説明

発泡抑制機構を有する遠心分離機

【課題】 従来の遠心分離機の発泡抑制機構とは全く異なる、新規の発泡抑制機構を有する遠心分離機を提供する。
【解決手段】 比重の小さい分離液体流を流出させる流出口1dを上端部の外周よりも内側に有する回転容器1と、回転容器1とは別体であり回転容器1の回転中において静止して流出口1dから流出した分離液体流を接触させて回転容器1の上端部の外周よりも内側の領域から外周縁部方向に分離液体流を導くことにより摩擦抵抗で前記分離液体流の流速を減速させると共に、減速した分離液体流を回転容器1の周囲の領域に分散して流出させる減速面を有する静置板3と、静置板3によって回転容器1の周囲の領域に分散して流出した分離液体流が遠心分離機外部に漏れないように回転容器1の外側を包囲する包囲部2を有する遠心分離機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心分離機の発泡抑制機構と、これを有する遠心分離機に関するものである。より詳細には、比重の大きい物質(通常は固体粒子等の固体であるが、液体の場合もある。以下同様。)と前記物質よりも比重の小さい液体との混合物である遠心分離対象の液状体から、遠心力によって、比重の大きい物質と前記物質よりも比重の小さい液体とを分離する遠心分離機で得られる比重の小さい液体の発泡を抑制する発泡抑制機構と、この発泡抑制機構を有する遠心分離機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
遠心分離機によって、遠心分離対象の液状体から比重の大きい物質と前記物質よりも比重の小さい液体を分離することが行われている。しかし、前記比重の小さい液体の種類によっては、遠心分離されて回収された液体が発泡していることがあり、分離回収した液体が発泡していることが好ましくない場合がある。
【0003】
例えば、固体粒子を含有する使用済みのクーラントから固体粒子を分離除去してクーラントを再生する場合である。即ち、固体粒子を含有する使用済みのクーラントから固体粒子を分離除去して、液体のクーラントを回収し、回収した液体のクーラントを再生クーラントとして再使用する場合である。クーラントのこのような再生と再使用は、繰り返し行われる場合がある。なお、クーラントについて説明すると次のとおりである。
【0004】
クーラントは、研削加工機、切削加工機等の各種加工機で被加工物(金属、ガラス、セラミックス等の材料)を加工する際に、冷却、潤滑、洗浄等のために供給される液体であり、水性、油性、エマルジョン等の各種の型がある。使用済みのクーラントには、加工の際に生じた被加工物あるいは加工機等から生じた固体粒子が含まれるので、固体粒子を除去する必要がある。しかし、分離回収したクーラントが発泡していると、クーラントとしての作用(冷却、潤滑及び洗浄の各作用)が損なわれるので、固体粒子を除去しても分離回収したクーラントを使用することには問題点が残る(特に、繰り返し連続して使用する場合にはよりいっそう問題点が残る)。上記問題点に対処するための手段として従来は、特許文献1に記載の泡抑制型遠心分離機、特許文献2に記載の遠心分離機を用いることが知られていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭62−114671号公報
【特許文献2】特開2007−253045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の泡抑制型遠心分離機によっても、分離回収したクーラントが発泡している場合があり、分離回収したクーラントの発泡を十分に抑制できない場合があった。発泡を十分に抑制できない理由は、必ずしも明らかではないが、次のように考えられる。
【0007】
特許文献1の実施例に記載の遠心分離機は、特許文献1の第1図に示されるように、固定蓋7を有するものであり、回転容器で分離された液体が固定蓋7の内部空間(たちあがり7aと上板7bと下板7cによって形成される内部空間)にたまるので、このことが発泡を十分に抑制できない一因ではないかと考えられる。即ち、回転容器で分離された液体が固定蓋7の内部空間にたまる場合には、回転容器で分離された液体は、壁面5a及び固定蓋7のたちあがり7aを乗り越えて、前記内部空間にたまった分離液体の液面に衝突することになるため、発泡を十分に抑制できないのではないかと推測される。なお、特許文献1には、回転容器で分離された液体は、壁面5a及び固定蓋7のたちあがり7aを乗り越えて下板7c上に落下し、下板7c上にたまるという旨が記載されている(3頁右上欄5〜9行参照)。
【0008】
なお、特許文献1の実施例に記載の遠心分離機における回転容器1は、底を有するので、一定量の遠心分離対象の液状体の遠心分離を行うと、遠心分離対象の液状体に含まれていた固体粒子が回転容器1の内部に蓄積するから、蓄積した固体粒子を定期的に除去する必要がある。回転容器1の内部に蓄積した固体粒子を除去するためには、遠心分離を中断して固定蓋7及び回転蓋5を取り外し、回転容器1の内部に蓄積した固体粒子を除去し(通常は人が掻き出し)、取り外していた回転蓋5及び固定蓋7を取り付けるという作業が不可欠である。そのため、特許文献1の実施例に記載の遠心分離機は、回転容器1の内部に蓄積した固体粒子を除去して遠心分離が可能な状態に戻すまでの作業が繁雑で手間と時間がかかると共に、固定蓋7及び回転蓋5の存在により固体粒子の除去を人手によらず機械を用いて自動化することが極めて困難な構造になっている。
【0009】
