説明

真空バルブ用操作装置

【課題】真空バルブを閉極する際に可動接点のチャタリングが生じるのを防ぐことができる真空バルブ用操作装置を提供する。
【解決手段】フレーム4に回動自在に支持されて一端が真空バルブ1を操作する可動ロッド106にピン206を介して結合され、他端がカム機構213により駆動されることにより回動して、真空バルブ1の可動ロッド106を変位させる駆動レバー204と、駆動レバー204の一端側で真空バルブを閉じる側に可動ロッドを付勢する加圧バネ207とを備えた真空バルブ用操作装置において、駆動レバー204の一端と支点との間の部分を、加圧バネから駆動レバーに作用するバネ力の方向と反対の方向に付勢する閉極スピードコントロール用バネ5を設け、閉極スピードコントロール用バネ5のバネ力を調整することにより、真空バルブ1の閉極スピードを調整し得るようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空バルブを開閉操作する操作機構を備えた真空バルブ用操作装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
負荷時タップ切換え装置の切換開閉器等に用いる開閉器として真空バルブが用いられている。真空バルブ用操作装置を構成する操作機構として、特許文献1に示されているように、真空バルブの可動ロッドに一端が結合された駆動レバーと、駆動レバーの一端側で可動ロッドを付勢する加圧バネと、駆動レバーを回動させるカム機構とを備えたものが知られている。
【0003】
図4は、特許文献1に示された操作装置を示したものである。図4において、1は真空バルブを示し、2は真空バルブを操作する操作機構を示している。図示の真空バルブ1は、絶縁材料からなっていて内部が真空に保たれる筒状の真空容器101と、真空容器101内に収容されて、真空容器101の下端を閉じる封止板102を気密に貫通して一端が外部に導出された固定ロッド103と、固定ロッド103の他端に取り付けられた固定接点104と、真空容器101の上端を閉じる封止板105を貫通した状態で真空容器101内に挿入されて上端が真空容器から上方に引出された可動ロッド106と、可動ロッド106の真空容器内に配置された端部に取り付けられて、可動ロッド106の直線変位に伴って固定接点104に接離する可動接点107と、可動ロッド106と封止板105との間に設けられて、可動ロッド106の変位を許容しつつ真空容器101内を真空に保つベローズ108とを備えている。図示の真空バルブ1は、封止板102を貫通して下方に導出された固定ロッド103の端部が、図示しないフレームに支持された端子導体3に接続されることにより、その軸線を上下方向に向けて支持されている。
【0004】
操作機構2は、一端が可動ロッド106に接続された連結ロッド200と、フレーム4に固定された支持部材203に回動自在に支持されたL形の駆動レバー204と、駆動レバー204を操作するカム機構213とを備えている。駆動レバー204は、その角部に設定された支点が、フレーム4に固定された支持部材203にピン205を介して連結されることによりフレーム4に回動自在に支持されている。駆動レバー204の一端は、ピン206により連結ロッド200の他端に連結され、駆動レバー204の一端がピン206と連結ロッド200とを介して可動ロッド106に結合されている。フレーム4と駆動レバー204の一端との間には、真空バルブ1の可動接点107を固定接点104に所定の接触圧力をもって接触させるように可動ロッド106を付勢する加圧バネ207が設けられている。加圧バネ207は、駆動レバー204の一端に接触させられたバネ受け座208と、フレーム4に固定されたバネ受け座209との間に圧縮された状態で配置されている。
【0005】
駆動レバー204の他端には、ローラからなるカム従動子210が回転自在に支持されている。フレーム4には、図示しない操作器により回転操作される操作軸211が、軸受け212を介して回転自在に支持され、操作軸211に、カム従動子210とともにカム機構213を構成するカム板214が取り付けられている。カム板214は、カム従動子210と協働して駆動レバー204を操作するカム山を備えていて、操作軸211の一方向への回転及び他方向への回転に伴って、真空バルブ1の可動接点107を固定接点104に接触させる方向及び固定接点104から離す方向にそれぞれ変位させるように、駆動レバー204を回動させる。
