皮膚疾患を処置するためのエクオールの使用
【課題】皮膚疾患を処置するためのエクオールの使用の提供。
【解決手段】エクオール(7−ヒドロキシ−3(4’ヒドロキシフェニル)−クロマン)は、植物性エストロゲンのダイゼインの主要な代謝産物であり、インビトロおよびインビボで5αジヒドロテストステロン(DHT)に特異的に結合し、そのホルモン作用をブロックする。エクオールは、循環する遊離のDHTに結合し得、アンドロゲンレセプターから隔離し得、従って、アンドロゲンによって調節される増殖および生理学的ホルモン応答を変化させる。これらのデータは、エクオールの生物学的特性を説明するための新規のモデルを示唆する。エクオールがDHTに特異的に結合してDHTをアンドロゲンレセプターから隔離する能力の意味は、健康と疾患との間の重要な分岐を有し、皮膚および毛のアンドロゲン媒介性病理を処置および予防する際のエクオールの広範かつ重要な使用を示し得る。
【解決手段】エクオール(7−ヒドロキシ−3(4’ヒドロキシフェニル)−クロマン)は、植物性エストロゲンのダイゼインの主要な代謝産物であり、インビトロおよびインビボで5αジヒドロテストステロン(DHT)に特異的に結合し、そのホルモン作用をブロックする。エクオールは、循環する遊離のDHTに結合し得、アンドロゲンレセプターから隔離し得、従って、アンドロゲンによって調節される増殖および生理学的ホルモン応答を変化させる。これらのデータは、エクオールの生物学的特性を説明するための新規のモデルを示唆する。エクオールがDHTに特異的に結合してDHTをアンドロゲンレセプターから隔離する能力の意味は、健康と疾患との間の重要な分岐を有し、皮膚および毛のアンドロゲン媒介性病理を処置および予防する際のエクオールの広範かつ重要な使用を示し得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(政府の権利)
本発明は、国立保健研究所(National Institute of Health)(NIH)に与えられた助成金番号NS39951、および合衆国農務省(U.S.Dept.of Agriculture)(USDA)に与えられた助成金番号NRI 2002−00798およびNRI 2004−01811のもと政府の支持によってなされた。
【0002】
政府は、本発明において特定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
本発明は、エクオール(equol)、ならびにアンドロゲンによって媒介される生理学的状態および病態生理学的状態を処置および予防するための治療化合物としての、その作用の機構および使用に関する。
【0004】
近年、植物性エストロゲン(phytoestrogen)は、加齢関連疾患(例えば、心臓血管疾患および骨粗鬆症)およびホルモン依存性癌(すなわち、乳癌および前立腺癌)に対する植物性エストロゲンの潜在的な保護効果に起因して、研究上の注目が高まってきている。植物性エストロゲンには、以下の3つの主要な分類が存在する:1)イソフラボン(主に大豆に由来する)、2)リグナン(アマニにおいて大量に見出される)、および3)クメスタン(coumestan)(アルファルファのような萌芽植物に由来する)。これらの3種の主要な分類のうち、イソフラボンのヒトによる消費は、そのアベイラビリティーと大豆を含む食品の多様性とに起因して最も大きな影響を有する。イソフラボンのうちで、ゲニステインおよびダイゼインは、最も強力なエストロゲンホルモン活性を発揮すると考えられ、従って、大部分の注目が、これらの分子に向けられている(非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3)。しかし、これらのイソフラボン分子は、大豆食物中におけるそれらの生物学的に活性な形態と同程度に高いレベルでは発揮されず、むしろ前駆体の形態において高い存在量で存在する。例えば、ゲニステインの前駆体であるゲニスチンは、上記分子の炭水化物部分を含むグリコシド形態である。さらに、マロニルグリコシド形態およびアセチルグリコシド形態もまた見出される。これらの結合体は、腸の細菌によって胃腸(GI)管において代謝され、炭水化物部分を加水分解して生物学的に活性な植物性エストロゲンであるゲニステインになる。同じ代謝工程は、アグリコンダイゼインについても起こり、これはグリコシド形態のダイゼインから変換される。次いでダイゼインは、「エクオール産生」哺乳動物においてさらに代謝されてエクオールになり、その結果エクオールはエクオール産生個体の血漿で見出される。エクオールは、大豆が消費されない限り、大部分の健康なヒト成人の尿には通常は存在しない。インビボのエクオールの形成は、もっぱら腸の微生物叢に依存する。このことは、微生物を含まず、かつ病原体を含まない食物を与えられた動物(germ−free and phytoestrogen−free fed animal)は、大豆を与えられたときにエクオールを排泄しないという知見と、腸の微生物叢は、乳児(neonate)ではまだ発達していないという事実に起因して、ヒト新生児または誕生からもっぱら大豆食物を与えられた4ヶ月齢の乳児(infant)の血漿および尿においてエクオールが見出されないという知見とから証明される(非特許文献4を参照のこと)。
【0005】
イソフラボンのフェノール環構造は、これらの化合物をエストロゲンレセプター(ER)およびエストロゲン模倣体(mimic estrogen)に結合させることが可能である。ゲニステインおよびダイゼインはERに結合するが、エストラジオールと比較して親和性は低く、ERαよりもERβに対する親和性が高い。従って、イソフラボンは、ゲニステインおよび代謝産物のS−エクオールと同様に、身体の全体にわたる種々の組織部位において天然の選択的エストロゲンレセプター調節因子(SERM)のように作用する。いくつかの組織において、植物性エストロゲンは、エストロゲンアゴニストとして作用するという証拠が存在し、それであるがゆえに、植物性エストロゲンは、タモキシフェンまたはラロキシフェンのアンタゴニスト特性に相当するアンタゴニスト特性を示す。ここでSERM活性は、性ホルモンおよび性に依存するようである。
【0006】
科学的文献の大部分が大豆またはクローバー中の天然のイソフラボンに焦点を当てている一方で、腸で誘導されるそれらの代謝物質の作用または効果についての報告はほとんどない。エクオール(7−ヒドロキシ−3(4’ヒドロキシフェニル)−クロマン)は、植物性エストロゲンのダイゼインの主要な代謝産物を表し、これは、大豆および大豆食物において豊富に見出される主要なイソフラボンのうちの1つである。しかし、エクオールは、植物性エストロゲンではない。なぜならば、エクオールは、植物の天然の構成要素ではないからである。エクオールは、いずれの植物ベースの生成物においても天然には存在しない。むしろ、エクオールは、非ステロイド性のイソフラボンであって、これはもっぱら腸の細菌代謝の生成物である。しかし、約30%〜40%のヒトしか、大豆イソフラボンをエクオールに変換するのに必要な微生物叢を有さない。
【0007】
エクオールを用いた以前の研究から、エクオールは、いくつかの弱いエストロゲン特性を有し、性ホルモン結合グロブリンおよびα−フェトプロテインに結合し、そして抗酸化活性を有することが同定されている。エクオールのS−鏡像異性体(S−エクオール)は、大豆を消費する「エクオール産生」哺乳動物の尿および血漿において見出される限定的なエクオール形態であり、ヒトの腸内細菌によって作製される唯一のエクオール鏡像異性体である。R−鏡像異性体とS−鏡像異性体とは立体構造的に異なっており、このことは後にこれらの生物学的活性に影響する。例えば、エクオールのS−鏡像異性体のみが、ヒトにおいて報告された通常の循環エクオールレベルに対して十分な親和性でエストロゲンレセプター(ER)サブタイプを結合する。
【0008】
前立腺は、その発生および成長に関してアンドロゲンホルモン作用に依存し、ヒトの良性の前立腺肥大(BPH)の発症は、加齢プロセスの間の精巣アンドロゲンの組み合わせを明らかに必要とする。しかし、テストステロンは、前立腺の成長の原因である主要なアンドロゲンではない。主要な前立腺アンドロゲンは、5α−ジヒドロテストステロン(5α−DHT)であり、このことは、5α−レダクターゼインヒビターによる5α−DHTの減少に関する、現在の前立腺癌の処置によって証明された。ヒトBPHにおいては上昇していないが、前立腺の5α−DHTレベルは、血漿のテストステロン濃度が減少するにもかかわらず、加齢に対して一定であった。テストステロンは、前立腺の間質細胞および基底細胞において5α−レダクターゼによって5α−DHTに変換される。5α−DHTは、前立腺の発達およびBPHの病原の主な原因である。5α−レダクターゼの阻害は、前立腺の大きさを20%〜30%に減少させる。腺組織におけるこの減少は、アポトーシスの誘導によって達成され、腺の萎縮によって組織学的に明らかにされる。5α−レダクターゼは、2種のアイソファーム(1型および2型)として存在し、前立腺は2型アイソフォームを優先的に発現し、そして肝臓および皮膚は1型アイソフォームを優先的に発現する。患者は、1型ではなく2型の5α−レダクターゼを欠損していることが同定された。2型の5α−レダクターゼのヌル変異(null−mutation)を有する遺伝子標的ノックアウトマウスは、5α−レダクターゼ欠損を有するヒトにおいてみられる表現型と同様の表現型を実証した。1型の5α−レダクターゼノックアウトの雄マウスは、生殖機能に関して表現型的に正常である。5α−レダクターゼの酵素活性または免疫組織化学的検出は、精巣上体、精巣、導帯、および体の海綿体組織(corporal cavernosal tissue)のような他の尿生殖器組織においては注目されている。
【0009】
量的に、女性は、性によるより大きな副腎皮質応答性に起因して、エストロゲンよりも多くの量のアンドロゲンを分泌する。アンドロゲンとして一般に分類される主要な循環ステロイドとしては、血清濃度の高い順にデヒドロエピアンドロステロンスルフェート(DHEAS)、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)(副腎皮質が起源である)、アンドロステンジオン(A)、テストステロン(T)、および5α−DHTが挙げられ、後ろの2種のみがアンドロゲンレセプターに有効な程度で結合する。他の3種のステロイドは、アンドロゲンの前駆物質としてよく考慮されている。5α−DHTは、テストステロン代謝産物の主な末梢産物である。テストステロンは、その両方の遊離形態で循環し、アルブミンおよび性ステロイドホルモン結合グロブリン(SHBG)を含むタンパク質に結合し、そのレベルは、遊離のテストステロン濃度の重要な決定因子である。閉経後の卵巣は、アンドロゲン分泌器官であり、テストステロンのレベルは、閉経期の過渡期または閉経期の存在によって直接は影響されない。
【0010】
一部の研究の業績は、アンドロゲン依存性疾患(例えば、多毛症、アンドロゲン性脱毛症、良性前立腺肥大(BPH)および前立腺癌)を処置するためのステロイド化合物の開発に焦点を当てている。DHTは、遺伝的にステロイド5α−レダクターゼ酵素を欠損している男性の臨床的評価を通じて、これらの疾患の進行の原因となる因子として関係があるとされている。このような研究の結果として、この酵素の阻害は、新規の抗アンドロゲン薬物の設計および合成についての薬理学的ストラテジーになっている。しかし、5α−レダクターゼの阻害が、この系に対して、5α−レダクターゼインヒビターを使用した従来の処置の報告された副作用(例えば、性欲の低下、勃起不全および射精障害)から起こる禁忌によって証明されているような有害な影響を有するか否かは明らかではない。DHT効果の阻害を標的にする異なるストラテジーの開発は、アンドロゲン媒介性状態の治療において大きな利点であり得る。
【0011】
エストロゲン作用に関係する場合のエクオールの薬理学の理解に関する最近の利益にもかかわらず、エクオールの強力な抗アンドロゲン効果を示す本発明者らの研究は、独特かつ新規なものであり、そしてアンドロゲン関連状態を防止または処置するための新規のアプローチを切り開く。5α−DHTの結合または隔離は、5α−DHT感受性組織に対するその効果を阻害するための手段を提供する。5α−DHTについて特異的な公知のリガンドはないが、このような因子は、アンドロゲンレセプターを直接標的にするか、またはアンドロゲン合成に関連する酵素を標的にする非差別的な化合物を超える明確な利点を有する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Knightら,「Obstet Gyneco」1996年,第187巻:897−904
【非特許文献2】Setchell,KDR.「Am J Clin Nutr」1998年,第129巻:1333S−1346S
【非特許文献3】Kurzerら,「Annu Rev Nutr」1997年,第17巻:353−381
【非特許文献4】Setchellら,「The Lancet」1997年,第350巻:23−27
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
(発明の簡単な要旨)
本発明は、アンドロゲンホルモン作用およびエストロゲンホルモン作用を同時媒介(co−mediate)する方法に関する。この方法は、遊離の5α−ジヒドロテストステロンに結合して、それによって5α−ジヒドロテストステロンとアンドロゲンレセプターとの結合を阻害するのに十分な量、およびエストロゲンレセプターサブタイプに結合するのに十分な量でS−エクオールを含む鏡像異性エクオールを投与することによって、ヒトおよび非ヒト種において、1種以上の皮膚の生理学的な状態/障害および病態生理学的な状態/障害を改善する。
【0014】
本発明はまた、アンドロゲンホルモン作用を媒介する方法に関する。この方法は、遊離の5α−ジヒドロテストステロンに結合して、5α−ジヒドロテストステロンとアンドロゲンレセプターとの結合を阻害するのに十分な量でR−エクオールを含む鏡像異性エクオールを投与することによって、ヒトおよび非ヒト種において、1種以上の皮膚の生理学的な状態/障害および病態生理学的な状態/障害を改善する。
【0015】
本発明はさらに、アンドロゲンホルモン作用によって媒介されるアンドロゲン関連疾患を処置および防止する方法に関する。この方法は、遊離の5α−ジヒドロテストステロンに結合して、それによって5α−ジヒドロテストステロンとアンドロゲンレセプターとの結合を阻害するのに十分な量、およびエストロゲンレセプターサブタイプに結合するのに十分な量でS−エクオールを含む鏡像異性エクオールを投与することによる方法である。
【0016】
本発明はまた、アンドロゲンホルモン作用によって媒介されるアンドロゲン関連疾患を処置および防止する方法に関し得る。この方法は、遊離の5α−ジヒドロテストステロンに結合して、5α−ジヒドロテストステロンとアンドロゲンレセプターとの結合を阻害するのに十分な量でR−エクオールを含む鏡像異性エクオールを投与することによる方法である。
【0017】
本発明はまた、S−エクオールを含むエクオールの鏡像異性体の使用に関する。この使用は、遊離の5α−ジヒドロテストステロンに結合して5α−ジヒドロテストステロンとアンドロゲンレセプターとの結合を阻害するのに十分な量、およびエストロゲンレセプターサブタイプに結合するのに十分な量でS−エクオールを含む鏡像異性エクオールを投与することによって、アンドロゲンホルモン作用によって媒介されるアンドロゲン関連疾患を処置および防止するためのものである。
【0018】
本発明はまた、ヒトおよび非ヒト種において、DHTとエストロゲンレセプターとの両方によって媒介される皮膚の生理学的状態/障害および病態生理学的状態/障害の1種以上の個人化された処置を提供する方法に関する。この方法は、
1)患者の1種以上の疾患状態(state)または状態(condition)を評価する工程;
2)上記患者のエクオール産生状態を評価する工程;
3)処置の最適に有益なクールを決定する工程であって、このクールは、a)投与の様式;b)用量;c)投与間隔、およびd)上記エクオール用量の鏡像異性体比、からなる群より選択される、工程、を包含する。
【0019】
本発明の方法および組成物は、以下からなる群より選択される種々の皮膚の状態/疾患の処置および改善に有用である:皮膚の完全性、コラーゲン産生、エラスチン産生、エラスターゼ、皮膚の厚さ、皮膚中の血流、皮膚のトルゴール、皮膚の含水量、膣の乾燥、マトリックスメタロプロテアーゼによるコラーゲンおよびエラスチンの分解の防止、皮膚のしわの修復および防止、改良された皮膚の外観のためのグリコアミノグリカンおよびヒアルロン酸の増強、創傷治癒、皮膚の瘢痕の改良、皮脂腺機能を改良することによる油性皮膚の低下、皮膚の加齢斑および皮膚の下降感、ざ瘡、男性型禿頭症および女性型禿頭症、多毛症、頭皮、顔面および身体の毛の健康状態および成長、アポクリン(汗)腺機能、皮膚の炎症、皮膚の免疫機能、汗孔のサイズ、ステロイドホルモン合成/ホルモン作用における皮膚の温度ならびに皮膚および毛の異常、アンドロゲン効果および/またはエストロゲン効果に関するステロイドの代謝および結合ステロイドレセプター。
例えば、本願発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
アンドロゲンホルモン作用およびエストロゲンホルモン作用を同時媒介する方法であって、該方法は、遊離の5α−ジヒドロテストステロンに結合して5α−ジヒドロテストステロンとアンドロゲンレセプターとの結合を阻害するのに十分な量、およびエストロゲンレセプターサブタイプに結合するのに十分な量でS−エクオールを含む鏡像異性エクオールを投与することによって、ヒトおよび非ヒト種において、1種以上の皮膚の生理学的な状態/障害および病態生理学的な状態/障害を改善する、方法。
(項目2)
R−エクオールをさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目3)
アンドロゲンホルモン作用を媒介する方法であって、該方法は、遊離の5α−ジヒドロテストステロンに結合して5α−ジヒドロテストステロンとアンドロゲンレセプターとの結合を阻害するのに十分な量でR−エクオールを含む鏡像異性エクオールを投与することによって、ヒトおよび非ヒト種において、1種以上の皮膚の生理学的な状態/障害および病態生理学的な状態/障害を改善する、方法。
(項目4)
前記投与されるエクオールの量が、エストロゲンレセプターを結合するのに十分である、項目3に記載の方法。
(項目5)
前記皮膚の状態/障害が、皮膚の完全性、コラーゲン産生、エラスチン産生、エラスターゼ、皮膚の厚さ、皮膚中の血流、皮膚のトルゴール、皮膚の含水量、膣の乾燥、マトリックスメタロプロテアーゼによるコラーゲンおよびエラスチンの分解の防止、皮膚のしわの修復および防止、改良された皮膚の外観のためのグリコアミノグリカンおよびヒアルロン酸の増強、創傷治癒、皮膚の瘢痕の改良、皮脂腺機能を改良することによる油性皮膚の低下、皮膚の加齢斑および皮膚の下降感、ざ瘡、男性型禿頭症および女性型禿頭症、多毛症、頭皮、顔面および身体の毛の健康状態および成長、アポクリン(汗)腺機能、皮膚の炎症、皮膚の免疫機能、汗孔のサイズ、ステロイドホルモン合成/ホルモン作用における皮膚の温度ならびに皮膚および毛の異常、アンドロゲン効果および/またはエストロゲン効果に関するステロイドの代謝および結合ステロイドレセプターからなる群より選択される、項目1または3に記載の方法。
(項目6)
前記投与する方法が、組織部位における前記エクオールの投与を包含する、項目1または3に記載の方法。
(項目7)
前記エクオールを投与する工程が、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)を減少し、そして前記皮膚におけるコラーゲンの分解を防止する、項目1または3に記載の方法。
(項目8)
前記エクオールを投与する工程が、前記皮膚における血流および血管内皮増殖因子を増強する、項目1または3に記載の方法。
(項目9)
前記エクオールを投与する工程が、頭髪の小胞の健康状態、頭髪の成長を改良し、そして非禿頭の個体および禿頭の個体において頭髪の健康状態および頭髪の色を増強する、項目1または3に記載の方法。
(項目10)
前記エクオールを投与する工程が、(一般に)アポクリン腺、ならびに腋窩領域および鼡径部領域のような身体の有毛領域に関連するアポクリン腺からの発汗または汗の量を減少させる、項目1または3に記載の方法。
(項目11)
前記エクオールを投与する工程が、個体の皮膚を基質と接触させる工程であって、該基質は、該基質に含まれる有効量のエクオールを含有する、工程を包含する、項目1または3に記載の方法。
(項目12)
前記エクオールを投与する工程が、女性の顔面潮紅のような皮膚の温度を低下させる、項目1または3に記載の方法。
(項目13)
前記エクオールを投与する工程が、悪性黒色腫のような皮膚の癌性状態を改良する、項目1または3に記載の方法。
(項目14)
前記エクオールが、体重1kgにつき少なくとも0.01mgの鏡像異性エクオールを含有する経口組成物として投与される、項目1または3に記載の方法。
(項目15)
前記エクオールが、少なくとも0.01%の鏡像異性エクオール、および約10%までの鏡像異性エクオールを含有する局所組成物として投与される、項目1または3に記載の方法。
(項目16)
前記エクオールが、エクオールを含有する生成物形態を介して投与され、該生成物形態は、ローション、スプレー溶液、パッド、包帯、または経皮パッチからなる群より選択される、項目1または3に記載の方法。
(項目17)
アンドロゲンホルモン作用によって媒介されるアンドロゲン関連疾患を処置および防止する方法であって、該方法は、遊離の5α−ジヒドロテストステロンに結合して5α−ジヒドロテストステロンとアンドロゲンレセプターとの結合を阻害するのに十分な量、およびエストロゲンレセプターサブタイプに結合するのに十分な量でS−エクオールを含む鏡像異性エクオールを投与することによる、方法。
(項目18)
アンドロゲンホルモン作用によって媒介されるアンドロゲン関連疾患を処置および防止する方法であって、該方法は、遊離の5α−ジヒドロテストステロンに結合して5α−ジヒドロテストステロンとアンドロゲンレセプターとの結合を阻害するのに十分な量でR−エクオールを含む鏡像異性エクオールを投与することによる、方法。
(項目19)
S−エクオールを含むエクオールの鏡像異性体の使用であって、該使用は、遊離の5α−ジヒドロテストステロンに結合して5α−ジヒドロテストステロンとアンドロゲンレセプターとの結合を阻害するのに十分な量、およびエストロゲンレセプターサブタイプに結合するのに十分な量でS−エクオールを含む鏡像異性エクオールを投与することによって、アンドロゲンホルモン作用によって媒介されるアンドロゲン関連疾患を処置および防止するためのものである、使用。
(項目20)
ヒトおよび非ヒト種において、DHTとエストロゲンレセプターとの両方によって媒介される皮膚の生理学的状態/障害および病態生理学的状態/障害の1種以上の個人化された処置を提供する方法であって、該方法は、
1)患者の1種以上の疾患状態または状態を評価する工程;
2)該患者のエクオール産生状態を評価する工程;
3)処置の最適に有益なクールを決定する工程であって、該クールは、以下a)〜d):
a)投与の様式;
b)用量;
c)投与間隔、および
d)該エクオール用量の鏡像異性体比
からなる群より選択される、工程、
を包含する、方法。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、S−エクオールおよびR−エクオールの鏡像異性体の化学構造を示す。
【図2】図2は、健康な成人にR−エクオールを経口投与した後の血漿におけるR−エクオールの出現/消失のプロットを示す。
【図3】図3は、[3H]5α−DHT+エクオール([3H]5α−DHT単独ではない)のはっきりしたピークを示す。
【図4】図4Aは、前立腺とインキュベートした[3H]5α−DHT+エクオールの2つのはっきりしたピークを示す(A)。図4Bは、前立腺とインキュベートした[3H]5α−DHTに存在する単一のピークのみを示す(B)。
【図5】図5は、エクオールの[3H]5α−DHTへの特異的結合を示す。
【図6】図6は、Phyto−600餌食またはPhyto−Free餌食のいずれかを与えた雄ラット(断食していない)からの血清グルコースレベルを示す。
【図7】図7は、Phyto−600餌食またはPhyto−Free餌食のいずれかを与えた雄ラットの甲状腺(T3)血清レベルを示す。
【図8】図8は、エクオールまたはビヒクルの注射を受けた後に、28日間餌食を与えた3つの群のラットからの精巣重量を示す。
【図9−1】図9Aは、毛がある皮膚におけるエストロゲンレセプターβ(ER−β)、5α−レダクターゼ酵素(5α−R)およびアンドロゲンレセプター(AR)の分布を示す。
【図9−2】図9Bは、ヒト皮膚の毛包球におけるER−β、5α−RおよびARの分布を示す。図9Cは、ヒト皮膚の皮脂腺におけるER−β、5α−RおよびARの分布を示す。
【図10】図10は、組織培養培地に添加したコントロール物質またはエクオール(ラセミ混合物)とのインキュベーションの後の、皮膚でのプロコラーゲン合成を示す。
【図11】図11は、組織培養培地に添加したコントロール物質またはエクオール(ラセミ混合物)とのインキュベーションの後の、表皮+真皮での平均したプロコラーゲン合成を示す。
【図12】図12は、組織培養培地に添加したコントロール物質またはエクオール(ラセミ混合物)とのインキュベーションの後の、真皮でのプロコラーゲン合成を示す。
【図13】図13は、ヒト皮膚の単層線維芽細胞を、培養培地に添加した0.01%、0.001%、および0.0001%のエクオール、0.01%、0.001%、および0.0001% 17β−エストラジオール、ビヒクル、またはアスコルビン酸とインキュベーションした後に、MTTアッセイによって測定した代謝活性を示す。
【図14】図14は、ヒト皮膚の単層線維芽細胞を、培養培地に添加した0.01%、0.001%、および0.0001%のエクオール、0.01%、0.001%、および0.0001% 17β−エストラジオール、ビヒクル、またはアスコルビン酸とインキュベーションした後に、I型コラーゲンC末端ペプチドELISAによって測定したコラーゲン沈着を示す。
【図15】図15は、ヒト皮膚の単層線維芽細胞を、培養培地に添加したビヒクルまたは0.001%のエクオールとインキュベーションした後に、MTTアッセイによって測定した代謝活性を示す。横線は、未処理のコントロール培養物によって決定された基線を示す。
【図16】図16は、ヒト皮膚の単層線維芽細胞を、組織培養培地に添加したトランスキュトールビヒクル、0.001%のエクオール、またはアスコルビン酸とインキュベーションした後に、I型コラーゲンC末端ペプチドELISAによって測定したコラーゲン沈着を示す。横線は、未処理のコントロール培養物によって決定された基線を示す。
【図17】図17は、ヒト皮膚の単層線維芽細胞を、組織培養培地に添加した未処理培地、アスコルビン酸、0.001%エクオール、0.001% 5α−DHT、または0.001%エクオールと0.001%5α−DHTとの組み合わせとインキュベーションした後に、MTTアッセイによって測定した代謝活性を示す。横点線は、未処理のコントロール培養物によって決定された基線を示す。
【図18】図18は、組織培養培地に添加したビヒクル、10nM、1nMまたは0.1nMの5α−DHT、100nM、10nM、または1nMのエクオール、あるいは5α−DHTとエクオールとの組み合わせとインキュベーションした後に、前立腺癌細胞によって分泌される前立腺特異的抗原(PSA)のレベルを示す。
【図19】図19は、組織培養培地に添加したビヒクル、10nMエクオールまたは10nM 17βエストラジオールとインキュベーションした後の、ヒト皮膚単層線維芽細胞の3次元(3−D)培養物におけるI型コラーゲンタンパク質発現の蛍光細胞分析分離装置(FACS)分析を示す。
【図20】図20は、組織培養培地に添加したビヒクル、10nMエクオールまたは10nM 17βエストラジオールとインキュベーションした後の、ヒト皮膚単層線維芽細胞の3−D培養物におけるIII型コラーゲンタンパク質発現のFACS分析を示す。
【図21】図21は、組織培養培地に添加したビヒクル、10nMエクオールまたは10nM 17βエストラジオールとインキュベーションした後の、ヒト皮膚単層線維芽細胞の3−D培養物におけるマトリックスメタロプロテアーゼ−3(MMP−3)タンパク質発現のFACS分析を示す。
【図22】図22は、組織培養培地に添加したビヒクル、10nMエクオールまたは10nM 17βエストラジオールとインキュベーションした後の、ヒト皮膚単層線維芽細胞の3−D培養物におけるエラスチンのタンパク質発現のFACS分析を示す。
【図23】図23は、組織培養培地に添加したビヒクル、10nMエクオールまたは10nM 17βエストラジオールとインキュベーションした後の、ヒト皮膚単層線維芽細胞の3−D培養物におけるエラスターゼのタンパク質発現のFACS分析を示す。
【図24】図24は、組織培養培地に添加したビヒクル、10nMエクオールまたは10nM 17β−エストラジオールとインキュベーションした後の、ヒト皮膚単層線維芽細胞の3−D培養物におけるFACSによるアポトーシスの細胞周期分析を示す。
【図25】図25は、組織培養培地に添加したビヒクル、10nMエクオールまたは10nM 17β−エストラジオールとインキュベーションした後の、ヒト皮膚単層線維芽細胞の3−D培養物におけるFACSによるS−G2M期の細胞周期にある細胞の細胞周期分析を示す。
【図26】図26は、ビヒクルまたはエクオールの注射を25日間連続して受けた後の、雄ラットの皮膚の尾の温度を示す。
【図27】図27は、組織培養培地に添加したビヒクル、10nMエクオール、10nM 17β−エストラジオール、またはアスコルビン酸とインキュベーションした後の、I型コラーゲンC末端プロペプチドELISAによって測定したヒト皮膚単層線維芽細胞のコラーゲン沈着の結果を示す。
【図28】図28は、ビヒクル(エタノール)、エクオールラセミまたはS−エクオールの刺激特性を試験するための眼球刺激モデルを示す。
【図29】図29は、ビヒクル(エタノール)、エクオールラセミまたはS−エクオールの刺激特性を試験するための皮膚刺激モデルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(発明の詳細な説明)
本明細書において使用される場合、用語「皮膚」は、ヒト個体または非ヒト個体の外皮を含む細胞の層、およびその構造の構成要素(例えば、毛、毛包、皮脂腺、アポクリン(汗)腺、指の爪および足指爪)をいう。さらに、用語「皮膚」は、本明細書において使用されう場合、隣接している皮膚から伸びる粘膜の組織(例えば、口と口腔、鼻と鼻道、眼と眼瞼、耳と外側の外耳道、ならびに肛門および尿生殖器の開口部の会陰と組織)を包含する。
【0022】
本明細書において使用される場合、用語「影響された領域(affected area)」は、治療分子または治療分子を含む化合物で処置されるべき皮膚の領域をいう。この影響された領域は、処置が要求される皮膚の状態または疾患の部位であり得る。いくつかの場合において、影響された領域は、個体の全ての皮膚を包含し得る。あるいは、影響された領域は、表面的(cometic)な性質の改良が要求される部位であり得、そして個体上の全ての皮膚をまた含み得る。
【0023】
本明細書において使用される場合、用語「全身の(systemic)」または「全身的に(systemically)」は、血流またはリンパ系を介して皮膚の影響された領域に到達する治療の投与の様式をいう。全身処置の例としては、経口栄養または経口摂取、静脈内ポンプ注入または皮下ポンプ注入、および筋肉注射、腹腔内注射、皮下(hypodermic)注射、または皮下(subdermic)注射を介した注射が挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
本明細書において使用される場合、用語「局所の(topical)」または「局所的に(topically)」は、皮膚の影響された領域に直接適用される投与の様式をいう。局所処置の例としては、クリーム、ローション、シャンプー、コンディショニングローション、スプレー、パッド、包帯、おむつ、プロイステンタオル(proistened towelette)、または経皮パッチの適用;およびロゼンジまたは坐剤の経皮注射または注入を介した局所投与が挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
本明細書において使用される場合、用語「皮膚のパラメータ」は、皮膚の健康状態の種々の指標をいう。これらの指標としては、コラーゲンおよびエラスチン産生のレベル、エラスターゼ、皮膚の厚さ、皮膚の血流、皮膚のトルゴールおよび含水量、マトリックスメタロプロテアーゼによるコラーゲンおよびエラスチンの分解の防止、皮膚にしわがないこと、正常な皮膚の外観のためのグリコアミノグリカンおよびヒアルロン酸の存在、皮膚の創傷が治癒する能力、正常な皮脂腺機能、皮膚の加齢斑または色素沈着機能不全(pigmentation dysfunction)がないこと、汗孔のサイズ、皮膚の温度、および毛および爪の正常な成長が挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
本明細書において使用される場合、用語「皮膚の完全性」は、皮膚が運動できるように伸びたり収縮したりする能力を皮膚に与える細胞外マトリックスにおける、コラーゲンおよびエラスチンの存在をいう。
【0027】
エクオール(7−ヒドロキシ−3(4’ヒドロキシフェニル)−クロマン)は、ダイジンおよびダイゼイン、大豆および大豆食物で豊富に見出されるイソフラボンの主要な代謝産物を表し、重要な生物学的に活性な因子である。植物性エストロゲンが豊富な餌食を与えられた動物(例えば、げっ歯動物)において、主要な循環イソフラボンはエクオールであり、全循環イソフラボンレベルの70〜90%の割合を占める。しかし、これはヒトでの事例ではない。
【0028】
エクオールは、大豆由来のダイジンのグリコシド結合体、およびメトキシ化イソフラボンのホルモノネチン(formononetin)、またはクローバーにおいて見出されるそのグリコシド結合体の加水分解によって形成される。一旦形成されると、エクオールは、代謝的に不活性であるようであり、さらなる生体内変化を受けることなく、肝臓においてII相代謝を貯蔵するか、またはわずかな程度のさらなる加水分解を受ける。ダイゼインおよびゲニステインと同様に、優性なII相反応は、グルクロン酸抱合(glucuronidation)、およびより少ない程度の硫酸化である。エクオールが尿に存在するのは大豆食物の摂取の作用であるというもともとの知見によると、約50%〜70%の成人ヒト集団は、大豆食物で毎日チャレンジされた場合でさえ、尿にエクオールを排泄しないことが観察された。このことに対する理由は、不明である。さらに、純粋なイソフラボン化合物が投与され、それによって食物マトリックスの任意の影響が除かれる場合でさえ、多くの人々は、ダイゼインをエクオールに変換しないことが示されている。この現象は、これらの2種の異なる集団を記載するために、ヒトが、「エクオール産生者(equol−producer)」または「非エクオール産生者(non−equol producer)」(または「微量エクオール産生者(poor equol−producer)」)であるという用語法をもたらした。
【0029】
カットオフ値は、これらの分類のいずれかに対して個体を評価して実験的に引き出された。10ng/mL(40nmol/L)未満の血漿エクオール濃度を有する人々は、「非エクオール産生者」と分類され得、10ng/mL(40nmol/L)を超えるレベルの場合、これが「エクオール産生者」を定義する。この差異はまた、尿のレベルにも由来し得、エクオール産生者は、1000nmol/Lを越えてエクオールを排泄する。エクオールの排泄は個体の間で変動性が高いが、エクオールを産生することができる個体と産生することができない個体との間には大きな境界が存在し、これは、反応を触媒する酵素反応速度論における前駆物質−生成物の関係と一致する。従って、尿のダイゼンとエクオールレベルとの間には、反比例関係(inverse relationship)が存在し、従って、有意な性による差は明確ではない。
【0030】
