説明

異常検知装置

【課題】コンパクト化が可能な、軸部と軸受部の異常を検知する異常検知装置を提供する。
【解決手段】回転運動をする軸部2と、該軸部2を回転可能に軸支する軸支回転状態の軸受部3との異常を検知する異常検知装置であって、前記軸部2に設けられた孔である軸孔部21の中に配置され、前記軸部2の回転運動に関する情報と前記軸受部3の軸支回転状態に関する情報を検出する情報検出部41と、前記軸孔部21の中に配置され、前記情報検出部41によって検出された情報により、前記軸部2と前記軸受部3の状態が異常であるか否かを判断する異常判断部とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸部と軸受部の異常を検知する異常検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、鉄道車両や輸送機器等に設けられている軸受け及び車軸は、損傷や磨耗、剥離等の異常が無いか検査員により定期的に検査される。この定期的な検査は、車軸を外し、分解することにより行われ、軸受け及び車軸に発生した損傷や磨耗は、検査員の目視による確認により発見するようにしている。そして、定期的な検査により発見される主な欠陥としては、以下の事が挙げられる。軸受けの場合は、異物の噛み込み等によって生ずる圧痕と、転がり疲れによる剥離と、その他の磨耗等が挙げられる。車軸の場合は、フラット等の磨耗が挙げられる。軸受け及び車軸のいずれの場合も、新品にはない凹凸や磨耗等が発見されれば、新品に交換される。また、このような軸受けと車軸を、分解することなく、実際に稼動されている状態で軸受けと車軸の異常診断を行うことを可能とする技術が開示されている(特許文献1及び2参照)。例えば、軸受け自体を、振動センサ又は温度センサ等で常時計測して、各計測値が予め設定しておいた規定値以上に上昇したか否かで異常の有無を判定し、異常が有ると判定された場合に、異常警報を出力する異常検知装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−125244号公報
【特許文献2】特開2006−77938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
軸受け自体を、振動センサ又は温度センサ等で常時計測して、各計測値が予め設定しておいた規定値以上に上昇したか否かで異常診断を行う異常検知装置では、軸受けに振動センサ等を取り付け、センサから車両内に配線しなくてはならない。更に、車両内にデータ収集装置や、異常判定するCPU等を設置しなければならなく、装置が大掛かりな物になってしまう。そこで本発明では、コンパクト化が可能な異常検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために、情報検出部と異常判断部を設ける場所を工夫した。これにより、コンパクト化が可能な異常検知装置を提供することが可能である。
【0006】
詳細には、本発明に係る異常検知装置は、回転運動をする軸部と、該軸部を回転可能に軸支する軸支回転状態の軸受部との異常を検知する異常検知装置であって、前記軸部に設けられた孔である軸孔部の中に配置され、前記軸部の回転運動に関する情報と前記軸受部の軸支回転状態に関する情報を検出する情報検出部と、前記軸孔部の中に配置され、前記情報検出部によって検出された情報により、前記軸部と前記軸受部の状態が異常であるか否かを判断する異常判断部と、を備える。
【0007】
情報検出部は、軸部の回転運動に関する情報と軸受部の軸支回転状態に関する情報を検出する。異常判断部は、情報検出部によって検出された情報により、軸部と軸受部の状態が異常であるか否かを判断する。その結果、本発明に係る異常検知装置は、軸部や軸受部を分解することなく、軸受部が軸支回転状態を維持したまま、軸部と軸受部の異常を検知
することが可能である。また、本発明に係る異常検知装置は、軸部と軸受部の状態が異常であるか否かを常に検知することが可能であるため、定期検査と次の定期検査の間に、軸部や軸受部に不具合が発生しても、異常を検知することが可能である。その結果、本発明に係る異常検知装置は、軸部や軸受部の異常が原因による事故や故障を未然に防ぐことが可能である。更に、本発明に係る異常検知措置は、情報検出部及び異常判断部が、軸部に設けられた孔である軸孔部の中に配置されることにより、コンパクト化が可能である。
【0008】