一方、特許文献2に記載の遠心分離機は、特許文献1に記載の泡抑制型遠心分離機では、分離回収したクーラントの発泡を十分に抑制できない場合に対しても、十分に発泡を抑制できるものではあるが、さらに高い水準での発泡の抑制が望まれている。
【0010】
本発明は、特許文献1に記載の泡抑制型遠心分離機あるいは特許文献2に記載の遠心分離機が有するそれぞれの発泡抑制手段とは全く異なる新規の発泡抑制機構を提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明は、特許文献1に記載の泡抑制型遠心分離機あるいは特許文献2に記載の遠心分離機とは全く異なる、新規の発泡抑制機構を有する遠心分離機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、第1の視点において、遠心分離対象の液状体から遠心力により比重の大きい物質と前記物質よりも比重の小さい液体を分離し、比重の小さい分離液体流を流出させる流出口を上端部の外周よりも内側に有する回転容器を備える遠心分離機の、前記回転容器とは別体の発泡抑制機構であって、前記回転容器の回転中において静止して配される減速面を有し、前記減速面は、前記流出口から流出した分離液体流を接触させて前記回転容器の上端部の外周よりも内側の領域から外周縁部方向に分離液体流を導くことにより摩擦抵抗で前記分離液体流の流速を減速させると共に、減速した分離液体流を前記回転容器の周囲の領域に分散して流出させる発泡抑制機構により、上記目的を達成することができる。
【0013】
前記発泡抑制機構の前記減速面は、前記回転容器の回転軸に対して直角ないし略直角に交差する面上に存在することができる。前記発泡抑制機構の前記減速面は、前記回転容器の前記流出口よりも外側の領域において、前記回転容器の周方向に連続する環状面にすることができる。前記発泡抑制機構は、中央部に開口を有する板状部材を有することができ、前記板状部材は、前記回転容器の回転軸に対して直角ないし略直角に交差する面上であって、前記回転容器の前記流出口の全てが前記開口から露出する位置に設けることができ、前記減速面は、前記流出口が露出する側の前記板状部材の面にすることができる。
【0014】
本発明によれば、第2の視点において、遠心分離対象の液状体から遠心力により比重の大きい物質と前記物質よりも比重の小さい液体を分離し、比重の小さい分離液体流を流出させる流出口を上端部の外周よりも内側に有する回転容器と、前記回転容器とは別体として前記回転容器の回転中において静止して配される減速面を備えた発泡抑制機構とを有し、前記減速面は、前記流出口から流出した分離液体流を接触させて前記回転容器の上端部の外周よりも内側の領域から外周縁部方向に分離液体流を導くことにより摩擦抵抗で前記分離液体流の流速を減速させると共に、減速した分離液体流を前記回転容器の周囲の領域に分散して流出させるよう構成され、さらに、前記発泡抑制機構によって前記回転容器の周囲の領域に分散して流出した分離液体流が遠心分離機外部に漏れないように前記回転容器の外側を包囲する包囲部と、前記回転容器の外周面と前記包囲部の内周面との間に形成され前記分離液体流を遠心分離機外部に導く導出流路と、を有する遠心分離機により、上記目的を達成することができる。
【0015】
前記回転容器は、前記比重の大きい物質を排出する排出口を下端部に有する回転容器にすることができる。前記回転容器は、回転軸を上端部に有することができ、前記分離液体流を流出させる複数の流出口が前記回転軸の周囲に分散して設けられるようにすることができ、遠心分離対象の液状体を回転容器内部に供給する供給管を下端部に有することができ、前記供給管は、下端部の前記排出口から回転容器内部に引き込んで設けることができる。
【0016】
前記発泡抑制機構の前記減速面は、前記回転容器の回転軸に対して直角ないし略直角に交差する面上に存在させることができる。前記発泡抑制機構の前記減速面は、前記回転容器の前記流出口よりも外側の領域において、前記回転容器の周方向に連続する環状面にすることができる。前記発泡抑制機構は、中央部に開口を有する板状部材を有することができ、前記板状部材は、前記回転容器の回転軸に対して直角ないし略直角に交差する面上であって、前記回転容器の前記流出口の全てが前記開口から露出する位置に設けることができ、前記減速面は、前記流出口が露出する側の前記板状部材の面にすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の遠心分離機の発泡抑制機構は、上記構成を有するものであり、発泡性を有する液体が分離回収対象である場合でも、遠心分離された分離液体流の遠心分離機内部における発泡を十分に抑制することができる。したがって、スペースを取る消泡タンク等の付帯設備を遠心分離機に設ける必要がなく、また、消泡剤等の消耗品を使用する必要がない。
【0018】
また、本発明の遠心分離機の発泡抑制機構は、単純な構成にすることが可能なので、以下のような効果を奏することができる。即ち、分離液体流を流出させる流出口を上端部の外周よりも内側に有する回転容器を備える遠心分離機に簡単に適用することができ、適用した遠心分離機に対して簡単に発泡抑制効果を付与することができる。また、分離液体流を流出させる流出口を上端部の外周よりも内側に有する回転容器を備える遠心分離機が他の発泡抑制手段を有する場合でも、その発泡抑制手段に加えて本発明の発泡抑制機構を適用することが可能になる場合が多いので、適用した遠心分離機の発泡抑制効果をさらに向上させることができる。例えば、特許文献2に記載の発泡抑制手段を有する遠心分離機に適用することも可能なので、特許文献2に記載の遠心分離機の発泡抑制効果をさらに向上させることができる。
