説明

監視装置

【課題】複数のストリングが接続された発電装置において、劣化または発電不良が発生したストリングを容易に特定できる監視装置を提供する。
【解決手段】各ストリング51−1〜ストリング51−Nの電流を測定する電流検出器と、各ストリングの電圧を測定する電圧検出器77により、各ストリングに流れる電流と電圧を測定し、各ストリングについて一定期間の電流積算値または電力積算値を求める。そして、全ストリングの積算値の合計値に対する各ストリングの個別の積算値の割合(積算値の割合)と予め設定された基準の割合を比較し、積算値の割合が基準の割合よりも小さい状態が一定時間継続するかを確認する。ストリングに劣化または発電不良が発生していないときには積算値の割合はほとんど変化しないが、劣化または発電不良が発生していると積算値の割合が変化するので、基準の割合と比較することで、ストリングの劣化または発電不良を確実に検出できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、太陽光発電装置を監視する監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電は、家庭用から産業用に発展し、近年では大規模太陽光発電所、いわゆるメガソーラー発電所が国内や海外で建設されている。メガソーラー発電所では、数個から数十個の太陽電池(photovoltaic)モジュール(以下、PVモジュールと称する。)を直列に接続した太陽電池ストリング(以下、ストリングと称する。)が、数百個から数千個並列に接続されている。
【0003】
各PVモジュールは、太陽光が直接当たるように屋外に設置されているため、紫外線や風雨などの影響で、PVモジュール自体やPVモジュール間を接続するケーブル等が経年劣化して、発電不良が発生することがある。
【0004】
このような問題に対して、従来、複数のストリングからなる太陽電池アレイの出力電圧と出力電流、インバータ回路の出力電圧と出力電流を計測して、これらを用いた演算結果により発電不良等の異常を特定し表示する系統連系型太陽光発電装置があった(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−003224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、メガソーラー発電所は、上記のように膨大な数のストリングを備えているので、一部のストリングでPVモジュールに劣化または発電不良が発生しても、発電量がほとんど変化しないため、劣化または発電不良の検出が困難であった。また、劣化または発電不良の発生を検出できた場合にストリングを特定するためには、作業者がストリング毎に確認や検査を行う必要があり、作業が煩雑であった。
【0007】
そこで、この発明は、複数のストリングが接続された発電設備において、劣化または発電不良が発生したストリングを容易に特定できる監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の監視装置は、正極端子と負極端子の間に複数の太陽電池モジュールが直列に接続された複数の太陽電池ストリングと、並列接続された前記複数の太陽電池ストリングが発電した直流電力を交流電力に変換するパワーコンディショナと、を備えた太陽光発電装置を監視する監視装置であって、電流測定手段と、判定手段と、を備えている。電流測定手段は、各太陽電池ストリングの電流を測定する。判定手段は、各太陽電池ストリングの電流値またはこの電流値に各太陽電池ストリングの電圧値を乗じることで得られる電力値を所定のサンプル時間毎に取得し、電流値または電力値の一定期間の積算値を算出する。そして、全太陽電池ストリングの積算値の合計値に対する各太陽電池ストリングの個別の積算値の割合が、予め設定された基準の割合よりも小さい状態が一定時間継続すると、その太陽電池ストリングに発電不良が発生していることを報知する。
【0009】