ここで本発明に係る異常検知装置は、ユーザから目視可能な場所に設けられ、前記異常判断部が前記軸部と前記軸受部の少なくともどちらか一方の状態が異常であると判断すると、点灯することにより前記異常判断部が判断した結果を表示する判断表示部を更に備えてもよい。
【0009】
本発明に係る異常検知装置は、異常判断部が軸部と軸受部の少なくともどちらか一方の状態が異常であると判断した結果を、判断表示部が点灯することにより判断結果を表示する。その結果、本発明に係る異常検知装置は、ユーザが目視により容易に、且つ軸受部が軸支回転状態を維持したまま、軸部と軸受部の状態が異常であるか否かを確認することが可能である。
【0010】
また、本発明に係る異常検知装置において、前記情報検出部は、前記軸部及び前記軸受部の温度を検出する温度情報検出部と、前記軸部及び前記軸受部の加速度を検出する加速度情報検出部と、を有してもよい。温度情報検出部は、軸部及び軸受部の温度を検出することが可能である。加速度情報検出部は、軸部及び軸受部の加速度を検出することにより、軸部及び軸受部の振動を検出することが可能である。その結果、本発明に係る異常検知装置は、軸部及び軸受部の異常温度及び異常振動を検出し、軸部や軸受部の異常を検知することが可能である。
【0011】
更に、本発明に係る異常検知装置において、前記異常判断部は、前記温度情報検出部によって検出された温度と、前記加速度情報検出部によって検出された加速度の少なくとも一方が、予め設定されている温度の閾値及び加速度の閾値を超えると、前記軸部または前記軸受部の状態が異常であると判断してもよい。
【0012】
軸受部に、異物の噛み込み等によって生ずる圧痕や、転がり疲れによる剥離、その他の磨耗等が生じると、該軸受部に異常振動が発生し、軸受部の異常温度上昇が発生する。また、軸部に生じるフラット等の磨耗が大きくなると、軸部に異常振動が発生する。そこで、本発明に係る異常検知装置は、温度情報検出部によって検出された温度と、加速度情報検出部によって検出された加速度の少なくとも一方が、予め設定されている温度の閾値及び加速度の閾値を超えると、異常判断部が軸部または軸受部の状態が異常であると判断することにより、軸部と軸受部の異常を検知することが可能である。
【0013】
また、本発明に係る異常検知装置は、前記軸部の回転運動と前記軸受部の軸支回転状態に応じて、前記閾値を調整する閾値調整部を更に備えてもよい。本発明に係る異常検知装置は、閾値調整部が閾値を調整することによって、軸部と軸受部の状態が異常であるか否かを正確に検知することが可能である。
【0014】
前記閾値調整部は、前記軸部の回転速度に応じて、該軸部及び前記軸受部に関する加速度の閾値を調整し、前記異常判断部は、前記情報取得部において取得された加速度が、前記閾値調整部において調整された加速度の閾値を超えると、前記軸部または前記軸受部の状態が異常であると判断してもよい。また、本発明に係る異常検知措置は、情報検出部、異常判断部及び閾値調整部が、軸部に設けられた孔である軸孔部の中に配置されることにより、コンパクト化が可能である。
【0015】
軸部に設けられる情報検出部は、軸部の回転の中心に配置することは困難であるため、軸部の回転の中心から少しずれた状態で配置される。その結果、情報検出部は、軸部や軸受部が異常の無い状態であっても、加速度を検出する。そして、軸部の回転速度が大きくなると、情報検出部が検出する加速度も大きくなり、軸部の回転速度が小さくなると、情報検出部が検出する加速度も小さくなる。そこで、本発明に係る異常検知装置は、閾値調整部が、軸部の回転速度に応じて、軸部及び軸受部に関する加速度の閾値を調整することにより、異常判断部が軸部と軸受部の状態が異常であるか否かを正確に判断することが可能である。
【0016】
また、本発明に係る異常検知装置は、前記情報検出部が検出した情報を電子計算機により分析するために、該電子計算機と該情報検出部との情報のやりとりを仲介する情報仲介部を更に備えてもよい。情報仲介部が、電子計算機と情報検出部との情報のやりとりを仲介することにより、電子計算機が、情報検出部が検出した情報を分析することが可能である。その結果、本発明に係る異常検知装置は、軸部及び軸受部の故障の予知情報や、該軸部及び該軸受部の設計情報を算出することが可能である。
【0017】