【0019】
本発明の遠心分離機は、上記構成を有するものであり、発泡性を有する液体が分離回収対象である場合でも、遠心分離されて回収された分離液体の発泡を十分に抑制することができるので、分離回収対象の液体が発泡することにより生じる問題点を解決することができる。例えば、分離回収対象の液体がクーラントである場合は、クーラントとしての作用(冷却、潤滑、洗浄の各作用)が損なわれることを防止してクーラントを分離回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施例の遠心分離機の概略断面図(回転容器1の回転軸1aの長さ方向の概略断面図)である。
【図2】図1の二点鎖線で囲んだ領域近傍の部分拡大図である。
【図3】本発明の一実施例の遠心分離機における、静置板3を存在させた回転容器の上端部及びその近傍を、重力方向に視た概略図である。但し、静置板を固定するために必要な接合部材及び回転容器の回転軸は図示していない。
【図4】本発明の発泡抑制機構を有しない比較例の遠心分離機の概略断面図(回転容器の回転軸41aの長さ方向の概略断面図)である。
【図5】図4の比較例の遠心分離機における、回転容器の上端部の上蓋及びその近傍を、重力方向に視た概略図である。但し、回転容器の回転軸は図示していない。
【図6】発泡性の評価に使用した試験用遠心分離装置(静置板あり)を示す概略断面図(中心軸60の長さ方向の断面図)である。但し、静置板を固定するために必要な接合部材は図示していない。
【図7】発泡性の評価に使用した試験用遠心分離装置(静置板なし)を示す概略断面図(中心軸70の長さ方向の断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の発泡抑制機構は、遠心分離機用のものであり、遠心分離機に設けて使用するものである。本発明の遠心分離機は、本発明の発泡抑制機構を有する。以下、本発明の遠心分離機の主要な構成要素である回転容器、発泡抑制機構、包囲部及び導出流路の形態について説明するが、発泡抑制機構の形態は、本発明の発泡抑制機構の形態の記載を兼ねるものとする。
【0022】
[回転容器]
回転容器は、遠心分離対象の液状体から遠心力により比重の大きい物質と前記物質よりも比重の小さい液体を分離し、比重の小さい分離液体流を流出させる流出口を上端部の外周よりも内側に有する容器である。回転容器は、好ましくは、前記比重の大きい物質を排出する排出口を下端部に有するものにすることができる。
【0023】
前記比重の大きい物質を排出する排出口を下端部に有する回転容器は、回転容器の内周壁面に蓄積した固体粒子等のスラッジの除去を簡単に行うことができると共に、前記スラッジの除去を人手によらず機械を用いて自動化することが極めて容易な構造になっている。即ち、前記排出口を下端部に有する回転容器は、前記スラッジを除去する場合、遠心分離後にスクレーパー等のスラッジ除去具を前記排出口から直接挿入することが可能な構造になっているので、前記スラッジをスラッジ除去具で掻き落とし前記排出口から簡単に排出することが可能である。
【0024】
前記排出口を下端部に有する回転容器は、スラッジの除去を自動で行うスラッジ自動除去手段を有することができる。このようなスラッジ自動除去手段としては、例えば、回転容器を低速度で回転させることができるスラッジ除去専用のモーター(例えば、ギアモーター)と、前記スラッジ除去専用のモーターと遠心分離用のメインモーターとを切り替えるモーター切替手段(例えば、クラッチを有するモーター切替手段)と、スラッジ除去部(例えば、スクレーパー等のスラッジ除去具)を有し、遠心分離中断後にモーター切替手段によってスラッジ除去専用のモーターに切り替えて回転容器を低速度でゆっくり回転させ、回転容器内に内臓させているスラッジ除去部を回転容器の内周面に近づけ前記内周面に堆積したスラッジに接触させてスラッジを掻き落とし、スラッジを掻き落とした後にスラッジ除去部を元の位置に戻し、モーター切替手段によって遠心分離用のメインモーターに切り替えて遠心分離を再開するように構成されたスラッジ自動除去手段がある。
【0025】
回転容器は、また、回転軸を上端部に有し、遠心分離対象の液状体を回転容器内部に供給する供給管を下端部に有し、前記供給管は、下端部の前記排出口から回転容器内部に引き込んで設けているものにすることができる。前記分離液体流を流出させる流出口は、複数設けることができ、好ましくは、回転容器の回転軸の周囲に分散して設けることができる。
【0026】
分離液体流を流出させる流出口は、好ましくは、回転容器の回転の中心軸(上端部に回転軸を有する回転容器の場合には、回転軸)にできるだけ近い位置に設ける。一定の回転速度で回転容器を回転させて遠心分離を行う場合、分離液体流を流出させる流出口の位置が回転容器の回転の中心軸に近いほど、当該流出口から流出する分離液体流の流速が遅くなるので、より発泡しにくくすることができる。したがって、上端部に回転軸を有しない回転容器の場合には、回転の中心軸が存在する領域に前記流出口を一つだけ設けることができる。また、上端部に回転軸を有する回転容器の場合には、回転軸を取り囲む領域において回転軸にできるたけ近い位置に設けることができる。
【0027】
