を設け、前記叩き板の先端部背面が前記ストッパに当接することによって畦法面に対する叩き板先端部の浮きを小さくしているから、叩き板先端部での押付け力の低下が防止されて、畦の締まりが良くなり、良好で固着力の強い畦法面を成形することが可能になる。
【0023】
また、既存のトラクター等の走行車両の牽引フレームや既存の耕耘機等の小型の走行車両をそのまま利用して本発明の畦付け機を取り付けることができるため、広い耕耘地だけでなく狭い耕耘地にも適用でき、耕耘作業機械の設備コストの削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示す図で、畦付け機を搭載したトラクターを示す側面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態を示す図で、耕耘作業前の畦付け機を示す側面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態を示す図で、耕耘作業時の畦付け機を示す側面図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態を示す図で、角度調整機構の断面図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態を示す図で、畦付け機を搭載したトラクターを示す背面図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態を示す図で、昇降ロッドが下限位置に位置している時の畦付け機を示す背面図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態を示す図で、昇降ロッドが上限位置に位置している時の畦付け機を示す背面図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態を示す図で、前面板の周辺を拡大して示す上方からの斜視図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態を示す図で、トラクターのドライブシャフトから畦付け機のクランク軸までの動力伝達機構を模式的に示す平面図である。
【図10】本発明の第1の実施の形態を示す図で、畦付け機を使用した畦付け作業の様子を示す背面側からの斜視図である。
【図11】本発明の第1の実施の形態を示す図で、畦の成形の過程を段階的に示す説明図である。
【図12】本発明の第1の実施の形態を示す図で、動作開始前の叩き板撓み規制機構を示す斜視図である。
【図13】本発明の第1の実施の形態を示す図で、叩き板撓み規制機構の動作の過程を段階的に示す説明図である。
【図14】本発明の第2の実施の形態を示す図で、耕耘作業前の畦付け機を示す側面図である。
【図15】本発明の第2実施の形態を示す図で、耕耘作業時の畦付け機を示す側面図である。
【図16】本発明の第3の実施例を示す図で、耕耘作業前の畦付け機を示す側面図である 。
【図17】本発明の第3の実施の形態を示す図で、畦切り装置を示す斜視図である。
【図18】本発明の第3の実施の形態を示す図で、畦切り装置を使用した畦切り作業の様子を示す背面図である。
【図19】本発明の第3の実施の形態を示す図で、畦切り装置を使用した畦切り作業の様子を示す平面図である。
【図20】本発明の第4の実施の形態を示す図で、耕耘作業前の畦付け機を示す側面図である。
【図21】本発明の第4の実施の形態を示す図で、土寄せ装置を示す斜視図である。
【図22】本発明の第4の実施の形態を示す図で、土寄せ装置を使用した土寄せ作業の様子を示す背面図である。
【図23】本発明の第5の実施の形態を示す図で、畦付け機を取り付けた耕耘機を示す側面図である。
【図24】本発明の第5の実施の形態を示す図で、畦付け機周辺を拡大して示す背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図1〜図13に示す第1の実施の形態と、図14、15に示す第2の実施の形態と、図16〜19に示す第3の実施の形態と、図20〜22に示す第4の実施の形態と、図23、24に示す第5の実施の形態と、を例にとって、本発明の畦付け機1の構成を説明する。
尚、以下の説明では、上記第1〜第4の実施の形態では、本発明の畦付け機1を装着する走行車両として比較的広い耕作地5に適用される図1に示すような農業用の乗用トラクター(以下、トラクターという)3を例にとり、上記第5の実施の形態では、本発明の畦付け機1を装着する走行車両として上記トラクター3が入れないような比較的狭い耕作地5に適用される図23に示すような農業用ないし園芸用に使用される手押し式の耕耘機4を例にとって説明している。
【0026】
また、以下の説明では、耕作地5に対して図10及び図11に示すような断面形状が台形の畦7を形成する場合について説明しており、本明細書中では、畦7の上面を畦天面7a、畦7の畦付け機1側の法面を畦法面7bと定義する。
また、本明細書中で使用する前後とは、走行車両の進行方向の前後であり、本明細書中で使用する左右とは、走行車両の車幅方向の左右である。また、本明細書で使用する上下とは、走行車両の車高方向の上下であり、水平とは、耕耘地5の地面5aと平行な向き、垂直とは、耕耘地5の地面5aと直交する向きである。
