異常な細胞増殖の治療用のピリミジン誘導体
【課題】異常な細胞増殖の治療用のピリミジン誘導体を提供する。
【解決手段】本発明は、N−[3−[[[2−[(2,3−ジヒドロ−2−オキソ−1H−インドール−5−イル)アミノ]−5−(トリフルオロメチル)−4−ピリミジニル]アミノ]メチル]−2−ピリジニル]−N−メチルメタンスルホンアミドの塩、溶媒和物および準化学量論的溶媒和物に関する。本発明はまた、そのような複合体を含む医薬組成物、および本発明の複合体を投与することにより異常な細胞増殖を治療する方法を提供する。
【解決手段】本発明は、N−[3−[[[2−[(2,3−ジヒドロ−2−オキソ−1H−インドール−5−イル)アミノ]−5−(トリフルオロメチル)−4−ピリミジニル]アミノ]メチル]−2−ピリジニル]−N−メチルメタンスルホンアミドの塩、溶媒和物および準化学量論的溶媒和物に関する。本発明はまた、そのような複合体を含む医薬組成物、および本発明の複合体を投与することにより異常な細胞増殖を治療する方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、哺乳動物の癌などの異常な細胞増殖の治療に有用な、新規のピリミジン誘導体の塩、溶媒和物および準化学量論的溶媒和物に関する。より詳細には、本発明は、哺乳動物、特にヒトの異常な細胞増殖の治療に有用な2,4−ジアミノ置換ピリミジンのベシレート、メシレート、トシレートおよび塩酸塩、ならびにそのような複合体を含む医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、式Iを有するN−[3−[[[2−[(2,3−ジヒドロ−2−オキソ−1H−インドール−5−イル)アミノ]−5−(トリフルオロメチル)−4−ピリミジニル]アミノ]メチル]−2−ピリジニル]−N−メチルメタンスルホンアミドの複合体に関する。
【0003】
【化1】
【0004】
非晶質遊離塩基の形態の式Iは、2005年5月12日に出願された同時係属の米国特許出願第11/127,809号に記載されており、その開示内容の全体が参照により本明細書に組み込まれる。上記出願は本願と同一出願人による。式Iの非晶質遊離塩基は、癌などの過剰増殖性疾患の治療に有用である。
本発明は、式Iの塩および溶媒和物、より詳細には式Iのベシレート、メシレート、トシレートおよび塩酸塩、ならびに式Iのこれらの各種形態(本明細書では式Iの複合体と呼ぶ)を含む医薬組成物の製造方法に関する。本発明の複合体は、哺乳動物、特にヒトの癌などの過剰増殖性疾患の治療に有用である。本発明はまた、式Iの複合体を投与して過剰増殖性疾患を治療する方法に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願第11/127,809号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、本発明はN−[3−[[[2−[(2,3−ジヒドロ−2−オキソ−1H−インドール−5−イル)アミノ]−5−(トリフルオロメチル)−4−ピリミジニル]アミノ]メチル]−2−ピリジニル]−N−メチルメタンスルホンアミドの各種複合体を提供する。
【0007】
一態様では、本発明はN−[3−[[[2−[(2,3−ジヒドロ−2−オキソ−1H−インドール−5−イル)アミノ]−5−(トリフルオロメチル)−4−ピリミジニル]アミノ]メチル]−2−ピリジニル]−N−メチルメタンスルホンアミドの薬学的に許容できる塩に関する。特に、本発明はN−[3−[[[2−[(2,3−ジヒドロ−2−オキソ−1H−インドール−5−イル)アミノ]−5−(トリフルオロメチル)−4−ピリミジニル]アミノ]メチル]−2−ピリジニル]−N−メチルメタンスルホンアミドのベシレート塩;N−[3−[[[2−[(2,3−ジヒドロ−2−オキソ−1H−インドール−5−イル)アミノ]−5−(トリフルオロメチル)−4−ピリミジニル]アミノ]メチル]−2−ピリジニル]−N−メチルメタンスルホンアミドのメシレート塩;N−[3−[[[2−[(2,3−ジヒドロ−2−オキソ−1H−インドール−5−イル)アミノ]−5−(トリフルオロメチル)−4−ピリミジニル]アミノ]メチル]−2−ピリジニル]−N−メチルメタンスルホンアミドのトシレート塩;およびN−[3−[[[2−[(2,3−ジヒドロ−2−オキソ−1H−インドール−5−イル)アミノ]−5−(トリフルオロメチル)−4−ピリミジニル]アミノ]メチル]−2−ピリジニル]−N−メチルメタンスルホンアミドの塩酸塩を提供する。
【0008】
本発明の一態様では、N−[3−[[[2−[(2,3−ジヒドロ−2−オキソ−1H−インドール−5−イル)アミノ]−5−(トリフルオロメチル)−4−ピリミジニル]アミノ]メチル]−2−ピリジニル]−N−メチルメタンスルホンアミドの各種の塩は準化学量論的溶媒和物である。例えば、準化学量論的溶媒和物はエタノールを含んでいてもよい。
【0009】
さらなる態様では、本発明は、図1E、2B、3Bおよび4Dに示すX線粉末回折スペクトルと実質的に同一のX線粉末回折スペクトルを示す複合体を提供する。
本発明はまた、N−[3−[[[2−[(2,3−ジヒドロ−2−オキソ−1H−インドール−5−イル)アミノ]−5−(トリフルオロメチル)−4−ピリミジニル]アミノ]メチル]−2−ピリジニル]−N−メチルメタンスルホンアミドの準化学量論的溶媒和物を提供する。一態様では、溶媒和物は水、アルコール、極性有機溶媒およびそれらの組み合わせからなる群から選択される溶媒を含む。さらなる態様では、溶媒は水、エタノールおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される。別の態様では、溶媒和物はエタノールを約0.1〜約3モル%の範囲で、好ましくは約0.4〜約2モル%の範囲で含む。
【0010】
本発明はまた、異常な細胞増殖の治療に有効な量の本明細書に記載の塩または溶媒和物、および薬学的に許容できる担体または希釈剤を含む医薬組成物を提供する。
本発明はさらに、哺乳動物の異常な細胞増殖を治療する方法であって、異常な細胞増殖の治療に有効な量の本明細書に記載の塩または溶媒和物を前記哺乳動物に投与することを含む方法を提供する。一態様では、異常な細胞増殖は癌であり、さらなる態様では、癌は、肺癌、骨癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頸部癌、皮膚もしくは眼内黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門部癌、胃癌、結腸癌、乳癌、子宮癌、ファロピー管癌、子宮内膜癌、子宮頸部癌、膣癌、外陰癌、ホジキン病、食道癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟部組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、前立腺癌、慢性もしくは急性白血病、リンパ球性リンパ腫、膀胱癌、腎臓もしくは尿管癌、腎細胞癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)の新生物、原発性CNSリンパ腫、脊髄軸腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、または上記の癌の1種または複数の組み合わせからなる群から選択される。好ましくは、本発明は、哺乳動物の癌固形腫瘍を治療する方法であって、前記癌固形腫瘍の治療に有効な量の上記の塩または溶媒和物を前記哺乳動物に投与することを含む方法を提供する。そのような固形腫瘍は、乳癌、肺癌、結腸癌、脳腫瘍、前立腺癌、胃癌、膵癌、卵巣癌、皮膚癌(黒色腫)、内分泌癌、子宮癌、精巣癌または膀胱癌から選択される。
【0011】
最後に、本発明はまた、哺乳動物の異常な細胞増殖を治療する方法であって、異常な細胞増殖の治療に有効な量の本明細書に記載の塩または溶媒和物を、有糸分裂阻害剤、アルキル化剤、代謝拮抗剤、挿入抗生物質、増殖因子阻害剤、放射線、細胞周期阻害剤、酵素、トポイソメラーゼ阻害剤、生体応答調節物質、抗体、細胞毒性剤、抗ホルモン剤および抗アンドロゲン剤からなる群から選択される抗腫瘍剤と組み合わせて前記哺乳動物に投与することを含む方法を提供する。
本発明は例えば、以下の項目を提供する:
(項目1)
N−[3−[[[2−[(2,3−ジヒドロ−2−オキソ−1H−インドール−5−イル)アミノ]−5−(トリフルオロメチル)−4−ピリミジニル]アミノ]メチル]−2−ピリジニル]−N−メチルメタンスルホンアミドの薬学的に許容できる塩。
(項目2)
前記塩がベシレート塩である、項目1に記載の化合物の塩。
(項目3)
前記塩がメシレート塩である、項目1に記載の化合物の塩。
(項目4)
前記塩がトシレート塩である、項目1に記載の化合物の塩。
(項目5)
前記塩が塩酸塩である、項目1に記載の化合物の塩。
(項目6)
前記塩が準化学量論的溶媒和物である、項目1から5のいずれか一項に記載の塩。
(項目7)
前記準化学量論的溶媒和物がエタノールを含む、項目6に記載の塩。
(項目8)
N−[3−[[[2−[(2,3−ジヒドロ−2−オキソ−1H−インドール−5−イル)アミノ]−5−(トリフルオロメチル)−4−ピリミジニル]アミノ]メチル]−2−ピリジニル]−N−メチルメタンスルホンアミドの準化学量論的溶媒和物。
(項目9)
前記溶媒和物が、水、アルコール、極性有機溶媒およびそれらの組み合わせからなる群から選択される溶媒を含む、項目8に記載の溶媒和物。
(項目10)
前記溶媒が、水、エタノールおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目9に記載の溶媒和物。
(項目11)
前記溶媒和物がエタノールを約0.1〜約3モル%の範囲で含む、項目10に記載の溶媒和物。
(項目12)
異常な細胞増殖の治療に有効な量の項目1から11のいずれか一項に記載の塩または溶媒和物、および薬学的に許容できる担体または希釈剤を含む医薬組成物。
(項目13)
前記異常な細胞増殖が癌である、項目12に記載の医薬組成物。
(項目14)
異常な細胞増殖の治療に有効な量の項目1から11のいずれか一項に記載の塩または溶媒和物を、有糸分裂阻害剤、アルキル化剤、代謝拮抗剤、挿入抗生物質、増殖因子阻害剤、放射線、細胞周期阻害剤、酵素、トポイソメラーゼ阻害剤、生体応答調節物質、抗体、細胞毒性剤、抗ホルモン剤および抗アンドロゲン剤からなる群から選択される抗腫瘍剤と共に含む、哺乳動物の異常な細胞増殖を治療するための組み合わせ物。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1A】式Iのモノベシレート塩の偏光顕微鏡写真の図である。
【図1B】式Iのモノベシレート塩のDSCスキャンの図である。
【図1C】式Iのモノベシレート塩のTGAの図である。
【図1D】式Iのモノベシレート塩のVTI水分吸着/脱離等温線の図である。
【図1E】式Iのモノベシレート塩のPXRDの図である。
【図2A】式Iのモノメシレート塩の偏光顕微鏡写真の図である。
【図2B】式Iのモノメシレート塩のPXRDの図である。
【図2C】式Iのモノメシレート塩のDSCスキャンの図である。
【図2D】式Iのモノメシレート塩のVTI水分吸着/脱離等温線の図である。
【図3A】式Iのトシレート塩の偏光顕微鏡写真の図である。
【図3B】式Iのトシレート塩のPXRDの図である。
【図3C】式Iのトシレート塩のDSCスキャンの図である。
【図3D】式Iのトシレート塩のVTI水分吸着/脱離等温線の図である。
【図3E】式Iのトシレート塩のTGIR分析の図である。
【図4A】式Iの塩酸塩の偏光顕微鏡写真の図である。
【図4B】式Iの塩酸塩のPXRDの図である。
【図4C】式Iの塩酸塩のPXRDの図である。
【図4D】式Iの塩酸塩のDSCスキャンの図である。
【図4E】式Iの塩酸塩のVTI水分吸着/脱離等温線の図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書で特に定義しない限りは、本発明に関して使用される科学および技術用語は、当業者に普通に理解される意味を有するものとする。さらに、文脈により必要とする場合を除いて、単数形の用語は複数形の用語を含むものとし、複数形の用語は単数形の用語を含むものとする。本明細書で使用する以下の各用語は、このセクションにおいてそれと関連する意味を有する。本明細書で使用する冠詞「a」および「an」は、その冠詞の文法上の対象が1つまたは複数(すなわち少なくとも1)であることを意味する。例えば、「ある要素(an element)」は1つまたは複数の要素を意味する。
本発明は式Iの塩および溶媒和物に関する。本明細書で使用する「溶媒和物」という用語は、溶質のイオンまたは分子と1つまたは複数の溶媒分子との組み合わせからなる化合物を意味し、したがって「溶媒和物」は溶質と溶媒との凝集体を意味する。あるいは、本発明は、1つ未満の溶媒分子を溶質のイオンまたは分子と組み合わせた、式Iの「準化学量論的溶媒和物」に関する。「溶媒和物」および「準化学量論的溶媒和物」という用語は、溶質の溶媒分子に対する固定した比を必ずしも必要とはしない。好適な溶媒分子としては水、アルコールおよび他の極性有機溶媒が挙げられる。好適なアルコールとしてはメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノールおよびt−ブタノールが挙げられる。好ましい態様では、溶媒は水またはエタノールである。より好ましい態様では、溶媒はエタノールであり、約0.1〜約3モル%のエタノールが溶媒和物中に存在し、より好ましくは約0.4〜約2モル%のエタノールが溶媒和物中に存在する。好適なアルコールとしては、ポリアルキレングリコール(例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール)などの重合アルコールも挙げられる。溶媒が水である場合、水との溶媒和により形成される溶媒和化合物または複合体を水和物と呼ぶ。一態様では、溶媒和物は結晶性である。式Iの溶媒和物は、式Iの化合物を溶媒から、式Iの化合物に対する水素結合相互作用を供与および/または受容可能な分子の存在下で結晶化させることにより調製することができる。
【0014】
本発明の塩は、式Iの遊離塩基と溶媒とを接触させることで調製される。好適な溶媒としては水、アルコール、他の極性有機溶媒およびそれらの組み合わせが挙げられる。メタノールが好ましい溶媒である。遊離塩基を好適な酸と反応させて、式Iが塩を形成し、好ましくは溶解するようにする。好適な酸を溶媒と共に(すなわち溶媒に溶解した状態で)式Iの遊離塩基に加え、遊離塩基を本質的に同時に溶媒和およびプロトン化させてもよく、あるいは遊離塩基を溶媒と接触させた後で塩基を加えてもよい。後者のシナリオでは、塩基は溶媒に溶解させることができ、溶媒は、遊離塩基に既に接触している溶媒、または滑らかな(neat)固体もしくは液体として加えることが可能な異なる溶媒、あるいはそれらの組み合わせであることができる。溶媒を蒸発させた後で、塩を結晶化のため適する溶媒中に再溶解させることができる。濾過の後に種結晶を加えることを、塩を結晶させる代替手順として使用してもよい。いずれの場合でも、適する溶媒または種結晶は塩の結晶化促進剤として働く。使用する溶媒に応じて、塩は蒸発とは関係なく析出および/または結晶化することができる。塩の結晶を濾過してバルク溶媒を除去することができる。
【0015】
好ましい態様では、式Iの遊離塩基をモル過剰量の適する酸と適する溶媒中で組み合わせる。式Iのベシレート塩を得ようとする場合、遊離塩基をモル過剰量、例えば3当量まで、好ましくは2当量まで、より好ましくは1.5当量までのベンゼンスルホン酸と組み合わせる。式Iのメシレート塩を得ようとする場合、遊離塩基をモル過剰量、例えば3当量まで、好ましくは2当量まで、より好ましくは1.5当量までのメタンスルホン酸と組み合わせる。式Iのトシレート塩を得ようとする場合、遊離塩基をモル過剰量、例えば3当量まで、好ましくは2当量まで、より好ましくは1.5当量までのp−トルエンスルホン酸と組み合わせる。最後に、式Iの塩酸塩を得ようとする場合、遊離塩基をモル過剰量、例えば3当量まで、好ましくは2当量まで、より好ましくは1.5当量までの塩酸と組み合わせる。この一般的手順を当業者が改変して、無毒の酸付加塩、例えば臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、リン酸塩、酸リン酸塩、イソニコチン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、クエン酸塩、酸クエン酸塩、酒石酸塩、パントテン酸塩、酒石酸水素塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチシン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、サッカリン酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、エタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩およびパモ酸塩[すなわち1,1’−メチレン−ビス−(2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸塩)]などの薬理学的に許容できるアニオンを含む塩を形成する式Iの付加塩を含むがそれだけに限定されない、式Iの各種の追加の塩を調製することができる。式Iの遊離塩基は、上記の酸以外にも、各種のアミノ酸と薬学的に許容できる塩を形成することができる。