【0006】
図4に示した操作機構2においては、真空バルブ1を閉極する(閉じる)際に、閉極スピード(可動接点107が固定接点104に向けて移動する際の速度)が、ほぼ加圧バネ207のバネ力により決まり、真空バルブを開極する(開く)際には、開極スピード(可動接点107が固定接点104から離れていく際の速度)がカム板214のカム山の形状により決まるように、カム板214のカム山が設けられている。真空バルブ1が閉極した状態にあるときには、加圧バネ207のバネ力により、可動接点107が固定接点104に所定の接触圧力で接触した状態に保持される。
【0007】
真空バルブ1を閉極する際には、操作軸211によりカム板214を一方向に回転させる。このカム板の回転の過程でカム板214のカム山がカム従動子210から外れた際に、加圧バネ207のバネ力で可動ロッド106を可動接点107とともに固定接点104側に変位させて、可動接点107を固定接点104に接触させる。真空バルブ1を開極させる際には、操作軸211によりカム板214を他方向に回転させる。このカム板の回転の過程でカム板214に設けられたカム山によりカム従動子210を押して、駆動レバー204を加圧バネ207のバネ力に抗して図面上時計方向に回動させる。これにより、可動ロッド106を可動接点107とともに固定接点104から離れる側に直線変位させて、真空バルブ1を開極させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−319975号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図4に示した操作装置においては、真空バルブを閉極した状態で、固定接点107を十分に高い接触圧力をもって固定接点104に接触させる必要があるため、加圧バネ207のバネ力を強く設定する必要がある。しかしながら、加圧バネ207のバネ力を強くしすぎると、可動接点107の閉極スピードが速くなり過ぎて、可動接点107が固定接点104に接触した際に跳ね返されるため、可動接点の機械的振動(チャタリング)が生じ易くなる。チャタリングが継続すると、可動ロッド106の上下運動に伴って伸縮するベローズ108が振動して損傷するため、真空バルブの寿命が短くなるのを避けられない。
【0010】
図4に示した従来の操作装置を用いる場合に、真空バルブの閉極時に生じる可動接点のチャタリングを抑制するためには、閉極スピードを決める加圧バネ207のバネ力を調整して、真空バルブの閉極スピードを調整する必要がある。バネ力の調整を可能にするためには、バネに許容されるたわみ量を大きくしておく必要があるが、駆動レバー204とフレーム4との間の狭いスペースに設けられる加圧バネ207は、その撓み量を大きくすることが難しいため、バネ力を調整し得る形で加圧バネ207を設けることは難しかった。そのため、図4の操作装置は、構造が比較的簡単であるという利点を有するが、真空バルブの閉極スピードを調整することができないという難点があり、可動接点のチャタリングを抑制してベローズの寿命を延ばすことが難しいという問題があった。
【0011】
本発明の目的は、真空バルブの閉極スピードの調整を可能にして、真空バルブの閉極時に生じる可動接点のチャタリングを抑制することができるようにした真空バルブ用操作装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、固定接点と可動接点とを真空容器内に収容し、可動接点を固定接点に接離させる際に直線変位させられる可動ロッドを真空容器から引き出した構造を有する真空バルブを、回転操作される操作軸の回転に伴って操作する操作機構を備えた真空バルブ用操作装置に適用される。
【0013】