分離液体流を流出させる流出口を複数設ける場合は、好ましくは、全ての流出口から分離液体流を流出させることができる位置に設ける。一般的には、分離液体流を流出させる流出口における分離液体流が流入する開口端(回転容器の内側の開口端)を、回転容器の回転の中心軸からの距離(前記中心軸に対して垂直な面における距離)が等しくなる位置に分散させて設ける。一方、分離液体流を流出させる流出口における分離液体流が流出する開口端(回転容器の外側の開口端)は、好ましくは、回転容器の回転の中心軸からの距離(前記中心軸に対して垂直な面における距離)が等しくなる位置に分散させて設ける。
【0028】
上端部に板状上蓋(回転容器の回転の中心軸上に中心を有し前記中心軸に対して垂直な板状上蓋、特に、円板状上蓋)が存在する回転容器の場合、分離液体流を流出させる流出口における分離液体流が流入する開口端(回転容器の内側の開口端)は、好ましくは、前記板状上蓋の内面(回転容器の内面)の円周上(回転容器の回転の中心軸を中心とする円周上)に分散させて複数個設け、分離液体流を流出させる流出口における分離液体流が流出する開口端(回転容器の外側の開口端)は、好ましくは、前記板状上蓋の外面(回転容器の外面)の円周上(回転容器の回転の中心軸を中心とする円周上)に分散させて複数個設ける。
【0029】
回転容器の下端部には比重の大きい物質を排出する排出口を設けることができる。排出口の開口端の形状は、好ましくは円にし、この円の中心は、回転容器の回転の中心軸が存在する軸上に存在させることができる。この場合、前記排出口の半径の長さは、流出口から分離液体流が流出するように、回転容器の回転の中心軸と流出口(分離液体流が流入する側の開口端)との最短距離よりも短くする。
【0030】
[発泡抑制機構]
発泡抑制機構は、回転容器とは別体として構成されるものである。したがって、発泡抑制機構は、回転容器が回転中であっても静止することが可能であり、通常は、遠心分離機の他の構成部材(但し、回転容器を除く)と直接接合するか接合部材を介して間接的に接合することにより、固定して設けることができる。
【0031】
発泡抑制機構は、減速面を有する。この減速面は、回転容器の流出口から流出した分離液体流を接触させて回転容器の上端部の外周よりも内側(中心軸側)の領域から外周縁部方向に分離液体流を導くことにより摩擦抵抗で分離液体流の流速を減速させると共に、減速した分離液体流を回転容器の周囲の領域に分散して流出させる面である。減速面には、本発明の効果を損なわない範囲で、分離液体流との摩擦抵抗を増加させるための微小な凹凸(深さ1mm以下、高さ1mm以下)や網状部材を設けることができる。但し、減速面(特に、減速面の外周縁部の周方向)は、減速した分離液体流が衝突して分離液体流の大部分が回転容器の内側方向(中心軸側)に逆流するような高さの突起部が存在しない程度の平坦面にする。
【0032】
発泡抑制機構の減速面は、回転容器の回転軸に対して直角ないし略直角(好ましくは85〜95°、より好ましくは88〜92°、さらに好ましくは89〜91°)に交差する面上に存在することができる。即ち、本発明の効果を損なわない範囲であれば、厳密に90°に交差する面上でなくても構わない。発泡抑制機構の減速面は、回転容器の流出口よりも外側の領域において、回転容器の周方向に連続する環状面にすることができる。
【0033】
発泡抑制機構は、中央部に開口を有する板状部材を有することができる。前記板状部材は、円板状部材の中央部の厚さ方向に貫通する開口(好ましくは、円形の開口)を有するものにすることができる。前記円形の開口の中心が、前記円板状部材の中心と一致するように、前記円形の開口を前記円板状部材に形成することができる。
【0034】
また、前記板状部材は、回転容器の回転軸に対して直角ないし略直角(好ましくは85〜95°、より好ましくは88〜92°、さらに好ましくは89〜91°)に交差する面上であって、回転容器の流出口の全てが開口から露出する位置に設けることができる。即ち、本発明の効果を損なわない範囲であれば、厳密に90°に交差する面上でなくても構わない。減速面は、流出口が露出する側の板状部材の面にすることができる。
【0035】
[回転容器の流出口に対する発泡抑制機構の減速面の配置関係]
本発明の遠心分離機は、回転容器の回転の中心軸が重力方向と平行になるように配置して遠心分離を行うものである。遠心分離時において、回転容器は、回転の中心軸を中心として回転し、回転容器の上端部の流出口の開口端から分離液体流を流出させる。分離液体流は、前記開口端よりも外側の領域(回転容器の回転軸上に中心を有する円の半径方向において、前記開口端よりも外側の領域)に流出するので、発泡抑制機構の減速面は、流出した分離液体流が回転容器の上端部に接触するのを妨げる位置及び広さで設ける。発泡抑制機構の減速面は、好ましくは、前記開口端が存在する位置か、この位置よりも重力方向に低い面上であって、前記開口端よりも外側の領域(回転容器の回転の中心軸上に中心を有する円の半径方向において、前記開口端よりも外側の領域)に設ける。また、発泡抑制機構の減速面は、前記減速面の外周縁部が、好ましくは、回転容器の最外周部ないし前記最外周部よりも外側の領域(回転容器の回転の中心軸上に中心を有する円の半径方向において、前記最外周部ないし前記最外周部よりも外側の領域)に達する程度の広さで設ける。
【0036】
[包囲部]
包囲部は、発泡抑制機構によって回転容器の周囲の領域に分散して流出した分離液体流が遠心分離機外部に漏れないように回転容器の外側を包囲するものである。包囲部の形状は、回転容器の形状に応じて適宜設定することができ、回転容器の形状が円筒状ないし略円筒状等の筒状である場合は、例えば、回転容器の径よりも大きい径の円筒状ないし略円筒状等の筒状にすることができる。