【0016】
式Iの塩は、第1の塩のカチオンを置き換える金属交換反応または別の工程により式Iの第2の塩に転換することができる。一例では、式Iのカリウム塩を調製し、次にアルカリ土類金属ハロゲン化物(例えばMgBr2、MgCl2、CaCl2、CaBr2)、アルカリ土類金属硫酸塩もしくは硝酸塩(例えばMg(NO3)2、Mg(SO4)2、Ca(NO3)2、Ca(SO4)2)、または有機酸のアルカリ土類金属塩(例えばギ酸カルシウム、ギ酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム、プロピオン酸カルシウム、プロピオン酸マグネシウム)などの第2の塩と反応させて式Iのアルカリ土類金属塩を形成する。
【0017】
式Iの塩は、溶媒和分子を化学量論的または準化学量論的量で含むことができ、溶媒和物としても知られる各種の溶媒和状態にあることができる。本発明の塩の異なる溶媒和物は、調製方法を改変することで得ることができる。溶媒和物の溶解度は通常異なり、したがって熱力学的な安定度の高い溶媒和物は、熱力学的な安定度の低い溶媒和物に比べて溶解度が低い。また、溶媒和物は保管期限、バイオアベイラビリティ、形態学、蒸気圧、密度、色調および衝撃感度(shock sensitivity)などの特性も異なることがある。本発明の複合体は、増強した保管期限、バイオアベイラビリティ、形態学、蒸気圧、密度、色調および衝撃感度を含むがそれだけに限定されない、対応する非晶形に関連する増強した特性を示す。適する溶媒和分子としては水、アルコール、他の極性有機溶媒およびそれらの組み合わせが挙げられる。アルコールとしてはメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノールおよびt−ブタノールが挙げられる。水が好ましい溶媒である。溶媒和分子を結晶性塩から除去して、塩を部分または完全脱溶媒和物にすることができる。溶媒和分子が水である(水和物を形成する)場合、脱溶媒和した塩は脱水物と呼ばれる。すべての水が除去された塩は無水である。溶媒和分子は、加熱、真空または減圧下での処理、塩に対する空気の吹き付けまたはそれらの組み合わせなどの方法で塩から除去することができる。
【0018】
上記に列挙した形態の1つでの本発明の塩は、1種または複数の他の物質と共結晶化することができる。他の1種または複数の物質は、例えば塩、遊離酸または遊離塩基でよく、水素結合および他のエネルギー的に好ましい手段を通じて塩と相互作用することができる。
【0019】
本発明の別の態様では、本発明の塩は実質的に純粋である。実質的に純粋な塩は、純度が約80%を超え、純度が約85%を超え、純度が約90%を超え、純度が約95%を超え、純度が約98%を超え、または純度が約99%を超えることができる。塩の純度は、(未反応の中性の式Iまたは塩基ではなく)塩の量について測定することができ、あるいは塩の特定の溶媒和物、多形、脱溶媒和物、水和物、脱水物または無水物の形態について測定することができる。
【0020】
本発明の塩および溶媒和物は、元素分析、偏光顕微鏡観察、粉末X線回折(PXRD)、示差走査熱量測定(DSC)、熱重量分析(thermal gravimetric analysis: TGA)、赤外分光を伴う熱重量分析(TGIR)およびVTI水蒸気吸着を含むがそれだけに限定されない、当技術分野で公知の任意の方法で特徴付けることができる。式Iのモノベシレート、モノメシレートおよび半水和モノトシレート塩の粉末X線回折スペクトルは、それぞれ、図1〜3に示す粉末X線回折スペクトルと実質的に同一である。しかし、PXRDスペクトルは測定条件によっては測定誤差を伴って得られる場合があることが知られている。特に、PXRDスペクトルの強度は測定条件によって変動する場合があることが一般に知られている。したがって、本発明の塩は、PXRDスペクトルが図1〜3に示すスペクトルと完全に同一である結晶に限定されず、PXRDスペクトルが上記のPXRDスペクトルと実質的に同一であるいずれの結晶も本発明の範囲内であることを理解されたい。PXRDの分野に熟練した者であればPXRDスペクトルの実質的同一性を容易に判定可能である。一般に、通常のPXRDの回折角の測定誤差は約5%以下であり、回折角に関してはその程度の測定誤差であれば考慮に入れるべきである。さらに、強度が実験条件によって変動する場合があることも理解されたい。
【0021】
例えば、本発明の塩および溶媒和物は示差走査熱量測定(DSC)により特徴付けることができる。式Iのベシレート塩は、約245〜255℃での単一の主要な吸熱により特徴付けられる。式Iのメシレート塩は、開始(オンセット)温度約57℃での小さい吸熱および開始温度約232℃での広範な吸熱によりにより特徴付けられる。式Iのトシレート塩は、開始温度約237℃での単一の主要な吸熱により特徴付けられる。
【0022】
本発明の塩および溶媒和物は熱重量分析(TGA)により特徴付けることもできる。式Iのベシレート塩のTGAプロファイルは、約255℃までで0.5%未満の溶媒/水損失を示す。溶媒/水は強固に結合し、融解まで放出されずにいることができる。TGIR(赤外分光を伴う熱重量分析)によれば、式Iのトシレート塩の水およびエタノールからなる全揮発分含量は1.4%である。
【0023】
本発明の塩および溶媒和物は、吸湿性を測定するVTI水蒸気吸着でさらに特徴付けることができる。式Iのベシレート塩は、この試験における相対湿度(RH)90%での重量増が0.16%であった。式Iのメシレート塩の90%RHでの重量増が1.4%、式Iのトシレート塩の90%RHでの重量増が0.6%であった。他の分析方法は実施例で詳述する。
【0024】
本発明の「複合体」とは、本明細書に記載の式Iの塩、溶媒和物または準化学量論的溶媒和物のいずれかを一般的に意味する。
「医薬組成物」とは、本明細書に記載の1種もしくは複数の複合体と、生理学的/薬学的に許容できる担体および賦形剤などの他の成分との混合物を意味する。医薬組成物の目的は、複合体の生物に対する投与を容易にすることである。
【0025】
本明細書で使用する「生理学的/薬学的に許容できる担体」とは、生物に対して重大な刺激作用を引き起こさず、投与される複合体の生物活性および特性を排除しない担体または希釈剤を意味する。「薬学的に許容できる賦形剤」とは、複合体の投与をさらに促進するために医薬組成物に加えられる不活性物質を意味する。賦形剤としては例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、各種糖およびデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油ならびにポリエチレングリコール類が挙げられるが、それだけに限定されない。
【0026】
本明細書で使用する「有効量」または「治療有効量」という用語は、哺乳動物、好ましくはヒトに投与された際に、複合体が存在しない状態で検出される応答と比較して検出可能な治療応答を媒介する量を意味する。全生存率の増大、腫瘍増殖(腫瘍の大きさの均衡を含む)、腫瘍の大きさ、転移の阻害および/または減少などであるがそれだけに限定されない治療応答は、例えば本明細書に記載の方法を含む多くの当技術分野で認知されている方法により容易に評価することができる。「治療有効量」または「有効量」は、以下のものを含むがそれだけに限定されない、異常増殖障害の1つまたは複数の症状を検出可能にある程度減少させるために必要な薬剤の量が適切であることを意図している:(1)癌細胞数の減少、(2)腫瘍の大きさの減少、(3)癌細胞の末梢器官に対する浸潤の阻害(すなわち、ある程度の遅延、好ましくは停止)、(4)腫瘍転移の阻害(すなわち、ある程度の遅延、好ましくは停止)、(5)腫瘍増殖のある程度の阻害、(6)当該障害に関連する1つまたは複数の症状のある程度の緩和または減少、(7)抗癌剤の投与に関連する副作用の緩和または減少、および/あるいは(8)所与の腫瘍の種類または異常増殖障害の治療基準について観察される全生存率に対する、患者の全生存率のある程度の増大。
【0027】
「維持有効量」とは、(1)癌細胞数の増大の阻害、(2)腫瘍の大きさの増大の阻害、(3)癌細胞の末梢器官に対する浸潤の阻害、(4)腫瘍転移の阻害、(5)障害に関連する1つまたは複数の症状のある程度の緩和または減少、および/あるいは(6)障害に関連する1つまたは複数の症状の再発または発症の阻害を含むがそれだけに限定されない、治療計画中に得られる治療上の利点を検出可能に維持するために必要な薬剤の量が適切であることを意図している。
【0028】
本明細書中に提供される教示と合わせて、各種の活性複合体の中から選択し、効力、相対的バイオアベイラビリティ、患者の体重、副作用の重症度および好ましい投与様式などの要因を考慮することで、実質的な毒性を引き起こさず、なおかつ特定の対象を治療する上で完全に有効である、有効な予防もしくは治療に関する治療計画または維持相を策定することができる。任意の特定の適用に関する治療または維持有効量は、治療される疾患または状態、疾患または状態の重症度ならびに対象の健康およびサイズなどの要因に応じて変化し得る。当業者であれば、単独での、あるいは1種または複数の追加の化学療法薬、緩和剤および/または他の治療薬と併用される本発明の複合体の治療有効量を、必要以上の実験をせず経験的に決定することができる。
【0029】
本明細書で使用する「治療する」とは、患者が疾患の症状(すなわち、腫瘍増殖および/または転移、あるいは免疫細胞の数および/または活性により媒介される他の作用など)を経験する頻度を減少させることを意味する。この用語は、本発明の複合体を単独で、あるいは1種または複数の追加の治療薬と併用して投与することで疾患の症状、合併症または生化学的徴候(例えば前立腺癌におけるPSAレベルの上昇)の発症を予防または遅延させるか、症状を緩和させるか、あるいは疾患、状態または障害のさらなる進行を停止または阻害することを含む。治療は予防的(疾患の発症を予防または遅延させるか、その臨床的または準臨床的症状の発現を予防する)であることもあれば、疾患の発現後における症状の治療的抑制または緩和であることもある。
【0030】
本明細書で使用する「予防する」とは、患者が経験する疾患の症状(すなわち、腫瘍増殖および/または転移、あるいは免疫細胞の数および/または活性により媒介される他の作用など)の発症または進行を阻害することを意味する。この用語は、本発明の複合体を単独で、あるいは1種または複数の追加の治療薬と併用して投与することで疾患の症状、合併症または生化学的徴候(例えば前立腺癌におけるPSAレベルの上昇)の発症を阻害または遅延させることを含む。
【0031】
本発明の複合体の治療有効量または維持有効量は、動物モデルから最初に決定することができる。治療有効量または維持有効量は、同様の薬理活性を示すことが知られている本発明の複合体に関するヒトデータから決定することもできる。非経口投与にはより多い用量が必要な場合がある。適用される用量は、投与される複合体の相対的バイオアベイラビリティおよび効力に基づいて調節することができる。上記の方法および当技術分野で周知の他の方法に基づいて用量を調節して最大効力を得ることは十分に当業者の能力の範囲内である。
【0032】
特記なき限り、「患者」または「対象」という用語は互換的に使用され、ヒト患者および非ヒト霊長類などの哺乳動物、ならびにウサギ、ラット、ネズミおよび他の動物などの獣医学的対象を意味する。好ましくは、患者はヒトを意味する。
【0033】
本発明はまた、ヒトを含む哺乳動物の異常な細胞増殖を治療する方法であって、異常な細胞増殖の治療に有効な量の上記で定義した式Iの複合体を前記哺乳動物に投与することを含む方法に関する。この方法の一態様では、異常な細胞増殖は、肺癌、骨癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頸部癌、皮膚もしくは眼内黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門部癌、胃癌、結腸癌、乳癌、子宮癌、ファロピー管癌、子宮内膜癌、子宮頸部癌、膣癌、外陰癌、ホジキン病、食道癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟部組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、前立腺癌、慢性もしくは急性白血病、リンパ球性リンパ腫、膀胱癌、腎臓もしくは尿管癌、腎細胞癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)の新生物、原発性CNSリンパ腫、脊髄軸腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、または上記の癌の1種または複数の組み合わせを含むが、それだけに限定されない癌である。一態様では、本方法は、前記癌固形腫瘍の治療に有用な量の式Iの複合体を哺乳動物に投与することを含む。好ましい一態様では、固形腫瘍は、乳癌、肺癌、結腸癌、脳腫瘍、前立腺癌、胃癌、膵癌、卵巣癌、皮膚癌(黒色腫)、内分泌癌、子宮癌、精巣癌および膀胱癌である。
【0034】
前記方法の別の態様では、前記異常な細胞増殖は、乾癬、良性前立腺肥大症または再狭窄を含むが、それだけに限定されない良性増殖性疾患である。
本発明はまた、哺乳動物の異常な細胞増殖を治療する方法であって、異常な細胞増殖の治療に有効な量の式Iの複合体を、有糸分裂阻害剤、アルキル化剤、代謝拮抗剤、挿入抗生物質、増殖因子阻害剤、細胞周期阻害剤、酵素、トポイソメラーゼ阻害剤、生体応答調節物質、抗体、細胞毒性剤、抗ホルモン剤および抗アンドロゲン剤からなる群から選択される抗腫瘍剤と組み合わせて前記哺乳動物に投与することを含む方法に関する。本発明の複合体と併用可能である好適な治療薬の非制限的リストは米国特許出願第11/127,809号において提供され、その開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0035】
本発明はまた、ヒトを含む哺乳動物の異常な細胞増殖を治療する医薬組成物であって、異常な細胞増殖の治療に有効な量の上記で定義した式Iの複合体、および薬学的に許容できる担体を含む組成物に関する。前記組成物の一態様では、前記異常な細胞増殖は、肺癌、骨癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頸部癌、皮膚もしくは眼内の黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門部癌、胃癌、結腸癌、乳癌、子宮癌、ファロピー管癌、子宮内膜癌、子宮頸部癌、膣癌、外陰癌、ホジキン病、食道癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟部組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、前立腺癌、慢性もしくは急性白血病、リンパ球性リンパ腫、膀胱癌、腎臓もしくは尿管癌、腎細胞癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)の新生物、原発性CNSリンパ腫、脊髄軸腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、または上記の癌の1種または複数の組み合わせを含むが、それだけに限定されない癌である。前記医薬組成物の別の態様では、前記異常な細胞増殖は、乾癬、良性前立腺肥大症または再狭窄を含むが、それだけに限定されない良性増殖性疾患である。
【0036】
本発明はまた、ヒトを含む哺乳動物の血管形成に関連する障害を治療する方法であって、前記障害の治療に有効な量の上記で定義した式Iの複合体またはその薬学的に許容できる塩、溶媒和物もしくはプロドラッグを、1種または複数の上記で列挙した抗腫瘍剤と組み合わせて前記哺乳動物に投与することを含む方法に関する。そのような障害としては、黒色腫などの腫瘍;加齢黄斑変性、推定眼ヒストプラスマ症候群および増殖性糖尿病性網膜症による網膜新血管新生などの眼球障害;関節リウマチ;骨粗鬆症、ページェット病、悪性体液性高カルシウム血症、骨転移性腫瘍による高カルシウム血症およびグルココルチコイド治療により誘発される骨粗鬆症などの骨量減少障害;冠血管再狭窄;ならびにアデノウイルス、ハンタウイルス、ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdoferi)、エルシニア属(Yersinia spp.)、百日咳菌およびA群連鎖球菌から選択される微生物病原体と関連する感染症を含む一定の微生物感染症が挙げられる。
【0037】
本発明はまた、哺乳動物の異常な細胞増殖を治療する方法(組み合わせ物、又は医薬組成物)であって、式Iの複合体またはその薬学的に許容できる塩、溶媒和物もしくはプロドラッグを、抗血管形成剤、シグナル伝達阻害剤および抗増殖剤から選択される1種または複数の物質と組み合わせて、その合計量が前記異常な細胞増殖の治療に有効な量で含む方法(組み合わせ物、又は医薬組成物)に関する。