本発明が対象とする操作装置においては、真空バルブを操作する操作機構が、一端と他端との間に設定された支点を中心に回動し得るように設けられて、回動した際に真空バルブの可動ロッドを直線変位させるべく一端が可動ロッドにピンを介して結合された駆動レバーと、駆動レバーの一端側で可動ロッドを固定接点側に付勢する加圧バネと、駆動レバーの他端に取り付けられたカム従動子と操作軸に取り付けられてカム従動子と協働するカム板とを備えて、操作軸の回転に伴って駆動レバーを回動させるカム機構とを備えている。
【0014】
本発明においては、駆動レバーの一端と支点との間の部分を、加圧バネから駆動レバーに作用するバネ力の方向と反対の方向に付勢する閉極スピードコントロール用バネが設けられる。この閉極スピードコントロール用バネは、加圧バネよりもバネ定数が大きいコイルバネからなっていて、その撓み量を変化させてバネ力を調整し得るように設けられ、可動接点が固定接点に接触する際に可動接点に生じる振動を抑制し、かつ可動接点が固定接点に接触して静止した閉極状態での可動接点の固定接点への接触圧力を規定範囲に保つように、閉極スピードコントロール用バネのバネ力が調整される。
【0015】
上記のように構成すると、閉極スピードコントロール用バネのバネ力を調整することにより、真空バルブの可動ロッドを固定接点側に付勢するバネ力を容易に調整することができ、これにより、真空バルブの閉極スピードを調整することができるため、閉極時に生じる可動接点のチャタリングを抑制するための調整を容易に行うことができる。
【0016】
また上記のように加圧バネと反対側に閉極スピードコントロール用バネを設けると、真空バルブの閉極時に可動接点が固定接点に当って振動しようとした際に、可動接点を固定接点から離反させようとする力を加圧バネにより減衰させることができ、可動接点を固定接点側に戻そうとする力を閉極スピードコントロール用バネにより減衰させることができるため、可動接点の振動を急速に減衰させて、可動接点のチャタリングを短時間で消滅させることができる。
【0017】
従って、本発明によれば、真空バルブの閉極時に可動接点のチャタリングが生じるのを抑制して、真空バルブ内のベローズが損傷するのを防ぐことができ、真空開閉器の寿命を延ばすことができる。
【0018】
本発明の好ましい態様では、操作機構が、主面を上下方向に向けた状態で設けられた板状のフレームを備えている。この場合、操作軸は、その軸線を上下方向に向けた状態でフレームに回転自在に支持され、真空バルブは、可動ロッドの中心軸線を上下方向に向けた状態でフレームの下方に配置される。また駆動レバーは、その一端と他端との間に角部を有して該角部と一端との間及び該角部と他端との間がそれぞれ第1の腕部及び第2の腕部となっているL字形レバーからなっている。このレバーは、フレームの下方でその第2の腕部を下側に向けた状態で回動するように、その角部に設定された支点が、フレームの下面に固定された支持部材にピンを介して回動自在に支持される。また駆動レバーの一端と支点との間の位置で駆動レバーの第1の腕部と交差して上下方向に延びるバネ支持軸が設けられて、該バネ支持軸の上端が上下位置調整機構を介してフレームに支持される。そして、駆動レバーの第1の腕部よりも下方に配置されたバネ支持軸の下端にバネ受け座が設けられ、加圧バネよりもバネ定数が大きいコイルバネからなる閉極スピードコントロール用バネが、バネ支持軸に嵌装された状態でバネ受け座と駆動レバーの第1の腕部との間に配置される。この場合、上下位置調整機構によりバネ支持軸の上下位置を調整してバネ受け座と駆動レバーとの間の距離を変化させることにより閉極スピードコントロール用バネのバネ力を調整することができる。
【0019】
駆動レバーの第1の腕部(一端と支点との間の部分)のフレームと反対側の部分には広いスペースを確保することができるため、上記のように構成すると、閉極スピードコントロール用バネとして、撓み量が大きいものを用いることができ、そのバネ力の調整を容易にすることができる。また閉極スピードコントロール用バネのバネ力を調整するためにバネ支持軸の上下位置を調整する上下位置調整機構を、スペースの制約を受けずに容易に設けることができる。
