説明

直流電源装置の過電流保護回路

【課題】
突入電流に対する誤動作を防止しつつ、過大負荷や出力短絡時等の過電流を精度良く検出して出力を確実に遮断し得ると共に、回路の部品点数を削減してコスト安価に形成し得る直流電源装置の過電流保護回路を提供する。
【解決手段】
負荷への過電流を検出した時に出力を遮断する出力遮断機能を有する直流電源装置において、出力電圧監視手段を備え、短絡と判定して出力を遮断するための基準値を、過電流検出時点から時間経過とともに変化させることを特徴とする。前記過電流を検出して出力を遮断するまでに所定の時間を設け、また、前記過電流を検知もしくは短絡と判定して出力を遮断することによって、解除手段による解除信号が入力されるまで自己保持状態となることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば防犯警報装置等の電源として好適に使用される直流電源装置に係わり、特に配線工事ミス等による短絡や定格出力電流を超えた過大負荷が接続される等して過電流が流れた場合に、これを検出して電源供給を遮断する過電流保護回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の過電流保護回路を備えた直流電源装置としては、例えば図3に示すものが知られている。この直流電源装置1は、交流直流変換回路4(AC/DC回路4という)と、過電流保護回路5等で構成され、過電流保護回路5は、電流検出用抵抗R1、過電流比較器10、過電流遅延回路12、過電流遅延比較器13、短絡比較器16、アンド回路26、オア回路17、保持回路25、解除スイッチ22、開閉器を構成するコイル20及び接点21、直列接続された抵抗R5、R6からなる出力端子電圧監視回路18及び保護ヒューズ23等を備えている。
【0003】
前記保持回路25及び解除スイッチ22は、図5に示すように、2つのNAND回路27a、27bと、3つの抵抗28a〜28cと、3つのコンデンサ29a〜29c及びダイオード30等によって構成されている。また、前記AC/DC回路4は、図6に示すように、例えばフルブリッジの整流回路40、トランス41、このトランス41の二次側に接続された平滑回路42、制御IC43、スイッチング素子44、トランス電流検出用抵抗45、電圧検出回路46、この電圧検出回路46からの信号に基づいてON・OFFするトランジスタ47等により、フの字保護機能を有する如く構成されている。
【0004】
なお、平滑回路42は、ダイオード42a、チョークコイル42b、2つのコンデンサ42c等によって構成され、制御IC43及びスイッチング素子44により変換された矩形波電圧を整流平滑して直流電圧に変換する回路である。また、電圧検出回路46は、トランス41の二次側の直流電圧を検出し、これが所定の電圧となるようにトランジスタ47のコレクタ・エミッタ間の電流を変化させて制御IC43を介しスイッチング素子44のON・OFFを制御すると共に、トランス41二次側の電圧が異常に上昇した場合に、これを検出してAC/DC変換動作を停止させる回路である。
【0005】
そして、図3に示すように、この直流電源装置1によって、AC/DC回路4の端子P1、P2間に接続された交流商用電源2を該AC/DC回路4でAC/DC変換し、例えばDC12Vの直流電源を端子P3、P4を介して防犯警報装置3に供給するようになっている。この防犯警報装置3は、図7に示すように、マイコン等からなる制御部50を有し、この制御部50の入力側には操作パネル等の操作器51と電気錠52及び侵入検知センサ53等が接続され、制御部50の出力側には防犯監視盤54と、警報ランプ等からなる威嚇用ライト55やコイルへの通電により警報を発するサイレン56等からなる発報装置が接続されている。
【0006】
このように構成された直流電源装置1の過電流保護回路5は、過電流に対する保護動作が、開閉器の開動作→フの字保護動作→ヒューズ23の溶断という順番で行われるようになっており、これにより、先順の保護動作が何らかの原因によって動作しなかった場合に、後順の保護動作が動作、すなわち幾重にも保護動作が働いてその安全性を高めるようにしている。また、この直流電源装置1の過電流保護回路5は、各種の過電流に対して図4に示すように動作するようになっている。なお、図4に示すVR1、V、VOD、VOUT、VTH、OCP、V等は図3の回路構成図における各ポイントの電圧を示している。