太陽電池ストリングの電流や電力は、天候、気温、日当たり、太陽電池モジュール自体のばらつき等によって左右される。そのため、太陽電池ストリングの電流や電力の瞬時値を計測してこの瞬時値を用いても、太陽電池ストリングの発電不良を検出することは困難である。しかし、太陽電池ストリングの電流や電力を一定期間、例えば1日乃至1ヶ月の期間積算した積算値を用いると、上記のばらつきの影響がかなり小さくなり、太陽電池ストリングの劣化または発電不良を検出しやすくなる。また、全太陽電池ストリングの積算値の合計値に対する各太陽電池ストリングの個別の積算値の割合は太陽電池ストリングが正常であれば天候などにかかわらずほぼ一定であり、劣化または発電不良が発生した太陽電池ストリングが存在する場合には、一定時間、例えば10時間乃至100時間程度確認すると、全太陽電池ストリングの積算値の合計値に対する各太陽電池ストリングの個別の積算値の割合が変動するので、太陽電池ストリングの劣化または発電不良を容易に検出できる。監視装置は、全太陽電池ストリングの積算値の合計値に対する各太陽電池ストリングの個別の積算値の割合を基準の割合と比較するので、基準の割合を適正な値に設定することで、太陽電池ストリングの劣化または発電不良が確実に検出され、複数のストリングが接続された発電装置において、PVモジュールに異常が発生したストリングが容易に特定される。これにより、発電装置の管理者や作業者は、どのストリングで劣化または発電不良が発生しているかを容易に特定でき、従来のように全ストリングの確認や検査を行うことなく、報知された特定のストリングだけ修理や交換を行うことで、劣化または発電不良を短時間で解消できる。
【0010】
なお、一定期間は、太陽電池ストリングの電流または電力を積算して積算値を算出する期間であり、一定時間は、太陽電池ストリングに劣化または発電不良が発生しているか否かを判定するための時間である。
【0011】
また、基準の割合は、各太陽電池ストリングの積算値がそれぞれ同じと仮定し、さらに前記積算値の変動及びばらつきを考慮した割合である。
【0012】
基準の割合をこのように設定すると、基準の割合を演算により設定することが可能となり、太陽電池ストリングの劣化または発電不良を容易かつ確実に検出できる。
【0013】
この発明の監視装置は、正極端子と負極端子の間に複数の太陽電池モジュールが直列に接続された複数の太陽電池ストリングと、並列接続された前記複数の太陽電池ストリングが発電した直流電力を交流電力に変換するパワーコンディショナと、を備えた太陽光発電装置を監視する監視装置であって、電流測定手段と、パワコン電流測定手段と、判定手段と、を備えている。電流測定手段は、各太陽電池ストリングの電流を測定する。パワコン電流測定手段は、パワーコンディショナの電流を測定する。判定手段は、各太陽電池ストリングとパワーコンディショナの電流値またはこの電流値に各太陽電池ストリングの電圧値を乗じることで得られる電力値を所定のサンプル時間毎に取得し、電流値または電力値の一定期間の積算値を算出する。そして、パワーコンディショナの積算値に対する各太陽電池ストリングの個別の積算値の割合が、予め設定された基準の割合よりも小さい状態が一定時間継続すると、その太陽電池ストリングに劣化または発電不良が発生していることを報知する。
【0014】
監視装置は、パワーコンディショナの積算値に対する各太陽電池ストリングの個別の積算値の割合を基準の割合と比較する。パワーコンディショナには、並列接続された複数の太陽電池ストリングの全電流が流れるので、基準の割合を適正な値に設定することで、太陽電池ストリングの劣化または発電不良が確実に検出され、複数のストリングが接続された発電装置において、PVモジュールに異常が発生したストリングが容易に特定できる。また、判定手段は、全太陽電池ストリングの積算値の合計値を算出しなくても良いので、監視装置の負荷を軽減できる。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、複数のストリングが接続された発電装置において、劣化または発電不良が発生したストリングを容易に特定できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】太陽光発電システムのブロック図である。
【図2】(A)は、ストリング51−1〜51−3のうち、ストリング51−3に劣化または発電不良が発生した状態を示す図であり、(B)は、ストリング51−1〜51−3の電流−電圧特性IV1〜IV3と、全ストリングの電流−電圧特性IV0を示す図であり、(C)は、ストリング51−1〜51−3の電力−電圧特性PV1〜PV3と、全ストリングの電力−電圧特性PV0を示す図である。