更に、本発明に係る異常検知装置は、前記情報検出部と前記異常判断部とを稼動させる電力源を、前記軸部の回転運動と前記軸受部の軸支回転状態により提供することが可能な発電装置を更に備えてもよい。本発明の異常検知装置において、発電装置は、軸部の回転運動と軸受部の軸支回転状態により電力源を提供することが可能であるため、電力の供給源の一つである電力源を交換する必要がない。従って、本発明における異常検知装置は、電力源の交換による軸部及び軸受部の分解や組立の工数が必要ない。尚、本発明における異常検知装置は、発電装置が発電した電力を貯めるバッテリーがあってもよい。
【0018】
ここで、本発明に係る異常検知装置において、前記発電装置は、前記発電装置は、前記軸部に設けられるコイル部と、前記軸受部に設けられる磁性体部と、を有し、前記コイル部と前記磁性体部は、前記軸部の回転運動と前記軸受部の軸支回転状態にあることにより磁力変化が生じ、該磁力変化により該コイル部に起電力が発生する、前記発電装置が前記電力源を提供することが可能な位置に配置されてもよい。
【0019】
本発明に係る異常検知装置は、コイル部と磁性体部の磁力変化によって発生する起電力を電力源に用いることにより、電力の供給源の一つである電力源の交換が必要ない。また、情報検出部と異常判断部が、軸部に設けられた孔である軸孔部に配置され、コイル部が軸部に設けられる。その結果、起電力が発生するコイル部と、電源が提供される情報検出部と異常判断部との距離が短くなり、電力源は、情報検出部と異常判断部に電力を提供し易くなる。
【0020】
本発明に係る異常検知装置において、前記判断表示部は、所定の場所に設けられ、前記異常判断部が判断した結果を、無線通信により前記所定の場所に設けられた前記判断表示部に送信する送信部を更に備えてもよい。
【0021】
送信部が、所定の場所に設けられた判断表示部に、異常判断部が判断した結果を無線通信により送信することにより、所定の場所に居るユーザ等によって軸部及び軸受部を監視させ、軸部及び軸受部に異常があった場合に、迅速にユーザ等に知らせることが可能である。
【0022】
また、本発明に係る異常検知装置は、鉄道車両に取り付けられてもよい。鉄道車両の軸部には、超音波深傷用の孔が予め設けられている場合があり、該孔を軸孔部とすることが可能である。また、軸孔部が無い場合は新たに軸孔を設けてもよい。更に、鉄道車両は、
損傷や磨耗、剥離等の異常が無いか定期的に検査されるが、鉄道車両が車庫等に入って停車している場合に、検査員が、点灯された表示部の有無を目視にて確認することにより、軸部及び軸受部の異常の有無を容易に確認することが可能である。その結果、定期検査と次の定期検査の間に、軸部や軸受部に不具合が生じて、車両故障や最悪事故に繋がることがなくなる。尚、鉄道車両が車庫等に入って停車している場合において、表示部は、発電装置が発電した電力を貯めるバッテリーによって電力が供給される。
【0023】
更に、本発明に係る異常検知装置は、鉄道車両に取り付けられ、前記所定の場所は、前記鉄道車両を運転する運転手に前記異常判断部が判断した結果を知らせることが可能な場所でもよい。本発明に係る異常検知装置は、異常判断部が判断した結果を運転手に知らせることにより、鉄道車両を緊急に停車しなければならない場合であっても、即対応することが可能である。尚、本発明に係る異常検知装置は、鉄道以外の車両や、軸受けを利用する機械についても用いることが可能である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、コンパクト化が可能な異常検知装置を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施例1に係る異常検知装置の断面図である。
【図2】本発明の実施例1に係る異常検知装置の蓋部の正面図である。
【図3】本発明の実施例1に係る異常検知装置が備える情報処理部の機能ブロック図である。
【図4】本発明の実施例1に係る異常検知装置の加速度閾値調整部における、加速度閾値Refvと軸部回転速度Vwの関係を表すグラフである
【図5】本発明の実施例1に係る異常検知装置が備える情報処理部の制御フロー図である。
【図6】本発明の実施例2に係る異常検知装置が備える情報処理部の機能ブロック図である。
【図7】本発明の実施例3に係る異常検知装置の断面図である。
【図8】本発明の実施例3に係る異常検知装置が備える情報処理部の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
ここで、本発明の実施例に係る異常検知装置1について、図面に基づいて説明する。以下に示す実施例は例示であり、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0027】
<異常検知装置の構成>