エクオールについての作用機構は、皮膚の健康状態および疾患における重要な分岐によって同定され、この作用機構は、皮膚および毛のアンドロゲンおよび/またはエストロゲン媒介性病理学を処置する際のエクオールに対する広範かつ重要な使用を示す。エクオールは、抗アンドロゲンレセプターまたはエストロゲンレセプターのアゴニストまたはアンタゴニストとして作用し得る。エクオールの抗アンドロゲン特性は、エクオールがアンドロゲンレセプター(AR)に結合しないが、むしろ高い親和性で5α−ジヒドロテストステロン(5α−DHT)に特異的に結合し、それによって5α−DHTがARに結合するのを妨げるという点で独特である。さらに、エクオールのR−鏡像異性体およびS−鏡像異性体の両方は、5α−DHTに特異的に結合し、インビボの生理学的プロセスにおいて5α−DHTをARから隔離し、5α−DHTの作用をブロックする。R−エクオールおよびS−エクオールを構成するラセミエクオール、およびR−エクオールまたはS−エクオール単独は、選択的に5α−DHTを結合する。
【0031】
哺乳動物において、2種の主要なアンドロゲン(テストステロン、およびその5α−還元型代謝産物である5α−DHT)が存在する。5α−DHTは、哺乳動物の身体において最も強力なアンドロゲンとして認識される。ヒトX染色体上に位置する1コピーの遺伝子によってコードされるARは、アンドロゲンの作用を特異的に媒介する。テストステロンおよび5α−DHTの両方がARに結合するが、テストステロンによってわずかにだけ影響を受ける特定の組織(すなわち、前立腺、毛包など)は、5α−DHTによって大きく影響される。さらに、5α−DHTは、多くの疾患および障害に関係している。エクオールは、特異的に5α−DHTに結合して5α−DHTの作用を妨げるので、皮膚および毛のアンドロゲン媒介性病理の処置におけるエクオールについての広範で重要な使用のための指標が存在する。
【0032】
エクオールは、ステロイド性エストロゲンエストラジオールと類似の構造を有する。図1は、R−エクオールおよびS−エクオールのキメラ構造を示す。エクオールは、キラル中心を有し、2種の異なる鏡像異性形態(R−鏡像異性体およびS−鏡像異性体)として存在するという点で、イソフラボンの中で独特である。R−鏡像異性体およびS−鏡像異性体は、コンンフォメーション的に異なり、このことはエクオール鏡像異性体が、二量体化ER複合体の空洞中の結合部位にどのように適合するか、そしてそれが5α−DHTとどのように結合するかに影響することが予想される。
【0033】
約50%のエクオールが、ヒトにおいて遊離形態または未結合形態で循環し、そしてこれは、血漿中の遊離のダイゼイン(18.7%)またはエストラジオール(4.6%)の割合よりもかなり大きい。このエクオールは、レセプター占有率について、そして恐らく5α−DHTへの結合について利用可能である未結合の画分あるので、このことは、エクオールの全般的な効力を増強することに効果的に寄与する。
【0034】
エクオールに関する全ての公知の先行する研究は、エクオールのラセミ形態を用いて行われているようである。一般的に、2種の形態のエクオールが存在するという認識または鏡像異性体は異なって挙動し得るという認識が欠如しており、本発明者らの知るかぎり個々の鏡像異性体の特異的作用または特異的活性に関する先行する研究は報告されていない。R−エクオールおよびS−エクオールは、5α−ジヒドロテストン(5α−DHT)に特異的に結合する。エクオールラセミ(R−エクオールまたはS−エクオール)は、アンドロゲンレセプター(AR)には結合しない。17β−エストラジオールと比較して、ERαに対するR−エクオール鏡像異性体およびS−エクオール鏡像異性体の相対的な結合親和性は、それぞれ17β−エストラジオールよりも低い(1/210および1/49)。しかし、S−エクオール鏡像異性体は、ERβに対して比較的高い親和性を有し、ERβ選択性が高いようである。鏡像異性体S−エクオールは、17β−エストラジオールの濃度と類似の濃度でERβに結合するが[エクオール、Kd=0.7 nM 対 17β−エストラジオール、Kd=0.15nM]、ERβサブタイプに対する優先的なその親和性が、S−エクオールをSERMと定義する。しかし、R−エクオール鏡像異性体は、R−エクオールが非常に高い濃度で存在する場合、約1/100の親和性で結合し、SERM特性は有さない。従って、S−エクオールおよびR−エクオールは、最も強力な循環アンドロゲンである5α−DHTに選択的に結合する能力を有し、そしてS−エクオールは、S−エクオールがSERM特性を有していると分類するのに十分なERβに対する親和性を有する。
【0035】
S−エクオール(ダイゼインの天然の代謝産物)、およびR−エクオールの両方が、強力なアンドロゲンのジヒドロテストステロン、5α−DHTの作用をアンタゴナイズする能力は、疾患の防止および処置への表面的、食事的、栄養補給的、そして薬理学的なアプローチに対する機会を開く。上記疾患の防止および処置において、強力なアンドロゲン5α−DHTは、有害な役割(前立腺癌、肥満症、皮膚疾患、および毛の喪失が挙げられるが、これらに限定されない)を果たす。さらに、S−エクオールのエストロゲン作用はまた、BPHおよび前立腺癌の処置または防止において有益なものであり得る。なぜならば、エクオールの合わされた作用は、エストロゲンレセプターレベルにおいて、抗アンドロゲンとして作用するからである。
【0036】
天然には存在しないR−エクオールは、身体においてアンドロゲン媒介性プロセスを調節するその能力のために、相当に重要なものである。結合研究において、エクオール鏡像異性体は、テストステロン、DHEA、またはエストロゲンではなく、5α−ジヒドロテストステロン(5α−DHT)に特異的に結合する。そうすることにより、エクオールは、アンドロゲンレセプターそれ自体と直接結合することなく、アンドロゲンレセプターから5α−DHTを隔離する。インビボの研究は、去勢されていない雄ラットのエクオール処置が、前立腺および精巣上体の質量を顕著に減少させるが、精巣の重量は減少させないということを実証する。エクオールを投与した後に、5α−DHTで処置された去勢雄ラットにおいて、エクオールは、前立腺に対する5α−DHTの局所的効果をブロックし、血漿の黄体形成ホルモン(LH)レベルに対するその負のフィードバック効果をブロックした。
【0037】
エクオールは、5α−DHTに特異的に結合し、それ自体がアンドロゲンレセプター(AR)に結合することなく、5α−DHTがアンドロゲンレセプターに結合するのを妨げることによって、抗アンドロゲンとして作用し得る。さらに、すでにARに結合している5α−DHTは、鏡像異性エクオールによって競合的に結合されない。上記鏡像異性エクオールは、インビトロまたはインビボで5α−DHTと接触され得る。5α−DHTがインビボで接触される場合、エクオールは、局所的に投与された場合に、血流または皮膚にエクオールが吸収される任意の経路によって投与され得る。生物学的に利用可能な5α−DHTは、遊離しており、エクオールに結合する前にいずれの天然のリガンドによっても結合されない。
【0038】
前立腺および精巣上体のような生殖器官は、アンドロゲン制御のもとにあることが公知である。先行するデータは、思春期の前の循環アンドロゲンレベルが非常に低いときに、高いレベルの大豆由来のイソフラボンを含有する餌食を与えられたラットは、この餌食を消費することによって変更されない前立腺の重量を有することを示す。しかし、思春期後にアンドロゲンレベルが上昇すると、植物性エストロゲンを含まない餌食を与えられた動物と比較して、植物性エストロゲンが豊富な餌食を与えられたラットでは、前立腺の重量は顕著に減少する。これらのデータは、エクオールで処置された去勢されていないラットは、精巣および下垂体の重量を変化させることなく前立腺および精巣上体の重量において顕著な減少を示すという本発明の知見と類似している。特に、前立腺および精巣上体の値が体重に対して標準化されている場合(100gあたり)、この比率は、エクオール処置の値とコントロール値との間でさらに顕著に異なる。エクオールはまた、テストステロンレベルを顕著に変更することなく、前立腺および精巣上体に対する5α−DHTのアンドロゲン栄養性影響もまたブロックした。
【0039】
5α−DHTは、黄体形成ホルモン(LH)の循環血漿レベルに対する負のフィードバック効果を有する。エクオールは、5α−DHTに結合し、このフィードバック効果を妨げることによって、LHレベルを顕著に増加させる。去勢された(GDX)雄において、エクオールは、LHレベルに対する5α−DHTの阻害作用を競合的に逆転させ、ここで5α−DHTに加えてエクオールで処置された雄ラットは、コントロール値のレベルと類似したLHレベルを示す。これらのデータは、恐らく血液循環系においてエクオールが5α−DHTに結合する特異的能力を有し、そしてLHの産生または分泌の抑制において5α−DHTのホルモン作用をブロックすることをさらに示唆する。従って、本発明の実施形態は、個体の5α−DHFを鏡像異性エクオールと接触させることによって、個体中のLHレベルを調節する方法である。このエクオールは、エクオールを皮膚または血流に吸収させる任意の経路によって投与され得る。投与される量は、処置される病期の性質および個体の大きさに従う。いくつかの場合において、全身処置および局所処置の両方の組み合わせを提供することが、所望され得る。
【0040】
鏡像異性エクオールは、化学的合成によって調製され得、そして公知の手段によって、代表的にキラル相カラムを使用してラセミ混合物から単離され得る。S−エクオールは、イソフラボン(例えば、ダイゼイン)からエクオールへの代謝に関連するエクオール産生微生物を使用する生物学的プロセスを使用して、高いエナンチオ選択性を有して作製され得る。これらの手段は、PCT特許公報WO04−009035(これは本明細書において参考として援用される)に記載される。
【0041】
(S−エクオール、R−エクオール、および混合物を投与することによる疾患の処置)
本発明は、インビボにおいてエクオールを産生することが出来ないという問題を克服するため、または特にR−エクオールを供給するための、個体被験体のための手段を提供する。これは、エクオール鏡像異性体、S−エクオールまたはR−エクオール、S−エクオールおよびR−エクオールのラセミ混合物または非ラセミ混合物の直接の送達を提供し、その産生のための腸内細菌についての必要性またはエクオールの前駆物質のイソフラボンを含む大豆食物を消費することの必要性を回避することによる。S−エクオールの送達はまた、「エクオール産生者」、ならびに「非エクオール産生者」においてS−エクオールのインビボ産生もまた補充し得る。
【0042】
エクオール産生者の餌食をエクオールの鏡像異性体または混合物で補充すると、エクオール産生者によって産生されるS−エクオールのもともとのレベルが不適当である場合、1)エクオールを産生するための不十分なイソフラボンの消費、2)前駆物質イソフラボンからエクオールを作製するための腸内バクテリアの活性を除去する抗生物質の使用、または3)エクオールの産生または吸収のレベルに影響を与える他の健康状態の因子(例えば、短小腸症候群、または腸の孔の外科手術による構築(回腸造瘻術))のために、利益が提供される。さらに、エクオールの補充レベルは、ヒトの健康状態および満足に対する増強された効果を提供すると考えられている。
【0043】
本発明は、S−エクオール、R−エクオール、ラセミエクオール、またはエクオールの非ラセミ混合物を、アンドロゲン関連の疾患および状態に対する健康上の利益を有するのに十分な量で送達するための方法を提供する。エクオールの抗アンドロゲン活性は、身体のいたるところの多くの組織を影響し得る。特に、5α−DHTのアンドロゲン活性のブロックは、女性型禿頭症および男性型禿頭症、顔面および身体の毛の成長(多毛症)、皮膚の健康状態(ざ瘡、抗加齢(例えば、しわの防止および修復)、および抗光加齢(anti−photo aging))、および皮膚の完全性(コラーゲンおよびエラスチンの強さ)の処置および防止のために有益であり得る。この方法は、局所投与、全身投与、または局所投与と全身投与との組み合わせであり得る。
【0044】
局所投与について、皮膚の影響された領域に適用されるエクオールの濃度は、0.01%〜10%を変動する。代表的に、0.01%〜1%が、以下の上昇を誘導するために効果的である:皮膚の完全性、コラーゲン産生、エラスチン産生、エラスターゼ、皮膚の厚さ、皮膚の血流、皮膚のトルゴール、皮膚の含水量、マトリックスメタロプロテアーゼによるコラーゲンおよびエラスチンの分解の防止、皮膚のしわの回復および予防、改良された皮膚の外観のためのグリコアミノグリカンおよびヒアルロン酸の増強、創傷治癒、皮膚の瘢痕の改良、皮脂腺機能を改良することによる油性皮膚の低下、皮膚の加齢斑および皮膚の下降感、ざ瘡、男性型禿頭症および女性型禿頭症、多毛症、頭皮、顔面および身体の毛の健康状態および成長、アポクリン(汗)腺機能、皮膚の炎症、皮膚の免疫機能、汗孔のサイズ、ステロイドホルモン合成/ホルモン作用における皮膚の温度ならびに皮膚および毛の異常、アンドロゲン効果および/またはエストロゲン効果に関するステロイドの代謝および結合ステロイドレセプター。いくつかの場合において、皮膚の状態または疾患の存在に起因して、または患者が非エクオール産生者であるために、より高い用量が要求される。この場合において、局所的に適用されたエクオールの濃度は10%までであり得、局所投与は、より頻繁に実施され得るか、または全身投与が、局所投与と組み合わせてか、もしくは局所投与と代えて使用され得る。
【0045】
全身投与について、エクオールを含有する組成物の量は、哺乳動物の血漿において、少なくとも1ミリリットルあたり5ナノグラム(ng/mL)、より代表的には少なくとも10ng/mL以上で鏡像異性エクオールの一過性レベルを生じるのに十分な量、あるいは尿において1000nmol/Lを超える鏡像異性エクオールの一過性レベルを生じるのに十分な量で投与される。代表的には、上記組成物は、少なくとも約1mg、より代表的には少なくとも約5mg、そして200mgまで、より代表的には50mgまでの鏡像異性エクオールの用量で、経口的に投与される。健康な成人に20mgのR−エクオール鏡像異性体を経口投与した後の、血漿におけるR−エクオールの代表的な血漿濃度が、図2において、R−エクオールの血漿の出現/消失プロットの薬物動態学によって示される。健康な成人に20mgのS−エクオールを経口投与した後の、血漿におけるS−エクオールの代表的なバイオアベイラビリティーは、R−エクオールについて示されるものと類似している。
【0046】
十分な量でR−エクオールおよび/またはS−エクオールを送達する能力は、エクオールのラセミ混合物の送達を超えるいくつかの利点を提供するために送達される。第一に、R−エクオールまたはS−エクオール単独の効力は、代表的にラセミ混合物の効力の少なくとも2倍である。第二に、ヒトの身体は、S−エクオールのみを産生し、従ってS−エクオールのみを含有する組成物は、身体にありふれた成分のS−エクオールについて「天然」の生成物を表す。第3に、R−エクオール鏡像異性体は独特な特性を有するので、R−鏡像異性体のみを含む処置組成物、または実質的にR−鏡像異性体のみを含む処置組成物は、有益な効果および/または治療効果を生じ得る。そして第4に、R−エクオールの投与は、任意の内因性S−エクオールの存在を補充し、エストロゲン作用および抗アンドロゲン作用の両方を身体内で起こす。
【0047】
本発明は、男性型禿頭症および女性型禿頭症に関連する疾患および状態を処置ならびに防止するための鏡像異性エクオールの使用に関する。5α−DHTは、頭髪の喪失の公知の原因である。アンドロゲン、特に主要な循環アンドロゲンであるテストステロンは、より強力なアンドロゲンであるジヒドロテストステロン(5α−DHT)(毛包において)に変換され、頭髪の小胞に対する5α−DHTのホルモン作用が毛の喪失を引き起こす。従って、5α−DHTのホルモン作用がブロックされ得る場合、例えば、循環(血管内)および毛包内において5α−DHTに結合する本発明のエクオールを使用することによって、次に頭髪の喪失が減少または防止され得る。
【0048】
本発明は、顔面および身体の毛に関連する疾患および状態を処置ならびに防止するための鏡像異性エクオールの使用を包含する。顔面および身体の毛は、アンドロゲンによって調節されるが、頭髪の調節は逆である。特に、より強力なアンドロゲンの5α−DHTは、顔面および身体の毛を増加させる。5α−DHTはまた、皮脂腺からの皮脂(油)の産生を増加させ、このことは、ざ瘡の増加に寄与し得る。従って、エクオールによる5α−DHTの結合は、顔面および身体の毛の減少、皮脂(油)の分泌の減少、およびざ瘡の低下または予防を引き起こし得る。
【0049】
本発明は、皮膚の効果、皮膚の質および完全性、皮膚の加齢、皮膚の光による老化、および皮膚の色素沈着および下降感に関連する疾患および状態を処置ならびに防止するための鏡像異性エクオールの使用を包含する。閉経期前、しかし特に閉経期後、エストロゲンは、エラスチンおよびコラーゲンの含有量を増加させて皮膚の特性または強さを改良することによって、皮膚の健康状態を改良する。また、皮膚がざ瘡または他の皮膚の破壊(かき傷、小膿疱のつぶれ(popping pimples)または小さな切り傷など)によって損傷を受けるとき、修復機構はより迅速であり、例えばエクオールのようなエストロゲンまたはエストロゲン様化合物が存在する場合、皮膚はより良好に治癒する。鏡像異性エクオール、そして特にS−エクオールまたは鏡像異性体もしくはラセミエクオールの混合物は、エラスチンおよびコラーゲンを刺激し、そしてまた光による加齢に対して保護し得ることが、考えられている。エクオールが5α−DHTのホルモン作用をブロックする能力は、皮脂腺からの皮脂の油の産生を減少させ得、このことがざ瘡を減少または排除し得る。S−エクオールはエストロゲンレセプター(主にERβ)を結合するので、このエストロゲン様分子の保護効果は、皮膚においてエラスチンおよびコラーゲンを刺激する。さらに、エクオールは、強力な抗酸化物質であるので、エクオールは、皮膚を加齢(光による加齢を含む)から保護し得る。
【0050】
性ステロイドホルモンは、皮膚の発達および機能(例えば、分泌)の調節、ならびにいくつかの皮膚の病理学的障害に関連している。エストロゲンホルモンおよびアンドロゲンホルモンの作用は、皮膚、毛、および皮膚に関連する腺におけるそれらのレセプターの存在によって媒介されることが、よく証明されている。PelletierおよびRen,Histol Histopathology,19:629−636,2004を参照のこと。例えば、アンドロゲンレセプター(AR)は、表皮/真皮において大部分のケラチノサイトに局在化され、そしてARは、約10%の線維芽細胞にみられる。しかし、皮脂腺においては、ARは、基底細胞および皮脂細胞(sebocyte)において豊富である。毛包において、AR発現は、真皮乳頭細胞に限定されている。ERβは、表皮、皮脂腺(基底細胞および皮脂細胞)およびエクリン汗腺で高度に発現される。毛包において、ERβは、真皮乳頭細胞、内鞘細胞(inner sheath cell)、マトリックス細胞および外鞘細胞(隆起領域を含む)において広く発現される。
【0051】
エクオールは、ダイゼインの代謝産物であって、選択的エストロゲンレセプター調節因子(SERMS)の特性を有する(数種の細胞および組織部位において、エクオールはエストロゲンアゴニストのように作用し、もう一方ではエストロゲンアンタゴニストとして作用する)ので、エクオールが、ERβを含む種々の細胞/組織において二重のエストロゲン様ホルモン作用を有し得ることを提案するのは合理的である。エクオール(ラセミ)が、その鏡像異性体のS−エクオールを介してERβに結合する能力を有することが証明されている。なぜならば、R−エクオールは、ERαまたはERβに対して低い親和性を有するからである。しかし、S−エクオールおよびR−エクオールの両方は、以下のa)〜d)で主要な役割を果たす5α−DHTに特異的に結合し、5α−DHTを生物学的に不活化するそれらの能力に起因してかなり重要である:a)頭皮および顔面/身体の毛包成長(例えば、アンドロゲン性脱毛症または男性型禿頭症、および女性における多毛症または女性型禿頭症)、b)ざ瘡および皮脂腺の機能、c)創傷治癒、ならびにd)皮膚の障害(例えば、アポクリン腺機能障害、汗腺膿症(hidradentitis suppurativa)または臭汗症(osmidrosis)。最終的に、エストロゲンは、皮膚のパラメータ、創傷治癒、毛包の健康状態、皮脂腺およびアポクリン腺の機能、表皮および毛包の色素沈着、および悪性黒色腫に正に影響することが公知である。
【0052】
エストロゲンは、ヒト皮膚の維持における主要なホルモン因子であることが公知である。真皮においてコラーゲン産生を刺激することは、皮膚の厚さを増加させ、皮膚における血管新生を増加させ、そして表皮の有糸分裂活性を増加させることが公知である。Brincat MP、Maturitas、29:107−117,2000;Punnonen R、Acta Obstet Gynecol Scand Suppl、21:3−44,1972;Hasselquist,MBら、J Clin Endocrinol Metab,50:76−82,1980;ならびにShah MGおよびMaibach HI、Am J Clin Dermatol、2:143−150、2001を参照のこと。具体的には、エストロゲンは、Pirila Eら、Curr Med Chem、8:281−294、2001によって記載されたように、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)の天然の調節因子であることが公知である。MMPは、コラーゲンおよびエラスチンを破壊することが公知である。このことは、環境的な加齢(化学物質、汚染、極度な温度環境(寒冷または暑さ)への曝露)、機械的な加齢(顔面の筋肉の収縮、例えば、微笑、しかめ面、喫煙またはストローからの飲水)または生物学的な加齢に起因し得る。これらの因子は、加齢の遺伝的プロセスおよび自然のプロセスによって影響され、このプロセスにおいて、皮膚は薄くなり、コラーゲンおよび特にエラスチンの減少に起因してしわが現れ、そして皮膚の衰えの強い外観となる。エストラゲン処置はまた、皮膚の含水量または水分を増強し、皮膚のトルゴールに影響するグリコアミノグリカン(酸性ムコポリ多糖類およびヒアルロン酸)の濃度を上昇させることがまた示されている。Raine−Fenning NJら、Am J Clin Dermatol、4:371−378、2003を参照のこと。
【0053】
本発明は、エストロゲンレセプター(例えば、タモキシフェン)に関連する癌療法の負の効果を改善またはブロックするための、S−エクオール、またはS−エクオールとR−エクオールとのラセミ混合物もしくは非ラセミ混合物の使用を包含する。タモキシフェン処置は、膣の乾燥を引き起こすことが示されており、これは、エクオールのSERM作用を通じてエクオールによって改善され得る。本発明は、閉経期に伴う膣の乾燥または閉経期後の膣の乾燥を改善するために類似の様式で使用され得る。
【0054】
本発明は、5α−DHTの負の効果をブロックし、MMPを減少させて皮膚のコラーゲン、エラスチン、血管新生、および皮膚の厚さおよび皮膚のトルゴールに正の影響を与え、そして環境的加齢、機械的加齢、および生物学的加齢のプロセスを減速させるための、S−エクオール、またはS−エクオールとR−エクオールとのラセミ混合物もしくは非ラセミ混合物の使用を包含する。
【0055】
エストロゲンは、創傷治癒の速度および質において重要である。Pirila Eetら、Curr Med Chem、8:281−294、2001およびAshcroft GEら、Nat Med、3:1209−1215、1997を参照のこと。ERβは、成人ヒト頭皮および皮膚の毛包脂腺単位(毛包)において優性なエストロゲンレセプターであることが実証されている。Thornton MJら、Exp Dermatol、12:181−190、2003およびThornton MJ,ら、J Invest Dermatol Symp Proc、8:100−103、2003を参照のこと。さらに、5α−DHTの生理学的レベルは、免疫機能を弱め、炎症を促進することによって創傷治癒を抑制することが報告されている。Nitsch SMら、Arch Surg、139:157−163、2004およびGilliver SCら、Thromb Haemost、90:978−985、2003を参照のこと。MMPはまた、エストロゲンによって調節される創傷治癒に関連する。
【0056】
本発明は、R−鏡像異性体およびS−鏡像異性体の細胞外5α−DHTおよび細胞内5α−DHTへの結合を介して、この強力なアンドロゲンを生物学的に不活化し、創傷治癒に正に影響を与えるための、S−エクオール、またはR−エクオールとS−エクオールとのラセミ混合物もしくは非ラセミ混合物の使用を包含する。同時に、R−エクオールとS−エクオールとのラセミ混合物または非ラセミ混合物は、ERβホルモン媒介性機構を介して創傷治癒の速度および質を改良する。
【0057】
頭皮毛包の活性の固有の周期は、新しい毛の成長および古い毛の抜け代わりを生じる。この活性は、ステロイドホルモンの影響下にあることが公知である。頭皮毛包の成長は、5α−DHTによって特異的に阻害される一方で、同時に、顔面および体の毛包は、5α−DHTによって刺激される。閉経後の女性は、Brincat(上記の参考文献を参照のこと)によって記載されるように、卵巣ステロイドホルモンの喪失およびこの期間の間のアンドロゲン/エストロゲンの比の上昇に起因して、女性型禿頭症を経験することが公知である。閉経後の女性はまた、この期間の間に多毛症、または顔面および身体の毛の成長の増加を経験し、そして閉経後の期間にアンドロゲン産生の増加を経験する。閉経前の女性はまた、アンドロゲン産生の増加による多毛(hirstutism)を経験する。Reed MJおよびFranks S、Baillieres Clin Obstet Gynaecol、2:581−595、1988を参照のこと。低いレベルのアンドロゲンを有する去勢した男性、または遺伝的な5α−DHTレダクターゼ欠損を有するヒトは、男性型禿頭症を経験しない(Trueb RM、Exp Gerontol、37:981−990、,2002)。
【0058】
エストロゲンは、毛包の成長またはライフサイクルを増加させ、そして真皮乳頭細胞において血流に影響を与える血管内皮増殖因子(VEGF)の毛包への分泌を刺激することが、インビトロおよびインビボの研究からまた公知である。Lachgar Sら、J Invest Dermatol Symp Proc、4:290−295、1999もまた参照のこと。
【0059】
本発明は、強力なアンドロゲン5α−DHTを生物学的に不活化し、男性および女性の両方において頭皮毛包の成長に対する負の効果を阻害するための、S−エクオール、またはR−エクオールとS−エクオールのラセミ混合物もしくは非ラセミ混合物の使用を包含する。エクオールは、毛包のライフサイクルを刺激し、真皮乳頭細胞中の血管内皮増殖因子(VEGF)を増強して頭髪の成長に正に影響を与える。逆に、R−エクオールおよび/またはS−エクオールは、5α−DHTのホルモン作用をブロックし得、そして顔面および身体の毛の成長は低減する。
【0060】
エストロゲンは、男性および女性において大きさを減少させ、皮脂腺分泌を阻害する。Pochi PEおよびStrauss JS、J Invest Dermatol、62:191−210、1974ならびにLarie Fら、Horm Res、54:218−229、2000を参照のこと。ERβは、皮脂腺において広範に高度に発現され、そしてこのレセプターを介したエストロゲンホルモン作用は、毛包に関連する皮脂腺分泌を明らかに減少させる。一方では、皮脂腺におけるアンドロゲンレセプターは、5α−DHTによって活性化される。皮脂腺における5α−DHTは、細菌のひき寄せに関連する油の産生を刺激し、従ってざ瘡の促進および生成を刺激する。
【0061】
本発明は、強力なアンドロゲンの5α−DHTを生物学的に不活化し、皮脂腺からの油分泌の産生を阻害してざ瘡の発生率を減少させる、S−エクオール、またはR−エクオールとS−エクオールとのラセミ混合物または非ラセミ混合物の使用を包含する。鏡像異性体(R−エクオールおよびS−エクオール)の組み合わせは、大きさを減少させ、皮脂腺からの油の産生を阻害して、ざ瘡の改善または防止を助ける。
【0062】
アポクリン腺は、毛包の外毛根鞘から発生し、アポクリン腺は外毛根鞘につながったままである。アポクリン腺は、Jakubovic HRら、Dermatology、第3版、Philadelphia、W.B.Saunders、1992、pp.69〜77によって記載されるように、大部分は腋窩および鼡径部の領域から汗を生成する身体の毛で覆われた領域に関連する。汗腺膿症および臭汗症は、腋窩および鼡径部に関連する大きな汗腺の炎症に起因する状態である。Sato Tら、Br J Dermatol、139:806〜810、1998を参照のこと。これらの障害を有する患者は、アポクリン汗(臭汗症)に由来する過剰なにおいまたは異常なにおいを有する。この状態は、女性においてより一般的であり、エストロゲンおよび/または抗アンドロゲン処置で改良するようであり、このことは、これらの特定の腺がエストロゲンおよびアンドロゲンによって調節されることを示唆する。Offidani Aら、J Clin Pathol、52:829〜832、1999もまた参照のこと。特に、アンドロゲンホルモン作用が試験される場合、アポクリン(汗)腺のために過剰なにおいまたは異常なにおいに苦しむ患者のアポクリン腺において、高いレベルの5α−レダクターゼ活性が検出され、そして5α−DHTの作用は、これらの状態において影響を与えられる。
【0063】
本発明は、強力なアンドロゲンホルモンの5α−DHTを生物学的に不活化し、アポクリン腺からの汗の分泌の生成を阻害し、そして汗腺炎(hidradentitis)および臭汗症の発生数を低下させ得る、S−エクオール、またはR−エクオールとS−エクオールとのラセミ混合物もしくは非ラセミ混合物の使用を包含する。同時に、鏡像異性体(R−エクオールおよびS−エクオール)の比の組み合わせにおいて、エクオールは、アポクリン腺からの汗の生成を減少させ、汗腺炎および臭汗症の防止に役立つ。
【0064】
いくつかの研究から、表皮のメラノサイトがエストロゲン感受性であることが示されている。Wade TRら、Obstet Gynecol、52:233〜242、1978に記載されるように、エストロゲンを含有する経口避妊薬が、女性の顔面の色素過剰を引き起こすといういくつかの報告が存在する。
【0065】
本発明は、強力なアンドロゲンホルモンの5α−DHTを生物学的に不活化し、エストロゲンレセプターにおいてエクオールのホルモン作用を増強するための、S−エクオール、またはR−エクオールとS−エクオールとのラセミ混合物もしくは非ラセミ混合物の使用を包含する。表皮のメラノサイトは、エクオールのSERM作用を介して阻害され、その結果は、皮膚を明るくする(skin−lightening)効果である。従って、エクオールは、特に、顔面および手の加齢斑または皮膚の斑に対して、有効な処置であり得る。
【0066】
本発明は、強力なアンドロゲンホルモンの5α−DHTを生物学的に不活化し、エストロゲンレセプターにおいてエクオールのホルモン作用を増強するための、S−エクオール、またはR−エクオールとS−エクオールとのラセミ混合物もしくは非ラセミ混合物の使用を包含する。毛包のメラノサイトは、エクオールのSERM作用を介して刺激され、そしてその結果は、毛の色素沈着の増強である。Tobin DJおよびBystryn JC、Pigment Cell Res、9:304〜310、1996;Thorton MJ、Exp Dermatology、11:487〜502、2002;ならびにOhuchi Aら、Third Intercontinental Meeting of
Hair Research Societies、Japan、2001を参照のこと。従って、エクオールは、毛包の色調および色を調節するために有効な処置であり得、従って毛の色素沈着を変化させる。
【0067】
悪性黒色腫の形成を有する毛包の関連に起因して、エクオールのSERM特性は、陽性の様式で悪性黒色腫に影響を与え得る。Kanda NおよびWatanabe S、J
Invest Dermatol、117:274−283、2001;Richardson Bら、Br J Cancer、80:2025−2033、1999;ならびにDurvasula Rら、Climacteric、5:1970200、2002を参照のこと。例えば、インキュベートされたヒト転移性黒色腫細胞株のエストラジオールによる処置は、3H−チミジンの取り込みを阻害し、これは、抗エストロゲンの投与によって妨げられた。さらに、エストラジオールは、フィブロネクチンの活性化を通じてヒト黒色腫細胞の浸潤を阻害し得る。最終的には、女性における悪性黒色腫の提示(presentation)の平均年齢は、50代前半であり、これは、閉経期の開始と同時期である。黒色腫は、エストロゲンレセプター感受性腫瘍であると伝統的に考えられているが、最近の証拠は、このことに異議を唱える。
【0068】
本発明は、強力なアンドロゲンホルモンの5α−DHTを生物学的に不活化し、エストロゲンレセプターにおいてエクオールのホルモン作用を増強するための、S−エクオール、またはR−エクオールとS−エクオールとのラセミ混合物もしくは非ラセミ混合物の使用を包含する。エクオールのSERM作用を介して、悪性黒色腫の形成が阻害され、毛包のメラノサイトが安定化され、結果として悪性黒色腫の防止および処置になる。
【0069】
本発明の他の実施形態は、アンドロゲン関連性の皮膚または毛の障害、ならびにエストロゲン/アンドロゲンのバランスの乱れから生じる障害における診断剤としてのエクオールの使用を包含する。これらの実施形態において、エクオールが個体に投与されて、5α−DHTに結合し、それによってアンドロゲンレセプターへの5α−DHTの結合を防止する。次いで、エストロゲンバランスの変化が測定されるか、またはアンドロゲン結合の変化が評価されて、皮膚または毛のアンドロゲン関連の異常を診断またはさらに説明する。
【0070】
エクオールは、エラスチンおよびコラーゲンの含有量を増加させて皮膚の特性または強さを改良することによって、皮膚の健康状態を改良することが見出されている。この作用の機構は、皮脂腺からの油産生を減少させ、次いでざ瘡および他の皮膚障害を減少させる5α−DHTのホルモン作用をブロックすると考えられる。エクオール(および、特にS−エクオール)は、エストロゲンレセプターを結合するので、エストロゲン様分子の保護効果は、ER−βを介して媒介されると考えられている皮膚でのエラスチンおよびコラーゲンの産生を刺激する。さらに、エクオールの抗酸化特性は、光による加齢、および一般的に皮膚の加齢に対して保護する。
【0071】
エクオールは、問題の治療部分に関して、5α−DHTの結合能力を評価するために、他の治療部分の前か、または他の治療部分と一緒に、5α−DHTに結合ように投与され得る。また、アンドロゲン結合部分は、5α−DHT結合の非存在下においてアンドロゲン活性を回復し、エストロゲン活性とつり合わせるためのアンドロゲン結合部分の効力を評価するために、エクオールの投与の後に投与され得る。さらに、5α−DHTに由来するこれらの天然に存在する5α−DHT結合部分または生体異物の5α−DHT結合部分と置き換えるために、5α−DHT結合部分の存在下においてエクオールが投与され得る。
【0072】
鏡像異性エクオールは、経口投薬形態のエクオールを提供することによって経口投与され得、この投与は、エクオールの血流への効果的な吸収を生じる。エクオールの投与は、所望の場合経口以外の経路によって行われてもよい。例えば、肥厚前立腺(enlarged prostate)の処置のためか、または前立腺肥厚を防止するためのエクオールの投与に対して、直腸投与または尿道投与が使用され得ることが企図される。さらに、エクオール分子の活性なリガンド結合部位が、投与のために単離されて合成され得ることが企図され、これは、完全なエクオール分子なしで5α−DHT結合を提供し得る。5α−DHT結合能力を有するエクオール分子またはそのフラグメントの用量は、投与の経路と処置される状態とに依存する。本発明者らのインビボ研究に基づいて、相対的に低い用量のエクオールが、かなり高い用量の5α−DHTをアンタゴナイズすることが明らかであり、そしてこのことは、5α−DHTと比較した血清タンパク質へのエクオールの結合の顕著な差によって説明され得る。後者は、大部分がタンパク質に結合されて循環する一方、エクオールは50%が遊離している。一般的に、レシピエントの血流において、エクオールまたはその活性なフラグメントのある濃度を生じるのに十分な用量は、レシピエントの体重1kgあたり少なくとも約0.2mgのエクオールであり、好ましくは少なくとも約0.5mgのエクオールである。上記用量は、約10mg/kgを超えるまで、顕著な用量を限定する副作用を被ることなく劇的に増加され得る。経口投与は、医薬の遅延放出または徐放を提供し得るマイクロカプセル化形態において達成され得る。