【図3】監視装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図4】監視装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1に示すように、太陽光発電システム1は、太陽光発電装置3と、監視装置4を備えている。太陽光発電装置3は、太陽光のエネルギーを電力に変換して商用電源系統2に電力を供給する。監視装置4は、太陽光発電装置3の状態を監視する。
【0018】
太陽光発電装置3は、N個の太陽電池ストリング(以下、単にストリングと称する。)51−1〜51−Nと、パワーコンディショナ6を備えている。ストリング51−1〜ストリング51−Nは、パワーコンディショナ6に並列に接続されている。各ストリングは、一例として、正極端子と負極端子の間に10個の太陽電池モジュール(以下、PVモジュールと称する。)が直列に接続されている。例えば、ストリング51−1は、正極端子51−1Pと負極端子51−1Mの間に直列接続されたPVモジュール511〜PVモジュール520から成り、各PVモジュールが太陽光のエネルギーを変換した直流電力を出力(発電)する。なお、図1には、ストリング51−1のみ詳細な構成を示している。
【0019】
図には示していないが、各PVモジュールにはバイパスダイオードが接続されており、PVモジュールに異常がある場合などには、そのPVモジュールをバイパスさせる。
【0020】
パワーコンディショナ6は、インバータ61、地絡検出器62、電流検出器63、及びI/O回路64を備えている。インバータ61は、ストリング51−1〜ストリング51−Nが出力(発電)した直流電力を交流電力に変換して、商用電源系統2に供給する。地絡検出器62は、ストリング51−1〜ストリング51−Nで発生した地絡を検出して信号を出力する。電流検出器63は、本発明のパワコン電流測定手段に相当し、並列接続されたストリング51−1〜51−Nの全電流値(I det )を測定して、測定結果を出力する。I/O回路64は、地絡検出器62が出力した信号と、電流検出器63が測定した電流値のデータを、コントロールボックス8に出力する。
【0021】
監視装置4は、ジャンクションボックス7とコントロールボックス8を備えている。コントロールボックス8は、パワーコンディショナ6とジャンクションボックス7とコンピュータ9に接続されている。ジャンクションボックス7は、ストリング51−1〜ストリング51−Nの電圧や電流の計測、ストリング51−1〜ストリング51−Nとパワーコンディショナ6の接続や切り離し等を行う。コントロールボックス8は、ストリング51−1〜ストリング51−Nの状態を表示する。コンピュータ9は、コントロールボックス8が出力したデータに基づいてシステム全体の監視を行う。
【0022】
ジャンクションボックス7は、入力がNチャンネルで出力が1チャンネルであり、各入力端子にストリング51−1〜ストリング51−Nが接続され、出力端子にパワーコンディショナ6が接続されている。ジャンクションボックス7は、入力端子70−1(1ch)〜入力端子70−N(Nch)、計測部71−1〜計測部71−N、電圧検出器77、配線用遮断器78、出力端子79、及びI/O回路80を備えている。以下、計測部71−1の構成を説明する。計測部71−2〜計測部71−Nの構成は、計測部71−1と同様である。
【0023】
計測部71−1は、断路器711、ヒューズ721、断線検出部731、電流検出器741P(本発明の電流測定手段に相当)、電流検出器751M(本発明の電流測定手段に相当)、及び逆流防止ダイオード761を備えている。
【0024】
I/O回路80は、計測部71−1の断線検出部731、電流検出器741P、及び電流検出器751Mと、電圧検出器77に接続されている。また、I/O回路80は、他の計測部71−2〜71−Nとも、同様に接続されている。
【0025】
入力端子70−1の入力端子70−1Pはストリング51−1の正極端子51−1Pと接続され、入力端子70−1Mはストリング51−1の負極端子51−1Mと接続されている。
【0026】
断路器711は、パワーコンディショナ6とストリング51−1を接続する電路を開閉する。
【0027】
ヒューズ721は、ストリング51−1〜51−Nにおいて複数の箇所に地絡が発生して複数の地絡電流が合成されて流れる結果、その電流値が過大となって断線する。ヒューズ721は、一例として、3箇所以上に地絡が発生すると断線する値のものが採用されている。