【0007】
先ず、図4(a)に示すように、電流検出用抵抗R1により、過電流比較器10の他方の入力端子に接続されたツェナーダイオード11で設定された基準値VOCPより僅かに大きな過電流(過電流1という)が検出された場合は、過電流遅延比較器13の一方の入力端子に入力される遅延電圧VODが、該比較器13の他方の入力端子に接続されたツェナーダイオード14で設定された基準値Vになった際に、オア回路17を介した保持回路25の開信号によりトランジスタ19がONしてコイル20に通電されて開閉器の接点21が閉から開(常閉接点21aが開)となって出力を遮断し、この時の過電流応答時間T1は、例えば2秒程度に設定されている。
【0008】
また、図4(b)に示すように、電流検出用抵抗R1により、例えば過大負荷等で前記基準値VOCPより遙かに大きな電流が流れる過電流(過電流2という)が検出された場合は、出力端子電圧監視回路18で検出されたVOBが、短絡比較器16の他方の入力端子に接続されたツェナーダイオード31で設定された基準値Vを下回った際に、開閉器の接点21を開として出力を遮断する。この時の応答時間T2は、1秒程度となる。
【0009】
さらに、図4(c)に示すように、電流検出用抵抗R1により、前記基準値VOCPより遙かに大きな過電流が流れる短絡が検出された場合は、出力端子電圧監視回路18で検出された電圧VOBが基準値Vを下回った際に短絡比較器16から遮断信号が出力されて、開閉器の接点21が開となって出力を遮断する。この時の応答時間T3は、上記回路条件と同じ場合0.2秒程度となる。またさらに、負荷としての防犯警報装置3の威嚇ライト55やサイレン56の誘導負荷等に電源が供給される際の突入電流に対しては、図4(d)に示すように動作して、電圧VOBが電圧Vまで達しないので開閉器による遮断動作は実施されない。なお、直流電源装置の過電流保護回路に関する文献としては、例えば特許文献1がある。
【特許文献1】特開2001−292568号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、このような直流電源装置1においては、負荷(防犯警報装置3)への突入電流による誤動作を防ぐために、過電流と判定する基準値VOCPを定格出力電流よりも高い値に設定するか、応答時間を遅くする等の方法によって過電流保護を図っているが、基準値VOCPを高く設定する方法では、定格を遙かに超える過大負荷が接続されたり短絡が生じた場合等にも大きな電流が流れ続けることになって、直流電源装置1への負担の増加や発熱が多くなって安全上好ましくない。このことは応答時間を遅くしても同様であり、逆に、応答時間を速くして感度を高めるようとする方法では、突入電流によって誤動作が発生し易くなると共に、開閉器の接点21の振動現象(チャタリング)を防止するための前述した保持回路25が必要となって、過電流保護回路5自体の部品点数やコストが増加し易くなるという問題点を有している。
【0011】
すなわち、突入電流によって電圧が短時間にのみ低下した場合の誤動作防止策として短絡比較器16が動作する電圧Vを低く設定すると、特に容量性負荷の場合に定格出力12Vに対して6V程度にまで低下する可能性があるため、短絡と判定する電圧は3Vから5V程度に設定しているのが一般的である。この設定の場合において、配線の途中で短絡が生じる、つまり配線の抵抗分が負荷になると、大きな電流が流れて短絡比較器16が動作する値まで電圧が低下せず、また過電流保護回路5の応答時間に遅れを持たせているため、開閉器が遮断動作する前に、フの字保護機能が働いて出力電圧が低下することになる。これにより、直流電源装置1内部の図示しない制御回路の電源も同じAC/DC回路4から供給されていることから、フの字保護機能が働いた場合に、これらの各回路も正常に動作できなくなってしまい、結局、電圧低下のために開閉器のコイル20が励磁されず、接点21も開放されなくなってしまう。
【0012】