【0038】
本明細書で使用する「異常な細胞増殖」とは、特記なき限り、正常な調節機序とは無関係の細胞増殖(例えば接触阻害の喪失)を意味する。この用語は、(1)変異チロシンキナーゼの発現または受容体チロシンキナーゼの過剰発現により増殖する腫瘍細胞(腫瘍)、(2)異常なチロシンキナーゼの活性化が生じる他の増殖性疾患の良性および悪性細胞、(4)受容体チロシンキナーゼにより増殖する任意の腫瘍、(5)異常なセリン/スレオニンキナーゼの活性化により増殖する任意の腫瘍、ならびに(6)異常なセリン/スレオニンキナーゼの活性化が生じる他の増殖性疾患の良性および悪性細胞の異常増殖を含む。
【0039】
本発明の複合体はFAKタンパク質チロシンキナーゼの強力な阻害剤であるため、すべて哺乳動物、特にヒトにおける抗増殖剤(例えば抗癌)、抗腫瘍剤(例えば固形腫瘍に対して有効)、抗血管形成剤(例えば血管増殖の停止または予防)としての治療的使用に適応する。特に、本発明の複合体は、肝臓、腎臓、膀胱、乳房、胃、卵巣、結腸直腸、前立腺、膵臓、肺、外陰部、甲状腺の悪性および良性腫瘍、肝癌、肉腫、神経膠芽腫、頭頸部癌、ならびに皮膚の良性過形成(例えば乾癬)および前立腺の良性過形成(例えば良性前立腺肥大症(BPH))などの他の過形成状態などの各種のヒト過剰増殖性障害の予防および治療に有用である。さらに、本発明の複合体は一定範囲の白血病およびリンパ系悪性腫瘍に対する活性を有することができると予測される。
【0040】
より好ましい一態様では、癌は、乳癌、肺癌、結腸癌、脳腫瘍、前立腺癌、胃癌、膵癌、卵巣癌、皮膚癌(黒色腫)、内分泌癌、子宮癌、精巣癌および膀胱癌などであるがそれだけに限定されない固形腫瘍である。
【0041】
本発明の複合体は、各種のタンパク質チロシンキナーゼに関連する異常な発現、リガンド/受容体相互作用もしくは活性化、またはシグナル伝達事象が関与するさらなる障害の治療にも有用であることができる。そのような障害としては、erbBチロシンキナーゼの異常な機能、発現、活性化またはシグナル伝達が関与する神経細胞障害、グリア細胞障害、アストロサイト障害、視床下部障害、ならびに他の腺障害、マクロファージ障害、上皮障害、間質障害および胞胚腔障害を挙げることができる。さらに、本発明の複合体は、本発明の複合体により阻害される同定されたチロシンキナーゼと未同定のチロシンキナーゼの両方が関与する炎症性障害、血管新生障害および免疫障害において治療有用性を有することができる。
【0042】
本発明の特定の態様は、(ヒトを含む)哺乳動物の低骨質量を示す状態を治療または予防する方法であって、低骨質量を示す状態を治療する量の式Iの複合体をそのような治療を必要とする哺乳動物に投与することを含む方法を対象とする。
【0043】
本発明は、低骨質量を示す状態が骨粗鬆症、虚弱(fraility)、骨粗鬆症骨折、骨欠損、小児特発性骨減少、歯槽骨減少、下顎骨減少、骨折、骨切断、歯周病または補綴内植であるそのような方法を特に対象とする。
【0044】
本発明の特定の態様は、(ヒトを含む)哺乳動物の骨粗鬆症を治療する方法であって、骨粗鬆症を治療する量の式Iの複合体をそのような治療を必要とする哺乳動物に投与することを含む方法を対象とする。
【0045】
本発明の別の態様は、(ヒトを含む)哺乳動物の骨折または骨粗鬆症骨折を治療する方法であって、骨折または骨粗鬆症骨折を治療する量の式Iの複合体をそのような治療を必要とする哺乳動物に投与することを含む方法を対象とする。
【0046】
「骨粗鬆症」という用語は、老人性、閉経性および若年性骨粗鬆症などの原発性骨粗鬆症、ならびに(コルチコステロイド使用による)甲状腺機能亢進症またはクッシング症候群、末端肥大症、性腺機能低下症、骨形成不全および低ホスファターゼ血症による骨粗鬆症などの続発性骨粗鬆症を含む。
【0047】
本発明の複合体は、最適な所望の応答を与えるために調節可能な投与計画において投与することができる。例えば、単一ボーラスを投与することもでき、数回に分けた用量を経時的に投与することもでき、あるいは治療状態の緊急性に比例して用量を減少または増加させることもできる。投与を容易にし、投与量を均一化する上で、単位投与形態に非経口製剤を調剤することが特に有利である。本明細書で使用する単位投与形態とは、治療されるべき哺乳動物の対象向けの単位投与に適した物理的に分離した単位を意味し、各単位は、所要の医薬担体と共に所望の治療効果を与えるよう計算された所定量の活性複合体を含む。本発明の単位投与形態の仕様は(a)化学療法薬の独自の特性および実現すべき特定の治療または予防効果、ならびに(b)個体の感受性を治療するそのような活性複合体を形成する上で当技術分野に内在する制限により決定され、それに直接依存する。
【0048】
したがって、本明細書中に提供される開示内容に基づいて、用量および投与計画が治療分野で公知の方法に従って調節されることが、当業者には認識されよう。すなわち、最大耐容量は容易に決定することができ、患者に検出可能な治療上の利点を与える有効量も決定することができ、同様に患者に検出可能な治療上の利点を与える各薬剤を投与する上での時間的要件も決定することができる。したがって、本明細書ではある種の用量および投与計画を例示するが、これらの例は決して、本発明を実施する上で患者に与えることが可能な用量および投与計画を制限するものではない。さらに、本明細書中に提供される教示で武装した際には、多くの他のパラメータの中でも腫瘍の大きさおよび/または転移の検出可能な減少、ならびに再発までにかかる時間の延長などであるがそれだけに限定されない治療上の利点を、癌治療の有効性を評価する当技術分野で公知の各種方法により評価することができ、これらの方法は、将来開発されるはずの方法と並んで、本明細書に含まれることが当業者には理解されよう。
【0049】
投与量の値は、緩和されるべき状態の種類および重症度により異なることがあり、単一または複数用量を含み得る。さらに、任意の特定の対象について、特定の投与計画を経時的に、個人の必要、および組成物を投与する者またはそれを監督する者の専門的判断に従って調節すべきであり、本明細書に開示されている投与量の範囲は例示的なものに過ぎず、特許請求の範囲にある組成物の範囲または実施を制限するものではないことを理解されたい。例えば、用量は、毒性作用などの臨床作用および/または検査値などの薬物動態または薬力学的パラメータに基づいて調節することができる。したがって、本発明は、当業者により決定される患者内の用量増大を含む。化学療法薬の適切な投与量および投与計画の決定は、当技術分野で公知であり、本明細書中に開示されている教示を一度受けた当業者により包含されるものと理解されよう。
【0050】
本発明の複合体は、本明細書で治療用量および維持用量と呼ばれる2種類の投与量のうち1つで投与することができる。治療用量とは、1種または複数の追加の化学療法薬が投与される治療サイクルの間に患者に投与される複合体の用量を意味する。例えば、1サイクルが1週間に数回の複合体、化学療法薬またはそれらの組み合わせの投与を含む6サイクルの化学療法(「治療計画」と呼ぶ)を患者が始める場合、この治療計画の途中で患者に投与される複合体の用量を治療用量と呼ぶ。一方、維持用量とは、治療計画の完了後に患者に投与される複合体の用量を意味する。維持用量は、治療計画とは時間が別であり、目的が異なる「維持相」中に投与される。
【0051】
治療用量および維持用量は、治療連続の任意の時点において同一でも異なっていてもよい。例えば、患者の最初の維持用量は治療用量と同一でもよいが、ある時間間隔の後で、治療計画の完了前後の疾患の段階、治療計画の完了後の患者の全体的な健康、随伴性の疾患状態などを含むがそれだけに限定されない各種の要因に応じて、維持用量を、治療用量に対して増加または減少させることができる。
【0052】
本発明の複合体の投与は、作用部位に化合物を送達可能にする任意の方法で行うことができる。これらの方法としては、経口投与、十二指腸内投与、非経口注射(静脈内注射、皮下注射、筋肉内注射、血管内注射または注入を含む)、局所投与および直腸投与が挙げられる。
【0053】
投与される複合体の量は、治療される対象、障害または状態の重症度、投与速度、化合物の性質および処方医の裁量に依存する。ただし、有効な投与量は単一または分割用量で1日体重1kg当たり約0.001〜約100mg、好ましくは約1〜約35mg/kg/日の範囲である。70kgのヒトでは、これは約0.05〜約7g/日、好ましくは約0.2〜約2.5g/日に相当するであろう。ある場合では、前述した範囲の下限を下回る用量レベルでも十分過ぎることもある。一方、別の場合では、さらに多い用量を、そのような多い用量を最初にいくつかの少ない用量に分けて1日分の投与に使うという条件で、いかなる副作用も引き起こさずに使用することができる。
【0054】
複合体は、治療計画または維持相中に、本発明の化学療法薬と実質的に同時または逐次的に投与することができる。治療連続体の段階に関係なく、投与が同時である場合、複合体および化学療法薬は、同時に投与されるにもかかわらず、同一製剤であっても別個の製剤であってもよい。「実質的に同時」という用語は、複合体が互いに数分以内(例えば互いに10分以内)に投与されることを意味し、同時投与および連続投与を包含することを意図しているが、投与が連続的である場合は短時間(例えば、開業医が2種類の複合体を別々に投与するのに要するであろう時間)しか離れていない。本発明では「同時投与」および「実質的に同時の投与」は互換的に使用される。逐次投与とは、複合体と化学療法薬を別々の時間に投与することを意味する。これらの複合体の投与間の時間の分離は、遅延を意図せず2種類の医薬を別々に順次投与するのに要する時間よりも意図的に長い。したがって、共投与は、化学療法薬と複合体の投与の任意の時間的組み合わせであって、この2種類の投与が、一方の薬剤を他方が存在しない状態で投与する場合よりも検出可能に大きい患者に対する治療上の利点を媒介するような組み合わせを含む。
【0055】
複合体は、化学療法薬の投与前、投与と同時もしくは投与後に(またはそれらの任意の組み合わせで)投与することができ、逆もまた同様である。複合体は、毎日(1日当たり1回または複数回の投与を含む)、2日ごと、3日ごと、4日ごと、5日ごと、6日ごと、または毎週、毎月、2カ月ごと、3カ月ごと、4カ月ごと、5カ月ごと、6カ月ごともしくは毎年投与することができる。化学療法薬は、毎日、2日ごと、3日ごと、4日ごと、5日ごと、6日ごと、毎週、2週間ごと、毎月、または20日ごと、25日ごと、28日ごと、30日ごと、40日ごと、50日ごと、2カ月ごと、70日ごと、80日ごと、3カ月ごと、6カ月ごともしくは毎年投与することができる。化学療法薬の投与は単一用量でも複数用量でもよい。あるいは、少なくとも1用量または少なくとも3、6もしくは12用量投与することもできる。
【0056】
本発明は、有効成分としての本発明のヒト化学療法薬を、複合体と併用してまたは併用せずに含む医薬組成物の調製および使用を含む。そのような医薬組成物は、対象への投与に適した形態である、単独での各有効成分、または少なくとも1種の有効成分の組み合わせ(例えば、有効量の化学療法薬、有効量の複合体)からなることができ、あるいは医薬組成物は、有効成分、および1種もしくは複数の薬学的に許容できる担体、1種もしくは複数の追加の(有効および/または非有効)成分またはこれらのある種の組み合わせを含むことができる。
【0057】
複合体は、経口投与、非経口投与、粘膜投与、吸入、局所投与、口腔投与、経鼻投与および直腸投与を含むがそれだけに限定されない、当技術分野で公知の各種の方法で投与することができる。多くの治療上の適用について、好ましい投与経路/様式は皮下投与、筋肉内投与、静脈内投与または注入である。所望であれば無針注射を使用してもよい。当業者に理解されているように、投与経路および/または様式は所望の結果に応じて変化する。
【0058】
本明細書に記載の医薬組成物の製剤は、薬理学の分野で公知または今後開発される任意の方法により調製することができる。一般に、そのような調製方法は、有効成分を担体または1種もしくは複数の補助成分と結合させるステップと、その後、必要または所望であれば、製剤を所望の単一または複数投与単位に成形または包装するステップとを含む。
【0059】
本発明の医薬組成物は、バルク状でも、単一の単位剤形としても、複数の単位剤形としても調製、包装または販売することができる。本明細書で使用する「単位剤形」とは、所定量の有効成分を含む分離量の医薬組成物のことである。有効成分(または複合体)の量は、対象に投与されるであろう有効成分の投与量、または、例えばそのような投与量の2分の1または3分の1などの、そのような投与量の好都合な一部分と一般に同等である。
【0060】
本発明の医薬組成物中の有効成分、薬学的に許容できる担体および任意の追加成分の相対量は、治療される対象の同一性、サイズおよび状態に応じて、さらには組成物が投与されるべき経路に応じて変化する。例えば、組成物は有効成分を0.1%〜100%(w/w)含む。
【0061】
有効成分以外に、本発明の医薬組成物は、1種または複数の追加の医薬活性剤をさらに含むことができる。特に企図される追加の薬剤としては制吐薬、止瀉薬、化学療法薬、サイトカインなどが挙げられる。本発明の組成物の制御または持続放出製剤は、従来の技術を用いて製造することができる。
【0062】
本明細書で使用する医薬組成物の「非経口投与」は、対象の組織での物理的な突破口の形成により特徴付けられる任意の投与経路、および組織の突破口(breaching)を通じた医薬組成物の投与を含む。したがって、非経口投与は、組成物の注射、外科的切開による組成物の適用、組織に貫通する非外科的創傷による組成物の適用などによる医薬組成物の投与を含むが、それだけに限定されない。特に、非経口投与は、皮下注射、腹腔内注射、筋肉内注射、胸骨内注射および腎臓透析注入技術を含むがそれだけに限定されないものとする。
【0063】
非経口投与に適した医薬組成物の製剤は、滅菌水または滅菌等張食塩水などの薬学的に許容される担体と組み合わせた有効成分を含む。そのような製剤は、ボーラス投与または逐次投与に適した形態で調製、包装または販売することができる。注射製剤は、防腐剤を含むアンプルまたは複数用量容器などの単位投与形態で調製、包装または販売することができる。非経口投与用製剤としては、懸濁液、溶液、油性または水性媒体中の乳濁液、ペースト、および下記で論じる移植可能な持続放出または生分解性製剤が挙げられるが、それだけに限定されない。そのような製剤は、懸濁化剤、安定化剤または分散剤を含むがそれだけに限定されない1種または複数の追加成分をさらに含むことができる。非経口投与用製剤の一態様では、有効成分は、再構成された組成物の非経口投与に先立ち、好適な媒体(例えば発熱物質なしの滅菌水)で再構成される乾燥(例えば粉末または顆粒)形態で提供される。
【0064】
本発明の組成物は当技術分野で公知の各種方法で投与することができる。投与経路および/または様式は所望の結果に応じて変化する。インプラント、経皮パッチおよびマイクロカプセル送達システムを含む制御放出製剤などの、複合体の急速な放出を防止する担体を有する組成物を調製することができる。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸などの生分解性の生体適合性ポリマーを使用することができる。そのような製剤を調製する多くの方法は、例えばSustained and Controlled Release Drug Delivery Systems,J.R.Robinson,ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York(1978)に記載されている。医薬組成物は、GMPの条件下で好ましく調製される。
【0065】
本発明の化学療法薬複合体有効成分組み合わせは、動物、好ましくはヒトに投与することができる。各有効成分の正確な投与量は、動物の種類および治療される疾患状態の種類、動物の年齢ならびに投与経路を含むがそれだけに限定されない任意の数の要因に応じて変化する。
【実施例1】
【0066】
N−メチル−N−(3−{[2−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−5−イルアミノ)−5−トリフルオロメチル−ピリミジン−4−イルアミノ]−メチル}−ピリジン−2−イル)−メタンスルホンアミドの遊離塩基およびモノベシレート塩の調製および分析
(ステップ1)トリフルオロメチルウラシル(5.00kg、1当量)、オキシ塩化リン(21.50kg、5当量)およびリン酸85重量%水溶液(320g、0.1当量)を、エタノールで沸騰済で苛性スクラバーを取り付けた反応器に充填した。N,N−ジイソプロピルエチルアミン(3.62kg、1当量)を5つの充填量に分け、最初の4つは1リットルで5つ目は0.9リットルであり、反応混合物の温度を20〜40℃に維持する速度で加えた。反応混合物を2時間かけて100℃に加熱し、20時間保持した。20〜30℃に冷却後、反応混合物をヘキサン/水(10L/kg:10L/kg)の撹拌1:1溶液に、温度が50℃を超えず、移送時間が少なくとも3時間になる速度で移送した。ヘキサン層を水(5L/kg)で2回洗浄し、硫酸マグネシウム(1.00kg)で洗浄した後、濾過し、ヘキサン(1L/kg)ですすいだ。ヘキサンを大気圧下、最終蒸留温度75℃、ポット温度100℃で留去した。GCヘッドスペースは、最終生成物に残るヘキサンが2.1%であることを示した。