本発明の実施例1に係る異常検知装置1は、鉄道車両に取り付けられるものとする。図1は、本発明の実施例1に係る異常検知装置1の断面図である。図2は、本発明の実施例1に係る異常検知装置1の蓋部5を、図1に示すA矢視側から見た正面図である。本発明の実施例1に係る異常検知装置1は、図1に示すように、軸部2、軸孔部21、軸受部3、ユニットケース4、情報検出部41、情報処理部42、電力源43、蓋部5、判断表示部6(図2を参照)、カバー部7、発電装置8、情報仲介部9(図2を参照)を主な構成とする。以下、各構成について具体的に説明する。
【0028】
先ず、軸部2について説明する。軸部2は、鉄道車両の車輪の車軸のことであり、円柱形状となっている。軸部2が回転運動することにより、軸部2に取り付けられた車輪(不図示)が回転運動し、鉄道車両を走らせることが可能である。
【0029】
次に、軸孔部21について説明する。軸孔部21は、軸部2のA矢視側の端部からユニットケース4を該軸部2の中に入れることが可能な、軸部2の長手方向端部側の、軸部2の円柱の中心軸に近い位置に設けられる孔である。尚、軸孔部21は、新幹線等の車両の車軸に設けられる、超音波により金属の微細な割れなどの検出を行う超音波探傷試験用の孔でもよい。
【0030】
軸受部3について説明する。軸受部3は、軸部2の回転時の摩擦ができるだけ小さくなるように、軸部2を回転可能に軸支する軸支回転状態である。軸受部3は、内輪31と外輪32、複数のころ33と、軸受ケース34から構成されている。内輪31と外輪32との間に複数のころ33が配置され、更に、互いのころ33が接触しないように、配置される。また、軸受ケース34は、軸受部3が軸部2の回転運動と共に回転しないように、軸受部3を固定する。
【0031】
ユニットケース4について説明する。ユニットケース4は、軸孔部21に設けられる。ユニットケース4は、超音波探傷用の孔が設けられている場合は、該孔の中に設置し、超音波探傷用の孔が設けられていない場合は、新たに軸孔を設け、圧入により軸孔部21の中に設置する。ユニットケース4の中には、情報検出部41、情報処理部42、及び電力源43が設けられ、ユニットケース4は、情報検出部41、情報処理部42、及び電力源43を、軸部2の回転運動による振動から保護して、軸孔部21内に容易にシステムを設置することが可能である。また、本発明の実施例1に係る異常検知装置1は、ユニットケース4が軸孔部21に設けられることにより、コンパクト化が可能である。ユニットケース4の中の各構成について、以下、具体的に説明する。
【0032】
先ず、情報検出部41について説明する。情報検出部41は、ユニットケース4の中に設けられる。また、情報検出部41は、軸部2の回転運動に関する情報と軸受部3の軸支回転状態に関する情報を検出する。具体的には、情報検出部41は、加速度情報検出部411と、温度情報検出部412とを有する。温度情報検出部412は、温度センサのことであり、軸部2及び軸受部3の温度を検出する。加速度情報検出部411は、上下・前後・左右の加速度を検出する3軸加速度センサのことであり、軸部2及び軸受部3の加速度を検出することにより、軸部2及び軸受部3の振動を検出することが可能である。その結果、本発明の実施例1に係る異常検知装置1は、軸部2や軸受部3の異常温度及び異常振動を検出することにより、軸部2や軸受部3の異常を検知することが可能である。
【0033】
情報処理部42について説明する。情報処理部42は、ユニットケース4の中に設けられ、情報検出部41が検出した情報を処理する。情報処理部42の各構成と、処理方法については、後述する。
【0034】
電力源43について説明する。電力源43は、ユニットケース4の中に設けられ、発電装置8によって発電された電力を充電する充電装置44を有し、情報検出部41と情報処理部42に電力を供給し、稼動させることが可能である。
【0035】
次に、蓋部5について説明する。蓋部5は、軸部2に設けられた軸孔部21の開口部Bを覆うことが可能な大きさの円盤状の蓋であり、軸部2の回転運動と一緒に回転することが可能である。蓋部5の円周縁には、蓋部側孔51(図2参照)が複数設けられており、蓋部5と対向する軸部2には、軸部側孔22(図1参照)が設けられている。蓋部側孔51と、軸部側孔22とを対向させ、ボルト12により固定することにより、蓋部5と軸部2とを固定することが可能である。
【0036】
判断表示部6について説明する。判断表示部6は、LEDにより点灯するインジケータのことであり、検査員が目視可能な場所である鉄道車両外側を面する側の蓋部5に設けら