【0020】
本発明の好ましい態様では、バネ支持軸の上端寄りの部分にネジ部が設けられて該ネジ部がフレームを貫通した状態で配置され、バネ支持軸のネジ部のフレームを貫通して上方に導出された部分にナットが螺合されて、該ナットを介してバネ支持軸の上端がフレームに支持される。この場合、ネジ部とナットとによりバネ支持軸の上下位置を調整する上下位置調整機構が構成される。
【0021】
本発明の他の態様では、閉極スピードコントロール用バネが設けられる代りに、真空バルブを閉極する際に可動接点を減速するとともに、可動接点が固定接点に接した際に生じる可動接点の振動を減衰させる緩衝器が駆動レバーの一端と支点との間の部分に結合される。
【0022】
上記のように緩衝器を設けると、可動接点が固定接点に接した際に生じる可動接点の振動を抑制することができるため、チャタリングにより真空バルブ内のベローズが損傷するのを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0023】
上記のように、本発明においては、加圧バネよりもバネ定数が大きいコイルバネからなっていて、駆動レバーの一端と支点との間の部分を、加圧バネから駆動レバーに作用するバネ力の方向と反対の方向に付勢する閉極スピードコントロール用バネを、そのバネ力を調整し得るように設けて、真空バルブの閉極時に生じる可動接点の振動を抑制するように真空バルブの閉極スピードを調整するようにしたので、真空バルブを閉極する際に可動接点にチャタリングが生じるのを抑制して、ベローズの損傷を防ぐことができ、真空バルブの寿命を延ばすことができる。
【0024】
また本発明において、真空バルブを閉極する際に可動接点を減速するとともに、可動接点が固定接点に接した際に生じる可動接点の振動を減衰させる緩衝器を駆動レバーの一端と支点との間の部分に結合した場合には、閉極時に可動接点が固定接点に接した際に生じる振動を抑制することができるため、閉極時に生じるチャタリングを抑制して真空開閉器の寿命を延ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係わる操作装置の一実施形態の要部の構成を一部断面して示した側面図である。
【図2】図1のII−II線に沿って断面して示した断面図である。
【図3】本発明に係わる操作装置の他の実施形態の要部の構成を一部断面して示した側面図である。
【図4】従来の操作装置の要部の構成を一部断面して示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1は本発明に係わる操作装置の一実施形態の要部を示したもので、図1において、図4に示した従来例の各部と同等の部分にはそれぞれ同一の符号を付してある。図1において、1は真空バルブ、2は真空バルブを操作する操作機構である。
【0027】
図示の真空バルブ1は、絶縁材料からなっていて内部が真空に保たれる筒状の真空容器101と、真空容器101と軸線を共有した状態で真空容器内に収容されて、真空容器101の一端を閉じる封止板102を気密に貫通して一端が外部に導出された固定ロッド103と、固定ロッド103の他端に取り付けられた固定接点104と、固定ロッド103と軸線を共有し、かつ真空容器101の他端を閉じる封止板105を貫通した状態で真空容器101内に挿入された可動ロッド106と、可動ロッド106の真空容器内に配置された端部に取り付けられて、可動ロッド106の直線変位に伴って固定電接点104に接離する可動接点107と、可動接点107と封止板105との間に設けられたベローズ108とを備えている。ベローズ108は、可動ロッド106の直線変位に伴って伸縮して可動ロッド106の変位を許容するとともに、可動ロッド106の変位に対して真空容器101内の真空を保つ。真空バルブ1は、封止板102を気密に貫通して外部に導出された固定ロッド103の端部が、図示しないフレームに支持された端子導体3に接続されることにより、その軸線を上下方向に向けた状態で支持されている。
【0028】