また、過電流保護回路5の優先順位が、前述したように、開閉器による出力遮断、フの字保護、保護ヒューズ23の溶断とするのが一般的であり、例えば定格出力電流3Aの直流電源装置1の場合、開閉器が動作する電流が3.5A、フの字保護機能が動作する電流が5A、ヒューズ23が溶断する電流が5.5Aと設定されている。したがって、開閉器のコイル20が励磁されなくなって出力遮断動作ができなくなると、大きな電流が流れ続けることになり、また、フの字保護機能があくまでも一時的な保護動作であることから、これが動作した状態が長く続くと直流電源装置1自体も故障する原因となり易い。また、短絡と判定する電圧を或る程度高くしてかつ出力遮断するまでの応答時間を遅くすると、負荷の大きさに係わらず遮断時間が遅れてしまい、前述したようにフの字保護機能が働いて出力の遮断ができなくなる。さらに、フの字保護機能の動作開始付近の電流が出力された過大負荷の場合は、過電流保護機能の応答時間である間は大きな出力電流が流れ続けることになり、これも安全上好ましくない。また、フの字保護機能自体が完全に動作するまでの応答時間が、突入電流による誤動作防止のために短絡時でも0.4秒〜0.5秒程度と速くない。
【0013】
また、過電流保護機能が動作した場合には出力遮断状態を保持する必要がある。これは、過電流検出→出力遮断→過電流状態解消→出力接続−再び過電流検出という動作により、開閉器の接点21が振動現象を起こして接点21が劣化するのと直流電源装置1が不安定な状態で長時間動作するのを防ぐためである。そして、この出力遮断状態を保持するために、図5に示すように多くの部品で構成された保持回路25を設けているが、この保持回路25の部品点数が多くなりコストが増大すると共に基板上の占有面積も増大することになって、設計の自由度の面でも好ましくない。
【0014】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、突入電流に対する誤動作を防止しつつ、過大負荷や出力短絡時等の過電流を精度良く検出して出力を確実に遮断し得ると共に、回路の部品点数を削減してコスト安価に形成し得る直流電源装置の過電流保護回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
かかる目的を達成すべく、本発明のうち請求項1に記載の発明は、負荷への過電流を検出した際に出力を遮断する出力遮断機能を有する直流電源装置において、出力電圧監視手段を備え、短絡と判定して出力を遮断するための基準値を過電流検出時点から時間経過とともに変化させることを特徴とする。
【0016】
また、請求項2に記載の発明は、前記過電流を検出して出力を遮断するまでに所定の時間を設けることを特徴とし、請求項3に記載の発明は、前記過電流を検知もしくは短絡と判定して出力を遮断することによって、解除手段による解除信号が入力されるまで自己保持状態となることを特徴とする。さらに、請求項4に記載の発明は、前記負荷が、威嚇用ライト、サイレン等の発報装置を備えた防犯警報装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明のうち請求項1に記載の発明によれば、出力電圧監視手段によって短絡と判定した際に、出力を遮断するための基準値を過電流検出時点から時間経過とともに変化させるため、容量性負荷や誘導性負荷による突入電流による誤動作を防止しつつ、短絡発生時等の過電流を精度良く検出して出力を確実に遮断することができると共に、回路の部品点数を削減してコスト安価に形成することができる。
【0018】
また、請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、過電流を検出してから出力を遮断するまでに所定の時間を設けているため、突入電流による誤動作を一層確実に防止できて、短絡、過大負荷時等の過電流を一層精度良く検出することができる。
【0019】
また、請求項3に記載の発明によれば、請求項1または2に記載の発明の効果に加え、過電流を検知もしくは短絡と判定して出力を遮断することによって、解除手段による解除信号が入力されるまで自己保持状態となるため、短絡発生等の出力遮断状態を確実に維持できて、直流電源装置の安全性の向上を図ることができる。
【0020】
また、請求項4に記載の発明によれば、請求項1ないし3に記載の発明の効果に加え、負荷が威嚇用ライト、サイレン等の発報装置を備えた防犯警報装置であるため、無人状態で設置される誘導性負荷を有する防犯警報装置の電源装置として安定使用でき、高精度な監視状態を容易に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1及び図2は、本発明に係わる過電流保護回路を採用した直流電源装置の一実施形態を示し、図1がその回路構成図、図2がその動作の一例を示す波形図である。なお、図3に示す直流電源装置と同一部位には、同一符号を付して説明する。