【0028】
断線検出部731は、抵抗とフォトカプラを備え、並列接続されたヒューズが断線すると信号を出力する。
【0029】
電流検出器741Pは、ストリング51−1の正極端子51−1Pに流れる電流(I+(1ch)det)を測定して、測定データをI/O回路80に出力する。
【0030】
電流検出器751Mは、ストリング51−1の負極端子51−1Mに流れる電流(I-(1ch)det)を測定して、測定データをI/O回路80に出力する。
【0031】
逆流防止ダイオード761は、各ストリングの電圧のばらつきにより電圧の高いストリングから低いストリングに電流が逆流するのを防止する。
【0032】
電圧検出器77は、ストリング51−1〜51−Nの電圧(V det )を測定して、測定データをI/O回路80に出力する。
【0033】
配線用遮断器78は、過負荷や短絡などの要因で電路に異常な電流が流れたときに電路を開放する。
【0034】
出力端子79は、パワーコンディショナ6に接続されている。
【0035】
I/O回路80は、電流検出器741P、電流検出器751M、及び電圧検出器77から入力された測定データをコントロールボックス8に出力する。また、I/O回路80は、断線検出部731から入力された信号をコントロールボックス8に出力する。
【0036】
コントロールボックス8は、I/O回路81、制御部82(本発明の判定手段に相当)、表示部83(本発明の判定手段に相当)、及び記憶部84を備えている。
【0037】
制御部82は、パワーコンディショナ6及びジャンクションボックス7からI/O回路81を介して入力された信号や測定データを処理して、表示部83に表示させたり、記憶部84に記憶させたり、I/O回路81を介してコンピュータ9に出力したりする。
【0038】
コンピュータ(PC)9は、コントロールボックス8から入力された信号やデータをディスプレイに表示させたり、さらにデータ処理を行ったり、システム全体の監視を行ったりする。
【0039】
次に、本実施形態の特徴的な構成について説明する。制御部82は、電流検出器741Pまたは電流検出器751Mで測定したストリング51−1に流れる電流値のデータを取得する。また、制御部82は、電流検出器741Pまたは電流検出器751Mで測定したストリング51−1に流れる電流値のデータと、電圧検出器77で測定したストリング51−1〜51−Nの電圧値のデータから算出した電力のデータを取得しても良い。電流値のデータや電力値のデータは、所定のサンプル時間(例えば数10m秒)毎に取得しても良い。そして、電流値または電力値を積算して、一定期間の電流積算値または電力積算値(以下、積算値と称する。)を記憶部84に記憶させる。同様に、他のストリング51−2〜51−Nについても積算値を記憶部84に記憶させる。また、制御部82は、全ストリング51−1〜51−Nの積算値の合計値を算出し、この合計値に対する各ストリングの個別の積算値の割合(以下、積算値の割合と称する。)を算出して、この積算値の割合と予め設定した基準の割合を比較する。そして、比較の結果、積算値の割合が基準の割合よりも小さい状態が一定時間継続する場合には、ストリングの出力電流または出力電力が低下しているので、そのストリングに劣化または発電不良が発生しているとして警報を報知する。
【0040】
一定期間、例えば1日乃至1ヶ月の期間積算したストリングの電流や電力の積算値を、ストリング間で比較すると、天候、気温、日当たり、PVモジュール自体のばらつきの影響が小さくなる。また、計測期間や計測タイミングによってストリングの電流や電力の積算値にばらつきがあるが、全ストリングの積算値の合計値に対する各ストリングの積算値の割合は、ほとんど変化しない。さらに、ストリングに発電不良が発生した場合には、正常であった期間に比べて積算値は低下するので、不良が発生したストリングの積算値の割合は他のストリングの積算値よりも小さくなる。そのため、ストリングの発電不良を検出可能になる。したがって、ユーザはどのストリングで発電不良が発生しているかを容易に特定できる。
【0041】
発電不良の検出概念を説明する。以下の説明では、太陽光発電装置3が3個のストリング51−1〜51−3を備えている場合について説明する。
【0042】