【0027】
(1)第1の実施の形態(図1〜図13参照)
最初に本実施の形態に係る畦付け機1Aを装着するトラクター3の構造の概略を図1及び図5に基づいて説明する。
このトラクター3は、前方にエンジン室9、後方に運転席11を備えた車体13と、前記エンジン室9の下部に設けられる左右一対の小径の前輪15、15と、前記運転席11の下部に設けられる左右一対の大径の後輪17、17と、図示しない油圧装置によって昇降動される牽引フレーム19と、前記エンジン室9から前記牽引フレーム19側にかけて延びるドライブシャフト21と、前記運転席11の上部に設けられる安全キャブ23とを具備する4輪駆動方式の農業用のトラクターである。
【0028】
そして、前記牽引フレーム19を利用して本実施の形態に係る畦付け機1Aが取り付けられており、前記ドライブシャフト21からの動力を受けて畦付け機1Aが作動するように構成されている。
即ち、この畦付け機1Aは、耕耘ロータリー31と、前面板33と、揺動板35と、叩き板37と、これらに動力を伝達する動力伝達機構39と、前記諸部材を一体に支持する可動フレーム41と、を具備することによって基本的に構成されており、前記可動フレーム41は、トラクター3の前記牽引フレーム19に対して回動軸43を中心にして所定角度の範囲で上下に回動し得るように連結されている。
また、前記耕耘ロータリー31と前面板33と揺動板35と叩き板37と動力伝達機構39とは、可動フレーム41に対して左右方向の取り付け位置が調節自在に設けられている。具体的には、前記諸部材に設けられた筒状取り付け部材42を可動フレーム41に外嵌めしてスライド自在に取り付けられる。そして、前記筒状取り付け部材42に設けられた2つのロックボルト44を利用して前記諸部材のトラクター3の後輪17に対する位置を決めて固定する。以上の構成により、前記諸部材の取り付け位置を後輪17外側に近づけることで畦7を厚く作れ、後輪17外側から離れることで薄く作れるようになる。
【0029】
また、前記動力伝達機構39は、図9に示すように前記ドライブシャフト21からの動力をユニバーサルジョイント25を介してベベルギヤユニット45の入力軸45aに伝達し、ベベルギヤユニット45の出力軸であり前記回動軸43と同軸となる駆動軸47の回転を後述するように適宜分配することで、前記耕耘ロータリー31と、揺動板35と、叩き板37とを同時に駆動できるように構成されている。
前記動力伝達機構39は回動軸43と同軸の駆動軸47を中心にして所定角度の範囲で上下に回動することにより、耕耘ロータリー31と、前面板33と、揺動板35と、叩き板37と、これらに動力を伝達する動力伝達機構39を一体に支持する可動フレーム41を回動させ、動力の伝達が可能となる。
また、本実施の形態では図5に示すように、畦付け機1Aは、トラクター3の後部右端側に配置されており、図10に示すようにトラクター3の進行方向右側の後輪17の後部外方に畦7が形成されるように構成されている。
【0030】
そして、本実施の形態では、前記可動フレーム41に対する耕耘ロータリー31と、前面板33と、揺動板35と、叩き板37の取付け角度が、図3に示す耕耘作業時において前面板33の下縁が垂直姿勢から所定の傾斜角度θ分、耕耘ロータリー31側に接近した後傾姿勢になるように設定されている。
【0031】
前記前面板33の後傾角度θは、例えば5°〜10°程度の範囲で設定されており、本実施の形態では前記後傾角度θを一例として7°に設定している。
尚、前面板33の後傾角度θをこのような角度に設定することにより、前記耕耘によって跳ね上げられた耕耘土Gが前面板33と揺動板35と叩き板37により持ち上げられながら上部に溜められた状態でより後側に持っていく力が出る。つまり、耕耘土Gの落下位置が前面板33より後ろ側に移行し、畦付け機1Aの進行により側部外方Bに回り込むようになる。また、耕耘ロータリー31に詰まる耕耘土Gは少なくなるので畦付け機1Aの進行はスムーズになる。
そして、耕耘土Gが側部外方Bに回り込むことにより豊富に揺動板35や叩き板37側に供給されることによって、畦法面7bを成形する揺動板35や成形された畦法面7bの表面を押し固める叩き板37の効果が一層向上し、その結果、良好な畦法面7bの成形と固着力の向上とが図られる。
【0032】
次に、畦付け機1Aの具体的構造を図1〜図13に基づいて説明する。
耕耘ロータリー31は、トラクター3の車幅方向に水平に架け渡されている一例として6角形断面の耕耘軸49と、該耕耘軸49に対して放射状に等間隔で一例として3枚ずつ取り付けられ、軸方向で位相を半ピッチずらして複数組取り付けられているナタ刃状の耕耘爪51と、を具備する回転体である。そして、前記複数の耕耘爪51は、すべて先端の湾曲した刃先51aが側部外方Bに向くように配設されており、該耕耘爪51によって掘削された耕作地5の耕耘土Gは、そのほとんどが、側部外方Bに跳ね上げられて畦7の成形に利用される盛り土Aを形成するように構成されている。
【0033】
前面板33は、前記耕耘ロータリー31によって跳ね上げられた耕耘土Gの後方への移動を規制して側部外方Bに導くように案内する板状の部材である。
【0034】
揺動板35は、前記耕耘ロータリー31によって形成された盛り土Aの表面に作用して畦天面7aと畦法面7bとを同時に成形する屈曲した板状の部材である。