【0073】
エクオールは、種々の形態で局所的、経皮的、そして皮下的に投与され得、この形態としては、ローション、軟膏、泡状物質(シェーリングクリームを含む)、およびスプレーが挙げられ、あるいは例えば、パッド、外科手術用包帯、接着性包帯、予め湿られたタオル(premoistened towellette)、乳児または成人の失禁用おむつ(例えば、米国特許第5,525,346号に記載されており、これは本明細書において参考として援用される)、女性用サニタリー製品、または 経皮パッチ(例えば、米国特許第5,613,958号および同第6,071,531号において記載され、これらは本明細書において参考として援用される)、電気機械デバイス(マイクロポンプ系(例えば、米国特許第5,693,018号および同第5,848,991号において記載され、これらは本明細書において参考として援用される)を含む)ならびに皮下移植片(例えば、米国特許第5,468,501号において記載され、これは本明細書において参考として援用される)のような局所適用に適した基板上の活性成分として投与され得る。
【0074】
本発明の実施において有用な組成物は、少なくとも部分的に遊離の5α−DHTに結合し、これを隔離し得、これによって個体への投与の後に5α−DHT(テストステロンまたはDHEA以外)がアンドロゲンレセプターに結合するのを妨げ、このことによって健康状態と疾患とに関する重要な分岐およびアンドロゲン媒介性病理の処置における広範かつ重要な用途を有する、少なくとも生理学的に受容可能な量のエクオールを含有する。
【0075】
S−エクオール、R−エクオール、ラセミエクオール混合物、または非ラセミエクオール混合物を含有する組成物は、経口消費のために作製され得る。上記組成物または上記組成物を含有する生成物は、市販される食品でも、業務用の食品でも、医薬品でも、OTC医薬であってもよい。食物組成物は、一人前あたり少なくとも1mg、代表的には200mgまでの鏡像異性エクオールまたはエクオール混合物を含有し得る。経口投与用医薬は、一用量あたり少なくとも1mg、そして代表的には200mgまでの鏡像異性エクオールまたはエクオール混合物を含有し得る。局所適用のための生成物は、少なくとも0.01重量%、そして10重量%までのS−エクオール、またはR−エクオール、または鏡像異性混合物を含有し得る。選択される濃度範囲としては、約0.01%〜約3%、約0.1%〜約1%、約0.1%〜約3%、約0.1%〜約5%、約0.3%〜約1%、約0.3%〜約3%、約0.3%〜約5%、約0.5%〜約1%、約0.5%〜約3%、そして約0.5%〜約5%が挙げられる。代表的に、0.01%〜1%が、種々の間隔において適用され得る有効濃度範囲である。いくつかの場合において、いくつかの病理学的状態または疾患を処置するために5%までの濃度においてエクオールを適用することが好ましい。状態または疾患の重篤度に起因するか、または個体が非エクオール産生者であり、従ってより多量の外因性エクオールの投与が必要とされるので、10%までの濃度が必要とされ得る場合もまた存在する。
【0076】
本発明の局所用組成物は、化粧品および薬学的活性物質および賦形剤を含み得る。このような適切な化粧品および薬学的因子としては、抗真菌物質、ビタミン、抗炎症剤、抗菌物質、鎮痛薬、一酸化窒素シンターゼインヒビター、昆虫忌避薬、日焼け剤、界面活性剤、保湿薬、安定薬、保存薬、防腐薬、増粘剤、潤滑剤、湿潤剤、キレート剤、皮膚浸透増強剤、緩和薬、芳香剤および着色料が挙げられるが、これらに限定されない。
【0077】
一部の個体において、全身投与および局所投与の組み合わせを使用することが所望される。このことは、状態または疾患の重症度に起因し得るか、または個体が非エクオール産生者であり、従ってより多量の外因性エクオールの投与が必要とされることに起因し得る。
【0078】
鏡像異性エクオールはまた、鏡像異性エクオールの結合体であってもよく、これは、グルクロニド、硫酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、グルコシド、アセチル−グルコシド、マロニル−グルコシド、およびこれらの混合物からなる群より選択される結合体と、C−4’位置またはC−7位置において結合体化される。
【0079】
アンドロゲン関連疾患およびこれに関連する状態の処置および/もしくは防止のため、またはアンドロゲン関連疾患およびこれに関連する状態への素因を減少させるために被験体に投与するための、エクオールの鏡像異性体もしくは混合物を含有する組成物または調製物はまた、1種以上の薬学的に受容可能なアジュバント、キャリアおよび/または賦形剤を含有し得る。薬学的に受容可能なアジュバント、キャリアおよび/または賦形剤は、当該分野で周知であり、例えば、Handbook of Pharmaceutical Excipients、第2版、American Pharmaceutical Association、1994(本明細書において参考として援用される)に記載される。この組成物は、錠剤、カプセル剤、再構成のための粉剤、スプレー、食物(例えば、食品バー(food bar)、ビスケット、スナック食品および当該分野で周知の他の標準的食品形態)、または飲料処方物の形態で投与され得る。飲料は、香料、緩衝剤などを含み得る。
【0080】
上記組成物は、S−エクオールについて0%を超え、かつ90%未満である鏡像体過剰率(EE)を有する、S−エクオールとR−エクオールとの非ラセミ混合物を含有し得る。0%のEEを有する組成物は、2種の鏡像異性体の50:50ラセミ混合物である。この組成物は、R−エクオールまたはS−エクオールの鏡像異性体のいずれかをラセミ混合物から不完全に分離および除去することによって、ラセミ混合物から直接作製され得る。この組成物はまた、エクオールの混合物(非ラセミ混合物またはラセミ混合物のいずれか)を含む第1のエクオール成分を、S−エクオールまたはR−エクオールから本質的になる組成物を含む第2の成分と合わせることによって作製され得る。これは、過剰なS−エクオールまたはR−エクオールを有する非ラセミ組成物を産生する。組成物中のR−エクオール成分およびS−エクオール成分に対する特異的な利点または指標に依存して、組成物は、約50:50〜約99.5:1を超えるS−エクオール対R−エクオールの比率、より代表的には約51:49〜約99:1の比率、そして約50:50〜約1:99.5未満のS−エクオール対R−エクオールの比率、より代表的には約49:51〜約1:99の比率においてS−エクオールおよびR−エクオールを含むように調製され得る。上記組成物は、代表的には、顕著な量の任意の他のアンドロゲンレセプター結合化合物を含まない。S−エクオール対R−エクオールの選択された比率は、約3:1〜約19:1、約3:1〜約9:1、約4:1〜約19:1、そして約4:1〜約9:1を含む。
【0081】
経口投与に適した組成物は、所定量の抽出物を各々含む、例えば、カプセル剤、カシェ剤、ロゼンジ、または錠剤として;粉剤または顆粒剤として;水性液体または非水性液体中の溶液または懸濁液として;あるいは油中水または水中油のエマルジョンとして、別個の単位で提示され得る。
【0082】
本発明のより完全な理解およびその使用は、以下の実験から得ることができる。
【0083】
(実験1.エクオールのS−鏡像異性体およびR−鏡像異性体のレセプター結合能力の決定)
インビトロ結合研究を実施して、エストロゲンレセプターERαおよびERβに対するS−鏡像異性エクオールおよびR−鏡像異性エクオールの相対的親和性を試験した。全長ラットERα発現ベクター(pcDNA−ERα;RH Price UCSF)およびERβ発現ベクター(pcDNA−ERβ;TA Brown,Pfizer,Groton,CT)を使用して、T7−RNAポリメラーゼを用いるTnT結合網状赤血球溶解物系(TnT−coupled reticulocyte lysate system)(Promega,Madison,WI)を使用して、30℃での90分反応の間にインビトロでホルモンレセプターを合成した。さらに使用するまで、翻訳反応混合物を−80℃で保存した。ERαおよびERβに対するS−エクオールおよびR−エクオールの鏡像異性体の結合親和性を計算および確立するために、網状赤血球溶解物上清の100μLアリコートを、[3H]17β−エストラジオール(E2)の濃度を増加させて(0.01〜100nm)、最適時間および最適温度(室温で90分間(ERβ)または4℃で18時間(ERα))でインキュベートした。これらの時間は、実験的に決定され、エストロゲンによるレセプターの最適な結合を表す。平行チューブ(parallel tube)において、300倍過剰のERアゴニストのジエチルスチルベストロールを使用して非特異的結合を評価した。インキュベーションの後、インキュベーション反応物を1mLの親油性Sephadex LH−20(Sigma−Aldrich Co.,Saint
Louis,MO)カラムを通すことによって結合した[3H]E2と結合していない[3H]E2とを分離した。以前に公開されたプロトコル(Handaら,1986;O’KeefeおよびHanda,1990)に従って、使い捨てのピペットチップ(lmL;Labcraft,Curtin Matheson Scientific,Inc,Houston,TX)をTEGMD(10mm Tris−Cl、1.5mm EDTA、10%グリセロール、25mmモリブデート、および1mmジチオスレイトール,pH 7.4)飽和のSephadexで充填することによってカラムを構築した。クロマトグラフィーのために、このカラムをTEGMD(100L)で再平衡化し、そしてインキュベーション反応物を各カラムに個々に添加して、そのカラム上でさらに30分間インキュベートした。このインキュベーションの後、600μLのTEGMDを各カラムに添加し、流入物(flow−through)を収集し、4mLのシンチレーション流体を添加し、そして2900 TR Packardシンチレーションカウンター(Packard Bioscience,Meriden,CT)においてサンプルを計測した(各5分)。
【0084】
競合結合研究を使用して、エクオールのS−エクオール鏡像異性体およびR−エクオール鏡像異性体のエストロゲン特性を評価した。ER結合に対してSおよびRが[3H]E2と競合する能力に基づいて、インビトロで翻訳されたERに対する親和性は、2種の鏡像異性体について非常に異なっていることが示された。S−エクオール鏡像異性体は、ERβに対して最も高く[Kd(nM)=0.73±0.2]、一方ERαに対する親和性は、比較してかなり低い[Kd(nM)=6.41±1.0]。このR−エクオール鏡像異性体は、ERβ[Kd(nM)=15.4±1.3]およびERα[Kd(nM)=27.38±3.8]の両方に対してかなり低い親和性を有した。参考のために、17β−エストラジオールは、この系において、Kd(nM)=0.13でERαに結合し、Kd(nM)=0.15でERβに結合する。
【0085】
この研究は、S−エクオール鏡像異性体のみが、ヒトにおいて報告されている循環エクオールレベルに対する潜在的な妥当性を有するのに十分な親和性でERに結合することを示した。17β−エストラジオールと比較して、ERαに対するS−エクオールおよびR−エクオールの鏡像異性体の相対的な結合親和性は、17β−エストラジオールのそれぞれ1/49および1/211であった。しかし、上記S−エクオール鏡像異性体は、ERβに対して比較的高い親和性を有し、主としてERβ選択的であるようにみえるが、R−エクオール鏡像異性体は、S−エクオールの約1/100の親和性で結合する。S−エクオールは、もっぱらヒト血漿および尿において見出されるという別々の関連する決定は、2種の鏡像異性体の結合における特異性を考慮して、重要である。
【0086】
(実験2.R−エクオールのバイオアベイラビリティー)
20mgの純粋なR−エクオールを、一晩の絶食の後に健康な成人に経口投与した。次の24時間にわたって設定した間隔において、血液サンプルを収集し、そして、選択したイオンモニタリングを使用する同位体希釈ガスクロマトグラフィー−質量分析によってエクオールの血漿濃度を決定した。エクオールの迅速な出現が血漿において観察され、ピーク濃度は8時間後に観察された。R−エクオールの末端除去(terminal elimination)半減期は、約8時間であった。エレクトロスプレーイオン化質量分析は、血漿中に存在するエクオールがR−エクオール鏡像異性体であることを確認し(PCT特許公報 W004−009035)、このことによってそれが安定であり、腸において任意のラセミ化またはさらなる生体内変化を受けないことを確立する。図2は、R−エクオールの血漿の出現/消失プロット示す。これらの結果は、R−エクオールが薬理学的調製物または栄養補給調製物として投与される場合、生物が利用可能であるという結果を確立する。類似の結果は、S−エクオールが健康な成人に経口投与された場合に得られている。
【実施例】
【0087】
以下の実施例は、本発明の使用、そしてそこから得られる利益を実証する。本発明の効力を実証するために、以下のプロトコルを使用し、そして以下の実施例においてそのプロトコルを参照する。
【0088】
(本発明の実施例で使用するプロトコル)
(1.試験物質ストック溶液の調製)
約20〜40mgの試験物質を、予め風袋を計った滅菌ガラスバイアルに計りとり、正確な重量を記録した。次いで、50% w/v溶液にするようにビヒクル容量を計算して、ビヒクルを添加した。実施例で示したように、2種の異なるビヒクルを使用した。100% DMSO(EMD Biosciences カタログ番号MX1458−6、ロット番号42364321)からDMSOビヒクルを調製する。100%トランスキュトール(transcutol)(Gattefosse a.s.a., Cedex,France)からトランスキュトールビヒクルを調製した。次いで、視覚的に乾燥粉末が溶液に溶けるまで、サンプルを激しく撹拌する。いくつかの場合において、サンプルは37℃まで簡単に温める必要がある。ストック溶液アリコートは、少量のアリコートで凍結されて約−20℃で維持してもよいし、または調製した直後に使用してもよい。エクオールのラセミ混合物を、0%(コントロール)、0.3%、1.0%、および5.0%の濃度で試験するために調製する。DMEM/F−12中50g/mlの濃度のアスコルビン酸を使用して、陽性コントロールを調製する。使用するためにストック溶液を希釈した後、次いでこれらを廃棄する。
【0089】
(2.MTTアッセイ)
組織培養物においてエクオールの毒性を決定するためのMTTアッセイを実施する。細胞の生存率および増殖の測定は、外部の因子への細胞集団の応答に関する多くのインビトロアッセイについての基礎を形成する。テトラゾリウム塩の還元は、細胞増殖を試験するための信頼できる方法として、現在広く受け入れられている。MTTアッセイは、細胞の代謝活性の比色分析である(ATCC;Gaithersberg MD;カタログ番号30−1010K)。黄色のテトラゾリウムMTT(3−(4,5−ジメチルチアゾリル−2)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロマイド)は、代謝的に活性な細胞によって還元されて還元等価物(例えば、NADHおよびNADPH)を生じる。得られた細胞内の紫色のホルマザンを、可溶化し、そして分光光度的手段によって定量し得る。MTT細胞増殖アッセイは、細胞の増殖速度、そして逆に代謝事象がアポトーシスまたはネクローシスをもたらす場合は細胞生存率の低下を測定する。細胞数と生成されたシグナルとの間の直線的な関係を確立し、細胞増殖の速度の変化の正確な定量を可能にする。いくつかの実験または実験において、MTTアッセイの結果を使用して、I型プロコラーゲンCペプチドアッセイの結果を標準化し得る。
【0090】
試験系において、試験物質を使用して適合性試験を実施する。各試験物質のアリコートを、ガラス試験管において当量の2mg/ml MTT溶液と混合する。チューブをキャップして、変換がすぐに起こらないかぎりは、約2時間室温で暗所でインキュベートする。紫色への色の変化の証拠は、上記試験物質が同時にMTTを還元し得、正しくない反応を生じることを示す。色の変化が認められた場合、「ブランク組織メッシュ(blank
tissue meshe)」を行う。アッセイにおいて、これらのブランクを同じ量の試験物質で行い、そして最も長い時点でのみ行う。何かが観察される場合、バックグラウンドの読み取り値をそれぞれの試験物質から差し引く。
【0091】
(3.組織培養物におけるTestSkinの使用)
TestSkin II組織を使用して、試験物質がコラーゲン合成を促進または阻害するいずれかの能力を評価する。この試験をまた使用して、試験物質に曝した後の組織の生存率を評価する。TestSkin IIは、生きているヒト皮膚の実際の構造および生物学的応答機構を厳密に刺激する、機械的に安定であり、かつ生物学的に機能的な皮膚構造からなる。この組織は、表皮および真皮の両方を有する。上面表皮層は、生きているヒトケラチノサイトからなり、十分に分化した角質層を有する。この表皮は、コラーゲンを高密度なマトリックスに整列させる生きているヒト皮膚の線維芽細胞と共に散在されるウシコラーゲン格子からなる支持皮膚層上で増殖する。以下の組織培養プロトコルに従って、TestSkinを使用する。
【0092】
(TestSkin培養プロトコル(1日目))
必要なだけの6ウェルプレートを使用してアッセイを完了し、フードの下に配置する。各プレートを含むパッケージを開け、プレートカバーを外して作業面上でひっくり返す。1mlのDMEM/F−12を一緒に、1ウェルにつき1つのMillicellを6ウェルプレートの各ウェルに配置する。プレートカバーを再配置し、TestSkin II単位が切断され保存の用意ができるまで、6ウェルプレートを取っておく。TestSkin II単位を切断するために、シールしたポーチの外表面を70%エタノールで拭う。滅菌はさみを使用してこのポーチを開け、TestSkin II単位を含んだトレーを除く。TestSkin IIトレーからカバーを除き、カバーの内側が滅菌状態のままであるように作業表面上でひっくり返す。滅菌ピンセットを使用してTestSkin IIトランスウェルを除き、カバーの内側に配置する。TestSkin II単位を切断するために、滅菌生検ポーチ(8mm)を使用する。このポーチをTestSkin II単位の表面に配置し、ゆっくりを押し下げて同時にねじる。このポーチを回転して戻し、空間的に回転させながら、十分な圧力を適用して皮膚およびポリカーボネート膜の両方を通って切断する。このポーチは、完全には周りをねじらない。なぜならば、これは皮膚を裂く傾向があるからである。個々の切片が、皮膚の残りから分離されている場合、それを滅菌針のノーズピンセットで除去し、切片の縁のみをつかみ、そして切片をはさんだり折り重ねたりしないように注意する。この切片は、Millicell上に側方を下側に注意深く配置した真皮であり、Millicellの下部と皮膚との間に気泡を含まずに平らに置くことを確実にする。1つの縁がまず下に配置されて、気泡が形成されないように残りの部分をゆっくりと下に置くことが有用である。表皮表面は表を上にしたままであり、皮膚表面を有するポリカーボネート膜は、Millicellに接して置く。適当な数の切片を分離して6ウェルプレート内のMillicell内に配置するまで、この手順を繰り返す。切り出しを完了し、カバーをプレート上に戻して、このプレートを約37±2℃および5±1% CO2のインキュベーターに一晩(16〜24時間)配置する。
【0093】
(TestSkin組織培養プロトコル(2日目))
各ウェル中の培地を吸引し、1mlの新しいDMEM/F−12培地で置き換える。各処置群(陰性コントロール、陽性コントロール、および試験物質)について、10μlの物質を組織上に配置して、投与パッド(dosing pad)でカバーする。この組織を約37℃±2℃および5±1% CO2のインキュベーターに戻し、約48時間配置する。
【0094】
(TestSkin組織培養プロトコル(3日目))
全ての試験サンプルを、組織1個あたり10μlの各処理で再び局所的に処理する。この組織を約37℃±2℃および5±1% CO2のインキュベーターに戻し、約24時間配置する。
【0095】
(TestSkin組織培養プロトコル(4日目))
次のプロコラーゲンアッセイのために、各ウェルから培地を除いて凍結する。各処理セットにおいて、4つの組織サンプルのうちの3つに対してMTTアッセイを即座に実施する。各処理群からの4番目の組織をホルマリン中に固定し、パラフィン包埋し、薄層に切り、そして組織学的染色に供す。この組織スライドをエラスチンおよびコラーゲン分析のために顕微鏡で調べる。
【0096】
2mg/ml MTT溶液(2mg/組織に対して十分)を、DMEM/F−12(37±2℃に予め温めたもの)で作製する。撹拌プレート上で、このMTT溶液を室温で10〜15分間混合する。次いで、この溶液を4000rpmで5分間遠心分離する。ペレットを廃棄して上清のみを使用する。6ウェルプレートのウェルに、MTT溶液を添加する(2ml/ウェル)。Millicell挿入物から組織を除き、そして洗浄ボトルからの少なくとも5mlのPBSでビーカーの上からリンスする。全ての試験物質を除去するまで、この組織をリンスする。次いで、6ウェルプレートの対応するウェルに組織を配置する。このプレートを、125rpmのシェーカープレート上で約2時間、約37℃±2℃および5±1% CO2においてインキュベートする。2時間のインキュベーションの終わりに、MTT溶液を除去して廃棄する。1mlのPBSを、各ウェルに添加する(2分間×2)。各PBS洗浄液を吸引によって除去する。
【0097】
MTTに曝した後、600μg/mlのThermolysin溶液(2mlの総容量に対するDMEM/F−12)中で30分間37±2℃で、組織をインキュベートする。このインキュベーション時間は、組織の皮膚と表皮の層とを分離するために十分であるべきである。この表皮は、真皮の上部に浮遊しているべきである。組織の皮膚部分を6ウェルプレートの別個のセットに配置する。両方のセットのプレートから、1ウェルあたり1mlのイソプロピルアルコールを用いてMTTを抽出する。このプレートを1時間シェーカープレート上に配置する。イソプロパノール抽出の後、200μlの抽出物を96ウェルプレートの対応するウェルに移す。このプレートを540nmにおいて読み取る。
【0098】
(4.ヒト皮膚線維芽細胞の組織培養プロトコル)
新生児の包皮由来の初代ヒト皮膚線維芽細胞を、継代10〜11回において48ウェルプレートに2.5e4細胞/ウェル/0.5ml培地で播種した。この培地は、1×非必須アミノ酸(HyClone カタログ番号SH30238.01,Lot番号AMC15759)、1×抗生物質/抗真菌物質(Sigma カタログ番号A5955,Lot番号13K2363)および2%ウシ血清(bovine calf serum)(HyClone カタログ番号SH30072.03,Lot番号ANF−18955)を含むDMEM (MediaTech,カタログ番号10−017−CV,Lot番号10017103)からなる。前のロットの子ウシ血清(Lot番号AMM17780)由来のサンプルもまた、使用した。37℃で約16〜24時間、細胞を培養し、5% CO2インキュベーターで加湿し、次いで培地を交換し、エクオール、アスコルビン酸(Sigma,カタログ番号A4544,Lot番号073K0139)、またはビヒクルをウェルの培地に添加した。試験物質またはコントロール物質の存在下において、細胞を約48時間培養した。
【0099】
(5.器官型3次元皮膚培養)
器官型3次元(3D)培養物を生成するために、皮膚線維芽細胞をナイロンメッシュに播種して、記載されるように原則的に約8週間の間増殖させた(Fleishmajer,J Invest Dermatol,97:638−643,1991;Contard,Cell Tissue Res,273:571−575,1993ならびにPinney,Liu,SheemanおよびMansbridge,J Cell Physiology,183:74−82,2000を参照のこと)。このインビトロモデルは、真皮の発生をきっちりと模倣し、器官の特性を用いた研究のための系を提供する。この特性は、例えば、表皮分化を支持する能力(Slivka,J Invest Dermatol,100:40−46,1993を参照のこと)およびコラーゲン原線維発生(Contard,Cell Tissue Res,273:571−575,1993)である。2週間後に、全ての3D培養物に20μg/mlのアスコルビン酸を補充したが、単層培養物には補充しなかった。その他の点では、単層と3D実験との間で全ての材料および手順は本質的に等しかった。検出できないレベルのエストロゲン活性を有する環境においてエストロゲン試験物質の効果を試験するために、3Dの実験物を、フェノールレッドを含まない培地中で3週間増殖させ、その後試験物質中で増殖させた。従って、3Dの実験物は、フェノールレッド色素に曝されなかった。
【0100】
(6.ヒト前立腺癌細胞培養)
ヒト前立腺癌細胞株をATCC(ATCC # CRL−1740,LNCAP−FGC)から入手し、5%ウシ胎児血清(Hyclone カタログ番号SH30088.03,Lot番号APC20780)および5mM Hepes(Sigma Cat. H−0887)、1×抗生物質/抗真菌物質(Sigma カタログ番号A5955)を含むRPMI培地(Sigma カタログ番号R−8758)において、37℃で培養し、5% CO2のインキュベーターで加湿した。低温保存する際に10% FBSおよび10% DMSOを含むRPMI培地中で液体窒素の中に低温保存および保管するまで、細胞をT−150フラスコで3代継代して増やした。次いで、冷凍バイアル(cryovial)を37℃の水浴で解凍し、1代または2代継代して再度増やし、96ウェルプレートにおいて、0.2mlの培地(RPMI 5% FBS培地)中で96ウェルあたり10,000細胞でプレートした。約48時間後、2% FBSおよび1×抗生物質/抗真菌物質を含むフェノールレッドを含まないDMEM/F12(Gibco カタログ番号21041−025)に培地を交換し、そして試験物質およびDMSO/ビヒクルコントロールを10×ストックから適切な濃度で添加した。試験物質およびコントロールの存在下で細胞を約48時間培養し、その後前立腺特異的抗原(PSA)ELISAのために培地上清を除去した。
【0101】
(7.I型コラーゲンC−ペプチドELISA)
コラーゲン(I型、II型、III型、IV型、およびV型)を、プロコラーゲンを呼ばれる前駆体分子として合成する。これらは、小胞体内でプロコラーゲン分子を3重らせん立体配座に折りたたむのを促進する、プロペプチドと呼ばれるさらなるペプチド配列を含む。このプロペプチドは、分泌の間にコラーゲン3重らせん分子から切断され、その後3重らせんコラーゲンは、細胞外コラーゲン原線維に重合される。従って、遊離のプロペプチドの量は、合成されたコラーゲン分子の量を化学量論的に反映する(Takara Biomedicals,Collagen Type I C−Propeptide
Kit)。
【0102】
皮膚線維芽細胞は、主にI型コラーゲンを合成し、C末端プロペプチドの切断は、細胞外マトリックス内の原線維への沈積のために必要とされる。このプロペプチドは、細胞培養上清において処理されていない形態を認識しない抗血清を使用して測定され得、患者血清中の線維症の尺度として臨床的に使用され得る。切断されたプロペプチドの量は、沈積したI型コラーゲンの量に直接的に比例し、精製した標準物質および市販のELISAキット(Takara Mirus,Inc.,カタログ番号TAK−MK−101)を使用して正確に定量され得る。48時間後、試験物質またはコントロールの存在下において、培養培地上清を除去し、製造者の指示に従ってELISAキットを使用して、Molecular Devices Vmaxプレート96ウェルプレートリーダーおよびSoftMaxソフトウェアを使用して、即座に分析した。アスコルビン酸(ascorbate,Sigma カタログ番号A4544,Lot番号073K0139)は、コラーゲン沈積を刺激することが公知であるので、アスコルビン酸を陽性コントロールとして使用し、20μg/mlの最終濃度で培地に添加した。ビヒクル処理した培地または培地単独を、陰性コントロールまたはブランクコントロールとして使用した。
【0103】
組織培養物由来の上清または培地を培養プレートまたは培養ウェルから収集する。サンプル上清を2000〜3000rpmで5〜10分間遠心分離機で遠心分離し、I型コラーゲン C−プロペプチドを定量する。このペレットは、本研究には使用しない。アッセイ溶液の調製は、以下のとおりである:
(標準溶液(640 no PIP/mi))
標準物質を1mlの蒸留水で再水和し、約10分間断続的にカウンタートップで回転させることによってゆっくりと混合する。標準物質は、表1に示すように作製する。この標準溶液は、4℃で1週間安定である。標準物質は、二重で試験する。
【0104】
【表1】
(停止溶液(1N H2SO4)
5.8mlの濃縮H2SO4を、180mlの蒸留水に注意深く添加する。蒸留水を添加して、最終容量を200mlとする。この溶液を十分に混合する。この溶液は、6ヶ月まで2〜26℃で保存することが可能である。
【0105】
(抗体−POD結合体溶液)
バイアル1の内容物を11mlの蒸留水に溶解し、カウンタートップで回転することによって穏やかに混合する。このバイアルは、光感受性である場合、ホイルで覆われなければならない。この溶液を約10分間ゆっくりと混合し、気泡の形成を回避する。使用する前にこの溶液を直接調製し、すぐにマイクロタイタープレートに移す。抗体−POD結合体溶液の100μlアリコートを、標準物質のウェルおよびサンプルウェルにピペットで移す。標準物質およびサンプル(各20μl)を対応するウェルにピペットで移す。マイクロタイタープレートを、その側面を15秒間軽く叩くことによって混合し、次いでホイルで密封して約3時間37℃でインキュベートする。インキュベーションの終わりに、プレートをひっくり返し、約400μlのPBSで各ウェルを4回洗浄することによって、各ウェルから溶液を除去する。各洗浄の間に、ペーパータオル上でマイクロタイタープレートをひっくり返してさかさまで軽く叩くことによって、プレートを空にして可能な限りのPBSを除去する。基質溶液(100μl)を各ウェルにピペットで移す。このプレートを15秒間穏やかに叩いて混合し、15分間室温(20〜30℃)でインキュベートする。停止溶液(100μl)を各ウェルにピペットで移し、プレートを15秒間穏やかに叩いて混合する。サンプルの吸光度をELISAマイクロプレートリーダーで450nmで読み取る。
【0106】
(計算およびデータの分析)
I型コラーゲンC−プロペプチドアッセイのために、1つのサンプルにつき1以上の読み取り値を得た場合、各サンプルに対する読み取り値を平均化する。標準曲線を得るために、log−logスケールを使用して、標準物質に対してPIP濃度(ng/ml)に対する吸光度をプロットする。サンプルについて、縦軸上に平均吸光度値を位置決めし、そして標準曲線と交差する横線を位置決めする。交差する地点において、横軸からPIP濃度(ng/ml)を読み取る。プロコラーゲンの値(ng)を組織サイズのバリエーションに対して標準化するか、または真皮のMTT値で割ることによって取り決める。なぜならば、組織の皮膚の層は、コラーゲン合成の原因であるからである。
【0107】
全てのMTT(真皮+表皮)の複製サンプルについての平均OD値および標準物質バリエーションを計算する。生存率のパーセントは、以下の式を使用して計算する:
生存率(%)=(試験物質の平均OD/陰性コントロールの平均OD)×100。
【0108】
(8.PSA ELISA)
組織培養上清をPBS中に10倍希釈して−20℃で保存し、次いでアッセイの前に室温で解凍した。遊離PSAのための市販のELISAキット(Bio−Quant,カタログ番号BQ 067T)を製造者の指示に従って利用し、Molecular Devices Vmax 96ウェルプレートリーダーおよびSoftMaxソフトウェアを使用してデータを決定した。
【0109】
(9.細胞内FACS分析および細胞周期の決定)
単層を穏やかにトリプシン処理するか、または3D培養物から1mg/mlコラゲナーゼで広範囲に消化することによって、単一細胞懸濁液を生成した。製造者の指示に従って、フローサイトメトリー(IntraCyte,Orion BioSolutions,Inc.,カタログ番号01017)による細胞内検出のために細胞を調製するために、市販のキットを利用した。手短に言えば、細胞をホルムアルデヒドで固定し、非イオン性洗剤で透過化処理し、そして非特異的タンパク質結合をブロックした。以下の一次抗体を1〜2μg/mlで使用した:アフィニティー精製した抗ヒトI型コラーゲン(Chemicon Inc.,カタログ番号AB758)、アフィニティー精製した抗ヒトIII型コラーゲン(Sothern Biotechnology Associates,Inc.カタログ番号1330−01)、モノクローナル抗ヒトエラスチン(Sigma,Inc.,カタログ番号E4013)、ポリクローナル抗ヒトエラスターゼ(The
Binding Site Inc.,カタログ番号PC052)、およびモノクローナル抗ヒトMMP−3/ストロメライシン−1(Calbiochem Inc.,カタログ番号IM362)。陰性コントロールとしては、各一次抗体として同じ濃度において同じ種由来の無関係な免疫グロブリン、ならびに未染色の細胞、および一次抗体のない細胞を含んだ。一次抗体結合を、アフィニティー精製した種特異的な蛍光色素結合体化二次抗体を使用して検出した。FACS分析のために、488nmのアルゴンレーザーを備えるCoulter EPICS Eliteサイトメーターを使用し、1つのファイル(file)につき約20,000個の細胞をCoulter ELITEソフトウェアを使用して分析した。
【0110】
(10.眼球および皮膚の刺激(irritection)アッセイ)
実際の眼球および皮膚の刺激試験を模倣する眼球および皮膚の刺激アッセイは、定量的なインビトロ試験方法である。眼球刺激の標準化アッセイを実施するために、半透膜から構成される合成生物バリア(biobarrier)に試験サンプルを適用する。皮膚刺激の標準化アッセイを実施するために、色素含有ケラチン−コラーゲンマトリックスでコーティングされた類似の合成生物バリアに試験サンプルを適用する。適用後、このサンプルをこの合成生物バリアによって吸収させ、このバリアを通して高秩序のグロブリンおよび糖タンパク質を含む独自の溶液と徐々に接触するようにする。試験サンプルとこれらのタンパク質および高分子複合体との反応は、タンパク質溶液の混濁度の増加として容易に検出され得る立体配座の変化を促進する。眼球刺激試験に関して、混濁度は、405nmの波長において分光光度的に検出することが可能である。皮膚刺激試験に関して、適用したサンプルの遷移の間に生物バリアから解離する色素は、450nmの波長において分光光度的に検出することが可能である。
【0111】
試験サンプルが眼球を刺激する可能性は、刺激ドレイズ当量(Irritection
Draize Equivalent)(IDE)として表され、ここで試験サンプルが皮膚を刺激する可能性は、ヒト刺激当量(Human Irritancy Equivalent)(HIE)のスコアとして表される。試験物質によって生じる光学密度(OD405/450)の増加を、キャリブレーション物質のセットによって生じるODの増加を測定することによって構築する標準曲線に対して比較することによって、これらのスコアを規定する。これらのキャリブレータを、これらの試験において使用するために選択する。なぜならば、これらの刺激可能性は、一連のインビボ調査において以前から証明されているからである。これらのスコアリング系に基づいて予測するインビボ分類を表2および表3に示す。一般的に、これらのプログラムは、以下の判定基準を満たす場合に資格を与えるようにサンプルデータを受容するように設計されている:キャリブレータおよび内部品質コントロールサンプル(internal Quality Control