図2(A)には、太陽光発電装置3の3つのストリング51−1〜51−3を示している。この例においては、ストリング51−3の4つのPVモジュールM7〜M10が発電不良により欠損している。図2(B)には、このときの各ストリング51−1〜51−3の電流−電圧特性IV1〜IV3と、全ストリングの電流−電圧特性IV0を示している。また、図2(C)には、このときの各ストリング51−1〜51−3の電力−電圧特性PV1〜PV3と、全ストリングの電力−電圧特性PV0を示している。なお、各ストリングを構成するPVモジュールのパネル温度及び日射温度は同一とする。
【0043】
パワーコンディショナ6は、ストリングで発電された電力を効率よく取り出すために最大電力点追従(Maximum Power Point Tracking:MPPT)制御を行っており、図2(B)と図2(C)に示すパワコン動作点で動作している。このとき、パワーコンディショナ6は、全ストリング51−1〜51−3から供給される直流電流、直流電圧、直流電力の瞬時値を計測する。
【0044】
しかし、パワーコンディショナ6では、ストリング51−3で発電不良が発生して、全ストリングの電流−電圧特性IV0や全ストリングの電力−電圧特性PV0が、図2(B)や図2(C)に示すような特性カーブになっていることは検出できない。
【0045】
また、ストリングの電流や電力は、天候、気温、日当たり、PVモジュール自体のばらつき等によって左右され、日射量が急激に変化したり、雲等の影響で部分的に影が発生したりすると、一部のPVモジュールで発電量が低下する。そのため、各ストリングの直流電流、直流電圧、直流電力の瞬時値を個別に計測しても、ストリングの発電不良を検出できない場合がある。そこで、本発明では、このような場合を考慮して、ストリング毎に、直流電流または直流電力の瞬時値を積算する。
【0046】
図2には、説明のために極端な例を示したが、実際には、健全なストリングに対して数十%発電量が低下した場合を、発電不良として検出する。また、急激な日射量の変化や部分的に影が発生して発電量が低下した場合を考慮して、各瞬時値を積算後、発電量の低下が一定時間継続すると、劣化または発電不良が発生したことを伝える表示や警報出力を行う。
【0047】
制御部82は、具体的には以下のようにしてストリング51−1〜ストリング51−Nにおける積算処理と発電不良の検出処理を行う。なお、以下の説明では、積算値として電力積算値を用いる場合を説明する。積算値としては、電力積算値に代えて、電流積算値を用いても当然良い。
【0048】
ジャンクションボックス7では、電流検出器741Pによりストリング51−1の電流が、電圧検出器77によりストリング51−1の電圧が、それぞれ測定され、測定データがI/O回路80を介してコントロールボックス8に出力される。他のストリングに関しても同様である。また、制御部82は、入力端子70−1(70−1P、70−1M))から入力端子70−N(70−NP、70−NM))に接続されたストリング51−1〜51−Nに流れる電流を、順番に確認する。
【0049】
図3に示すように、制御部82は、まず、入力端子70−1に接続されたストリング51−1の電流値(I+(1ch)det)と電圧値(V det)の積を1000で除して、ストリング51の電力値(kW)を算出する(ST1−1)。また、制御部82は、ストリング51−1の電力値データを積算して、一定期間(例えば10日間)の積算値(積算電力(1ch))を記憶部84に記憶させ、次の処理(ステップST2−1)に移る(ST1−2)。
【0050】
以降、制御部82は、入力端子70−2から入力端子70−Nに接続されたストリング51−2〜ストリング51−Nについて順番に、ステップST1−1−1〜ST1−2で説明した電力の積算処理を行う。そして、制御部82は、入力端子70−Nに接続されたストリング51−Nについて、処理を終了したら、ステップST1−1に移り、ステップST1−1以降の処理を繰り返す。
【0051】
ここで、ストリング毎に一定期間の積算値を記憶させる例を示したが、各ストリングの電力値を記憶部84に順次記憶させておき、一定期間の積算値をまとめて算出させることもできる。
【0052】
なお、制御部82は、所定のタイミングで、全ストリング51−1〜ストリング51−Nの積算値の合計値(Sum[(1ch)〜(Nch)])を演算して、記憶部84に記憶させる。したがって、積算値と合計値は所定のタイミングで順次更新される。
【0053】