具体的には、図8に示すように前記前面板33側に面した規制平板部53と、該規制平板部53の外側端縁から外方に向けて斜めに延びている案内作用部55と、該案内作用部55の外側端縁から後方に向けて延びており、実質的に畦法面7bの成形に使用される側板部57と、該側板部57の後端縁を内側に折り曲げ、下方に揺動支点63を備えた折曲げ部65と、を具備することによって揺動板35は基本的に構成されている。
【0035】
また、本実施の形態では、揺動板35の表面への耕耘土Gの付着を防止する合成ゴム製あるいは合成樹脂製の防護シート59が揺動板35の表面を被覆するように取り付けられており、同様の防護シート59が前記側板部57の上部において外方に張り出すように設けられ、実質的に畦天面7aの成形に使用される天板部61の下面にも取り付けられている。
【0036】
叩き板37は、前記揺動板35によって成形された畦天面7aと畦法面7bの表面を叩いて押し固める板状の部材である。
具体的には、斜め上方に向って延びる回動軸67に外嵌して、所定の角度の範囲で内方と外方とに回動する支持基板69と、該支持基板69の表面側に取り付けられ、前記揺動板35によって成形された畦法面7bを叩いて、実質的に押し固め作用を実行する法面叩打板71と、ブラケット73を介して前記法面叩打板71の表面側に水平に取り付けられ、前記揺動板35によって成形された畦天面7aを叩いて、実質的に押し固め作用を実行する天面叩打板75と、を具備することによって叩き板37は基本的に構成されている。
【0037】
尚、前記支持基板69とブラケット73は金属製で、前記法面叩打板71と天面叩打板75は合成樹脂製で、畦天面7aや畦法面7bを叩いた時、最適なしなりを有する一例としてウレタン樹脂が使用できる。
また、前記回動軸67の中間部には、後述する叩打変換機構77の構成部材である上方のコネクティングロッド79と回転自在に接続される上部押圧体83と、下方のコネクティングロッド81と回転自在に接続される下部押圧体85と、が回動自在に接続されており、前記支持基板69の裏面側には、前記上部押圧体83に当接する一例としてウレタンゴム製で円柱形状の上部受圧体87と、前記下部押圧体85に当接する同じく一例としてウレタンゴム製で円柱形状の下部受圧体89と、が設けられている。
【0038】
また、前記筒状取り付け部材42の下方には、本実施の形態に係る畦付け機1Aを支持する支持フレーム66が側部外方Bに延びるように延長形成されており、該支持フレーム66と前記支持基板69との間には、適宜のブラケットを介して図6〜図8に示すように前記支持基板69を内方に向けて付勢する一例として引張りコイルバネによって構成される付勢バネ68が張設されている。
【0039】
動力伝達機構39は、走行車両のドライブシャフト21からの動力を3つのチェーン駆動伝達手段91、95、97とクランク軸99とを介して昇降ロッド103の昇降動作に変換する昇降動作変換機構100を備えている。
昇降動作変換機構100は、走行車両のドライブシャフト21から動力を得て回転する駆動軸47と、第1チェーン駆動伝達手段91を介して前記駆動軸47の回転が伝達される中間軸93と、第2チェーン駆動伝達手段95を介して前記中間軸93の回転が分配されて上述した耕耘ロータリー31の構成部材でもある耕耘軸49と、第3チェーン駆動伝達手段97を介して前記中間軸93の回転が分配されて伝達されるクランク軸99と、を備えることによって構成されている。
【0040】
また、動力伝達機構39には、前記クランク軸99に接続される昇降ロッド103の昇降動作を前記揺動板35の揺動動作に変換する揺動変換機構101と、リンク機構122を介して前記昇降ロッド103の昇降動作を、前記リンク機構122の最終出力端に取り付けられている上記押圧体83と下部押圧体85の叩打動作に変換して前記叩き板37背面の上部受圧体87と下部受圧体89を介して前記回動軸67を中心とする叩き板37の回動動作に変換する叩打変換機構77と、が備えられている。
尚、前記動力伝達機構39では、一例として6角形断面の駆動軸47に対して第1チェーン駆動伝達手段91を軸方向に移動可能且つ駆動軸47の回転を伝達可能に構成されている。これにより、前記耕耘ロータリー31と前面板33と揺動板35と叩き板37と動力伝達機構39とを可動フレーム41に対して左右方向に移動して任意の位置に固定した場合にも、駆動力の伝達が可能になっている。
【0041】
揺動変換機構101は、前記昇降ロッド103の下端に対して回転自在に一端が接続されている第1リンク105と、該第1リンク105の他端に対して一端が回転自在に接続され、中間部に設けられる回動支点107を中心にして所定の角度回動する第2リンク109と、該第2リンク109の他端に対して一端が回転自在に接続され、他端が前記揺動板35の折曲げ部65の上部に対して回転自在に接続されているコネクティングロッド111とを具備することによって構成されている。
【0042】
したがって、図6に示すように昇降ロッド103が下限位置に位置している時には、第2リンク109が反時計方向に回動するため、揺動板35は下方の揺動支点63を中心にして揺動板35の上部が内側に移動して畦天面7a及び畦法面7bから離反した状態の退避姿勢になる。
