説明

発電装置

【課題】冷却部と加熱部を有し、それらの温度差を利用して発電する熱電素子を用いた発電装置において、安定的な起電力を得る。
【解決手段】冷却部と加熱部を有し、それらの温度差を利用して発電する熱電素子2を有し、加熱部を加熱する熱源が、マイクロフレーム4とする。液体燃料12を入れるための容体13と、その容体13の内部に連接し、当該容体13から突出するバーナー管14と、容体13からバーナー管14を通って、バーナー管14から外部に突出する毛細管である紐15と、を備え、マイクロフレーム4は、液体燃料12が紐15の先端まで毛細管現象により輸送されることにより、バーナー管14の先端に生じている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、冷却部と加熱部を有し、それらの温度差を利用して発電する熱電素子として、ゼーベック効果を利用した熱電素子等がある。ゼーベック効果とは、p型とn型の半導体を接合させ、両半導体に温度差を設けると、その温度差に応じた起電力が得られる現象である。近年、このゼーベック効果を利用した発電装置に関する技術が提案されている(たとえば非特許文献1参照)。
【0003】
一方、マイクロフレームは、地上場においてもほぼ球形を保つ特異な火炎であり、無重力場での燃焼現象に類似する火炎である。その火炎の直径は数mm程度である。たとえばメタンガスを燃料とする場合、直径1mm程度の細いパイプから標準状態換算で毎分数cc程度のメタンガスを供給すると、パイプの外径よりやや大きめの半球状のマイクロフレームが得られる。マイクロフレームは、高効率かつ高制御性の熱源として注目されている(たとえば非特許文献2参照)。
【0004】
【非特許文献1】浦家淳博,坂口直志,横山安弘,東藤勇、「温泉利用の温度差発電」、太陽エネルギー、日本太陽エネルギー学会、平成11年、第25巻、第6号、p.49
【非特許文献2】中村 祐二,斉藤 孝三、「マイクロフレームに形成される熱と流れ場」、ながれ、日本流体力学会、平成13年、第20巻、第2号、p.74−82
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
熱電素子による発電のための熱源には、主に、工場の廃熱等が用いられている。しかし、このような熱源は、その温度が安定しないばかりでなく、過剰な高温となり、本来冷却すべき部分である発電素子の冷却部をも過剰に加熱する場合もある。よって、熱電素子の安定的な起電力を得るのが困難である。
【0006】
そこで、本発明の目的は、冷却部と加熱部を有し、それらの温度差を利用して発電する熱電素子を用いた発電装置において、安定的な起電力を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る発電装置は、冷却部と加熱部を有し、それらの温度差を利用して発電する熱電素子を有し、加熱部を加熱する熱源を、マイクロフレームとしている。
【0008】
この発明によれば、マイクロフレームは、ほぼ半球等の一定形状を保つため、熱電素子の加熱部を安定的に加熱できる。そしてマイクロフレームの温度は、通常、他の燃焼炎よりも低い。また、マイクロフレームの加熱領域は、通常、他の燃焼炎よりも狭い。よって、本来加熱すべきでない熱電素子の冷却部への加熱を抑制できる。この結果、熱電素子の冷却部と加熱部の温度差を安定化できるため、発電装置は安定的な起電力を得ることができる。なお、マイクロフレームは、概ね、球、半球、円錐形、楕円体または半楕円体の形状をなし、その一つの最大直径が4mm以下のものをいい、メゾスケール(最大直径が4mmを超える大きさ)の燃焼炎とは区別される。
【0009】
他の発明に係る発電装置は、上述した発明に加え、熱源が、複数のマイクロフレームからなるものとしている。このような熱源を採用することによって、熱電素子の加熱部を広い領域に亘り加熱することができる。また、複数のマイクロフレームを合体したマイクロフレームを熱源として用いる場合には、一つのマイクロフレームでは発生できない高い熱エネルギーを発生することができる。
【0010】