れる。尚、本発明の実施例1では、図1に示すA矢視側から、検査員が判断表示部6を目視することが可能である。判断表示部6は、情報処理部42によって異常が検知されると、LEDが点灯し、情報処理部42によって異常が検知されない場合は、LEDが消灯した状態である。その結果、本発明の実施例1に係る異常検知装置1は、鉄道車両が車庫等に入って停車している際に、軸受部3が軸支回転状態を維持したまま、検査員が判断表示部6のLEDの点灯もしくは消灯を確認することによって、軸部2もしくは軸受部3に異常があるかないか否かを容易に確認することが可能である。また、本発明の実施例1に係る異常検知装置1は、早期の段階で軸部2や軸受部3の異常を検知し、検査員に表示することが可能であるため、軸部2や軸受部3の異常が原因による事故や故障を未然に防ぐことが可能である。
【0037】
カバー部7について説明する。カバー部7は、鉄道車両外側を面する側の蓋部5の外周を覆うことが可能な大きさの円盤状のカバーであり、軸部2の回転運動と一緒に回転はしない。カバー部7の円周縁には、カバー部側孔71が複数設けられており、カバー部7と対向する軸受部3には、軸受部側孔35が設けられている。カバー部側孔71と軸受部側孔35とを対向させ、ボルト13により固定することにより、カバー部7と軸受部3とを固定することが可能である。
【0038】
発電装置8について説明する。発電装置8は、鉄道車両外側を面する側の蓋部5に設けられたコイル部81と、蓋部5と対向する側のカバー部7に設けられた磁性体部82とを有し、コイル部81と磁性体部82は、対向可能に設けられる。蓋部5に設けられたコイル部81は、軸部2の回転運動と一緒に回転することが可能である。一方、カバー部7に設けられた磁性体部82は、軸部2の回転運動と一緒に回転せず、固定されている。その結果、発電装置8は、軸部2が回転運動することにより、コイル部81と磁性体部82に磁力変化が生じ、コイル部81に起電力が発生する。そして、その起電力が電力源43の充電装置44に充電され、充電装置44が情報検出部41と情報処理部42に電力を供給し、情報検出部41と情報処理部42とを稼動させることが可能である。従って、本発明の実施例1に係る異常検知装置1は、電力の供給源の一つである電力源43の交換が必要ないため、電力源43の交換による軸部2及び軸受部3の分解や組立の工数が必要ない。更に、コイル部81が蓋部5に設けられ、磁性体部82がカバー部7に設けられることにより、ユニットケース4に設けられた情報検出部41及び情報処理部42と、起電力が発生するコイル部81との距離が短くなる。従って、本発明の実施例に係る異常検知装置1は、情報検出部41及び情報処理部42に電力源43が提供し易くなる。尚、磁性体部82は、例えば永久磁石である。
【0039】
情報仲介部9について説明する。情報仲介部9(図2参照)は、PCインターフェースコネクタのことであり、PC等の電子計算機10と情報処理部42との情報のやりとりを仲介することにより、電子計算機10が、情報検出部41が検出した情報を分析し、軸部2及び軸受部3の故障の予知情報や、軸部2及び軸受部3の設計情報を算出することが可能である。
【0040】
<情報処理部における情報処理方法>
図3は、本発明の実施例1に係る異常検知装置1における情報処理部42の機能ブロック図である。情報処理部42は、CPU、メモリ等を含むコンピュータと、コンピュータ上で実行されるプログラムによって実現することができる。
【0041】
情報処理部42は、情報取得部421と、閾値設定部426と、加速度閾値調整部424と、異常判断部425から構成されている。以下、情報処理部42の構成について具体的に説明する。
【0042】
情報取得部421について説明する。情報取得部421は、温度情報取得部422と加速度情報取得部423とを有する。温度情報取得部422は、温度情報検出部412によって検出された軸部2及び軸受部3の温度を取得する。加速度情報取得部423は、加速度情報検出部411によって検出された軸部2及び軸受部3の加速度を取得する。
【0043】
閾値設定部426について説明する。閾値設定部426は、温度閾値設定部427と加速度閾値設定部428とを有する。温度閾値設定部427は、異常判断部425が軸部2及び軸受部3の温度が異常であると判断する温度の閾値を設定する。加速度閾値設定部428は、異常判断部425が軸部2及び軸受部3の振動が異常であると判断する加速度の閾値を設定する。尚、閾値設定部426は、閾値入力部45において入力された、温度の閾値と加速度の閾値を取得し、温度の閾値と加速度の閾値を設定する。