【0067】
(ステップ2)t−ブチルアルコール(3L/kg)および二臭化亜鉛(5.07kg)を反応器に充填した後、10分間撹拌した。次に、5−アミノオキシンドール(3.00kg)およびジクロロエタン(3L/kg)を加えた後、30分間撹拌した。温度を35℃未満に維持しながら、30分かけてステップ1の生成物を加えた後トリエチルアミンを加え、反応混合物を終夜撹拌した。メタノール(13.5L)を反応混合物に加えた。次に、反応混合物を2つのブフナー漏斗で数時間かけて濾過し、濾過はフィルターケーキを常に動かすことにより支援した。フィルターケーキをメタノール(6.4L)ですすいだ。反応器にメタノール(15L)を充填し、湿潤したケーキを反応器に戻して1時間撹拌し、2つのブフナー漏斗で濾過し、メタノール(2.5L)で洗浄した。粉砕および濾過を繰り返し、生成物を33℃で12時間減圧乾燥した。GCヘッドスペースは、生成物に残るメタノールが0.1%であることを示した。
【0068】
(ステップ3)反応器にイソプロピルアルコール(3L/kg)、トルエン(3L/kg)、ステップ2の生成物(3.61kg)およびN−(3−アミノメチル−2−ピリジル)−N−メチルメタンスルホンアミド二酢酸塩(4.79kg、1.3当量)を充填した。次に、N,N−ジイソプロピルアミンを、温度を10〜25℃に維持する速度で加えた。反応器を還流温度85〜90℃に5時間加熱した後、20〜30℃に冷却して1.4時間保持した。反応混合物をヌッチェフィルターで濾過して固体を単離し、イソプロピルアルコール(10.8L)ですすいだ。アセトニトリル(40.0L)を反応器に加えた後、単離した固体を12時間撹拌した。スラリーをヌッチェフィルターに単離のために移送した。フィルターケーキをアセトニトリル(18.1L)で洗浄した後、乾燥機に40℃で12時間入れた。GCヘッドスペースの結果はアセトニトリル0.48%であった。HPLCの結果は、純度98.49%で、1種の主要不純物が0.97%であった。収率は68.3%であった。
【0069】
(ステップ4)ナルジュグ(Naljug)にベンゼンスルホン酸(1.8kg、1.5当量)および水(2L)を加え、溶液が均一になるまで撹拌した。次に、溶液を反応器にほこりのない(speck-free)条件下で加えた。ステップ3の生成物、式Iの遊離塩基(3.8kg)を別の反応器に充填した後、エタノール/水(20ガロン(約75.7リットル)/15ガロン(約56.8リットル))を充填し、次に70℃に加熱した。熱いスラリーを、塩溶液を含む反応器にほこりのない条件下で移送した。反応器を20〜30℃に2時間かけて冷却した後、20〜30℃に12時間保持した。最初の濾過の時点では固体は回収されなかった。反応液を夾雑物なしの条件下で反応器に戻し、反応器を10〜20℃に冷却した。この物質を溶液から急速に結晶化させ、12時間造粒した。スラリーをヌッチェフィルターで濾過し、固体を単離し、20〜30℃で24時間乾燥させた。この物質をバンタムミルで粉砕した。最終単離量は4.02kgで、全収率は82%であった。
【0070】
式Iのモノベシレート塩(分子量665.67)、形態Aは、直径が約5〜50mmの範囲である形状が不規則な粒子形態を有する白色結晶性固体であった。この無水形態は254℃で融解し(DSC、開始温度)、分解した。この物質は、70℃/75%RH環境に対する3週間の暴露を通じて、非吸湿性であり、固体状態で化学的および物理的に安定していた。
【0071】
溶液中、式Iのモノベシレート塩はpKaが4.58の弱塩基として存在した。この中程度に親油性の分子(cLogP=2.2)は、pH5超での水溶解度が5mgA/mlと低いことがわかった。溶解度は酸性媒体中で増加し、pH2の緩衝液中で観察される溶解度は1mgA/mlであった。非緩衝水(pH2.65)中の溶解度は369mgA/mlであった。エタノールおよびアセトンなどのいくつかの一般的有機溶媒中で測定された溶解度は200mgA/mlであった。下記の表に式Iのモノベシレート塩の物理的および化学的特性をまとめて示す。
【0072】
【表1】
【0073】
この式Iのモノベシレート塩は、形状が不規則な形態を有する、複屈折が中程度から高度である微結晶粒子として現れた。粒子の粒径は約5mm〜50mmの範囲であり、いくつかの凝集体の粒径は最大約200mmであった。この物質をDSCにより5℃/分の加熱速度で試験した(図1B)。開始速度254℃で鋭い融解吸熱が観察された。吸熱の小さいフロントテーリングも観察された。この物質をTGAにより5℃/分の加熱速度で試験した(図1C)。融解開始温度(約250℃)まで重量減はみられなかった。詳細な分析により水0.3%およびエタノール0.7%の存在が明らかになった。したがって、これらの溶媒は結晶を伴う傾向にあり、融解まで放出されなかった。同時の分解を伴う融解は、260℃超での重量減により示唆された。動的吸湿量を、流通型(flow-through)VTI装置を用いて25℃で評価した。サンプルを最初約2%RHで最大2時間乾燥させ、次に吸湿ランプを10%RHから90%にした後、脱湿ランプを10%RHにした。最初の乾燥で0.08重量%除去した後、90%RHでの最大吸湿量は0.09%であった。したがって、この複合体は非吸湿性であった。
【実施例2】
【0074】
N−メチル−N−(3−{[2−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−5−イルアミノ)−5−トリフルオロメチル−ピリミジン−4−イルアミノ]−メチル}−ピリジン−2−イル)−メタンスルホンアミドのモノベシレート塩の調製および分析
N−メチル−N−(3−{[2−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−5−イルアミノ)−5−トリフルオロメチル−ピリミジン−4−イルアミノ]−メチル}−ピリジン−2−イル)−メタンスルホンアミド(200mg、0.39mmol)のエタノール(8mL)溶液を、完全に溶解するまで蒸気浴上で加熱した。水(8mL、約40℃)を溶液に加え、室温に冷却した。エタノール(1mL)中フェニルスルホン酸(67mg、0.41mmol)を当該溶液に加え、5日間撹拌した。溶液を濾過し、乾燥させて標記複合体を白色固体(148mg、57%)として得た。融点255℃(DSC);吸湿度:周囲温度での相対湿度(RH)90%で0.16重量%;特性X線粉末回折ピーク(2θ、[相対強度(%)]):15.891[48.1]、16.197[48.5]、18.085[47.3]、18.445[100]、20.194[44.2]、21.18[37.9]、22.655[74.5]、23.015[99.7]、23.676[45.9]、26.55[45.2]および27.736[45.9];H2O 0.67%を含むモノベシレート塩の燃焼分析(理論値/実験値):炭素(48.39/48.25)、水素(3.99/3.76)、窒素(14.63/14.51)、フッ素(8.50/8.48)、硫黄(9.57/9.92)。
【実施例3】
【0075】
N−メチル−N−(3−{[2−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−5−イルアミノ)−5−トリフルオロメチル−ピリミジン−4−イルアミノ]−メチル}−ピリジン−2−イル)−メタンスルホンアミドのモノメシレート塩の調製および分析
N−メチル−N−(3−{[2−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−5−イルアミノ)−5−トリフルオロメチル−ピリミジン−4−イルアミノ]−メチル}−ピリジン−2−イル)−メタンスルホンアミド(250mg、0.49mmol)のTHF(7.5mL)溶液を、完全に溶解するまで蒸気浴上で加熱した。THF(2.5mL)を溶液に加え、室温に冷却した。メタンスルホン酸(50mg、0.57mmol)を溶液に加え、24時間撹拌した。THF(5mL)を加え、溶液を濾過し、乾燥させて標記複合体を白色固体(300mg、72%)として得た。融点232℃(DSC);吸湿度:周囲温度での相対湿度(RH)90%で1.4重量%;特性X線粉末回折ピーク(2θ、[相対強度(%)]):7.95[70.5]、11.495[48.3]、11.852[48.8]、13.814[37.4]、17.505[100]、18.038[47.3]、18.81[79.3]、19.313[73.6]、19.627[72.2]、20.89[66.8]、22.397[59.1]、23.169[44.2]および27.787[46.3];THF1%を含むモノメシレート塩の燃焼分析(理論値/実験値):炭素(44.01/43.74)、水素(4.08/4.05)、窒素(16.08/15.60)、フッ素(9.35/9.19)、硫黄(10.52/10.82)。
【0076】
式Iのモノメシレート塩のサンプルは10ミクロン未満の微細な複屈折ロッドおよびフレークで構成されていた。粒子は少なくとも2つの異なる消光(extinction)パターンを示し、異なる多形の存在を示唆していた。式Iのモノメシレート塩は、結晶性であり、図2に示すPXRDによる微小な不規則性を有していた。このサンプルの熱プロファイルを、30℃から300℃に5℃/分で加熱することで得た。試験したサンプルは、開始温度57℃で非常に小さい吸熱を示し、開始温度232℃で重複する熱現象を伴う広範な吸熱を示した。このサンプルの熱挙動を、30℃から300℃に5℃/分で加熱しながら光学顕微鏡観察により目視で観察した。モノメシレートは、約170℃から、溶媒の放出に関連する可能性がある粒子運動を示した。漸進的融解が約180℃で始まることが観察され、サンプル全体は235℃で融解した。これらの観察は、広範な融解範囲が複数の形態の混合、および/または、加熱中に生じる多形の転換を含むいくつかの競合する熱プロセスの結果である可能性があることを示唆していた。
【0077】
サンプルを流通型VTI装置で試験し、25℃で相対湿度ランプを0%から90%にした後、脱湿ランプを10%RHにした。このサンプルは90%RHで重量が1.4%増加した。したがって、この物質は動力学的に非吸湿性であると考えられる。モノメシレートの炭素、水素、窒素、フッ素および硫黄の元素組成を分析した。分析結果は、THF1%を含むモノメシレート塩の化学量論と一致していた。
【実施例4】
【0078】
N−メチル−N−(3−{[2−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−5−イルアミノ)−5−トリフルオロメチル−ピリミジン−4−イルアミノ]−メチル}−ピリジン−2−イル)−メタンスルホンアミドのトシレート塩の調製および分析
N−メチル−N−(3−{[2−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−5−イルアミノ)−5−トリフルオロメチル−ピリミジン−4−イルアミノ]−メチル}−ピリジン−2−イル)−メタンスルホンアミド(5.4g、10.6mmol)のエタノール(250mL)溶液を、完全に溶解するまで蒸気浴上で加熱した。溶液を室温に冷却し、エタノール(30mL)中p−トルエンスルホン酸(2.2g、11.2mmol)を溶液に加え、12時間撹拌した。溶液を濾過し、乾燥させて標記複合体を白色固体(5.6g、78%)として得た。融点237℃(DSC);吸湿度:周囲温度での相対湿度(RH)90%で0.6重量%;特性X線粉末回折ピーク(2θ、[相対強度(%)]):4.4[37.4]、6.425[81.5]、7.537[48.1]、12.925[42.1]、15.132[79.1]、17.582[47.4]、18.009[51.1]、18.531[100]、19.493[52.4]、19.888[91]、21.647[56.4]、21.987[70.1]、25.305[79.3]、25.913[79.3]および27.787[46.3];半水和物としてのモノトシレート塩の燃焼分析(理論値/実験値):炭素(48.83/48.83)、水素(4.24/3.96)、窒素(14.24/14.02)、フッ素(8.28/8.32)、硫黄(9.31/9.42)。
【0079】
式Iの半水和物トシレート塩は、微細な複屈折凝集針状物およびレーズ(lathe)から構成されていた。このサンプルはPXRDによれば結晶性であった。このサンプルの熱プロファイルを、30℃から300℃に5℃/分で加熱することで得た。サンプルは、形態Aの融解開始温度216℃よりも高い開始温度237℃で単一の主要な吸熱を示した。このサンプルの揮発分を、30℃から225℃に5℃/分で加熱することで得た。全揮発分は1.4%であり、赤外線によれば水およびエタノールで構成されていた。サンプルを流通型VTI装置で試験し、相対湿度ランプを25℃で0%から90%にした。このサンプルは90%RHで重量が0.6%増加した。それは動力学的に非吸湿性である。
【実施例5】
【0080】
N−メチル−N−(3−{[2−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−5−イルアミノ)−5−トリフルオロメチル−ピリミジン−4−イルアミノ]−メチル}−ピリジン−2−イル)−メタンスルホンアミドの塩酸塩の調製および分析
N−メチル−N−(3−{[2−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−5−イルアミノ)−5−トリフルオロメチル−ピリミジン−4−イルアミノ]−メチル}−ピリジン−2−イル)−メタンスルホンアミド(100mg、0.20mmol)のエタノール(5mL)溶液を、完全に溶解するまで蒸気浴上で加熱した。エタノール(1mL)を溶液に加え、室温に冷却した。塩酸(ジオキサン中4M、0.054mL、0.22mmol)を溶液に加え、7日間撹拌した。反応混合物を濾過し、乾燥させて標記複合体を白色固体として得た。融点124℃(DSC);吸湿度:周囲温度での相対湿度(RH)90%で2.7重量%;特性X線粉末回折ピーク(2θ、[相対強度(%)]):3.632[42.9]、4.889[36]、5.824[54.8]、7.998[92.7]、11.458[60.7]、12.725[46.5]、14.911[68.3]、15.528[61.1]、18.545[83.2]、19.147[67.3]、20.747[61.4]、21.04[51.2]、22.696[40.3]、23.293[45.5]、25.198[39.9]、26.05[100]および26.32[83.2];無水物としての一塩酸塩の燃焼分析(理論値/実験値):炭素(46.37/46.39)、水素(3.89/3.88)、窒素(18.03/17.83)、フッ素(10.48/10.69)、硫黄(5.89/5.88)。
【実施例6】
【0081】
N−メチル−N−(3−{[2−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−5−イルアミノ)−5−トリフルオロメチル−ピリミジン−4−イルアミノ]−メチル}−ピリジン−2−イル)−メタンスルホンアミドの塩酸塩の調製および分析
N−メチル−N−(3−{[2−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−5−イルアミノ)−5−トリフルオロメチル−ピリミジン−4−イルアミノ]−メチル}−ピリジン−2−イル)−メタンスルホンアミド(250mg、0.49mmol)のTHF(10mL)溶液を、完全に溶解するまで蒸気浴上で加熱した。溶液を室温に冷却し、塩酸(エチルエーテル2M、0.27mL、0.52mmol)を溶液に加え、24時間撹拌した。反応混合物を濾過し、乾燥させて標記複合体を白色固体(250mg、94%)として得た。融点220℃(DSC);吸湿度:周囲温度での相対湿度(RH)90%で1.4重量%;特性X線粉末回折ピーク(2θ、[相対強度(%)]):6.321[56.4]、7.904[100]、18.498[53.3]、21.02[36.7]および26.558[41.3];9%THFを含む無水物としての一塩酸塩の燃焼分析(理論値/実験値):炭素(48.2/47.7)、水素(4.55/4.45)、窒素(16.4/15.8)、フッ素(9.53/9.24)、硫黄(5.36/6.09)、塩素(5.93/5.70)。
【0082】
本発明の範囲は、本明細書に記載の特定の態様に限定されるものではない。実際、本明細書に記載の態様以外に、本発明の各種の変形形態が、上記の記載および添付の図面より当業者には明らかであろう。このような変形形態は添付の特許請求の範囲内にあるものとする。
【0083】
