説明

発電・空調システム

【課題】合理的な改良により、システム設計の自由度を高くできるとともに、電力の使用効率を向上し、更に、デマンドを有効に減少する。
【解決手段】エンジンに交流発電機6と圧縮機を連動連結した発電機能付きエンジン駆動式ヒートポンプ装置2を設け、圧縮機からの冷媒を室外側熱交換器および室内側熱交換器に供給する。交流発電機6で発電した交流電力を発電電力用コンバータ17により直流電力に変換し、その直流電力を室外ファン13の直流電動モータ15に供給する。発電電力用コンバータ17からの直流電力線24に商用電力用コンバータ26を接続し、その商用電力用コンバータ26に商用電源25を接続し、商用電源25からの交流電力を直流電力に変換して発電電力と合流させ、合流した直流電力を、室内ファン18の直流電動モータ20に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンに発電機および圧縮機を連動連結した発電機能付きエンジン駆動式ヒートポンプ装置と、圧縮機からの冷媒を供給する室外側熱交換器と、室内側熱交換器とを備え、発電機の発電電力と商用電源からの電力を室外側熱交換器の室外ファン、室内側熱交換器の室内ファンおよびその他の電力負荷に供給可能に構成した発電・空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のシステムでは、発電機能付きエンジン駆動式ヒートポンプ装置の発電機で発電した電力を用い、エンジンの冷却水ポンプや室外側熱交換器の室外ファンを駆動し、余った電力を室内側熱交換器の室内ファンやその他の電力負荷に供給するようにしている。
ところが、余った発電電力を利用するに際し、商用電源と連系する場合に電力会社側に電力が逆流する系統連系の問題があり、煩雑でかつ高価な保護装置が必要となる不都合があった。
【0003】
そこで、上述のような不都合を解消するために、従来では、次のようなガスヒートポンプ式空気調和装置が知られている。
室外機と、室内機と、室外機と室内機とを循環する冷媒循環通路によってガスヒートポンプ式空気調和機が構成されている。
室外機が、圧縮機と、圧縮機を駆動するエンジンと、室外側熱交換器とを有し、エンジンに、発電機である同期モータが接続され、エンジンに余力があるときに発電するように構成されている。
【0004】
同期モータにPWMコンバータが接続され、同期モータで発電した交流電力を直流電力に変換するように構成されている。一方、交流商用電源からの交流電力が変換器を介して直流電力に変換されるように構成されている。PWMコンバータおよび変換器に負荷インバータを介して補機が接続され、直流電力を交流電力に変換し、同期モータと商用電源とで協同して補機に電力を供給できるように構成されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−265220号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来例の場合、同期モータで発電した発電電力を交流電力から直流電力に変換し、更に交流電力に変換してから、室内側熱交換器側などの補機に商用電源と協同して供給できるようにしている。
そのため、使用する補機として、相数や線数など商用電源で使用される電源方式に制約され、補機の選定に制約を受け、システム設計の自由度が低下する不都合があった。また、室内側熱交換器における室内ファンの駆動に交流電動モータを使用せざるを得ないために、電力の使用効率が低下する不都合があった。
【0006】
また、一般に、オフィスビルやスーパーや店舗ビルなどの大口需要家では、30分間などの一定時間内の使用電力、いわゆるデマンドに基づいて1年間の基本料金が決定され、このデマンドを小さくするために発電電力を利用している。ところが、従来例の場合、直流電力に変換された発電電力を交流電力に変換して補機に供給するために、その変換によって電力損失を生じ、デマンドを小さくするために利用する発電電力量が減少し、空調負荷を抑えざるを得なくなるといった不都合もあった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、請求項1に係る発明は、合理的な改良により、システム設計の自由度を高くできるとともに、電力の使用効率を向上し、更に、デマンドを有効に減少できるようにすることを目的とし、請求項2に係る発明は、発電機能付きエンジン駆動式ヒートポンプ装置を複数台使用する場合に、多くの室内ファンに簡便に対応できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、上述のような目的を達成するために、
