相互接続マルチチャンバデバイスを使用する流体処理および移送の方法
マイクロ流体デバイスは本体を備える。本体は、空気ポートと、液体を受けるためのチャンバと、接続導管とを画定する。各ポートは、シールで密封され、シールを通る空気導管に結合するように成形される。チャンバのうちの少なくとも幾つかはそれぞれ上端開口と底部開口とを有する。上端開口は対応するポートと流体連通している。底部開口は、底部開口よりも上側にある接続導管を通じて互いに流体連通している。空気導管を通じたチャンバに対する空気圧の選択的な印加により、例えば、デバイス内でバイオサンプルを処理するために、液体が一つのチャンバから接続導管を通じて他のチャンバへと移送されうる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その内容が参照により本明細書に組み入れられる2008年3月31日に出願された米国仮出願第61/064,871号の恩典を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、流体処理に関し、特に、相互接続マルチチャンバデバイスを使用する流体処理および移送に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
固体および流体の形態をなす臨床サンプルからのDNA、RNA、mRNAおよびタンパク質などの生物学的サンプルの調製は、組織解離、細胞分離、細胞溶解、遺伝子抽出、および/または洗浄などの一連の処理ステップを伴う場合がある。これは、時として、複雑な流体供給プロトコルおよび処理プロトコルを必要とする。幾つかの従来の処理方法では、サンプルおよび試薬が包含されて試験管およびマイクロピペットにより手作業で移送される。これは、時間がかかり、大きな労力を要するとともに、人為的ミスを起こし易い。また、異なるサンプル間での核酸の二次汚染の重大な危険もある。手作業のステップおよび手動動作の幾つかはロボットシステムを使用して自動化される場合があるが、ロボットシステムは、少量のサンプルを取り扱うために使用するのが難しい。また、自動化は、一般に、付加的コストおよび高価な機器を必要とする。
【0004】
チップベースまたはカートリッジベースのマイクロシステムは、閉じられた流体システム内で少量のサンプル流体を処理することができ、それにより、二次汚染の危険が減少する。一般に、チップまたはカートリッジベースのシステム内の流体流れは、ポンプおよびバルブを使用して推し進められて調整される。これらのシステムは、構造が複雑で信頼性が低いとともに、高価で使い難い。
【発明の概要】
【0005】
本発明の局面によると、本体を備えるマイクロ流体デバイスが提供される。本体は、第1、第2、および第3の空気ポートと、第1、第2および第3のチャンバと、接続導管とを画定する。各ポートは、シールで密封され、該シールを通る空気導管に結合するように成形される。各チャンバは、液体を受けるためのものであり、上端開口と底部開口とを有する。各チャンバの上端開口はそれぞれのポートと流体連通する。接続導管は、底部開口のそれぞれよりも上側にある。底部開口は、接続導管を通じて互いに流体連通する。チャンバへの前記空気導管を通じた空気圧の選択的な印加により、液体を前記チャンバのうちの一つから接続導管を通じて該チャンバのうちの他の一つへと移送することができる。前記チャンバのそれぞれは、該それぞれのチャンバの前記底部開口へ向けて下向きに傾斜した下面を有してもよい。前記接続導管の少なくとも一部分が前記チャンバ内の液位よりも上側の位置にあってもよい。本体は、上部と、下部と、中間部とを含んでもよい。チャンバおよび接続導管は、前記中間部および上部によって画定されてもよい。前記接続導管の少なくとも一部分が前記上部に隣接してもよい。前記チャンバの上端開口が前記上部に隣接してもよい。ポートが前記下部によって画定されてもよい。中間部は、ポートのうちの一つとその対応する上端開口との間でそれぞれ延びる導管を画定してもよい。中間部は、底部開口のうちの一つと接続導管との間でそれぞれ延びる導管を画定してもよい。上部、中間部および下部が別個の部分であってもよく、中間部が該上下部間に挟まれてもよい。前記上部および前記下部のうちの少なくとも一方が平坦なシートから形成されてもよい。前記上部および前記下部のうちの少なくとも一方がプラスチック材料から作製されてもよい。本体が6〜11個の相互に接続されたチャンバなどの、3つより多い相互に接続されたチャンバを画定してもよい。チャンバ内の液体は、試薬、バッファー、サンプル、または遺伝子結合調整剤を含んでもよい。少なくとも2つのチャンバが異なる液体を包含してもよい。前記本体の少なくとも一部が高分子から作製されてもよい。高分子がポリカーボネートまたはポリ(メチルメタクリレート)を含んでもよい。シールがプラスチック材料から作製されてもよい。本体が遺伝子抽出子チャンバを画定してもよい。遺伝子抽出子チャンバは、遺伝子抽出子を包含してもよく、前記接続導管と流体連通してもよい。本体が生成物チャンバと廃物チャンバとを画定し、それぞれが前記遺伝子抽出子チャンバと流体連通してもよい。デバイスがカートリッジであってもよい。空気導管がニードルを備えてもよい。
【0006】
本発明の他の局面によれば、先の段落で説明したデバイスと、該デバイスに接続可能で、空気圧を該デバイスの前記ポートを通じて前記チャンバに選択的に印加するためのステーションとを備えた装置が提供される。ステーションは、前記デバイスと結合するように構成されたベースと、前記ベースに取り付けられ、前記デバイスが該ベースに結合されるときに前記シールを通して前記ポートに結合するように成形された複数の空気導管と、該空気導管を通じた流体の流れを選択的に調整するためにそれぞれが該空気導管のうちの一つに接続された複数のバルブとを備えてもよい。バルブの第1の組が、第1の空気圧を前記ポートに選択的に印加するために第1の圧力デバイスに接続されてもよく、バルブの第2の組が、前記第1の空気圧よりも低い第2の空気圧を前記ポートに選択的に印加する第2の圧力デバイスに接続されてもよい。第1の空気圧が1気圧より高くてもよく、第2の空気圧が1気圧より低くてもよい。第1の圧力デバイスが圧力ポンプを備えてもよく、前記第2の圧力デバイスが真空ポンプを備えてもよい。ステーションは、前記バルブおよび前記圧力デバイスの動作を制御するためのコントローラを備えてもよい。ステーションは、前記コントローラの動作を制御するために該コントローラと通信するコンピュータを備えてもよい。
【0007】
本発明の更なる局面によれば、2つの先の段落で説明したデバイスを動作させる方法であって、チャンバのうちの少なくとも一つが液体を包含する方法が提供される。方法は、前記空気導管を前記ポートに結合する段階および、前記ポートを通じて異なる空気圧を前記チャンバに選択的に印加して、前記液体が前記チャンバのうちの一つから該チャンバのうちの他の一つへと流れるようにする段階を含む。空気圧を選択的に印加して、前記チャンバのうちの2つより多くを通じて前記液体を連続的に移送してもよい。
【0008】
本発明の他の局面および特徴は、添付図面と併せて本発明の特定の態様の以下の説明を検討すると、当業者に明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図面において、本発明の態様を単なる一例として示す。
【図1】本発明の例示的な態様の流体装置のブロック図である。
【図2】図1の装置で用いる容器ベースの上面図である。
【図3】図2のA-A線に沿うベースの断正面図である。
【図4】本発明の例示的な態様の図1の装置で用いるカートリッジの下面透視図である。
【図5】図4のカートリッジの分解斜視図である。
【図6】図4のカートリッジの下面図である。
【図7】図4のカートリッジの上部の上面斜視図である。
【図8】図4のカートリッジの下部の下面斜視図である。
【図9】図4のカートリッジの中間部の上面図である。
【図10】図4のカートリッジの中間部の下面図である。
【図11】動作時の図4のカートリッジに結合される図3のベースの断正面図である。
【図12】本発明の例示的な態様の図4のカートリッジの一部のその動作を示す概略図である。
【図13】本発明の例示的な態様の図4のカートリッジの一部のその動作を示す概略図である。
【図14】本発明の例示的な態様の図4のカートリッジの一部のその動作を示す概略図である。
【図15】本発明の例示的な態様の図4のカートリッジの一部のその動作を示す概略図である。
【図16】本発明の例示的な態様の別のカートリッジの分解斜視図である。
【図17】図16のカートリッジの中間部の下面斜視図である。
【図18】本発明の例示的な態様の代替的なカートリッジのその動作を示す概略図である。
【図19】代替的なカートリッジと結合するのに適する代替的なベースの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
詳細な説明
本発明の例示的な態様は、マイクロ流体デバイスにおける相互接続された流体チャンバ間で液体を選択的に移送するために空気圧を利用する。チャンバは空気ポートに接続されており、該空気ポートを通じて空気圧を個々のチャンバ内にそれぞれの液位よりも上側で選択的に印加することができる。チャンバ間の意図しない液体移送を防止するため、チャンバは、少なくとも一部がチャンバ内の液位よりも上側の位置にある接続導管を介して互いに接続されてもよい。
【0011】
図1は、流体生物学的サンプルを処理するための本発明の例示的な態様のシステム100を示す概略ブロック図である。
【0012】
システム100は、デスクトップステーションであってもよいステーション102を含む。ステーション102は、コンピュータ104に接続されており、以下で更に詳述するようにカートリッジ106を受けることができる。
【0013】
ステーション102は、USB接続などを介してコンピュータ104と通信する内蔵コントローラ108も含む。コンピュータ104は、システム100の動作を制御するための特別に設計されたプログラムがロードされる特別に設計されたコンピュータまたは汎用コンピュータであってもよい。
【0014】
ステーション102は、複数のポンプ110Aおよび110B(総称的に且つ個別にポンプ110とも称される)、小型バルブアレイ112Aおよび112B(総称的に且つ個別的にバルブアレイまたはバルブ112とも称される)、ならびにバルブアレイ制御ボード114も含む。ポンプ110Aなどの、ポンプのうちの一方は真空ポンプであり、ポンプ110Bなどの、他方のポンプは圧力ポンプである。ポンプは、シリンジポンプまたは蠕動ポンプなどの小型ポンプであってもよい。幾つかの態様において、ポンプによって供給される流量は約0.01〜約50ml/分であってもよい。他の態様では、流量が異なってもよい。バルブは小型電磁バルブであってもよい。ポンプがエアポンプであってもよい。しかしながら、異なる用途では、異なるガスポンプまたは流体ポンプが使用されてもよい。異なる態様では、ポンプ110が、外部真空源または圧力源であってもよい他の空気源と置き換えられてもよい。いくつかの場合には、大気が適切な空気源をもたらしてもよい。
【0015】
コントローラ108は、ポンプ110の動作を制御するとともに、バルブアレイ制御ボード114を介してバルブアレイ112を制御するように適合されて構成される。コントローラ108は、PIC(「プログラマブル・インテリジェント・コンピュータ」)マイクロコントローラなどのマイクロコントローラユニット、またはオムロンプログラマブル論理コントローラなどのプログラマブル論理コントローラ等を含んでもよい。
【0016】
バルブ112は空気インタフェース116に接続される。バルブ112は、SMC(商標)から入手できる小型バルブ、またはCole-Parmer(商標)から入手できるピンチバルブ、または、他の市販のもしくは特別に設計されたバルブを含んでもよい。
【0017】
インタフェース116は、図2および図3に示される容器/カップリングユニットまたはベース300を含んでもよい。ベース300は、カートリッジ106と結合するように成形されるベース部302および壁部304を含む。多数の空気導管、この場合にはニードル306が、ベース部302を通じて該ベース部から上向きに延びている。各ニードル306は、内部導管を有しており、バルブ112およびニードル306を通じて流体を移送するためにバルブアレイ112内の異なるバルブに接続される。
【0018】
例示的なカートリッジ106が、本発明の例示的な態様の図4〜図10に示されている。
【0019】