一方、図7に示すように昇降ロッド103が上限位置に位置している時には、第2リンク109が時計方向に回動するため、揺動板35は下方の揺動支点63を中心にして揺動板35の上部が外側に移動して畦天面7a及び畦法面7bに当接した状態の成形姿勢になる。
【0043】
叩打変換機構77は、前記昇降ロッド103の下端に対して回転自在に一端が接続されている第3リンク113と、該第3リンク113の他端に対して一端が回転自在に接続され、中間部に設けられる回動支点115を中心にして所定の角度回動する第4リンク117と、前記回動支点115を挟んで同一直線上の対向する位置に存する2つの出力端119、121のうち上方の上部出力端119に対して一端が回動自在に接続され、他端が前記上部押圧体83に対して回転自在に接続されている上述したコネクティングロッド79と、下方の下部出力端121に対して一端が回転自在に接続され、他端が前記下部押圧体85に対して回転自在に接続されている上述したコネクティングロッド81と、を具備することによって構成されている。
【0044】
また、前記第4リンク117と、2本のコネクティングロッド79、81によって増速リンク機構123が構成されており、前記昇降ロッド103の1行程の昇降動作の間に前記叩き板37の叩打動作を2回実行するように構成されている。
具体的には、図6に示すように昇降ロッド103が下限位置に位置している時には、第4リンク117が時計方向に回動して上方のコネクティングロッド79を叩き板37側に移動させ、上部押圧体83を上部受圧体87に当接させて叩き板37を畦7側に回動させることで叩打動作を1回実行する。
【0045】
一方、図7に示すように昇降ロッド103が上限位置に位置している時には、第4リンク117が反時計方向に回動して下方のコネクティングロッド81を叩き板37側に移動させ、下部押圧体85を下部受圧体89に当接させて叩き板37を畦7側に回動させることで叩打動作を更に1回実行する。
尚、叩き板37における支持基板69は前述したように付勢バネ68によって常時内側に回動するように付勢されており、前記上部押圧体83が上部受圧体87に当接し、叩き板37を外側に押し込んだ時と、前記下部押圧体85が下部受圧体89に当接し、叩き板37を外側に押し込んだ時の2つの位置に来た時に外側に回動して叩打動作を実行するように構成されている。
【0046】
したがって、前記揺動板35の1回の揺動動作の間に前記叩き板37は2回の叩打動作を実行するように構成されており、例えば揺動板35が1分間に100回の揺動動作を行うように設定してある場合には、叩き板37はその倍の1分間に200回の叩打動作を実行する。
【0047】
本実施の形態による畦付け機1Aには、この他、前記可動フレーム41の自由端とトラクター3の牽引フレーム19との間に、可動フレーム41の回動角度を調整する角度調整機構125Aが設けられている。この角度調整機構125Aは、前記耕耘ロータリー31と前面板33と揺動板35と叩き板37と動力伝達機構39の地面5aからの深さに応じてこれを操作することによって、前記可動フレーム41の耕耘作業時における角度出しを実行するものである。まず、耕耘ロータリー31と前面板33と揺動板35と叩き板37と動力伝達機構39とは予め水平状態に支持した可動フレーム41に対して所定の後傾角度θ分、後傾姿勢になるように取り付けられている。
【0048】
前記角度調整機構125Aは、図4に示すように雄ねじ部127とこれに螺合する雌ねじ部129からなる伸縮機構131と、雄ねじ部127の一端に取り付けられた角度調整ハンドル133と、前記可動フレーム41の自由端に設置された水平器135と、から構成されている。そして、前記水平器135に基づいて前記角度調整ハンドル133を操作することによって、前記可動フレーム41の耕耘作業時における水平位置の位置出しが実行できるようになっている。具体的には、図2に示す耕耘ロータリー31と前面板33と揺動板35と叩き板37と動力伝達機構39を上昇させた状態から、畦7の高さに応じて前記耕耘ロータリー31と前面板33と揺動板35と叩き板37と動力伝達機構39を地面5aから所定の深さに下降させるものであり、この時、図3に示すように前記水平器135に基づいて、角度調整ハンドル133を操作して前記可動フレーム41の水平位置の位置出しを実行する。これにより、可動フレーム41に対する前記耕耘ロータリー31と前面板33と揺動板35と叩き板37と動力伝達機構39の取付け角度は、自動的に耕耘作業時において耕耘ロータリー31と前面板33と揺動板35と叩き板37の下縁が所定の後傾角度θ分、前方に突出した後傾姿勢になる。
【0049】
更に、本実施の形態に係る畦付け機1Aには、本発明の特徴的構成である叩き板撓み規制機構141が備えられている。この叩き板撓み規制機構141は、前記叩き板37の先端部38背面に当接することで前記叩き板37先端部38の撓み量を制限するストッパ143を備えた機構である。
そして、前記叩き板37の先端部38背面が前記ストッパ143に当接することによって畦法面7bに対する前記叩き板37先端部38の浮きを小さくするように構成されている。従って、モータ等の他の動力を使用することなく前記叩き板37先端部38の撓み量を制限している。
【0050】