【0044】
加速度閾値調整部424について説明する。ユニットケース4の中に設けられた加速度情報検出部411は、軸部2の回転の中心に配置することは困難であるため、軸部2の回転の中心から少しずれた状態で配置される。そのため、軸部2や軸受部3が異常の無い通常の状態であっても、加速度情報検出部411は加速度を検出する。そして、軸部2の回転速度が大きくなると、加速度情報検出部411が検出する加速度も大きくなる。そこで、加速度閾値調整部424は、異常判断部425が軸部2及び軸受部3の状態が異常であると判断する際の基準となる加速度の閾値を、軸部2の回転速度に応じて調整する。その結果、本発明の実施例1に係る異常検知装置1は、軸部2と軸受部3の異常をより正確に検知することが可能である。図4は、加速度閾値Refvと、軸部回転速度Vwとの関係を表すグラフである。図4に示すように、軸部2の回転速度が速い程、加速度閾値調整部424は、加速度の閾値を大きく調整する。また、軸部2の回転速度が遅い程、加速度閾値調整部424は、加速度の閾値を小さく調整する。加速度閾値調整部424において調整された加速度の閾値は、加速度閾値設定部428によって、加速度の閾値として設定される。
【0045】
異常判断部425について説明する。異常判断部425は、温度情報取得部422において取得した軸部2及び軸受部3の温度が、温度閾値設定部427において設定された温度の閾値を超えたか否かを判断し、且つ、加速度情報取得部423で取得した軸部2及び軸受部3の加速度が、加速度閾値設定部428において設定された加速度の閾値を超えたか否かを判断する。そして、異常判断部425は、温度情報取得部422において取得した軸部2及び軸受部3の温度と、加速度情報取得部423によって取得した軸部2及び軸受部3の加速度の少なくとも一方が、閾値を超えると、軸部2又は軸受部3の状態が異常であると判断する。また、異常判断部425は、温度情報取得部422において取得した軸部2及び軸受部3の温度と、加速度情報取得部423によって取得した軸部2及び軸受部3の加速度の両方が、閾値を超えない場合は、軸部2及び軸受部3の状態は異常でないと判断する。
【0046】
図5は、本発明の実施例1に係る異常検知装置1における情報処理部42の制御フロー図である。図3に示す機能ブロック図を参照しながら、以下具体的に情報処理部42について説明する。
【0047】
ステップS01では、コイル部81と磁性体部82は、軸部2の回転運動と軸受部3の軸支回転状態にあることにより、磁力変化が生じ、コイル部81に起電力が発生し、その結果、電力源43の充電装置44に電力が蓄えられる。そして、電力源43から情報処理部42と情報検出部41に電力が供給され、情報処理部42と情報検出部41が稼動する。情報処理部42と情報検出部41が稼動するとステップS02へ進む。
【0048】
ステップS02では、加速度情報取得部423が、加速度情報検出部411で検出した
軸部2及び軸受部3の加速度を取得する。また、温度情報取得部422が、温度情報検出部412で検出した軸部2及び軸受部3の温度を取得する。加速度情報取得部423と温度情報取得部422の情報の取得が完了するとステップS02へ進む。
【0049】
ステップS03では、加速度閾値調整部424が、異常判断部425が判断する際の基準となる加速度の閾値を、軸部2の回転速度に応じて調整する。図4に示すように、軸部2の回転速度が大きい程、加速度の閾値は大きくなり、軸部2の回転速度が小さい程、加速度の閾値は小さく調整される。加速度の閾値の調整が完了するとステップS04へ進む。
【0050】
ステップS04では、異常判断部425が、温度情報取得部422が取得した温度が、温度の閾値を超えたか否か、加速度情報取得部423が取得した加速度が、加速度の閾値を超えたか否かを判断する。異常判断部425が、軸部2と軸受部3の温度と加速度の少なくともどちらか一方が閾値を超えたと判断した場合は、ステップS05へ進む。
【0051】
ステップS05では、異常判断部425が、軸部2と軸受部3の温度と加速度の少なくともどちらか一方が温度の閾値と加速度の閾値を超えたと判断した場合は、判断表示部6のLEDが点灯する。一方、軸部2及び軸受部3の温度と加速度の両方とも、温度の閾値と加速度の閾値を超えていないと判断した場合は、判断表示部6のLEDは消灯した状態である。その結果、本発明の実施例1に係る異常検知装置1は、検査員が目視により容易に、且つ軸受部3が軸支回転状態を維持したまま、軸部2と軸受部3の異常を確認することが可能である。