図4、5、および6に示されるように、カートリッジ本体400は、3つの部分、すなわち、上部402、中間部404、および下部406から形成される。3つの部分は別個の部分であってもよく、かつ中間部404が上下部402と406の間に挟まれる。3つの部分402、404、406は任意の適した方法で互いに取り付けられてもよい。例えば、これらの部分は、ボルトおよびナット(図示せず)を使用して互いにボルト締結されてもよく、または、接着剤を使用して互いに接着されてもよい。幾つかの態様では、上下部を中間部に対して取り外し可能に取り付けることが都合良い場合がある。例えば、図4〜図10に示されるように、これらの部分を互いに固定するためにボルト穴408が設けられてもよい。
【0020】
図5に示されるように、上部402は、ボルト穴408を有する平板として成形されてもよい。あるいは、上部402は、接着側を有するプラスチックテープなどの薄い膜またはシートから形成されてもよい。例えば、テープの接着側がその表面上に接着層を有してもよい。
【0021】
図6および図8に示されるように、下部406は、略板形状をなしていてもよいが、ボルト穴408、破壊可能なシール411(図示しないが、図11を参照)で密封された空気ポート410、ウェル412、ならびに流体導管またはチャンネル414および416を設けてもよい。シール411が接着テープから形成されてもよい。空気ポート410は、接着テープを使用して密封されてもよい。あるいは、下部406は、中間部404に面する接着側を有するプラスチックシートなどの平坦なシートから形成されてもよい。各ポート410は、シール411を貫通するニードル306などの空気導管に結合されるように成形される。
【0022】
図9および図10はそれぞれ、中間部404の上面図および下面図である。図示のように、中間部404は、多数のチャンバ418A、418B、418C、418D、418E、418F、418G、418H、418I、および418J(総称的に且つ個別にチャンバ418Aとも称される)を画定する。各チャンバ418は、上端開口420と底部開口422とを有する(容易に見えるように、図9には、422A、422B、422G、および420J、ならびに422Jだけが記されている)。
【0023】
各上端開口420は空気導管またはチャンネル424と接続され、該チャンネルは、最初に横方向に延びた後、下部406のそれぞれの空気ポート410へ向けて下向きに延びており、それにより、対応するチャンバ418がそれぞれのポート410と連通する(容易に見えるように、図9および図10には、チャンネル424Aおよび424Jだけが記されている)。
【0024】
各底部開口422A〜422Hは液体導管またはチャンネル426(それぞれ426A〜426Hとして記されている)と接続され、該チャンネルは、最初に横方向に延びた後、中間部404の上面に沿って延びる上端接続導管428へ向けて上向きに延びる。底部開口422Iおよび422Jは、下部406の導管またはチャンネル414および416を介してウェル412に接続される。ウェル412は、接続導管428へ向けて上向きに延びる導管またはチャンネル430と接続される。
【0025】
したがって、チャンバ418はそれぞれ、その上端開口420を介してそれぞれのポート410に流体連通されるとともに、それらの底部開口422および接続導管428を介して互いに流体連通する。
【0026】
ボルトおよびナットなどを用いてまたは接着テープもしくは熱拡散ボンディングを用いて3つの部分が互いに取り付けられると、チャンネルは、緊密に密封されるとともに、チャンバ間および空気ポートの対応する対とチャンバとの間の流体連通を許容するための閉じられた流体導管を形成する。部分402と404の間および部分404と406の間の接触面がシール材料を包含しまたはシール材料でコーティングされてもよい。ウェル412は、中間部404の下面によって覆われると、以下で更に説明するように、例えば、遺伝子抽出チャンバとしての役目を果たしてもよい別の流体チャンバを形成する。ウェル412によって形成されるチャンバは空気ポートに直接に接続されない。これは、当業者が理解できるようにそのようにする必要がないからである。
【0027】
言うまでもなく、カートリッジ本体400は、最初は、閉じられた流体ネットワークを内部に画定する。上部および中間部402、404は、互いに取り付けられると、その間でチャンバ418と上端接続導管428とを画定する。チャンバ418の上端開口は対応するポート410と流体連通する。チャンバ418の底部開口420は、接続導管428を介して互いに流体連通する。
【0028】
上端開口420および接続導管428は、図示のように上部402に隣接して同じ高さに配置されてもよい。異なる態様では、接続導管428が上端開口420よりも高い位置または低い位置にあってもよいが、チャンバ418内に包含される液体の接続導管428を通じた意図しない移送または混合を防止するため、接続導管428は、接続導管428を介して互いに接続されるチャンバ418の最も高い底部開口422よりも上側の位置になければならない。言うまでもなく、チャンバ428内の許容できる最高液位は、接続導管428の最も高い部分の高さに依存する。したがって、より高い接続導管428(最高でチャンバの上端までの)が、チャンバ容積のより効果的な利用を許容できるため、有利となり得る。
【0029】
チャンバ418は、略細長い円筒形状と傾斜下面とを有してもよく、また、上下部402と406の間で垂直に延びてもよい(図11により良好に示される)。しかしながら、異なる態様において、チャンバ418は、異なる断面形状を有してもよく、また、更に長くまたは短くてもよい。
【0030】
カートリッジ本体400またはその一部分は、任意の適した材料を使用して形成されてもよい。例えば、各部分は、ポリカーボネート、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)などの高分子材料から形成されてもよい。上部402は、接着面を伴うまたは伴わないプラスチックシートなどの薄いシール材料から形成されてもよい。シール411は、ニードル306により都合良く破壊することができるプラスチックフィルムなどの任意の適したシール材料から形成されてもよい。プラスチックフィルムは、その表面に接着層を有してもよくまたは有していなくてもよい。
【0031】
本体400は、当業者により理解され得るように、マイクロ射出成型などの従来の機械加工技術およびコンピュータ数値制御(CNC)を使用して、または、プラスチック射出成型を使用して形成されてもよい。
【0032】
チャンバおよびチャンネルの内面は、望まれるときまたは必要とされるときに、洗浄されまたは滅菌されてもよい。ある場合には、表面特性を変えるために、チャンバおよびチャンネルの内面がテフロンなどの他の高分子材料でコーティングされてもよい。
【0033】
カートリッジ400および内部チャンバ418、流体導管/チャンネル、または開口のサイズまたは寸法は、用途に応じて変えてもよい。生物学的用途においては、サンプル量が一般に少なく、したがって、流体チャンバおよびチャンネルは数マイクロメートル程度の寸法を有してもよい。寸法が非常に大きい場合には、空気圧を使用して少量の流体を移送することが難しい場合がある。一方、寸法は、空気圧下で流体の十分な移送速度を可能にできるように十分大きくなければならない。典型的な用途において、流体チャンネルおよび開口は、約0.2mm〜約1mmの範囲の寸法を有してもよい。チャンバは、特定の望ましいプロセスまたは処理を行うのに十分な容積を有していなければならない。各チャンバ418または他の流体チャンバは、1マイクロリットル〜100ミリリットル程度の容積を有してもよい。
【0034】
異なる態様では、用途に応じて、開口、チャンネル、導管、およびポートの特定の形状が変わってもよい。
【0035】
使用時、液体が予めロードされるなど、一つまたは複数のチャンバ418に液体が充填されてもよい。液体は、サンプル、バッファー、または試薬液体、または、任意の他の望ましい液体であってもよい。また、チャンバは、精製した標的遺伝子などの生成物を蓄えるため、または、廃物を蓄えるために使用されてもよい。最初に異なるチャンバ418に異なる流体がロードされてもよい。
【0036】
流体は、中間部404の上面を上部402で覆う前にロードされてもよい。流体をロードした後、中間部404の上端で露出される開口を閉じて密封するとともに、輸送中もしくは動作中の漏れまたは汚染を防止するため、上部402が中間部404に付着かつ取り付けられる。幾つかの態様において、流体は、最初に、ポート410が密封される前に、ポート410を介してチャンバ内にロードされてもよい。しかしながら、多くの用途では、上部402が取り外された状態で上端からロードするのが更に都合良い場合がある。
【0037】
図11に示されるように、カートリッジ本体400がベース300に結合されるときに、ポート410のシール411がシール411を刺通するニードル306によって選択的に破壊され、それにより、バルブアレイ112中の対応するバルブとチャンバ418との間の流体連通が、ポート410、導管424および上端開口420を通じて成されてもよい。
【0038】
バルブアレイ112Aおよび112B中のバルブはそれぞれ、対応するニードル306に接続され、そのニードル306を通じた流体の流れを選択的に調整するように構成される。ポンプ110は、バルブ112を介して正圧または負圧をポート310に印加するためにバルブアレイ112Aおよび112Bに接続される。
【0039】
コンピュータ104はコントローラ108の動作を制御し、そしてコントローラ108は、ポンプ110およびバルブ112の動作を制御して、ニードル306を介して加圧空気(正圧)または真空(負圧)をポート410へ選択的に印加する。正圧または負圧がポート410に印加されるかどうかに応じて、流体が対応するチャンバ418へ選択的に移送されるかまたは対応するチャンバから移送されてもよい。特定のチャンバに関して変化が必要とされない場合、そのチャンバのためのポートは、例えば対応するバルブを閉じることにより、閉じられたままであってもよい。
【0040】
例えば、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)のための遺伝子抽出を行うため、図12に示されるようにカートリッジ400に流体がロードされてもよい。図12は、カートリッジ400を幾つか変更してなる類似のカートリッジを概略的に示している。一つの変更点は、幾つかのチャンバが図12では省かれているという点である。これは、それらのチャンバがこの特定の動作のために使用されないからである。更に下部も省かれている。他の変更点は、底部開口424Iおよび424Jが直接にではなく遺伝子抽出チャンバ412を介して接続チャンバ428に接続されているという点である。しかしながら、液体をチャンバ418B〜418F間で移送するための動作手法は、これらの変更にもかかわらず同じである。チャンバ418B、418C、418D、418E、418Fにサンプル、溶解バッファー、調整剤、洗浄バッファー、および溶出バッファーがそれぞれロードされる。遺伝子抽出子がウェル412内に堆積されてもよい。遺伝子抽出子は、高い鉄濃度の流体中で遺伝子に付着できる磁気ベースの抽出子、シリカ膜、シリカビーズまたは他の材料を含んでもよい。遺伝子としては、DNA(デオキシリボ核酸)、RNA(リボ核酸)、またはmRNA(メッセンジャーRNA)を含むことができる。遺伝子抽出子は、抽出されるべき特定の遺伝子に基づいて選択されてもよい。チャンバ418Iおよび418Jは、生成物、抽出された遺伝子、および反応によって生成された廃物をそれぞれ蓄えるために使用することができる。DNAまたはRNA分解試薬が一つまたは複数のチャンバ内に予めロードされてもよい。
【0041】
いくつかの場合には、遺伝子結合状態の調整が必要とされる場合がある。チャンバ内にロードされるバッファーは、標的遺伝子結合状態に基づいて遺伝子結合するためのバッファー(純エタノールまたは70%エタノールなど)を含んでいてもよい。
【0042】
一つの態様では、サンプル溶解を行うために、導管424D、424E、424Fに対応するバルブ112が閉じられる。導管424Bに接続されるバルブ112Bが開放されて、空気などの加圧ガスが導管に供給され、それにより、チャンバ418B内に正圧が形成される。導管424Cに接続されるバルブ112Aが開放されて、真空圧が導管に印加され、それにより、チャンバ418C内の液体よりも上側に負圧が形成される。したがって、圧力差がサンプル液をチャンバ418Bからチャンバ418Cへと推し進める。また、サンプル液がチャンバ418Cへ完全に移送された後、気泡がチャンバ418C内に形成されてサンプルと溶解バッファーとの混合を容易にしてもよい。このように、サンプルを溶解して遺伝子を分解から保護するために、サンプルが溶解バッファーと完全に混合されてもよい。