具体的には、前記回動軸67を中心に回動する角棒状の回動アーム145と、該回転アーム145の先端部に取付けバー147を介して取り付けられる一例として3つのストッパ143と、前記回動アーム145の中間部に設けられ、前記上部押圧体83または下部押圧体85に当接することによって前記回動アーム145の畦法面7bから離間する内方への回動を規制する当接バー149と、を備えることによって前記叩き板撓み規制機構141は構成されている。
【0051】
尚、前記3つのストッパ143は、ボルト・ナット151の締め付け具合を調整することによってストッパ143の突出量を調整できるように構成されており、ストッパ143の突出量を調整することによって当該ストッパ143の動作開始タイミングを早くしたり、遅くしたりすることができるように構成されている。
そして、離間状態の上部押圧体83ないし下部押圧体85が、上部受圧体87ないし下部受圧体89に向けて接近し、図13(a)に示すように上部押圧体83が上部受圧体87に、あるいは下部押圧体85が下部受圧体89に当接した状態になると、前記叩き板37は、畦法面7bへの押込み動作を開始する。
【0052】
尚、前記叩き板37の押込み動作の開始直後は、前記上部押圧体83ないし下部押圧体85と前記当接バー149との間には所定厚さの空隙部Sが形成されており、当該押込み動作の進行に伴なって上記空隙部Sは徐々に小さくなって行く。
そして、この状態では図13(b)に示すように叩き板37の先端部38が畦法面7bに当接して畦法面7bを押し固めており、叩き板37の先端部38は撓み変形して、そのしなりによって畦法面7bに強く密着した状態になっている。
【0053】
また、前記上部押圧体83ないし下部押圧体85による押込み動作が更に進むと、前記空隙部Sは0になり、前記上部押圧体83ないし下部押圧体85が図13(c)に示すように前記当接バー149に当接した状態になる。
そして、この状態になると、前記回動アーム145の回動軸67を中心とした回動ができなくなって、前記叩き板37の先端部38が内方に撓もうとしてもストッパ143に当接してそれ以上の撓み変形は規制されるようになる。これにより、叩き板先端部の過剰な撓み変形を防止して叩き板の押し固め不足を回避するように作用する。
【0054】
次に、このようにして構成される本実施の形態による畦付け機1Aの作動態様を畦付けの作業手順にしたがって説明する。
最初に、トラクター3を耕作地5における畦付けを行う作業場所に移動させ、図示しない油圧装置を駆動して牽引フレーム19を下方に降ろして行き、耕耘ロータリー31の耕耘深さを調整する。次に、水平器135を見ながら角度調整ハンドル133を操作して可動フレーム41の水平位置の位置出しを行う。
そして、前記可動フレーム41の水平位置の位置出しを行うことで前面板33の耕耘作業時における後傾角度θの設定も同時に実行される。
【0055】
以上で畦付け作業を行う準備が完了し、ドライブシャフト21に動力を伝えてトラクター3を前方に走行させることで畦付け作業を開始する。耕耘ロータリー31の回転に伴って耕作地5の地面5aが所定の深さ掘り起こされ、掘り起こされた耕耘土Gは側部外方Bに向けて跳ね上げられ、図11(a)に示すように盛り土Aを形成する。
尚、耕耘ロータリー31によって跳ね上げられた耕耘土Gが前面板33と揺動板35と叩き板37により持ち上げられながら上部に溜められた状態でより後側に持っていく力が出る。つまり、耕耘土Gの落下位置が前面板33より後ろ側に移行し、畦付け機1Aの進行により側部外方Bに回り込むようになる。また、耕耘ロータリー31に詰まる耕耘土Gは少なくなるので畦付け機1Aの進行はスムーズになる。そして、耕耘土Gが側部外方Bに回り込むことにより揺動板35の規制平板部53や案内作用部55に案内されて前記盛り土A上に供給される。
【0056】
前記形成された盛り土Aに対しては、図11(b)に示すように揺動支点63を中心に揺動運動する揺動板35の側板部57と天板部61がその表面に当接して畦法面7bと畦天面7aを成形する。
更に、成形された畦法面7bと畦天面7aには、図11(c)に示すように回動軸67を中心にして外方に向けて回動する法面叩打板71と天面叩打板75が前記揺動板35の2倍の回数作用して畦法面7bと畦天面7aを押し固めて行く。
以下、前記作動態様を繰り返しながら、順次畦7が形成されて行く。
【0057】
(2)第2の実施の形態(図14、図15参照)
第2の実施の形態に係る畦付け機1Bは、基本的には前記第1の実施の形態に係る畦付け機1Aと同様の構成を有しており、角度調整機構125Bの構成が前記第1の実施の形態の角度調整機構125Aの構成と幾分、相違している。
従って、ここでは前記第1の実施の形態と相違する角度調整機構125Bの構成とその調整手順を中心にして説明する。
【0058】
即ち、本実施の形態の角度調整機構125Bは、図4に示す雄ねじ部127とこれに螺合する雌ねじ部129を備えた伸縮機構131と、該雄ねじ部127の一端に取り付けられた角度調整ハンドル133に加えて、前記伸縮機構131の雌ねじ部129が内面に形成された内筒130と、該内筒130に外嵌する外筒132との間に設けられている目盛り137と指針139と、を備えることによって構成されている。
具体的には、図14に示す耕耘ロータリー31と前面板33と揺動板35と叩き板37と動力伝達機構39とを上昇させた状態から、設定される畦7の高さに応じて牽引フレーム19を下方に降ろして行き、前記耕耘ロータリー31と前面板33と揺動板35と叩き板37と動力伝達機構39とを地面5aから所定の深さまで下降される。