【0022】
図1に示すように、直流電源装置1は、交流商用電源2と負荷としての防犯警報装置3との間に接続され、AC/DC回路4と、このAC/DC回路4の出力側に接続された過電流保護回路5を備えている。そして、過電流保護回路5は、過電流検出部6、判定部7、遮断部8及び出力電圧監視部9(出力電圧監視手段)等で構成されている。このうち、過電流検出部6は、AC/DC回路4の出力端子P6のGNDラインに挿入された電流検出用抵抗R1と、この電流検出用抵抗R1で検出された電圧VR1とツェナーダイオード11で設定された基準値VOCPとを比較する過電流比較器10を有し、検出電圧VR1が基準値VOCPを超えた際に、過電流比較器10の出力側から抵抗R2を介して所定矩形波の電圧Vを判定部7に出力するようになっている。
【0023】
また、前記判定部7は、抵抗R3とコンデンサC3の積分回路からなる過電流遅延回路12と、この過電流遅延回路12の電圧VODとツェナーダイオード14によって設定された基準値Vとを比較する過電流遅延比較器13と、抵抗R4とコンデンサC4の積分回路からなる短絡基準電圧発生回路15と、この短絡基準電圧発生回路15で設定される基準値VSHと後述する出力端子電圧検出回路18で検出された出力電圧VOBとを比較する短絡比較器16と、オア回路17等を有している。そして、この判定部7によって、過電流が通常の過電流(前記過電流1)であるか過大負荷による過電流(前記過電流2)であるかあるいは短絡による過電流であるか等を判定して、オア回路17を介して遮断信号等の所定の信号を遮断部8に出力するようになっている。
【0024】
さらに、前記遮断部8は、ベースがオア回路17の出力側に接続されエミッタがアースされたトランジスタ19と、このトランジスタ19のコレクタに接続されたコイル20と、常閉接点21aと常開接点21bからなる接点21等を有し、トランジスタ19がオンした際に、コイル20に電流が流れて励磁され、接点21が常閉接点21a側から常開接点21b側に切り替わるようになっている。また、前記出力電圧監視部9は、出力端子P3、P4間に接続された抵抗R5、R6からなる出力端子電圧監視回路18と、抵抗R5と抵抗R6の接続点と短絡基準電圧発生回路15の入力側との間に接続された抵抗R7等を有している。そして、この出力電圧監視部9は、抵抗R5と抵抗R6により出力電圧VOBを検出して、判定部7の短絡比較器16の一方の入力端子に出力すると共に、抵抗R7を介して短絡基準電圧発生回路15に出力するようになっている。なお、抵抗R7は、短絡比較器16における解除動作を確実に行うためのものである。
【0025】
そして、本発明の過電流保護回路5は、判定部7の短絡基準電圧発生回路15の入力側とアース間に解除スイッチ22(解除手段)が接続されると共に、接点21の常開接点21bと短絡比較器16の一方の入力側との間に前記抵抗R7が接続されている。この抵抗R7は、出力端子電圧監視回路18の抵抗R5より充分大きな抵抗値に設定されている。なお、前記出力端子電圧監視回路18は、直列接続された2つに抵抗R5、R6の両端をヒューズ23等を介して出力端子P3、P4間に接続することによって構成され、両抵抗R5、R6の接続点が判定部7の短絡比較器16の一方の入力端子に接続されている。また、前記AC/DC回路4は、図6と同様に構成されるが、これは一例であって他の適宜構成のAC/DC回路を使用することも勿論可能である。
【0026】
つまり、本発明に係わる過電流保護回路5と、図3に示す従来の過電流保護回路5との構成上の主な相違点は、判定部7において、従来のアンド回路26を省略し、短絡基準電圧発生回路15を設けると共に、抵抗R7と解除スイッチ22を所定位置に接続することにより従来の保持回路25と不要とし、かつ、遮断部8の接点21を2接点方式として常開接点21bを過電流遅延回路12の入力側に接続した点にある。これにより、自己保持回路を構成してリレーのチャタリングを防ぐ構成とされている。
【0027】
次に、このように構成された過電流保護回路5の動作の一例を、図2に示す波形図と関連付けて説明する。なお、図2に示す波形図は、フの字保護機能の動作点を5A、定格出力電流を3Aとし、図の各部の電流をVA=2A、VB=3.5A、VC=4A、VD=4.9A、VE=10A、VF=7A、VG=2.8A相当にした場合の例である。先ず、この過電流保護回路5における通常の過電流1を検出する仕組みは、GNDラインの電流検出用抵抗R1で検出された電圧VR1が過電流比較器10により基準値VOCPと比較され、この電圧VR1が基準値VOCPを超えた場合に過電流と判定されて、過電流比較器10からハイレベルの電圧Vが出力される。