他の発明に係る発電装置は、上述した発明に加え、マイクロフレームが、常温常圧で液体である液体燃料の燃焼により得られるものとしている。このようなマイクロフレームを採用することによって、気体を燃料とした場合のように、高圧のボンベおよび高圧バルブ等の複雑かつ重量の大きな部材を必要としないため、燃料および発電装置の取り扱い性の面で有利となる。
【0011】
他の発明に係る発電装置は、上述した発明における液体燃料を、エタノール、またはエタノールと溶媒との混合物としている。このような液体燃料を採用することによって、環境調和性に優れた発電装置を提供できる。
【0012】
他の発明に係る発電装置は、上述した発明に加え、液体燃料を入れるための容体と、その容体の内部に連接し、当該容体から突出する筒体と、容体から筒体を通って、筒体から外部に突出する毛細管とを備え、マイクロフレームは、液体燃料が毛細管の先端まで毛細管現象により輸送されることにより、筒体の先端に生じるようにしている。このような構成を採用することによって、燃料の輸送に毛細管現象を利用できるため、発電装置の構造を簡易なものとすることができる。
【0013】
他の発明に係る発電装置は、上述した発明に加え、加熱部の全部または一部を、マイクロフレームの側部と対向位置にあるようにしている。このような構成を採用することによって、燃焼炎の頂上付近に生じる熱エネルギーのゆらぎの影響を低減し、輻射熱の寄与率を大きくできるため、熱電素子の出力を安定させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、冷却部と加熱部を有し、それらの温度差を利用して発電する熱電素子を用いた発電装置において、安定的な起電力を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態に係る発電装置を、図を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る発電装置1の主要構成の概要を示す図である。発電装置1は、冷却部と加熱部を有し、それらの温度差を利用して発電する熱電素子2(ペルチェ素子)を有する。加熱部を加熱する熱源機器3は、マイクロフレーム4を生じさせる。
【0016】
熱電素子2は、熱電素子2より面積の大きなアルミニウム基板5の一方の面(下方の面)のほぼ中央に固着されている。熱電素子2とアルミニウム基板5の固着は、好適にはアルミニウム粘着テープによってなされている。熱電素子2は、上面の冷却部を冷却し、下面の加熱部を加熱することによって、起電力を得ることができるものである。アルミニウム基板5は、熱電素子2の冷却部を冷却する放熱板の役割をしている。アルミニウム基板5の放熱の妨げとならないように、熱伝導性の良好なアルミニウム粘着テープが使用されている。また、熱電素子2の加熱部は、マイクロフレーム4によって加熱される。その加熱の際の妨げともならないよう、上述の熱伝導性の良好なアルミニウム粘着テープが使用されている。
【0017】
熱電素子2は、アルミニウム基板5のほぼ中央に固着されている。アルミニウム基板5における上記固着面は、クランプ6のねじ締め力によって把持され、固定されている。そのクランプ6は、支柱7によって固定され、その支柱7は、設置面8に載置される支柱台9によって固定されている。熱電素子2によって発電された電気は、熱電素子につながる電線10を通って電子機器等の負荷11に供給される。
【0018】
図2は、図1に示す熱源機器3の構造の概要を示す図である。熱源機器3は、常温常圧で液体である液体燃料12の燃焼によりマイクロフレーム4が得られるものである。また、液体燃料12は、エタノール、またはエタノールと溶媒との混合物であることが好ましい。本実施の形態ではエタノールを用いている。熱源機器3は、液体燃料12を入れるための容体13と、その容体13の内部に連接し、当該容体13から突出する筒体である銅製のバーナー管14と、容体13からバーナー管14を通って、バーナー管14の先端から外部にわずかに突出する毛細管としての機能を持つ木綿からなる紐15と、を備えている。マイクロフレーム4は、液体燃料12が紐15の先端まで毛細管現象により輸送されることにより、バーナー管14の先端に生じる。