【0059】
この時、図15に示すように前記目盛り137と指針139に基づいて、角度調整ハンドル133を所定の方向に回して前記可動フレーム41の角度を所定の角度に設定することで角度調整を実行する。
そして、このような構成の本実施の形態に係る畦付け機1Bによっても前記第1の実施の形態と同様の作用、効果が発揮され、更に前記目盛り137と指針139に基づいて後傾角度θの調整ができるから当該角度調整が容易且つ正確になる。
【0060】
(3)第3の実施の形態(図16〜図19参照)
第3の実施の形態に係る畦付け機1Cは、基本的には前記第1の実施の形態に係る畦付け機1Aと同様の構成を有しており、畦切り装置153を可動フレーム41に対して取り付けた点で前記第1の実施の形態と相違している。
従って、ここでは前記第1の実施の形態と相違する畦付け機153の構成を中心に説明する。
【0061】
即ち、この畦切り装置153は、図18に示すように、畦付けする前の古い畦7の内側上部のコーナ部7cに直接作用して当該コーナ部7cを削る図17に示すような円板状の畦切りディスク155と、該畦切りディスク155を保持する垂直ガイドロッド157と、該垂直ガイドロッド157に外嵌するロッドホルダ158を先端に備えた水平ガイドロッド159と、該水平ガイドロッド159に外嵌する前記可動フレーム41に対して取り付けられるロッドホルダ160と、前記畦切りディスク155の取り付けと、垂直ガイドロッド157及び水平ガイドロッド159のロッドホルダ158、160に対する取り付けに使用されるボルト・ナット161とを具備することによって構成されている。
【0062】
また、前記畦切りディスク155は、耕耘ロータリー31の前方斜め上方の位置に取り付けられており、図19に示すように10°程度前開き傾斜で取り付けられている。また、畦切りディスク155の直径は、一例として170mm程度に設定されている。
そして、このような構成の本実施の形態に係る畦付け機1Cによっても前記第1の実施の形態と同様の作用、効果が発揮され、更に前記コーナー部7cの切除によって、古い畦7の余分な部分が取り除かれ、また、古い畦7に生えている雑草等が取り除かれるため、耕耘後の畦付けがより円滑にきれいに実行されるようになる。
【0063】
(4)第4の実施の形態(図20〜図22参照)
第4の実施の形態に係る畦付け機1Dは、基本的には前記第3の実施の形態に係る畦付け機1Cと同様の構成を有しており、前記畦切り装置153に加えて、または単独で土寄せ装置163を可動フレーム41に対して取り付けた点で前記第3の実施の形態と相違している。
従って、ここでは前記第3の実施の形態と相違する土寄せ装置163の構成を中心に説明する。
【0064】
即ち、該土寄せ装置163は、図22に示すように一例として畦天面7aに接する位置に設けられて耕耘土Gの側部外方Bへの飛び出しを防止する図21に示すような円板状の土寄せディスク165と、該土寄せディスク165を保持する垂直ガイドロッド167と、該垂直ガイドロッド167に外嵌するロッドホルダ168を先端に備えた水平ガイドロッド169と、該水平ガイドロッド169に外嵌する前記可動フレーム41に対して取り付けられるロッドホルダ170と、前記土寄せディスク165の取り付けと、垂直ガイドロッド167及び水平ガイドロッド169のロッドホルダ168、170に対する取り付けに使用されるボルト・ナット171とを具備することによって構成されている。
【0065】
また、前記土寄せディスク165は、耕耘ロータリー31の幾分後方の斜め上方の位置に取り付けられており、図22に示すように内方を向いた垂直姿勢で設けられている。また、土寄せディスク165の直径は、一例として前記畦切りディスク155と同じ170mm程度に設定されている。
そして、このような構成の本実施の形態に係る畦付け機1Dによっても前記第3の実施の形態と同様の作用、効果が発揮され、更に耕耘されて跳ね上げられた耕耘土Gの側部外方Bへの飛び出しを防止でき、土寄せディスク165の幅方向と高さ方向の位置調整によって、土量の調節が可能になり、種々の高さの畦7に対応できるようになる。また、耕耘土Gの側部外方Bへの過剰な飛び出しを防止し、畦の外方に土の盛り上がった部分ができるのを防止することができる。
【0066】
(5)第5の実施の形態(図23、図24参照)
第5の実施の形態に係る畦付け機1Eは、基本的には前記第1の実施の形態に係る畦付け機1Aと同様の構成を有しており、叩き板撓み規制機構141Eの構成の一部を変更した点と、走行車両として小回りの利く、手押し式の耕耘機4を適用した点で相違する。
従って、ここでは前記第1の実施の形態と相違する叩き板撓み規制機構141Eの構成と耕耘機4の概略の構成を中心に説明する。
【0067】
最初に、耕耘機4の概略の構成について説明する。この耕耘機4は、前方に耕耘ローターリー31,後方に各種の操作レバーが取り付けられているハンドル12、中間にエンジン10を設けている。
また、前記耕耘ロータリー31の前方には、左右一対の小径の前輪15、15、耕耘ロータリー31の上部には泥除けガード14、前記ハンドル12の基部に左右一対の大径の後輪17、17がそれぞれ設けられている。