【0043】
同様の手法を使用して、溶解されたサンプルをチャンバ418Dへ移送して結合調整剤と混合してもよく、それにより、サンプルの遺伝子状態を調整してもよい。
【0044】
調整されたサンプルは、その後、当業者によって理解されるように、特定の用途に応じて、直接にまたはチャンバ418Eおよび418Fのうちの一つまたは複数を介してウェル412へ移送されてもよい。
【0045】
磁気ビーズが遺伝子抽出のための遺伝子抽出子として使用される場合、溶解されたサンプルは、類似の手法を使用して、最初に他のチャンバを通り抜けることなく、ウェル412内で磁気ビーズと混合されてもよい。
【0046】
遺伝子抽出は、チャンバ424Dなどの他のチャンバから移送される予め処理されたサンプル流体を用いてウェル412内で行なわれてもよい。サンプル内の標的遺伝子は遺伝子抽出子に付着される。残存する液体が廃物としてチャンバ418Jへ移送されてもよい。
【0047】
洗浄バッファーをチャンバ424Eからウェル412へ移送することにより遺伝子精製が行なわれてもよい。複数のステップで遺伝子を洗浄するために一つの洗浄バッファーまたは異なるタイプの洗浄バッファーが使用されてもよい。複数の洗浄バッファーが使用される場合には、洗浄バッファーを蓄えるために2つ以上のチャンバが割り当てられてもよい。一つの態様では、ウェル412および導管414を介して洗浄バッファーがチャンバ418Eからチャンバ418Jへ移送されてもよい。廃物は、その後、カートリッジがリサイクルされるようになっている場合にはチャンバ418Jから排出されてもよく、または、カートリッジとともに処分されてもよい。
【0048】
遺伝子溶出は、ウェル412および導管416を介して溶出バッファーをチャンバ418Fからチャンバ418Iへ移送することによって行なわれてもよい。溶出バッファーは、遺伝子抽出子に付着される遺伝子を解放して、遺伝子をチャンバ418Fへ運ぶ。チャンバ418I内に収集される標的遺伝子は、遺伝子増幅および検出などの下流側用途のためにピペットまたはシリンジを使用して引き出されてもよい。抽出された遺伝子または他の反応性生物は、特定の信号または標的の検出のために検出チャンバ(図示せず)へ移送されてもよい。検出チャンバは、カートリッジ116内に設けられてもよく、または、カートリッジ116から材料を受けることができる外部デバイス(図示せず)に設けられてもよい。
【0049】
図13、14、15に示されるカートリッジの簡略化された概略図を用いて、チャンバ間で流体を選択的に移送する動作について説明する。簡単にするため、これらの図には3つのチャンバだけが示されているが、更に多くのチャンバが同様の方法で動作されてもよいことは理解すべきである。
【0050】
図13に示されるように、例示的な用途では、各チャンバ418A、418B、および418Cが液体試薬432A、432Bまたは432Cでそれぞれ満たされる。最初はポート410A、410B、および410Cが密封されている。
【0051】
図14に示されるように、試薬432Aおよび432Cをチャンバ418C内で混合させるため、正のガス(N2を含む不活性ガスなどの空気または他のガスを使用する)圧がポート410Aに印加されてもよく、また、真空圧がポート410Cに印加されてもよく、一方、ポート410Bは対応するバルブ112を閉じることなどにより閉じられたままであってもよい。空気圧は、底部開口422A、接続導管428および底部開口420Cを通じて試薬432Aをチャンバ418C内に推し進める。したがって、試薬432Aおよび432Cをチャンバ418C内で接触させまたは混合させることができる。チャンバ418B内の正圧に起因して、試薬432Aがチャンバ418B内に流入することが防止される。チャンバ418A内の試薬をチャンバ418Cへ完全に移送することができる。
【0052】
図15に示されるように、試薬432Aをチャンバ418Cへと完全に移送することができ、一方、試薬432Bはチャンバ418B内に残る。
【0053】
接続導管428がチャンバ内の液位よりも上側にあり、また、空気圧が上端開口を通じて印加されるため、空気は、空気ポートを通じて液体をカートリッジから追い出すことなく、液体を通り抜けて泡立つことができる。図15に示されるようにチャンバ418C内などのチャンバ内で試薬を混合させるために気泡を使用することができ、都合良い。
【0054】
流体移送、混合および処理は、任意の内部バルブ、ポンプまたはカートリッジ内の他の流体調整デバイスを使用することなく行なわれるのが都合良い。流体移送は、空気圧を異なるポートに選択的に印加することにより完全に行なわれてもよい。このプロセスは、コンピュータ104およびコントローラ108を使用して自動化されてもよい。幾つかの態様において、チャンバは、流体を任意の選択されたチャンバから他の選択されたチャンバへ移送できるようにまたは流体を一連のチャンバを通じて一方から他方へ連続的に移送できるように互いに接続されてもよい。
【0055】
言うまでもなく、本明細書において記載される例示的なカートリッジは、構造が簡単であり、比較的安価に作製することができる。カートリッジ内に可動部品がないため、非常に信頼できる。輸送中および動作中であってもサンプルおよび試薬が閉じられた系内に残存できるため、汚染の危険が著しく減少される。
【0056】
カートリッジは、異なる材料とともに異なる用途で用いるように都合良く構成して適合させることもできる。本発明の態様は、遺伝子増幅ユニットまたは遺伝子検出ユニットなどの他のシステムと都合良く一体化させることもできる。
【0057】
他の態様において、カートリッジ116は、図16、17、および18に示されるカートリッジ本体400’を有するなど、別の構造を有してもよい。カートリッジ本体400’では、処理チャンバおよびチャンネルが中間部404’内に設けられる。上部および下部402’、406’は、流体チャンネルまたはキャビティを伴わない平坦なシートから形成されてもよい。平坦なシートは、接着面を有してもよく、また、高分子テープから形成されてもよい。導管およびチャンネルの特質が専ら中間部内に設けられてもよい。空気ポート410’も中間部404’内に設けられ、下部406’によって密封される。したがって、この態様では、下部406’がシールとしての役目を果たす。
【0058】
カートリッジ本体404’は、図16、17、および18に示されるように、サンプル、洗浄バッファーおよび溶出バッファーをそれぞれ最初に受けるために使用される3つ以上のチャンバと、遺伝子抽出子チャンバ412’と、動作中に抽出されて精製された遺伝子と廃物とをそれぞれ蓄えるための2つのチャンバとを画定してもよい。チャンバは、中間部404’の貫通穴から形成されてもよい。
【0059】
図16および図18により良く示されるように、別のカートリッジ400’内のチャンバは、遺伝子抽出子チャンバ412’と廃物チャンバ418’とを含んでもよい。図示の残りのチャンバは、サンプルおよび他の試薬流体または抽出された遺伝子を受けるための試薬チャンバとして使用されてもよい。カートリッジ400と400’の間の相違点は、廃物および生成物遺伝子をカートリッジ400’内に蓄えるためのチャンバが底部開口を有さず、それらの上端開口が空気ポートおよび抽出チャンバ412’の両方に接続されるという点である。図示のように、複数の接続導管428’は、遺伝子抽出子チャンバ412’の上端開口に放射状の配列をなして直接に接続され、複数の接続導管428’はそれぞれ、他の対応するチャンバに接続される。本体400に関して前述した上端開口および底部開口に類似する上端開口および底部開口を有する他のチャンバはチャンバ412’の周囲に配置される。
【0060】
図示のように、抽出子チャンバ412’は、廃物チャンバを除く他の流体チャンバがチャンバ412’の周囲に配置されるという意味では、中間部404’の中央に配置される。カップ形状を有してもよい遺伝子抽出子434が抽出子チャンバ412’の底部に配置されてもよい。
【0061】
使用中、予めロードされたサンプルおよび洗浄バッファーが、空気圧下で、チャンネル428’を介して遺伝子抽出子チャンバ412’へ移送されてもよい。チャンネル428’を介して遺伝子を溶出するために、予めロードされた溶出バッファーが遺伝子抽出子チャンバ412’へ移送されてもよい。
【0062】
空気インタフェース116の容器ベースは、カートリッジ本体400’と結合するために図19に示されるように変更されてもよく、それにより、変更されたベース300’を別のカートリッジ400’に適切に結合することができるとともに、ニードル306’がカートリッジ400’の空気ポート410’の位置に適合するように配置される。したがって、ニードル306’は、(シールとして作用する)下部406’を通過できるとともに、カートリッジ400’がベース300’に結合されるときに空気ポート410’と連通する。
【0063】
使用時、別のカートリッジ400’は、カートリッジ本体400に関して前述したものと同様の方法で動作されてもよい。
【0064】
言うまでもなく、本発明の態様のカートリッジに内部一体型検出器または検出窓を設ける必要はない。代わりに、カートリッジは、検出器および他の検出デバイスを含む他のユニットに結合されてもよい。このため、カートリッジの本体は、使用されるべき特定の検出方法と共に使用するのに適する材料から作製されてもよい。例えば、本体は、光学的検出方法が使用されるべき場合には透明材料から作製されてもよく、または、磁気プローブが使用されるべき場合には非磁性材料から作製されてもよい。
【0065】
前述して図示したように、カートリッジの全てのチャンバが空気ポートに接続される必要はない。チャンバの上端開口および底部開口がそれぞれ異なる接続チャンネルまたは導管に接続されてもよい。
【0066】
また、図11、12〜15、および18にも示されるように、チャンバの底部は、チャンバの底部開口へ向けて下向きに傾斜される下面を有してもよい。下面は略円錐形状であってもよい。そのような傾斜した下面は、チャンバ内の流体を重力に起因して底部開口から都合良く引き出すことができるため有利となり得る。すなわち、そのような傾斜下面を用いると、チャンバ内のデッドボリュームが減少されまたは最小限に抑えられる。図では、底部開口がチャンバの中心に配置されるように示されているが、このようにする必要はない。底部開口が中心から外れていてもよい。底部開口がチャンバ内の最も低い位置にあり、また、下面が底部開口へ向けて下向きに傾斜される限り、同じ利益を得ることができる。
【0067】
無論、本明細書において記載されるシステムおよびカートリッジに対する変更が可能である。例えば、カートリッジ本体は、特定の用途に応じて異なる構造を有してもよい。チャンバの形状および数が変わってもよい。各チャンバが複数の上端開口または底部開口を有してもよい。上端開口または底部開口は、それらが液体を失うことなく十分な量の液体を受けることができるようにする十分な垂直距離だけ離間されたままである限りまたは空気圧の印加によってチャンバ内の全ての液体を底部開口を通じて引き出すことができるようにする十分な垂直距離だけ離間されたままである限り、チャンバの側壁へと移動されてもよい。
【0068】
ここで、言うまでもなく、カートリッジ106の本体が3つの別個の部分または層から形成される必要はない。カートリッジが単一の材料ブロックから形成されてもよい。しかしながら、製造および流体の事前ローディングにおいては、層状構造が都合良い場合がある。
【0069】
空気ポート410がカートリッジ本体400の下部に配置される必要はない。ポートは、本体400の上端または側部などの他の場所に配置されてもよい。
【0070】
上部402、シール411、または下部406は、カートリッジ106を都合良く再使用できるように取り外して交換できてもよい。
【0071】
複数の接続導管428が異なるチャンバ間に設けられてもよい。異なるチャンバ内の液体を分離させるためには、各接続導管428の少なくとも一部が接続導管428を介して互いに接続されるチャンバ418内の最高液位よりも上側の位置にあれば十分である。
【0072】
ポンプがステーション102内に設けられる必要はない。例えば、正の空気圧をポートに印加するために、利用できる場合には、任意の圧縮空気供給源または源が使用されてもよい。任意の利用可能な真空源が使用されてもよい。
【0073】