本明細書に引用したすべての特許、特許出願、刊行物、試験方法、文献および他の資料は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、哺乳動物の癌などの異常な細胞増殖の治療に有用な、新規のピリミジン誘導体の塩、溶媒和物および準化学量論的溶媒和物に関する。より詳細には、本発明は、哺乳動物、特にヒトの異常な細胞増殖の治療に有用な2,4−ジアミノ置換ピリミジンのベシレート、メシレート、トシレートおよび塩酸塩、ならびにそのような複合体を含む医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、式Iを有するN−[3−[[[2−[(2,3−ジヒドロ−2−オキソ−1H−インドール−5−イル)アミノ]−5−(トリフルオロメチル)−4−ピリミジニル]アミノ]メチル]−2−ピリジニル]−N−メチルメタンスルホンアミドの複合体に関する。
【0003】
【化1】
【0004】
非晶質遊離塩基の形態の式Iは、2005年5月12日に出願された同時係属の米国特許出願第11/127,809号に記載されており、その開示内容の全体が参照により本明細書に組み込まれる。上記出願は本願と同一出願人による。式Iの非晶質遊離塩基は、癌などの過剰増殖性疾患の治療に有用である。
本発明は、式Iの塩および溶媒和物、より詳細には式Iのベシレート、メシレート、トシレートおよび塩酸塩、ならびに式Iのこれらの各種形態(本明細書では式Iの複合体と呼ぶ)を含む医薬組成物の製造方法に関する。本発明の複合体は、哺乳動物、特にヒトの癌などの過剰増殖性疾患の治療に有用である。本発明はまた、式Iの複合体を投与して過剰増殖性疾患を治療する方法に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願第11/127,809号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、本発明はN−[3−[[[2−[(2,3−ジヒドロ−2−オキソ−1H−インドール−5−イル)アミノ]−5−(トリフルオロメチル)−4−ピリミジニル]アミノ]メチル]−2−ピリジニル]−N−メチルメタンスルホンアミドの各種複合体を提供する。
【0007】
一態様では、本発明はN−[3−[[[2−[(2,3−ジヒドロ−2−オキソ−1H−インドール−5−イル)アミノ]−5−(トリフルオロメチル)−4−ピリミジニル]アミノ]メチル]−2−ピリジニル]−N−メチルメタンスルホンアミドの薬学的に許容できる塩に関する。特に、本発明はN−[3−[[[2−[(2,3−ジヒドロ−2−オキソ−1H−インドール−5−イル)アミノ]−5−(トリフルオロメチル)−4−ピリミジニル]アミノ]メチル]−2−ピリジニル]−N−メチルメタンスルホンアミドのベシレート塩;N−[3−[[[2−[(2,3−ジヒドロ−2−オキソ−1H−インドール−5−イル)アミノ]−5−(トリフルオロメチル)−4−ピリミジニル]アミノ]メチル]−2−ピリジニル]−N−メチルメタンスルホンアミドのメシレート塩;N−[3−[[[2−[(2,3−ジヒドロ−2−オキソ−1H−インドール−5−イル)アミノ]−5−(トリフルオロメチル)−4−ピリミジニル]アミノ]メチル]−2−ピリジニル]−N−メチルメタンスルホンアミドのトシレート塩;およびN−[3−[[[2−[(2,3−ジヒドロ−2−オキソ−1H−インドール−5−イル)アミノ]−5−(トリフルオロメチル)−4−ピリミジニル]アミノ]メチル]−2−ピリジニル]−N−メチルメタンスルホンアミドの塩酸塩を提供する。
【0008】
本発明の一態様では、N−[3−[[[2−[(2,3−ジヒドロ−2−オキソ−1H−インドール−5−イル)アミノ]−5−(トリフルオロメチル)−4−ピリミジニル]アミノ]メチル]−2−ピリジニル]−N−メチルメタンスルホンアミドの各種の塩は準化学量論的溶媒和物である。例えば、準化学量論的溶媒和物はエタノールを含んでいてもよい。
【0009】
さらなる態様では、本発明は、図1E、2B、3Bおよび4Dに示すX線粉末回折スペクトルと実質的に同一のX線粉末回折スペクトルを示す複合体を提供する。
本発明はまた、N−[3−[[[2−[(2,3−ジヒドロ−2−オキソ−1H−インドール−5−イル)アミノ]−5−(トリフルオロメチル)−4−ピリミジニル]アミノ]メチル]−2−ピリジニル]−N−メチルメタンスルホンアミドの準化学量論的溶媒和物を提供する。一態様では、溶媒和物は水、アルコール、極性有機溶媒およびそれらの組み合わせからなる群から選択される溶媒を含む。さらなる態様では、溶媒は水、エタノールおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される。別の態様では、溶媒和物はエタノールを約0.1〜約3モル%の範囲で、好ましくは約0.4〜約2モル%の範囲で含む。
【0010】
本発明はまた、異常な細胞増殖の治療に有効な量の本明細書に記載の塩または溶媒和物、および薬学的に許容できる担体または希釈剤を含む医薬組成物を提供する。
本発明はさらに、哺乳動物の異常な細胞増殖を治療する方法であって、異常な細胞増殖の治療に有効な量の本明細書に記載の塩または溶媒和物を前記哺乳動物に投与することを含む方法を提供する。一態様では、異常な細胞増殖は癌であり、さらなる態様では、癌は、肺癌、骨癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頸部癌、皮膚もしくは眼内黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門部癌、胃癌、結腸癌、乳癌、子宮癌、ファロピー管癌、子宮内膜癌、子宮頸部癌、膣癌、外陰癌、ホジキン病、食道癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟部組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、前立腺癌、慢性もしくは急性白血病、リンパ球性リンパ腫、膀胱癌、腎臓もしくは尿管癌、腎細胞癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)の新生物、原発性CNSリンパ腫、脊髄軸腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、または上記の癌の1種または複数の組み合わせからなる群から選択される。好ましくは、本発明は、哺乳動物の癌固形腫瘍を治療する方法であって、前記癌固形腫瘍の治療に有効な量の上記の塩または溶媒和物を前記哺乳動物に投与することを含む方法を提供する。そのような固形腫瘍は、乳癌、肺癌、結腸癌、脳腫瘍、前立腺癌、胃癌、膵癌、卵巣癌、皮膚癌(黒色腫)、内分泌癌、子宮癌、精巣癌または膀胱癌から選択される。
【0011】
最後に、本発明はまた、哺乳動物の異常な細胞増殖を治療する方法であって、異常な細胞増殖の治療に有効な量の本明細書に記載の塩または溶媒和物を、有糸分裂阻害剤、アルキル化剤、代謝拮抗剤、挿入抗生物質、増殖因子阻害剤、放射線、細胞周期阻害剤、酵素、トポイソメラーゼ阻害剤、生体応答調節物質、抗体、細胞毒性剤、抗ホルモン剤および抗アンドロゲン剤からなる群から選択される抗腫瘍剤と組み合わせて前記哺乳動物に投与することを含む方法を提供する。
本発明は例えば、以下の項目を提供する:
(項目1)
N−[3−[[[2−[(2,3−ジヒドロ−2−オキソ−1H−インドール−5−イル)アミノ]−5−(トリフルオロメチル)−4−ピリミジニル]アミノ]メチル]−2−ピリジニル]−N−メチルメタンスルホンアミドの薬学的に許容できる塩。
(項目2)
前記塩がベシレート塩である、項目1に記載の化合物の塩。
(項目3)
前記塩がメシレート塩である、項目1に記載の化合物の塩。
(項目4)
前記塩がトシレート塩である、項目1に記載の化合物の塩。
(項目5)
前記塩が塩酸塩である、項目1に記載の化合物の塩。
(項目6)
前記塩が準化学量論的溶媒和物である、項目1から5のいずれか一項に記載の塩。
(項目7)
前記準化学量論的溶媒和物がエタノールを含む、項目6に記載の塩。
(項目8)
N−[3−[[[2−[(2,3−ジヒドロ−2−オキソ−1H−インドール−5−イル)アミノ]−5−(トリフルオロメチル)−4−ピリミジニル]アミノ]メチル]−2−ピリジニル]−N−メチルメタンスルホンアミドの準化学量論的溶媒和物。
(項目9)
前記溶媒和物が、水、アルコール、極性有機溶媒およびそれらの組み合わせからなる群から選択される溶媒を含む、項目8に記載の溶媒和物。
(項目10)
前記溶媒が、水、エタノールおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目9に記載の溶媒和物。
(項目11)
前記溶媒和物がエタノールを約0.1〜約3モル%の範囲で含む、項目10に記載の溶媒和物。
(項目12)
異常な細胞増殖の治療に有効な量の項目1から11のいずれか一項に記載の塩または溶媒和物、および薬学的に許容できる担体または希釈剤を含む医薬組成物。
(項目13)
前記異常な細胞増殖が癌である、項目12に記載の医薬組成物。
(項目14)
異常な細胞増殖の治療に有効な量の項目1から11のいずれか一項に記載の塩または溶媒和物を、有糸分裂阻害剤、アルキル化剤、代謝拮抗剤、挿入抗生物質、増殖因子阻害剤、放射線、細胞周期阻害剤、酵素、トポイソメラーゼ阻害剤、生体応答調節物質、抗体、細胞毒性剤、抗ホルモン剤および抗アンドロゲン剤からなる群から選択される抗腫瘍剤と共に含む、哺乳動物の異常な細胞増殖を治療するための組み合わせ物。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1A】式Iのモノベシレート塩の偏光顕微鏡写真の図である。
【図1B】式Iのモノベシレート塩のDSCスキャンの図である。
【図1C】式Iのモノベシレート塩のTGAの図である。
【図1D】式Iのモノベシレート塩のVTI水分吸着/脱離等温線の図である。
【図1E】式Iのモノベシレート塩のPXRDの図である。
【図2A】式Iのモノメシレート塩の偏光顕微鏡写真の図である。
【図2B】式Iのモノメシレート塩のPXRDの図である。
【図2C】式Iのモノメシレート塩のDSCスキャンの図である。
【図2D】式Iのモノメシレート塩のVTI水分吸着/脱離等温線の図である。
【図3A】式Iのトシレート塩の偏光顕微鏡写真の図である。
【図3B】式Iのトシレート塩のPXRDの図である。
【図3C】式Iのトシレート塩のDSCスキャンの図である。
【図3D】式Iのトシレート塩のVTI水分吸着/脱離等温線の図である。
【図3E】式Iのトシレート塩のTGIR分析の図である。
【図4A】式Iの塩酸塩の偏光顕微鏡写真の図である。
【図4B】式Iの塩酸塩のPXRDの図である。
【図4C】式Iの塩酸塩のPXRDの図である。
【図4D】式Iの塩酸塩のDSCスキャンの図である。
【図4E】式Iの塩酸塩のVTI水分吸着/脱離等温線の図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書で特に定義しない限りは、本発明に関して使用される科学および技術用語は、当業者に普通に理解される意味を有するものとする。さらに、文脈により必要とする場合を除いて、単数形の用語は複数形の用語を含むものとし、複数形の用語は単数形の用語を含むものとする。本明細書で使用する以下の各用語は、このセクションにおいてそれと関連する意味を有する。本明細書で使用する冠詞「a」および「an」は、その冠詞の文法上の対象が1つまたは複数(すなわち少なくとも1)であることを意味する。例えば、「ある要素(an element)」は1つまたは複数の要素を意味する。
本発明は式Iの塩および溶媒和物に関する。本明細書で使用する「溶媒和物」という用語は、溶質のイオンまたは分子と1つまたは複数の溶媒分子との組み合わせからなる化合物を意味し、したがって「溶媒和物」は溶質と溶媒との凝集体を意味する。あるいは、本発明は、1つ未満の溶媒分子を溶質のイオンまたは分子と組み合わせた、式Iの「準化学量論的溶媒和物」に関する。「溶媒和物」および「準化学量論的溶媒和物」という用語は、溶質の溶媒分子に対する固定した比を必ずしも必要とはしない。好適な溶媒分子としては水、アルコールおよび他の極性有機溶媒が挙げられる。好適なアルコールとしてはメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノールおよびt−ブタノールが挙げられる。好ましい態様では、溶媒は水またはエタノールである。より好ましい態様では、溶媒はエタノールであり、約0.1〜約3モル%のエタノールが溶媒和物中に存在し、より好ましくは約0.4〜約2モル%のエタノールが溶媒和物中に存在する。好適なアルコールとしては、ポリアルキレングリコール(例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール)などの重合アルコールも挙げられる。溶媒が水である場合、水との溶媒和により形成される溶媒和化合物または複合体を水和物と呼ぶ。一態様では、溶媒和物は結晶性である。式Iの溶媒和物は、式Iの化合物を溶媒から、式Iの化合物に対する水素結合相互作用を供与および/または受容可能な分子の存在下で結晶化させることにより調製することができる。
【0014】
本発明の塩は、式Iの遊離塩基と溶媒とを接触させることで調製される。好適な溶媒としては水、アルコール、他の極性有機溶媒およびそれらの組み合わせが挙げられる。メタノールが好ましい溶媒である。遊離塩基を好適な酸と反応させて、式Iが塩を形成し、好ましくは溶解するようにする。好適な酸を溶媒と共に(すなわち溶媒に溶解した状態で)式Iの遊離塩基に加え、遊離塩基を本質的に同時に溶媒和およびプロトン化させてもよく、あるいは遊離塩基を溶媒と接触させた後で塩基を加えてもよい。後者のシナリオでは、塩基は溶媒に溶解させることができ、溶媒は、遊離塩基に既に接触している溶媒、または滑らかな(neat)固体もしくは液体として加えることが可能な異なる溶媒、あるいはそれらの組み合わせであることができる。溶媒を蒸発させた後で、塩を結晶化のため適する溶媒中に再溶解させることができる。濾過の後に種結晶を加えることを、塩を結晶させる代替手順として使用してもよい。いずれの場合でも、適する溶媒または種結晶は塩の結晶化促進剤として働く。使用する溶媒に応じて、塩は蒸発とは関係なく析出および/または結晶化することができる。塩の結晶を濾過してバルク溶媒を除去することができる。
【0015】
好ましい態様では、式Iの遊離塩基をモル過剰量の適する酸と適する溶媒中で組み合わせる。式Iのベシレート塩を得ようとする場合、遊離塩基をモル過剰量、例えば3当量まで、好ましくは2当量まで、より好ましくは1.5当量までのベンゼンスルホン酸と組み合わせる。式Iのメシレート塩を得ようとする場合、遊離塩基をモル過剰量、例えば3当量まで、好ましくは2当量まで、より好ましくは1.5当量までのメタンスルホン酸と組み合わせる。式Iのトシレート塩を得ようとする場合、遊離塩基をモル過剰量、例えば3当量まで、好ましくは2当量まで、より好ましくは1.5当量までのp−トルエンスルホン酸と組み合わせる。最後に、式Iの塩酸塩を得ようとする場合、遊離塩基をモル過剰量、例えば3当量まで、好ましくは2当量まで、より好ましくは1.5当量までの塩酸と組み合わせる。この一般的手順を当業者が改変して、無毒の酸付加塩、例えば臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、リン酸塩、酸リン酸塩、イソニコチン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、クエン酸塩、酸クエン酸塩、酒石酸塩、パントテン酸塩、酒石酸水素塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチシン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、サッカリン酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、エタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩およびパモ酸塩[すなわち1,1’−メチレン−ビス−(2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸塩)]などの薬理学的に許容できるアニオンを含む塩を形成する式Iの付加塩を含むがそれだけに限定されない、式Iの各種の追加の塩を調製することができる。式Iの遊離塩基は、上記の酸以外にも、各種のアミノ酸と薬学的に許容できる塩を形成することができる。
【0016】
式Iの塩は、第1の塩のカチオンを置き換える金属交換反応または別の工程により式Iの第2の塩に転換することができる。一例では、式Iのカリウム塩を調製し、次にアルカリ土類金属ハロゲン化物(例えばMgBr2、MgCl2、CaCl2、CaBr2)、アルカリ土類金属硫酸塩もしくは硝酸塩(例えばMg(NO3)2、Mg(SO4)2、Ca(NO3)2、Ca(SO4)2)、または有機酸のアルカリ土類金属塩(例えばギ酸カルシウム、ギ酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム、プロピオン酸カルシウム、プロピオン酸マグネシウム)などの第2の塩と反応させて式Iのアルカリ土類金属塩を形成する。
【0017】