【0019】
また、熱源機器3は、液体燃料12の蒸発および飛沫を抑制すべく、容体13の開口部を密封する蓋体16を備えている。蓋体16と容体13とは、ゴム製等のパッキング17によって脱着可能に固定されている。蓋体16とバーナー管14とは、接着またはロウ付け等により確実に封止されている。蓋体16には、容体13内の圧力が上昇しないようにするための空気穴18が設けられている。空気穴18の寸法は、揮発した液体燃料12の蓋体16の外側への飛散量を少なくするため、バーナー管14の外径以下であることが好ましい。また、蓋体16には、バーナー管14の支持を補助するための支持部材19が設けられている。
【0020】
バーナー管14の先端に煙草用のライター等で着火すると、紐15に浸透している液体燃料12が気化し、バーナー管14の先端付近の微小空間の酸素と接して液体燃料12の燃焼反応が始まる。この燃焼反応は、バーナー管14の先端から外部にわずかに突出する紐15部分の微小空間で行われている。そこで消費される酸素の消費速度と、周囲の大気から酸素が拡散し、その微小空間へと供給される速度が一定の関係になると、その微小空間の燃焼炎がマイクロフレーム4となる。その一定の関係を実現するために、バーナー管14の先端から外部に突出する紐15部分の長さを調節等する。その調節の方法の一つは、バーナー管14の先端から突出する紐15部分を長めにしておき、着火する方法である。この方法は、たとえばバーナー管14の先端から外部に突出する紐15の部分に浸透している液体燃料12が少ない場合に有効である。すなわち、着火すると、当初液体燃料12が少なく、かつ周囲の酸素量が多いため、紐15が燃焼する。しかし、バーナー管14の先端から突出する紐15の部分が焼失して短くなるに従い、上述の酸素の消費と供給とが一定の関係に近づく。そして、ついに紐15が燃焼することなく液体燃料12のみが燃焼するようになり、燃焼炎がマイクロフレーム4の状態で長時間燃焼し続ける。
【0021】
図3は、このようにして得られたマイクロフレーム4を側方から見た状態を示している。図3(A)に示すマイクロフレーム4は、バーナー管14の内径よりも若干大きめの径のほほ半球形または円錐形をなしていることがわかる。図3(B)に示すマイクロフレーム4は、バーナー管14を傾けた(水平面とのなす角度が約10度)場合のマイクロフレーム4の状態を示している。発明者は、液体燃料12を燃焼した場合のマイクロフレームが、気体燃料12を燃焼した場合のマイクロフレームと同様に、無重力環境下に近い燃焼状態であり、バーナー管14の開口部の方向とは無関係に同様の燃焼状態を保つことを見出した。バーナー管14を傾けても、マイクロフレーム4は、マイクロフレーム4の形状・特性と比べて殆ど変化は無い。従って、発電装置1の構造上、バーナー管14を傾ける必要があるときであっても、殆ど問題とならない。図3(C)に示すマイクロフレーム4は、複数のマイクロフレーム4からなり、当該複数のマイクロフレーム4を合体させて一つのマイクロフレーム4を形成した状態を示している。このマイクロフレーム4は、マイクロフレーム4の熱量の和にほぼ等しい熱量を発する。これらマイクロフレーム4は、ほぼ完全燃焼している。
【0022】
図4(A)は、図3(B)に示すマイクロフレーム4を利用した発電装置1aの概要を示す図である。熱源機器3の構成は、図1および図2に示す熱源機器3の構成と同一である。ただし、熱源機器3を傾けて使用している点が図1および図2に示すものと異なる。熱電素子2の加熱部となる面が鉛直線方向に沿うように熱電素子2を設置すべく、アルミニウム基板5は、固定部材20によって固定されている。熱電素子2の加熱部は、主としてマイクロフレーム4Aの側部と対向し、その側部によって加熱される。通常のメゾスケールの燃焼炎を用いた場合には、その燃焼炎の頂上付近は、高温である。このため、対流によりその周囲の低温の空気が巻き込まれ、若干の熱エネルギーのゆらぎが生じ、熱電素子2の出力の変動が生じ易い。