図面に示される態様では、カートリッジ106が6〜11個の流体チャンバを含んでもよい。異なる態様では、特定の用途に応じてチャンバの数が異なってもよい。また、全てのチャンバが同じ高さにある必要はなく、または、全てのチャンバが相互に接続される必要はない。例えば、一つのチャンバが他のチャンバよりも上側または高い位置にあってもよい。本明細書において使用される用語「上側」は、一つのチャンバが他のチャンバの真上にあることを要しないことを理解すべきである。一つのチャンバの底部の位置が他のチャンバの底部の位置よりも高い位置にあれば十分である。また、「より高い」または「より低い」という用語は、カートリッジ本体が上部を上にして直立状態で配置されることを前提として使用されることを理解すべきである。
【0074】
ニードル306およびシール411が幾つかの態様で都合良く使用されてもよいが、特にポートのサイズが小さい場合には、空気導管および空気圧を選択的に印加するための空気ポート410と空気導管との間の結合が、異なる態様で設けられてもよい。例えば、異なる態様では、他のタイプの結合配置が使用されてもよい。
【0075】
異なる態様では、ポート410を通じて空気圧をチャンバ418に選択的に印加するために、カートリッジ106に接続可能な異なるベースステーションが使用されてもよい。ベースステーションは、カートリッジ本体400と結合するように構成されるベースと、シール411を貫通して空気圧を選択的に印加するためにポート410と結合するようにベースに取り付けられる空気導管とを含んでもよい。また、ベースステーションは、空気導管を通じた流体流れを調整するためにそれぞれが空気導管に接続されるバルブを含んでもよい。バルブの動作を制御するためにコントローラが設けられてもよい。各空気導管が2つのバルブに接続されてもよく、これらのバルブは2つの異なる圧力デバイスに接続される。一方の圧力デバイスは第1の空気圧を印加するためのものであり、他方の圧力デバイスは、第1の空気圧よりも低い第2の空気圧を印加するためのものであり、その結果、空気圧差によって十分にカートリッジ内のチャンバ間で流体移送を引き起こすことができる。圧力デバイスは、ポンプ、加圧ガス(加圧空気など)ラインまたは真空ラインを含んでもよい。第1の圧力は1気圧より高くてもよく、第2の圧力は1気圧より低くてもよい。幾つかの態様では、両方の圧力が1気圧より高くてもよい。ポンプは、ベースステーションと別個にまたは一体に設けられてもよい。印加圧力およびバルブが自動制御または手動制御されてもよい。
【0076】
ここで、言うまでもなく、本明細書において記載される方法および装置は、遺伝子、タンパク質および試薬を包含する生物学的原材料を移送して処理するために使用できる。前処理後に、同じ装置を使用して標的遺伝子またはタンパク質を抽出できる。本明細書において記載される態様を使用して、血液、培養細胞、血清、他のタイプの体液などを含む異なる生物学的原材料を処理できる。標的遺伝子は、DNA、RNA、mRNA、タンパク質などであってもよい。
【0077】
本明細書において記載される例示的な態様は、臨床もしくはポイントオブケア疾病診断システムの一環として、研究もしくは臨床の用途でのサンプル調製のため、法医学的研究もしくはサンプル処理において、疾患もしくは医学の研究分野において、分子化学研究などの化学的もしくは生物学的な研究分野において、または、他の同様の分野においてなど、様々な用途で使用できる。
【0078】
先に明確に言及されない本明細書において記載される態様の他の特質、利益、および、利点は、この説明および図面から当業者により理解され得る。
【0079】
無論、前述した態様は、単なる例示であって、限定しようとするものではない。前述した態様は、部品の形状、配置、動作の細部および順序について多くの変更を受け入れる余地がある。むしろ、本発明は、特許請求項の範囲によって規定されるその範囲内でそのような変更の全てを包含しようとするものである。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その内容が参照により本明細書に組み入れられる2008年3月31日に出願された米国仮出願第61/064,871号の恩典を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、流体処理に関し、特に、相互接続マルチチャンバデバイスを使用する流体処理および移送に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
固体および流体の形態をなす臨床サンプルからのDNA、RNA、mRNAおよびタンパク質などの生物学的サンプルの調製は、組織解離、細胞分離、細胞溶解、遺伝子抽出、および/または洗浄などの一連の処理ステップを伴う場合がある。これは、時として、複雑な流体供給プロトコルおよび処理プロトコルを必要とする。幾つかの従来の処理方法では、サンプルおよび試薬が包含されて試験管およびマイクロピペットにより手作業で移送される。これは、時間がかかり、大きな労力を要するとともに、人為的ミスを起こし易い。また、異なるサンプル間での核酸の二次汚染の重大な危険もある。手作業のステップおよび手動動作の幾つかはロボットシステムを使用して自動化される場合があるが、ロボットシステムは、少量のサンプルを取り扱うために使用するのが難しい。また、自動化は、一般に、付加的コストおよび高価な機器を必要とする。
【0004】
チップベースまたはカートリッジベースのマイクロシステムは、閉じられた流体システム内で少量のサンプル流体を処理することができ、それにより、二次汚染の危険が減少する。一般に、チップまたはカートリッジベースのシステム内の流体流れは、ポンプおよびバルブを使用して推し進められて調整される。これらのシステムは、構造が複雑で信頼性が低いとともに、高価で使い難い。
【発明の概要】
【0005】
本発明の局面によると、本体を備えるマイクロ流体デバイスが提供される。本体は、第1、第2、および第3の空気ポートと、第1、第2および第3のチャンバと、接続導管とを画定する。各ポートは、シールで密封され、該シールを通る空気導管に結合するように成形される。各チャンバは、液体を受けるためのものであり、上端開口と底部開口とを有する。各チャンバの上端開口はそれぞれのポートと流体連通する。接続導管は、底部開口のそれぞれよりも上側にある。底部開口は、接続導管を通じて互いに流体連通する。チャンバへの前記空気導管を通じた空気圧の選択的な印加により、液体を前記チャンバのうちの一つから接続導管を通じて該チャンバのうちの他の一つへと移送することができる。前記チャンバのそれぞれは、該それぞれのチャンバの前記底部開口へ向けて下向きに傾斜した下面を有してもよい。前記接続導管の少なくとも一部分が前記チャンバ内の液位よりも上側の位置にあってもよい。本体は、上部と、下部と、中間部とを含んでもよい。チャンバおよび接続導管は、前記中間部および上部によって画定されてもよい。前記接続導管の少なくとも一部分が前記上部に隣接してもよい。前記チャンバの上端開口が前記上部に隣接してもよい。ポートが前記下部によって画定されてもよい。中間部は、ポートのうちの一つとその対応する上端開口との間でそれぞれ延びる導管を画定してもよい。中間部は、底部開口のうちの一つと接続導管との間でそれぞれ延びる導管を画定してもよい。上部、中間部および下部が別個の部分であってもよく、中間部が該上下部間に挟まれてもよい。前記上部および前記下部のうちの少なくとも一方が平坦なシートから形成されてもよい。前記上部および前記下部のうちの少なくとも一方がプラスチック材料から作製されてもよい。本体が6〜11個の相互に接続されたチャンバなどの、3つより多い相互に接続されたチャンバを画定してもよい。チャンバ内の液体は、試薬、バッファー、サンプル、または遺伝子結合調整剤を含んでもよい。少なくとも2つのチャンバが異なる液体を包含してもよい。前記本体の少なくとも一部が高分子から作製されてもよい。高分子がポリカーボネートまたはポリ(メチルメタクリレート)を含んでもよい。シールがプラスチック材料から作製されてもよい。本体が遺伝子抽出子チャンバを画定してもよい。遺伝子抽出子チャンバは、遺伝子抽出子を包含してもよく、前記接続導管と流体連通してもよい。本体が生成物チャンバと廃物チャンバとを画定し、それぞれが前記遺伝子抽出子チャンバと流体連通してもよい。デバイスがカートリッジであってもよい。空気導管がニードルを備えてもよい。
【0006】
本発明の他の局面によれば、先の段落で説明したデバイスと、該デバイスに接続可能で、空気圧を該デバイスの前記ポートを通じて前記チャンバに選択的に印加するためのステーションとを備えた装置が提供される。ステーションは、前記デバイスと結合するように構成されたベースと、前記ベースに取り付けられ、前記デバイスが該ベースに結合されるときに前記シールを通して前記ポートに結合するように成形された複数の空気導管と、該空気導管を通じた流体の流れを選択的に調整するためにそれぞれが該空気導管のうちの一つに接続された複数のバルブとを備えてもよい。バルブの第1の組が、第1の空気圧を前記ポートに選択的に印加するために第1の圧力デバイスに接続されてもよく、バルブの第2の組が、前記第1の空気圧よりも低い第2の空気圧を前記ポートに選択的に印加する第2の圧力デバイスに接続されてもよい。第1の空気圧が1気圧より高くてもよく、第2の空気圧が1気圧より低くてもよい。第1の圧力デバイスが圧力ポンプを備えてもよく、前記第2の圧力デバイスが真空ポンプを備えてもよい。ステーションは、前記バルブおよび前記圧力デバイスの動作を制御するためのコントローラを備えてもよい。ステーションは、前記コントローラの動作を制御するために該コントローラと通信するコンピュータを備えてもよい。
【0007】
本発明の更なる局面によれば、2つの先の段落で説明したデバイスを動作させる方法であって、チャンバのうちの少なくとも一つが液体を包含する方法が提供される。方法は、前記空気導管を前記ポートに結合する段階および、前記ポートを通じて異なる空気圧を前記チャンバに選択的に印加して、前記液体が前記チャンバのうちの一つから該チャンバのうちの他の一つへと流れるようにする段階を含む。空気圧を選択的に印加して、前記チャンバのうちの2つより多くを通じて前記液体を連続的に移送してもよい。
【0008】
本発明の他の局面および特徴は、添付図面と併せて本発明の特定の態様の以下の説明を検討すると、当業者に明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図面において、本発明の態様を単なる一例として示す。
【図1】本発明の例示的な態様の流体装置のブロック図である。
【図2】図1の装置で用いる容器ベースの上面図である。
【図3】図2のA-A線に沿うベースの断正面図である。
【図4】本発明の例示的な態様の図1の装置で用いるカートリッジの下面透視図である。
【図5】図4のカートリッジの分解斜視図である。
【図6】図4のカートリッジの下面図である。
【図7】図4のカートリッジの上部の上面斜視図である。
【図8】図4のカートリッジの下部の下面斜視図である。
【図9】図4のカートリッジの中間部の上面図である。
【図10】図4のカートリッジの中間部の下面図である。
【図11】動作時の図4のカートリッジに結合される図3のベースの断正面図である。
【図12】本発明の例示的な態様の図4のカートリッジの一部のその動作を示す概略図である。
【図13】本発明の例示的な態様の図4のカートリッジの一部のその動作を示す概略図である。
【図14】本発明の例示的な態様の図4のカートリッジの一部のその動作を示す概略図である。
【図15】本発明の例示的な態様の図4のカートリッジの一部のその動作を示す概略図である。
【図16】本発明の例示的な態様の別のカートリッジの分解斜視図である。
【図17】図16のカートリッジの中間部の下面斜視図である。
【図18】本発明の例示的な態様の代替的なカートリッジのその動作を示す概略図である。
【図19】代替的なカートリッジと結合するのに適する代替的なベースの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
詳細な説明
本発明の例示的な態様は、マイクロ流体デバイスにおける相互接続された流体チャンバ間で液体を選択的に移送するために空気圧を利用する。チャンバは空気ポートに接続されており、該空気ポートを通じて空気圧を個々のチャンバ内にそれぞれの液位よりも上側で選択的に印加することができる。チャンバ間の意図しない液体移送を防止するため、チャンバは、少なくとも一部がチャンバ内の液位よりも上側の位置にある接続導管を介して互いに接続されてもよい。
【0011】
図1は、流体生物学的サンプルを処理するための本発明の例示的な態様のシステム100を示す概略ブロック図である。
【0012】