式Iの塩は、溶媒和分子を化学量論的または準化学量論的量で含むことができ、溶媒和物としても知られる各種の溶媒和状態にあることができる。本発明の塩の異なる溶媒和物は、調製方法を改変することで得ることができる。溶媒和物の溶解度は通常異なり、したがって熱力学的な安定度の高い溶媒和物は、熱力学的な安定度の低い溶媒和物に比べて溶解度が低い。また、溶媒和物は保管期限、バイオアベイラビリティ、形態学、蒸気圧、密度、色調および衝撃感度(shock sensitivity)などの特性も異なることがある。本発明の複合体は、増強した保管期限、バイオアベイラビリティ、形態学、蒸気圧、密度、色調および衝撃感度を含むがそれだけに限定されない、対応する非晶形に関連する増強した特性を示す。適する溶媒和分子としては水、アルコール、他の極性有機溶媒およびそれらの組み合わせが挙げられる。アルコールとしてはメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノールおよびt−ブタノールが挙げられる。水が好ましい溶媒である。溶媒和分子を結晶性塩から除去して、塩を部分または完全脱溶媒和物にすることができる。溶媒和分子が水である(水和物を形成する)場合、脱溶媒和した塩は脱水物と呼ばれる。すべての水が除去された塩は無水である。溶媒和分子は、加熱、真空または減圧下での処理、塩に対する空気の吹き付けまたはそれらの組み合わせなどの方法で塩から除去することができる。
【0018】
上記に列挙した形態の1つでの本発明の塩は、1種または複数の他の物質と共結晶化することができる。他の1種または複数の物質は、例えば塩、遊離酸または遊離塩基でよく、水素結合および他のエネルギー的に好ましい手段を通じて塩と相互作用することができる。
【0019】
本発明の別の態様では、本発明の塩は実質的に純粋である。実質的に純粋な塩は、純度が約80%を超え、純度が約85%を超え、純度が約90%を超え、純度が約95%を超え、純度が約98%を超え、または純度が約99%を超えることができる。塩の純度は、(未反応の中性の式Iまたは塩基ではなく)塩の量について測定することができ、あるいは塩の特定の溶媒和物、多形、脱溶媒和物、水和物、脱水物または無水物の形態について測定することができる。
【0020】
本発明の塩および溶媒和物は、元素分析、偏光顕微鏡観察、粉末X線回折(PXRD)、示差走査熱量測定(DSC)、熱重量分析(thermal gravimetric analysis: TGA)、赤外分光を伴う熱重量分析(TGIR)およびVTI水蒸気吸着を含むがそれだけに限定されない、当技術分野で公知の任意の方法で特徴付けることができる。式Iのモノベシレート、モノメシレートおよび半水和モノトシレート塩の粉末X線回折スペクトルは、それぞれ、図1〜3に示す粉末X線回折スペクトルと実質的に同一である。しかし、PXRDスペクトルは測定条件によっては測定誤差を伴って得られる場合があることが知られている。特に、PXRDスペクトルの強度は測定条件によって変動する場合があることが一般に知られている。したがって、本発明の塩は、PXRDスペクトルが図1〜3に示すスペクトルと完全に同一である結晶に限定されず、PXRDスペクトルが上記のPXRDスペクトルと実質的に同一であるいずれの結晶も本発明の範囲内であることを理解されたい。PXRDの分野に熟練した者であればPXRDスペクトルの実質的同一性を容易に判定可能である。一般に、通常のPXRDの回折角の測定誤差は約5%以下であり、回折角に関してはその程度の測定誤差であれば考慮に入れるべきである。さらに、強度が実験条件によって変動する場合があることも理解されたい。
【0021】
例えば、本発明の塩および溶媒和物は示差走査熱量測定(DSC)により特徴付けることができる。式Iのベシレート塩は、約245〜255℃での単一の主要な吸熱により特徴付けられる。式Iのメシレート塩は、開始(オンセット)温度約57℃での小さい吸熱および開始温度約232℃での広範な吸熱によりにより特徴付けられる。式Iのトシレート塩は、開始温度約237℃での単一の主要な吸熱により特徴付けられる。
【0022】
本発明の塩および溶媒和物は熱重量分析(TGA)により特徴付けることもできる。式Iのベシレート塩のTGAプロファイルは、約255℃までで0.5%未満の溶媒/水損失を示す。溶媒/水は強固に結合し、融解まで放出されずにいることができる。TGIR(赤外分光を伴う熱重量分析)によれば、式Iのトシレート塩の水およびエタノールからなる全揮発分含量は1.4%である。
【0023】
本発明の塩および溶媒和物は、吸湿性を測定するVTI水蒸気吸着でさらに特徴付けることができる。式Iのベシレート塩は、この試験における相対湿度(RH)90%での重量増が0.16%であった。式Iのメシレート塩の90%RHでの重量増が1.4%、式Iのトシレート塩の90%RHでの重量増が0.6%であった。他の分析方法は実施例で詳述する。
【0024】
本発明の「複合体」とは、本明細書に記載の式Iの塩、溶媒和物または準化学量論的溶媒和物のいずれかを一般的に意味する。
「医薬組成物」とは、本明細書に記載の1種もしくは複数の複合体と、生理学的/薬学的に許容できる担体および賦形剤などの他の成分との混合物を意味する。医薬組成物の目的は、複合体の生物に対する投与を容易にすることである。
【0025】
本明細書で使用する「生理学的/薬学的に許容できる担体」とは、生物に対して重大な刺激作用を引き起こさず、投与される複合体の生物活性および特性を排除しない担体または希釈剤を意味する。「薬学的に許容できる賦形剤」とは、複合体の投与をさらに促進するために医薬組成物に加えられる不活性物質を意味する。賦形剤としては例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、各種糖およびデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油ならびにポリエチレングリコール類が挙げられるが、それだけに限定されない。
【0026】
本明細書で使用する「有効量」または「治療有効量」という用語は、哺乳動物、好ましくはヒトに投与された際に、複合体が存在しない状態で検出される応答と比較して検出可能な治療応答を媒介する量を意味する。全生存率の増大、腫瘍増殖(腫瘍の大きさの均衡を含む)、腫瘍の大きさ、転移の阻害および/または減少などであるがそれだけに限定されない治療応答は、例えば本明細書に記載の方法を含む多くの当技術分野で認知されている方法により容易に評価することができる。「治療有効量」または「有効量」は、以下のものを含むがそれだけに限定されない、異常増殖障害の1つまたは複数の症状を検出可能にある程度減少させるために必要な薬剤の量が適切であることを意図している:(1)癌細胞数の減少、(2)腫瘍の大きさの減少、(3)癌細胞の末梢器官に対する浸潤の阻害(すなわち、ある程度の遅延、好ましくは停止)、(4)腫瘍転移の阻害(すなわち、ある程度の遅延、好ましくは停止)、(5)腫瘍増殖のある程度の阻害、(6)当該障害に関連する1つまたは複数の症状のある程度の緩和または減少、(7)抗癌剤の投与に関連する副作用の緩和または減少、および/あるいは(8)所与の腫瘍の種類または異常増殖障害の治療基準について観察される全生存率に対する、患者の全生存率のある程度の増大。
【0027】
「維持有効量」とは、(1)癌細胞数の増大の阻害、(2)腫瘍の大きさの増大の阻害、(3)癌細胞の末梢器官に対する浸潤の阻害、(4)腫瘍転移の阻害、(5)障害に関連する1つまたは複数の症状のある程度の緩和または減少、および/あるいは(6)障害に関連する1つまたは複数の症状の再発または発症の阻害を含むがそれだけに限定されない、治療計画中に得られる治療上の利点を検出可能に維持するために必要な薬剤の量が適切であることを意図している。
【0028】
本明細書中に提供される教示と合わせて、各種の活性複合体の中から選択し、効力、相対的バイオアベイラビリティ、患者の体重、副作用の重症度および好ましい投与様式などの要因を考慮することで、実質的な毒性を引き起こさず、なおかつ特定の対象を治療する上で完全に有効である、有効な予防もしくは治療に関する治療計画または維持相を策定することができる。任意の特定の適用に関する治療または維持有効量は、治療される疾患または状態、疾患または状態の重症度ならびに対象の健康およびサイズなどの要因に応じて変化し得る。当業者であれば、単独での、あるいは1種または複数の追加の化学療法薬、緩和剤および/または他の治療薬と併用される本発明の複合体の治療有効量を、必要以上の実験をせず経験的に決定することができる。
【0029】
本明細書で使用する「治療する」とは、患者が疾患の症状(すなわち、腫瘍増殖および/または転移、あるいは免疫細胞の数および/または活性により媒介される他の作用など)を経験する頻度を減少させることを意味する。この用語は、本発明の複合体を単独で、あるいは1種または複数の追加の治療薬と併用して投与することで疾患の症状、合併症または生化学的徴候(例えば前立腺癌におけるPSAレベルの上昇)の発症を予防または遅延させるか、症状を緩和させるか、あるいは疾患、状態または障害のさらなる進行を停止または阻害することを含む。治療は予防的(疾患の発症を予防または遅延させるか、その臨床的または準臨床的症状の発現を予防する)であることもあれば、疾患の発現後における症状の治療的抑制または緩和であることもある。
【0030】
本明細書で使用する「予防する」とは、患者が経験する疾患の症状(すなわち、腫瘍増殖および/または転移、あるいは免疫細胞の数および/または活性により媒介される他の作用など)の発症または進行を阻害することを意味する。この用語は、本発明の複合体を単独で、あるいは1種または複数の追加の治療薬と併用して投与することで疾患の症状、合併症または生化学的徴候(例えば前立腺癌におけるPSAレベルの上昇)の発症を阻害または遅延させることを含む。
【0031】
本発明の複合体の治療有効量または維持有効量は、動物モデルから最初に決定することができる。治療有効量または維持有効量は、同様の薬理活性を示すことが知られている本発明の複合体に関するヒトデータから決定することもできる。非経口投与にはより多い用量が必要な場合がある。適用される用量は、投与される複合体の相対的バイオアベイラビリティおよび効力に基づいて調節することができる。上記の方法および当技術分野で周知の他の方法に基づいて用量を調節して最大効力を得ることは十分に当業者の能力の範囲内である。
【0032】
特記なき限り、「患者」または「対象」という用語は互換的に使用され、ヒト患者および非ヒト霊長類などの哺乳動物、ならびにウサギ、ラット、ネズミおよび他の動物などの獣医学的対象を意味する。好ましくは、患者はヒトを意味する。
【0033】
本発明はまた、ヒトを含む哺乳動物の異常な細胞増殖を治療する方法であって、異常な細胞増殖の治療に有効な量の上記で定義した式Iの複合体を前記哺乳動物に投与することを含む方法に関する。この方法の一態様では、異常な細胞増殖は、肺癌、骨癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頸部癌、皮膚もしくは眼内黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門部癌、胃癌、結腸癌、乳癌、子宮癌、ファロピー管癌、子宮内膜癌、子宮頸部癌、膣癌、外陰癌、ホジキン病、食道癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟部組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、前立腺癌、慢性もしくは急性白血病、リンパ球性リンパ腫、膀胱癌、腎臓もしくは尿管癌、腎細胞癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)の新生物、原発性CNSリンパ腫、脊髄軸腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、または上記の癌の1種または複数の組み合わせを含むが、それだけに限定されない癌である。一態様では、本方法は、前記癌固形腫瘍の治療に有用な量の式Iの複合体を哺乳動物に投与することを含む。好ましい一態様では、固形腫瘍は、乳癌、肺癌、結腸癌、脳腫瘍、前立腺癌、胃癌、膵癌、卵巣癌、皮膚癌(黒色腫)、内分泌癌、子宮癌、精巣癌および膀胱癌である。
【0034】
前記方法の別の態様では、前記異常な細胞増殖は、乾癬、良性前立腺肥大症または再狭窄を含むが、それだけに限定されない良性増殖性疾患である。
本発明はまた、哺乳動物の異常な細胞増殖を治療する方法であって、異常な細胞増殖の治療に有効な量の式Iの複合体を、有糸分裂阻害剤、アルキル化剤、代謝拮抗剤、挿入抗生物質、増殖因子阻害剤、細胞周期阻害剤、酵素、トポイソメラーゼ阻害剤、生体応答調節物質、抗体、細胞毒性剤、抗ホルモン剤および抗アンドロゲン剤からなる群から選択される抗腫瘍剤と組み合わせて前記哺乳動物に投与することを含む方法に関する。本発明の複合体と併用可能である好適な治療薬の非制限的リストは米国特許出願第11/127,809号において提供され、その開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0035】
本発明はまた、ヒトを含む哺乳動物の異常な細胞増殖を治療する医薬組成物であって、異常な細胞増殖の治療に有効な量の上記で定義した式Iの複合体、および薬学的に許容できる担体を含む組成物に関する。前記組成物の一態様では、前記異常な細胞増殖は、肺癌、骨癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頸部癌、皮膚もしくは眼内の黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門部癌、胃癌、結腸癌、乳癌、子宮癌、ファロピー管癌、子宮内膜癌、子宮頸部癌、膣癌、外陰癌、ホジキン病、食道癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟部組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、前立腺癌、慢性もしくは急性白血病、リンパ球性リンパ腫、膀胱癌、腎臓もしくは尿管癌、腎細胞癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)の新生物、原発性CNSリンパ腫、脊髄軸腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、または上記の癌の1種または複数の組み合わせを含むが、それだけに限定されない癌である。前記医薬組成物の別の態様では、前記異常な細胞増殖は、乾癬、良性前立腺肥大症または再狭窄を含むが、それだけに限定されない良性増殖性疾患である。
【0036】
本発明はまた、ヒトを含む哺乳動物の血管形成に関連する障害を治療する方法であって、前記障害の治療に有効な量の上記で定義した式Iの複合体またはその薬学的に許容できる塩、溶媒和物もしくはプロドラッグを、1種または複数の上記で列挙した抗腫瘍剤と組み合わせて前記哺乳動物に投与することを含む方法に関する。そのような障害としては、黒色腫などの腫瘍;加齢黄斑変性、推定眼ヒストプラスマ症候群および増殖性糖尿病性網膜症による網膜新血管新生などの眼球障害;関節リウマチ;骨粗鬆症、ページェット病、悪性体液性高カルシウム血症、骨転移性腫瘍による高カルシウム血症およびグルココルチコイド治療により誘発される骨粗鬆症などの骨量減少障害;冠血管再狭窄;ならびにアデノウイルス、ハンタウイルス、ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdoferi)、エルシニア属(Yersinia spp.)、百日咳菌およびA群連鎖球菌から選択される微生物病原体と関連する感染症を含む一定の微生物感染症が挙げられる。
【0037】
本発明はまた、哺乳動物の異常な細胞増殖を治療する方法(組み合わせ物、又は医薬組成物)であって、式Iの複合体またはその薬学的に許容できる塩、溶媒和物もしくはプロドラッグを、抗血管形成剤、シグナル伝達阻害剤および抗増殖剤から選択される1種または複数の物質と組み合わせて、その合計量が前記異常な細胞増殖の治療に有効な量で含む方法(組み合わせ物、又は医薬組成物)に関する。
【0038】
本明細書で使用する「異常な細胞増殖」とは、特記なき限り、正常な調節機序とは無関係の細胞増殖(例えば接触阻害の喪失)を意味する。この用語は、(1)変異チロシンキナーゼの発現または受容体チロシンキナーゼの過剰発現により増殖する腫瘍細胞(腫瘍)、(2)異常なチロシンキナーゼの活性化が生じる他の増殖性疾患の良性および悪性細胞、(4)受容体チロシンキナーゼにより増殖する任意の腫瘍、(5)異常なセリン/スレオニンキナーゼの活性化により増殖する任意の腫瘍、ならびに(6)異常なセリン/スレオニンキナーゼの活性化が生じる他の増殖性疾患の良性および悪性細胞の異常増殖を含む。
【0039】
本発明の複合体はFAKタンパク質チロシンキナーゼの強力な阻害剤であるため、すべて哺乳動物、特にヒトにおける抗増殖剤(例えば抗癌)、抗腫瘍剤(例えば固形腫瘍に対して有効)、抗血管形成剤(例えば血管増殖の停止または予防)としての治療的使用に適応する。特に、本発明の複合体は、肝臓、腎臓、膀胱、乳房、胃、卵巣、結腸直腸、前立腺、膵臓、肺、外陰部、甲状腺の悪性および良性腫瘍、肝癌、肉腫、神経膠芽腫、頭頸部癌、ならびに皮膚の良性過形成(例えば乾癬)および前立腺の良性過形成(例えば良性前立腺肥大症(BPH))などの他の過形成状態などの各種のヒト過剰増殖性障害の予防および治療に有用である。さらに、本発明の複合体は一定範囲の白血病およびリンパ系悪性腫瘍に対する活性を有することができると予測される。
