説明

発破検出器

【課題】複雑な機構や操作を必要とせずに発破個所から離れた個所に受圧部を配置しても発破があったことを確実に検知することが可能で、騒音環境が異なるトンネルにおいて使用しても各々のトンネルに合わせて感度調整が可能な発破検知器を提供する。
【解決手段】トンネル内の発破に連動して集塵機などの運転時期を制御する発破検知器1であって、受圧部2と、使用する発破により生じる音圧波形からなる発破音圧フィルタ4と、受圧部2により受圧したトンネル内に生じる音源からの音圧波形を発破音圧フィルタ4により同定してトンネル内に生じる音源の中で発破により生じる発破音圧波形を検出する検出部5と、検出結果を検出信号として集塵機などの制御部7に出力する出力部6とを有するものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル内に設置されて発破作業に連動して集塵機の運転時期を制御する発破検知器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近頃、トンネル内における粉塵を有効に除塵する目的で、発破により生じる粉塵を直接的に粉塵検知器して集塵機を制御するだけでなく、粉塵の発生を予知する検知器からの出力により集塵機などを駆動制御することにより例えば粉塵が集塵機を超えてトンネルの入口方向へ流出するのを防止する手段が採られるようになり、例えば特開平8−42299号公報等に提示されている。
【0003】
ところで、前記粉塵の発生を予知する検知器の1つとして発破により生じる爆発音を検知する発破検知器が用いられており、特に、発破音によりトンネル内に生じる音圧を検知するものが知られている。
【0004】
この従来から知られている音圧式の発破検知器は、音圧を検知する受圧部が例えばマイクロフォンと同様の原理により電気的に受圧するものであるが、トンネル内は大型の掘削機や搬送機などが稼働しており、それらの騒音から発せられる環境騒音が検知を困難なものとしていた。
【0005】
そこで、例えば特開平4−53546号公報に提示されているように、受圧部をダイナミックスピーカのコーンにより形成した発破検知機が提示されている。
【0006】
この発破検知器は、小型且つ安価で周辺ノイズのカット調整をして検知感度の調整が可能である等の利点を有している。
【0007】
しかしながら、周辺ノイズのカット調整をコーンのばね強度や受圧面(コーン)の大きさ等により特定するものであり、使用環境に応じた受圧部を作成することになり現実的でない。
【0008】
そのため、音圧式の発破検知機では充分なトンネル環境による騒音排除が困難であり高感度の検出が困難であるばかりか、少なくとも受圧部を発破個所に配置する必要があり、集塵機に近接して配置することができないことから配線や操作の点で問題があり、また、発破により生じる粉塵が直接、受圧部に降下することになり保守に多大な労力を要し、受圧部が密閉型とできないという不便さもある。
【特許文献1】特開平8−42299号公報
【特許文献2】特開平4−53546号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、複雑な機構や操作を必要とせずに発破個所から離れた個所に受圧部を配置しても発破があったことを確実に検知することが可能で、騒音環境が異なるトンネルにおいて使用しても各々のトンネルに合わせて感度調整が可能な発破検知器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するためになされた本発明である発破検知器は、トンネル内の発破に連動して集塵機などの運転時期を制御する発破検知器であって、受圧部と、使用する発破により生じる音圧波形からなる発破音圧フィルタと、前記受圧部により受圧したトンネル内に生じる音源からの音圧波形を前記発破音圧フィルタにより同定して前記トンネル内に生じる音源の中で発破により生じる発破音圧波形を検出する検出部と、前記検出結果を検出信号として前記集塵機などの制御部に出力する出力部とを有することを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、使用する発破により生じる音圧波形からなる発破音圧フィルタにより前記トンネル内に生じる音源の中で発破により生じる発破音圧波形を同定、分別するので、発破による発音による音圧を確実に検知することができる。
【0012】
更に、本発明において、前記受圧部と前記発破音圧フィルタとの間に、前記受圧器により受圧した発破により生じる音圧波形を除いたトンネル内に生じる音源からの音圧波形と一致する音圧波形を有する騒音音圧フィルタを配置して、前記受圧器により受圧したトンネル内に生じる音源からの音圧波形の内、前記使用する発破により生じる発破音圧波形以外の騒音音圧波形を予め分別除去しておくことにより、更に検知感度の向上を図ることができる。
【0013】
また、本発明において受圧部をトンネル内に配置された集塵機近傍やトンネル内に配置された排気用風管のトンネル入口部に配置された送風機近傍に配置することにより、設置や操作の困難性がなくなるばかりか、従来のように発破による粉塵や砕石による影響も回避することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、きわめて劣悪な騒音環境における掘削中のトンネル内に行われる発破を確実に検知して集塵機などを正確に制御することができる。また、検知機自体を調整することなしにトンネルの騒音や発破の種類などに対応することができる。また、設置や操作の困難性がなくなるばかりか、従来のように発破による粉塵や砕石による影響も受けない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明する。
【0016】