システム100は、デスクトップステーションであってもよいステーション102を含む。ステーション102は、コンピュータ104に接続されており、以下で更に詳述するようにカートリッジ106を受けることができる。
【0013】
ステーション102は、USB接続などを介してコンピュータ104と通信する内蔵コントローラ108も含む。コンピュータ104は、システム100の動作を制御するための特別に設計されたプログラムがロードされる特別に設計されたコンピュータまたは汎用コンピュータであってもよい。
【0014】
ステーション102は、複数のポンプ110Aおよび110B(総称的に且つ個別にポンプ110とも称される)、小型バルブアレイ112Aおよび112B(総称的に且つ個別的にバルブアレイまたはバルブ112とも称される)、ならびにバルブアレイ制御ボード114も含む。ポンプ110Aなどの、ポンプのうちの一方は真空ポンプであり、ポンプ110Bなどの、他方のポンプは圧力ポンプである。ポンプは、シリンジポンプまたは蠕動ポンプなどの小型ポンプであってもよい。幾つかの態様において、ポンプによって供給される流量は約0.01〜約50ml/分であってもよい。他の態様では、流量が異なってもよい。バルブは小型電磁バルブであってもよい。ポンプがエアポンプであってもよい。しかしながら、異なる用途では、異なるガスポンプまたは流体ポンプが使用されてもよい。異なる態様では、ポンプ110が、外部真空源または圧力源であってもよい他の空気源と置き換えられてもよい。いくつかの場合には、大気が適切な空気源をもたらしてもよい。
【0015】
コントローラ108は、ポンプ110の動作を制御するとともに、バルブアレイ制御ボード114を介してバルブアレイ112を制御するように適合されて構成される。コントローラ108は、PIC(「プログラマブル・インテリジェント・コンピュータ」)マイクロコントローラなどのマイクロコントローラユニット、またはオムロンプログラマブル論理コントローラなどのプログラマブル論理コントローラ等を含んでもよい。
【0016】
バルブ112は空気インタフェース116に接続される。バルブ112は、SMC(商標)から入手できる小型バルブ、またはCole-Parmer(商標)から入手できるピンチバルブ、または、他の市販のもしくは特別に設計されたバルブを含んでもよい。
【0017】
インタフェース116は、図2および図3に示される容器/カップリングユニットまたはベース300を含んでもよい。ベース300は、カートリッジ106と結合するように成形されるベース部302および壁部304を含む。多数の空気導管、この場合にはニードル306が、ベース部302を通じて該ベース部から上向きに延びている。各ニードル306は、内部導管を有しており、バルブ112およびニードル306を通じて流体を移送するためにバルブアレイ112内の異なるバルブに接続される。
【0018】
例示的なカートリッジ106が、本発明の例示的な態様の図4〜図10に示されている。
【0019】
図4、5、および6に示されるように、カートリッジ本体400は、3つの部分、すなわち、上部402、中間部404、および下部406から形成される。3つの部分は別個の部分であってもよく、かつ中間部404が上下部402と406の間に挟まれる。3つの部分402、404、406は任意の適した方法で互いに取り付けられてもよい。例えば、これらの部分は、ボルトおよびナット(図示せず)を使用して互いにボルト締結されてもよく、または、接着剤を使用して互いに接着されてもよい。幾つかの態様では、上下部を中間部に対して取り外し可能に取り付けることが都合良い場合がある。例えば、図4〜図10に示されるように、これらの部分を互いに固定するためにボルト穴408が設けられてもよい。
【0020】
図5に示されるように、上部402は、ボルト穴408を有する平板として成形されてもよい。あるいは、上部402は、接着側を有するプラスチックテープなどの薄い膜またはシートから形成されてもよい。例えば、テープの接着側がその表面上に接着層を有してもよい。
【0021】
図6および図8に示されるように、下部406は、略板形状をなしていてもよいが、ボルト穴408、破壊可能なシール411(図示しないが、図11を参照)で密封された空気ポート410、ウェル412、ならびに流体導管またはチャンネル414および416を設けてもよい。シール411が接着テープから形成されてもよい。空気ポート410は、接着テープを使用して密封されてもよい。あるいは、下部406は、中間部404に面する接着側を有するプラスチックシートなどの平坦なシートから形成されてもよい。各ポート410は、シール411を貫通するニードル306などの空気導管に結合されるように成形される。
【0022】
図9および図10はそれぞれ、中間部404の上面図および下面図である。図示のように、中間部404は、多数のチャンバ418A、418B、418C、418D、418E、418F、418G、418H、418I、および418J(総称的に且つ個別にチャンバ418Aとも称される)を画定する。各チャンバ418は、上端開口420と底部開口422とを有する(容易に見えるように、図9には、422A、422B、422G、および420J、ならびに422Jだけが記されている)。
【0023】
各上端開口420は空気導管またはチャンネル424と接続され、該チャンネルは、最初に横方向に延びた後、下部406のそれぞれの空気ポート410へ向けて下向きに延びており、それにより、対応するチャンバ418がそれぞれのポート410と連通する(容易に見えるように、図9および図10には、チャンネル424Aおよび424Jだけが記されている)。
【0024】
各底部開口422A〜422Hは液体導管またはチャンネル426(それぞれ426A〜426Hとして記されている)と接続され、該チャンネルは、最初に横方向に延びた後、中間部404の上面に沿って延びる上端接続導管428へ向けて上向きに延びる。底部開口422Iおよび422Jは、下部406の導管またはチャンネル414および416を介してウェル412に接続される。ウェル412は、接続導管428へ向けて上向きに延びる導管またはチャンネル430と接続される。
【0025】
したがって、チャンバ418はそれぞれ、その上端開口420を介してそれぞれのポート410に流体連通されるとともに、それらの底部開口422および接続導管428を介して互いに流体連通する。
【0026】
ボルトおよびナットなどを用いてまたは接着テープもしくは熱拡散ボンディングを用いて3つの部分が互いに取り付けられると、チャンネルは、緊密に密封されるとともに、チャンバ間および空気ポートの対応する対とチャンバとの間の流体連通を許容するための閉じられた流体導管を形成する。部分402と404の間および部分404と406の間の接触面がシール材料を包含しまたはシール材料でコーティングされてもよい。ウェル412は、中間部404の下面によって覆われると、以下で更に説明するように、例えば、遺伝子抽出チャンバとしての役目を果たしてもよい別の流体チャンバを形成する。ウェル412によって形成されるチャンバは空気ポートに直接に接続されない。これは、当業者が理解できるようにそのようにする必要がないからである。
【0027】
言うまでもなく、カートリッジ本体400は、最初は、閉じられた流体ネットワークを内部に画定する。上部および中間部402、404は、互いに取り付けられると、その間でチャンバ418と上端接続導管428とを画定する。チャンバ418の上端開口は対応するポート410と流体連通する。チャンバ418の底部開口420は、接続導管428を介して互いに流体連通する。
【0028】
上端開口420および接続導管428は、図示のように上部402に隣接して同じ高さに配置されてもよい。異なる態様では、接続導管428が上端開口420よりも高い位置または低い位置にあってもよいが、チャンバ418内に包含される液体の接続導管428を通じた意図しない移送または混合を防止するため、接続導管428は、接続導管428を介して互いに接続されるチャンバ418の最も高い底部開口422よりも上側の位置になければならない。言うまでもなく、チャンバ428内の許容できる最高液位は、接続導管428の最も高い部分の高さに依存する。したがって、より高い接続導管428(最高でチャンバの上端までの)が、チャンバ容積のより効果的な利用を許容できるため、有利となり得る。
【0029】
チャンバ418は、略細長い円筒形状と傾斜下面とを有してもよく、また、上下部402と406の間で垂直に延びてもよい(図11により良好に示される)。しかしながら、異なる態様において、チャンバ418は、異なる断面形状を有してもよく、また、更に長くまたは短くてもよい。
【0030】
カートリッジ本体400またはその一部分は、任意の適した材料を使用して形成されてもよい。例えば、各部分は、ポリカーボネート、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)などの高分子材料から形成されてもよい。上部402は、接着面を伴うまたは伴わないプラスチックシートなどの薄いシール材料から形成されてもよい。シール411は、ニードル306により都合良く破壊することができるプラスチックフィルムなどの任意の適したシール材料から形成されてもよい。プラスチックフィルムは、その表面に接着層を有してもよくまたは有していなくてもよい。
【0031】
本体400は、当業者により理解され得るように、マイクロ射出成型などの従来の機械加工技術およびコンピュータ数値制御(CNC)を使用して、または、プラスチック射出成型を使用して形成されてもよい。
【0032】
チャンバおよびチャンネルの内面は、望まれるときまたは必要とされるときに、洗浄されまたは滅菌されてもよい。ある場合には、表面特性を変えるために、チャンバおよびチャンネルの内面がテフロンなどの他の高分子材料でコーティングされてもよい。
【0033】
カートリッジ400および内部チャンバ418、流体導管/チャンネル、または開口のサイズまたは寸法は、用途に応じて変えてもよい。生物学的用途においては、サンプル量が一般に少なく、したがって、流体チャンバおよびチャンネルは数マイクロメートル程度の寸法を有してもよい。寸法が非常に大きい場合には、空気圧を使用して少量の流体を移送することが難しい場合がある。一方、寸法は、空気圧下で流体の十分な移送速度を可能にできるように十分大きくなければならない。典型的な用途において、流体チャンネルおよび開口は、約0.2mm〜約1mmの範囲の寸法を有してもよい。チャンバは、特定の望ましいプロセスまたは処理を行うのに十分な容積を有していなければならない。各チャンバ418または他の流体チャンバは、1マイクロリットル〜100ミリリットル程度の容積を有してもよい。
【0034】
異なる態様では、用途に応じて、開口、チャンネル、導管、およびポートの特定の形状が変わってもよい。
【0035】
使用時、液体が予めロードされるなど、一つまたは複数のチャンバ418に液体が充填されてもよい。液体は、サンプル、バッファー、または試薬液体、または、任意の他の望ましい液体であってもよい。また、チャンバは、精製した標的遺伝子などの生成物を蓄えるため、または、廃物を蓄えるために使用されてもよい。最初に異なるチャンバ418に異なる流体がロードされてもよい。
【0036】
流体は、中間部404の上面を上部402で覆う前にロードされてもよい。流体をロードした後、中間部404の上端で露出される開口を閉じて密封するとともに、輸送中もしくは動作中の漏れまたは汚染を防止するため、上部402が中間部404に付着かつ取り付けられる。幾つかの態様において、流体は、最初に、ポート410が密封される前に、ポート410を介してチャンバ内にロードされてもよい。しかしながら、多くの用途では、上部402が取り外された状態で上端からロードするのが更に都合良い場合がある。
【0037】
図11に示されるように、カートリッジ本体400がベース300に結合されるときに、ポート410のシール411がシール411を刺通するニードル306によって選択的に破壊され、それにより、バルブアレイ112中の対応するバルブとチャンバ418との間の流体連通が、ポート410、導管424および上端開口420を通じて成されてもよい。
【0038】
バルブアレイ112Aおよび112B中のバルブはそれぞれ、対応するニードル306に接続され、そのニードル306を通じた流体の流れを選択的に調整するように構成される。ポンプ110は、バルブ112を介して正圧または負圧をポート310に印加するためにバルブアレイ112Aおよび112Bに接続される。
【0039】