【実施例2】
【0052】
本発明の実施例2に係る異常検知装置1は、鉄道車両に取り付けられるものとし、更に、異常判断部425が判断した結果を運転手が居る運転車両に知らせるものとする。図6は、本発明の実施例2に係る異常検知装置1が、送信部11を備えた機能ブロック図である。以下、実施例1と異なる点を中心に、本発明の実施例2に係る異常検知装置1について説明する。
【0053】
本発明の実施例2に係る異常検知装置1は、軸部2、軸孔部21、軸受部3、ユニットケース4、情報検出部41、情報処理部42、電力源43、蓋部5、判断表示部6(図2を参照)、カバー部7、発電装置8、情報仲介部9(図2を参照)を主な構成とする。本発明の実施例2の機能ブロック図と、本発明の実施例1の機能ブロック図とを比較すると、送信部11と、判断表示部6以外の構成は実施例1と同様であるため、判断表示部6と送信部11以外の構成の説明を省略する。
【0054】
判断表示部6及び送信部11について説明する。判断表示部6は、鉄道車両の運転手が居る運転車両に設けられ、異常判断部425が判断した結果を表示する。また、送信部11は、軸孔部21内のユニットケース4の中に設けられた情報処理部42の異常判断部425が判断した結果を、判断表示部6に、無線通信により送信する。従って、本発明の実施例2に係る異常検知装置1は、運転手が居る運転車両に判断表示部6が設けられ、送信部11が判断表示部6に情報を送信することにより、鉄道車両が稼働中であっても、軸部2及び軸受部3の異常を素早く運転手に知らせることが可能である。その結果、軸部2と軸受部3の異常により、鉄道車両を緊急停止しなければならない場合であっても、運転手がすぐに対応することが可能であり、大きな事故に発展する可能性が低くなる。尚、本発明の実施例2に係る異常検知装置1における制御フローは、本発明の実施例1に係る異常検知装置1における制御フロー図である図5と同様であるため、制御フローの説明を省略する。
【実施例3】
【0055】
本発明の実施例3に係る異常検知装置1は、鉄道車両に取り付けられるものとし、更に、発電装置8を無くし、電力源43に乾電池46を設けるものとする。図7は、本発明の実施例3に係る異常検知装置1の断面図である。図8は、本発明の実施例3に係る異常検知装置1における情報処理部42の機能ブロック図である。以下、実施例1と異なる点を中心に、本発明の実施例3に係る異常検知装置1について説明する。
【0056】
本発明の実施例3に係る異常検知装置1は、図1に示す本発明の実施例1に係る異常検知装置1の断面図と、図7に示す本発明の実施例3に係る異常検知装置1の断面図とを比較すると、図1に示す、鉄道車両外側を面する側の蓋部5に設けられたコイル部81と、蓋部5と対向する側のカバー部7と、該カバー部7に設けられた磁性体部82と、ユニットケース4の中の電力源43に設けられた充電装置44とを無くし、図7に示す、電力源43に乾電池46を設ける。その結果、本発明の実施例3に係る異常検知装置1は、図8に示すように、乾電池46によって、情報検出部41と情報処理部42に電力を供給し、稼動させることが可能である。尚、乾電池46によって供給する電力が低下した場合は、ユニットケース4から乾電池46を取りだし、新品の乾電池46に交換するか、乾電池46が充電式の場合は、乾電池46を充電後、再び電力源43に設ける。本発明の実施例3の機能ブロック図と、本発明の実施例1の機能ブロック図とを比較すると、発電装置8と電力源43以外の構成は実施例1と同様であるため、説明を省略する。
【0057】
(変形例)
以上、本発明に係る異常検知装置1の実施例について説明したが、本発明に係る異常検知装置1はこれらに限定されるものではない。例えば、本発明の実施例1、実施例2及び実施例3は、鉄道車両に取り付けられるが、自動車に取り付けられてもよい。自動車は、電子化の発展によりコンパクト化が要求されている。そこで、本発明に係る異常検知装置1は、コンパクト化が可能であるため、自動車に適している。尚、自動車の車軸を軸部2とする。
【0058】
他に、本発明に係る異常検知装置1は、産業機器であるベルトコンベア等に取り付けられてもよい。工場等に取り付けられるベルトコンベアには、非常に多くの軸部2及び軸受部3が取り付けられている。軸部2と軸受部3を検査する際は、全ての軸部2と軸受部3を解体して検査し、異常のあった軸部2と軸受部3を交換しなければならず、検査員の工数が非常にかかってしまう。そこで、本発明に係る異常検知装置1がベルトコンベアに取り付けられることにより、判断表示部6が異常であると表示されている軸部2または軸受部3を交換すればよい。その結果、本発明に係る異常検知装置1は、検査員の工数を大幅に削減することが可能である。