このことは、気体燃料によって形成されるマイクロフレーム、および本実施の形態のように、液体燃料12によって形成されるマイクロフレームについても、言えることである。マイクロフレーム4の側部によって熱電素子2を加熱すると、熱エネルギーのゆらぎを避け、かつ輻射熱の寄与率を大きくでき、その結果、熱電素子2の出力をより安定させることができる。また、熱電素子2の加熱部の温度が90℃以下の場合、エタノールの燃焼で生じた水蒸気が水滴となり、その加熱部に付着しやすい。しかし、熱電素子2の加熱部となる面をほぼ鉛直方向とすることで、その水滴は下方に落下する。このため、マイクロフレーム4Aの消火を防ぎ、また水滴が蒸発する際の熱エネルギーの損失およびそれに伴う起電力の変化も低減できる。
【0023】
図4(B)は、図3(C)に示すマイクロフレーム4を利用した発電装置1bの概要を示す図である。熱源機器3の構成については、図1および図2に示す熱源機器3と同一のものを2つ使用している。その2つのうちの1つは、容体13の底面および側面に沿って接触し、熱源機器3の傾けた状態を維持する傾け固定用冶具21が設置面8に設置されている。もう1つの熱源機器3は、図1に示すように、傾けずに設置されている。それらの熱源機器3の各バーナー管14の先端に、それぞれ生じさせたマイクロフレーム4を合体させて、マイクロフレーム4を生じさせている。熱電素子2の加熱部は、主としてそのマイクロフレーム4の頂上付近によって加熱されている。
【0024】
図4(C)は、図3(C)に示すマイクロフレーム4を利用した別の発電装置1bの概要を示す図である。紐15を通した2つのバーナー管14a,14bが連接し、それらの先端(熱電素子2に向かっている側)は近接して配置されている。それらの先端にそれぞれ生じさせたマイクロフレーム4を合体させて、1つのマイクロフレーム4が生じる。熱電素子2の加熱部は、主として、そのマイクロフレーム4の頂上付近によって加熱されている。
【0025】
以上、本実施の形態に係る発電装置1,1a,1bについて説明したが、本発明は、その要旨を逸脱しない限り種々変更実施可能である。たとえば、マイクロフレーム4の燃料は、メタンまたはブタン等を含む気体燃料であっても良い。ただし、通常気体燃料は高圧容器に溜めておき、高圧バルブによって供給されるものであるから、発電装置1,1a,1bの重量が大きくなる可能性がある。その点、常温常圧で液体の燃料は、高圧容器および高圧バルブを必要とせず、発電装置1,1a,1bの重量を小さくできる上、燃料漏れ事故の危険性をより小さくできる利点がある。
【0026】
また、液体燃料12は、エタノール以外であっても良い。たとえば、灯油、植物油、他のアルコール等が好適である。ただし、エタノールは水溶性であるため、水と混合することでマイクロフレーム4の発熱量を調整できるばかりでなく、消火の際に水を用いることができる利点がある。エタノールに水を加えた液体燃料12の水分混合比率は、着火の容易さを考慮すると、50%以下が好ましく、20%以下とすることがより好ましい。さらに、液体燃料12は、エタノールと水以外の溶媒(他のアルコール等)との混合物であっても良い。
【0027】
また、液体燃料12にエタノールを含ませた場合、そのエタノールは石油化学工場で生産されるものでも良いが、植物体を発酵させて得られる、いわゆるバイオエタノールであることが好ましい。その理由は、エタノールは人体への毒性が小さい利点がある上、バイオエタノールは環境調和性に優れているためである。なお、バイオエタノールを燃料として使用する場合は、その使用は京都議定書に言う地球温暖化の原因となる二酸化炭素の排出規制を受けない。
【0028】
本実施の形態では、毛細管としての紐15に木綿製のものを用いている。しかし、他の天然繊維、ナイロン等の化学繊維、ガラス繊維、またはこれらの複合繊維を使用できる。すなわち、液体燃料12が表面を濡らすことができ、そこで生ずる表面張力を利用して液体燃料12を輸送できるものであれば、使用できる。よって、紐15の形態を有していなくても、毛細管としての機能を有するものであれば、紐15に代えて使用できる。
【0029】