エンジンに発電機および圧縮機を連動連結した発電機能付きエンジン駆動式ヒートポンプ装置と、
室外ファンを備えるとともに前記圧縮機に接続されて前記圧縮機からの冷媒を供給する室外側熱交換器と、
室内ファンを備えるとともに前記圧縮機に接続されて前記圧縮機からの冷媒を供給する室内側熱交換器とを備え、
前記発電機の発電電力と商用電源からの電力を前記室内ファンおよびその他の電力負荷に供給可能に構成した発電・空調システムにおいて、
前記発電機を交流発電機で構成するとともに前記室外ファンおよび前記室内ファンを駆動するモータを直流電力で駆動する直流電動モータで構成し、
前記交流発電機で発電した交流電力を直流電力に変換する発電電力用コンバータを設け、
前記発電電力用コンバータに接続された直流電力線に、前記室外ファンおよび前記室内ファンと、商用電源からの交流電力を直流電力に変換する商用電力用コンバータとを接続し、
更に、前記室内ファンに、交流電力を直流電力に変換する室内ファン用コンバータを接続し、前記商用電源に接続する分電盤を設けるとともに、前記分電盤と前記室内ファン用コンバータとを接続し、
かつ、前記分電盤に交流電力で駆動する電力負荷を接続して構成する。
【0009】
(作用・効果)
請求項1に係る発電・空調システムの構成によれば、室外ファンおよび室内ファンのいずれをも直流電動モータで構成し、交流発電機で発電した電力を直流電力に変換し、その直流電力をそのまま直流電動モータに供給して室外ファンおよび室内ファンを駆動することができる。一方、商用電源を商用電力用コンバータおよび分電盤に接続することにより、商用電源からの交流電力も、商用電力用コンバータにより直流電力に変換して室外ファンに、そして、室内ファン用コンバータにより直流電力に変換して室内ファンにそれぞれ供給することができる。一方、交流電力で駆動する電力負荷に対しては、商用電源からの交流電力を分電盤を介して供給することができる。
したがって、室外ファンおよび室内ファンを直流電力で駆動するから、室外ファンおよび室内ファンとして、相数や線数など商用電源で使用される電源方式に制約されないために、その選定に制約を受けず、システム設計の自由度を向上できる。
また、直流電力に変換した発電電力をそのまま室外ファンおよび室内ファンに供給するから、従来のように交流電力に変換している場合に比べて変換に伴う電力損失を減少でき、電力の使用効率を向上でき、更に、電力損失を減少できるために、デマンドを小さくするために利用する発電電力量を増加でき、全体として、室外ファンおよび室内ファンを直流電力で駆動するという合理的な改良により、システム設計の自由度を高くできるとともに、電力の使用効率を向上し、更に、デマンドを有効に減少できる。
【0010】
請求項2に係る発明は、前述のような目的を達成するために、
請求項1に記載の発電・空調システムにおいて、
発電機能付きエンジン駆動式ヒートポンプ装置を複数台設置し、
各発電電力用コンバータに接続された直流電力線を互いに接続して合流用直流電力線に合流し、直流電力に変換した交流発電機からの発電電力を室内ファンに供給可能に構成する。
【0011】
(作用・効果)
複数の請求項2に係る発電・空調システムの構成によれば、複数台の発電機能付きエンジン駆動式ヒートポンプ装置の交流発電機で発電した発電電力を合流用直流電力線に合流させて室内ファンに供給する。
したがって、多くの室内ファンがあっても、合流させた後の合流用直流電力線に接続して配線すれば良く、個別の発電機能付きエンジン駆動式ヒートポンプ装置の直流電力線に接続していく場合に比べて、どれに接続するかといったことを考慮したりせずに済み、発電機能付きエンジン駆動式ヒートポンプ装置を複数台使用する場合に、多くの室内ファンに簡便に対応できる。
【発明の効果】
【0012】