【0037】
[導出流路]
導出流路は、回転容器の外周面と包囲部の内周面との間に形成され、前記発泡抑制機構によって回転容器の周囲の領域に分散して流出した分離液体流を遠心分離機外部に導く流路である。導出流路は、通常は、回転容器の外周面と包囲部の内周面で形成することができるが、回転容器の外周面に分離液体流が接触しないように回転容器の外周面を包囲する円筒形状の部材を新たに設け、この新たに設けた円筒形状の部材の外周面と包囲部の内周面との間の円筒形状の空間部を導出流路とすることができる。
【実施例】
【0038】
本発明の発泡抑制機構を有する遠心分離機の実施例を図面に基づいて説明する。遠心分離対象の液状体としては、「固体粒子を含む使用済みクーラント」を用いている。この使用済みクーラントは、非磁性体材料(ガラス、シリコン等)を含んでいる。図1は、本発明の一実施例の遠心分離機の概略断面図(回転容器1の回転軸1aの長さ方向の概略断面図)である。なお、先端が黒い三角形の矢印は、「固体粒子を含む使用済みクーラント」又は「固体粒子を分離された分離クーラント」が流れる方向を示す。図2は、図1の二点鎖線で囲んだ領域近傍の部分拡大図である。図3は、本発明の一実施例の遠心分離機における、静置板3を存在させた回転容器の上端部及びその近傍を、重力方向に視た概略図であり、静置板を固定するために必要な接合部材及び回転容器の回転軸は図示していない。
【0039】
なお、図1では、静置板3の位置が、流出口1dの回転体の外面に露出する側の開口端1dの位置と比較して重力方向においてかなり下側に存在するように描かれているが、これは先端が黒い三角形の矢印を描いたためである。静置板3と開口端1dの重力方向における位置関係は、図2に示すように、静置板3の減速面と、開口端1dが存在する面1csとを同一面上に存在させることは好ましい。但し、図1のように静置板3の位置が、開口端1dの位置よりも重力方向において下側になるように配置することもできる。
【0040】
図4は、本発明の発泡抑制機構を有しない比較例の遠心分離機の概略断面図(回転容器41の回転軸41aの長さ方向の概略断面図)である。なお、先端が黒い三角形の矢印は、「固体粒子を含む使用済みクーラント」又は「固体粒子を分離された分離クーラント」が流れる方向を示す。図5は、図4の比較例の遠心分離機における、回転容器の上端部の上蓋及びその近傍を、重力方向に視た概略図であり、回転容器の回転軸は図示していない。
【0041】
[実施例1]
[回転容器1]
回転容器1は、略円筒状であり、モータ(図示せず)と結合する回転軸1aを有し、前記回転軸を中心として遠心分離可能な早さで回転する。回転容器1は、遠心分離対象の液状体(固体粒子を含む使用済みクーラント)から遠心力により比重の大きい物質(固体粒子)と前記物質よりも比重の小さい液体(固体粒子を分離された分離クーラント)を分離することが可能である。回転容器1は、比重の小さい分離液体流(分離クーラント流)を流出させる複数の流出口(内部空間が円柱状の貫通孔)1dを上端部の外周よりも内側の上蓋1cに有し、比重の大きい物質(固体粒子)を排出する排出口を下端部1eに有する。
【0042】
上蓋1cは、厚さ方向に対して直角方向の断面の外周が円形の板状部材であり、上蓋1cは、前記断面が回転軸1aの長さ方向に対して垂直になるように配置されている。上蓋1cに穿孔された流出口1dの長さ方向は、回転軸1aの長さ方向と平行である。図3に図示されているように、上蓋1cに穿孔された流出口1dの数は全部で12孔である。流出口1dが上蓋1cの外面に露出する側の開口端1dの形状は、円であると共に、これら円形の開口端1dは、上蓋1cの中央の回転軸1a(図3には図示せず)の周囲に環状に等間隔に開口している。
【0043】
一方、回転容器1の下端部1eの排出口の開口端の形状は、円であり、この円の中心は、回転軸1aの回転の中心軸が存在する軸上に存在する。また、前記排出口の半径の長さは、流出口1dから分離クーラント流が流出するように、回転軸1aの回転の中心軸と流出口1dとの最短距離よりも短くしている。クーラント供給管1bは、回転軸1aの回転の中心軸の延長上に存在し、遠心分離対象の液状体(固体粒子を含む使用済みクーラント)を回転容器の内部に供給する。クーラント供給管1bは、回転容器1の下端部1eの前記排出口から回転容器内部に引き込んで設けている。
【0044】
[回転容器1による遠心分離]
クーラント供給管1bの先端の射出部の開口から、遠心分離対象の液状体(固体粒子を含む使用済みクーラント)が回転容器1の内部に連続して射出される。回転している回転容器の内部に前記射出部の開口から連続して射出された遠心分離対象の液状体(固体粒子を含む使用済みクーラント)は、遠心力により回転容器の内周壁面に押しつけられ略円筒形状になる。遠心分離対象の液状体(固体粒子を含む使用済みクーラント)は、射出部の開口から連続して射出されるので、回転容器の内周壁面に押し付けられる遠心分離対象の液状体(固体粒子を含む使用済みクーラント)の厚さは、内周壁面側から回転容器1の回転の中心軸に向かって次第に増加する。
【0045】