本実施の形態では、バーナー管14の材質に銅を選択している。これは、銅の高熱伝導性より、着火時および燃焼時にバーナー管14の内部に液体燃料を気化させるための熱を伝えやすい利点があるためである。しかし、その他の金属、ガラス、セラミックス等をバーナー管14の材質として選択できることは言うまでもない。
【0030】
本実施の形態では、熱電素子2の冷却部の冷却手段として、たとえばアルミニウム基板5の放熱効果を利用する手段、また冷房(低温の空気)を利用する手段を挙げている。しかし、冷却手段は、これらに限られるものでないことは言うまでもない。たとえば、水、氷等を利用することができる。寒冷地では、低温の空気、低温の水および氷(雪等)を容易に調達できることから、発電装置1,1a,1bは、特に寒冷地での使用に適している。
【0031】
本実施の形態に係る発電装置1,1a,1bでは、1つの熱電素子2の加熱部に対して1つまたは複数のマイクロフレーム4による加熱を行っている。このような発電装置1,1a,1bは、マイクロフレーム4の輻射エネルギーの利用効率という観点からみると、メゾスケールの燃焼炎よりも高効率である。その理由は、メゾスケールの燃焼炎は寸法が大きく、熱電素子2の加熱部以外の部分をも輻射熱により加熱することがあるのに対し、マイクロフレーム4は、寸法が小さく、その輻射エネルギーのほぼ全てを熱電素子2の加熱部に照射できるためである。
【0032】
熱源機器3のマイクロフレーム4の輻射エネルギーの利用効率を、さらに高めることができる。発電装置1cは、本実施の形態に係る発電装置の変形例であり、図5にその概要の縦断面を示している。発電装置1cは、複数の熱電素子2の加熱部に対して1つのマイクロフレーム4による加熱を行うものである。たとえば、1つのマイクロフレーム4の四方および上方に合計5つの熱電素子2を、発電装置1,1aと同様に設置できる。よって、発電装置1cは、発電装置1,1aに比べて輻射エネルギーの利用効率を数倍にすることができている。なお、図5に示す熱電素子2および一方の端部が閉じられた筒状のアルミニウム基板5aは、外部からの空気の対流がマイクロフレーム4へ影響するのを軽減する役割をも担っている。この筒状のアルミニウム基板5aは、マイクロフレーム4へ酸素を外部から供給し易くするための空気穴を有していることが好ましい。発電装置1cは、熱電素子2の加熱部の全部または一部が、マイクロフレームの側部と対向位置にある発電装置の一種である。
【0033】
本実施の形態では、バーナー管14の内径を3mmとするのが好ましい。マイクロフレーム4の形成のし易さを考慮すると、その内径は3mm以下が好ましく、0.5mmから2mmの間とすることが、より好ましい。0.5mm以上が好ましい理由は、バーナー管14の製造のし易さを考慮したものである。
【実施例】
【0034】
以下、本発明に係る発電装置の実施例について説明する。
【0035】
(実験例1)
図1および図2にその主たる構成が示された発電装置1を用いて、起電力を測定する実験を行った。バーナー管14には、外径約3mm、内径約2mm、長さ約90mmのものを用いた。紐15には、直径約1mmの木綿の紐を用いた。紐15は、バーナー管14の先端から約0.5mm出るように円錐形状に切りそろえた。また、紐15は、バーナー管14の末端から約70mm出した。容体13には、外径約54mm、内径約50mm、高さ約50mmのガラス瓶を用いた。蓋体16には、真鍮製のものを用いた。蓋体16の裏側には、ポリエチレンシートが貼り付けてあり、それがパッキング17と同様、容体13との密閉性を高める役割を担っている。支持部材19には、真鍮製のガスボンベキャップを用いた。蓋体16および支持部材19には、バーナー管14を通すための直径3mmの穴が開けられた。支持部材19とバーナー管14とは、不乾性粘土およびアルミニウム製の粘着テープで固着した。液体燃料12としてのエタノールは、容体13の中に約40cc入れられた。バーナー管14の末端から出した紐15は、エタノールに接触するようにした。エタノールは、毛細管現象によって、バーナー管14の先端から出ている紐15まで輸送された。バーナー管14の先端まで輸送されたエタノールは、ガスコンロ用の点火ライターによって着火され、図3(A)に示す形状のマイクロフレーム4を生じさせた。熱電素子2には、市販のペルチェ素子(フジタカ FPH1−12707M(40mm×40mm×4mm)を用いた。アルミニウム基板5には、100mm×180mm×3mmの寸法のものを用いた。