【0040】
より好ましい一態様では、癌は、乳癌、肺癌、結腸癌、脳腫瘍、前立腺癌、胃癌、膵癌、卵巣癌、皮膚癌(黒色腫)、内分泌癌、子宮癌、精巣癌および膀胱癌などであるがそれだけに限定されない固形腫瘍である。
【0041】
本発明の複合体は、各種のタンパク質チロシンキナーゼに関連する異常な発現、リガンド/受容体相互作用もしくは活性化、またはシグナル伝達事象が関与するさらなる障害の治療にも有用であることができる。そのような障害としては、erbBチロシンキナーゼの異常な機能、発現、活性化またはシグナル伝達が関与する神経細胞障害、グリア細胞障害、アストロサイト障害、視床下部障害、ならびに他の腺障害、マクロファージ障害、上皮障害、間質障害および胞胚腔障害を挙げることができる。さらに、本発明の複合体は、本発明の複合体により阻害される同定されたチロシンキナーゼと未同定のチロシンキナーゼの両方が関与する炎症性障害、血管新生障害および免疫障害において治療有用性を有することができる。
【0042】
本発明の特定の態様は、(ヒトを含む)哺乳動物の低骨質量を示す状態を治療または予防する方法であって、低骨質量を示す状態を治療する量の式Iの複合体をそのような治療を必要とする哺乳動物に投与することを含む方法を対象とする。
【0043】
本発明は、低骨質量を示す状態が骨粗鬆症、虚弱(fraility)、骨粗鬆症骨折、骨欠損、小児特発性骨減少、歯槽骨減少、下顎骨減少、骨折、骨切断、歯周病または補綴内植であるそのような方法を特に対象とする。
【0044】
本発明の特定の態様は、(ヒトを含む)哺乳動物の骨粗鬆症を治療する方法であって、骨粗鬆症を治療する量の式Iの複合体をそのような治療を必要とする哺乳動物に投与することを含む方法を対象とする。
【0045】
本発明の別の態様は、(ヒトを含む)哺乳動物の骨折または骨粗鬆症骨折を治療する方法であって、骨折または骨粗鬆症骨折を治療する量の式Iの複合体をそのような治療を必要とする哺乳動物に投与することを含む方法を対象とする。
【0046】
「骨粗鬆症」という用語は、老人性、閉経性および若年性骨粗鬆症などの原発性骨粗鬆症、ならびに(コルチコステロイド使用による)甲状腺機能亢進症またはクッシング症候群、末端肥大症、性腺機能低下症、骨形成不全および低ホスファターゼ血症による骨粗鬆症などの続発性骨粗鬆症を含む。
【0047】
本発明の複合体は、最適な所望の応答を与えるために調節可能な投与計画において投与することができる。例えば、単一ボーラスを投与することもでき、数回に分けた用量を経時的に投与することもでき、あるいは治療状態の緊急性に比例して用量を減少または増加させることもできる。投与を容易にし、投与量を均一化する上で、単位投与形態に非経口製剤を調剤することが特に有利である。本明細書で使用する単位投与形態とは、治療されるべき哺乳動物の対象向けの単位投与に適した物理的に分離した単位を意味し、各単位は、所要の医薬担体と共に所望の治療効果を与えるよう計算された所定量の活性複合体を含む。本発明の単位投与形態の仕様は(a)化学療法薬の独自の特性および実現すべき特定の治療または予防効果、ならびに(b)個体の感受性を治療するそのような活性複合体を形成する上で当技術分野に内在する制限により決定され、それに直接依存する。
【0048】
したがって、本明細書中に提供される開示内容に基づいて、用量および投与計画が治療分野で公知の方法に従って調節されることが、当業者には認識されよう。すなわち、最大耐容量は容易に決定することができ、患者に検出可能な治療上の利点を与える有効量も決定することができ、同様に患者に検出可能な治療上の利点を与える各薬剤を投与する上での時間的要件も決定することができる。したがって、本明細書ではある種の用量および投与計画を例示するが、これらの例は決して、本発明を実施する上で患者に与えることが可能な用量および投与計画を制限するものではない。さらに、本明細書中に提供される教示で武装した際には、多くの他のパラメータの中でも腫瘍の大きさおよび/または転移の検出可能な減少、ならびに再発までにかかる時間の延長などであるがそれだけに限定されない治療上の利点を、癌治療の有効性を評価する当技術分野で公知の各種方法により評価することができ、これらの方法は、将来開発されるはずの方法と並んで、本明細書に含まれることが当業者には理解されよう。
【0049】
投与量の値は、緩和されるべき状態の種類および重症度により異なることがあり、単一または複数用量を含み得る。さらに、任意の特定の対象について、特定の投与計画を経時的に、個人の必要、および組成物を投与する者またはそれを監督する者の専門的判断に従って調節すべきであり、本明細書に開示されている投与量の範囲は例示的なものに過ぎず、特許請求の範囲にある組成物の範囲または実施を制限するものではないことを理解されたい。例えば、用量は、毒性作用などの臨床作用および/または検査値などの薬物動態または薬力学的パラメータに基づいて調節することができる。したがって、本発明は、当業者により決定される患者内の用量増大を含む。化学療法薬の適切な投与量および投与計画の決定は、当技術分野で公知であり、本明細書中に開示されている教示を一度受けた当業者により包含されるものと理解されよう。
【0050】
本発明の複合体は、本明細書で治療用量および維持用量と呼ばれる2種類の投与量のうち1つで投与することができる。治療用量とは、1種または複数の追加の化学療法薬が投与される治療サイクルの間に患者に投与される複合体の用量を意味する。例えば、1サイクルが1週間に数回の複合体、化学療法薬またはそれらの組み合わせの投与を含む6サイクルの化学療法(「治療計画」と呼ぶ)を患者が始める場合、この治療計画の途中で患者に投与される複合体の用量を治療用量と呼ぶ。一方、維持用量とは、治療計画の完了後に患者に投与される複合体の用量を意味する。維持用量は、治療計画とは時間が別であり、目的が異なる「維持相」中に投与される。
【0051】
治療用量および維持用量は、治療連続の任意の時点において同一でも異なっていてもよい。例えば、患者の最初の維持用量は治療用量と同一でもよいが、ある時間間隔の後で、治療計画の完了前後の疾患の段階、治療計画の完了後の患者の全体的な健康、随伴性の疾患状態などを含むがそれだけに限定されない各種の要因に応じて、維持用量を、治療用量に対して増加または減少させることができる。
【0052】
本発明の複合体の投与は、作用部位に化合物を送達可能にする任意の方法で行うことができる。これらの方法としては、経口投与、十二指腸内投与、非経口注射(静脈内注射、皮下注射、筋肉内注射、血管内注射または注入を含む)、局所投与および直腸投与が挙げられる。
【0053】
投与される複合体の量は、治療される対象、障害または状態の重症度、投与速度、化合物の性質および処方医の裁量に依存する。ただし、有効な投与量は単一または分割用量で1日体重1kg当たり約0.001〜約100mg、好ましくは約1〜約35mg/kg/日の範囲である。70kgのヒトでは、これは約0.05〜約7g/日、好ましくは約0.2〜約2.5g/日に相当するであろう。ある場合では、前述した範囲の下限を下回る用量レベルでも十分過ぎることもある。一方、別の場合では、さらに多い用量を、そのような多い用量を最初にいくつかの少ない用量に分けて1日分の投与に使うという条件で、いかなる副作用も引き起こさずに使用することができる。
【0054】
複合体は、治療計画または維持相中に、本発明の化学療法薬と実質的に同時または逐次的に投与することができる。治療連続体の段階に関係なく、投与が同時である場合、複合体および化学療法薬は、同時に投与されるにもかかわらず、同一製剤であっても別個の製剤であってもよい。「実質的に同時」という用語は、複合体が互いに数分以内(例えば互いに10分以内)に投与されることを意味し、同時投与および連続投与を包含することを意図しているが、投与が連続的である場合は短時間(例えば、開業医が2種類の複合体を別々に投与するのに要するであろう時間)しか離れていない。本発明では「同時投与」および「実質的に同時の投与」は互換的に使用される。逐次投与とは、複合体と化学療法薬を別々の時間に投与することを意味する。これらの複合体の投与間の時間の分離は、遅延を意図せず2種類の医薬を別々に順次投与するのに要する時間よりも意図的に長い。したがって、共投与は、化学療法薬と複合体の投与の任意の時間的組み合わせであって、この2種類の投与が、一方の薬剤を他方が存在しない状態で投与する場合よりも検出可能に大きい患者に対する治療上の利点を媒介するような組み合わせを含む。
【0055】
複合体は、化学療法薬の投与前、投与と同時もしくは投与後に(またはそれらの任意の組み合わせで)投与することができ、逆もまた同様である。複合体は、毎日(1日当たり1回または複数回の投与を含む)、2日ごと、3日ごと、4日ごと、5日ごと、6日ごと、または毎週、毎月、2カ月ごと、3カ月ごと、4カ月ごと、5カ月ごと、6カ月ごともしくは毎年投与することができる。化学療法薬は、毎日、2日ごと、3日ごと、4日ごと、5日ごと、6日ごと、毎週、2週間ごと、毎月、または20日ごと、25日ごと、28日ごと、30日ごと、40日ごと、50日ごと、2カ月ごと、70日ごと、80日ごと、3カ月ごと、6カ月ごともしくは毎年投与することができる。化学療法薬の投与は単一用量でも複数用量でもよい。あるいは、少なくとも1用量または少なくとも3、6もしくは12用量投与することもできる。
【0056】
本発明は、有効成分としての本発明のヒト化学療法薬を、複合体と併用してまたは併用せずに含む医薬組成物の調製および使用を含む。そのような医薬組成物は、対象への投与に適した形態である、単独での各有効成分、または少なくとも1種の有効成分の組み合わせ(例えば、有効量の化学療法薬、有効量の複合体)からなることができ、あるいは医薬組成物は、有効成分、および1種もしくは複数の薬学的に許容できる担体、1種もしくは複数の追加の(有効および/または非有効)成分またはこれらのある種の組み合わせを含むことができる。
【0057】
複合体は、経口投与、非経口投与、粘膜投与、吸入、局所投与、口腔投与、経鼻投与および直腸投与を含むがそれだけに限定されない、当技術分野で公知の各種の方法で投与することができる。多くの治療上の適用について、好ましい投与経路/様式は皮下投与、筋肉内投与、静脈内投与または注入である。所望であれば無針注射を使用してもよい。当業者に理解されているように、投与経路および/または様式は所望の結果に応じて変化する。
【0058】
本明細書に記載の医薬組成物の製剤は、薬理学の分野で公知または今後開発される任意の方法により調製することができる。一般に、そのような調製方法は、有効成分を担体または1種もしくは複数の補助成分と結合させるステップと、その後、必要または所望であれば、製剤を所望の単一または複数投与単位に成形または包装するステップとを含む。
【0059】
本発明の医薬組成物は、バルク状でも、単一の単位剤形としても、複数の単位剤形としても調製、包装または販売することができる。本明細書で使用する「単位剤形」とは、所定量の有効成分を含む分離量の医薬組成物のことである。有効成分(または複合体)の量は、対象に投与されるであろう有効成分の投与量、または、例えばそのような投与量の2分の1または3分の1などの、そのような投与量の好都合な一部分と一般に同等である。
【0060】
本発明の医薬組成物中の有効成分、薬学的に許容できる担体および任意の追加成分の相対量は、治療される対象の同一性、サイズおよび状態に応じて、さらには組成物が投与されるべき経路に応じて変化する。例えば、組成物は有効成分を0.1%〜100%(w/w)含む。
【0061】
有効成分以外に、本発明の医薬組成物は、1種または複数の追加の医薬活性剤をさらに含むことができる。特に企図される追加の薬剤としては制吐薬、止瀉薬、化学療法薬、サイトカインなどが挙げられる。本発明の組成物の制御または持続放出製剤は、従来の技術を用いて製造することができる。
【0062】
本明細書で使用する医薬組成物の「非経口投与」は、対象の組織での物理的な突破口の形成により特徴付けられる任意の投与経路、および組織の突破口(breaching)を通じた医薬組成物の投与を含む。したがって、非経口投与は、組成物の注射、外科的切開による組成物の適用、組織に貫通する非外科的創傷による組成物の適用などによる医薬組成物の投与を含むが、それだけに限定されない。特に、非経口投与は、皮下注射、腹腔内注射、筋肉内注射、胸骨内注射および腎臓透析注入技術を含むがそれだけに限定されないものとする。
【0063】
非経口投与に適した医薬組成物の製剤は、滅菌水または滅菌等張食塩水などの薬学的に許容される担体と組み合わせた有効成分を含む。そのような製剤は、ボーラス投与または逐次投与に適した形態で調製、包装または販売することができる。注射製剤は、防腐剤を含むアンプルまたは複数用量容器などの単位投与形態で調製、包装または販売することができる。非経口投与用製剤としては、懸濁液、溶液、油性または水性媒体中の乳濁液、ペースト、および下記で論じる移植可能な持続放出または生分解性製剤が挙げられるが、それだけに限定されない。そのような製剤は、懸濁化剤、安定化剤または分散剤を含むがそれだけに限定されない1種または複数の追加成分をさらに含むことができる。非経口投与用製剤の一態様では、有効成分は、再構成された組成物の非経口投与に先立ち、好適な媒体(例えば発熱物質なしの滅菌水)で再構成される乾燥(例えば粉末または顆粒)形態で提供される。
【0064】
本発明の組成物は当技術分野で公知の各種方法で投与することができる。投与経路および/または様式は所望の結果に応じて変化する。インプラント、経皮パッチおよびマイクロカプセル送達システムを含む制御放出製剤などの、複合体の急速な放出を防止する担体を有する組成物を調製することができる。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸などの生分解性の生体適合性ポリマーを使用することができる。そのような製剤を調製する多くの方法は、例えばSustained and Controlled Release Drug Delivery Systems,J.R.Robinson,ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York(1978)に記載されている。医薬組成物は、GMPの条件下で好ましく調製される。
【0065】
本発明の化学療法薬複合体有効成分組み合わせは、動物、好ましくはヒトに投与することができる。各有効成分の正確な投与量は、動物の種類および治療される疾患状態の種類、動物の年齢ならびに投与経路を含むがそれだけに限定されない任意の数の要因に応じて変化する。
【実施例1】
【0066】
N−メチル−N−(3−{[2−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−5−イルアミノ)−5−トリフルオロメチル−ピリミジン−4−イルアミノ]−メチル}−ピリジン−2−イル)−メタンスルホンアミドの遊離塩基およびモノベシレート塩の調製および分析
(ステップ1)トリフルオロメチルウラシル(5.00kg、1当量)、オキシ塩化リン(21.50kg、5当量)およびリン酸85重量%水溶液(320g、0.1当量)を、エタノールで沸騰済で苛性スクラバーを取り付けた反応器に充填した。N,N−ジイソプロピルエチルアミン(3.62kg、1当量)を5つの充填量に分け、最初の4つは1リットルで5つ目は0.9リットルであり、反応混合物の温度を20〜40℃に維持する速度で加えた。反応混合物を2時間かけて100℃に加熱し、20時間保持した。20〜30℃に冷却後、反応混合物をヘキサン/水(10L/kg:10L/kg)の撹拌1:1溶液に、温度が50℃を超えず、移送時間が少なくとも3時間になる速度で移送した。ヘキサン層を水(5L/kg)で2回洗浄し、硫酸マグネシウム(1.00kg)で洗浄した後、濾過し、ヘキサン(1L/kg)ですすいだ。ヘキサンを大気圧下、最終蒸留温度75℃、ポット温度100℃で留去した。GCヘッドスペースは、最終生成物に残るヘキサンが2.1%であることを示した。
【0067】
(ステップ2)t−ブチルアルコール(3L/kg)および二臭化亜鉛(5.07kg)を反応器に充填した後、10分間撹拌した。次に、5−アミノオキシンドール(3.00kg)およびジクロロエタン(3L/kg)を加えた後、30分間撹拌した。温度を35℃未満に維持しながら、30分かけてステップ1の生成物を加えた後トリエチルアミンを加え、反応混合物を終夜撹拌した。メタノール(13.5L)を反応混合物に加えた。次に、反応混合物を2つのブフナー漏斗で数時間かけて濾過し、濾過はフィルターケーキを常に動かすことにより支援した。フィルターケーキをメタノール(6.4L)ですすいだ。反応器にメタノール(15L)を充填し、湿潤したケーキを反応器に戻して1時間撹拌し、2つのブフナー漏斗で濾過し、メタノール(2.5L)で洗浄した。粉砕および濾過を繰り返し、生成物を33℃で12時間減圧乾燥した。GCヘッドスペースは、生成物に残るメタノールが0.1%であることを示した。
【0068】