【0028】
この時、例えば電流検出用抵抗R1の抵抗値が0.1Ωの場合で3Aの電流が流れたとすると、0.1×3=0.3Vの電圧Vが生じ、この電圧Vが例えば基準値VOCP=0.35Vと比較され、3.5Aの電流が流れた場合に過電流と判定されることになる。なお、過電流比較器10で過電流と判定されない状態においては、該過電流比較器10からローレベルの電圧Vが出力されている。また、電流検出用抵抗R1の抵抗値は小さい方が損失を小さくできるが、発生する電圧も小さくなるので過電流比較器10での比較がし難くなることから、例えば図1の二点鎖線で示すように、増幅器24を用いて比較動作を容易にできるように構成することもできる。
【0029】
過電流が検出されて過電流比較器10からハイレベルの電圧Vが出力されると、この電圧Vが過電流遅延回路12で抵抗R3とコンデンサC3の時定数によって充電され、電圧VODとなって過電流遅延比較器13に入力されて比較され、電圧VODが基準値Vに達した時に過電流遅延比較器13からオア回路17に所定の信号(遮断信号)が出力される。この信号により、オア回路17から遮断部8のコイル20を励磁する信号、つまりトランジスタ19をオンさせる信号が出力される。なお、オア回路17は、判定部7によって過電流もしくは後述する短絡のどちらに判定されても、遮断部8が動作して出力を遮断できるようにするための回路である。
【0030】
そして、トランジスタ19がオンすると、コイル20が励磁されて接点21が常閉接点21a側から常開接点21b側に切り替わり、端子P5、P3間が切断された状態となって、出力が遮断されることになる。また、常閉接点21bが過電流遅延回路12及び短絡基準電圧発生回路15に接続されていることから、遮断部8によって出力が遮断された際に、電圧Vが強制的に電圧VDCに設定、すなわち過電流遅延比較器13への入力電圧VODが基準値Vよりも強制的に高くなるようになっている。なお、基準値Vは電圧VDCより充分低い値に設定されている。
【0031】
以上の動作を示したのが図2(a)の波形図であり、時刻t1で過電流が検出されると、過電流遅延比較器13の一方の入端子に入力される電圧VODが時間とともに徐々に上昇して、基準値Vを超えた時刻t3で、過電流遅延比較器13からオア回路17に遮断信号が出力されて、遮断部8が開となり出力が遮断されて出力電圧VOUT及びVR1が「0」、つまり応答時間T1(例えば2秒)で出力が遮断されることになる。またこの時、短絡と判定される出力電圧VTHは、時間とともに徐々に上昇して時刻t2で飽和した状態となるものの、出力電圧VOUTを上回ることがなく、短絡比較器16から遮断信号がオア回路17に出力されることはない。
【0032】
また、端子P3、P4間に接続される防犯警報装置3の接続ミス等により定格より大きな負荷(過大負荷)が接続された場合には、図2(b)に示すように、短絡と判定される出力電圧VTHが過電流発生時t1から時間とともに上昇していき、フの字保護機能が働くことにより低下しつつある出力電圧VOUTを時刻t2で上回ることになり、この時点で短絡比較器16から遮断信号がオア回路17に出力され、該オア回路17によって遮断部8を遮断動作させる。これにより、前述した過電流応答時間T1よりも速く、またフの字保護機能が完全に動作する応答時間よりも速い応答時間T2(例えば0.5秒)で出力が遮断されることになる。
【0033】
一方、端子P3、P4間に接続される防犯警報装置3の接続配線ミス等により端子P3、P4間が短絡状態の場合には、図2(c)に示すように、時刻t1で過電流が検出されると、過電流比較器10から出力された電圧Vが短絡基準電圧発生回路15で抵抗R4とコンデンサC4の時定数によって充電される。そして、この充電された電圧VSHが時間とともに上昇していき、これが短絡比較器15の基準値VSHとして該比較器15の他方の入力端子に入力され、一方の入力端子に入力される出力電圧VOUTを抵抗R5とR6で分圧した電圧VOBと比較される。
【0034】