sample)のOD値は、以前に特定した範囲にある;サンプルブランクは、500OD単位未満である;正味のサンプルODは、約15を超える;そして阻害チェックは陰性である。
【0112】
【表2】
【0113】
【表3】
(11.統計学的分析)
適切な場合、Newman−Keuls post hoc検定に続いて、分散統計の分析(ANOVA)によって、データを分析した。有意性は、p<0.05であった。GraphPadソフトウェア(GraphPad Prism 3.0,San Diego,CA)を使用して、曲線フィッティング、科学グラフ(scientific graphing)および分析を完了した。
【0114】
(実施例1)
この実施例は、5α−DHTに対するエクオールのインビトロの選択的結合を実証する。ARに対するエクオールの結合親和性を決定し確立するために行った最初の結合競合研究において、[3H]5α−DHTの結合は、エクオールの非存在下においてよりも存在下においてより大きかった。ARをインキュベーションチューブから除去する([3H]5α−DHTおよびエクオールのみが残る)プロトコルにおけるわずかな改変は、[3H]5α−DHTの[3H]5α−DHT反応混合物の含有する溶出液への溶出をもたらした。[3H]5α−DHTのエクオールへの結合を確立する溶出ピークを同定するために、30cmのSephadex LH−20カラムを使用する。図3に示すように、[3H]5α−DHT+エクオールのカラムインキュベーションを適用した場合、5mLと9mLとの間の溶出画分において[3H]5α−DHTのピークが明らかである。このピークは、[3H]5α−DHTを単独でカラムに適用した場合には存在しない。さらに、5α−DHTまたは5α−DHT+エクオールを前立腺上清とインキュベートし、次いで30cmカラムを通過させる場合(図4A)、2つの別個の結合ピークが同定可能である。[3H]5α−DHTの第1のピークは、前立腺においてARに結合された[3H]5α−DHTを表す。これは、4mlと5mlとの間の溶出画分において見出される。さらに、後半のピーク(5mlと9mlとの間)が存在し、エクオールに対する[3H]5α−DHTの結合と一致する。しかし、エクオールの導入の前に36時間(平衡状態まで)、[3H]5α−DHTを前立腺上清とインキュベートする場合、[3H]5α−DHTの明らかな結合は存在しなかった(図4B)。[3H]5α−DHTと[3H]5α−DHT+エクオール(36時間後にエクオールを添加する)との両方は、4mlと5mlとの間の溶出で単一のピークを示し、このことは、エクオールがARについて5α−DHTと競合しないこと、またエクオールはレセプターにすでに結合している[3H]5α−DHTに結合しないことを示唆する。さらに、エクオールの5α−DHTへの結合が特異的であるようであることが注意されるべきである。なぜならば、類似の競合研究および結合研究は、他のステロイド(例えば、[3H]E2、[3H]T、[3H]DHEA、[3H]CORTおよび[3H]プロゲステロン)を使用して行われており、そこではエクオールに対する顕著な結合のいずれの出現もないからである(データは示さず)。[3H]5α−DHTへのエクオール結合の飽和分析は、1.32±0.4nMにおいて計算した見かけ上のKdを示す(図5)。
【0115】
表4は、各々に対する結合についてエクオールの親和性を決定するための結合アッセイにおいて試験した33種の異なるステロイド化合物を示す。エクオールは、5α−還元型ステロイドに対して中程度の親和性を有する一方、エクオールは、5α−ジヒドロテストステロン(5α−DHT)に対して最も高い親和性を示し、そして5β−ジヒドロテストステロン(5α−DHT)または最も一般的な天然の性ステロイド(例えば、エストラジオール、エストロン、エストリオール、プロゲステロンまたはテストステロン)のいくつかに対して親和性を有さない。
【0116】
【表4】
(実施例2)
餌食1gあたり600mgのイソフラボンまたは600ppmのイソフラボンを含む植物性エストロゲンが豊富な餌食(本明細書において以後「Phyto−600」餌食という)、または非常に低レベルのイソフラボンを含む餌食(本明細書において以後「Phyto−Free」餌食という;約10ppmのイソフラボンを含む)のいずれかで、Long−Evans雄ラットを飼育した。Phyto−Freeを与えた雄ラットおよび雌ラット(75日齢)に対して、Phyto−600を与えた雄ラットおよび雌ラットで循環イソフラボンレベルが異なるということを実証するために、本発明者らの研究室によって以前に実施したように、血清イソフラボンレベルをGC/MSによって決定した(K.D.R.Setchell,Am J Clin Nutr 129:1333S−1346S,1998;およびK.D.R.Setchellら,J Nutr 132:3577−3584,2002における方法を参照のこと)。異なる分類のイソフラボンの場合、Phyto−600を与えた雄が、Phyto−Freeを与えたものの値と比較して顕著に高いイソフラボンレベルを示し、成体の雄ラットおよび雌ラットでのイソフラボン濃度として表5に示す。より重要なことには、Phyto−600を与えたラットのエクオールレベルは、総植物性エストロゲンレベルの約78%にあたる。
【0117】
【表5】
他の代謝性ホルモンが餌食処置または年齢によって変更されるか否かを決定するために、血清のグルコースおよび甲状腺(T3)のレベルをアッセイする。年齢または血液サンプルの供給源[動脈性(ART)または静脈性(TRUNK)のいずれか]は独立して、グルコースレベルは、図6に示すようにPhyto−Freeを与えたラットの値と比較してPhyto−600を与えた雄マウスでわずかだが有意に高い。しかし、T3レベルを定量する場合、図7に示すように、Phyto−Freeを与えた動物と比較してPhyto−600餌食を与えた雄のLong−Evansラット(80日齢または110日齢)において、T3血清レベルは有意に上昇する。このことは、甲状腺レベルは大豆消費によって増強されることを実証し、これは、甲状腺薬物適用の減少または甲状腺処置の停止は、餌食における大豆ベースの食物を消費することによって行われるという個々の不確かな証拠と一致する。このことはまた、大豆食物の消費の後にヒトでT3レベルが同様に上昇するという報告とも一致する(Watanabe,S.ら,Biofactors 2000:12:233−41およびLephart,E.D.ら,Nutrition
Metab (London)2004:1:16)。
【0118】
(実施例3)
Phyto−Free 餌食期間の開始の前に、上記の実施例において記載したように、雄のLong−EvansラットにPhyto−200餌食を与える。このラットを約52日齢においてPhyto−Free餌食を含む餌食に置き、ランダムに3つの群に割り当てる。73日齢で開始し、ラットは、0.1ccのビヒクル(ピーナッツ油)、1mgのエクオールのラセミ混合物(ビヒクル中)(0.83mg/kg体重/日)の皮下注射(毎日)、または5mgのエクオールのラセミ混合物(ビヒクル中)(4.2mg/kg体重/日)(3日に一度)を受ける。エクオール注射が雄の生殖器官に対して有害な効果を有するか否かを決定するために、これらの動物において精巣の重量を定量する。エクオール注射による精巣重量の顕著な変化はなく、図8に示すように精巣の重量は注射処置群のなかで実質的に同じである。
【0119】
図9は、エストロゲンレセプターβ(ER−β)、5α−レダクターゼ酵素(5α−R)およびアンドロゲンレセプター(AR)の毛のない皮膚(図9A)、毛包球(図9B)および皮脂腺(図9C)のヒト皮膚における分布を示す。これらの酵素およびレセプターの局在に関して精通することは、以下の実施例の考察のために重要である。
【0120】
(実施例4)
TestSkinモデルにおけるコラーゲン合成に対するエクオールの効果を評価した。表皮領域のみを試験する場合において、ビヒクル、アスコルビン酸、または0.3%ラセミエクオールは、図10に示すとおり、プロコラーゲンI型C−ペプチドアッセイによって測定されるように類似した量のプロコラーゲンを有する。陰性コントロール物質は、コントロールビヒクルと比較して、より少ないプロコラーゲンを合成した。しかし、ラセミエクオールの1.0%濃度は、約4倍のプロコラーゲン合成を誘導し、そして5.0%のラセミエクオールは、ビヒクルコントロールレベルに対して18倍の増加を誘導した。
【0121】
ビヒクル、アスコルビン酸、または0.3%ラセミエクオールで処置した表皮領域および皮膚領域の標準化平均はまた、図11に示されるように類似の量のプロコラーゲンを実証し、そして陰性コントロール物質と共にインキュベーションしたサンプルは、より少ないプロコラーゲンを合成した。1%濃度のラセミエクオールは、約4倍のプロコラーゲン合成を誘導し、そして5%濃度は、約6倍の増加をもたらした。皮膚領域の試験において、図12に示したように、ビヒクルのみ、アスコルビン酸のみ、または0.3%ラセミエクオールのみは、類似した量のプロコラーゲンを有し、そして陰性コントロール物質は、わずかに少ないプロコラーゲンを合成した。1%濃度および5%濃度でのラセミエクオールは、ビヒクルコントロールレベルと比較して約4倍のプロコラーゲンを合成を誘導した。従って、この人工(インビトロ)皮膚モデルを使用して、1%エクオールの閾値は、皮膚領域においてプロコラーゲンの最大刺激を提供するのに十分であるようにみえる。
【0122】
(実施例5)
本研究は、3つの異なる濃度(0.01%、0.001%および0.0001%)における初代ヒト皮膚線維芽細胞の生存率に対するラセミエクオールおよび17β−エストラジオールの効果をMTTアッセイによって評価し、そしてコラーゲン沈着をI型コラーゲンC−ペプチドELISAによって評価した。
【0123】
天然のステロイドホルモンである17β−エストラジオールに対して、上記のMTTアッセイプロトコルにおいて記載されたとおりに低下したMTTを定量することによって、ヒト皮膚の単層の線維芽細胞に対する細胞毒性を決定するためにエクオールを試験した(図13)。試験物質のエクオールおよび17β−エストラジオールを、ジメチルスルホキシド(DMSO)、一般的な細胞培養ビヒクルに溶解した。ビヒクルとしての0.2%、0.02%、および0.002%のDMSO中の0.01%、0.001%、および0.0001%のエクオールにおいて、試験物質をアッセイした。未処置コントロールについての範囲は、0.77〜0.93OD単位を変動した。試験した濃度範囲にわたって、エクオールは、17−βエストラジオールよりもヒト皮膚の単層の線維芽細胞に対して毒性ではなかった。さらに、0.001%および0.0001%の試験物質の濃度において、低下したMTT値は未処置コントロールの範囲にあり、このことは、この細胞毒性レベルは、未処置のコントロール値と等価であることを示した。最も高い濃度の0.01%において、試験物質の毒性レベルは、エクオールおよび17−βエストラジオールについてそれぞれ約0.52および0.48であり、これは、インビトロのアッセイ条件について受容可能な結果である。従って、試験した濃度において、エクオールは、天然のステロイドホルモンである17−βエストラジオールと比較してヒト皮膚の単層の線維芽細胞に対してより毒性ではない。
【0124】
ELISAによって、ヒト皮膚の単層の線維芽細胞におけるコラーゲン沈着を定量した(図14)。ビヒクルのDMSOは、陰性コントロールとして役立つ一方で、DMSOを含まないアスコルビン酸は、陽性コントロールとして役立った。100μg/mlおよび10μg/mlのエクオールで処置した群を同じ濃度の17−βエストラジオールと比較する場合、コラーゲン沈着において、それぞれ顕著に2.1倍の増加および1.55倍の増加を観察した。この実施例は、エクオールが、天然のステロイドホルモンの17−βエストラジオールと比較して、顕著に大きいコラーゲン刺激特性を有することを実証する。このヒト皮膚の単層線維芽細胞アッセイにおいてコラーゲン産生が顕著に増加したことは、コラーゲンに対するエクオールの刺激効果が、皮膚のパラメータ(例えば、機械的損傷、物理的損傷、および光による加齢の損傷および皮膚のしわ形成の対する生物学的加齢の影響)を処置するための有効な方法を提供することを実証する。
【0125】
(実施例6)
皮膚に対するエクオールの効果を、コラーゲン沈着によって評価する場合、インビトロでヒト皮膚の単層線維芽細胞を使用したI型プロコラーゲンC−ペプチドELISAによって評価する。この研究は、ヒト皮膚線維芽細胞の生存率をMTTアッセイによって決定する際、そしてI型コラーゲンC末端ペプチドELISAによってコラーゲン沈着を決定する際に、市販される皮膚の浸透剤(penetrating agent)、試験物質のエクオールを送達する際のトランスキュトールの効果を評価した。トランスキュトール、またはジプロピレングリコールは、ヒト皮膚の健康のための表面的適用物の活性成分の送達において、安全性および有効性を提供する(安全性、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、エトキシジグリコール、およびジプロピレングリコールの評価に関する最終報告、Journal of the American College of Toxicology,第4巻,第5号,1985,Mary Ann Liebert,Inc.Publishers)。ヒト皮膚の単層線維芽細胞の細胞毒性が試験される場合、0.0001%(w/vのトランスキュトール)におけるエクオール処置は、0.0002%トランスキュトールビヒクルまたは未処置コントロールと比較して顕著には異ならない(図15)。
【0126】
次に、エクオールがコラーゲン沈着を刺激するか否かを決定するために、ヒト皮膚の単層線維芽細胞アッセイにおいてエクオールを試験した。図16に示すように、未処置のコントロール値は、330±30ng/ml(横線)であり、そしてこのレベルは、0.002% トランスキュトールビヒクルのレベルと類似していた。しかし、0.0001%のエクオールは、コラーゲン沈着を未処置コントロールレベルよりも1.8倍、そしてトランスキュトールビヒクルレベルよりも1.6倍顕著に刺激し、これは、トランスキュトールが、エクオールのヒト皮膚線維芽細胞への送達に対して有効な方法であることを実証する。さらに、エクオールでの処理は、アスコルビン酸での陽性コントロール処理と異ならず、これは、0.0001%のエクオールがインビトロのヒト皮膚の単層線維芽細胞アッセイ系においてコラーゲン沈着を最大限に刺激することを示唆する。コラーゲンの沈着を顕著に増加させるためのヒト皮膚線維芽細胞に対するエクオールの顕著な刺激の影響は、ヒト皮膚の健康のいくつかの重要な問題(例えば、機械的損傷、物理的損傷、および光による加齢の損傷、ならびに皮膚の加齢の天然の生物学的で経時的なプロセスの適用)を扱い得る。
【0127】
(実施例7)
これは、エクオールがインビトロで5α−DHTを結合およびブロックする能力に関する実施例である。ヒト皮膚線維芽細胞に対するエクオールの細胞毒性を、MTTアッセイによって決定した(図17)。この陰性コントロールは、DMSOを含まない組織培地(DMEM/HAMS F−12)単独からなり、約0.83の細胞生存率レベルを生じた。陰性コントロールは、陽性コントロールのDMSOを含まないアスコルビン酸と類似し、約0.85であった。0.001%のエクオール(またはビヒクルとしての0.002% DMSO中、10mg/ml)は、ヒト皮膚の単層線維芽細胞において、陰性コントロール(DMSOなし)および陽性コントロール(アスコルビン酸)と類似の生存率レベルを示した。しかし、強力な天然のアンドロゲンステロイドホルモンである5α−DHTは、全ての他の処置群と比較して最も高い細胞毒性を示した。エクオールが、インビトロで5α−DHTサンプルに添加される場合、エクオールは、5α−DHTの毒性効果を完全に無効にした。このことは、エクオールは、このインビトロのヒト皮膚の単層線維芽細胞アッセイ系において5α−DHTに結合し、そしてエクオールが5α−DHTの効果を生物学的に不活化するというインビボの証拠を確認するという直接の証拠を提供する。最終的に、ヒト皮膚線維芽細胞において5α−DHTの有害な効果(細胞毒性)をブロックし、そして同時にコラーゲン沈積を刺激することによって、この実施例は、エクオールがヒト皮膚の健康状態の増強に関して強力な効果を有することを実証する。
【0128】
(実施例8)
これは、PSA ELISAによって測定されたように、エクオールが、インビトロのLNCAP前立腺癌細胞において前立腺特異的抗原(PSA)(5α−DHTによって調節されることが公知である分子)を分泌する5α−DHTの刺激効果を妨げるという効果に関する実施例である。0.1nM、1nM、または10nMの5α−DHT、1nM、10nM、または100nMのエクオール、あるいは5α−DHTとエクオールとの組み合わせ(0.1nMの5α−DHTと1nMのエクオール;1nMの5α−DHTと10nMのエクオール、または10nMの5α−DHTと100nMのエクオール)による処置。MTTアッセイによって評価した場合、細胞毒性は、LNCAP前立腺癌細胞によるPSA産生に影響しない。図18に示されるように、1nM、10nM、または100nMのビヒクルPSAレベルは、処理なしのベースラインと異ならない。0.1nM、1nM、または10nMの5α−DHTでの処理は、PSA分泌を最大レベルまで刺激した。1nM、10nM、または100nMのエクオールで処理した細胞由来のPSAレベルは、ベースラインよりも低く、そして群の間で顕著な違いはなかった。しかし、10nMの5α−DHTと100nMのエクオール、ならびに1nMの5α−DHTと10nMのエクオールの組み合わせは、5α−DHT単独と比較してPSA分泌の増加を排除した。実施例1で実証した結合と一緒に考えて、この実施例は、エクオールは5α−DHT分子に結合し、そして皮膚および前立腺において5α−DHT分子を生物学的に不活化するということを実証する。
【0129】
(実施例9)
これは、エクオールがインビボで5α−DHTの刺激効果を妨げるという実施例である。25日間連続して、1mgのエクオールをラットに注射し、血清の5α−DHTレベルおよび前立腺の重量を測定した。なぜならば、前立腺は循環5α−DHTによって刺激されることが公知だからである。Charles River Laboratories(Wilmington,MA,USA)から購入した成体(50日齢)の雄(n=16)を個々にケージに入れ、Brigham Young University Vivariumで収容し、そして11時間の暗所13時間の明所のスケジュール(0600−1900で明るくした)に維持した。購入する前、雄の動物には、約200ppmのイソフラボンを含む餌食を与えた。50日齢において、雄のラットを約10ppmのイソフラボンを含む餌食のもとに置いた(以後、Phyto−Free餌食(Zeigler Bros.,Gardnes,PA,USA)という)。全ての動物を215日齢までthePhyto−free餌食を与え続けた。150日齢において、年齢と体重によって適合した2つの群にラットを分けた(コントロール処置またはエクオール処置)。190日齢から、雄ラットに毎日の0.1ccの皮下注射を開始した。この注射は、頚部のうなじにおいて、ビヒクル(DMSO)またはエクオールを約2.5mg/kgの用量で25日間連続して行った。各群の体重を処置を開始する前の150日目から開始して処置を受けた直前と直後で体重を得、毎週記録した。216日齢において、ケタミン/アセプロマジンで動物を麻酔し、心臓から血液を収集した。次に、腹側の前立腺器官を切り出して重さを量った。収集した血液サンプルを遠心分離し、アッセイ時まで−20℃で血清を保存した。
【0130】
血清テストステロンの5α−DHT、および17β−エストラジオールを、Diagnostic System LaboratQries(Webster,TX,USA)から購入したラジオイムノアッセイ(RIA)キットによって定量した。黄体形成ホルモン(LH)を、National Institutes of Health(NIH)の下垂体ホルモンプログラムからの標準物質を利用するアッセイによって定量した。各RIAについて二重で内部コントロールサンプルと共に、サンプルを使用した(run)。全てのRIAにおいて、コントロール値は、正常なそれぞれの範囲内にあった。このアッセイについての分散量のアッセイ内の係数は、以下のとおりであった:テストステロン=6.0%;5α−ジヒドロテストステロン=8%、17β−エストラジオール=5%およびLH=9%。
【0131】
LHおよびテストステロンを処置群の間で定量する場合、これらのホルモンレベルに顕著な差はない(表6)。LHは、精巣においてライディヒ細胞からのゴナドトロピンが制御するテストステロン合成であるので、これは驚くべき結果ではない。しかし、エクオールを注射した動物は、ビヒクルを注射した動物と比較して約50%の血清5α−DHTの減少を示した。最終的には、17β−エストラジオールレベルが決定される場合、処置群の間に顕著な差は存在しない。全てのホルモンレベルは、ラットのこの系統、年齢および性別について予想される正常の範囲内であった。前立腺の重量は、コントロールラットと比較してエクオールを注射した雄において約20%有意に減少した。この知見は、前立腺細胞増殖を制御することが公知の循環5α−DHTレベルの有意な減少と、それ故前立腺の重量の減少に対応する。従って、このインビボ研究は、血中の5α−DHTレベルの顕著な減少およびエクオール処置した雄ラットの前立腺重量の顕著な減少によって示されるように、エクオールが、5α−DHT分子に接触し、そして5α−DHT分子を生物学的に不活化し得ることを実証する。最終的に、上記に報告したインビトロ研究およびインビボ研究は、エクオールが、ホルモン5α−DHTによって調節される皮膚および皮膚の疾患/障害を処置する際に有効であることを実証する。
【0132】
【表6】
(実施例10)
これは、細胞内蛍光細胞分析分離装置(FACS)分析による、I型コラーゲンおよびIII型コラーゲンならびにエラスチンのタンパク質発現の刺激、マトリックスメタロプロテアーゼ−3(MMP−3)タンパク質発現の阻害、アポトーシスの阻害、ならびにヒト皮膚線維芽細胞の3次元(3−D)培養における細胞増殖の刺激に対するエクオールの効果の実施例である。この研究において、上記パラメータに対するエクオールの効果を天然の女性ホルモン17β−エストラジオールと比較した。エクオールおよび17β−エストラジオールの両方を、10nM濃度において使用した。この濃度は、インビトロ実験を使用して研究するための正常範囲に対応し、そして0.1〜1.0nM 17β−エストラジオールおよび1nM 5α−DHT(女性)、ならびに3nM 5α−DHT(男性)のインビボの循環濃度範囲を表す(Wilson JDら,Williams Textbook of Endocrinology,第9版,W.B.Saunders,Philadelphia,PA,1998を参照のこと)。
【0133】
インタクトな真皮とよく似ていて線維芽細胞によって細胞外マトリックスの組織様沈着および成熟を可能とする器官型3次元皮膚モデルを使用すると、エクオールは、FACSによってアッセイした場合、ビヒクルと比較してI型コラーゲン(図19)およびIII型コラーゲン(図20)を顕著に刺激した。これらの研究を、この方法論(すなわち、FACS分析)を使用するためのコントロールとして部分的に実施した。なぜならば、エクオールは、培養物において皮膚単層線維芽細胞によるコラーゲン沈着を増加させることが以前に示されていたからである。17β−エストラジオールではなくエクオールのみが、I型コラーゲンおよびIII型コラーゲンの両方を増加させた。細胞外マトリックス分子の正味の沈着はまた、マトリックス分解酵素の存在および活性によって影響されるので、細胞内FACSによるMMP−3/ストロメライシン−1の発現も測定した(図21)。MMP−3は、コラーゲンおよびエラスチン、ならびに他の細胞外マトリックス成分を分解し得る重要な酵素である。エクオールおよび17β−エストラジオールの両方が、MMP−3タンパク質発現を減少させた。しかし、エクオールは、ビヒクルと比較して、MMP−3の発現を3.6分の1に減少させ、17β−エストラジオールは2.3分の1に減少させた。このことは、エクオールが、マトリックス分解酵素を阻害し、次にコラーゲンおよびエラスチンの発現を増強するための有効な因子であることを示す。エラスチンは、しわを防止および処置するために良好な皮膚の健康状態を維持する際に、コラーゲンと同様に重要な細胞外マトリックス分子であるので、FACS分析において17β−エストラジオールに対してエクオールを試験した。3−Dヒト皮膚線維芽細胞培養物において、エクオールは、ビヒクルレベルに対して2.2倍エラスチンを顕著に刺激する一方、17β−エストラジオールは、コントロールに対して1.8倍エラスチン産生を刺激した(図22)。
【0134】
従って、エクオールは、I型コラーゲン、III型コラーゲン、およびエラスチンのタンパク質発現を顕著に刺激する一方で、マトリックス分解酵素MMP−3を顕著に減少させる。図23に示されるように、17β−エストラジオールは、ビヒクルのレベルに対して、エラスチン分解エラスターゼ酵素の発現を1.9倍に顕著に増加させる。しかし、エクオールは、ビヒクルと比較して差はなく、このことは、エクオールが、エラスチンの分解を増加させることなくエラスチンタンパク質発現を増強することを実証する。同じ3−Dヒト皮膚線維芽細胞培養物のさらなるFACS分析を、ヨウ化プロピジウム(PI)(蛍光DNA色素)で細胞を染色することによって実施した。PI染色細胞を介したFACS分析から、アポトーシス(プログラム細胞死と関係する)を起こしている細胞の割合、ならびに細胞周期のS期およびG2M期の周期に入っている(cycling)ヒト皮膚線維芽細胞の割合を、異なるマーカーによって検出することが可能である。図24は、3−D培養物中で発現されたアポトーシス細胞の割合についての細胞周期分析を示す。ビヒクルと比較して、処置(エクオールまたは17β−エストラジオール)の間で顕著な差は存在しない。このことは、10nMのエクオールまたは17β−エストラジオールは、アポトーシスに対して顕著な効果を有さないことを実証した。しかし、細胞周期のS期およびG2M期の周期に入っているヒト皮膚線維芽細胞の割合は、17β−エストラジオールではなくエクオールが、線維芽細胞を顕著に刺激してビヒクルと比較して1.5倍増殖させることを示す(図25)。このデータのセットは、エクオールがヒト皮膚線維芽細胞を刺激して増殖させ、このことは同じヒト皮膚線維芽細胞におけるI型コラーゲン、およびIII型コラーゲン、ならびにエラスチンのタンパク質発現の増加と一致することを実証する。さらに、これらの知見は、エクオールの適用に続くヒト皮膚線維芽細胞中のコラーゲン沈着の倍化と対応する。
【0135】
(実施例11)
これは、皮膚の尾の温度の調節におけるエクオールの効果の実施例である。このことは、成体雄ラットに5日間連続して3mgのエクオールを注射し、そして処置の終わりに皮膚の尾の温度を定量することによって試験した。この実験において、げっ歯動物の皮膚の尾の温度を、センサー/無線遠隔測定によって皮膚温度を定量することで決定した。雄のLong−Evansラットを、Charles Rivers Laboratoriesから50日齢で購入した。この動物を非常に低いイソフラボンレベル(餌食1gあたり10〜15ppmのイソフラボン)を含む餌食のもとに置き、実験の間中この餌食および水に自由に接近できるようにした。約130日齢において、受容雌と交配させることによって、性的活性についてこれらの雄ラットを観察した。この研究において使用した全ての雄は、交配によって性的に活性であり、受容雌を受精させて妊娠させ、その後正常なサイズの子が生まれた。
【0136】
約160日齢において、雄ラットを体重によって合わせ、コントロール処置群またはエクオール処置群のいずれかに配置した。この時点において、ラットを、その動物が処理されるのに慣れるように、1日につき5〜10分間処理した。処理は、実験職員の上向きの前腕表面にラットを配置することからなった。この処理プロトコルを、約2週間の各日か、またはその動物が174日齢に達するまで続けた。175日齢において、前のようにそのラットを処理したが、1インチ幅の外科手術用テープを動物の尾の基部から約1インチの尾の周りに配置し、温度センサー/トランスポンダーの配置をまねた。この処理/テープのプロトコルを、175日齢〜180日齢で毎日行った。
【0137】
175日齢において、各動物に0.1ccの皮下注射を行った。この注射は、頚部のうなじにおける、ビヒクル(DMSO)または3mgのエクオール溶液のいずれかの注射であった。この時点で動物は、約700gの重量であり、従って、用量は、1日につき約4.3mg/kgのエクオールであった。処置注射は、5日間連続して行った。
【0138】
処置注射の5日目(または180日齢)において、尾の皮膚温度を、その動物の尾の基部にテープでくくった電子センサー/トランスポンダーによって定量した。センサー/トランスポンダーを尾にテープでくくった30秒後に、遠隔測定によって皮膚温度を記録した(±0.1℃)。2つの処置群の全ての動物に対して皮膚の尾の温度を記録する際に、同じセンサー/トランスポンダーを使用した。エクオールで処置したラットは、コントロールラットと比較して、皮膚温度が1.5℃低かった(図26)。コントロール群、n=5;エクオール群、n=4、p<0.025。この知見は、エクオールが、閉経周辺期の症状または閉経期後の女性に関連する顔面潮紅を処置するために使用され得ることを実証する。
【0139】
(実施例12)
この実施例は、FACS分析実験においてと同じように、10nMエクオールまたは10nM 17β−エストラジオールでインビトロで処置したヒト皮膚単層線維芽細胞からI型コラーゲンC−ペプチドを測定することによって、皮膚コラーゲンの沈着に対するエクオールの効果を実証する。10nMエクオールまたは10nM 17β−エストラジオールが組織培養物に添加された場合、細胞毒性はなかった。10nMのエクオールでの処置は、ビヒクルと比較して1〜8倍コラーゲン沈着を顕著に刺激するが(図27)、17β−エストラジオール処置は、アスコルビン酸処置で見出されたものと類似していた。この実施例は、10nMエクオールが、ヒト皮膚線維芽細胞によるコラーゲン沈着を顕著に刺激するということを実証する。
【0140】
(実施例13)
これは、眼球刺激および皮膚刺激を引き起こす可能性を予測するためのIrritection(登録商標)アッセイ系を用いて評価した、ビヒクル(エタノール)、エクオール−ラセミ、または99% S−エクオールの効果の実施例である。この目的を達成するために、標準的な容量依存性用量応答研究を、眼球および皮膚の刺激試験方法を用いて実施した。独自の眼球および皮膚の刺激アッセイは、標準化した定量的なインビトロの急性の眼球および皮膚の刺激試験であり、この試験は、化学物質および化学的処方物の皮膚刺激の急性の眼球およ皮膚の刺激を予測するために関連する高分子の変化を利用する。この眼球および皮膚の刺激アッセイ方法は、種々の容量または濃度の複数のサンプルを評価し、そして再現性の高い結果を提供するために簡単に使用され得る。従って、これらの試験は、未処理の材料の選択、処方の開発、および最終生成物の選択の全ての段階を容易にする非常に有用なスクリーニングの道具として役立つ。
【0141】
図28において概略的に示されている眼球の刺激アッセイは、インビトロのドレイズ試験方法を越える顕著な利点を提供する。ドレイズの眼刺激アッセイは、同じ標本を分析している異なる実験室から得られた結果が大きく変動するので、批判されている。
【0142】
図29において概略的に示されている皮膚の刺激アッセイは、化学物質は、標的の生体分子および高分子構造において測定可能な変化を促進するという原理に基づいている。先行する研究は、このインビトロアッセイにおいて誘導されるタンパク質分解および分離のプロセスが、これらの型の刺激が皮膚に適用された場合に生じる効果を模倣するということを明確に実証している。結果的に、このインビトロ試験は、化学物質および処方物のインビボの毒性効果を予測するために使用され得る。
【0143】
生理学的緩衝化食塩水(PBS)ビヒクル中の4%(v/v)エタノール、ビヒクル中の4%(w/v)エクオール−ラセミ、およびビヒクル中の4%(w/v)S−エクオール(99%純度)での分析の結果を、以下に示す。この研究の結果は、ビヒクルのサンプルは、境界線の最小/穏やかな眼球刺激(IDEスコアは12.6)として分類されることを示す。類似の容量依存性用量応答研究を、皮膚の刺激試験方法を用いて実施した。この結果は、サンプルを、0.49のHIEスコアを有する非刺激性であると予測することを実証した。表7および表8は、ビヒクルに対する結果の要約を提示する。
【0144】
【表7】
【0145】
【表8】
標準的な容量依存性用量応答研究を、眼球刺激試験方法を用いて実施した。以下の容量(25μl、50μl、75μl、100μlおよび125μl)のストレートの(neat)サンプルを分析のために適用した。研究の結果は、エクオールラセミのサンプルが14.2のIDEスコアを有して穏やかな眼球刺激として分類されたことを示す。類似の容量依存性用量応答研究を、皮膚の刺激試験方法を用いて実施した。この結果は、サンプルを0.35のHIEスコアを有して非刺激性であると予測することを実証した。表9および表10は、ビヒクル中の4%エクオール−ラセミについての結果の要約を提示する。
【0146】
【表9】
【0147】
【表10】
表11および表12は、ビヒクル中の4% S−エクオール(w/v)についての結果の要約を提示する。標準的な容量依存性用量応答研究を、眼球刺激試験方法を用いて実施した。以下の容量(25μl、50μl、75μl、100μlおよび125μl)のストレートのサンプルを分析のために適用した。研究の結果は、s−エクオールのサンプルが16.4のIDEスコアを有して穏やかな眼球刺激として分類されたことを示した。類似の容量依存性用量応答研究を、皮膚の刺激試験方法を用いて実施した。この結果は、サンプルが0.15のHIEスコアを有して非刺激性であると予測することを実証した。未処理の試験物質:エタノールビヒクル、エクオール−ラセミおよびS−エクオールを、4パーセントで眼球および皮膚の刺激試験で分析した。ビヒクルの結果は、エクオールの結果(ラセミエクオールまたはS−エクオール)と類似の値を示すので、このことは、エクオールサンプルにおいてみられる大部分の刺激効果は、ビヒクルに起因し得ることを実証する。従って、眼球および皮膚の適用について、ラセミエクオールおよびS−エクオールは、皮膚/化粧品の関連性に対する結果に基づいて、非刺激性と分類される。
【0148】
【表11】
【0149】
【表12】
本明細書中で提示されるインビボおよびインビトロの実施例は、エクオールが、皮膚、毛および前立腺において5α−DHTに結合し、そのホルモンの影響を生物学的に不活化する能力、ならびに皮膚細胞が増殖してI型コラーゲン、III型コラーゲン、およびエラスチンのタンパク質発現を生じさせるために皮膚細胞を刺激する能力を有することを実証し、これらの全てが、皮膚/毛の健康状態の改善および皮膚/毛のアンドロゲン依存性疾患/障害の処置適用に寄与する。
【0150】
本発明の種々の実施形態が詳細に記載されているが、本発明のさらなる改変および適応が当業者に見出されることは明らかである。そのような改変および適応は、本発明の趣旨および範囲内であることは、明白に理解される。
【技術分野】
【0001】
(政府の権利)
本発明は、国立保健研究所(National Institute of Health)(NIH)に与えられた助成金番号NS39951、および合衆国農務省(U.S.Dept.of Agriculture)(USDA)に与えられた助成金番号NRI 2002−00798およびNRI 2004−01811のもと政府の支持によってなされた。
【0002】
政府は、本発明において特定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