(ステップ3)反応器にイソプロピルアルコール(3L/kg)、トルエン(3L/kg)、ステップ2の生成物(3.61kg)およびN−(3−アミノメチル−2−ピリジル)−N−メチルメタンスルホンアミド二酢酸塩(4.79kg、1.3当量)を充填した。次に、N,N−ジイソプロピルアミンを、温度を10〜25℃に維持する速度で加えた。反応器を還流温度85〜90℃に5時間加熱した後、20〜30℃に冷却して1.4時間保持した。反応混合物をヌッチェフィルターで濾過して固体を単離し、イソプロピルアルコール(10.8L)ですすいだ。アセトニトリル(40.0L)を反応器に加えた後、単離した固体を12時間撹拌した。スラリーをヌッチェフィルターに単離のために移送した。フィルターケーキをアセトニトリル(18.1L)で洗浄した後、乾燥機に40℃で12時間入れた。GCヘッドスペースの結果はアセトニトリル0.48%であった。HPLCの結果は、純度98.49%で、1種の主要不純物が0.97%であった。収率は68.3%であった。
【0069】
(ステップ4)ナルジュグ(Naljug)にベンゼンスルホン酸(1.8kg、1.5当量)および水(2L)を加え、溶液が均一になるまで撹拌した。次に、溶液を反応器にほこりのない(speck-free)条件下で加えた。ステップ3の生成物、式Iの遊離塩基(3.8kg)を別の反応器に充填した後、エタノール/水(20ガロン(約75.7リットル)/15ガロン(約56.8リットル))を充填し、次に70℃に加熱した。熱いスラリーを、塩溶液を含む反応器にほこりのない条件下で移送した。反応器を20〜30℃に2時間かけて冷却した後、20〜30℃に12時間保持した。最初の濾過の時点では固体は回収されなかった。反応液を夾雑物なしの条件下で反応器に戻し、反応器を10〜20℃に冷却した。この物質を溶液から急速に結晶化させ、12時間造粒した。スラリーをヌッチェフィルターで濾過し、固体を単離し、20〜30℃で24時間乾燥させた。この物質をバンタムミルで粉砕した。最終単離量は4.02kgで、全収率は82%であった。
【0070】
式Iのモノベシレート塩(分子量665.67)、形態Aは、直径が約5〜50mmの範囲である形状が不規則な粒子形態を有する白色結晶性固体であった。この無水形態は254℃で融解し(DSC、開始温度)、分解した。この物質は、70℃/75%RH環境に対する3週間の暴露を通じて、非吸湿性であり、固体状態で化学的および物理的に安定していた。
【0071】
溶液中、式Iのモノベシレート塩はpKaが4.58の弱塩基として存在した。この中程度に親油性の分子(cLogP=2.2)は、pH5超での水溶解度が5mgA/mlと低いことがわかった。溶解度は酸性媒体中で増加し、pH2の緩衝液中で観察される溶解度は1mgA/mlであった。非緩衝水(pH2.65)中の溶解度は369mgA/mlであった。エタノールおよびアセトンなどのいくつかの一般的有機溶媒中で測定された溶解度は200mgA/mlであった。下記の表に式Iのモノベシレート塩の物理的および化学的特性をまとめて示す。
【0072】
【表1】
【0073】
この式Iのモノベシレート塩は、形状が不規則な形態を有する、複屈折が中程度から高度である微結晶粒子として現れた。粒子の粒径は約5mm〜50mmの範囲であり、いくつかの凝集体の粒径は最大約200mmであった。この物質をDSCにより5℃/分の加熱速度で試験した(図1B)。開始速度254℃で鋭い融解吸熱が観察された。吸熱の小さいフロントテーリングも観察された。この物質をTGAにより5℃/分の加熱速度で試験した(図1C)。融解開始温度(約250℃)まで重量減はみられなかった。詳細な分析により水0.3%およびエタノール0.7%の存在が明らかになった。したがって、これらの溶媒は結晶を伴う傾向にあり、融解まで放出されなかった。同時の分解を伴う融解は、260℃超での重量減により示唆された。動的吸湿量を、流通型(flow-through)VTI装置を用いて25℃で評価した。サンプルを最初約2%RHで最大2時間乾燥させ、次に吸湿ランプを10%RHから90%にした後、脱湿ランプを10%RHにした。最初の乾燥で0.08重量%除去した後、90%RHでの最大吸湿量は0.09%であった。したがって、この複合体は非吸湿性であった。
【実施例2】
【0074】
N−メチル−N−(3−{[2−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−5−イルアミノ)−5−トリフルオロメチル−ピリミジン−4−イルアミノ]−メチル}−ピリジン−2−イル)−メタンスルホンアミドのモノベシレート塩の調製および分析
N−メチル−N−(3−{[2−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−5−イルアミノ)−5−トリフルオロメチル−ピリミジン−4−イルアミノ]−メチル}−ピリジン−2−イル)−メタンスルホンアミド(200mg、0.39mmol)のエタノール(8mL)溶液を、完全に溶解するまで蒸気浴上で加熱した。水(8mL、約40℃)を溶液に加え、室温に冷却した。エタノール(1mL)中フェニルスルホン酸(67mg、0.41mmol)を当該溶液に加え、5日間撹拌した。溶液を濾過し、乾燥させて標記複合体を白色固体(148mg、57%)として得た。融点255℃(DSC);吸湿度:周囲温度での相対湿度(RH)90%で0.16重量%;特性X線粉末回折ピーク(2θ、[相対強度(%)]):15.891[48.1]、16.197[48.5]、18.085[47.3]、18.445[100]、20.194[44.2]、21.18[37.9]、22.655[74.5]、23.015[99.7]、23.676[45.9]、26.55[45.2]および27.736[45.9];H2O 0.67%を含むモノベシレート塩の燃焼分析(理論値/実験値):炭素(48.39/48.25)、水素(3.99/3.76)、窒素(14.63/14.51)、フッ素(8.50/8.48)、硫黄(9.57/9.92)。
【実施例3】
【0075】
N−メチル−N−(3−{[2−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−5−イルアミノ)−5−トリフルオロメチル−ピリミジン−4−イルアミノ]−メチル}−ピリジン−2−イル)−メタンスルホンアミドのモノメシレート塩の調製および分析
N−メチル−N−(3−{[2−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−5−イルアミノ)−5−トリフルオロメチル−ピリミジン−4−イルアミノ]−メチル}−ピリジン−2−イル)−メタンスルホンアミド(250mg、0.49mmol)のTHF(7.5mL)溶液を、完全に溶解するまで蒸気浴上で加熱した。THF(2.5mL)を溶液に加え、室温に冷却した。メタンスルホン酸(50mg、0.57mmol)を溶液に加え、24時間撹拌した。THF(5mL)を加え、溶液を濾過し、乾燥させて標記複合体を白色固体(300mg、72%)として得た。融点232℃(DSC);吸湿度:周囲温度での相対湿度(RH)90%で1.4重量%;特性X線粉末回折ピーク(2θ、[相対強度(%)]):7.95[70.5]、11.495[48.3]、11.852[48.8]、13.814[37.4]、17.505[100]、18.038[47.3]、18.81[79.3]、19.313[73.6]、19.627[72.2]、20.89[66.8]、22.397[59.1]、23.169[44.2]および27.787[46.3];THF1%を含むモノメシレート塩の燃焼分析(理論値/実験値):炭素(44.01/43.74)、水素(4.08/4.05)、窒素(16.08/15.60)、フッ素(9.35/9.19)、硫黄(10.52/10.82)。
【0076】
式Iのモノメシレート塩のサンプルは10ミクロン未満の微細な複屈折ロッドおよびフレークで構成されていた。粒子は少なくとも2つの異なる消光(extinction)パターンを示し、異なる多形の存在を示唆していた。式Iのモノメシレート塩は、結晶性であり、図2に示すPXRDによる微小な不規則性を有していた。このサンプルの熱プロファイルを、30℃から300℃に5℃/分で加熱することで得た。試験したサンプルは、開始温度57℃で非常に小さい吸熱を示し、開始温度232℃で重複する熱現象を伴う広範な吸熱を示した。このサンプルの熱挙動を、30℃から300℃に5℃/分で加熱しながら光学顕微鏡観察により目視で観察した。モノメシレートは、約170℃から、溶媒の放出に関連する可能性がある粒子運動を示した。漸進的融解が約180℃で始まることが観察され、サンプル全体は235℃で融解した。これらの観察は、広範な融解範囲が複数の形態の混合、および/または、加熱中に生じる多形の転換を含むいくつかの競合する熱プロセスの結果である可能性があることを示唆していた。
【0077】
サンプルを流通型VTI装置で試験し、25℃で相対湿度ランプを0%から90%にした後、脱湿ランプを10%RHにした。このサンプルは90%RHで重量が1.4%増加した。したがって、この物質は動力学的に非吸湿性であると考えられる。モノメシレートの炭素、水素、窒素、フッ素および硫黄の元素組成を分析した。分析結果は、THF1%を含むモノメシレート塩の化学量論と一致していた。
【実施例4】
【0078】
N−メチル−N−(3−{[2−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−5−イルアミノ)−5−トリフルオロメチル−ピリミジン−4−イルアミノ]−メチル}−ピリジン−2−イル)−メタンスルホンアミドのトシレート塩の調製および分析
N−メチル−N−(3−{[2−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−5−イルアミノ)−5−トリフルオロメチル−ピリミジン−4−イルアミノ]−メチル}−ピリジン−2−イル)−メタンスルホンアミド(5.4g、10.6mmol)のエタノール(250mL)溶液を、完全に溶解するまで蒸気浴上で加熱した。溶液を室温に冷却し、エタノール(30mL)中p−トルエンスルホン酸(2.2g、11.2mmol)を溶液に加え、12時間撹拌した。溶液を濾過し、乾燥させて標記複合体を白色固体(5.6g、78%)として得た。融点237℃(DSC);吸湿度:周囲温度での相対湿度(RH)90%で0.6重量%;特性X線粉末回折ピーク(2θ、[相対強度(%)]):4.4[37.4]、6.425[81.5]、7.537[48.1]、12.925[42.1]、15.132[79.1]、17.582[47.4]、18.009[51.1]、18.531[100]、19.493[52.4]、19.888[91]、21.647[56.4]、21.987[70.1]、25.305[79.3]、25.913[79.3]および27.787[46.3];半水和物としてのモノトシレート塩の燃焼分析(理論値/実験値):炭素(48.83/48.83)、水素(4.24/3.96)、窒素(14.24/14.02)、フッ素(8.28/8.32)、硫黄(9.31/9.42)。
【0079】
式Iの半水和物トシレート塩は、微細な複屈折凝集針状物およびレーズ(lathe)から構成されていた。このサンプルはPXRDによれば結晶性であった。このサンプルの熱プロファイルを、30℃から300℃に5℃/分で加熱することで得た。サンプルは、形態Aの融解開始温度216℃よりも高い開始温度237℃で単一の主要な吸熱を示した。このサンプルの揮発分を、30℃から225℃に5℃/分で加熱することで得た。全揮発分は1.4%であり、赤外線によれば水およびエタノールで構成されていた。サンプルを流通型VTI装置で試験し、相対湿度ランプを25℃で0%から90%にした。このサンプルは90%RHで重量が0.6%増加した。それは動力学的に非吸湿性である。
【実施例5】
【0080】
N−メチル−N−(3−{[2−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−5−イルアミノ)−5−トリフルオロメチル−ピリミジン−4−イルアミノ]−メチル}−ピリジン−2−イル)−メタンスルホンアミドの塩酸塩の調製および分析
N−メチル−N−(3−{[2−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−5−イルアミノ)−5−トリフルオロメチル−ピリミジン−4−イルアミノ]−メチル}−ピリジン−2−イル)−メタンスルホンアミド(100mg、0.20mmol)のエタノール(5mL)溶液を、完全に溶解するまで蒸気浴上で加熱した。エタノール(1mL)を溶液に加え、室温に冷却した。塩酸(ジオキサン中4M、0.054mL、0.22mmol)を溶液に加え、7日間撹拌した。反応混合物を濾過し、乾燥させて標記複合体を白色固体として得た。融点124℃(DSC);吸湿度:周囲温度での相対湿度(RH)90%で2.7重量%;特性X線粉末回折ピーク(2θ、[相対強度(%)]):3.632[42.9]、4.889[36]、5.824[54.8]、7.998[92.7]、11.458[60.7]、12.725[46.5]、14.911[68.3]、15.528[61.1]、18.545[83.2]、19.147[67.3]、20.747[61.4]、21.04[51.2]、22.696[40.3]、23.293[45.5]、25.198[39.9]、26.05[100]および26.32[83.2];無水物としての一塩酸塩の燃焼分析(理論値/実験値):炭素(46.37/46.39)、水素(3.89/3.88)、窒素(18.03/17.83)、フッ素(10.48/10.69)、硫黄(5.89/5.88)。
【実施例6】
【0081】
N−メチル−N−(3−{[2−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−5−イルアミノ)−5−トリフルオロメチル−ピリミジン−4−イルアミノ]−メチル}−ピリジン−2−イル)−メタンスルホンアミドの塩酸塩の調製および分析
N−メチル−N−(3−{[2−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−5−イルアミノ)−5−トリフルオロメチル−ピリミジン−4−イルアミノ]−メチル}−ピリジン−2−イル)−メタンスルホンアミド(250mg、0.49mmol)のTHF(10mL)溶液を、完全に溶解するまで蒸気浴上で加熱した。溶液を室温に冷却し、塩酸(エチルエーテル2M、0.27mL、0.52mmol)を溶液に加え、24時間撹拌した。反応混合物を濾過し、乾燥させて標記複合体を白色固体(250mg、94%)として得た。融点220℃(DSC);吸湿度:周囲温度での相対湿度(RH)90%で1.4重量%;特性X線粉末回折ピーク(2θ、[相対強度(%)]):6.321[56.4]、7.904[100]、18.498[53.3]、21.02[36.7]および26.558[41.3];9%THFを含む無水物としての一塩酸塩の燃焼分析(理論値/実験値):炭素(48.2/47.7)、水素(4.55/4.45)、窒素(16.4/15.8)、フッ素(9.53/9.24)、硫黄(5.36/6.09)、塩素(5.93/5.70)。
【0082】
本発明の範囲は、本明細書に記載の特定の態様に限定されるものではない。実際、本明細書に記載の態様以外に、本発明の各種の変形形態が、上記の記載および添付の図面より当業者には明らかであろう。このような変形形態は添付の特許請求の範囲内にあるものとする。
【0083】
本明細書に引用したすべての特許、特許出願、刊行物、試験方法、文献および他の資料は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の発明。
【請求項1】
明細書中に記載の発明。
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図1A】
【図2A】
【図3A】
【図4A】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図1A】
【図2A】
【図3A】
【図4A】
【公開番号】特開2012−255038(P2012−255038A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−220359(P2012−220359)
【出願日】平成24年10月2日(2012.10.2)
【分割の表示】特願2006−323796(P2006−323796)の分割
【原出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(397067152)ファイザー・プロダクツ・インク (504)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年10月2日(2012.10.2)
【分割の表示】特願2006−323796(P2006−323796)の分割
【原出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(397067152)ファイザー・プロダクツ・インク (504)
【Fターム(参考)】
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