ここで、短絡と判定される出力電圧VTHは、VTH=VSH/R6(R5+R6)で算出され、VSHが時間とともに上昇することから、短絡と判定される出力電圧VTHも時間とともに上昇することになる。そして、短絡比較器16において、出力電圧VOUTをR5とR6で分圧した出力電圧VOBが短絡基準電圧VSHに達するまで低下した際に、短絡比較器16からオア回路17に遮断信号が出力され、オア回路17を介して遮断部8が遮断動作、すなわち応答時間T3(例えば0.05秒)で出力が遮断されることになる。
【0035】
また、遮断部8により出力が遮断された時には、短絡基準電圧発生回路15の入力電圧Vが強制的に電圧VDCとなるため、基準値VSHは上昇し続け、短絡比較器16の入力電圧VOBが略0Vとなって電圧VSHよりも低い状態となるので、短絡検出動作による出力遮断時においても、自己保持されるようになっている。なお、出力が遮断された場合には、基準値VSHは最終的に電圧VDC付近まで充電されることから、定常時のVOUTをR5とR6によって分圧された電圧VOBは電圧VDCよりも充分に低い値となるようにR5とR6が設定されている。また、短絡基準電圧発生回路15の時定数は、過電流遅延回路12の時定数よりも充分小さく設定されている。
【0036】
また、前記保持状態の解除は、解除スイッチ22をオン操作することにより、短絡比較器16の基準値VSHが「0」となり、短絡比較器16の出力が反転してオア回路17から非遮断信号が出力されることにより行われる。また、電圧VODも「0」となり、過電流遅延比較器13からも同様に非遮断信号が出力される。このオア回路17からの信号により、トランジスタ19がオフとなってコイル20への通電が遮断されて、接点21が常開接点21b側から常閉接点21a側に復帰して、元の状態に戻ることになる。
【0037】
なお、突入電流については、図2(d)に示すように、時刻t1で基準値VOCPを超えても、これが時間とともに徐々に低下して時刻t2で基準値VOCPを下回ると共に、この時刻t1〜時刻t2間において、過電流遅延比較器13の入力電圧VODが基準値VDCを上回ったり、短絡比較器16において出力電圧VOBが基準値VSHを上回ることもない。これにより、両比較器13、16からオア回路17に遮断信号が出力されることがなく、遮断部8は閉状態が維持されることになる。つまり、前記過電流保護回路5の場合、過電流が検知されると、過電流遅延回路12を介し遮断信号が2秒遅延されてオア回路17に入力されると共に、短絡基準発生回路15の基準電圧VSHの上昇が開始され、この基準電圧VSHより出力電圧VOBが低下した際に遮断信号がオア回路17に入力されるとこになる。
【0038】
このように上記実施形態の過電流保護回路5にあっては、判定部7により短絡と判定した際に、遮断部8を動作させて出力を遮断するための基準値VSHを、過電流検出時点から時間経過とともに変化させるため、負荷による突入電流による誤動作を防止しつつ、短絡発生等の過電流を精度良く検出して出力を確実に遮断することができる。特に、判定部7が過電流を検出してから出力を遮断するまでに所定の時間を設けているため、突入電流による誤動作を一層確実に防止できて、例えば威嚇ライト55やサイレン56のように誘導性負荷が接続される場合、或いは容量性負荷が接続される場合であっても、該負荷による比較的大きな突入電流でも、出力を遮断してしまう等の誤動作を確実に防止することができる。
【0039】
また、判定部7が過電流を検出したり短絡と判定して出力を遮断した際に、解除スイッチ22による解除信号が入力されるまで判定部7が自己保持状態を維持するため、過電流や短絡を検出した際の出力遮断状態を確実に維持できると共に、出力短絡時や過大負荷時において、通常のフの字保護機能が働く応答時間よりも速く出力を遮断することができて、過大負荷や短絡時の過電流を高精度に検出して出力を遮断でき、直流電源装置1の安全性の向上を図ることができる。
【0040】
さらに、判定部7のオア回路17から遮断信号が出力された際に遮断部8が動作し、それ以外はオア回路17から非遮断信号が出力されるため、遮断状態を維持するために従来のような多数の部品を有する保持回路25が不要となり、過電流保護回路5の部品点数を大幅に削減してコスト安価に形成したり、各回路を1枚の基板上に効率的に構築することができる。
【0041】