【符号の説明】
【0059】
1・・・異常検知装置
2・・・軸部
21・・・軸孔部
3・・・軸受部
4・・・ユニットケース
41・・・情報検出部
411・・・加速度情報検出部
412・・・温度情報検出部
42・・・情報処理部
43・・・電力源
5・・・蓋部
51・・・蓋部側孔
6・・・判断表示部
7・・・カバー部
8・・・発電装置
81・・・コイル部
82・・・磁性体部
9・・・情報仲介部
10・・・電子計算機
11・・・送信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転運動をする軸部と、該軸部を回転可能に軸支する軸支回転状態の軸受部との異常を検知する異常検知装置であって、
前記軸部に設けられた孔である軸孔部の中に配置され、前記軸部の回転運動に関する情報と前記軸受部の軸支回転状態に関する情報を検出する情報検出部と、
前記軸孔部の中に配置され、前記情報検出部によって検出された情報により、前記軸部と前記軸受部の状態が異常であるか否かを判断する異常判断部と、
を備える、異常検知装置。
【請求項2】
ユーザから目視可能な場所に設けられ、前記異常判断部が前記軸部と前記軸受部の少なくともどちらか一方の状態が異常であると判断すると、点灯することにより前記異常判断部が判断した結果を表示する判断表示部を更に備える、
請求項1に記載の異常検知装置。
【請求項3】
前記情報検出部は、
前記軸部及び前記軸受部の温度を検出する温度情報検出部と、
前記軸部及び前記軸受部の加速度を検出する加速度情報検出部と、を有する、
請求項1又は2に記載の異常検知装置。
【請求項4】
前記異常判断部は、
前記温度情報検出部によって検出された温度と、前記加速度情報検出部によって検出された加速度の少なくとも一方が、予め設定されている温度の閾値及び加速度の閾値を超えると、前記軸部または前記軸受部の状態が異常であると判断する、
請求項3に記載の異常検知装置。
【請求項5】
前記軸部の回転運動と前記軸受部の軸支回転状態に応じて、前記閾値を調整する閾値調整部を更に備える、
請求項4に記載の異常検知装置。
【請求項6】
前記閾値調整部は、前記軸部の回転速度に応じて、該軸部及び前記軸受部に関する加速度の閾値を調整し、
前記異常判断部は、前記情報取得部において取得された加速度が、前記閾値調整部において調整された加速度の閾値を超えると、前記軸部または前記軸受部の状態が異常であると判断する、
請求項5に記載の異常検知装置。
【請求項7】
前記情報検出部が検出した情報を電子計算機により分析するために、該電子計算機と該情報検出部との情報のやりとりを仲介する情報仲介部を更に備える、
請求項1から6の何れか一項に記載の異常検知装置。
【請求項8】
前記情報検出部と前記異常判断部とを稼動させる電力源を、前記軸部の回転運動と前記軸受部の軸支回転状態により提供することが可能な発電装置を更に備える、
請求項1から7の何れか一項に記載の異常検知装置。
【請求項9】
前記発電装置は、
前記軸部に設けられるコイル部と、
前記軸受部に設けられる磁性体部と、を有し、
前記コイル部と前記磁性体部は、前記軸部の回転運動と前記軸受部の軸支回転状態にあることにより磁力変化が生じ、該磁力変化により該コイル部に起電力が発生する、前記発
電装置が前記電力源を提供することが可能な位置に配置される、
請求項8に記載の異常検知装置。
【請求項10】
前記判断表示部は、所定の場所に設けられ、
前記異常判断部が判断した結果を、無線通信により前記所定の場所に設けられた前記判断表示部に送信する送信部を更に備える、
請求項2に記載の異常検知装置。
【請求項11】
請求項1から10の何れか一項に記載の異常検知装置は、鉄道車両に取り付けられる、
異常検知装置。
【請求項12】
請求項10に記載の異常検知装置は、鉄道車両に取り付けられ、
前記所定の場所は、前記鉄道車両を運転する運転手に前記異常判断部が判断した結果を知らせることが可能な場所である、
異常検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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