本発明は、エクオール(equol)、ならびにアンドロゲンによって媒介される生理学的状態および病態生理学的状態を処置および予防するための治療化合物としての、その作用の機構および使用に関する。
【0004】
近年、植物性エストロゲン(phytoestrogen)は、加齢関連疾患(例えば、心臓血管疾患および骨粗鬆症)およびホルモン依存性癌(すなわち、乳癌および前立腺癌)に対する植物性エストロゲンの潜在的な保護効果に起因して、研究上の注目が高まってきている。植物性エストロゲンには、以下の3つの主要な分類が存在する:1)イソフラボン(主に大豆に由来する)、2)リグナン(アマニにおいて大量に見出される)、および3)クメスタン(coumestan)(アルファルファのような萌芽植物に由来する)。これらの3種の主要な分類のうち、イソフラボンのヒトによる消費は、そのアベイラビリティーと大豆を含む食品の多様性とに起因して最も大きな影響を有する。イソフラボンのうちで、ゲニステインおよびダイゼインは、最も強力なエストロゲンホルモン活性を発揮すると考えられ、従って、大部分の注目が、これらの分子に向けられている(非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3)。しかし、これらのイソフラボン分子は、大豆食物中におけるそれらの生物学的に活性な形態と同程度に高いレベルでは発揮されず、むしろ前駆体の形態において高い存在量で存在する。例えば、ゲニステインの前駆体であるゲニスチンは、上記分子の炭水化物部分を含むグリコシド形態である。さらに、マロニルグリコシド形態およびアセチルグリコシド形態もまた見出される。これらの結合体は、腸の細菌によって胃腸(GI)管において代謝され、炭水化物部分を加水分解して生物学的に活性な植物性エストロゲンであるゲニステインになる。同じ代謝工程は、アグリコンダイゼインについても起こり、これはグリコシド形態のダイゼインから変換される。次いでダイゼインは、「エクオール産生」哺乳動物においてさらに代謝されてエクオールになり、その結果エクオールはエクオール産生個体の血漿で見出される。エクオールは、大豆が消費されない限り、大部分の健康なヒト成人の尿には通常は存在しない。インビボのエクオールの形成は、もっぱら腸の微生物叢に依存する。このことは、微生物を含まず、かつ病原体を含まない食物を与えられた動物(germ−free and phytoestrogen−free fed animal)は、大豆を与えられたときにエクオールを排泄しないという知見と、腸の微生物叢は、乳児(neonate)ではまだ発達していないという事実に起因して、ヒト新生児または誕生からもっぱら大豆食物を与えられた4ヶ月齢の乳児(infant)の血漿および尿においてエクオールが見出されないという知見とから証明される(非特許文献4を参照のこと)。
【0005】
イソフラボンのフェノール環構造は、これらの化合物をエストロゲンレセプター(ER)およびエストロゲン模倣体(mimic estrogen)に結合させることが可能である。ゲニステインおよびダイゼインはERに結合するが、エストラジオールと比較して親和性は低く、ERαよりもERβに対する親和性が高い。従って、イソフラボンは、ゲニステインおよび代謝産物のS−エクオールと同様に、身体の全体にわたる種々の組織部位において天然の選択的エストロゲンレセプター調節因子(SERM)のように作用する。いくつかの組織において、植物性エストロゲンは、エストロゲンアゴニストとして作用するという証拠が存在し、それであるがゆえに、植物性エストロゲンは、タモキシフェンまたはラロキシフェンのアンタゴニスト特性に相当するアンタゴニスト特性を示す。ここでSERM活性は、性ホルモンおよび性に依存するようである。
【0006】
科学的文献の大部分が大豆またはクローバー中の天然のイソフラボンに焦点を当てている一方で、腸で誘導されるそれらの代謝物質の作用または効果についての報告はほとんどない。エクオール(7−ヒドロキシ−3(4’ヒドロキシフェニル)−クロマン)は、植物性エストロゲンのダイゼインの主要な代謝産物を表し、これは、大豆および大豆食物において豊富に見出される主要なイソフラボンのうちの1つである。しかし、エクオールは、植物性エストロゲンではない。なぜならば、エクオールは、植物の天然の構成要素ではないからである。エクオールは、いずれの植物ベースの生成物においても天然には存在しない。むしろ、エクオールは、非ステロイド性のイソフラボンであって、これはもっぱら腸の細菌代謝の生成物である。しかし、約30%〜40%のヒトしか、大豆イソフラボンをエクオールに変換するのに必要な微生物叢を有さない。
【0007】
エクオールを用いた以前の研究から、エクオールは、いくつかの弱いエストロゲン特性を有し、性ホルモン結合グロブリンおよびα−フェトプロテインに結合し、そして抗酸化活性を有することが同定されている。エクオールのS−鏡像異性体(S−エクオール)は、大豆を消費する「エクオール産生」哺乳動物の尿および血漿において見出される限定的なエクオール形態であり、ヒトの腸内細菌によって作製される唯一のエクオール鏡像異性体である。R−鏡像異性体とS−鏡像異性体とは立体構造的に異なっており、このことは後にこれらの生物学的活性に影響する。例えば、エクオールのS−鏡像異性体のみが、ヒトにおいて報告された通常の循環エクオールレベルに対して十分な親和性でエストロゲンレセプター(ER)サブタイプを結合する。
【0008】
前立腺は、その発生および成長に関してアンドロゲンホルモン作用に依存し、ヒトの良性の前立腺肥大(BPH)の発症は、加齢プロセスの間の精巣アンドロゲンの組み合わせを明らかに必要とする。しかし、テストステロンは、前立腺の成長の原因である主要なアンドロゲンではない。主要な前立腺アンドロゲンは、5α−ジヒドロテストステロン(5α−DHT)であり、このことは、5α−レダクターゼインヒビターによる5α−DHTの減少に関する、現在の前立腺癌の処置によって証明された。ヒトBPHにおいては上昇していないが、前立腺の5α−DHTレベルは、血漿のテストステロン濃度が減少するにもかかわらず、加齢に対して一定であった。テストステロンは、前立腺の間質細胞および基底細胞において5α−レダクターゼによって5α−DHTに変換される。5α−DHTは、前立腺の発達およびBPHの病原の主な原因である。5α−レダクターゼの阻害は、前立腺の大きさを20%〜30%に減少させる。腺組織におけるこの減少は、アポトーシスの誘導によって達成され、腺の萎縮によって組織学的に明らかにされる。5α−レダクターゼは、2種のアイソファーム(1型および2型)として存在し、前立腺は2型アイソフォームを優先的に発現し、そして肝臓および皮膚は1型アイソフォームを優先的に発現する。患者は、1型ではなく2型の5α−レダクターゼを欠損していることが同定された。2型の5α−レダクターゼのヌル変異(null−mutation)を有する遺伝子標的ノックアウトマウスは、5α−レダクターゼ欠損を有するヒトにおいてみられる表現型と同様の表現型を実証した。1型の5α−レダクターゼノックアウトの雄マウスは、生殖機能に関して表現型的に正常である。5α−レダクターゼの酵素活性または免疫組織化学的検出は、精巣上体、精巣、導帯、および体の海綿体組織(corporal cavernosal tissue)のような他の尿生殖器組織においては注目されている。
【0009】
量的に、女性は、性によるより大きな副腎皮質応答性に起因して、エストロゲンよりも多くの量のアンドロゲンを分泌する。アンドロゲンとして一般に分類される主要な循環ステロイドとしては、血清濃度の高い順にデヒドロエピアンドロステロンスルフェート(DHEAS)、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)(副腎皮質が起源である)、アンドロステンジオン(A)、テストステロン(T)、および5α−DHTが挙げられ、後ろの2種のみがアンドロゲンレセプターに有効な程度で結合する。他の3種のステロイドは、アンドロゲンの前駆物質としてよく考慮されている。5α−DHTは、テストステロン代謝産物の主な末梢産物である。テストステロンは、その両方の遊離形態で循環し、アルブミンおよび性ステロイドホルモン結合グロブリン(SHBG)を含むタンパク質に結合し、そのレベルは、遊離のテストステロン濃度の重要な決定因子である。閉経後の卵巣は、アンドロゲン分泌器官であり、テストステロンのレベルは、閉経期の過渡期または閉経期の存在によって直接は影響されない。
【0010】
一部の研究の業績は、アンドロゲン依存性疾患(例えば、多毛症、アンドロゲン性脱毛症、良性前立腺肥大(BPH)および前立腺癌)を処置するためのステロイド化合物の開発に焦点を当てている。DHTは、遺伝的にステロイド5α−レダクターゼ酵素を欠損している男性の臨床的評価を通じて、これらの疾患の進行の原因となる因子として関係があるとされている。このような研究の結果として、この酵素の阻害は、新規の抗アンドロゲン薬物の設計および合成についての薬理学的ストラテジーになっている。しかし、5α−レダクターゼの阻害が、この系に対して、5α−レダクターゼインヒビターを使用した従来の処置の報告された副作用(例えば、性欲の低下、勃起不全および射精障害)から起こる禁忌によって証明されているような有害な影響を有するか否かは明らかではない。DHT効果の阻害を標的にする異なるストラテジーの開発は、アンドロゲン媒介性状態の治療において大きな利点であり得る。
【0011】
エストロゲン作用に関係する場合のエクオールの薬理学の理解に関する最近の利益にもかかわらず、エクオールの強力な抗アンドロゲン効果を示す本発明者らの研究は、独特かつ新規なものであり、そしてアンドロゲン関連状態を防止または処置するための新規のアプローチを切り開く。5α−DHTの結合または隔離は、5α−DHT感受性組織に対するその効果を阻害するための手段を提供する。5α−DHTについて特異的な公知のリガンドはないが、このような因子は、アンドロゲンレセプターを直接標的にするか、またはアンドロゲン合成に関連する酵素を標的にする非差別的な化合物を超える明確な利点を有する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Knightら,「Obstet Gyneco」1996年,第187巻:897−904
【非特許文献2】Setchell,KDR.「Am J Clin Nutr」1998年,第129巻:1333S−1346S
【非特許文献3】Kurzerら,「Annu Rev Nutr」1997年,第17巻:353−381
【非特許文献4】Setchellら,「The Lancet」1997年,第350巻:23−27
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
(発明の簡単な要旨)
本発明は、アンドロゲンホルモン作用およびエストロゲンホルモン作用を同時媒介(co−mediate)する方法に関する。この方法は、遊離の5α−ジヒドロテストステロンに結合して、それによって5α−ジヒドロテストステロンとアンドロゲンレセプターとの結合を阻害するのに十分な量、およびエストロゲンレセプターサブタイプに結合するのに十分な量でS−エクオールを含む鏡像異性エクオールを投与することによって、ヒトおよび非ヒト種において、1種以上の皮膚の生理学的な状態/障害および病態生理学的な状態/障害を改善する。
【0014】
本発明はまた、アンドロゲンホルモン作用を媒介する方法に関する。この方法は、遊離の5α−ジヒドロテストステロンに結合して、5α−ジヒドロテストステロンとアンドロゲンレセプターとの結合を阻害するのに十分な量でR−エクオールを含む鏡像異性エクオールを投与することによって、ヒトおよび非ヒト種において、1種以上の皮膚の生理学的な状態/障害および病態生理学的な状態/障害を改善する。
【0015】
本発明はさらに、アンドロゲンホルモン作用によって媒介されるアンドロゲン関連疾患を処置および防止する方法に関する。この方法は、遊離の5α−ジヒドロテストステロンに結合して、それによって5α−ジヒドロテストステロンとアンドロゲンレセプターとの結合を阻害するのに十分な量、およびエストロゲンレセプターサブタイプに結合するのに十分な量でS−エクオールを含む鏡像異性エクオールを投与することによる方法である。
【0016】
本発明はまた、アンドロゲンホルモン作用によって媒介されるアンドロゲン関連疾患を処置および防止する方法に関し得る。この方法は、遊離の5α−ジヒドロテストステロンに結合して、5α−ジヒドロテストステロンとアンドロゲンレセプターとの結合を阻害するのに十分な量でR−エクオールを含む鏡像異性エクオールを投与することによる方法である。
【0017】
本発明はまた、S−エクオールを含むエクオールの鏡像異性体の使用に関する。この使用は、遊離の5α−ジヒドロテストステロンに結合して5α−ジヒドロテストステロンとアンドロゲンレセプターとの結合を阻害するのに十分な量、およびエストロゲンレセプターサブタイプに結合するのに十分な量でS−エクオールを含む鏡像異性エクオールを投与することによって、アンドロゲンホルモン作用によって媒介されるアンドロゲン関連疾患を処置および防止するためのものである。
【0018】
本発明はまた、ヒトおよび非ヒト種において、DHTとエストロゲンレセプターとの両方によって媒介される皮膚の生理学的状態/障害および病態生理学的状態/障害の1種以上の個人化された処置を提供する方法に関する。この方法は、
1)患者の1種以上の疾患状態(state)または状態(condition)を評価する工程;
2)上記患者のエクオール産生状態を評価する工程;
3)処置の最適に有益なクールを決定する工程であって、このクールは、a)投与の様式;b)用量;c)投与間隔、およびd)上記エクオール用量の鏡像異性体比、からなる群より選択される、工程、を包含する。
【0019】
本発明の方法および組成物は、以下からなる群より選択される種々の皮膚の状態/疾患の処置および改善に有用である:皮膚の完全性、コラーゲン産生、エラスチン産生、エラスターゼ、皮膚の厚さ、皮膚中の血流、皮膚のトルゴール、皮膚の含水量、膣の乾燥、マトリックスメタロプロテアーゼによるコラーゲンおよびエラスチンの分解の防止、皮膚のしわの修復および防止、改良された皮膚の外観のためのグリコアミノグリカンおよびヒアルロン酸の増強、創傷治癒、皮膚の瘢痕の改良、皮脂腺機能を改良することによる油性皮膚の低下、皮膚の加齢斑および皮膚の下降感、ざ瘡、男性型禿頭症および女性型禿頭症、多毛症、頭皮、顔面および身体の毛の健康状態および成長、アポクリン(汗)腺機能、皮膚の炎症、皮膚の免疫機能、汗孔のサイズ、ステロイドホルモン合成/ホルモン作用における皮膚の温度ならびに皮膚および毛の異常、アンドロゲン効果および/またはエストロゲン効果に関するステロイドの代謝および結合ステロイドレセプター。
例えば、本願発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
アンドロゲンホルモン作用およびエストロゲンホルモン作用を同時媒介する方法であって、該方法は、遊離の5α−ジヒドロテストステロンに結合して5α−ジヒドロテストステロンとアンドロゲンレセプターとの結合を阻害するのに十分な量、およびエストロゲンレセプターサブタイプに結合するのに十分な量でS−エクオールを含む鏡像異性エクオールを投与することによって、ヒトおよび非ヒト種において、1種以上の皮膚の生理学的な状態/障害および病態生理学的な状態/障害を改善する、方法。
(項目2)
R−エクオールをさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目3)
アンドロゲンホルモン作用を媒介する方法であって、該方法は、遊離の5α−ジヒドロテストステロンに結合して5α−ジヒドロテストステロンとアンドロゲンレセプターとの結合を阻害するのに十分な量でR−エクオールを含む鏡像異性エクオールを投与することによって、ヒトおよび非ヒト種において、1種以上の皮膚の生理学的な状態/障害および病態生理学的な状態/障害を改善する、方法。
(項目4)
前記投与されるエクオールの量が、エストロゲンレセプターを結合するのに十分である、項目3に記載の方法。
(項目5)
前記皮膚の状態/障害が、皮膚の完全性、コラーゲン産生、エラスチン産生、エラスターゼ、皮膚の厚さ、皮膚中の血流、皮膚のトルゴール、皮膚の含水量、膣の乾燥、マトリックスメタロプロテアーゼによるコラーゲンおよびエラスチンの分解の防止、皮膚のしわの修復および防止、改良された皮膚の外観のためのグリコアミノグリカンおよびヒアルロン酸の増強、創傷治癒、皮膚の瘢痕の改良、皮脂腺機能を改良することによる油性皮膚の低下、皮膚の加齢斑および皮膚の下降感、ざ瘡、男性型禿頭症および女性型禿頭症、多毛症、頭皮、顔面および身体の毛の健康状態および成長、アポクリン(汗)腺機能、皮膚の炎症、皮膚の免疫機能、汗孔のサイズ、ステロイドホルモン合成/ホルモン作用における皮膚の温度ならびに皮膚および毛の異常、アンドロゲン効果および/またはエストロゲン効果に関するステロイドの代謝および結合ステロイドレセプターからなる群より選択される、項目1または3に記載の方法。
(項目6)
前記投与する方法が、組織部位における前記エクオールの投与を包含する、項目1または3に記載の方法。
(項目7)
前記エクオールを投与する工程が、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)を減少し、そして前記皮膚におけるコラーゲンの分解を防止する、項目1または3に記載の方法。
(項目8)
前記エクオールを投与する工程が、前記皮膚における血流および血管内皮増殖因子を増強する、項目1または3に記載の方法。
(項目9)
前記エクオールを投与する工程が、頭髪の小胞の健康状態、頭髪の成長を改良し、そして非禿頭の個体および禿頭の個体において頭髪の健康状態および頭髪の色を増強する、項目1または3に記載の方法。
(項目10)
前記エクオールを投与する工程が、(一般に)アポクリン腺、ならびに腋窩領域および鼡径部領域のような身体の有毛領域に関連するアポクリン腺からの発汗または汗の量を減少させる、項目1または3に記載の方法。
(項目11)
前記エクオールを投与する工程が、個体の皮膚を基質と接触させる工程であって、該基質は、該基質に含まれる有効量のエクオールを含有する、工程を包含する、項目1または3に記載の方法。
(項目12)
前記エクオールを投与する工程が、女性の顔面潮紅のような皮膚の温度を低下させる、項目1または3に記載の方法。
(項目13)
前記エクオールを投与する工程が、悪性黒色腫のような皮膚の癌性状態を改良する、項目1または3に記載の方法。
(項目14)
前記エクオールが、体重1kgにつき少なくとも0.01mgの鏡像異性エクオールを含有する経口組成物として投与される、項目1または3に記載の方法。
(項目15)
前記エクオールが、少なくとも0.01%の鏡像異性エクオール、および約10%までの鏡像異性エクオールを含有する局所組成物として投与される、項目1または3に記載の方法。
(項目16)
前記エクオールが、エクオールを含有する生成物形態を介して投与され、該生成物形態は、ローション、スプレー溶液、パッド、包帯、または経皮パッチからなる群より選択される、項目1または3に記載の方法。
(項目17)
アンドロゲンホルモン作用によって媒介されるアンドロゲン関連疾患を処置および防止する方法であって、該方法は、遊離の5α−ジヒドロテストステロンに結合して5α−ジヒドロテストステロンとアンドロゲンレセプターとの結合を阻害するのに十分な量、およびエストロゲンレセプターサブタイプに結合するのに十分な量でS−エクオールを含む鏡像異性エクオールを投与することによる、方法。
(項目18)
アンドロゲンホルモン作用によって媒介されるアンドロゲン関連疾患を処置および防止する方法であって、該方法は、遊離の5α−ジヒドロテストステロンに結合して5α−ジヒドロテストステロンとアンドロゲンレセプターとの結合を阻害するのに十分な量でR−エクオールを含む鏡像異性エクオールを投与することによる、方法。
(項目19)
S−エクオールを含むエクオールの鏡像異性体の使用であって、該使用は、遊離の5α−ジヒドロテストステロンに結合して5α−ジヒドロテストステロンとアンドロゲンレセプターとの結合を阻害するのに十分な量、およびエストロゲンレセプターサブタイプに結合するのに十分な量でS−エクオールを含む鏡像異性エクオールを投与することによって、アンドロゲンホルモン作用によって媒介されるアンドロゲン関連疾患を処置および防止するためのものである、使用。
(項目20)
ヒトおよび非ヒト種において、DHTとエストロゲンレセプターとの両方によって媒介される皮膚の生理学的状態/障害および病態生理学的状態/障害の1種以上の個人化された処置を提供する方法であって、該方法は、
1)患者の1種以上の疾患状態または状態を評価する工程;
2)該患者のエクオール産生状態を評価する工程;
3)処置の最適に有益なクールを決定する工程であって、該クールは、以下a)〜d):
a)投与の様式;
b)用量;
c)投与間隔、および
d)該エクオール用量の鏡像異性体比
からなる群より選択される、工程、
を包含する、方法。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、S−エクオールおよびR−エクオールの鏡像異性体の化学構造を示す。
【図2】図2は、健康な成人にR−エクオールを経口投与した後の血漿におけるR−エクオールの出現/消失のプロットを示す。
【図3】図3は、[3H]5α−DHT+エクオール([3H]5α−DHT単独ではない)のはっきりしたピークを示す。
【図4】図4Aは、前立腺とインキュベートした[3H]5α−DHT+エクオールの2つのはっきりしたピークを示す(A)。図4Bは、前立腺とインキュベートした[3H]5α−DHTに存在する単一のピークのみを示す(B)。
【図5】図5は、エクオールの[3H]5α−DHTへの特異的結合を示す。
【図6】図6は、Phyto−600餌食またはPhyto−Free餌食のいずれかを与えた雄ラット(断食していない)からの血清グルコースレベルを示す。
【図7】図7は、Phyto−600餌食またはPhyto−Free餌食のいずれかを与えた雄ラットの甲状腺(T3)血清レベルを示す。
【図8】図8は、エクオールまたはビヒクルの注射を受けた後に、28日間餌食を与えた3つの群のラットからの精巣重量を示す。
【図9−1】図9Aは、毛がある皮膚におけるエストロゲンレセプターβ(ER−β)、5α−レダクターゼ酵素(5α−R)およびアンドロゲンレセプター(AR)の分布を示す。
【図9−2】図9Bは、ヒト皮膚の毛包球におけるER−β、5α−RおよびARの分布を示す。図9Cは、ヒト皮膚の皮脂腺におけるER−β、5α−RおよびARの分布を示す。
【図10】図10は、組織培養培地に添加したコントロール物質またはエクオール(ラセミ混合物)とのインキュベーションの後の、皮膚でのプロコラーゲン合成を示す。
【図11】図11は、組織培養培地に添加したコントロール物質またはエクオール(ラセミ混合物)とのインキュベーションの後の、表皮+真皮での平均したプロコラーゲン合成を示す。
【図12】図12は、組織培養培地に添加したコントロール物質またはエクオール(ラセミ混合物)とのインキュベーションの後の、真皮でのプロコラーゲン合成を示す。
【図13】図13は、ヒト皮膚の単層線維芽細胞を、培養培地に添加した0.01%、0.001%、および0.0001%のエクオール、0.01%、0.001%、および0.0001% 17β−エストラジオール、ビヒクル、またはアスコルビン酸とインキュベーションした後に、MTTアッセイによって測定した代謝活性を示す。
【図14】図14は、ヒト皮膚の単層線維芽細胞を、培養培地に添加した0.01%、0.001%、および0.0001%のエクオール、0.01%、0.001%、および0.0001% 17β−エストラジオール、ビヒクル、またはアスコルビン酸とインキュベーションした後に、I型コラーゲンC末端ペプチドELISAによって測定したコラーゲン沈着を示す。
【図15】図15は、ヒト皮膚の単層線維芽細胞を、培養培地に添加したビヒクルまたは0.001%のエクオールとインキュベーションした後に、MTTアッセイによって測定した代謝活性を示す。横線は、未処理のコントロール培養物によって決定された基線を示す。
【図16】図16は、ヒト皮膚の単層線維芽細胞を、組織培養培地に添加したトランスキュトールビヒクル、0.001%のエクオール、またはアスコルビン酸とインキュベーションした後に、I型コラーゲンC末端ペプチドELISAによって測定したコラーゲン沈着を示す。横線は、未処理のコントロール培養物によって決定された基線を示す。
【図17】図17は、ヒト皮膚の単層線維芽細胞を、組織培養培地に添加した未処理培地、アスコルビン酸、0.001%エクオール、0.001% 5α−DHT、または0.001%エクオールと0.001%5α−DHTとの組み合わせとインキュベーションした後に、MTTアッセイによって測定した代謝活性を示す。横点線は、未処理のコントロール培養物によって決定された基線を示す。
【図18】図18は、組織培養培地に添加したビヒクル、10nM、1nMまたは0.1nMの5α−DHT、100nM、10nM、または1nMのエクオール、あるいは5α−DHTとエクオールとの組み合わせとインキュベーションした後に、前立腺癌細胞によって分泌される前立腺特異的抗原(PSA)のレベルを示す。
【図19】図19は、組織培養培地に添加したビヒクル、10nMエクオールまたは10nM 17βエストラジオールとインキュベーションした後の、ヒト皮膚単層線維芽細胞の3次元(3−D)培養物におけるI型コラーゲンタンパク質発現の蛍光細胞分析分離装置(FACS)分析を示す。
【図20】図20は、組織培養培地に添加したビヒクル、10nMエクオールまたは10nM 17βエストラジオールとインキュベーションした後の、ヒト皮膚単層線維芽細胞の3−D培養物におけるIII型コラーゲンタンパク質発現のFACS分析を示す。
【図21】図21は、組織培養培地に添加したビヒクル、10nMエクオールまたは10nM 17βエストラジオールとインキュベーションした後の、ヒト皮膚単層線維芽細胞の3−D培養物におけるマトリックスメタロプロテアーゼ−3(MMP−3)タンパク質発現のFACS分析を示す。
【図22】図22は、組織培養培地に添加したビヒクル、10nMエクオールまたは10nM 17βエストラジオールとインキュベーションした後の、ヒト皮膚単層線維芽細胞の3−D培養物におけるエラスチンのタンパク質発現のFACS分析を示す。
【図23】図23は、組織培養培地に添加したビヒクル、10nMエクオールまたは10nM 17βエストラジオールとインキュベーションした後の、ヒト皮膚単層線維芽細胞の3−D培養物におけるエラスターゼのタンパク質発現のFACS分析を示す。
【図24】図24は、組織培養培地に添加したビヒクル、10nMエクオールまたは10nM 17β−エストラジオールとインキュベーションした後の、ヒト皮膚単層線維芽細胞の3−D培養物におけるFACSによるアポトーシスの細胞周期分析を示す。
【図25】図25は、組織培養培地に添加したビヒクル、10nMエクオールまたは10nM 17β−エストラジオールとインキュベーションした後の、ヒト皮膚単層線維芽細胞の3−D培養物におけるFACSによるS−G2M期の細胞周期にある細胞の細胞周期分析を示す。
【図26】図26は、ビヒクルまたはエクオールの注射を25日間連続して受けた後の、雄ラットの皮膚の尾の温度を示す。
【図27】図27は、組織培養培地に添加したビヒクル、10nMエクオール、10nM 17β−エストラジオール、またはアスコルビン酸とインキュベーションした後の、I型コラーゲンC末端プロペプチドELISAによって測定したヒト皮膚単層線維芽細胞のコラーゲン沈着の結果を示す。
【図28】図28は、ビヒクル(エタノール)、エクオールラセミまたはS−エクオールの刺激特性を試験するための眼球刺激モデルを示す。
【図29】図29は、ビヒクル(エタノール)、エクオールラセミまたはS−エクオールの刺激特性を試験するための皮膚刺激モデルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(発明の詳細な説明)
本明細書において使用される場合、用語「皮膚」は、ヒト個体または非ヒト個体の外皮を含む細胞の層、およびその構造の構成要素(例えば、毛、毛包、皮脂腺、アポクリン(汗)腺、指の爪および足指爪)をいう。さらに、用語「皮膚」は、本明細書において使用されう場合、隣接している皮膚から伸びる粘膜の組織(例えば、口と口腔、鼻と鼻道、眼と眼瞼、耳と外側の外耳道、ならびに肛門および尿生殖器の開口部の会陰と組織)を包含する。
【0022】
本明細書において使用される場合、用語「影響された領域(affected area)」は、治療分子または治療分子を含む化合物で処置されるべき皮膚の領域をいう。この影響された領域は、処置が要求される皮膚の状態または疾患の部位であり得る。いくつかの場合において、影響された領域は、個体の全ての皮膚を包含し得る。あるいは、影響された領域は、表面的(cometic)な性質の改良が要求される部位であり得、そして個体上の全ての皮膚をまた含み得る。
【0023】
本明細書において使用される場合、用語「全身の(systemic)」または「全身的に(systemically)」は、血流またはリンパ系を介して皮膚の影響された領域に到達する治療の投与の様式をいう。全身処置の例としては、経口栄養または経口摂取、静脈内ポンプ注入または皮下ポンプ注入、および筋肉注射、腹腔内注射、皮下(hypodermic)注射、または皮下(subdermic)注射を介した注射が挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
本明細書において使用される場合、用語「局所の(topical)」または「局所的に(topically)」は、皮膚の影響された領域に直接適用される投与の様式をいう。局所処置の例としては、クリーム、ローション、シャンプー、コンディショニングローション、スプレー、パッド、包帯、おむつ、プロイステンタオル(proistened towelette)、または経皮パッチの適用;およびロゼンジまたは坐剤の経皮注射または注入を介した局所投与が挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
本明細書において使用される場合、用語「皮膚のパラメータ」は、皮膚の健康状態の種々の指標をいう。これらの指標としては、コラーゲンおよびエラスチン産生のレベル、エラスターゼ、皮膚の厚さ、皮膚の血流、皮膚のトルゴールおよび含水量、マトリックスメタロプロテアーゼによるコラーゲンおよびエラスチンの分解の防止、皮膚にしわがないこと、正常な皮膚の外観のためのグリコアミノグリカンおよびヒアルロン酸の存在、皮膚の創傷が治癒する能力、正常な皮脂腺機能、皮膚の加齢斑または色素沈着機能不全(pigmentation dysfunction)がないこと、汗孔のサイズ、皮膚の温度、および毛および爪の正常な成長が挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
本明細書において使用される場合、用語「皮膚の完全性」は、皮膚が運動できるように伸びたり収縮したりする能力を皮膚に与える細胞外マトリックスにおける、コラーゲンおよびエラスチンの存在をいう。
【0027】
エクオール(7−ヒドロキシ−3(4’ヒドロキシフェニル)−クロマン)は、ダイジンおよびダイゼイン、大豆および大豆食物で豊富に見出されるイソフラボンの主要な代謝産物を表し、重要な生物学的に活性な因子である。植物性エストロゲンが豊富な餌食を与えられた動物(例えば、げっ歯動物)において、主要な循環イソフラボンはエクオールであり、全循環イソフラボンレベルの70〜90%の割合を占める。しかし、これはヒトでの事例ではない。
【0028】
エクオールは、大豆由来のダイジンのグリコシド結合体、およびメトキシ化イソフラボンのホルモノネチン(formononetin)、またはクローバーにおいて見出されるそのグリコシド結合体の加水分解によって形成される。一旦形成されると、エクオールは、代謝的に不活性であるようであり、さらなる生体内変化を受けることなく、肝臓においてII相代謝を貯蔵するか、またはわずかな程度のさらなる加水分解を受ける。ダイゼインおよびゲニステインと同様に、優性なII相反応は、グルクロン酸抱合(glucuronidation)、およびより少ない程度の硫酸化である。エクオールが尿に存在するのは大豆食物の摂取の作用であるというもともとの知見によると、約50%〜70%の成人ヒト集団は、大豆食物で毎日チャレンジされた場合でさえ、尿にエクオールを排泄しないことが観察された。このことに対する理由は、不明である。さらに、純粋なイソフラボン化合物が投与され、それによって食物マトリックスの任意の影響が除かれる場合でさえ、多くの人々は、ダイゼインをエクオールに変換しないことが示されている。この現象は、これらの2種の異なる集団を記載するために、ヒトが、「エクオール産生者(equol−producer)」または「非エクオール産生者(non−equol producer)」(または「微量エクオール産生者(poor equol−producer)」)であるという用語法をもたらした。
【0029】
カットオフ値は、これらの分類のいずれかに対して個体を評価して実験的に引き出された。10ng/mL(40nmol/L)未満の血漿エクオール濃度を有する人々は、「非エクオール産生者」と分類され得、10ng/mL(40nmol/L)を超えるレベルの場合、これが「エクオール産生者」を定義する。この差異はまた、尿のレベルにも由来し得、エクオール産生者は、1000nmol/Lを越えてエクオールを排泄する。エクオールの排泄は個体の間で変動性が高いが、エクオールを産生することができる個体と産生することができない個体との間には大きな境界が存在し、これは、反応を触媒する酵素反応速度論における前駆物質−生成物の関係と一致する。従って、尿のダイゼンとエクオールレベルとの間には、反比例関係(inverse relationship)が存在し、従って、有意な性による差は明確ではない。
【0030】
エクオールについての作用機構は、皮膚の健康状態および疾患における重要な分岐によって同定され、この作用機構は、皮膚および毛のアンドロゲンおよび/またはエストロゲン媒介性病理学を処置する際のエクオールに対する広範かつ重要な使用を示す。エクオールは、抗アンドロゲンレセプターまたはエストロゲンレセプターのアゴニストまたはアンタゴニストとして作用し得る。エクオールの抗アンドロゲン特性は、エクオールがアンドロゲンレセプター(AR)に結合しないが、むしろ高い親和性で5α−ジヒドロテストステロン(5α−DHT)に特異的に結合し、それによって5α−DHTがARに結合するのを妨げるという点で独特である。さらに、エクオールのR−鏡像異性体およびS−鏡像異性体の両方は、5α−DHTに特異的に結合し、インビボの生理学的プロセスにおいて5α−DHTをARから隔離し、5α−DHTの作用をブロックする。R−エクオールおよびS−エクオールを構成するラセミエクオール、およびR−エクオールまたはS−エクオール単独は、選択的に5α−DHTを結合する。
【0031】
哺乳動物において、2種の主要なアンドロゲン(テストステロン、およびその5α−還元型代謝産物である5α−DHT)が存在する。5α−DHTは、哺乳動物の身体において最も強力なアンドロゲンとして認識される。ヒトX染色体上に位置する1コピーの遺伝子によってコードされるARは、アンドロゲンの作用を特異的に媒介する。テストステロンおよび5α−DHTの両方がARに結合するが、テストステロンによってわずかにだけ影響を受ける特定の組織(すなわち、前立腺、毛包など)は、5α−DHTによって大きく影響される。さらに、5α−DHTは、多くの疾患および障害に関係している。エクオールは、特異的に5α−DHTに結合して5α−DHTの作用を妨げるので、皮膚および毛のアンドロゲン媒介性病理の処置におけるエクオールについての広範で重要な使用のための指標が存在する。
【0032】
エクオールは、ステロイド性エストロゲンエストラジオールと類似の構造を有する。図1は、R−エクオールおよびS−エクオールのキメラ構造を示す。エクオールは、キラル中心を有し、2種の異なる鏡像異性形態(R−鏡像異性体およびS−鏡像異性体)として存在するという点で、イソフラボンの中で独特である。R−鏡像異性体およびS−鏡像異性体は、コンンフォメーション的に異なり、このことはエクオール鏡像異性体が、二量体化ER複合体の空洞中の結合部位にどのように適合するか、そしてそれが5α−DHTとどのように結合するかに影響することが予想される。