図4に示すように、制御部82は、入力端子70−1に接続されたストリング51−1の積算値と、全ストリング51−1〜ストリング51−Nの積算値と、を記憶部84から読み出す。そして、全ストリング51−1〜ストリング51−Nの積算値(Sum[(1ch)〜(Nch)])に対するストリング51の積算値(積算電力(1ch))の割合(以下、%積算電力(1ch)または積算値の割合と称する。)を算出する(S1−1)。すなわち、制御部82は、ストリング51の積算値(積算電力(1ch))を全ストリング51−1〜ストリング51−Nの積算値(Sum[(1ch)〜(Nch)])で除して、100を掛けた値(%積算電力(1ch)=積算電力(1ch)/Sum[(1ch)〜(Nch)]×100)を算出する。
【0054】
制御部82は、各ストリングの積算値がそれぞれ同じと仮定し、さらに前記積算値の変動及びばらつきを考慮して、基準の割合を算出する。すなわち、制御部82は、予め設定された閾値を記憶部84から読み出して、100をストリング数で除した値と、1から閾値を引いた値と、の積(基準の割合)を、ステップS1−1で算出した積算値の割合(%積算電力(1ch))と比較する(S1−2)。制御部82は、積算値の割合が基準の割合以上の場合には、次の処理(ステップS2−1)に移る。一方、制御部82は、ステップS1−1で算出した積算値の割合(%積算電力(1ch))が基準の割合よりも小さい場合には、積算値の割合が基準の割合よりも小さい状態が一定時間(例えば、24時間)継続するか否かを確認する(S1−3)。制御部82は、積算値の割合が基準の割合よりも小さい状態が一定時間継続すれば、入力端子70−1に接続されたストリング51−1で劣化または発電不良が発生していることを表示部83に表示させるとともに、警報を出力して、次の処理に移る(S1−4)。
【0055】
なお、この一定時間は、太陽光発電装置3の設置環境などに応じて決めればよく、例えば10時間乃至99時間のいずれかの値に設定するのが好ましい。
【0056】
また、制御部82は、ステップS1−3において、積算値の割合が基準の割合よりも小さい状態が一定時間継続せずに途中で積算値の割合が基準値以上になると、次の処理(ステップS2−1)に移る。
【0057】
以降、制御部82は、入力端子70−2から入力端子70−Nに接続されたストリング51−2〜ストリング51−Nについて順番に、ステップS1−1〜S1−4で説明した劣化または発電不良の検出処理を行う。そして、制御部82は、入力端子70−Nに接続されたストリング51−Nについて、処理を終了したら、ステップS1−1に移り、ステップS1−1以降の処理を繰り返す。
【0058】
次に、具体的な数値を挙げて、例えば、ストリング数が100台で、全ストリングが正常なとき夫々10kWずつ発電するとし、一定期間(電力値を積算する期間)を5時間、一定時間を24時間とした場合について説明する。この場合、理想的には全ストリングが発電する電力瞬時値の合計値は10kW×100台=1000kW、一定期間の積算値の合計値は1000kW×5時間=5000kWhとなる。例えば、測定した積算値の合計値(Sum[(1ch)〜(100ch)])=4600kWh、ストリング51−1の積算値(積算電力(1ch))=40kWh、閾値を0.2とすると、ストリング51−1の積算値の割合(%積算電力(1ch))は、
%積算電力(1ch)=40/4600×100≒0.87%…(ステップS1−1)
である。また、基準の割合は、
基準の割合=[(100/100台)×(1−0.2)]=0.8%
である。ストリング51−1の積算値の割合(%積算電力(1ch))と基準の割合を比較すると、0.87>0.8(ステップS1−2)であるので、ストリング51−1は正常と判断して次のステップ(S2−1)に移る。
【0059】
今、ストリング51−2の積算値(積算電力(2ch))=32kWhのとき、
%積算電力(2ch)=32/4600×100≒0.7%…(ステップS2−1)