コンピュータ104はコントローラ108の動作を制御し、そしてコントローラ108は、ポンプ110およびバルブ112の動作を制御して、ニードル306を介して加圧空気(正圧)または真空(負圧)をポート410へ選択的に印加する。正圧または負圧がポート410に印加されるかどうかに応じて、流体が対応するチャンバ418へ選択的に移送されるかまたは対応するチャンバから移送されてもよい。特定のチャンバに関して変化が必要とされない場合、そのチャンバのためのポートは、例えば対応するバルブを閉じることにより、閉じられたままであってもよい。
【0040】
例えば、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)のための遺伝子抽出を行うため、図12に示されるようにカートリッジ400に流体がロードされてもよい。図12は、カートリッジ400を幾つか変更してなる類似のカートリッジを概略的に示している。一つの変更点は、幾つかのチャンバが図12では省かれているという点である。これは、それらのチャンバがこの特定の動作のために使用されないからである。更に下部も省かれている。他の変更点は、底部開口424Iおよび424Jが直接にではなく遺伝子抽出チャンバ412を介して接続チャンバ428に接続されているという点である。しかしながら、液体をチャンバ418B〜418F間で移送するための動作手法は、これらの変更にもかかわらず同じである。チャンバ418B、418C、418D、418E、418Fにサンプル、溶解バッファー、調整剤、洗浄バッファー、および溶出バッファーがそれぞれロードされる。遺伝子抽出子がウェル412内に堆積されてもよい。遺伝子抽出子は、高い鉄濃度の流体中で遺伝子に付着できる磁気ベースの抽出子、シリカ膜、シリカビーズまたは他の材料を含んでもよい。遺伝子としては、DNA(デオキシリボ核酸)、RNA(リボ核酸)、またはmRNA(メッセンジャーRNA)を含むことができる。遺伝子抽出子は、抽出されるべき特定の遺伝子に基づいて選択されてもよい。チャンバ418Iおよび418Jは、生成物、抽出された遺伝子、および反応によって生成された廃物をそれぞれ蓄えるために使用することができる。DNAまたはRNA分解試薬が一つまたは複数のチャンバ内に予めロードされてもよい。
【0041】
いくつかの場合には、遺伝子結合状態の調整が必要とされる場合がある。チャンバ内にロードされるバッファーは、標的遺伝子結合状態に基づいて遺伝子結合するためのバッファー(純エタノールまたは70%エタノールなど)を含んでいてもよい。
【0042】
一つの態様では、サンプル溶解を行うために、導管424D、424E、424Fに対応するバルブ112が閉じられる。導管424Bに接続されるバルブ112Bが開放されて、空気などの加圧ガスが導管に供給され、それにより、チャンバ418B内に正圧が形成される。導管424Cに接続されるバルブ112Aが開放されて、真空圧が導管に印加され、それにより、チャンバ418C内の液体よりも上側に負圧が形成される。したがって、圧力差がサンプル液をチャンバ418Bからチャンバ418Cへと推し進める。また、サンプル液がチャンバ418Cへ完全に移送された後、気泡がチャンバ418C内に形成されてサンプルと溶解バッファーとの混合を容易にしてもよい。このように、サンプルを溶解して遺伝子を分解から保護するために、サンプルが溶解バッファーと完全に混合されてもよい。
【0043】
同様の手法を使用して、溶解されたサンプルをチャンバ418Dへ移送して結合調整剤と混合してもよく、それにより、サンプルの遺伝子状態を調整してもよい。
【0044】
調整されたサンプルは、その後、当業者によって理解されるように、特定の用途に応じて、直接にまたはチャンバ418Eおよび418Fのうちの一つまたは複数を介してウェル412へ移送されてもよい。
【0045】
磁気ビーズが遺伝子抽出のための遺伝子抽出子として使用される場合、溶解されたサンプルは、類似の手法を使用して、最初に他のチャンバを通り抜けることなく、ウェル412内で磁気ビーズと混合されてもよい。
【0046】
遺伝子抽出は、チャンバ424Dなどの他のチャンバから移送される予め処理されたサンプル流体を用いてウェル412内で行なわれてもよい。サンプル内の標的遺伝子は遺伝子抽出子に付着される。残存する液体が廃物としてチャンバ418Jへ移送されてもよい。
【0047】
洗浄バッファーをチャンバ424Eからウェル412へ移送することにより遺伝子精製が行なわれてもよい。複数のステップで遺伝子を洗浄するために一つの洗浄バッファーまたは異なるタイプの洗浄バッファーが使用されてもよい。複数の洗浄バッファーが使用される場合には、洗浄バッファーを蓄えるために2つ以上のチャンバが割り当てられてもよい。一つの態様では、ウェル412および導管414を介して洗浄バッファーがチャンバ418Eからチャンバ418Jへ移送されてもよい。廃物は、その後、カートリッジがリサイクルされるようになっている場合にはチャンバ418Jから排出されてもよく、または、カートリッジとともに処分されてもよい。
【0048】
遺伝子溶出は、ウェル412および導管416を介して溶出バッファーをチャンバ418Fからチャンバ418Iへ移送することによって行なわれてもよい。溶出バッファーは、遺伝子抽出子に付着される遺伝子を解放して、遺伝子をチャンバ418Fへ運ぶ。チャンバ418I内に収集される標的遺伝子は、遺伝子増幅および検出などの下流側用途のためにピペットまたはシリンジを使用して引き出されてもよい。抽出された遺伝子または他の反応性生物は、特定の信号または標的の検出のために検出チャンバ(図示せず)へ移送されてもよい。検出チャンバは、カートリッジ116内に設けられてもよく、または、カートリッジ116から材料を受けることができる外部デバイス(図示せず)に設けられてもよい。
【0049】
図13、14、15に示されるカートリッジの簡略化された概略図を用いて、チャンバ間で流体を選択的に移送する動作について説明する。簡単にするため、これらの図には3つのチャンバだけが示されているが、更に多くのチャンバが同様の方法で動作されてもよいことは理解すべきである。
【0050】
図13に示されるように、例示的な用途では、各チャンバ418A、418B、および418Cが液体試薬432A、432Bまたは432Cでそれぞれ満たされる。最初はポート410A、410B、および410Cが密封されている。
【0051】
図14に示されるように、試薬432Aおよび432Cをチャンバ418C内で混合させるため、正のガス(N2を含む不活性ガスなどの空気または他のガスを使用する)圧がポート410Aに印加されてもよく、また、真空圧がポート410Cに印加されてもよく、一方、ポート410Bは対応するバルブ112を閉じることなどにより閉じられたままであってもよい。空気圧は、底部開口422A、接続導管428および底部開口420Cを通じて試薬432Aをチャンバ418C内に推し進める。したがって、試薬432Aおよび432Cをチャンバ418C内で接触させまたは混合させることができる。チャンバ418B内の正圧に起因して、試薬432Aがチャンバ418B内に流入することが防止される。チャンバ418A内の試薬をチャンバ418Cへ完全に移送することができる。
【0052】
図15に示されるように、試薬432Aをチャンバ418Cへと完全に移送することができ、一方、試薬432Bはチャンバ418B内に残る。
【0053】
接続導管428がチャンバ内の液位よりも上側にあり、また、空気圧が上端開口を通じて印加されるため、空気は、空気ポートを通じて液体をカートリッジから追い出すことなく、液体を通り抜けて泡立つことができる。図15に示されるようにチャンバ418C内などのチャンバ内で試薬を混合させるために気泡を使用することができ、都合良い。
【0054】
流体移送、混合および処理は、任意の内部バルブ、ポンプまたはカートリッジ内の他の流体調整デバイスを使用することなく行なわれるのが都合良い。流体移送は、空気圧を異なるポートに選択的に印加することにより完全に行なわれてもよい。このプロセスは、コンピュータ104およびコントローラ108を使用して自動化されてもよい。幾つかの態様において、チャンバは、流体を任意の選択されたチャンバから他の選択されたチャンバへ移送できるようにまたは流体を一連のチャンバを通じて一方から他方へ連続的に移送できるように互いに接続されてもよい。
【0055】
言うまでもなく、本明細書において記載される例示的なカートリッジは、構造が簡単であり、比較的安価に作製することができる。カートリッジ内に可動部品がないため、非常に信頼できる。輸送中および動作中であってもサンプルおよび試薬が閉じられた系内に残存できるため、汚染の危険が著しく減少される。
【0056】
カートリッジは、異なる材料とともに異なる用途で用いるように都合良く構成して適合させることもできる。本発明の態様は、遺伝子増幅ユニットまたは遺伝子検出ユニットなどの他のシステムと都合良く一体化させることもできる。
【0057】
他の態様において、カートリッジ116は、図16、17、および18に示されるカートリッジ本体400’を有するなど、別の構造を有してもよい。カートリッジ本体400’では、処理チャンバおよびチャンネルが中間部404’内に設けられる。上部および下部402’、406’は、流体チャンネルまたはキャビティを伴わない平坦なシートから形成されてもよい。平坦なシートは、接着面を有してもよく、また、高分子テープから形成されてもよい。導管およびチャンネルの特質が専ら中間部内に設けられてもよい。空気ポート410’も中間部404’内に設けられ、下部406’によって密封される。したがって、この態様では、下部406’がシールとしての役目を果たす。
【0058】
カートリッジ本体404’は、図16、17、および18に示されるように、サンプル、洗浄バッファーおよび溶出バッファーをそれぞれ最初に受けるために使用される3つ以上のチャンバと、遺伝子抽出子チャンバ412’と、動作中に抽出されて精製された遺伝子と廃物とをそれぞれ蓄えるための2つのチャンバとを画定してもよい。チャンバは、中間部404’の貫通穴から形成されてもよい。
【0059】
図16および図18により良く示されるように、別のカートリッジ400’内のチャンバは、遺伝子抽出子チャンバ412’と廃物チャンバ418’とを含んでもよい。図示の残りのチャンバは、サンプルおよび他の試薬流体または抽出された遺伝子を受けるための試薬チャンバとして使用されてもよい。カートリッジ400と400’の間の相違点は、廃物および生成物遺伝子をカートリッジ400’内に蓄えるためのチャンバが底部開口を有さず、それらの上端開口が空気ポートおよび抽出チャンバ412’の両方に接続されるという点である。図示のように、複数の接続導管428’は、遺伝子抽出子チャンバ412’の上端開口に放射状の配列をなして直接に接続され、複数の接続導管428’はそれぞれ、他の対応するチャンバに接続される。本体400に関して前述した上端開口および底部開口に類似する上端開口および底部開口を有する他のチャンバはチャンバ412’の周囲に配置される。
【0060】
図示のように、抽出子チャンバ412’は、廃物チャンバを除く他の流体チャンバがチャンバ412’の周囲に配置されるという意味では、中間部404’の中央に配置される。カップ形状を有してもよい遺伝子抽出子434が抽出子チャンバ412’の底部に配置されてもよい。
【0061】
使用中、予めロードされたサンプルおよび洗浄バッファーが、空気圧下で、チャンネル428’を介して遺伝子抽出子チャンバ412’へ移送されてもよい。チャンネル428’を介して遺伝子を溶出するために、予めロードされた溶出バッファーが遺伝子抽出子チャンバ412’へ移送されてもよい。
【0062】
空気インタフェース116の容器ベースは、カートリッジ本体400’と結合するために図19に示されるように変更されてもよく、それにより、変更されたベース300’を別のカートリッジ400’に適切に結合することができるとともに、ニードル306’がカートリッジ400’の空気ポート410’の位置に適合するように配置される。したがって、ニードル306’は、(シールとして作用する)下部406’を通過できるとともに、カートリッジ400’がベース300’に結合されるときに空気ポート410’と連通する。
【0063】
使用時、別のカートリッジ400’は、カートリッジ本体400に関して前述したものと同様の方法で動作されてもよい。
【0064】
言うまでもなく、本発明の態様のカートリッジに内部一体型検出器または検出窓を設ける必要はない。代わりに、カートリッジは、検出器および他の検出デバイスを含む他のユニットに結合されてもよい。このため、カートリッジの本体は、使用されるべき特定の検出方法と共に使用するのに適する材料から作製されてもよい。例えば、本体は、光学的検出方法が使用されるべき場合には透明材料から作製されてもよく、または、磁気プローブが使用されるべき場合には非磁性材料から作製されてもよい。