このように略円筒形状に蓄積した遠心分離対象の液状体(固体粒子を含む使用済みクーラント)における固体粒子は、遠心力により回転容器の内周壁面側に移動して蓄積されるので、回転軸に近い側には固体粒子が分離されたクーラントの液層が形成される。遠心分離対象の液状体(固体粒子を含む使用済みクーラント)を、回転容器1の内部にさらに供給し続けると、ついには固体粒子が分離された分離クーラントの液層の内周面Sが上蓋1cの流出口1dに到達し、流出口1dの円柱状の内部空間を経て回転容器1の外部に開口する流出口1dの開口端1dから分離クーラント流として回転軸1aに対してほぼ直角の方向に流出する。流出口1dの開口端1dから流出した分離クーラント流は、静置板3と接触する。この静置板3は、発泡抑制機構を構成するものとして設けられている。
【0046】
[静置板3]
本発明における発泡抑制機構を構成する静置板3は、図1に図示されているように、回転容器1の回転軸1aに対して直角に交差する面上に設けられている。また、静置板3は、回転容器1の上端部の上蓋1c(あるいは、開口端1dが開口する上蓋1cの外面1cs)に対して平行に設けられている。なお、図2に図示されているように、静置板3は、回転容器1とは別体として構成されたものであり、接合部材(図示せず)を介して包囲部2の上端部2aの内壁面に固定されているので、回転容器1が回転しても静止したままである。
【0047】
さらに、静置板3は、図3に図示されているように、中央部に円形の開口3hを有する薄い円板状部材であり、回転容器1の上蓋1cに穿孔された12孔の流出口1dの開口端1dの全て(12孔)が、中央部の円形の開口3hから露出する位置に設けられている。静置板3の斜線を付した領域は、減速面である。前記減速面は、回転容器1の流出口1dの開口端1dよりも外側の領域において、回転容器1の周方向に連続する環状面である。より詳細には、静置板3の開口3hの直径は、等間隔で環状に配置されている12孔の開口端1dを開口3hの内周が取り囲むことができる程度の長さである。したがって、静置板3は、開口3hの内周が、環状に配置された12孔の開口端1dを取り囲むように設けられている。静置板3の外径は、図2に図示するように、略円筒形の回転容器1の上端部の外径よりも長い。
【0048】
静置板3の減速面(図3において斜線を付した面)が、図2に図示するように、回転容器1の上端部の上蓋1cにおいて開口端1dが開口する上蓋1cの外面1csと同一の面に存在するように、静置板3を配置している。但し、静置板3の減速面は、開口端1dが開口する上蓋1cの外面1csと同一の面よりも低い位置(重力方向において低い位置)になるように、静置板3を配置することもできる。このように静置板3を配置することができるように、回転容器1の上端部の上蓋1cにおける静置板3と対向する面には、静置板3を収容することができる凹所が形成されている。
【0049】
[静置板3の作用]
回転容器1の上端部の上蓋1cの開口端1dから流出した分離クーラント流は、遠心力によって、回転容器1の回転軸1aに対して直角方向に流出する。静置板3を設けていない場合には、図5に図示するように、上蓋41cの開口端41dから流出した分離クーラント流は、遠心分離可能な程度の高速で回転する上蓋41c(より詳細には、開口端41dが開口する上蓋41cの外面41cs)において加速され、上蓋41cの外周縁部から高速で(開口端41dから流出した時よりも、より高速で)流出して包囲部42の内周壁面(特に、内周壁面に設けられている強度補強用部材の突起部)に激しく衝突して発泡する。なお、図5の二点鎖線で囲んだ領域が、分離クーラント流の衝突により発泡する領域である。
【0050】
これに対して、本発明の実施例では、発泡抑制機構を構成する静置板3を設けているので、回転容器1の上端部の上蓋1cの開口端1dから流出した分離クーラント流は、上蓋1cで加速されるのではなく静置板3で減速されて、静置板3の外周縁部から静置板3の周囲に分散して流出する。即ち、回転容器1の上端部の上蓋1cの開口端1dから流出した分離クーラント流は、遠心力によって、回転容器1の回転軸1aに対して直角方向に流出し、静置板3の減速面に接触する。減速面に接触した分離クーラント流は、回転軸1aを中心として旋回して静置板3の外周縁部に到達するので、この到達するまでの間、摩擦抵抗によって流速が減速する。減速した分離クーラント流は、静置板3の外周縁部から低速で(開口端1dから流出した時よりも、より低速で)そのまま静置板3の周囲に分散して流出する。図2に図示するように、静置板3の直径は、回転容器1の上蓋1cの直径よりも大きいので、静置板3の周囲に分散して流出する分離クーラント流は、回転容器1の周囲に分散して流出することになる。
【0051】
[包囲部2]
包囲部2は、静置板3によって回転容器1の周囲の領域に分散して流出した分離クーラント流が遠心分離機外部に漏れないように略円筒形状の回転容器1の外側を包囲するものであり、略円筒形状である。包囲部2の内径は、回転容器1の外径よりも大きいので、回転容器1は、包囲部2の円柱状の内部空間に収容されて設けられている。略円筒形状の包囲部2の中心軸は、回転容器1の回転の中心軸上に存在し、回転容器1の外周壁面と略円筒形状の包囲部2の内周壁面との間隔は、回転容器1の外周壁面に沿って周方向に一定である。
【0052】
[導出流路]
回転容器1の外周壁面と略円筒形状の包囲部2の内周壁面との間に形成された筒状の空間部は、静置板3によって回転容器1の周囲の領域に分散して流出した分離クーラント流を遠心分離機外部に導く導出流路である。
【0053】