である。%積算電力(2ch)と基準の割合を比較すると、0.7<0.8(ステップS2−2)であり、ストリング51−2の積算値の割合が基準の割合よりも小さいため、(ステップS2−3)に移る。そして、ストリング51−2の積算値の割合が基準の割合よりも小さい状態が継続し、一定時間経過後の積算値の合計値(Sum[(1ch)〜(100ch)])=4200kWh、ストリング51−2の積算値(積算電力(2ch))=29kWhとすると、%積算電力(2ch)=29/4200×100≒0.7%となり、基準の割合(0.8%)よりも小さいため、ストリング51−2に劣化または発電不良が発生していると判断し、ステップS2−4で表示や警報出力を行う。この場合には、全ストリングの積算値の合計値に対するストリング51−2の積算値の割合はほぼ一定であるので、雲による影の影響等の突発的な要因ではなく、ストリング51−2のいずれかのPVモジュールの故障や断線、またはごみなどが付着したり常に木や建物の陰に入る状態になっていたりする等で常時光が当たらない状態であるなど、ストリング51−2に劣化または発電不良が発生していることを確実に検出することができる。この例では、積算値(%積算電力(2ch))がほぼ一定の場合を示したが、積算値が時間によって変動することもある。
【0060】
このように本実施形態では、全ストリングの積算値に対する各ストリングの割合を比較するので、季節や時間などの外部要因等に左右されることなく、良好な検出を行うことができる。例えば各ストリングの電力値そのものを基準値と比較する場合、季節や時間、天候などの日照条件によって発電量が大きく変動するため、夫々に対する基準値を複数用意しなければならない。しかし、本実施形態では、全体に対する個々の割合を用いて劣化または発電不良を検出するため、小容量の記憶部でよく、演算も単純なものを用いることができ、汎用性が非常に高い。
【0061】
太陽光発電システム1では、全ストリングの積算値の合計値に代えて、電流検出器63で測定したパワーコンディショナ6の電流値の積算値や、この電流値と電圧検出器77により測定した電圧値から算出した電力値の積算値を用いることもできる。パワーコンディショナ6には前記のようにストリング51−1〜51−Nの全電流が流れるので、全ストリングの積算値の合計値を算出しなくても良くなり、監視装置の負荷を軽減できる。
【0062】
また、基準の割合としては、太陽光発電システム1の正常動作時に、各ストリング51−1〜ストリング51−Nの一定期間の積算値を測定し、全ストリングの一定期間の積算値の合計値に対する各ストリングの一定期間の積算値の割合を算出したものを使用しても良い。
【0063】
本例では、1つのストリングの不良検出後に、次のストリングの判断を行っているが、各ストリングについての不良を判断しつつ、積算値の割合が基準の割合よりも小さいストリングの監視も同時に行うことが好ましく、図4は模擬的な例に過ぎない。
【0064】
なお、上記の処理において、積算値の割合が基準の割合よりも小さい場合には、直ちに警報を出力することも可能である。しかし、太陽光発電装置3の設置環境によっては、一時的に現在の割合が低下している可能性があり、この場合にはストリングに劣化または発電不良が発生しているかどうかを正しく判定できない。そこで、基準の割合が現在の積算値の割合よりも大きい状態が一定時間以上続く場合には、設置環境の影響ではなく、劣化または発電不良が発生していると判定できる。したがって、劣化または発電不良をより確実に検出するためには、ステップS1−3の処理を行うことが好ましい。
【0065】
また、太陽光発電システム1の正常動作時に、各ストリング51−1〜ストリング51−Nの一定期間の積算値を測定し、全ストリングの一定期間の積算値の合計値に対する各ストリングの一定期間の積算値の割合を算出したものを使用しても良い。
【0066】
なお、劣化または発電不良の表示や警報は、例えば劣化または発電不良発生箇所のメンテナンス後など、任意のときに停止させることが可能である。また、コントロールボックス8やコンピュータ9で、劣化または発電不良が発生したストリングを記憶しておき、呼び出しに応じて劣化または発電不良が発生した場合を示したり、劣化が発生しやすい場所をデータとして収集したりするように構成することが可能である。
【0067】
また、図1に示した太陽光発電システム1において、各ストリングに劣化または発電不良が発生した場合には、そのストリングで劣化または発電不良が発生していることを表示部83に表示させるとともに、警報を出力するだけでなく、断路器でストリングをジャンクションボックス7から切り離すように構成することも可能である。例えば、ストリング51−1に劣化または発電不良が発生した場合には、制御部82からI/O回路81及びI/O回路80を介して、断路器711を開放できるように構成すると良い。