【0065】
前述して図示したように、カートリッジの全てのチャンバが空気ポートに接続される必要はない。チャンバの上端開口および底部開口がそれぞれ異なる接続チャンネルまたは導管に接続されてもよい。
【0066】
また、図11、12〜15、および18にも示されるように、チャンバの底部は、チャンバの底部開口へ向けて下向きに傾斜される下面を有してもよい。下面は略円錐形状であってもよい。そのような傾斜した下面は、チャンバ内の流体を重力に起因して底部開口から都合良く引き出すことができるため有利となり得る。すなわち、そのような傾斜下面を用いると、チャンバ内のデッドボリュームが減少されまたは最小限に抑えられる。図では、底部開口がチャンバの中心に配置されるように示されているが、このようにする必要はない。底部開口が中心から外れていてもよい。底部開口がチャンバ内の最も低い位置にあり、また、下面が底部開口へ向けて下向きに傾斜される限り、同じ利益を得ることができる。
【0067】
無論、本明細書において記載されるシステムおよびカートリッジに対する変更が可能である。例えば、カートリッジ本体は、特定の用途に応じて異なる構造を有してもよい。チャンバの形状および数が変わってもよい。各チャンバが複数の上端開口または底部開口を有してもよい。上端開口または底部開口は、それらが液体を失うことなく十分な量の液体を受けることができるようにする十分な垂直距離だけ離間されたままである限りまたは空気圧の印加によってチャンバ内の全ての液体を底部開口を通じて引き出すことができるようにする十分な垂直距離だけ離間されたままである限り、チャンバの側壁へと移動されてもよい。
【0068】
ここで、言うまでもなく、カートリッジ106の本体が3つの別個の部分または層から形成される必要はない。カートリッジが単一の材料ブロックから形成されてもよい。しかしながら、製造および流体の事前ローディングにおいては、層状構造が都合良い場合がある。
【0069】
空気ポート410がカートリッジ本体400の下部に配置される必要はない。ポートは、本体400の上端または側部などの他の場所に配置されてもよい。
【0070】
上部402、シール411、または下部406は、カートリッジ106を都合良く再使用できるように取り外して交換できてもよい。
【0071】
複数の接続導管428が異なるチャンバ間に設けられてもよい。異なるチャンバ内の液体を分離させるためには、各接続導管428の少なくとも一部が接続導管428を介して互いに接続されるチャンバ418内の最高液位よりも上側の位置にあれば十分である。
【0072】
ポンプがステーション102内に設けられる必要はない。例えば、正の空気圧をポートに印加するために、利用できる場合には、任意の圧縮空気供給源または源が使用されてもよい。任意の利用可能な真空源が使用されてもよい。
【0073】
図面に示される態様では、カートリッジ106が6〜11個の流体チャンバを含んでもよい。異なる態様では、特定の用途に応じてチャンバの数が異なってもよい。また、全てのチャンバが同じ高さにある必要はなく、または、全てのチャンバが相互に接続される必要はない。例えば、一つのチャンバが他のチャンバよりも上側または高い位置にあってもよい。本明細書において使用される用語「上側」は、一つのチャンバが他のチャンバの真上にあることを要しないことを理解すべきである。一つのチャンバの底部の位置が他のチャンバの底部の位置よりも高い位置にあれば十分である。また、「より高い」または「より低い」という用語は、カートリッジ本体が上部を上にして直立状態で配置されることを前提として使用されることを理解すべきである。
【0074】
ニードル306およびシール411が幾つかの態様で都合良く使用されてもよいが、特にポートのサイズが小さい場合には、空気導管および空気圧を選択的に印加するための空気ポート410と空気導管との間の結合が、異なる態様で設けられてもよい。例えば、異なる態様では、他のタイプの結合配置が使用されてもよい。
【0075】
異なる態様では、ポート410を通じて空気圧をチャンバ418に選択的に印加するために、カートリッジ106に接続可能な異なるベースステーションが使用されてもよい。ベースステーションは、カートリッジ本体400と結合するように構成されるベースと、シール411を貫通して空気圧を選択的に印加するためにポート410と結合するようにベースに取り付けられる空気導管とを含んでもよい。また、ベースステーションは、空気導管を通じた流体流れを調整するためにそれぞれが空気導管に接続されるバルブを含んでもよい。バルブの動作を制御するためにコントローラが設けられてもよい。各空気導管が2つのバルブに接続されてもよく、これらのバルブは2つの異なる圧力デバイスに接続される。一方の圧力デバイスは第1の空気圧を印加するためのものであり、他方の圧力デバイスは、第1の空気圧よりも低い第2の空気圧を印加するためのものであり、その結果、空気圧差によって十分にカートリッジ内のチャンバ間で流体移送を引き起こすことができる。圧力デバイスは、ポンプ、加圧ガス(加圧空気など)ラインまたは真空ラインを含んでもよい。第1の圧力は1気圧より高くてもよく、第2の圧力は1気圧より低くてもよい。幾つかの態様では、両方の圧力が1気圧より高くてもよい。ポンプは、ベースステーションと別個にまたは一体に設けられてもよい。印加圧力およびバルブが自動制御または手動制御されてもよい。
【0076】
ここで、言うまでもなく、本明細書において記載される方法および装置は、遺伝子、タンパク質および試薬を包含する生物学的原材料を移送して処理するために使用できる。前処理後に、同じ装置を使用して標的遺伝子またはタンパク質を抽出できる。本明細書において記載される態様を使用して、血液、培養細胞、血清、他のタイプの体液などを含む異なる生物学的原材料を処理できる。標的遺伝子は、DNA、RNA、mRNA、タンパク質などであってもよい。
【0077】
本明細書において記載される例示的な態様は、臨床もしくはポイントオブケア疾病診断システムの一環として、研究もしくは臨床の用途でのサンプル調製のため、法医学的研究もしくはサンプル処理において、疾患もしくは医学の研究分野において、分子化学研究などの化学的もしくは生物学的な研究分野において、または、他の同様の分野においてなど、様々な用途で使用できる。
【0078】
先に明確に言及されない本明細書において記載される態様の他の特質、利益、および、利点は、この説明および図面から当業者により理解され得る。
【0079】
無論、前述した態様は、単なる例示であって、限定しようとするものではない。前述した態様は、部品の形状、配置、動作の細部および順序について多くの変更を受け入れる余地がある。むしろ、本発明は、特許請求項の範囲によって規定されるその範囲内でそのような変更の全てを包含しようとするものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれがシールで密封され、かつ該シールを通る空気導管に結合するように成形された第1、第2、および第3の空気ポートと;
第1の液体を受けるための第1のチャンバであって、第1の上端開口と第1の底部開口とを有し、該第1の上端開口が前記第1のポートと流体連通している、第1のチャンバと;
第2の液体を受けるための第2のチャンバであって、第2の上端開口と第2の底部開口とを有し、該第2の上端開口が前記第2のポートと流体連通している、第2のチャンバと;
第3の液体を受けるための第3のチャンバであって、第3の上端開口と第3の底部開口とを有し、該第3の上端開口が前記第3のポートと流体連通している、第3のチャンバと;
前記第1、第2、および第3の底部開口のそれぞれよりも上側にある接続導管であって、該底部開口が該接続導管を通じて互いに流体連通している接続導管と
を画定する本体を備える、マイクロ流体デバイスであって
前記空気導管を通じた前記チャンバへの空気圧の選択的な印加により、液体が該チャンバのうちの一つから前記接続導管を介して該チャンバのうちの他の一つへと移送される、マイクロ流体デバイス。
【請求項2】
チャンバのそれぞれが、該それぞれのチャンバの底部開口へ向けて下向きに傾斜された下面を有する、請求項1記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項3】
接続導管の少なくとも一部分がチャンバ内の液位よりも上側の位置にある、請求項1または2記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項4】
本体が上部と下部と中間部とを備え、チャンバおよび接続導管が該中間部および上部によって画定される、請求項1〜3のいずれか一項記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項5】
接続導管の少なくとも一部分が前記上部に隣接する、請求項4記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項6】
チャンバの上端開口が前記上部に隣接する、請求項4または5記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項7】
ポートが前記下部によって画定されている、請求項4〜6のいずれか一項記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項8】
中間部が、第1のポートと第1の上端開口との間で延びる第1の導管と、第2のポートと第2の上端開口との間で延びる第2の導管と、第3のポートと第3の上端開口との間で延びる第3の導管とを画定する、請求項4〜7のいずれか一項記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項9】
中間部が、第1の底部開口と接続導管との間で延びる第4の導管と、第2の底部開口と前記接続導管との間で延びる第5の導管と、第3の底部開口と前記接続導管との間で延びる第6の導管とを画定する、請求項8記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項10】
上部、中間部および下部が別個の部分であり、該中間部が該上下部間に挟まれている、請求項4〜9のいずれか一項記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項11】
上部および下部のうちの少なくとも一方が平坦なシートから形成される、請求項10記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項12】
上部および下部のうちの少なくとも一方がプラスチック材料から作製される、請求項4〜11のいずれか一項記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項13】
本体が3つより多い相互に接続されたチャンバを画定する、請求項1〜12のいずれか一項記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項14】
本体が6〜11個の相互に接続されたチャンバを画定する、請求項13記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項15】
液体が、試薬、バッファー、サンプル、または遺伝子結合調整剤を含む、請求項1〜14のいずれか一項記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項16】
チャンバのうちの少なくとも2つが異なる液体を包含する、請求項1〜15のいずれか一項記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項17】
本体の少なくとも一部が高分子から作製される、請求項1〜16のいずれか一項記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項18】
高分子がポリカーボネートまたはポリ(メチルメタクリレート)を含む、請求項16記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項19】
シールがプラスチック材料から作製されている、請求項1〜18のいずれか一項記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項20】
本体が遺伝子抽出子チャンバを画定し、該遺伝子抽出子チャンバは、遺伝子抽出子を包含するとともに、接続導管と流体連通している、請求項1〜19のいずれか一項記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項21】