静置板3の外周縁部から前記外周縁部の周方向に分散して流出した分離クーラント流は、速度が低速で(開口端1dから流出した時よりも、より低速で)ある。また、静置板3の外周縁部と略円筒形状の包囲部2の内周壁面との間には空間部が存在する。したがって、静置板3の外周縁部から流出した分離クーラント流が包囲部2の内周壁面に衝突しても衝突速度が著しく低速なので極めて発泡しにくい。なお、静置板3の外周縁部から流出した分離クーラント流が回転容器1の外周壁面と接触しないように、回転容器1の外周壁面と略円筒形状の包囲部2の内周面との間に、回転容器1の回転の中心軸上に中心軸を有し回転容器1を包囲する円筒形状の壁を設けることもできる。
【0054】
なお、図2に図示するように、本実施例の遠心分離機は、包囲部2の上端部2aの内壁面に固定されている遮蔽板4を設けている。この遮蔽板4は、回転容器1の上端部の外周を包囲するように回転容器1の周方向に連続する環状の遮蔽板である。したがって、この遮蔽板4が存在する位置に、回転容器1の上端部の上蓋1cの開口端1dから分離クーラント流が飛散した場合でも、そのような分離クーラント流が遠心分離機の補強部材の突起部5に衝突して発泡することを防止する。
【0055】
静置板3によって回転容器1の周囲の領域に分散して流出した分離クーラント流は、導出流路を経て遠心分離機外部に流出する。流出した分離クーラント流は、蓄積容器(図示せず)に蓄積することができ、あるいは加工機に供給するための供給管(図示せず)によって加工機に供給することもできる。
【0056】
[実施例2]
静置板3の減速面の全面に、金属製の網からなるメッシュ層を設けたこと以外は前記実施例1と同様の遠心分離機。
【0057】
[実施例3]
メッシュ層の厚さ方向に対して直角方向のメッシュ層表面が、開口端1dが開口する上蓋1cの外面1csと同一の面上に存在するように、静置板3を重力方向に低く配置したこと以外は前記実施例2と同様の遠心分離機。
【0058】
実施例2〜3の遠心分離機は、静置板3の減速面の表面にメッシュ層を設けているので、開口端1dから流出した分離クーラント流の流速をより一層低下することができるので、より一層発泡を抑制することができる。
【0059】
[比較例]
図4〜5は、本発明の発泡抑制機構を有しない比較例の遠心分離機についての図面である。図4は、本発明の発泡抑制機構を有しない比較例の遠心分離機の概略断面図(回転容器の回転軸41aの長さ方向の概略断面図)である。図5は、図4の比較例の遠心分離機における、回転容器の上端部の上蓋及びその近傍を、重力方向に視た概略図であり、回転容器の回転軸は図示していない。
【0060】
比較例の遠心分離機は、図4に図示されているように、回転容器41と、包囲部42を有するが、本発明の発泡抑制機構を構成するもの(静置板3等)を有しない。回転容器41は、実施例の回転容器1と同様のものであり、回転軸41a、クーラント供給管41b、上蓋41c、流出口41d、開口端41d及び下端部41eを有し、実施例の回転容器1と同様にクーラント供給管41bから供給した遠心分離対象の液状体(固体粒子を含む使用済みクーラント)を遠心分離して、上蓋41cの流出口41dの開口端41dから分離クーラント流を回転軸41aに対してほぼ直角の方向に流出させると共に、固体粒子を下端部41eの排出口から排出する。
【0061】
開口端41dから回転軸41aに対してほぼ直角の方向に流出した分離クーラント流は、図5に図示するように、遠心分離可能な程度の高速で回転する上蓋41c(より詳細には、開口端41dが開口する上蓋41cの外面41cs)において加速され、上蓋41cの外周縁部から高速で(開口端41dから流出した時よりも、より高速で)流出して包囲部42の内周壁面(特に、内周壁面に設けられている強度補強用部材の突起部)に激しく衝突して発泡する(図4〜5の二点鎖線で囲まれた領域参照)。
【0062】
包囲部42の内周壁面に衝突して発泡した分離クーラント流は、包囲部42の内周壁面への衝突部から重力方向に流れ落ち、導出流路を経て遠心分離機の外部に到達する。なお、導出流路は、略円筒形状の回転容器41の外周壁面と、略円筒形状の包囲部42の内周壁面との間に形成された筒状の空間部である。
【0063】
[消泡効果の評価]
前記実施例と同様に静置板を有する試験用遠心分離装置と、前記比較例と同様に静置板を有しない試験用遠心分離装置を用いて遠心分離を行い、消泡効果を評価した。静置板を有する試験用遠心分離装置の概略を図6に示す。図6は、回転容器61の中心軸60に対して直角方向から視た、静置板を有する試験用遠心分離装置の概略断面図(中心軸60の長さ方向の断面図)である。また、静置板を有しない試験用遠心分離装置の概略を図7に示す。図7は、回転容器71の中心軸70に対して直角方向から視た、静置板を有しない試験用遠心分離装置の概略断面図(中心軸70の長さ方向の断面図)である。
【0064】
〈使用装置〉
図6の試験用遠心分離装置は、実施例1の遠心分離機と同様の構造を有し、実施例1の遠心分離機と同様に遠心分離可能なものであり、円筒状の回転容器61、円筒状の包囲部62、環状の静置板63を有する。回転容器61の上端部の上蓋61cは、流出口61dを有し、流出口61dには管状部材Pがはめ込まれて固定されている。管状部材Pの先端部は、上蓋61cの外面から突出している。回転容器61は、直径Dが180mm、回転軸方向の高さHが130mmである。
【0065】
図7の試験用遠心分離装置は、比較例の遠心分離機と同様の構造を有し、比較例の遠心分離機と同様に遠心分離可能なものであり、円筒状の回転容器71、円筒状の包囲部72を有するが、静置板を有しない。回転容器71の上端部の上蓋71cは、流出口71dを有する。回転容器71は、直径が180mm、回転軸方向の高さHが130mmである。
【0066】
〈遠心分離条件及び評価方法〉