【0033】
約50%のエクオールが、ヒトにおいて遊離形態または未結合形態で循環し、そしてこれは、血漿中の遊離のダイゼイン(18.7%)またはエストラジオール(4.6%)の割合よりもかなり大きい。このエクオールは、レセプター占有率について、そして恐らく5α−DHTへの結合について利用可能である未結合の画分あるので、このことは、エクオールの全般的な効力を増強することに効果的に寄与する。
【0034】
エクオールに関する全ての公知の先行する研究は、エクオールのラセミ形態を用いて行われているようである。一般的に、2種の形態のエクオールが存在するという認識または鏡像異性体は異なって挙動し得るという認識が欠如しており、本発明者らの知るかぎり個々の鏡像異性体の特異的作用または特異的活性に関する先行する研究は報告されていない。R−エクオールおよびS−エクオールは、5α−ジヒドロテストン(5α−DHT)に特異的に結合する。エクオールラセミ(R−エクオールまたはS−エクオール)は、アンドロゲンレセプター(AR)には結合しない。17β−エストラジオールと比較して、ERαに対するR−エクオール鏡像異性体およびS−エクオール鏡像異性体の相対的な結合親和性は、それぞれ17β−エストラジオールよりも低い(1/210および1/49)。しかし、S−エクオール鏡像異性体は、ERβに対して比較的高い親和性を有し、ERβ選択性が高いようである。鏡像異性体S−エクオールは、17β−エストラジオールの濃度と類似の濃度でERβに結合するが[エクオール、Kd=0.7 nM 対 17β−エストラジオール、Kd=0.15nM]、ERβサブタイプに対する優先的なその親和性が、S−エクオールをSERMと定義する。しかし、R−エクオール鏡像異性体は、R−エクオールが非常に高い濃度で存在する場合、約1/100の親和性で結合し、SERM特性は有さない。従って、S−エクオールおよびR−エクオールは、最も強力な循環アンドロゲンである5α−DHTに選択的に結合する能力を有し、そしてS−エクオールは、S−エクオールがSERM特性を有していると分類するのに十分なERβに対する親和性を有する。
【0035】
S−エクオール(ダイゼインの天然の代謝産物)、およびR−エクオールの両方が、強力なアンドロゲンのジヒドロテストステロン、5α−DHTの作用をアンタゴナイズする能力は、疾患の防止および処置への表面的、食事的、栄養補給的、そして薬理学的なアプローチに対する機会を開く。上記疾患の防止および処置において、強力なアンドロゲン5α−DHTは、有害な役割(前立腺癌、肥満症、皮膚疾患、および毛の喪失が挙げられるが、これらに限定されない)を果たす。さらに、S−エクオールのエストロゲン作用はまた、BPHおよび前立腺癌の処置または防止において有益なものであり得る。なぜならば、エクオールの合わされた作用は、エストロゲンレセプターレベルにおいて、抗アンドロゲンとして作用するからである。
【0036】
天然には存在しないR−エクオールは、身体においてアンドロゲン媒介性プロセスを調節するその能力のために、相当に重要なものである。結合研究において、エクオール鏡像異性体は、テストステロン、DHEA、またはエストロゲンではなく、5α−ジヒドロテストステロン(5α−DHT)に特異的に結合する。そうすることにより、エクオールは、アンドロゲンレセプターそれ自体と直接結合することなく、アンドロゲンレセプターから5α−DHTを隔離する。インビボの研究は、去勢されていない雄ラットのエクオール処置が、前立腺および精巣上体の質量を顕著に減少させるが、精巣の重量は減少させないということを実証する。エクオールを投与した後に、5α−DHTで処置された去勢雄ラットにおいて、エクオールは、前立腺に対する5α−DHTの局所的効果をブロックし、血漿の黄体形成ホルモン(LH)レベルに対するその負のフィードバック効果をブロックした。
【0037】
エクオールは、5α−DHTに特異的に結合し、それ自体がアンドロゲンレセプター(AR)に結合することなく、5α−DHTがアンドロゲンレセプターに結合するのを妨げることによって、抗アンドロゲンとして作用し得る。さらに、すでにARに結合している5α−DHTは、鏡像異性エクオールによって競合的に結合されない。上記鏡像異性エクオールは、インビトロまたはインビボで5α−DHTと接触され得る。5α−DHTがインビボで接触される場合、エクオールは、局所的に投与された場合に、血流または皮膚にエクオールが吸収される任意の経路によって投与され得る。生物学的に利用可能な5α−DHTは、遊離しており、エクオールに結合する前にいずれの天然のリガンドによっても結合されない。
【0038】
前立腺および精巣上体のような生殖器官は、アンドロゲン制御のもとにあることが公知である。先行するデータは、思春期の前の循環アンドロゲンレベルが非常に低いときに、高いレベルの大豆由来のイソフラボンを含有する餌食を与えられたラットは、この餌食を消費することによって変更されない前立腺の重量を有することを示す。しかし、思春期後にアンドロゲンレベルが上昇すると、植物性エストロゲンを含まない餌食を与えられた動物と比較して、植物性エストロゲンが豊富な餌食を与えられたラットでは、前立腺の重量は顕著に減少する。これらのデータは、エクオールで処置された去勢されていないラットは、精巣および下垂体の重量を変化させることなく前立腺および精巣上体の重量において顕著な減少を示すという本発明の知見と類似している。特に、前立腺および精巣上体の値が体重に対して標準化されている場合(100gあたり)、この比率は、エクオール処置の値とコントロール値との間でさらに顕著に異なる。エクオールはまた、テストステロンレベルを顕著に変更することなく、前立腺および精巣上体に対する5α−DHTのアンドロゲン栄養性影響もまたブロックした。
【0039】
5α−DHTは、黄体形成ホルモン(LH)の循環血漿レベルに対する負のフィードバック効果を有する。エクオールは、5α−DHTに結合し、このフィードバック効果を妨げることによって、LHレベルを顕著に増加させる。去勢された(GDX)雄において、エクオールは、LHレベルに対する5α−DHTの阻害作用を競合的に逆転させ、ここで5α−DHTに加えてエクオールで処置された雄ラットは、コントロール値のレベルと類似したLHレベルを示す。これらのデータは、恐らく血液循環系においてエクオールが5α−DHTに結合する特異的能力を有し、そしてLHの産生または分泌の抑制において5α−DHTのホルモン作用をブロックすることをさらに示唆する。従って、本発明の実施形態は、個体の5α−DHFを鏡像異性エクオールと接触させることによって、個体中のLHレベルを調節する方法である。このエクオールは、エクオールを皮膚または血流に吸収させる任意の経路によって投与され得る。投与される量は、処置される病期の性質および個体の大きさに従う。いくつかの場合において、全身処置および局所処置の両方の組み合わせを提供することが、所望され得る。
【0040】
鏡像異性エクオールは、化学的合成によって調製され得、そして公知の手段によって、代表的にキラル相カラムを使用してラセミ混合物から単離され得る。S−エクオールは、イソフラボン(例えば、ダイゼイン)からエクオールへの代謝に関連するエクオール産生微生物を使用する生物学的プロセスを使用して、高いエナンチオ選択性を有して作製され得る。これらの手段は、PCT特許公報WO04−009035(これは本明細書において参考として援用される)に記載される。
【0041】
(S−エクオール、R−エクオール、および混合物を投与することによる疾患の処置)
本発明は、インビボにおいてエクオールを産生することが出来ないという問題を克服するため、または特にR−エクオールを供給するための、個体被験体のための手段を提供する。これは、エクオール鏡像異性体、S−エクオールまたはR−エクオール、S−エクオールおよびR−エクオールのラセミ混合物または非ラセミ混合物の直接の送達を提供し、その産生のための腸内細菌についての必要性またはエクオールの前駆物質のイソフラボンを含む大豆食物を消費することの必要性を回避することによる。S−エクオールの送達はまた、「エクオール産生者」、ならびに「非エクオール産生者」においてS−エクオールのインビボ産生もまた補充し得る。
【0042】
エクオール産生者の餌食をエクオールの鏡像異性体または混合物で補充すると、エクオール産生者によって産生されるS−エクオールのもともとのレベルが不適当である場合、1)エクオールを産生するための不十分なイソフラボンの消費、2)前駆物質イソフラボンからエクオールを作製するための腸内バクテリアの活性を除去する抗生物質の使用、または3)エクオールの産生または吸収のレベルに影響を与える他の健康状態の因子(例えば、短小腸症候群、または腸の孔の外科手術による構築(回腸造瘻術))のために、利益が提供される。さらに、エクオールの補充レベルは、ヒトの健康状態および満足に対する増強された効果を提供すると考えられている。
【0043】
本発明は、S−エクオール、R−エクオール、ラセミエクオール、またはエクオールの非ラセミ混合物を、アンドロゲン関連の疾患および状態に対する健康上の利益を有するのに十分な量で送達するための方法を提供する。エクオールの抗アンドロゲン活性は、身体のいたるところの多くの組織を影響し得る。特に、5α−DHTのアンドロゲン活性のブロックは、女性型禿頭症および男性型禿頭症、顔面および身体の毛の成長(多毛症)、皮膚の健康状態(ざ瘡、抗加齢(例えば、しわの防止および修復)、および抗光加齢(anti−photo aging))、および皮膚の完全性(コラーゲンおよびエラスチンの強さ)の処置および防止のために有益であり得る。この方法は、局所投与、全身投与、または局所投与と全身投与との組み合わせであり得る。
【0044】
局所投与について、皮膚の影響された領域に適用されるエクオールの濃度は、0.01%〜10%を変動する。代表的に、0.01%〜1%が、以下の上昇を誘導するために効果的である:皮膚の完全性、コラーゲン産生、エラスチン産生、エラスターゼ、皮膚の厚さ、皮膚の血流、皮膚のトルゴール、皮膚の含水量、マトリックスメタロプロテアーゼによるコラーゲンおよびエラスチンの分解の防止、皮膚のしわの回復および予防、改良された皮膚の外観のためのグリコアミノグリカンおよびヒアルロン酸の増強、創傷治癒、皮膚の瘢痕の改良、皮脂腺機能を改良することによる油性皮膚の低下、皮膚の加齢斑および皮膚の下降感、ざ瘡、男性型禿頭症および女性型禿頭症、多毛症、頭皮、顔面および身体の毛の健康状態および成長、アポクリン(汗)腺機能、皮膚の炎症、皮膚の免疫機能、汗孔のサイズ、ステロイドホルモン合成/ホルモン作用における皮膚の温度ならびに皮膚および毛の異常、アンドロゲン効果および/またはエストロゲン効果に関するステロイドの代謝および結合ステロイドレセプター。いくつかの場合において、皮膚の状態または疾患の存在に起因して、または患者が非エクオール産生者であるために、より高い用量が要求される。この場合において、局所的に適用されたエクオールの濃度は10%までであり得、局所投与は、より頻繁に実施され得るか、または全身投与が、局所投与と組み合わせてか、もしくは局所投与と代えて使用され得る。
【0045】
全身投与について、エクオールを含有する組成物の量は、哺乳動物の血漿において、少なくとも1ミリリットルあたり5ナノグラム(ng/mL)、より代表的には少なくとも10ng/mL以上で鏡像異性エクオールの一過性レベルを生じるのに十分な量、あるいは尿において1000nmol/Lを超える鏡像異性エクオールの一過性レベルを生じるのに十分な量で投与される。代表的には、上記組成物は、少なくとも約1mg、より代表的には少なくとも約5mg、そして200mgまで、より代表的には50mgまでの鏡像異性エクオールの用量で、経口的に投与される。健康な成人に20mgのR−エクオール鏡像異性体を経口投与した後の、血漿におけるR−エクオールの代表的な血漿濃度が、図2において、R−エクオールの血漿の出現/消失プロットの薬物動態学によって示される。健康な成人に20mgのS−エクオールを経口投与した後の、血漿におけるS−エクオールの代表的なバイオアベイラビリティーは、R−エクオールについて示されるものと類似している。
【0046】
十分な量でR−エクオールおよび/またはS−エクオールを送達する能力は、エクオールのラセミ混合物の送達を超えるいくつかの利点を提供するために送達される。第一に、R−エクオールまたはS−エクオール単独の効力は、代表的にラセミ混合物の効力の少なくとも2倍である。第二に、ヒトの身体は、S−エクオールのみを産生し、従ってS−エクオールのみを含有する組成物は、身体にありふれた成分のS−エクオールについて「天然」の生成物を表す。第3に、R−エクオール鏡像異性体は独特な特性を有するので、R−鏡像異性体のみを含む処置組成物、または実質的にR−鏡像異性体のみを含む処置組成物は、有益な効果および/または治療効果を生じ得る。そして第4に、R−エクオールの投与は、任意の内因性S−エクオールの存在を補充し、エストロゲン作用および抗アンドロゲン作用の両方を身体内で起こす。
【0047】
本発明は、男性型禿頭症および女性型禿頭症に関連する疾患および状態を処置ならびに防止するための鏡像異性エクオールの使用に関する。5α−DHTは、頭髪の喪失の公知の原因である。アンドロゲン、特に主要な循環アンドロゲンであるテストステロンは、より強力なアンドロゲンであるジヒドロテストステロン(5α−DHT)(毛包において)に変換され、頭髪の小胞に対する5α−DHTのホルモン作用が毛の喪失を引き起こす。従って、5α−DHTのホルモン作用がブロックされ得る場合、例えば、循環(血管内)および毛包内において5α−DHTに結合する本発明のエクオールを使用することによって、次に頭髪の喪失が減少または防止され得る。
【0048】
本発明は、顔面および身体の毛に関連する疾患および状態を処置ならびに防止するための鏡像異性エクオールの使用を包含する。顔面および身体の毛は、アンドロゲンによって調節されるが、頭髪の調節は逆である。特に、より強力なアンドロゲンの5α−DHTは、顔面および身体の毛を増加させる。5α−DHTはまた、皮脂腺からの皮脂(油)の産生を増加させ、このことは、ざ瘡の増加に寄与し得る。従って、エクオールによる5α−DHTの結合は、顔面および身体の毛の減少、皮脂(油)の分泌の減少、およびざ瘡の低下または予防を引き起こし得る。
【0049】
本発明は、皮膚の効果、皮膚の質および完全性、皮膚の加齢、皮膚の光による老化、および皮膚の色素沈着および下降感に関連する疾患および状態を処置ならびに防止するための鏡像異性エクオールの使用を包含する。閉経期前、しかし特に閉経期後、エストロゲンは、エラスチンおよびコラーゲンの含有量を増加させて皮膚の特性または強さを改良することによって、皮膚の健康状態を改良する。また、皮膚がざ瘡または他の皮膚の破壊(かき傷、小膿疱のつぶれ(popping pimples)または小さな切り傷など)によって損傷を受けるとき、修復機構はより迅速であり、例えばエクオールのようなエストロゲンまたはエストロゲン様化合物が存在する場合、皮膚はより良好に治癒する。鏡像異性エクオール、そして特にS−エクオールまたは鏡像異性体もしくはラセミエクオールの混合物は、エラスチンおよびコラーゲンを刺激し、そしてまた光による加齢に対して保護し得ることが、考えられている。エクオールが5α−DHTのホルモン作用をブロックする能力は、皮脂腺からの皮脂の油の産生を減少させ得、このことがざ瘡を減少または排除し得る。S−エクオールはエストロゲンレセプター(主にERβ)を結合するので、このエストロゲン様分子の保護効果は、皮膚においてエラスチンおよびコラーゲンを刺激する。さらに、エクオールは、強力な抗酸化物質であるので、エクオールは、皮膚を加齢(光による加齢を含む)から保護し得る。
【0050】
性ステロイドホルモンは、皮膚の発達および機能(例えば、分泌)の調節、ならびにいくつかの皮膚の病理学的障害に関連している。エストロゲンホルモンおよびアンドロゲンホルモンの作用は、皮膚、毛、および皮膚に関連する腺におけるそれらのレセプターの存在によって媒介されることが、よく証明されている。PelletierおよびRen,Histol Histopathology,19:629−636,2004を参照のこと。例えば、アンドロゲンレセプター(AR)は、表皮/真皮において大部分のケラチノサイトに局在化され、そしてARは、約10%の線維芽細胞にみられる。しかし、皮脂腺においては、ARは、基底細胞および皮脂細胞(sebocyte)において豊富である。毛包において、AR発現は、真皮乳頭細胞に限定されている。ERβは、表皮、皮脂腺(基底細胞および皮脂細胞)およびエクリン汗腺で高度に発現される。毛包において、ERβは、真皮乳頭細胞、内鞘細胞(inner sheath cell)、マトリックス細胞および外鞘細胞(隆起領域を含む)において広く発現される。
【0051】
エクオールは、ダイゼインの代謝産物であって、選択的エストロゲンレセプター調節因子(SERMS)の特性を有する(数種の細胞および組織部位において、エクオールはエストロゲンアゴニストのように作用し、もう一方ではエストロゲンアンタゴニストとして作用する)ので、エクオールが、ERβを含む種々の細胞/組織において二重のエストロゲン様ホルモン作用を有し得ることを提案するのは合理的である。エクオール(ラセミ)が、その鏡像異性体のS−エクオールを介してERβに結合する能力を有することが証明されている。なぜならば、R−エクオールは、ERαまたはERβに対して低い親和性を有するからである。しかし、S−エクオールおよびR−エクオールの両方は、以下のa)〜d)で主要な役割を果たす5α−DHTに特異的に結合し、5α−DHTを生物学的に不活化するそれらの能力に起因してかなり重要である:a)頭皮および顔面/身体の毛包成長(例えば、アンドロゲン性脱毛症または男性型禿頭症、および女性における多毛症または女性型禿頭症)、b)ざ瘡および皮脂腺の機能、c)創傷治癒、ならびにd)皮膚の障害(例えば、アポクリン腺機能障害、汗腺膿症(hidradentitis suppurativa)または臭汗症(osmidrosis)。最終的に、エストロゲンは、皮膚のパラメータ、創傷治癒、毛包の健康状態、皮脂腺およびアポクリン腺の機能、表皮および毛包の色素沈着、および悪性黒色腫に正に影響することが公知である。
【0052】
エストロゲンは、ヒト皮膚の維持における主要なホルモン因子であることが公知である。真皮においてコラーゲン産生を刺激することは、皮膚の厚さを増加させ、皮膚における血管新生を増加させ、そして表皮の有糸分裂活性を増加させることが公知である。Brincat MP、Maturitas、29:107−117,2000;Punnonen R、Acta Obstet Gynecol Scand Suppl、21:3−44,1972;Hasselquist,MBら、J Clin Endocrinol Metab,50:76−82,1980;ならびにShah MGおよびMaibach HI、Am J Clin Dermatol、2:143−150、2001を参照のこと。具体的には、エストロゲンは、Pirila Eら、Curr Med Chem、8:281−294、2001によって記載されたように、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)の天然の調節因子であることが公知である。MMPは、コラーゲンおよびエラスチンを破壊することが公知である。このことは、環境的な加齢(化学物質、汚染、極度な温度環境(寒冷または暑さ)への曝露)、機械的な加齢(顔面の筋肉の収縮、例えば、微笑、しかめ面、喫煙またはストローからの飲水)または生物学的な加齢に起因し得る。これらの因子は、加齢の遺伝的プロセスおよび自然のプロセスによって影響され、このプロセスにおいて、皮膚は薄くなり、コラーゲンおよび特にエラスチンの減少に起因してしわが現れ、そして皮膚の衰えの強い外観となる。エストラゲン処置はまた、皮膚の含水量または水分を増強し、皮膚のトルゴールに影響するグリコアミノグリカン(酸性ムコポリ多糖類およびヒアルロン酸)の濃度を上昇させることがまた示されている。Raine−Fenning NJら、Am J Clin Dermatol、4:371−378、2003を参照のこと。
【0053】
本発明は、エストロゲンレセプター(例えば、タモキシフェン)に関連する癌療法の負の効果を改善またはブロックするための、S−エクオール、またはS−エクオールとR−エクオールとのラセミ混合物もしくは非ラセミ混合物の使用を包含する。タモキシフェン処置は、膣の乾燥を引き起こすことが示されており、これは、エクオールのSERM作用を通じてエクオールによって改善され得る。本発明は、閉経期に伴う膣の乾燥または閉経期後の膣の乾燥を改善するために類似の様式で使用され得る。
【0054】
本発明は、5α−DHTの負の効果をブロックし、MMPを減少させて皮膚のコラーゲン、エラスチン、血管新生、および皮膚の厚さおよび皮膚のトルゴールに正の影響を与え、そして環境的加齢、機械的加齢、および生物学的加齢のプロセスを減速させるための、S−エクオール、またはS−エクオールとR−エクオールとのラセミ混合物もしくは非ラセミ混合物の使用を包含する。
【0055】
エストロゲンは、創傷治癒の速度および質において重要である。Pirila Eetら、Curr Med Chem、8:281−294、2001およびAshcroft GEら、Nat Med、3:1209−1215、1997を参照のこと。ERβは、成人ヒト頭皮および皮膚の毛包脂腺単位(毛包)において優性なエストロゲンレセプターであることが実証されている。Thornton MJら、Exp Dermatol、12:181−190、2003およびThornton MJ,ら、J Invest Dermatol Symp Proc、8:100−103、2003を参照のこと。さらに、5α−DHTの生理学的レベルは、免疫機能を弱め、炎症を促進することによって創傷治癒を抑制することが報告されている。Nitsch SMら、Arch Surg、139:157−163、2004およびGilliver SCら、Thromb Haemost、90:978−985、2003を参照のこと。MMPはまた、エストロゲンによって調節される創傷治癒に関連する。
【0056】
本発明は、R−鏡像異性体およびS−鏡像異性体の細胞外5α−DHTおよび細胞内5α−DHTへの結合を介して、この強力なアンドロゲンを生物学的に不活化し、創傷治癒に正に影響を与えるための、S−エクオール、またはR−エクオールとS−エクオールとのラセミ混合物もしくは非ラセミ混合物の使用を包含する。同時に、R−エクオールとS−エクオールとのラセミ混合物または非ラセミ混合物は、ERβホルモン媒介性機構を介して創傷治癒の速度および質を改良する。
【0057】
頭皮毛包の活性の固有の周期は、新しい毛の成長および古い毛の抜け代わりを生じる。この活性は、ステロイドホルモンの影響下にあることが公知である。頭皮毛包の成長は、5α−DHTによって特異的に阻害される一方で、同時に、顔面および体の毛包は、5α−DHTによって刺激される。閉経後の女性は、Brincat(上記の参考文献を参照のこと)によって記載されるように、卵巣ステロイドホルモンの喪失およびこの期間の間のアンドロゲン/エストロゲンの比の上昇に起因して、女性型禿頭症を経験することが公知である。閉経後の女性はまた、この期間の間に多毛症、または顔面および身体の毛の成長の増加を経験し、そして閉経後の期間にアンドロゲン産生の増加を経験する。閉経前の女性はまた、アンドロゲン産生の増加による多毛(hirstutism)を経験する。Reed MJおよびFranks S、Baillieres Clin Obstet Gynaecol、2:581−595、1988を参照のこと。低いレベルのアンドロゲンを有する去勢した男性、または遺伝的な5α−DHTレダクターゼ欠損を有するヒトは、男性型禿頭症を経験しない(Trueb RM、Exp Gerontol、37:981−990、,2002)。
【0058】
エストロゲンは、毛包の成長またはライフサイクルを増加させ、そして真皮乳頭細胞において血流に影響を与える血管内皮増殖因子(VEGF)の毛包への分泌を刺激することが、インビトロおよびインビボの研究からまた公知である。Lachgar Sら、J Invest Dermatol Symp Proc、4:290−295、1999もまた参照のこと。
【0059】
本発明は、強力なアンドロゲン5α−DHTを生物学的に不活化し、男性および女性の両方において頭皮毛包の成長に対する負の効果を阻害するための、S−エクオール、またはR−エクオールとS−エクオールのラセミ混合物もしくは非ラセミ混合物の使用を包含する。エクオールは、毛包のライフサイクルを刺激し、真皮乳頭細胞中の血管内皮増殖因子(VEGF)を増強して頭髪の成長に正に影響を与える。逆に、R−エクオールおよび/またはS−エクオールは、5α−DHTのホルモン作用をブロックし得、そして顔面および身体の毛の成長は低減する。
【0060】
エストロゲンは、男性および女性において大きさを減少させ、皮脂腺分泌を阻害する。Pochi PEおよびStrauss JS、J Invest Dermatol、62:191−210、1974ならびにLarie Fら、Horm Res、54:218−229、2000を参照のこと。ERβは、皮脂腺において広範に高度に発現され、そしてこのレセプターを介したエストロゲンホルモン作用は、毛包に関連する皮脂腺分泌を明らかに減少させる。一方では、皮脂腺におけるアンドロゲンレセプターは、5α−DHTによって活性化される。皮脂腺における5α−DHTは、細菌のひき寄せに関連する油の産生を刺激し、従ってざ瘡の促進および生成を刺激する。
【0061】
本発明は、強力なアンドロゲンの5α−DHTを生物学的に不活化し、皮脂腺からの油分泌の産生を阻害してざ瘡の発生率を減少させる、S−エクオール、またはR−エクオールとS−エクオールとのラセミ混合物または非ラセミ混合物の使用を包含する。鏡像異性体(R−エクオールおよびS−エクオール)の組み合わせは、大きさを減少させ、皮脂腺からの油の産生を阻害して、ざ瘡の改善または防止を助ける。
【0062】
アポクリン腺は、毛包の外毛根鞘から発生し、アポクリン腺は外毛根鞘につながったままである。アポクリン腺は、Jakubovic HRら、Dermatology、第3版、Philadelphia、W.B.Saunders、1992、pp.69〜77によって記載されるように、大部分は腋窩および鼡径部の領域から汗を生成する身体の毛で覆われた領域に関連する。汗腺膿症および臭汗症は、腋窩および鼡径部に関連する大きな汗腺の炎症に起因する状態である。Sato Tら、Br J Dermatol、139:806〜810、1998を参照のこと。これらの障害を有する患者は、アポクリン汗(臭汗症)に由来する過剰なにおいまたは異常なにおいを有する。この状態は、女性においてより一般的であり、エストロゲンおよび/または抗アンドロゲン処置で改良するようであり、このことは、これらの特定の腺がエストロゲンおよびアンドロゲンによって調節されることを示唆する。Offidani Aら、J Clin Pathol、52:829〜832、1999もまた参照のこと。特に、アンドロゲンホルモン作用が試験される場合、アポクリン(汗)腺のために過剰なにおいまたは異常なにおいに苦しむ患者のアポクリン腺において、高いレベルの5α−レダクターゼ活性が検出され、そして5α−DHTの作用は、これらの状態において影響を与えられる。
【0063】
本発明は、強力なアンドロゲンホルモンの5α−DHTを生物学的に不活化し、アポクリン腺からの汗の分泌の生成を阻害し、そして汗腺炎(hidradentitis)および臭汗症の発生数を低下させ得る、S−エクオール、またはR−エクオールとS−エクオールとのラセミ混合物もしくは非ラセミ混合物の使用を包含する。同時に、鏡像異性体(R−エクオールおよびS−エクオール)の比の組み合わせにおいて、エクオールは、アポクリン腺からの汗の生成を減少させ、汗腺炎および臭汗症の防止に役立つ。
【0064】
いくつかの研究から、表皮のメラノサイトがエストロゲン感受性であることが示されている。Wade TRら、Obstet Gynecol、52:233〜242、1978に記載されるように、エストロゲンを含有する経口避妊薬が、女性の顔面の色素過剰を引き起こすといういくつかの報告が存在する。
【0065】
本発明は、強力なアンドロゲンホルモンの5α−DHTを生物学的に不活化し、エストロゲンレセプターにおいてエクオールのホルモン作用を増強するための、S−エクオール、またはR−エクオールとS−エクオールとのラセミ混合物もしくは非ラセミ混合物の使用を包含する。表皮のメラノサイトは、エクオールのSERM作用を介して阻害され、その結果は、皮膚を明るくする(skin−lightening)効果である。従って、エクオールは、特に、顔面および手の加齢斑または皮膚の斑に対して、有効な処置であり得る。
【0066】
本発明は、強力なアンドロゲンホルモンの5α−DHTを生物学的に不活化し、エストロゲンレセプターにおいてエクオールのホルモン作用を増強するための、S−エクオール、またはR−エクオールとS−エクオールとのラセミ混合物もしくは非ラセミ混合物の使用を包含する。毛包のメラノサイトは、エクオールのSERM作用を介して刺激され、そしてその結果は、毛の色素沈着の増強である。Tobin DJおよびBystryn JC、Pigment Cell Res、9:304〜310、1996;Thorton MJ、Exp Dermatology、11:487〜502、2002;ならびにOhuchi Aら、Third Intercontinental Meeting of
Hair Research Societies、Japan、2001を参照のこと。従って、エクオールは、毛包の色調および色を調節するために有効な処置であり得、従って毛の色素沈着を変化させる。
【0067】
悪性黒色腫の形成を有する毛包の関連に起因して、エクオールのSERM特性は、陽性の様式で悪性黒色腫に影響を与え得る。Kanda NおよびWatanabe S、J
Invest Dermatol、117:274−283、2001;Richardson Bら、Br J Cancer、80:2025−2033、1999;ならびにDurvasula Rら、Climacteric、5:1970200、2002を参照のこと。例えば、インキュベートされたヒト転移性黒色腫細胞株のエストラジオールによる処置は、3H−チミジンの取り込みを阻害し、これは、抗エストロゲンの投与によって妨げられた。さらに、エストラジオールは、フィブロネクチンの活性化を通じてヒト黒色腫細胞の浸潤を阻害し得る。最終的には、女性における悪性黒色腫の提示(presentation)の平均年齢は、50代前半であり、これは、閉経期の開始と同時期である。黒色腫は、エストロゲンレセプター感受性腫瘍であると伝統的に考えられているが、最近の証拠は、このことに異議を唱える。
【0068】
本発明は、強力なアンドロゲンホルモンの5α−DHTを生物学的に不活化し、エストロゲンレセプターにおいてエクオールのホルモン作用を増強するための、S−エクオール、またはR−エクオールとS−エクオールとのラセミ混合物もしくは非ラセミ混合物の使用を包含する。エクオールのSERM作用を介して、悪性黒色腫の形成が阻害され、毛包のメラノサイトが安定化され、結果として悪性黒色腫の防止および処置になる。
【0069】
本発明の他の実施形態は、アンドロゲン関連性の皮膚または毛の障害、ならびにエストロゲン/アンドロゲンのバランスの乱れから生じる障害における診断剤としてのエクオールの使用を包含する。これらの実施形態において、エクオールが個体に投与されて、5α−DHTに結合し、それによってアンドロゲンレセプターへの5α−DHTの結合を防止する。次いで、エストロゲンバランスの変化が測定されるか、またはアンドロゲン結合の変化が評価されて、皮膚または毛のアンドロゲン関連の異常を診断またはさらに説明する。
【0070】
エクオールは、エラスチンおよびコラーゲンの含有量を増加させて皮膚の特性または強さを改良することによって、皮膚の健康状態を改良することが見出されている。この作用の機構は、皮脂腺からの油産生を減少させ、次いでざ瘡および他の皮膚障害を減少させる5α−DHTのホルモン作用をブロックすると考えられる。エクオール(および、特にS−エクオール)は、エストロゲンレセプターを結合するので、エストロゲン様分子の保護効果は、ER−βを介して媒介されると考えられている皮膚でのエラスチンおよびコラーゲンの産生を刺激する。さらに、エクオールの抗酸化特性は、光による加齢、および一般的に皮膚の加齢に対して保護する。
【0071】
エクオールは、問題の治療部分に関して、5α−DHTの結合能力を評価するために、他の治療部分の前か、または他の治療部分と一緒に、5α−DHTに結合ように投与され得る。また、アンドロゲン結合部分は、5α−DHT結合の非存在下においてアンドロゲン活性を回復し、エストロゲン活性とつり合わせるためのアンドロゲン結合部分の効力を評価するために、エクオールの投与の後に投与され得る。さらに、5α−DHTに由来するこれらの天然に存在する5α−DHT結合部分または生体異物の5α−DHT結合部分と置き換えるために、5α−DHT結合部分の存在下においてエクオールが投与され得る。
【0072】
鏡像異性エクオールは、経口投薬形態のエクオールを提供することによって経口投与され得、この投与は、エクオールの血流への効果的な吸収を生じる。エクオールの投与は、所望の場合経口以外の経路によって行われてもよい。例えば、肥厚前立腺(enlarged prostate)の処置のためか、または前立腺肥厚を防止するためのエクオールの投与に対して、直腸投与または尿道投与が使用され得ることが企図される。さらに、エクオール分子の活性なリガンド結合部位が、投与のために単離されて合成され得ることが企図され、これは、完全なエクオール分子なしで5α−DHT結合を提供し得る。5α−DHT結合能力を有するエクオール分子またはそのフラグメントの用量は、投与の経路と処置される状態とに依存する。本発明者らのインビボ研究に基づいて、相対的に低い用量のエクオールが、かなり高い用量の5α−DHTをアンタゴナイズすることが明らかであり、そしてこのことは、5α−DHTと比較した血清タンパク質へのエクオールの結合の顕著な差によって説明され得る。後者は、大部分がタンパク質に結合されて循環する一方、エクオールは50%が遊離している。一般的に、レシピエントの血流において、エクオールまたはその活性なフラグメントのある濃度を生じるのに十分な用量は、レシピエントの体重1kgあたり少なくとも約0.2mgのエクオールであり、好ましくは少なくとも約0.5mgのエクオールである。上記用量は、約10mg/kgを超えるまで、顕著な用量を限定する副作用を被ることなく劇的に増加され得る。経口投与は、医薬の遅延放出または徐放を提供し得るマイクロカプセル化形態において達成され得る。
【0073】
エクオールは、種々の形態で局所的、経皮的、そして皮下的に投与され得、この形態としては、ローション、軟膏、泡状物質(シェーリングクリームを含む)、およびスプレーが挙げられ、あるいは例えば、パッド、外科手術用包帯、接着性包帯、予め湿られたタオル(premoistened towellette)、乳児または成人の失禁用おむつ(例えば、米国特許第5,525,346号に記載されており、これは本明細書において参考として援用される)、女性用サニタリー製品、または 経皮パッチ(例えば、米国特許第5,613,958号および同第6,071,531号において記載され、これらは本明細書において参考として援用される)、電気機械デバイス(マイクロポンプ系(例えば、米国特許第5,693,018号および同第5,848,991号において記載され、これらは本明細書において参考として援用される)を含む)ならびに皮下移植片(例えば、米国特許第5,468,501号において記載され、これは本明細書において参考として援用される)のような局所適用に適した基板上の活性成分として投与され得る。
【0074】
本発明の実施において有用な組成物は、少なくとも部分的に遊離の5α−DHTに結合し、これを隔離し得、これによって個体への投与の後に5α−DHT(テストステロンまたはDHEA以外)がアンドロゲンレセプターに結合するのを妨げ、このことによって健康状態と疾患とに関する重要な分岐およびアンドロゲン媒介性病理の処置における広範かつ重要な用途を有する、少なくとも生理学的に受容可能な量のエクオールを含有する。
【0075】