以上の説明から明らかなように、請求項1に係る発電・空調システムの構成によれば、室外ファンおよび室内ファンのいずれをも直流電動モータで構成し、交流発電機で発電した電力を直流電力に変換し、その直流電力をそのまま直流電動モータに供給して室外ファンおよび室内ファンを駆動することができる。一方、商用電源を商用電力用コンバータおよび分電盤に接続することにより、商用電源からの交流電力も、商用電力用コンバータにより直流電力に変換して室外ファンに、そして、室内ファン用コンバータにより直流電力に変換して室内ファンにそれぞれ供給することができる。一方、交流電力で駆動する電力負荷に対しては、商用電源からの交流電力を分電盤を介して供給することができる。
したがって、室外ファンおよび室内ファンを直流電力で駆動するから、室外ファンおよび室内ファンとして、相数や線数など商用電源で使用される電源方式に制約されないために、その選定に制約を受けず、システム設計の自由度を向上できる。
また、直流電力に変換した発電電力をそのまま室外ファンおよび室内ファンに供給するから、従来のように交流電力に変換している場合に比べて変換に伴う電力損失を減少でき、電力の使用効率を向上でき、更に、電力損失を減少できるために、デマンドを小さくするために利用する発電電力量を増加でき、全体として、室外ファンおよび室内ファンを直流電力で駆動するという合理的な改良により、システム設計の自由度を高くできるとともに、電力の使用効率を向上し、更に、デマンドを有効に減少できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は、本発明に係る発電・空調システムの実施例1を示す概略構成図であり、建物1の屋上に5台の発電機能付きエンジン駆動式ヒートポンプ装置2が設置されている。
発電機能付きエンジン駆動式ヒートポンプ装置2は、図2の圧縮機の駆動系の正面図に示すように、都市ガスを燃料とするエンジン3の出力軸4の一方に発電クラッチ5を介して交流発電機6を連動連結するとともに、出力軸4の他方に、ベルト式伝動機構7および第1および第2の空調クラッチ8,9を介して小容量の第1の圧縮機10ならびに大容量の第2の圧縮機11を連動連結して構成されている。なお、図1では、第2の圧縮機11を省略している。
【0015】
エンジン3を設置したエンジンハウジング12に2個の冷却用の室外ファン13を備えた室外側熱交換器14が設けられ、更に、室外ファン13を駆動する直流電動モータ15とエンジン冷却用の冷却水ポンプ16と、交流発電機6で発電した交流電力を直流電力に変換する発電電力用コンバータ17が設けられている。
【0016】
建物1内の各所に、室内ファン18を備えた室内側熱交換器19が設けられ、室内ファン18が直流電動モータ20によって駆動するように構成されている。
第1および第2の圧縮機10,11に冷媒回路21が接続され、その冷媒回路21に、冷媒流路を切り替える四方弁22、室外側熱交換器14、膨張弁23および室内側熱交換器19が介装され、冷媒流路を切り替えることにより、冷房または暖房を行うことができるように構成されている。
【0017】
図3の電気系統を示す概略構成図に示すように、発電電力用コンバータ17に接続された直流電力線24に、冷却水ポンプ16などの直流負荷や、商用電源25からの交流電力を直流電力に変換する商用電力用コンバータ26と室外ファン13の直流電動モータ15が接続され、商用電力用コンバータ26に商用電源25が接続されている。
更に、直流電力線24に、室内ファン18の直流電動モータ20が接続され、発電電力用コンバータ17で変換された直流電力を室内ファン18の直流電動モータ20に供給するように構成されている。
【0018】
室内ファン18の直流電動モータ20に、交流電力を直流電力に変換する室内ファン用コンバータ27が接続され、室内ファン用コンバータ27に、分岐交流電力線28aを介して分電盤29が接続されている。分電盤29に商用電源25が接続され、分電盤29に接続された別の分岐交流電力線28aに、照明設備などの他の電力負荷30が接続されている。図中31は遮断器を示している。
【0019】
上記構成により、通常時においては、交流発電機6からの発電電力と商用電源25からの電力とを協同して供給して空調を行うことができながら、交流発電機6を駆動して発電し、得られた発電電力を直流電力に変換し、その直流電力をそのまま直流電動モータ15,20に供給して室外ファン13および室内ファン18を駆動することができる。一方、商用電源25からの交流電力も、商用電力用コンバータ26により直流電力に変換して室外ファン13に、そして、室内ファン用コンバータ27により直流電力に変換して室内ファン18にそれぞれ供給することができる。また、交流電力で駆動する他の電力負荷30に対しては、商用電源25からの交流電力を分電盤29を介して供給することができる。