【0068】
そして、前記エンジン10の下部と前記右側の後輪17の側部外方Bの空間を利用して本実施の形態に係る畦付け機1Eが設けられている。
この畦付け機1Eは、前記第1の実施の形態に係る畦付け機1Aと概略において同様の構成を有しており、前記実施の形態と違うところは、天面叩打板75を有しない点(取り付けることも可能)と、叩き板37の厚さを薄くして該叩き板37の先端部38背面に角棒状の補強部材173を配置した点と、叩き板撓み規制機構141Eの取付けバー147を排して回動アーム145の先端部38に直接、ストッパ143を取り付けた点である。
【0069】
そして、このような構成の本実施の形態に係る畦付け機1Eによっても前記第1の実施の形態と同様の作用、効果が発揮される。
更に、本実施の形態の場合には、走行車両として耕耘機4を採用しているから、山間地等の狭い耕作地5でも畦付けを行うことができるようになり、補強部材173の採用によって厚さが薄く剛性の低い叩き板37を使用している場合であっても、該叩き板37を変形させたり破損させることなく、所望の畦付けを実行できるようになる。
【0070】
尚、本発明の畦付け機1は、前記第1〜第5の実施の形態のものに限定されず、その発明の要旨内での設計変更が可能である。例えば、本発明の畦付け機1は、乗用式の農作業トラクター3や耕耘機4に限らずその他の構造の走行車両に取り付けることが可能であるし、畦付け機1自体に走行機能を付加した専用機とすることも可能である。
また、本発明の畦付け機1を使用する耕作地5の土壌は、湿っていても乾いていてもよく、砂地や粘土質等、種々の性状の耕作地5に適用可能である。
【0071】
また、本実施の形態の畦付け機1は、前記前面板と揺動板と叩き板の取付け角度を耕耘作業を行っている耕耘姿勢において前記前面板と揺動板と叩き板の下縁が所定の後傾角度分、前方に突出した後傾姿勢になるように設定されているものを示したが、必ずしもこのような構成のものに限られるものではなく、耕耘ロータリー直後に耕耘によって跳ね上げられた耕耘土の後方への移動を規制する前面板と振動板と叩き板とが耕耘姿勢において垂直姿勢で設けられているなど他の構成とすることも可能である。
【0072】
また、角度調整機構125における牽引フレーム19の下降度により耕耘ロータリー31と前面板33と揺動板35と叩き板37と動力伝達機構39の取り付け角度を設定する手段としては、目視により角度調整ハンドル133の回転量で設定する方式とすることも可能であるし、可動フレーム41の先端に水平に対する角度表示器を取り付け、牽引フレーム19の下降度が異なる場合でもこの表示角度を所定の後傾角度θになるように角度調整ハンドル133で設定する構成とする等種々の方式を採用することも可能である。
また、前記角度調整機構125は、角度調整ハンドル133で操作する構成に代えて、モータにより回転駆動方式を採用することも可能である。
【0073】
また、動力伝達機構39において、駆動軸47、中間軸93、耕耘軸49及びクランク軸99間の動力伝達に使用されていた第1〜第3のチェーン駆動伝達手段91、95、97に代えてギヤ輪列等、他の駆動伝達手段を適用することも可能である。
また、揺動板35は、下方の揺動支点63を中心にして揺動板35の上部が揺動する構成のものを一例として説明したがこれに限られるものではなく、上部や中間部を揺動支点とした揺動機構を適用することも可能である。
【0074】
この他、叩打変換機構77において設けられる増速リンク機構123におけるコネクティングロッド79、81を増設したり、リンク機構に代わる別途の増速機構を採用することで叩き板37の叩打回数を増やすことが可能であり、揺動板35の揺動動作と同じ速度で構わない場合には、増速リンク機構123を省略し、1行程で1回の叩打動作を実行する通常のリンク機構122を採用することが可能である。尚、この場合には単一のコネクティングロッド79ないし81と、単一の押圧板83ないし85と、単一の受圧板87ないし89によって第4リンク117と支持基板69間の動力伝達を図るようにすることも可能である。
また、畦天面7aの成形と固着が必要のない場合には、揺動板35に設けた天板部61と叩き板37に設けた天面叩打板75を省略することが可能である。
【0075】
更に、揺動板35を駆動する駆動系統は、叩き板37を駆動する駆動系統と同じであっても別々であっても構わないし、前記叩き板撓み規制機構141のストッパ143の数を増減したり、ストッパ143の取付け位置を支持フレーム66等、固定状態ないし可動状態で設けられる他の部位に変更することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の畦付け機は、田、畑等の耕作地の地面に畦付けを行う作業現場等において利用でき、特に円滑で良好、そして固着力の強い畦付けを行いたい場合に利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0077】
1 畦付け機
3 トラクター(走行車両)
4 耕耘機(走行車両)
5 耕作地
5a 地面
7 畦
7a 畦天面
7b 畦法面
7c コーナ部
9 エンジン室
10 エンジン
11 運転席
12 ハンドル
13 車体
14 泥除けガード
15 前輪
17 後輪
19 牽引フレーム
21 ドライブシャフト