S−エクオール、R−エクオール、ラセミエクオール混合物、または非ラセミエクオール混合物を含有する組成物は、経口消費のために作製され得る。上記組成物または上記組成物を含有する生成物は、市販される食品でも、業務用の食品でも、医薬品でも、OTC医薬であってもよい。食物組成物は、一人前あたり少なくとも1mg、代表的には200mgまでの鏡像異性エクオールまたはエクオール混合物を含有し得る。経口投与用医薬は、一用量あたり少なくとも1mg、そして代表的には200mgまでの鏡像異性エクオールまたはエクオール混合物を含有し得る。局所適用のための生成物は、少なくとも0.01重量%、そして10重量%までのS−エクオール、またはR−エクオール、または鏡像異性混合物を含有し得る。選択される濃度範囲としては、約0.01%〜約3%、約0.1%〜約1%、約0.1%〜約3%、約0.1%〜約5%、約0.3%〜約1%、約0.3%〜約3%、約0.3%〜約5%、約0.5%〜約1%、約0.5%〜約3%、そして約0.5%〜約5%が挙げられる。代表的に、0.01%〜1%が、種々の間隔において適用され得る有効濃度範囲である。いくつかの場合において、いくつかの病理学的状態または疾患を処置するために5%までの濃度においてエクオールを適用することが好ましい。状態または疾患の重篤度に起因するか、または個体が非エクオール産生者であり、従ってより多量の外因性エクオールの投与が必要とされるので、10%までの濃度が必要とされ得る場合もまた存在する。
【0076】
本発明の局所用組成物は、化粧品および薬学的活性物質および賦形剤を含み得る。このような適切な化粧品および薬学的因子としては、抗真菌物質、ビタミン、抗炎症剤、抗菌物質、鎮痛薬、一酸化窒素シンターゼインヒビター、昆虫忌避薬、日焼け剤、界面活性剤、保湿薬、安定薬、保存薬、防腐薬、増粘剤、潤滑剤、湿潤剤、キレート剤、皮膚浸透増強剤、緩和薬、芳香剤および着色料が挙げられるが、これらに限定されない。
【0077】
一部の個体において、全身投与および局所投与の組み合わせを使用することが所望される。このことは、状態または疾患の重症度に起因し得るか、または個体が非エクオール産生者であり、従ってより多量の外因性エクオールの投与が必要とされることに起因し得る。
【0078】
鏡像異性エクオールはまた、鏡像異性エクオールの結合体であってもよく、これは、グルクロニド、硫酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、グルコシド、アセチル−グルコシド、マロニル−グルコシド、およびこれらの混合物からなる群より選択される結合体と、C−4’位置またはC−7位置において結合体化される。
【0079】
アンドロゲン関連疾患およびこれに関連する状態の処置および/もしくは防止のため、またはアンドロゲン関連疾患およびこれに関連する状態への素因を減少させるために被験体に投与するための、エクオールの鏡像異性体もしくは混合物を含有する組成物または調製物はまた、1種以上の薬学的に受容可能なアジュバント、キャリアおよび/または賦形剤を含有し得る。薬学的に受容可能なアジュバント、キャリアおよび/または賦形剤は、当該分野で周知であり、例えば、Handbook of Pharmaceutical Excipients、第2版、American Pharmaceutical Association、1994(本明細書において参考として援用される)に記載される。この組成物は、錠剤、カプセル剤、再構成のための粉剤、スプレー、食物(例えば、食品バー(food bar)、ビスケット、スナック食品および当該分野で周知の他の標準的食品形態)、または飲料処方物の形態で投与され得る。飲料は、香料、緩衝剤などを含み得る。
【0080】
上記組成物は、S−エクオールについて0%を超え、かつ90%未満である鏡像体過剰率(EE)を有する、S−エクオールとR−エクオールとの非ラセミ混合物を含有し得る。0%のEEを有する組成物は、2種の鏡像異性体の50:50ラセミ混合物である。この組成物は、R−エクオールまたはS−エクオールの鏡像異性体のいずれかをラセミ混合物から不完全に分離および除去することによって、ラセミ混合物から直接作製され得る。この組成物はまた、エクオールの混合物(非ラセミ混合物またはラセミ混合物のいずれか)を含む第1のエクオール成分を、S−エクオールまたはR−エクオールから本質的になる組成物を含む第2の成分と合わせることによって作製され得る。これは、過剰なS−エクオールまたはR−エクオールを有する非ラセミ組成物を産生する。組成物中のR−エクオール成分およびS−エクオール成分に対する特異的な利点または指標に依存して、組成物は、約50:50〜約99.5:1を超えるS−エクオール対R−エクオールの比率、より代表的には約51:49〜約99:1の比率、そして約50:50〜約1:99.5未満のS−エクオール対R−エクオールの比率、より代表的には約49:51〜約1:99の比率においてS−エクオールおよびR−エクオールを含むように調製され得る。上記組成物は、代表的には、顕著な量の任意の他のアンドロゲンレセプター結合化合物を含まない。S−エクオール対R−エクオールの選択された比率は、約3:1〜約19:1、約3:1〜約9:1、約4:1〜約19:1、そして約4:1〜約9:1を含む。
【0081】
経口投与に適した組成物は、所定量の抽出物を各々含む、例えば、カプセル剤、カシェ剤、ロゼンジ、または錠剤として;粉剤または顆粒剤として;水性液体または非水性液体中の溶液または懸濁液として;あるいは油中水または水中油のエマルジョンとして、別個の単位で提示され得る。
【0082】
本発明のより完全な理解およびその使用は、以下の実験から得ることができる。
【0083】
(実験1.エクオールのS−鏡像異性体およびR−鏡像異性体のレセプター結合能力の決定)
インビトロ結合研究を実施して、エストロゲンレセプターERαおよびERβに対するS−鏡像異性エクオールおよびR−鏡像異性エクオールの相対的親和性を試験した。全長ラットERα発現ベクター(pcDNA−ERα;RH Price UCSF)およびERβ発現ベクター(pcDNA−ERβ;TA Brown,Pfizer,Groton,CT)を使用して、T7−RNAポリメラーゼを用いるTnT結合網状赤血球溶解物系(TnT−coupled reticulocyte lysate system)(Promega,Madison,WI)を使用して、30℃での90分反応の間にインビトロでホルモンレセプターを合成した。さらに使用するまで、翻訳反応混合物を−80℃で保存した。ERαおよびERβに対するS−エクオールおよびR−エクオールの鏡像異性体の結合親和性を計算および確立するために、網状赤血球溶解物上清の100μLアリコートを、[3H]17β−エストラジオール(E2)の濃度を増加させて(0.01〜100nm)、最適時間および最適温度(室温で90分間(ERβ)または4℃で18時間(ERα))でインキュベートした。これらの時間は、実験的に決定され、エストロゲンによるレセプターの最適な結合を表す。平行チューブ(parallel tube)において、300倍過剰のERアゴニストのジエチルスチルベストロールを使用して非特異的結合を評価した。インキュベーションの後、インキュベーション反応物を1mLの親油性Sephadex LH−20(Sigma−Aldrich Co.,Saint
Louis,MO)カラムを通すことによって結合した[3H]E2と結合していない[3H]E2とを分離した。以前に公開されたプロトコル(Handaら,1986;O’KeefeおよびHanda,1990)に従って、使い捨てのピペットチップ(lmL;Labcraft,Curtin Matheson Scientific,Inc,Houston,TX)をTEGMD(10mm Tris−Cl、1.5mm EDTA、10%グリセロール、25mmモリブデート、および1mmジチオスレイトール,pH 7.4)飽和のSephadexで充填することによってカラムを構築した。クロマトグラフィーのために、このカラムをTEGMD(100L)で再平衡化し、そしてインキュベーション反応物を各カラムに個々に添加して、そのカラム上でさらに30分間インキュベートした。このインキュベーションの後、600μLのTEGMDを各カラムに添加し、流入物(flow−through)を収集し、4mLのシンチレーション流体を添加し、そして2900 TR Packardシンチレーションカウンター(Packard Bioscience,Meriden,CT)においてサンプルを計測した(各5分)。
【0084】
競合結合研究を使用して、エクオールのS−エクオール鏡像異性体およびR−エクオール鏡像異性体のエストロゲン特性を評価した。ER結合に対してSおよびRが[3H]E2と競合する能力に基づいて、インビトロで翻訳されたERに対する親和性は、2種の鏡像異性体について非常に異なっていることが示された。S−エクオール鏡像異性体は、ERβに対して最も高く[Kd(nM)=0.73±0.2]、一方ERαに対する親和性は、比較してかなり低い[Kd(nM)=6.41±1.0]。このR−エクオール鏡像異性体は、ERβ[Kd(nM)=15.4±1.3]およびERα[Kd(nM)=27.38±3.8]の両方に対してかなり低い親和性を有した。参考のために、17β−エストラジオールは、この系において、Kd(nM)=0.13でERαに結合し、Kd(nM)=0.15でERβに結合する。
【0085】
この研究は、S−エクオール鏡像異性体のみが、ヒトにおいて報告されている循環エクオールレベルに対する潜在的な妥当性を有するのに十分な親和性でERに結合することを示した。17β−エストラジオールと比較して、ERαに対するS−エクオールおよびR−エクオールの鏡像異性体の相対的な結合親和性は、17β−エストラジオールのそれぞれ1/49および1/211であった。しかし、上記S−エクオール鏡像異性体は、ERβに対して比較的高い親和性を有し、主としてERβ選択的であるようにみえるが、R−エクオール鏡像異性体は、S−エクオールの約1/100の親和性で結合する。S−エクオールは、もっぱらヒト血漿および尿において見出されるという別々の関連する決定は、2種の鏡像異性体の結合における特異性を考慮して、重要である。
【0086】
(実験2.R−エクオールのバイオアベイラビリティー)
20mgの純粋なR−エクオールを、一晩の絶食の後に健康な成人に経口投与した。次の24時間にわたって設定した間隔において、血液サンプルを収集し、そして、選択したイオンモニタリングを使用する同位体希釈ガスクロマトグラフィー−質量分析によってエクオールの血漿濃度を決定した。エクオールの迅速な出現が血漿において観察され、ピーク濃度は8時間後に観察された。R−エクオールの末端除去(terminal elimination)半減期は、約8時間であった。エレクトロスプレーイオン化質量分析は、血漿中に存在するエクオールがR−エクオール鏡像異性体であることを確認し(PCT特許公報 W004−009035)、このことによってそれが安定であり、腸において任意のラセミ化またはさらなる生体内変化を受けないことを確立する。図2は、R−エクオールの血漿の出現/消失プロット示す。これらの結果は、R−エクオールが薬理学的調製物または栄養補給調製物として投与される場合、生物が利用可能であるという結果を確立する。類似の結果は、S−エクオールが健康な成人に経口投与された場合に得られている。
【実施例】
【0087】
以下の実施例は、本発明の使用、そしてそこから得られる利益を実証する。本発明の効力を実証するために、以下のプロトコルを使用し、そして以下の実施例においてそのプロトコルを参照する。
【0088】
(本発明の実施例で使用するプロトコル)
(1.試験物質ストック溶液の調製)
約20〜40mgの試験物質を、予め風袋を計った滅菌ガラスバイアルに計りとり、正確な重量を記録した。次いで、50% w/v溶液にするようにビヒクル容量を計算して、ビヒクルを添加した。実施例で示したように、2種の異なるビヒクルを使用した。100% DMSO(EMD Biosciences カタログ番号MX1458−6、ロット番号42364321)からDMSOビヒクルを調製する。100%トランスキュトール(transcutol)(Gattefosse a.s.a., Cedex,France)からトランスキュトールビヒクルを調製した。次いで、視覚的に乾燥粉末が溶液に溶けるまで、サンプルを激しく撹拌する。いくつかの場合において、サンプルは37℃まで簡単に温める必要がある。ストック溶液アリコートは、少量のアリコートで凍結されて約−20℃で維持してもよいし、または調製した直後に使用してもよい。エクオールのラセミ混合物を、0%(コントロール)、0.3%、1.0%、および5.0%の濃度で試験するために調製する。DMEM/F−12中50g/mlの濃度のアスコルビン酸を使用して、陽性コントロールを調製する。使用するためにストック溶液を希釈した後、次いでこれらを廃棄する。
【0089】
(2.MTTアッセイ)
組織培養物においてエクオールの毒性を決定するためのMTTアッセイを実施する。細胞の生存率および増殖の測定は、外部の因子への細胞集団の応答に関する多くのインビトロアッセイについての基礎を形成する。テトラゾリウム塩の還元は、細胞増殖を試験するための信頼できる方法として、現在広く受け入れられている。MTTアッセイは、細胞の代謝活性の比色分析である(ATCC;Gaithersberg MD;カタログ番号30−1010K)。黄色のテトラゾリウムMTT(3−(4,5−ジメチルチアゾリル−2)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロマイド)は、代謝的に活性な細胞によって還元されて還元等価物(例えば、NADHおよびNADPH)を生じる。得られた細胞内の紫色のホルマザンを、可溶化し、そして分光光度的手段によって定量し得る。MTT細胞増殖アッセイは、細胞の増殖速度、そして逆に代謝事象がアポトーシスまたはネクローシスをもたらす場合は細胞生存率の低下を測定する。細胞数と生成されたシグナルとの間の直線的な関係を確立し、細胞増殖の速度の変化の正確な定量を可能にする。いくつかの実験または実験において、MTTアッセイの結果を使用して、I型プロコラーゲンCペプチドアッセイの結果を標準化し得る。
【0090】
試験系において、試験物質を使用して適合性試験を実施する。各試験物質のアリコートを、ガラス試験管において当量の2mg/ml MTT溶液と混合する。チューブをキャップして、変換がすぐに起こらないかぎりは、約2時間室温で暗所でインキュベートする。紫色への色の変化の証拠は、上記試験物質が同時にMTTを還元し得、正しくない反応を生じることを示す。色の変化が認められた場合、「ブランク組織メッシュ(blank
tissue meshe)」を行う。アッセイにおいて、これらのブランクを同じ量の試験物質で行い、そして最も長い時点でのみ行う。何かが観察される場合、バックグラウンドの読み取り値をそれぞれの試験物質から差し引く。
【0091】
(3.組織培養物におけるTestSkinの使用)
TestSkin II組織を使用して、試験物質がコラーゲン合成を促進または阻害するいずれかの能力を評価する。この試験をまた使用して、試験物質に曝した後の組織の生存率を評価する。TestSkin IIは、生きているヒト皮膚の実際の構造および生物学的応答機構を厳密に刺激する、機械的に安定であり、かつ生物学的に機能的な皮膚構造からなる。この組織は、表皮および真皮の両方を有する。上面表皮層は、生きているヒトケラチノサイトからなり、十分に分化した角質層を有する。この表皮は、コラーゲンを高密度なマトリックスに整列させる生きているヒト皮膚の線維芽細胞と共に散在されるウシコラーゲン格子からなる支持皮膚層上で増殖する。以下の組織培養プロトコルに従って、TestSkinを使用する。
【0092】
(TestSkin培養プロトコル(1日目))
必要なだけの6ウェルプレートを使用してアッセイを完了し、フードの下に配置する。各プレートを含むパッケージを開け、プレートカバーを外して作業面上でひっくり返す。1mlのDMEM/F−12を一緒に、1ウェルにつき1つのMillicellを6ウェルプレートの各ウェルに配置する。プレートカバーを再配置し、TestSkin II単位が切断され保存の用意ができるまで、6ウェルプレートを取っておく。TestSkin II単位を切断するために、シールしたポーチの外表面を70%エタノールで拭う。滅菌はさみを使用してこのポーチを開け、TestSkin II単位を含んだトレーを除く。TestSkin IIトレーからカバーを除き、カバーの内側が滅菌状態のままであるように作業表面上でひっくり返す。滅菌ピンセットを使用してTestSkin IIトランスウェルを除き、カバーの内側に配置する。TestSkin II単位を切断するために、滅菌生検ポーチ(8mm)を使用する。このポーチをTestSkin II単位の表面に配置し、ゆっくりを押し下げて同時にねじる。このポーチを回転して戻し、空間的に回転させながら、十分な圧力を適用して皮膚およびポリカーボネート膜の両方を通って切断する。このポーチは、完全には周りをねじらない。なぜならば、これは皮膚を裂く傾向があるからである。個々の切片が、皮膚の残りから分離されている場合、それを滅菌針のノーズピンセットで除去し、切片の縁のみをつかみ、そして切片をはさんだり折り重ねたりしないように注意する。この切片は、Millicell上に側方を下側に注意深く配置した真皮であり、Millicellの下部と皮膚との間に気泡を含まずに平らに置くことを確実にする。1つの縁がまず下に配置されて、気泡が形成されないように残りの部分をゆっくりと下に置くことが有用である。表皮表面は表を上にしたままであり、皮膚表面を有するポリカーボネート膜は、Millicellに接して置く。適当な数の切片を分離して6ウェルプレート内のMillicell内に配置するまで、この手順を繰り返す。切り出しを完了し、カバーをプレート上に戻して、このプレートを約37±2℃および5±1% CO2のインキュベーターに一晩(16〜24時間)配置する。
【0093】
(TestSkin組織培養プロトコル(2日目))
各ウェル中の培地を吸引し、1mlの新しいDMEM/F−12培地で置き換える。各処置群(陰性コントロール、陽性コントロール、および試験物質)について、10μlの物質を組織上に配置して、投与パッド(dosing pad)でカバーする。この組織を約37℃±2℃および5±1% CO2のインキュベーターに戻し、約48時間配置する。
【0094】
(TestSkin組織培養プロトコル(3日目))
全ての試験サンプルを、組織1個あたり10μlの各処理で再び局所的に処理する。この組織を約37℃±2℃および5±1% CO2のインキュベーターに戻し、約24時間配置する。
【0095】
(TestSkin組織培養プロトコル(4日目))
次のプロコラーゲンアッセイのために、各ウェルから培地を除いて凍結する。各処理セットにおいて、4つの組織サンプルのうちの3つに対してMTTアッセイを即座に実施する。各処理群からの4番目の組織をホルマリン中に固定し、パラフィン包埋し、薄層に切り、そして組織学的染色に供す。この組織スライドをエラスチンおよびコラーゲン分析のために顕微鏡で調べる。
【0096】
2mg/ml MTT溶液(2mg/組織に対して十分)を、DMEM/F−12(37±2℃に予め温めたもの)で作製する。撹拌プレート上で、このMTT溶液を室温で10〜15分間混合する。次いで、この溶液を4000rpmで5分間遠心分離する。ペレットを廃棄して上清のみを使用する。6ウェルプレートのウェルに、MTT溶液を添加する(2ml/ウェル)。Millicell挿入物から組織を除き、そして洗浄ボトルからの少なくとも5mlのPBSでビーカーの上からリンスする。全ての試験物質を除去するまで、この組織をリンスする。次いで、6ウェルプレートの対応するウェルに組織を配置する。このプレートを、125rpmのシェーカープレート上で約2時間、約37℃±2℃および5±1% CO2においてインキュベートする。2時間のインキュベーションの終わりに、MTT溶液を除去して廃棄する。1mlのPBSを、各ウェルに添加する(2分間×2)。各PBS洗浄液を吸引によって除去する。
【0097】
MTTに曝した後、600μg/mlのThermolysin溶液(2mlの総容量に対するDMEM/F−12)中で30分間37±2℃で、組織をインキュベートする。このインキュベーション時間は、組織の皮膚と表皮の層とを分離するために十分であるべきである。この表皮は、真皮の上部に浮遊しているべきである。組織の皮膚部分を6ウェルプレートの別個のセットに配置する。両方のセットのプレートから、1ウェルあたり1mlのイソプロピルアルコールを用いてMTTを抽出する。このプレートを1時間シェーカープレート上に配置する。イソプロパノール抽出の後、200μlの抽出物を96ウェルプレートの対応するウェルに移す。このプレートを540nmにおいて読み取る。
【0098】
(4.ヒト皮膚線維芽細胞の組織培養プロトコル)
新生児の包皮由来の初代ヒト皮膚線維芽細胞を、継代10〜11回において48ウェルプレートに2.5e4細胞/ウェル/0.5ml培地で播種した。この培地は、1×非必須アミノ酸(HyClone カタログ番号SH30238.01,Lot番号AMC15759)、1×抗生物質/抗真菌物質(Sigma カタログ番号A5955,Lot番号13K2363)および2%ウシ血清(bovine calf serum)(HyClone カタログ番号SH30072.03,Lot番号ANF−18955)を含むDMEM (MediaTech,カタログ番号10−017−CV,Lot番号10017103)からなる。前のロットの子ウシ血清(Lot番号AMM17780)由来のサンプルもまた、使用した。37℃で約16〜24時間、細胞を培養し、5% CO2インキュベーターで加湿し、次いで培地を交換し、エクオール、アスコルビン酸(Sigma,カタログ番号A4544,Lot番号073K0139)、またはビヒクルをウェルの培地に添加した。試験物質またはコントロール物質の存在下において、細胞を約48時間培養した。
【0099】
(5.器官型3次元皮膚培養)
器官型3次元(3D)培養物を生成するために、皮膚線維芽細胞をナイロンメッシュに播種して、記載されるように原則的に約8週間の間増殖させた(Fleishmajer,J Invest Dermatol,97:638−643,1991;Contard,Cell Tissue Res,273:571−575,1993ならびにPinney,Liu,SheemanおよびMansbridge,J Cell Physiology,183:74−82,2000を参照のこと)。このインビトロモデルは、真皮の発生をきっちりと模倣し、器官の特性を用いた研究のための系を提供する。この特性は、例えば、表皮分化を支持する能力(Slivka,J Invest Dermatol,100:40−46,1993を参照のこと)およびコラーゲン原線維発生(Contard,Cell Tissue Res,273:571−575,1993)である。2週間後に、全ての3D培養物に20μg/mlのアスコルビン酸を補充したが、単層培養物には補充しなかった。その他の点では、単層と3D実験との間で全ての材料および手順は本質的に等しかった。検出できないレベルのエストロゲン活性を有する環境においてエストロゲン試験物質の効果を試験するために、3Dの実験物を、フェノールレッドを含まない培地中で3週間増殖させ、その後試験物質中で増殖させた。従って、3Dの実験物は、フェノールレッド色素に曝されなかった。
【0100】
(6.ヒト前立腺癌細胞培養)
ヒト前立腺癌細胞株をATCC(ATCC # CRL−1740,LNCAP−FGC)から入手し、5%ウシ胎児血清(Hyclone カタログ番号SH30088.03,Lot番号APC20780)および5mM Hepes(Sigma Cat. H−0887)、1×抗生物質/抗真菌物質(Sigma カタログ番号A5955)を含むRPMI培地(Sigma カタログ番号R−8758)において、37℃で培養し、5% CO2のインキュベーターで加湿した。低温保存する際に10% FBSおよび10% DMSOを含むRPMI培地中で液体窒素の中に低温保存および保管するまで、細胞をT−150フラスコで3代継代して増やした。次いで、冷凍バイアル(cryovial)を37℃の水浴で解凍し、1代または2代継代して再度増やし、96ウェルプレートにおいて、0.2mlの培地(RPMI 5% FBS培地)中で96ウェルあたり10,000細胞でプレートした。約48時間後、2% FBSおよび1×抗生物質/抗真菌物質を含むフェノールレッドを含まないDMEM/F12(Gibco カタログ番号21041−025)に培地を交換し、そして試験物質およびDMSO/ビヒクルコントロールを10×ストックから適切な濃度で添加した。試験物質およびコントロールの存在下で細胞を約48時間培養し、その後前立腺特異的抗原(PSA)ELISAのために培地上清を除去した。
【0101】
(7.I型コラーゲンC−ペプチドELISA)
コラーゲン(I型、II型、III型、IV型、およびV型)を、プロコラーゲンを呼ばれる前駆体分子として合成する。これらは、小胞体内でプロコラーゲン分子を3重らせん立体配座に折りたたむのを促進する、プロペプチドと呼ばれるさらなるペプチド配列を含む。このプロペプチドは、分泌の間にコラーゲン3重らせん分子から切断され、その後3重らせんコラーゲンは、細胞外コラーゲン原線維に重合される。従って、遊離のプロペプチドの量は、合成されたコラーゲン分子の量を化学量論的に反映する(Takara Biomedicals,Collagen Type I C−Propeptide
Kit)。
【0102】
皮膚線維芽細胞は、主にI型コラーゲンを合成し、C末端プロペプチドの切断は、細胞外マトリックス内の原線維への沈積のために必要とされる。このプロペプチドは、細胞培養上清において処理されていない形態を認識しない抗血清を使用して測定され得、患者血清中の線維症の尺度として臨床的に使用され得る。切断されたプロペプチドの量は、沈積したI型コラーゲンの量に直接的に比例し、精製した標準物質および市販のELISAキット(Takara Mirus,Inc.,カタログ番号TAK−MK−101)を使用して正確に定量され得る。48時間後、試験物質またはコントロールの存在下において、培養培地上清を除去し、製造者の指示に従ってELISAキットを使用して、Molecular Devices Vmaxプレート96ウェルプレートリーダーおよびSoftMaxソフトウェアを使用して、即座に分析した。アスコルビン酸(ascorbate,Sigma カタログ番号A4544,Lot番号073K0139)は、コラーゲン沈積を刺激することが公知であるので、アスコルビン酸を陽性コントロールとして使用し、20μg/mlの最終濃度で培地に添加した。ビヒクル処理した培地または培地単独を、陰性コントロールまたはブランクコントロールとして使用した。
【0103】
組織培養物由来の上清または培地を培養プレートまたは培養ウェルから収集する。サンプル上清を2000〜3000rpmで5〜10分間遠心分離機で遠心分離し、I型コラーゲン C−プロペプチドを定量する。このペレットは、本研究には使用しない。アッセイ溶液の調製は、以下のとおりである:
(標準溶液(640 no PIP/mi))
標準物質を1mlの蒸留水で再水和し、約10分間断続的にカウンタートップで回転させることによってゆっくりと混合する。標準物質は、表1に示すように作製する。この標準溶液は、4℃で1週間安定である。標準物質は、二重で試験する。
【0104】
【表1】
(停止溶液(1N H2SO4)
5.8mlの濃縮H2SO4を、180mlの蒸留水に注意深く添加する。蒸留水を添加して、最終容量を200mlとする。この溶液を十分に混合する。この溶液は、6ヶ月まで2〜26℃で保存することが可能である。
【0105】
(抗体−POD結合体溶液)
バイアル1の内容物を11mlの蒸留水に溶解し、カウンタートップで回転することによって穏やかに混合する。このバイアルは、光感受性である場合、ホイルで覆われなければならない。この溶液を約10分間ゆっくりと混合し、気泡の形成を回避する。使用する前にこの溶液を直接調製し、すぐにマイクロタイタープレートに移す。抗体−POD結合体溶液の100μlアリコートを、標準物質のウェルおよびサンプルウェルにピペットで移す。標準物質およびサンプル(各20μl)を対応するウェルにピペットで移す。マイクロタイタープレートを、その側面を15秒間軽く叩くことによって混合し、次いでホイルで密封して約3時間37℃でインキュベートする。インキュベーションの終わりに、プレートをひっくり返し、約400μlのPBSで各ウェルを4回洗浄することによって、各ウェルから溶液を除去する。各洗浄の間に、ペーパータオル上でマイクロタイタープレートをひっくり返してさかさまで軽く叩くことによって、プレートを空にして可能な限りのPBSを除去する。基質溶液(100μl)を各ウェルにピペットで移す。このプレートを15秒間穏やかに叩いて混合し、15分間室温(20〜30℃)でインキュベートする。停止溶液(100μl)を各ウェルにピペットで移し、プレートを15秒間穏やかに叩いて混合する。サンプルの吸光度をELISAマイクロプレートリーダーで450nmで読み取る。
【0106】
(計算およびデータの分析)
I型コラーゲンC−プロペプチドアッセイのために、1つのサンプルにつき1以上の読み取り値を得た場合、各サンプルに対する読み取り値を平均化する。標準曲線を得るために、log−logスケールを使用して、標準物質に対してPIP濃度(ng/ml)に対する吸光度をプロットする。サンプルについて、縦軸上に平均吸光度値を位置決めし、そして標準曲線と交差する横線を位置決めする。交差する地点において、横軸からPIP濃度(ng/ml)を読み取る。プロコラーゲンの値(ng)を組織サイズのバリエーションに対して標準化するか、または真皮のMTT値で割ることによって取り決める。なぜならば、組織の皮膚の層は、コラーゲン合成の原因であるからである。
【0107】
全てのMTT(真皮+表皮)の複製サンプルについての平均OD値および標準物質バリエーションを計算する。生存率のパーセントは、以下の式を使用して計算する:
生存率(%)=(試験物質の平均OD/陰性コントロールの平均OD)×100。
【0108】
(8.PSA ELISA)
組織培養上清をPBS中に10倍希釈して−20℃で保存し、次いでアッセイの前に室温で解凍した。遊離PSAのための市販のELISAキット(Bio−Quant,カタログ番号BQ 067T)を製造者の指示に従って利用し、Molecular Devices Vmax 96ウェルプレートリーダーおよびSoftMaxソフトウェアを使用してデータを決定した。
【0109】
(9.細胞内FACS分析および細胞周期の決定)
単層を穏やかにトリプシン処理するか、または3D培養物から1mg/mlコラゲナーゼで広範囲に消化することによって、単一細胞懸濁液を生成した。製造者の指示に従って、フローサイトメトリー(IntraCyte,Orion BioSolutions,Inc.,カタログ番号01017)による細胞内検出のために細胞を調製するために、市販のキットを利用した。手短に言えば、細胞をホルムアルデヒドで固定し、非イオン性洗剤で透過化処理し、そして非特異的タンパク質結合をブロックした。以下の一次抗体を1〜2μg/mlで使用した:アフィニティー精製した抗ヒトI型コラーゲン(Chemicon Inc.,カタログ番号AB758)、アフィニティー精製した抗ヒトIII型コラーゲン(Sothern Biotechnology Associates,Inc.カタログ番号1330−01)、モノクローナル抗ヒトエラスチン(Sigma,Inc.,カタログ番号E4013)、ポリクローナル抗ヒトエラスターゼ(The
Binding Site Inc.,カタログ番号PC052)、およびモノクローナル抗ヒトMMP−3/ストロメライシン−1(Calbiochem Inc.,カタログ番号IM362)。陰性コントロールとしては、各一次抗体として同じ濃度において同じ種由来の無関係な免疫グロブリン、ならびに未染色の細胞、および一次抗体のない細胞を含んだ。一次抗体結合を、アフィニティー精製した種特異的な蛍光色素結合体化二次抗体を使用して検出した。FACS分析のために、488nmのアルゴンレーザーを備えるCoulter EPICS Eliteサイトメーターを使用し、1つのファイル(file)につき約20,000個の細胞をCoulter ELITEソフトウェアを使用して分析した。
【0110】
(10.眼球および皮膚の刺激(irritection)アッセイ)
実際の眼球および皮膚の刺激試験を模倣する眼球および皮膚の刺激アッセイは、定量的なインビトロ試験方法である。眼球刺激の標準化アッセイを実施するために、半透膜から構成される合成生物バリア(biobarrier)に試験サンプルを適用する。皮膚刺激の標準化アッセイを実施するために、色素含有ケラチン−コラーゲンマトリックスでコーティングされた類似の合成生物バリアに試験サンプルを適用する。適用後、このサンプルをこの合成生物バリアによって吸収させ、このバリアを通して高秩序のグロブリンおよび糖タンパク質を含む独自の溶液と徐々に接触するようにする。試験サンプルとこれらのタンパク質および高分子複合体との反応は、タンパク質溶液の混濁度の増加として容易に検出され得る立体配座の変化を促進する。眼球刺激試験に関して、混濁度は、405nmの波長において分光光度的に検出することが可能である。皮膚刺激試験に関して、適用したサンプルの遷移の間に生物バリアから解離する色素は、450nmの波長において分光光度的に検出することが可能である。
【0111】
試験サンプルが眼球を刺激する可能性は、刺激ドレイズ当量(Irritection
Draize Equivalent)(IDE)として表され、ここで試験サンプルが皮膚を刺激する可能性は、ヒト刺激当量(Human Irritancy Equivalent)(HIE)のスコアとして表される。試験物質によって生じる光学密度(OD405/450)の増加を、キャリブレーション物質のセットによって生じるODの増加を測定することによって構築する標準曲線に対して比較することによって、これらのスコアを規定する。これらのキャリブレータを、これらの試験において使用するために選択する。なぜならば、これらの刺激可能性は、一連のインビボ調査において以前から証明されているからである。これらのスコアリング系に基づいて予測するインビボ分類を表2および表3に示す。一般的に、これらのプログラムは、以下の判定基準を満たす場合に資格を与えるようにサンプルデータを受容するように設計されている:キャリブレータおよび内部品質コントロールサンプル(internal Quality Control
sample)のOD値は、以前に特定した範囲にある;サンプルブランクは、500OD単位未満である;正味のサンプルODは、約15を超える;そして阻害チェックは陰性である。
【0112】
【表2】
【0113】
【表3】
(11.統計学的分析)
適切な場合、Newman−Keuls post hoc検定に続いて、分散統計の分析(ANOVA)によって、データを分析した。有意性は、p<0.05であった。GraphPadソフトウェア(GraphPad Prism 3.0,San Diego,CA)を使用して、曲線フィッティング、科学グラフ(scientific graphing)および分析を完了した。
【0114】
(実施例1)