操作機構2は、一端が可動ロッド106に接続された連結ロッド200と、主面を上下方向に向けた状態で配置された板状のフレーム4にボルト201及びナット202により固定された支持部材203と、支持部材203に回動自在に支持された駆動レバー204とを備えている。
【0029】
支持部材203は、フレーム4の下面に当接された基部203aと、基部203aから下方に突出して延びる板状の駆動レバー支持部203bとを一体に有していて、基部203aがボルト201及びナット202によりフレーム4に締結されている。
【0030】
駆動レバー204は、図2に示したように、支持部材203の駆動レバー支持部203bを間にして相対する一対の板状のL字形部材204a,204aを、両L字形部材204a,204aの一端と角部との間の部分を連結する板状の第1の連結部204bと、両L字形部材の他端間を連結する第2の連結部204cとにより連結して一体化した構造を有して、横から見たときに全体がほぼL字形を呈するように形成されている。
【0031】
図示の例では、駆動レバー204の角部に駆動レバーの回動中心となる支点が設定されていて、駆動レバー204の角部と支持部材203の駆動レバー支持部203bとを貫通したピン205により、駆動レバー204がフレーム4に回動自在に支持されている。駆動レバー204の一端は、ピン206により連結ロッド200の他端に連結され、ピン206と連結ロッド200とを介して真空バルブ1の可動ロッド106に結合されている。駆動レバー204の他端には、ローラからなるカム従動子210が回転自在に支持されている。本明細書では、駆動レバー204の角部と一端との間の部分(ピン205と206との間を伸びる部分)及び該角部と他端との間の部分(ピン205とカム従動子210との間の部分)をそれぞれ駆動レバーの第1の腕部及び第2の腕部と呼ぶ。
【0032】
板状のフレーム4には、真空バルブ1の軸線と平行に(上下方向に)延びるように設けられて図示しない操作器により一方向及び他方向に回転操作される操作軸211が、軸受け212を介して回転自在に支持されている。操作軸211には、カム従動子210と協働するカム板214が取り付けられ、カム板214とカム従動子210とにより、駆動レバー204を回動させるカム機構213が構成されている。本実施形態では、操作軸211が絶縁材料からなっている。
【0033】
フレーム4と駆動レバー204の一端との間には、真空バルブ1の可動ロッド106を固定接点104側に付勢する加圧バネ207が設けられている。加圧バネ207はコイルバネからなっていて、加圧バネ207の一端(図示の例では下端)は、駆動レバー204の一端に接触させられたバネ受け部材208に結合されている。加圧バネ207の他端(図示の例では上端)は、フレーム4に設けられた貫通孔401内に挿入されて、貫通孔401を塞ぐように配置されてフレーム4の上面に固定されたバネ受け部材209に突き当てられている。
【0034】
以上の構成は、従来の操作装置と同様であるが、本発明においては、真空バルブ1を閉極する際に生じる可動接点107のチャタリングを抑制するため、加圧バネ207よりもバネ定数が大きいコイルバネからなっていて、駆動レバー204の一端と支点との間の部分(第1の腕部)を、加圧バネ207から駆動レバー204に作用するバネ力の方向と反対の方向に付勢する閉極スピードコントロール用バネ5が設けられ、加圧バネ207のバネ力から閉極スピードコントロール用バネ5のバネ力を減じたバネ力で、真空バルブ1の可動接点107が固定接点104側に付勢されるように構成されている。
【0035】
閉極スピードコントロール用バネ5は、その撓み量を変化させてバネ力を適宜に調整し得るように設けられていて、この閉極スピードコントロール用バネ5のバネ力を調整することにより、真空バルブ1の閉極時に可動接点107が固定接点104に接触する際に可動接点107に生じる振動を抑制し、かつ可動接点107が固定接点104に接触して静止した閉極状態での可動接点107の固定接点104への接触圧力を規定範囲に保つように、操作機構2から可動ロッド106を通して可動接点107に作用するバネ力を調整することができるようになっている。
【0036】