【0068】
また、このようにストリングをジャンクションボックス7から切り離した場合には、制御部82は、切り離したストリングについては、劣化または発電不良の発生の有無を確認しないので、基準の割合を算出する際には、そのストリングは除外する。例えば、ストリング数が10台の場合には、制御部82は、100をストリング数(10)で除した値と、1から閾値を引いた値と、の積(基準の割合)を、ステップS1−1で算出した積算値の割合(%積算電力(1ch))と比較する。しかし、1台のストリングを切り離した場合には、制御部82は、100をストリング数(9)で除した値と、1から閾値を引いた値と、の積(基準の割合)を、ステップS1−1で算出した積算値の割合(%積算電力(1ch))と比較する。このようにすることで、ストリングの劣化または発電不良の発生の有無を常に正確に検出することができる。
【符号の説明】
【0069】
1…太陽光発電システム 2…商用電源系統 3…太陽光発電装置
51−1〜51−N…(太陽電池)ストリング 511〜520…PVモジュール 51−1P…正極端子 51−1M…負極端子
6…パワーコンディショナ 61…インバータ 62…地絡検出器
4…監視装置 7…ジャンクションボックス 71−1〜71−N…計測部 70−1〜70−N、70−1P、70−1M…入力端子 711…断路器 721…ヒューズ 731…断線検出部 741P…電流検出器 751M…電流検出器 761…逆流防止ダイオード 77…電圧検出器 78…配線用遮断器 79…出力端子 80…I/O回路
8…コントロールボックス 81…I/O回路 82…制御部 83…表示部 84…記憶部 85…操作部 9…コンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極端子と負極端子の間に複数の太陽電池モジュールが直列に接続された複数の太陽電池ストリングと、並列接続された前記複数の太陽電池ストリングが発電した直流電力を交流電力に変換するパワーコンディショナと、を備えた太陽光発電装置を監視する監視装置であって、
各太陽電池ストリングの電流を測定する電流測定手段と、
各太陽電池ストリングの電流値またはこの電流値に各太陽電池ストリングの電圧値を乗じることで得られる電力値を取得し、前記電流値または前記電力値の一定期間の積算値を算出し、
全太陽電池ストリングの積算値の合計値に対する各太陽電池ストリングの個別の積算値の割合が、予め設定された基準の割合よりも小さい状態が一定時間継続すると、その太陽電池ストリングに劣化または発電不良が発生していることを報知する判定手段と、
を備えた監視装置。
【請求項2】
前記基準の割合は、各太陽電池ストリングの積算値がそれぞれ同じと仮定し、さらに前記積算値の変動及びばらつきを考慮した割合である請求項1に記載の監視装置。
【請求項3】
正極端子と負極端子の間に複数の太陽電池モジュールが直列に接続された複数の太陽電池ストリングと、並列接続された前記複数の太陽電池ストリングが発電した直流電力を交流電力に変換するパワーコンディショナと、を備えた太陽光発電装置を監視する監視装置であって、
各太陽電池ストリングの電流を測定する電流測定手段と、
前記パワーコンディショナの電流を測定するパワコン電流測定手段と、
各太陽電池ストリングと前記パワーコンディショナの電流値またはこの電流値に各太陽電池ストリングの電圧値を乗じることで得られる電力値を取得し、前記電流値または前記電力値の一定期間の積算値を算出し、
前記パワーコンディショナの積算値に対する各太陽電池ストリングの個別の積算値の割合が、予め設定された基準の割合よりも小さい状態が一定時間継続すると、その太陽電池ストリングに劣化または発電不良が発生していることを報知する判定手段と、
を備えた監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−77477(P2011−77477A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−230364(P2009−230364)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【出願人】(000144393)株式会社三社電機製作所 (95)
【Fターム(参考)】