【実施例2】
【0020】
図4は、本発明に係る発電・空調システムの実施例2の電気系統を示す概略構成図であり、実施例1と異なるところは、次の通りである。
すなわち、5台(複数台)の発電機能付きエンジン駆動式ヒートポンプ装置2の各直流電力線24が互いに接続されて合流用直流電力線32に合流され、交流発電機6からの発電電力を発電電力用コンバータ17により直流電力に変換した後、その直流電力を合流して室内ファン18およびその他の電力負荷30に供給可能に構成されている。他の構成は実施例1と同じであり、同一図番を付し、その説明は省略する。
【0021】
上述実施例のエンジン3としては、汎用のガスエンジンやディーゼルエンジンやガソリンエンジンなど各種のエンジンを用いることができる。
また、上記実施例では、エンジン3に容量が異なる第1および第2の圧縮機10,11を連動連結しているが、同一容量のものでも良い。また、連動連結する圧縮機の個数は1個または3個以上でも良い。更に、1個の圧縮機を変速機構を介してエンジン3に連動連結するものでも良い。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る発電・空調システムの実施例1を示す概略構成図である。
【図2】圧縮機の駆動系を示す正面図である。
【図3】電気系統を示す概略構成図である。
【図4】本発明に係る発電・空調システムの実施例2の電気系統を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0023】
2…発電機能付きエンジン駆動式ヒートポンプ装置
3…エンジン
6…交流発電機
10…第1の圧縮機
11…第2の圧縮機
13…室外ファン
14…室外側熱交換器
15…直流電動モータ(室外ファン13用)
17…発電電力用コンバータ
18…室内ファン
19…室内側熱交換器
20…直流電動モータ(室内ファン18用)
24…直流電力線
25…商用電源
26…商用電力用コンバータ
27…室内ファン用コンバータ
29…分電盤
30…他の電力負荷
32…合流用直流電力線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンに発電機および圧縮機を連動連結した発電機能付きエンジン駆動式ヒートポンプ装置と、
室外ファンを備えるとともに前記圧縮機に接続されて前記圧縮機からの冷媒を供給する室外側熱交換器と、
室内ファンを備えるとともに前記圧縮機に接続されて前記圧縮機からの冷媒を供給する室内側熱交換器とを備え、
前記発電機の発電電力と商用電源からの電力を前記室内ファンおよびその他の電力負荷に供給可能に構成した発電・空調システムにおいて、
前記発電機を交流発電機で構成するとともに前記室外ファンおよび前記室内ファンを駆動するモータを直流電力で駆動する直流電動モータで構成し、
前記交流発電機で発電した交流電力を直流電力に変換する発電電力用コンバータを設け、
前記発電電力用コンバータに接続された直流電力線に、前記室外ファンおよび前記室内ファンと、商用電源からの交流電力を直流電力に変換する商用電力用コンバータとを接続し、
更に、前記室内ファンに、交流電力を直流電力に変換する室内ファン用コンバータを接続し、前記商用電源に接続する分電盤を設けるとともに、前記分電盤と前記室内ファン用コンバータとを接続し、
かつ、前記分電盤に交流電力で駆動する電力負荷を接続してあることを特徴とする発電・空調システム。
【請求項2】
請求項1に記載の発電・空調システムにおいて、
発電機能付きエンジン駆動式ヒートポンプ装置を複数台設置し、
各発電電力用コンバータに接続された直流電力線を互いに接続して合流用直流電力線に合流し、直流電力に変換した交流発電機からの発電電力を室内ファンに供給可能に構成してある発電・空調システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−250488(P2009−250488A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−97373(P2008−97373)
【出願日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)