バネのたわみ量を変化させて、バネ力を調整し得るようにするには、バネの長さに余裕を持たせておく必要があるため、閉極スピードコントロール用バネ5を設けるためには、ある程度のスペースを必要とするが、駆動レバー204の一端と支点(ピン205)との間の部分の下方には、広いスペースを確保することができるため、閉極スピードコントロール用バネ5を、そのたわみ量を調整し得る形で設けることは容易である。図示の例では、上下位置の調整が可能な状態でフレーム4に支持されたバネ支持軸6が設けられて、閉極スピードコントロール用バネ5が、このバネ支持軸6に嵌装された状態で設けられている。
【0037】
バネ支持軸6は、一端(図示の例では上端)にネジ部6aを、他端(図示の例では下端)にバネ受け座6bをそれぞれ有する軸部材からなっていて、駆動レバー204の一端(ピン206)と支点(ピン205)との間の位置で、駆動レバー204を構成する一対のL字形部材204a,204a間を連結する連結部204bを貫通した状態で(駆動レバー204の一端と支点との間を伸びる第1の腕部と交差した状態で)配置されている。
【0038】
バネ支持軸6のネジ部6aは、フレーム4に設けられた貫通孔を上下に変位自在に貫通した状態で設けられていて、フレーム4を貫通して上方に(駆動レバー204と反対側に)導出されたネジ部6aの端部にナット7が螺合されている。バネ支持軸6は、ナット7を介してフレーム4から垂下した状態で支持されていて、ナット7を回転させることにより、フレーム4とバネ受け座6bとの間の距離を微調整することができるようになっている。閉極スピードコントロール用バネ5は、加圧バネ207よりもバネ定数が大きいコイルバネからなっていて、バネ支持軸6に嵌装された状態で(バネ支持軸6を内側に挿入した状態で)、バネ受け座6bと駆動レバー204の連結部204bとの間に圧縮された状態で配置されている。本実施形態では、バネ支持軸6のネジ部6aとこのネジ部6aに螺合されたナット7とにより、バネ支持軸6の上下位置を調整する上下位置調整機構が構成されている。バネ支持軸6は、その上端が上下位置調整機構を介してフレーム4に支持されている。
【0039】
図1に示した操作機構2においては、加圧バネ207のバネ力から閉極スピードコントロール用バネ5のバネ力を減じたバネ力により、真空バルブ1を閉極する際の閉極スピードと、可動接点107の固定接点104への接触圧力とが決まり、真空バルブ1を開極する際には、開極スピードが、カム板214に設けられたカム山の形状により決まるように、カム板214のカム山が設けられている。
【0040】
本実施形態のように構成すると、ナット7を回して閉極スピードコントロール用バネ5の撓み量を変化させることにより、操作機構2から真空バルブの可動ロッド106の作用するバネ力を調整して閉極スピードを調整することができるため、真空バルブの可動接点107が固定接点104に接触する際に可動接点107に生じる振動を抑制してチャタリングが継続するのを防ぐための調整を容易に行うことができる。また真空バルブの閉極時に可動接点107が固定接点104に当って振動しようとした際に、可動接点107を固定接点104から離反させようとする力を加圧バネ207により減衰させることができ、可動接点107を固定接点104側に戻そうとする力を閉極スピードコントロール用バネ5により減衰させることができるため、可動接点107の振動を急速に減衰させて、可動接点のチャタリングが継続するのを防ぐことができる。
【0041】
上記の例では、閉極スピードコントロール用バネ5を、フレーム4に上下位置調整機構を介して支持したバネ支持軸6に嵌装した状態で設けるようにしたが、閉極スピードコントロール用バネは、その撓み量を調整し得るように設けられればよく、その設け方は上記の例に限定されない。
【0042】
例えば、図1において、駆動レバー204の一端と支点との間を伸びる第1の腕部の下方にフレーム4に対して固定されたバネ支持部材を設けて、このバネ支持部材と駆動レバー204の第1の腕部との間に閉極スピードコントロール用バネを設けるようにしても良い。また閉極スピードコントロール用バネを引っ張りバネとして、該引っ張りバネの下端を駆動レバーの第1の腕部に連結し、該引っ張りバネの上端をフレーム4に設けた貫通孔を通して上方に導出して、該引っ張りバネの上端を、フレーム4からの高さを調整し得るようにしてフレーム4に取り付けたバネ支持具に連結する構造にしてもよい。