本体が生成物チャンバと廃物チャンバとを画定し、それぞれが遺伝子抽出子チャンバと流体連通している、請求項20記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項22】
カートリッジである、請求項1〜21のいずれか一項記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項23】
空気導管がニードルを備える、請求項1〜22のいずれか一項記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項24】
請求項1〜23のいずれか一項記載のデバイスと、該デバイスに接続可能で、空気圧を該デバイスのポートを通じてチャンバに選択的に印加するためのステーションとを備える、装置。
【請求項25】
ステーションが:
デバイスと結合するように構成されたベースと;
前記ベースに取り付けられた、複数の空気導管であって、前記デバイスが該ベースに結合されるときにシールを通じてポートに結合するように成形された複数の空気導管と;
前記空気導管を通じた流体の流れを選択的に調整するためにそれぞれが該空気導管のうちの一つに接続された複数のバルブと
を備える、請求項24記載の装置。
【請求項26】
第1の組の複数のバルブが、第1の空気圧をポートに選択的に印加するために第1の圧力デバイスに接続され、かつ第2の組の複数のバルブが、前記第1の空気圧よりも低い第2の空気圧を前記ポートに選択的に印加する第2の圧力デバイスに接続されている、請求項25記載の装置。
【請求項27】
第1の空気圧が1気圧よりも高く、かつ第2の空気圧が1気圧よりも低い、請求項26記載の装置。
【請求項28】
第1の圧力デバイスが圧力ポンプを備え、かつ第2の圧力デバイスが真空ポンプを備える、請求項27記載の装置。
【請求項29】
ステーションが、バルブおよび圧力デバイスの動作を制御するためのコントローラを備える、請求項26〜28のいずれか一項記載の装置。
【請求項30】
ステーションが、コントローラの動作を制御するために該コントローラと通信するコンピュータを備える、請求項29記載の装置。
【請求項31】
以下の段階を含む、請求項1〜24のいずれか一項記載のデバイスを動作させる方法であって、チャンバのうちの少なくとも一つが液体を包含する、方法:
空気導管をポートに結合する段階;
前記ポートを通じて異なる空気圧を前記チャンバに選択的に印加して、前記液体が該チャンバのうちの一つから該チャンバのうちの他の一つへと流れるようにする段階。
【請求項32】
空気圧を選択的に印加して、チャンバのうちの2つより多くを通じて液体を連続的に移送する段階を含む、請求項31記載の方法。
【請求項1】
それぞれがシールで密封され、かつ該シールを通る空気導管に結合するように成形された第1、第2、および第3の空気ポートと;
第1の液体を受けるための第1のチャンバであって、第1の上端開口と第1の底部開口とを有し、該第1の上端開口が前記第1のポートと流体連通している、第1のチャンバと;
第2の液体を受けるための第2のチャンバであって、第2の上端開口と第2の底部開口とを有し、該第2の上端開口が前記第2のポートと流体連通している、第2のチャンバと;
第3の液体を受けるための第3のチャンバであって、第3の上端開口と第3の底部開口とを有し、該第3の上端開口が前記第3のポートと流体連通している、第3のチャンバと;
前記第1、第2、および第3の底部開口のそれぞれよりも上側にある接続導管であって、該底部開口が該接続導管を通じて互いに流体連通している接続導管と
を画定する本体を備える、マイクロ流体デバイスであって
前記空気導管を通じた前記チャンバへの空気圧の選択的な印加により、液体が該チャンバのうちの一つから前記接続導管を介して該チャンバのうちの他の一つへと移送される、マイクロ流体デバイス。
【請求項2】
チャンバのそれぞれが、該それぞれのチャンバの底部開口へ向けて下向きに傾斜された下面を有する、請求項1記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項3】
接続導管の少なくとも一部分がチャンバ内の液位よりも上側の位置にある、請求項1または2記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項4】
本体が上部と下部と中間部とを備え、チャンバおよび接続導管が該中間部および上部によって画定される、請求項1〜3のいずれか一項記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項5】
接続導管の少なくとも一部分が前記上部に隣接する、請求項4記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項6】
チャンバの上端開口が前記上部に隣接する、請求項4または5記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項7】
ポートが前記下部によって画定されている、請求項4〜6のいずれか一項記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項8】
中間部が、第1のポートと第1の上端開口との間で延びる第1の導管と、第2のポートと第2の上端開口との間で延びる第2の導管と、第3のポートと第3の上端開口との間で延びる第3の導管とを画定する、請求項4〜7のいずれか一項記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項9】
中間部が、第1の底部開口と接続導管との間で延びる第4の導管と、第2の底部開口と前記接続導管との間で延びる第5の導管と、第3の底部開口と前記接続導管との間で延びる第6の導管とを画定する、請求項8記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項10】
上部、中間部および下部が別個の部分であり、該中間部が該上下部間に挟まれている、請求項4〜9のいずれか一項記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項11】
上部および下部のうちの少なくとも一方が平坦なシートから形成される、請求項10記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項12】
上部および下部のうちの少なくとも一方がプラスチック材料から作製される、請求項4〜11のいずれか一項記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項13】
本体が3つより多い相互に接続されたチャンバを画定する、請求項1〜12のいずれか一項記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項14】
本体が6〜11個の相互に接続されたチャンバを画定する、請求項13記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項15】
液体が、試薬、バッファー、サンプル、または遺伝子結合調整剤を含む、請求項1〜14のいずれか一項記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項16】
チャンバのうちの少なくとも2つが異なる液体を包含する、請求項1〜15のいずれか一項記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項17】
本体の少なくとも一部が高分子から作製される、請求項1〜16のいずれか一項記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項18】
高分子がポリカーボネートまたはポリ(メチルメタクリレート)を含む、請求項16記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項19】
シールがプラスチック材料から作製されている、請求項1〜18のいずれか一項記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項20】
本体が遺伝子抽出子チャンバを画定し、該遺伝子抽出子チャンバは、遺伝子抽出子を包含するとともに、接続導管と流体連通している、請求項1〜19のいずれか一項記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項21】
本体が生成物チャンバと廃物チャンバとを画定し、それぞれが遺伝子抽出子チャンバと流体連通している、請求項20記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項22】
カートリッジである、請求項1〜21のいずれか一項記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項23】
空気導管がニードルを備える、請求項1〜22のいずれか一項記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項24】
請求項1〜23のいずれか一項記載のデバイスと、該デバイスに接続可能で、空気圧を該デバイスのポートを通じてチャンバに選択的に印加するためのステーションとを備える、装置。
【請求項25】
ステーションが:
デバイスと結合するように構成されたベースと;
前記ベースに取り付けられた、複数の空気導管であって、前記デバイスが該ベースに結合されるときにシールを通じてポートに結合するように成形された複数の空気導管と;
前記空気導管を通じた流体の流れを選択的に調整するためにそれぞれが該空気導管のうちの一つに接続された複数のバルブと
を備える、請求項24記載の装置。
【請求項26】
第1の組の複数のバルブが、第1の空気圧をポートに選択的に印加するために第1の圧力デバイスに接続され、かつ第2の組の複数のバルブが、前記第1の空気圧よりも低い第2の空気圧を前記ポートに選択的に印加する第2の圧力デバイスに接続されている、請求項25記載の装置。
【請求項27】
第1の空気圧が1気圧よりも高く、かつ第2の空気圧が1気圧よりも低い、請求項26記載の装置。
【請求項28】
第1の圧力デバイスが圧力ポンプを備え、かつ第2の圧力デバイスが真空ポンプを備える、請求項27記載の装置。
【請求項29】
ステーションが、バルブおよび圧力デバイスの動作を制御するためのコントローラを備える、請求項26〜28のいずれか一項記載の装置。
【請求項30】
ステーションが、コントローラの動作を制御するために該コントローラと通信するコンピュータを備える、請求項29記載の装置。
【請求項31】
以下の段階を含む、請求項1〜24のいずれか一項記載のデバイスを動作させる方法であって、チャンバのうちの少なくとも一つが液体を包含する、方法:
空気導管をポートに結合する段階;
前記ポートを通じて異なる空気圧を前記チャンバに選択的に印加して、前記液体が該チャンバのうちの一つから該チャンバのうちの他の一つへと流れるようにする段階。
【請求項32】
空気圧を選択的に印加して、チャンバのうちの2つより多くを通じて液体を連続的に移送する段階を含む、請求項31記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公表番号】特表2011−517774(P2011−517774A)
【公表日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−502903(P2011−502903)
【出願日】平成20年6月23日(2008.6.23)
【国際出願番号】PCT/SG2008/000222
【国際公開番号】WO2009/123565
【国際公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(508305029)エージェンシー フォー サイエンス, テクノロジー アンド リサーチ (36)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月23日(2008.6.23)
【国際出願番号】PCT/SG2008/000222
【国際公開番号】WO2009/123565
【国際公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(508305029)エージェンシー フォー サイエンス, テクノロジー アンド リサーチ (36)
【Fターム(参考)】
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