図1は本発明である発破検知機1のブロック回路図を示すものであり、基本的には従来の音圧検知器と同様に、例えばマイクロフォンやスピーカーのような振動板と例えば電磁コイルなどからなる電気信号変換部材を有する音圧の受圧部2と、前記受圧部2によって変換された音圧の電気信号をアナログ信号波形(またはデジタル信号波形)へ変換する波形変換回路3および前記波形変換回路3により形成された波形を予め使用する発破が起爆時に発する音圧波形を有する発破音圧フィルタ4と、前記受圧部2からのトンネル内の音圧を発破音圧フィルタ4を通過させて発破音圧波形を分別して発破音圧と同じ音圧波形を検出する検出部5と検出した検出信号を集塵機などの制御部7に出力するための出力部6から構成される。
【0017】
また、本実施の形態では、前記受圧部2と前記発破音圧フィルタ4との間に、受圧器2により受圧した発破により生じる音圧波形を除いたトンネル内に生じる音源からの音圧波形と一致する音圧波形を有する騒音音圧フィルタ8を配置してあり、受圧器2により受圧したトンネル内に生じる音源からの音圧波形の内、前記使用する発破により生じる発破音圧波形以外の騒音音圧波形を予め分別除去しておくことにより精度良く検知することができる。
【0018】
図2はトンネル9内において使用される本実施の形態である発破検知器1の使用状態を示すものであり、本実施の形態では、発破検知器1は例えばトンネル9内に配置された前面(トンネル9の先端に形成された発破面10)に粉塵検知器11を配置した集塵機12の後方、および風管13の基端に配置された送風機14の後端に配置され、トンネル9の先端に形成された発破面13において起爆された発破15の起爆音を検知するものである。
【0019】
このように配置される本実施の形態では、発破15の起爆前には集塵機12および送風機14は停止状態または換気状態に運転されている。そして、発破15が起爆されると、発破検知機1,1が前記発破15の起爆音を検知する。
【0020】
このとき、本実施の形態では、発破検知機1では、受圧部2において受圧された音圧には図3(a)に示すように、起爆音波による発破音圧に加えてトンネル内において発生される他の重機等による騒音による騒音音圧が重ねられているが、本実施の形態では、使用する発破15が起爆時に発する音圧波形(図3(b))を有する発破音圧フィルタ4を通した後のて予め定めた所定の周波数域を有する音圧波形(図3(c))を検出部5において検出し、この検出信号を集塵機12および送風機14の制御部7に出力する。そのため、発破15の起爆音を正確に検知することができる。
【0021】
特に、本実施の形態では、発破15の起爆が無い状態でのトンネル9内の音圧を測定した音圧波形(図4(a))を基にして形成した騒音音圧波形(図4(b))を有する騒音音圧フィルタ8を前記発破音圧フィルタ4に重ねて配置して両音圧波形(図4(c))により分別も兼ねることによりきわめて高い精度で発破検出が行える。
【0022】
そして、本実施の形態では前記図2において発破検知器1が発破15の起爆音を検知するとその検知信号を出力して集塵機12および送風機14が稼働する。このとき、発破15の起爆により生じた粉塵層の最前面16は届いておらず集塵機12に設置した粉塵検知器11は作動していない。
【0023】
次に、前記粉塵層の最前面16(点線位置)がトンネルの入口方向へ移動してくると粉塵検知器11が粉塵を検知して前記発破検知器1に代わって粉塵検知器11が集塵機12を制御することになるが、本実施の形態では、粉塵検知器11に粉塵が到達する前に発破検知器1により集塵機12を稼働させていることから粉塵が集塵機12を越えてトンネル9の入口方向へ抜け出る心配がない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施の形態に係る発破検知器のブロック回路図。
【図2】本実施の形態の使用状態を示す説明図。
【図3】本発明の一実施の形態に係る発破音圧フィルタの原理を示す説明図。
【図4】本発明の一実施の形態に係る騒音音圧フィルタの原理を示す説明図。
【符号の説明】
【0025】
1 発破検知器、2 受圧部、4 発破音圧フィルタ、5 検出部、6 出力部、7 制御部、8 騒音音圧フィルタ、9 トンネル、12 集塵機、13 排気用風管、14 送風機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル内の発破に連動して集塵機などの運転時期を制御する発破検知器であって、受圧部と、使用する発破により生じる音圧波形からなる発破音圧フィルタと、前記受圧部により受圧したトンネル内に生じる音源からの音圧波形を前記発破音圧フィルタにより同定して前記トンネル内に生じる音源の中で発破により生じる発破音圧波形を検出する検出部と、前記検出結果を検出信号として前記集塵機などの制御部に出力する出力部とを有することを特徴とする発破検知器。
【請求項2】
前記受圧部と前記発破音圧フィルタとの間に、前記受圧器により受圧した発破により生じる音圧波形を除いたトンネル内に生じる音源からの音圧波形と一致する音圧波形を有する騒音音圧フィルタを配置して、前記受圧器により受圧したトンネル内に生じる音源からの音圧波形の内、前記使用する発破により生じる発破音圧波形以外の騒音音圧波形を予め分別除去しておくことを特徴とする請求項1記載の発破検知器。
【請求項3】
前記受圧部がトンネル内に配置された集塵機の近傍に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の発破検知器。
【請求項4】
前記受圧部がトンネル内に配置された排気用風管のトンネル入口部に配置された送風機近傍に配置される請求項1または2に記載の発破検知器。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−150863(P2010−150863A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−332371(P2008−332371)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000005924)株式会社三井三池製作所 (43)