【0043】
上記の実施形態では、駆動レバー204の一端と支点との間の部分に加圧バネ207から与えられるバネ力と反対方向のバネ力を与える閉極スピードコントロール用バネ5を設けたが、閉極スピードコントロール用バネに代えて、真空バルブ1を閉極する際に可動接点107を減速するとともに、可動接点107が固定接点104に接した際に生じる可動接点の振動を減衰させる緩衝器を、駆動レバー204の一端と支点との間の部分に結合するようにしてもよい。
【0044】
図3は、閉極スピードコントロール用バネに代えて緩衝器を設けた実施形態を示したものである。図3において、8は緩衝器で、この緩衝器は、駆動レバー204の一端と支点との間の部分の下方に配置されてフレーム4に対して固定された支持部材9にピン801を介して連結されたシリンダ802と、シリンダ802内を移動するピストンに一端が連結され、他端が駆動レバー204の一端と支点との間の部分にピン803を介して結合されたピストンロッド804と、シリンダ802内に収容されたオイルとを備えたオイルダンパからなっている。
【0045】
図3に示したように、緩衝器8を設けると、真空バルブの閉極時に可動接点107を緩衝器8により減速するとともに、可動接点107が固定接点104に接した際に生じる可動接点107の振動を緩衝器8により減衰させることができるため、可動接点のチャタリングによりベローズが振動して早期に損傷するのを防ぐことができる。
【0046】
上記の各実施形態において、真空バルブ1の可動ロッド106を駆動レバー204に対して絶縁する必要がある場合には、可動ロッド106と駆動レバー204との間を連結する連結ロッド200として絶縁部を有するものを用いる。真空バルブ1の可動ロッド106を駆動レバー204に対して絶縁する必要がない場合、例えば、操作機構2の操作軸211の周囲に複数の真空バルブを配置してこれらの真空バルブを、カム機構と駆動レバーとを備えた操作機構により一括して操作する開閉装置を構成する場合に、複数の真空バルブ1の可動ロッド106を電位が同じ部材に接続する場合には、連結ロッド200として全体が金属により形成されたものを用いることができる。
【符号の説明】
【0047】
1 真空バルブ
101 真空容器
103 固定ロッド
104 固定接点
106 可動ロッド
107 可動接点
2 操作機構
200 連結ロッド
203 駆動レバー支持部材
204 駆動レバー
205 駆動レバーの支点を支持するピン
206 駆動レバーの一端を連結ロッドに連結するピン
207 加圧ばね
210 カム従動子
211 操作軸
212 軸受け
214 カム板
4 フレーム
5 閉極スピードコントロール用バネ
6 バネ支持軸
6a ネジ部
7 ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定接点と可動接点とを真空容器内に収容し、前記可動接点を固定接点に接離させる際に直線変位させられる可動ロッドを前記真空容器から引き出した構造を有する真空バルブを、回転操作される操作軸の回転に伴って操作する操作機構を備え、
前記操作機構は、
一端と他端との間に設定された支点を中心に回動し得るように設けられて、回動した際に前記可動ロッドを直線変位させるべく一端が前記可動ロッドにピンを介して結合された駆動レバーと、
前記駆動レバーの一端側で前記可動ロッドを前記固定接点側に付勢する加圧バネと、
前記駆動レバーの他端に取り付けられたカム従動子と前記操作軸に取り付けられて前記カム従動子と協働するカム山を備えたカム板とを備えて、前記操作軸の回転に伴って前記駆動レバーを回動させるカム機構と、
を備えている真空バルブ用操作装置において、
前記駆動レバーの一端と支点との間の部分を、前記加圧バネから前記駆動レバーに作用するバネ力の方向と反対の方向に付勢する閉極スピードコントロール用バネが設けられ、