この実施例は、5α−DHTに対するエクオールのインビトロの選択的結合を実証する。ARに対するエクオールの結合親和性を決定し確立するために行った最初の結合競合研究において、[3H]5α−DHTの結合は、エクオールの非存在下においてよりも存在下においてより大きかった。ARをインキュベーションチューブから除去する([3H]5α−DHTおよびエクオールのみが残る)プロトコルにおけるわずかな改変は、[3H]5α−DHTの[3H]5α−DHT反応混合物の含有する溶出液への溶出をもたらした。[3H]5α−DHTのエクオールへの結合を確立する溶出ピークを同定するために、30cmのSephadex LH−20カラムを使用する。図3に示すように、[3H]5α−DHT+エクオールのカラムインキュベーションを適用した場合、5mLと9mLとの間の溶出画分において[3H]5α−DHTのピークが明らかである。このピークは、[3H]5α−DHTを単独でカラムに適用した場合には存在しない。さらに、5α−DHTまたは5α−DHT+エクオールを前立腺上清とインキュベートし、次いで30cmカラムを通過させる場合(図4A)、2つの別個の結合ピークが同定可能である。[3H]5α−DHTの第1のピークは、前立腺においてARに結合された[3H]5α−DHTを表す。これは、4mlと5mlとの間の溶出画分において見出される。さらに、後半のピーク(5mlと9mlとの間)が存在し、エクオールに対する[3H]5α−DHTの結合と一致する。しかし、エクオールの導入の前に36時間(平衡状態まで)、[3H]5α−DHTを前立腺上清とインキュベートする場合、[3H]5α−DHTの明らかな結合は存在しなかった(図4B)。[3H]5α−DHTと[3H]5α−DHT+エクオール(36時間後にエクオールを添加する)との両方は、4mlと5mlとの間の溶出で単一のピークを示し、このことは、エクオールがARについて5α−DHTと競合しないこと、またエクオールはレセプターにすでに結合している[3H]5α−DHTに結合しないことを示唆する。さらに、エクオールの5α−DHTへの結合が特異的であるようであることが注意されるべきである。なぜならば、類似の競合研究および結合研究は、他のステロイド(例えば、[3H]E2、[3H]T、[3H]DHEA、[3H]CORTおよび[3H]プロゲステロン)を使用して行われており、そこではエクオールに対する顕著な結合のいずれの出現もないからである(データは示さず)。[3H]5α−DHTへのエクオール結合の飽和分析は、1.32±0.4nMにおいて計算した見かけ上のKdを示す(図5)。
【0115】
表4は、各々に対する結合についてエクオールの親和性を決定するための結合アッセイにおいて試験した33種の異なるステロイド化合物を示す。エクオールは、5α−還元型ステロイドに対して中程度の親和性を有する一方、エクオールは、5α−ジヒドロテストステロン(5α−DHT)に対して最も高い親和性を示し、そして5β−ジヒドロテストステロン(5α−DHT)または最も一般的な天然の性ステロイド(例えば、エストラジオール、エストロン、エストリオール、プロゲステロンまたはテストステロン)のいくつかに対して親和性を有さない。
【0116】
【表4】
(実施例2)
餌食1gあたり600mgのイソフラボンまたは600ppmのイソフラボンを含む植物性エストロゲンが豊富な餌食(本明細書において以後「Phyto−600」餌食という)、または非常に低レベルのイソフラボンを含む餌食(本明細書において以後「Phyto−Free」餌食という;約10ppmのイソフラボンを含む)のいずれかで、Long−Evans雄ラットを飼育した。Phyto−Freeを与えた雄ラットおよび雌ラット(75日齢)に対して、Phyto−600を与えた雄ラットおよび雌ラットで循環イソフラボンレベルが異なるということを実証するために、本発明者らの研究室によって以前に実施したように、血清イソフラボンレベルをGC/MSによって決定した(K.D.R.Setchell,Am J Clin Nutr 129:1333S−1346S,1998;およびK.D.R.Setchellら,J Nutr 132:3577−3584,2002における方法を参照のこと)。異なる分類のイソフラボンの場合、Phyto−600を与えた雄が、Phyto−Freeを与えたものの値と比較して顕著に高いイソフラボンレベルを示し、成体の雄ラットおよび雌ラットでのイソフラボン濃度として表5に示す。より重要なことには、Phyto−600を与えたラットのエクオールレベルは、総植物性エストロゲンレベルの約78%にあたる。
【0117】
【表5】
他の代謝性ホルモンが餌食処置または年齢によって変更されるか否かを決定するために、血清のグルコースおよび甲状腺(T3)のレベルをアッセイする。年齢または血液サンプルの供給源[動脈性(ART)または静脈性(TRUNK)のいずれか]は独立して、グルコースレベルは、図6に示すようにPhyto−Freeを与えたラットの値と比較してPhyto−600を与えた雄マウスでわずかだが有意に高い。しかし、T3レベルを定量する場合、図7に示すように、Phyto−Freeを与えた動物と比較してPhyto−600餌食を与えた雄のLong−Evansラット(80日齢または110日齢)において、T3血清レベルは有意に上昇する。このことは、甲状腺レベルは大豆消費によって増強されることを実証し、これは、甲状腺薬物適用の減少または甲状腺処置の停止は、餌食における大豆ベースの食物を消費することによって行われるという個々の不確かな証拠と一致する。このことはまた、大豆食物の消費の後にヒトでT3レベルが同様に上昇するという報告とも一致する(Watanabe,S.ら,Biofactors 2000:12:233−41およびLephart,E.D.ら,Nutrition
Metab (London)2004:1:16)。
【0118】
(実施例3)
Phyto−Free 餌食期間の開始の前に、上記の実施例において記載したように、雄のLong−EvansラットにPhyto−200餌食を与える。このラットを約52日齢においてPhyto−Free餌食を含む餌食に置き、ランダムに3つの群に割り当てる。73日齢で開始し、ラットは、0.1ccのビヒクル(ピーナッツ油)、1mgのエクオールのラセミ混合物(ビヒクル中)(0.83mg/kg体重/日)の皮下注射(毎日)、または5mgのエクオールのラセミ混合物(ビヒクル中)(4.2mg/kg体重/日)(3日に一度)を受ける。エクオール注射が雄の生殖器官に対して有害な効果を有するか否かを決定するために、これらの動物において精巣の重量を定量する。エクオール注射による精巣重量の顕著な変化はなく、図8に示すように精巣の重量は注射処置群のなかで実質的に同じである。
【0119】
図9は、エストロゲンレセプターβ(ER−β)、5α−レダクターゼ酵素(5α−R)およびアンドロゲンレセプター(AR)の毛のない皮膚(図9A)、毛包球(図9B)および皮脂腺(図9C)のヒト皮膚における分布を示す。これらの酵素およびレセプターの局在に関して精通することは、以下の実施例の考察のために重要である。
【0120】
(実施例4)
TestSkinモデルにおけるコラーゲン合成に対するエクオールの効果を評価した。表皮領域のみを試験する場合において、ビヒクル、アスコルビン酸、または0.3%ラセミエクオールは、図10に示すとおり、プロコラーゲンI型C−ペプチドアッセイによって測定されるように類似した量のプロコラーゲンを有する。陰性コントロール物質は、コントロールビヒクルと比較して、より少ないプロコラーゲンを合成した。しかし、ラセミエクオールの1.0%濃度は、約4倍のプロコラーゲン合成を誘導し、そして5.0%のラセミエクオールは、ビヒクルコントロールレベルに対して18倍の増加を誘導した。
【0121】
ビヒクル、アスコルビン酸、または0.3%ラセミエクオールで処置した表皮領域および皮膚領域の標準化平均はまた、図11に示されるように類似の量のプロコラーゲンを実証し、そして陰性コントロール物質と共にインキュベーションしたサンプルは、より少ないプロコラーゲンを合成した。1%濃度のラセミエクオールは、約4倍のプロコラーゲン合成を誘導し、そして5%濃度は、約6倍の増加をもたらした。皮膚領域の試験において、図12に示したように、ビヒクルのみ、アスコルビン酸のみ、または0.3%ラセミエクオールのみは、類似した量のプロコラーゲンを有し、そして陰性コントロール物質は、わずかに少ないプロコラーゲンを合成した。1%濃度および5%濃度でのラセミエクオールは、ビヒクルコントロールレベルと比較して約4倍のプロコラーゲンを合成を誘導した。従って、この人工(インビトロ)皮膚モデルを使用して、1%エクオールの閾値は、皮膚領域においてプロコラーゲンの最大刺激を提供するのに十分であるようにみえる。
【0122】
(実施例5)
本研究は、3つの異なる濃度(0.01%、0.001%および0.0001%)における初代ヒト皮膚線維芽細胞の生存率に対するラセミエクオールおよび17β−エストラジオールの効果をMTTアッセイによって評価し、そしてコラーゲン沈着をI型コラーゲンC−ペプチドELISAによって評価した。
【0123】
天然のステロイドホルモンである17β−エストラジオールに対して、上記のMTTアッセイプロトコルにおいて記載されたとおりに低下したMTTを定量することによって、ヒト皮膚の単層の線維芽細胞に対する細胞毒性を決定するためにエクオールを試験した(図13)。試験物質のエクオールおよび17β−エストラジオールを、ジメチルスルホキシド(DMSO)、一般的な細胞培養ビヒクルに溶解した。ビヒクルとしての0.2%、0.02%、および0.002%のDMSO中の0.01%、0.001%、および0.0001%のエクオールにおいて、試験物質をアッセイした。未処置コントロールについての範囲は、0.77〜0.93OD単位を変動した。試験した濃度範囲にわたって、エクオールは、17−βエストラジオールよりもヒト皮膚の単層の線維芽細胞に対して毒性ではなかった。さらに、0.001%および0.0001%の試験物質の濃度において、低下したMTT値は未処置コントロールの範囲にあり、このことは、この細胞毒性レベルは、未処置のコントロール値と等価であることを示した。最も高い濃度の0.01%において、試験物質の毒性レベルは、エクオールおよび17−βエストラジオールについてそれぞれ約0.52および0.48であり、これは、インビトロのアッセイ条件について受容可能な結果である。従って、試験した濃度において、エクオールは、天然のステロイドホルモンである17−βエストラジオールと比較してヒト皮膚の単層の線維芽細胞に対してより毒性ではない。
【0124】
ELISAによって、ヒト皮膚の単層の線維芽細胞におけるコラーゲン沈着を定量した(図14)。ビヒクルのDMSOは、陰性コントロールとして役立つ一方で、DMSOを含まないアスコルビン酸は、陽性コントロールとして役立った。100μg/mlおよび10μg/mlのエクオールで処置した群を同じ濃度の17−βエストラジオールと比較する場合、コラーゲン沈着において、それぞれ顕著に2.1倍の増加および1.55倍の増加を観察した。この実施例は、エクオールが、天然のステロイドホルモンの17−βエストラジオールと比較して、顕著に大きいコラーゲン刺激特性を有することを実証する。このヒト皮膚の単層線維芽細胞アッセイにおいてコラーゲン産生が顕著に増加したことは、コラーゲンに対するエクオールの刺激効果が、皮膚のパラメータ(例えば、機械的損傷、物理的損傷、および光による加齢の損傷および皮膚のしわ形成の対する生物学的加齢の影響)を処置するための有効な方法を提供することを実証する。
【0125】
(実施例6)
皮膚に対するエクオールの効果を、コラーゲン沈着によって評価する場合、インビトロでヒト皮膚の単層線維芽細胞を使用したI型プロコラーゲンC−ペプチドELISAによって評価する。この研究は、ヒト皮膚線維芽細胞の生存率をMTTアッセイによって決定する際、そしてI型コラーゲンC末端ペプチドELISAによってコラーゲン沈着を決定する際に、市販される皮膚の浸透剤(penetrating agent)、試験物質のエクオールを送達する際のトランスキュトールの効果を評価した。トランスキュトール、またはジプロピレングリコールは、ヒト皮膚の健康のための表面的適用物の活性成分の送達において、安全性および有効性を提供する(安全性、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、エトキシジグリコール、およびジプロピレングリコールの評価に関する最終報告、Journal of the American College of Toxicology,第4巻,第5号,1985,Mary Ann Liebert,Inc.Publishers)。ヒト皮膚の単層線維芽細胞の細胞毒性が試験される場合、0.0001%(w/vのトランスキュトール)におけるエクオール処置は、0.0002%トランスキュトールビヒクルまたは未処置コントロールと比較して顕著には異ならない(図15)。
【0126】
次に、エクオールがコラーゲン沈着を刺激するか否かを決定するために、ヒト皮膚の単層線維芽細胞アッセイにおいてエクオールを試験した。図16に示すように、未処置のコントロール値は、330±30ng/ml(横線)であり、そしてこのレベルは、0.002% トランスキュトールビヒクルのレベルと類似していた。しかし、0.0001%のエクオールは、コラーゲン沈着を未処置コントロールレベルよりも1.8倍、そしてトランスキュトールビヒクルレベルよりも1.6倍顕著に刺激し、これは、トランスキュトールが、エクオールのヒト皮膚線維芽細胞への送達に対して有効な方法であることを実証する。さらに、エクオールでの処理は、アスコルビン酸での陽性コントロール処理と異ならず、これは、0.0001%のエクオールがインビトロのヒト皮膚の単層線維芽細胞アッセイ系においてコラーゲン沈着を最大限に刺激することを示唆する。コラーゲンの沈着を顕著に増加させるためのヒト皮膚線維芽細胞に対するエクオールの顕著な刺激の影響は、ヒト皮膚の健康のいくつかの重要な問題(例えば、機械的損傷、物理的損傷、および光による加齢の損傷、ならびに皮膚の加齢の天然の生物学的で経時的なプロセスの適用)を扱い得る。
【0127】
(実施例7)
これは、エクオールがインビトロで5α−DHTを結合およびブロックする能力に関する実施例である。ヒト皮膚線維芽細胞に対するエクオールの細胞毒性を、MTTアッセイによって決定した(図17)。この陰性コントロールは、DMSOを含まない組織培地(DMEM/HAMS F−12)単独からなり、約0.83の細胞生存率レベルを生じた。陰性コントロールは、陽性コントロールのDMSOを含まないアスコルビン酸と類似し、約0.85であった。0.001%のエクオール(またはビヒクルとしての0.002% DMSO中、10mg/ml)は、ヒト皮膚の単層線維芽細胞において、陰性コントロール(DMSOなし)および陽性コントロール(アスコルビン酸)と類似の生存率レベルを示した。しかし、強力な天然のアンドロゲンステロイドホルモンである5α−DHTは、全ての他の処置群と比較して最も高い細胞毒性を示した。エクオールが、インビトロで5α−DHTサンプルに添加される場合、エクオールは、5α−DHTの毒性効果を完全に無効にした。このことは、エクオールは、このインビトロのヒト皮膚の単層線維芽細胞アッセイ系において5α−DHTに結合し、そしてエクオールが5α−DHTの効果を生物学的に不活化するというインビボの証拠を確認するという直接の証拠を提供する。最終的に、ヒト皮膚線維芽細胞において5α−DHTの有害な効果(細胞毒性)をブロックし、そして同時にコラーゲン沈積を刺激することによって、この実施例は、エクオールがヒト皮膚の健康状態の増強に関して強力な効果を有することを実証する。
【0128】
(実施例8)
これは、PSA ELISAによって測定されたように、エクオールが、インビトロのLNCAP前立腺癌細胞において前立腺特異的抗原(PSA)(5α−DHTによって調節されることが公知である分子)を分泌する5α−DHTの刺激効果を妨げるという効果に関する実施例である。0.1nM、1nM、または10nMの5α−DHT、1nM、10nM、または100nMのエクオール、あるいは5α−DHTとエクオールとの組み合わせ(0.1nMの5α−DHTと1nMのエクオール;1nMの5α−DHTと10nMのエクオール、または10nMの5α−DHTと100nMのエクオール)による処置。MTTアッセイによって評価した場合、細胞毒性は、LNCAP前立腺癌細胞によるPSA産生に影響しない。図18に示されるように、1nM、10nM、または100nMのビヒクルPSAレベルは、処理なしのベースラインと異ならない。0.1nM、1nM、または10nMの5α−DHTでの処理は、PSA分泌を最大レベルまで刺激した。1nM、10nM、または100nMのエクオールで処理した細胞由来のPSAレベルは、ベースラインよりも低く、そして群の間で顕著な違いはなかった。しかし、10nMの5α−DHTと100nMのエクオール、ならびに1nMの5α−DHTと10nMのエクオールの組み合わせは、5α−DHT単独と比較してPSA分泌の増加を排除した。実施例1で実証した結合と一緒に考えて、この実施例は、エクオールは5α−DHT分子に結合し、そして皮膚および前立腺において5α−DHT分子を生物学的に不活化するということを実証する。
【0129】
(実施例9)
これは、エクオールがインビボで5α−DHTの刺激効果を妨げるという実施例である。25日間連続して、1mgのエクオールをラットに注射し、血清の5α−DHTレベルおよび前立腺の重量を測定した。なぜならば、前立腺は循環5α−DHTによって刺激されることが公知だからである。Charles River Laboratories(Wilmington,MA,USA)から購入した成体(50日齢)の雄(n=16)を個々にケージに入れ、Brigham Young University Vivariumで収容し、そして11時間の暗所13時間の明所のスケジュール(0600−1900で明るくした)に維持した。購入する前、雄の動物には、約200ppmのイソフラボンを含む餌食を与えた。50日齢において、雄のラットを約10ppmのイソフラボンを含む餌食のもとに置いた(以後、Phyto−Free餌食(Zeigler Bros.,Gardnes,PA,USA)という)。全ての動物を215日齢までthePhyto−free餌食を与え続けた。150日齢において、年齢と体重によって適合した2つの群にラットを分けた(コントロール処置またはエクオール処置)。190日齢から、雄ラットに毎日の0.1ccの皮下注射を開始した。この注射は、頚部のうなじにおいて、ビヒクル(DMSO)またはエクオールを約2.5mg/kgの用量で25日間連続して行った。各群の体重を処置を開始する前の150日目から開始して処置を受けた直前と直後で体重を得、毎週記録した。216日齢において、ケタミン/アセプロマジンで動物を麻酔し、心臓から血液を収集した。次に、腹側の前立腺器官を切り出して重さを量った。収集した血液サンプルを遠心分離し、アッセイ時まで−20℃で血清を保存した。
【0130】
血清テストステロンの5α−DHT、および17β−エストラジオールを、Diagnostic System LaboratQries(Webster,TX,USA)から購入したラジオイムノアッセイ(RIA)キットによって定量した。黄体形成ホルモン(LH)を、National Institutes of Health(NIH)の下垂体ホルモンプログラムからの標準物質を利用するアッセイによって定量した。各RIAについて二重で内部コントロールサンプルと共に、サンプルを使用した(run)。全てのRIAにおいて、コントロール値は、正常なそれぞれの範囲内にあった。このアッセイについての分散量のアッセイ内の係数は、以下のとおりであった:テストステロン=6.0%;5α−ジヒドロテストステロン=8%、17β−エストラジオール=5%およびLH=9%。
【0131】
LHおよびテストステロンを処置群の間で定量する場合、これらのホルモンレベルに顕著な差はない(表6)。LHは、精巣においてライディヒ細胞からのゴナドトロピンが制御するテストステロン合成であるので、これは驚くべき結果ではない。しかし、エクオールを注射した動物は、ビヒクルを注射した動物と比較して約50%の血清5α−DHTの減少を示した。最終的には、17β−エストラジオールレベルが決定される場合、処置群の間に顕著な差は存在しない。全てのホルモンレベルは、ラットのこの系統、年齢および性別について予想される正常の範囲内であった。前立腺の重量は、コントロールラットと比較してエクオールを注射した雄において約20%有意に減少した。この知見は、前立腺細胞増殖を制御することが公知の循環5α−DHTレベルの有意な減少と、それ故前立腺の重量の減少に対応する。従って、このインビボ研究は、血中の5α−DHTレベルの顕著な減少およびエクオール処置した雄ラットの前立腺重量の顕著な減少によって示されるように、エクオールが、5α−DHT分子に接触し、そして5α−DHT分子を生物学的に不活化し得ることを実証する。最終的に、上記に報告したインビトロ研究およびインビボ研究は、エクオールが、ホルモン5α−DHTによって調節される皮膚および皮膚の疾患/障害を処置する際に有効であることを実証する。
【0132】
【表6】
(実施例10)
これは、細胞内蛍光細胞分析分離装置(FACS)分析による、I型コラーゲンおよびIII型コラーゲンならびにエラスチンのタンパク質発現の刺激、マトリックスメタロプロテアーゼ−3(MMP−3)タンパク質発現の阻害、アポトーシスの阻害、ならびにヒト皮膚線維芽細胞の3次元(3−D)培養における細胞増殖の刺激に対するエクオールの効果の実施例である。この研究において、上記パラメータに対するエクオールの効果を天然の女性ホルモン17β−エストラジオールと比較した。エクオールおよび17β−エストラジオールの両方を、10nM濃度において使用した。この濃度は、インビトロ実験を使用して研究するための正常範囲に対応し、そして0.1〜1.0nM 17β−エストラジオールおよび1nM 5α−DHT(女性)、ならびに3nM 5α−DHT(男性)のインビボの循環濃度範囲を表す(Wilson JDら,Williams Textbook of Endocrinology,第9版,W.B.Saunders,Philadelphia,PA,1998を参照のこと)。
【0133】
インタクトな真皮とよく似ていて線維芽細胞によって細胞外マトリックスの組織様沈着および成熟を可能とする器官型3次元皮膚モデルを使用すると、エクオールは、FACSによってアッセイした場合、ビヒクルと比較してI型コラーゲン(図19)およびIII型コラーゲン(図20)を顕著に刺激した。これらの研究を、この方法論(すなわち、FACS分析)を使用するためのコントロールとして部分的に実施した。なぜならば、エクオールは、培養物において皮膚単層線維芽細胞によるコラーゲン沈着を増加させることが以前に示されていたからである。17β−エストラジオールではなくエクオールのみが、I型コラーゲンおよびIII型コラーゲンの両方を増加させた。細胞外マトリックス分子の正味の沈着はまた、マトリックス分解酵素の存在および活性によって影響されるので、細胞内FACSによるMMP−3/ストロメライシン−1の発現も測定した(図21)。MMP−3は、コラーゲンおよびエラスチン、ならびに他の細胞外マトリックス成分を分解し得る重要な酵素である。エクオールおよび17β−エストラジオールの両方が、MMP−3タンパク質発現を減少させた。しかし、エクオールは、ビヒクルと比較して、MMP−3の発現を3.6分の1に減少させ、17β−エストラジオールは2.3分の1に減少させた。このことは、エクオールが、マトリックス分解酵素を阻害し、次にコラーゲンおよびエラスチンの発現を増強するための有効な因子であることを示す。エラスチンは、しわを防止および処置するために良好な皮膚の健康状態を維持する際に、コラーゲンと同様に重要な細胞外マトリックス分子であるので、FACS分析において17β−エストラジオールに対してエクオールを試験した。3−Dヒト皮膚線維芽細胞培養物において、エクオールは、ビヒクルレベルに対して2.2倍エラスチンを顕著に刺激する一方、17β−エストラジオールは、コントロールに対して1.8倍エラスチン産生を刺激した(図22)。
【0134】
従って、エクオールは、I型コラーゲン、III型コラーゲン、およびエラスチンのタンパク質発現を顕著に刺激する一方で、マトリックス分解酵素MMP−3を顕著に減少させる。図23に示されるように、17β−エストラジオールは、ビヒクルのレベルに対して、エラスチン分解エラスターゼ酵素の発現を1.9倍に顕著に増加させる。しかし、エクオールは、ビヒクルと比較して差はなく、このことは、エクオールが、エラスチンの分解を増加させることなくエラスチンタンパク質発現を増強することを実証する。同じ3−Dヒト皮膚線維芽細胞培養物のさらなるFACS分析を、ヨウ化プロピジウム(PI)(蛍光DNA色素)で細胞を染色することによって実施した。PI染色細胞を介したFACS分析から、アポトーシス(プログラム細胞死と関係する)を起こしている細胞の割合、ならびに細胞周期のS期およびG2M期の周期に入っている(cycling)ヒト皮膚線維芽細胞の割合を、異なるマーカーによって検出することが可能である。図24は、3−D培養物中で発現されたアポトーシス細胞の割合についての細胞周期分析を示す。ビヒクルと比較して、処置(エクオールまたは17β−エストラジオール)の間で顕著な差は存在しない。このことは、10nMのエクオールまたは17β−エストラジオールは、アポトーシスに対して顕著な効果を有さないことを実証した。しかし、細胞周期のS期およびG2M期の周期に入っているヒト皮膚線維芽細胞の割合は、17β−エストラジオールではなくエクオールが、線維芽細胞を顕著に刺激してビヒクルと比較して1.5倍増殖させることを示す(図25)。このデータのセットは、エクオールがヒト皮膚線維芽細胞を刺激して増殖させ、このことは同じヒト皮膚線維芽細胞におけるI型コラーゲン、およびIII型コラーゲン、ならびにエラスチンのタンパク質発現の増加と一致することを実証する。さらに、これらの知見は、エクオールの適用に続くヒト皮膚線維芽細胞中のコラーゲン沈着の倍化と対応する。
【0135】
(実施例11)
これは、皮膚の尾の温度の調節におけるエクオールの効果の実施例である。このことは、成体雄ラットに5日間連続して3mgのエクオールを注射し、そして処置の終わりに皮膚の尾の温度を定量することによって試験した。この実験において、げっ歯動物の皮膚の尾の温度を、センサー/無線遠隔測定によって皮膚温度を定量することで決定した。雄のLong−Evansラットを、Charles Rivers Laboratoriesから50日齢で購入した。この動物を非常に低いイソフラボンレベル(餌食1gあたり10〜15ppmのイソフラボン)を含む餌食のもとに置き、実験の間中この餌食および水に自由に接近できるようにした。約130日齢において、受容雌と交配させることによって、性的活性についてこれらの雄ラットを観察した。この研究において使用した全ての雄は、交配によって性的に活性であり、受容雌を受精させて妊娠させ、その後正常なサイズの子が生まれた。
【0136】
約160日齢において、雄ラットを体重によって合わせ、コントロール処置群またはエクオール処置群のいずれかに配置した。この時点において、ラットを、その動物が処理されるのに慣れるように、1日につき5〜10分間処理した。処理は、実験職員の上向きの前腕表面にラットを配置することからなった。この処理プロトコルを、約2週間の各日か、またはその動物が174日齢に達するまで続けた。175日齢において、前のようにそのラットを処理したが、1インチ幅の外科手術用テープを動物の尾の基部から約1インチの尾の周りに配置し、温度センサー/トランスポンダーの配置をまねた。この処理/テープのプロトコルを、175日齢〜180日齢で毎日行った。
【0137】
175日齢において、各動物に0.1ccの皮下注射を行った。この注射は、頚部のうなじにおける、ビヒクル(DMSO)または3mgのエクオール溶液のいずれかの注射であった。この時点で動物は、約700gの重量であり、従って、用量は、1日につき約4.3mg/kgのエクオールであった。処置注射は、5日間連続して行った。
【0138】
処置注射の5日目(または180日齢)において、尾の皮膚温度を、その動物の尾の基部にテープでくくった電子センサー/トランスポンダーによって定量した。センサー/トランスポンダーを尾にテープでくくった30秒後に、遠隔測定によって皮膚温度を記録した(±0.1℃)。2つの処置群の全ての動物に対して皮膚の尾の温度を記録する際に、同じセンサー/トランスポンダーを使用した。エクオールで処置したラットは、コントロールラットと比較して、皮膚温度が1.5℃低かった(図26)。コントロール群、n=5;エクオール群、n=4、p<0.025。この知見は、エクオールが、閉経周辺期の症状または閉経期後の女性に関連する顔面潮紅を処置するために使用され得ることを実証する。
【0139】
(実施例12)
この実施例は、FACS分析実験においてと同じように、10nMエクオールまたは10nM 17β−エストラジオールでインビトロで処置したヒト皮膚単層線維芽細胞からI型コラーゲンC−ペプチドを測定することによって、皮膚コラーゲンの沈着に対するエクオールの効果を実証する。10nMエクオールまたは10nM 17β−エストラジオールが組織培養物に添加された場合、細胞毒性はなかった。10nMのエクオールでの処置は、ビヒクルと比較して1〜8倍コラーゲン沈着を顕著に刺激するが(図27)、17β−エストラジオール処置は、アスコルビン酸処置で見出されたものと類似していた。この実施例は、10nMエクオールが、ヒト皮膚線維芽細胞によるコラーゲン沈着を顕著に刺激するということを実証する。
【0140】
(実施例13)
これは、眼球刺激および皮膚刺激を引き起こす可能性を予測するためのIrritection(登録商標)アッセイ系を用いて評価した、ビヒクル(エタノール)、エクオール−ラセミ、または99% S−エクオールの効果の実施例である。この目的を達成するために、標準的な容量依存性用量応答研究を、眼球および皮膚の刺激試験方法を用いて実施した。独自の眼球および皮膚の刺激アッセイは、標準化した定量的なインビトロの急性の眼球および皮膚の刺激試験であり、この試験は、化学物質および化学的処方物の皮膚刺激の急性の眼球およ皮膚の刺激を予測するために関連する高分子の変化を利用する。この眼球および皮膚の刺激アッセイ方法は、種々の容量または濃度の複数のサンプルを評価し、そして再現性の高い結果を提供するために簡単に使用され得る。従って、これらの試験は、未処理の材料の選択、処方の開発、および最終生成物の選択の全ての段階を容易にする非常に有用なスクリーニングの道具として役立つ。
【0141】
図28において概略的に示されている眼球の刺激アッセイは、インビトロのドレイズ試験方法を越える顕著な利点を提供する。ドレイズの眼刺激アッセイは、同じ標本を分析している異なる実験室から得られた結果が大きく変動するので、批判されている。
【0142】
図29において概略的に示されている皮膚の刺激アッセイは、化学物質は、標的の生体分子および高分子構造において測定可能な変化を促進するという原理に基づいている。先行する研究は、このインビトロアッセイにおいて誘導されるタンパク質分解および分離のプロセスが、これらの型の刺激が皮膚に適用された場合に生じる効果を模倣するということを明確に実証している。結果的に、このインビトロ試験は、化学物質および処方物のインビボの毒性効果を予測するために使用され得る。
【0143】
生理学的緩衝化食塩水(PBS)ビヒクル中の4%(v/v)エタノール、ビヒクル中の4%(w/v)エクオール−ラセミ、およびビヒクル中の4%(w/v)S−エクオール(99%純度)での分析の結果を、以下に示す。この研究の結果は、ビヒクルのサンプルは、境界線の最小/穏やかな眼球刺激(IDEスコアは12.6)として分類されることを示す。類似の容量依存性用量応答研究を、皮膚の刺激試験方法を用いて実施した。この結果は、サンプルを、0.49のHIEスコアを有する非刺激性であると予測することを実証した。表7および表8は、ビヒクルに対する結果の要約を提示する。
【0144】
【表7】
【0145】
【表8】
標準的な容量依存性用量応答研究を、眼球刺激試験方法を用いて実施した。以下の容量(25μl、50μl、75μl、100μlおよび125μl)のストレートの(neat)サンプルを分析のために適用した。研究の結果は、エクオールラセミのサンプルが14.2のIDEスコアを有して穏やかな眼球刺激として分類されたことを示す。類似の容量依存性用量応答研究を、皮膚の刺激試験方法を用いて実施した。この結果は、サンプルを0.35のHIEスコアを有して非刺激性であると予測することを実証した。表9および表10は、ビヒクル中の4%エクオール−ラセミについての結果の要約を提示する。
【0146】
【表9】
【0147】
【表10】
表11および表12は、ビヒクル中の4% S−エクオール(w/v)についての結果の要約を提示する。標準的な容量依存性用量応答研究を、眼球刺激試験方法を用いて実施した。以下の容量(25μl、50μl、75μl、100μlおよび125μl)のストレートのサンプルを分析のために適用した。研究の結果は、s−エクオールのサンプルが16.4のIDEスコアを有して穏やかな眼球刺激として分類されたことを示した。類似の容量依存性用量応答研究を、皮膚の刺激試験方法を用いて実施した。この結果は、サンプルが0.15のHIEスコアを有して非刺激性であると予測することを実証した。未処理の試験物質:エタノールビヒクル、エクオール−ラセミおよびS−エクオールを、4パーセントで眼球および皮膚の刺激試験で分析した。ビヒクルの結果は、エクオールの結果(ラセミエクオールまたはS−エクオール)と類似の値を示すので、このことは、エクオールサンプルにおいてみられる大部分の刺激効果は、ビヒクルに起因し得ることを実証する。従って、眼球および皮膚の適用について、ラセミエクオールおよびS−エクオールは、皮膚/化粧品の関連性に対する結果に基づいて、非刺激性と分類される。
【0148】
【表11】
【0149】
【表12】
本明細書中で提示されるインビボおよびインビトロの実施例は、エクオールが、皮膚、毛および前立腺において5α−DHTに結合し、そのホルモンの影響を生物学的に不活化する能力、ならびに皮膚細胞が増殖してI型コラーゲン、III型コラーゲン、およびエラスチンのタンパク質発現を生じさせるために皮膚細胞を刺激する能力を有することを実証し、これらの全てが、皮膚/毛の健康状態の改善および皮膚/毛のアンドロゲン依存性疾患/障害の処置適用に寄与する。
【0150】
本発明の種々の実施形態が詳細に記載されているが、本発明のさらなる改変および適応が当業者に見出されることは明らかである。そのような改変および適応は、本発明の趣旨および範囲内であることは、明白に理解される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載された発明。
【請求項1】
本願明細書に記載された発明。
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9−1】
【図9−2】
【図28】
【図29】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
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【図9−1】
【図9−2】
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【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【公開番号】特開2013−6874(P2013−6874A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−222148(P2012−222148)
【出願日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【分割の表示】特願2007−510716(P2007−510716)の分割
【原出願日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(592087647)ブリガム・ヤング・ユニバーシティ (34)
【氏名又は名称原語表記】BRIGHAM YOUNG UNIVERSITY
【出願人】(500469235)チルドレンズ ホスピタル メディカル センター (40)
【出願人】(592246587)コロラド ステート ユニバーシティー リサーチ ファウンデーション (17)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−222148(P2012−222148)
【出願日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【分割の表示】特願2007−510716(P2007−510716)の分割
【原出願日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(592087647)ブリガム・ヤング・ユニバーシティ (34)
【氏名又は名称原語表記】BRIGHAM YOUNG UNIVERSITY
【出願人】(500469235)チルドレンズ ホスピタル メディカル センター (40)
【出願人】(592246587)コロラド ステート ユニバーシティー リサーチ ファウンデーション (17)
【Fターム(参考)】
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