それぞれの試験用遠心分離装置の回転容器を回転数760rpmで回転させて、遠心分離を行い、遠心分離されたクーラントを採取した。発泡により気泡を含んだ液体は、密度が小さくなるため、密度を測定して、泡の発生量の目安とした。遠心分離の際には58Gの遠心力が発生した。使用したクーラントは、CG50P(ノリタケカンパニーリミテド製)を水で30倍に希釈したもの(遠心分離前の密度1.002g/cm)である。評価結果を表1に示す。静置板を有する試験用遠心分離装置の場合は、静置板を有しない試験用遠心分離装置の場合よりも採取クーラントの平均密度が大きいので、より発泡しにくいと考えられる。
【0067】
【表1】

【符号の説明】
【0068】
1 回転容器
1a 回転軸
1b クーラント供給管
1c 上蓋
1cs 開口端1dが開口する上蓋1cの外面
1d 流出口
1d 開口端
1e 下端部
2 包囲部
2a 包囲部2の上端部
3 静置板
3h 開口
4 遮蔽板
5 突起部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠心分離対象の液状体から遠心力により比重の大きい物質と前記物質よりも比重の小さい液体を分離し、比重の小さい分離液体流を流出させる流出口を上端部の外周よりも内側に有する回転容器を備える遠心分離機の、前記回転容器とは別体の発泡抑制機構であって、
前記回転容器の回転中において静止して配される減速面を有し、前記減速面は、前記流出口から流出した分離液体流を接触させて前記回転容器の上端部の外周よりも内側の領域から外周縁部方向に分離液体流を導くことにより摩擦抵抗で前記分離液体流の流速を減速させると共に、減速した分離液体流を前記回転容器の周囲の領域に分散して流出させることを特徴とする発泡抑制機構。
【請求項2】
前記発泡抑制機構の前記減速面は、前記回転容器の回転軸に対して直角ないし略直角に交差する面上に存在することを特徴とする請求項1に記載の発泡抑制機構。
【請求項3】
前記発泡抑制機構の前記減速面は、前記回転容器の前記流出口よりも外側の領域において、前記回転容器の周方向に連続する環状面であることを特徴とする請求項1〜2のいずれか一に記載の発泡抑制機構。
【請求項4】
前記発泡抑制機構は、中央部に開口を有する板状部材を有し、前記板状部材は、前記回転容器の回転軸に対して直角ないし略直角に交差する面上であって、前記回転容器の前記流出口の全てが前記開口から露出する位置に設けられ、前記減速面は、前記流出口が露出する側の前記板状部材の面であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一に記載の発泡抑制機構。
【請求項5】
遠心分離対象の液状体から遠心力により比重の大きい物質と前記物質よりも比重の小さい液体を分離し、比重の小さい分離液体流を流出させる流出口を上端部の外周よりも内側に有する回転容器と、
前記回転容器とは別体として前記回転容器の回転中において静止して配される減速面を備えた発泡抑制機構とを有し、前記減速面は、前記流出口から流出した分離液体流を接触させて前記回転容器の上端部の外周よりも内側の領域から外周縁部方向に分離液体流を導くことにより摩擦抵抗で前記分離液体流の流速を減速させると共に、減速した分離液体流を前記回転容器の周囲の領域に分散して流出させるよう構成され、さらに、
前記発泡抑制機構によって前記回転容器の周囲の領域に分散して流出した分離液体流が遠心分離機外部に漏れないように前記回転容器の外側を包囲する包囲部と、
前記回転容器の外周面と前記包囲部の内周面との間に形成され前記分離液体流を遠心分離機外部に導く導出流路と、を有することを特徴とする遠心分離機。
【請求項6】
前記回転容器は、前記比重の大きい物質を排出する排出口を下端部に有する回転容器であることを特徴とする請求項5に記載の遠心分離機。
【請求項7】
前記回転容器は、回転軸を上端部に有し、前記分離液体流を流出させる複数の流出口が前記回転軸の周囲に分散して設けられ、遠心分離対象の液状体を回転容器内部に供給する供給管を下端部に有し、前記供給管は、下端部の前記排出口から回転容器内部に引き込んで設けていることを特徴とする請求項5〜6のいずれか一に記載の遠心分離機。
【請求項8】
前記発泡抑制機構の前記減速面は、前記回転容器の回転軸に対して直角ないし略直角に交差する面上に存在することを特徴とする請求項5〜7のいずれか一に記載の遠心分離機。
【請求項9】
前記発泡抑制機構の前記減速面は、前記回転容器の前記流出口よりも外側の領域において、前記回転容器の周方向に連続する環状面であることを特徴とする請求項5〜8のいずれか一に記載の遠心分離機。
【請求項10】
前記発泡抑制機構は、中央部に開口を有する板状部材を有し、前記板状部材は、前記回転容器の回転軸に対して直角ないし略直角に交差する面上であって、前記回転容器の前記流出口の全てが前記開口から露出する位置に設けられ、前記減速面は、前記流出口が露出する側の前記板状部材の面であることを特徴とする請求項5〜9のいずれか一に記載の遠心分離機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−101151(P2012−101151A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−250105(P2010−250105)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【出願人】(000004293)株式会社ノリタケカンパニーリミテド (449)
【Fターム(参考)】