前記閉極スピードコントロール用バネは、前記加圧バネよりもバネ定数が大きいコイルバネからなっていて、その撓み量を変化させてバネ力を調整し得るように設けられ、
前記可動接点が固定接点に接触する際に前記可動接点に生じる振動を抑制し、かつ前記可動接点が固定接点に接触して静止した閉極状態での前記可動接点の固定接点への接触圧力を規定範囲に保つように、前記閉極スピードコントロール用バネのバネ力が調整されること、
を特徴とする真空バルブ用操作装置。
【請求項2】
主面を上下方向に向けた状態で設けられた板状のフレームを備え、
前記操作軸は、その軸線を上下方向に向けた状態で前記フレームに回転自在に支持され、
前記真空バルブは、前記可動ロッドの中心軸線を上下方向に向けた状態で前記フレームの下方に配置され、
前記駆動レバーは、一端と他端との間に角部を有して該角部と一端との間及び該角部と他端との間がそれぞれ第1の腕部及び第2の腕部となっているL字形レバーからなっていて、前記フレームの下方で第2の腕部を下側に向けた状態で回動するように、前記角部に設定された支点が、前記フレームの下面に固定された支持部材にピンを介して回動自在に支持され、
前記駆動レバーの一端と支点との間の位置で前記第1の腕部と交差して上下方向に延びるバネ支持軸が設けられて、該バネ支持軸の上端が上下位置調整機構を介して前記フレームに支持され、
前記駆動レバーの第1の腕部よりも下方に配置された前記バネ支持軸の下端にバネ受け座が設けられ、
前記閉極スピードコントロール用バネは、前記加圧バネよりもバネ定数が大きいコイルバネからなっていて、前記バネ支持軸に嵌装された状態で前記バネ受け座と前記駆動レバーの第1の腕部との間に配置され、
前記上下位置調整機構により前記バネ支持軸の上下位置を調整して前記バネ受け座と前記駆動レバーとの間の距離を変化させることにより前記閉極スピードコントロール用バネのバネ力を調整し得るように構成されていること、
を特徴とする請求項1に記載の真空バルブ用操作装置。
【請求項3】
前記バネ支持軸の上端寄りの部分にネジ部が設けられて該ネジ部が前記フレームを貫通した状態で配置され、
前記バネ支持軸のネジ部の前記フレームを貫通して上方に導出された部分にナットが螺合されて、該ナットを介して前記バネ支持軸の上端が前記フレームに支持され、
前記ネジ部とナットとにより前記バネ支持軸の上下位置を調整する上下位置調整機構が構成されていることを特徴とする請求項2に記載の真空バルブ用操作装置。
【請求項4】
固定接点と可動接点とを真空容器内に収容し、前記可動接点を固定接点に接離させる際に直線変位させられる可動ロッドを前記真空容器から引き出した構造を有する真空バルブを、回転操作される操作軸の回転に伴って操作する操作機構を備え、
前記操作機構は、
一端と他端との間に設定された支点を中心に回動し得るように設けられて、回動した際に前記可動ロッドを直線変位させるべく一端が前記可動ロッドにピンを介して結合された駆動レバーと、
前記駆動レバーの一端側で前記可動ロッドを前記固定接点側に付勢する加圧バネと、
前記駆動レバーの他端に取り付けられたカム従動子と前記操作軸に取り付けられて前記カム従動子と協働するカム板とを備えて、前記操作軸の回転に伴って前記駆動レバーを回動させるカム機構と、
を備えている真空バルブ用操作装置において、
前記真空バルブを閉極する際に前記可動接点を減速するとともに、前記可動接点が固定接点に接した際に生じる可動接点の振動を減衰させる緩衝器が前記駆動レバーの一端と支点との間の部分に結合されていることを特徴とする真空バルブ用操作装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−73801(P2013−73801A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212155(P2011−212155)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000000262)株式会社ダイヘン (990)
【Fターム(参考)】