【0036】
マイクロフレーム4の頂部が、水平に固定された熱電素子2の下面(加熱部)から6mm離れた下方に位置するようにし、発電装置1の起電力の平均値、最大値および最小値を市販の電圧計で測定した測定した。その結果を、図6の表の「A」として示す。また、その起電力の経時変化を図7(A)に示す。「A」に示すように、起電力の最大値と最小値の差は「0.15V」であった。したがって、安定的な起電力が得られることがわかった。
【0037】
(実験例2)
図1および図2にその主たる構成が示された発電装置1を用いて、実験例1と同様に起電力を測定する実験を行った。ただし、本実験例は、冷房による室内空気の流れのある場所で行い、熱電素子2およびマイクロフレーム4の周囲を、風防目的で金網で囲んだ。また、本実験例で用いた熱電素子2は、市販のペルチェ素子であるAISI TN08G132(17mm×17mm×4mm)を用いた。マイクロフレーム4の頂部が、水平に固定された熱電素子2の下面(加熱部)から6mm離れた下方に位置するようにし、発電装置1の起電力の平均値、最大値および最小値を市販の電圧計で測定した測定した。その結果を、図6の表の「B」として示す。
【0038】
また、本実験例において、バーナー管14の先端から紐15を1.5mm引き出して着火し、燃焼炎の高さが6mm、最大直径約5mmの、蝋燭の炎に似たメゾスケールの燃焼炎を用いて同様の起電力の測定を行った。その測定結果を、図6の表の「C」として示す。「C」における燃焼炎は、マイクロフレーム4ではなかった。なお、この燃焼炎の頂部は、熱電素子2の下面(加熱部)から15mm離れた下方に位置するようにした。
【0039】
図6の表の「B」と「C」を比較すると、「B」は、起電力の最大値と最小値の差が「0.13V」であるのに対し、「C」は、起電力の最大値と最小値との差が「0.40V」であった。この結果から、本実施の形態に係る発電装置1は、マイクロフレームではないメゾスケールの燃焼炎を用いた発電装置に比べて、安定的な起電力が得られることが実証された。
【0040】
(実験例3)
2つ目の比較例として、熱源機器3に代えて市販の蝋燭の燃焼炎を用いた発電装置を用いて、実験例2と同様の起電力の測定を行った。なお、熱電素子2には、AISIN TN08G132を用いた。そのときの起電力の経時変化を、図7(B)に示す。この測定に際しても、冷房による風を防ぐために、熱電素子2の周囲を金網で囲った。使用した蝋燭は、仏壇用のカメヤマローソク(6mmφ、長さ50mm)とした。これを熱電素子2の加熱部の下方70mmの設置面8に蝋燭を固定した。蝋燭に着火すると、蝋燭の高さ50mmから熱電素子2の加熱部までの20mmの間に燃焼炎が激しく生じた。この着火時点から起電力の測定を開始した。着火後5分後には、燃焼炎が激しく舞い上がったため、熱電素子2の加熱部位置を上方に10mm移動し、固定した。その移動後の燃焼炎の直径は約8mm、長さは約30mmであった。蝋燭は、燃焼が進むに従い、蝋が消費されて燃焼炎位置が下方に移動するが、位置調整は行わなかった。着火後15分後に蝋が消費し尽されて、燃焼が終了した。図7(B)の結果から、2つ目の比較例に係る発電装置の起電力は、非常に不安定であることがわかる。
【0041】
(実験例4)
図4(A)にその主たる構成の概要が示された発電装置1aを用いて、実験例1同様の起電力の測定を行った結果を、図6の表の「D」として示す。「D」に示すように、起電力の最大値と最小値の差は「0.09V」であった。したがって、より安定的な起電力が得られることがわかった。なお、本実験例では、熱電素子2の加熱部は、マイクロフレーム4の側部から約6mmの位置にあるようにした。また、発電装置1aの主たる構成部材は、実験例1の発電装置1と同じものとした。