またさらに、過電流保護回路5の判定部7が自己保持機能を有するため、過電流発生時に判定部7により遮断部8を確実に遮断させてその状態を安定維持することができ、遮断部8の接点21のチャタリング等を防止して該接点21の劣化等を防ぐことができる。また、過電流応答時間と短絡応答時間(基準値)をそれぞれ独立して設定できるため、出力電圧や出力電流の大きさ、AC/DC回路4のフの字応答時間に応じて最適な基準値を容易に設定でき、直流電源装置1の設計上の自由度を高めることができる。また、回路構成の変更と基準値を予め設定することにより対応できるため、CPU等のソフトウェアによる制御を変更することなく対応でき、基準値の変更等も各ツェナーダイオードの設定や交換により簡単に対応できて、設置の作業性やメンテナンス性を向上させることも可能となる。
【0042】
さらにまた、出力電流(負荷)の大きさに応じた最適な出力遮断動作を得ることができて、直流電源装置1自体とそれに接続される防犯警報装置3を確実に保護することができ、無人状態で設置され威嚇用ライト55、サイレン56等の誘導性負荷の発報装置を備えた防犯警報装置3の電源装置として好適に使用して、長期に亘り高精度な防犯監視状態に得ること等が可能となる。
【0043】
なお、上記実施形態においては、過電流保護回路5を過電流検出部6、判定部7、遮断部8及び出力電圧監視部9に分けて説明したが、これらは説明の便宜上であって、例えば判定部7の過電流遅延回路12を過電流検出部6に設けることもできるし、各部6〜9の全部もしくは一部を1枚の基板上に構築することも勿論可能であり、要は、過電流検出部6、判定部7、遮断部8及び出力電圧監視部9と同等の機能を有する回路を備えれば良い。また、上記実施形態における、各回路の構成等も一例であって、同等の機能が得られる他の回路構成を採用する等、本発明の各発明に係わる要旨を逸脱しない範囲において適宜に変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、負荷としての防犯警報装置への適用に限らず、例えばカメラ用の電源装置等直流電源を使用する全ての負荷(装置)にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係わる過電流保護回路を採用した直流電源装置の一実施形態の回路構成図
【図2】同その動作を示す波形図
【図3】従来の直流電源装置の回路構成図
【図4】同その動作を示す波形図
【図5】同その保持回路の回路図
【図6】一般的なAC/DC回路の構成図
【図7】一般的な防犯警報装置の構成図
【符号の説明】
【0046】
1・・・直流電源装置、2・・・交流商用電源、3・・・防犯警報装置、4・・・AC/DC回路、5・・・過電流保護回路、6・・・過電流検出部、7・・・判定部、8・・・遮断部、9・・・出力電圧監視部、10・・・過電流比較器、12・・・過電流遅延回路、13・・・過電流遅延比較器、15・・・短絡基準電圧発生回路、16・・・短絡比較器、17・・・オア回路、18・・・出力端子電圧監視回路、19・・・トランジスタ、20・・・コイル、21・・・接点、21a・・・常閉接点、21b・・・常開接点、22・・・解除スイッチ、50・・・制御部、55・・・威嚇用ライト、56・・・サイレン、R1・・・電流検出用抵抗。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷への過電流を検出した際に出力を遮断する出力遮断機能を有する直流電源装置において、出力電圧監視手段を備え、短絡と判定して出力を遮断するための基準値を過電流検出時点から時間経過とともに変化させることを特徴とする直流電源装置の過電流保護回路。
【請求項2】
前記過電流を検出して出力を遮断するまでに所定の時間を設けることを特徴とする請求項1に記載の直流電源装置の過電流保護回路。
【請求項3】
前記過電流を検知もしくは短絡と判定して出力を遮断することによって、解除手段による解除信号が入力されるまで自己保持状態となることを特徴とする請求項1または2に記載の直流電源装置の過電流保護回路。
【請求項4】
前記負荷は、威嚇用ライト、サイレン等の発報装置を備えた防犯警報装置であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の直流電源装置の過電流保護回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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