23 安全キャブ
25 ユニバーサルジョイント
31 耕耘ロータリー
33 前面板
35 揺動板
37 叩き板
38 先端部
39 動力伝達機構
41 可動フレーム
42 筒状取り付け部材
43 回動軸
44 ロックボルト
45 ベベルギヤユニット
45a 入力軸
47 駆動軸
49 耕耘軸
51 耕耘爪
51a 刃先
53 規制平板部
55 案内作用部
57 側板部
59 防護シート
61 天板部
63 揺動支点
65 折曲げ部
66 支持フレーム
67 回動軸
68 付勢バネ
69 支持基板
71 法面叩打板
73 ブラケット
75 天面叩打板
77 叩打変換機構
79 コネクティングロッド
81 コネクティングロッド
83 上部押圧体
85 下部押圧体
87 上部受圧体
89 下部受圧体
91 第1チェーン駆動伝達手段
93 中間軸
95 第2チェーン駆動伝達手段
97 第3チェーン駆動伝達手段
99 クランク軸
100 昇降動作変換機構
101 揺動変換機構
103 昇降ロッド
105 第1リンク
107 回動支点
109 第2リンク
111 コネクティングロッド
113 第3リンク
115 回動支点
117 第4リンク
119 上部出力端
121 下部出力端
122 リンク機構
123 増速リンク機構
125 角度調整機構
127 雄ねじ部
129 雌ねじ部
130 内筒
131 伸縮機構
132 外筒
133 角度調整ハンドル
135 水平器
137 目盛
139 指針
141 叩き板撓み規制機構
143 ストッパ
145 回動アーム
147 取付けバー
149 当接バー
151 ボルト・ナット
153 畦切り装置
155 畦切りディスク
157 垂直ガイドロッド
158 ロッドホルダ
159 水平ガイドロッド
160 ロッドホルダ
161 ボルト・ナット
163 土寄せ装置
165 土寄せディスク
167 垂直ガイドロッド
168 ロッドホルダ
169 水平ガイドロッド
170 ロッドホルダ
171 ボルト・ナット
173 補強部材
G 耕耘土
A 盛り土
B 側部外方
θ 後傾角度
S 空隙部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耕作地の地面を掘削し、側部外方に掘削した耕耘土を跳ね上げて盛り土を形成する耕耘爪を備えた耕耘ロータリーと、
前記耕耘ロータリーによって跳ね上げられた耕耘土の後方への移動を規制して側部外方に導くように案内する前面板と、
前記耕耘ロータリーによって形成された盛り土の表面を押圧して畦法面を成形する揺動板と、
前記揺動板によって成形された畦法面の表面を叩いて押し固める撓み変形が可能な叩き板と、
走行車両のドライブシャフトから動力を得て前記耕耘ロータリーと揺動板と叩き板とを駆動する動力伝達機構と、
前記叩き板の先端部背面に当接することで前記叩き板先端部の撓み量を制限するストッパを備えた叩き板撓み規制機構と、を具備し、
前記叩き板の先端部背面が前記ストッパに当接することによって畦法面に対する前記叩き板先端部の浮きを小さくするようにしたことを特徴とする畦付け機。
【請求項2】
前記動力伝達機構は、走行車両のドライブシャフトからの動力をチェーン駆動伝達手段とクランク軸とを介して昇降ロッドの昇降動作に変換する昇降動作変換機構と、
リンク機構を介して前記昇降ロッドの昇降動作を、前記リンク機構の最終出力端に取り付けられている押圧体の叩打動作に変換して前記叩き板背面の受圧体を介して前記叩き板の回動軸を中心とする回動動作に変換する叩打変換機構と、を備えていることを特徴とする請求項1記載の畦付け機。
【請求項3】
前記叩き板撓み規制機構は、前記回動軸を中心に回動する回動アームと、
前記回動アームの先端部に取り付けられる前記ストッパと、
前記回動アームの中間部に設けられ、前記押圧体に当接することによって前記回動アームが畦法面から離間する内方への回動を規制する当接バーと、を備えており、
前記押圧体が前記受圧体に当接し、前記叩き板に畦法面への押込み動作を開始した直後は、前記押圧体と前記当接バーとの間に空隙部が形成されており、当該押込み動作が進んで前記押圧体が前記当接バーに当接した時点で、前記叩き板先端部の撓みを規制するようにしたことを特徴とする請求項2記載の畦付け機。
【請求項4】
前記ストッパの突出量は、調整可能に構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の畦付け機。
【請求項5】
前記ストッパは、複数個、設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の畦付け機。
【請求項6】
前記ストッパが当接する前記叩き板の背面には、補強部材が設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の畦付け機。
【請求項7】
前記叩打変換機構は、前記昇降ロッドの1行程の昇降動作の間に前記叩き板の叩打動作を複数回実行する増速リンク機構を備えていることを特徴とする請求項2〜6のいずれか1項に記載の畦付け機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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