【0042】
また、本実験例において、発電装置1aを発電装置1と同様の構成に改造し、主としてマイクロフレーム4の頂上で熱電素子2の加熱部を加熱するように熱電素子2の位置を変えて、実験1と同様の起電力の測定を行った。その測定結果を、図6の表の「E」として示す。「E」に示すように、起電力の最大値と最小値の差は「0.16V」であった。したがって、安定的な起電力が得られることがわかった。また、「D」と「E」を比較すると、起電力の値の標準偏差は、「D」では0.14、「E」では0.35であった。これより、マイクロフレーム4の側部で熱電素子2の加熱部を加熱する場合の測定結果「D」が、マイクロフレーム4の頂部で熱電素子2の加熱部を加熱する場合の測定結果「E」よりも、起電力がより安定していることがわかる。
【0043】
(実験例5)
図4(B)にその主たる構成の概要が示された発電装置1bを用いて実験例1と同様の起電力の測定を行った。その結果を、起電力の経時変化として図7(C)に示す。なお、本実験例では、熱電素子2の加熱部は、マイクロフレーム4の頂部から約9mmの位置にあるようにした。また、発電装置1bの主たる構成部材は、実験例1の発電装置1と同じものとした。発電装置1bは、2時間以上、約1.4Vの起電力を安定的に維持していることがわかった。
【0044】
また、本実験例において、発電装置1bを改造し、マイクロフレーム4を8つ生じさせ、熱電素子2に対し一斉に加熱したところ、その発電装置は、約2時間の間、起電力約11Vを安定的に維持することができた。この改造済み発電装置は、熱源機器3が、複数のマイクロフレーム4からなるものである。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施の形態に係る発電装置の主要構成の概要を示す図である。
【図2】図1に示した熱源機器の縦断面図の概要を示す図である。
【図3】マイクロフレームを側方から見た状態を示す図である。
【図4】図3に示すマイクロフレームを利用した発電装置の概要を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る発電装置の変形例の概要の縦断面を示す図である。
【図6】各実験例で測定した発電装置の起電力を示す表である。
【図7】各実験例で測定した発電装置の起電力の経時変化を示す図である。
【符号の説明】
【0046】
1,1a,1b,1c 発電装置
2 熱電素子
3,3a 熱源機器
4 マイクロフレーム
12 液体燃料
13 容体
14,14a,14b バーナー管
15 紐(毛細管)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却部と加熱部を有し、それらの温度差を利用して発電する熱電素子を有する発電装置において、
上記加熱部を加熱する熱源が、マイクロフレームであることを特徴とする発電装置。
【請求項2】
前記熱源が、複数のマイクロフレームからなることを特徴とする請求項1記載の発電装置。
【請求項3】
前記マイクロフレームが、常温常圧で液体である液体燃料の燃焼により得られるものであることを特徴とする請求項1または2記載の発電装置。
【請求項4】
前記液体燃料がエタノール、またはエタノールと溶媒との混合物であることを特徴とする請求項3記載の発電装置。
【請求項5】
前記液体燃料を入れるための容体と、その容体の内部に連接し、当該容体から突出する筒体と、上記容体から上記筒体を通って、上記筒体から外部に突出する毛細管と、を備え、前記マイクロフレームは、前記液体燃料が上記毛細管の先端まで毛細管現象により輸送されることにより、上記筒体の先端に生じることを特徴とする請求項3または4記載の発電装置。
【請求項6】
前記加熱部の全部または一部は、前記マイクロフレームの側部と対向位置にあることを特徴とする請求項1から5項のいずれか1項に記載の発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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