説明

着色図面作成装置、着色図面作成方法及び着色図面作成プログラム

【課題】図面の着色に対する作業時間をより短縮可能な着色図面作成装置、着色図面作成方法及び着色図面作成プログラムを提供する。
【解決手段】着色図面作成装置10は、着色対象領域31を着色対象図面30に閉領域として設定する着色対象領域設定手段13と、着色領域33を着色画像32に閉領域として設定する着色領域設定手段14と、着色領域の形状を着色対象領域の形状に変形する領域変形手段15と、変形された着色領域に基づいて着色対象領域に着色処理を行う着色処理手段16と、を備え、領域変形手段は、着色領域を複数の多角形パッチ41に分割すると共に、各多角形パッチの頂点42に対する対応点52を着色対象領域に配置して着色対象領域を複数のパッチ51に分割し、着色領域が有する多角形パッチを、対応する着色対象領域のパッチの形状に変形することによって、着色領域の形状を着色対象領域の形状に変形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色図面作成装置、着色図面作成方法及び着色図面作成プログラムに係るものである。
【背景技術】
【0002】
コンピュータによるデジタル画像の生成を初め、デジタルカメラ、あるいはイメージ入力装置等によるデジタル画像の利用は急速に普及し、パーソナルコンピュータやインクジェットカラープリンタ等の出力機の普及と共に、そのデジタル画像の加工技術も身近なソフトウェアとして普及してきた。
【0003】
元画像の明暗、濃淡、色調などの調整や、部分的切り出し・貼付、複数枚画像の連結(パノラマ画像作成)処理等の処理については既に実用に供されているが、更に、これらの加工技術は、加工対象となるデジタル画像への着色処理技術を伴うソフトウェアとして提供される場合が多い。このような着色処理技術としては、一つの画像からその一部を切り出し、他の画像に重ね合わせて着色するものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−37066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、重ね合わせに用いる画像と着色したい領域との大きさが異なる場合、重ね合わせに用いる画像の全体枠に用意された操作ポイントを重ね合わせた後に拡縮操作して変形させていた。しかしながら、この場合には、微妙な調整に作業時間を要し、結果として、着色に対する作業時間が長くなる傾向にあった。
【0006】
そこで、本発明は、図面の着色に対する作業時間をより短縮可能な着色図面作成装置、着色図面作成方法及び着色図面作成プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る着色図面作成装置は、着色すべき着色対象領域を着色対象図面に閉領域として設定する着色対象領域設定手段と、着色対象図面の着色に使用する着色領域を着色が施された着色画像に閉領域として設定する着色領域設定手段と、着色領域の形状を着色対象領域の形状に変形する領域変形手段と、変形された着色領域に基づいて着色対象領域に着色処理を行う着色処理手段と、を備え、領域変形手段は、着色領域を複数の多角形パッチに分割すると共に、各多角形パッチの頂点に対する対応点を着色対象領域に配置して着色対象領域を複数のパッチに分割し、着色領域が有する多角形パッチを、対応する着色対象領域のパッチの形状に変形することによって、着色領域の形状を着色対象領域の形状に変形する、ことを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る着色図面作成方法は、着色対象領域設定手段、着色領域設定手段、領域変形手段及び着色処理手段を備える着色図面作成装置において着色図面を作成する方法であって、着色対象領域設定手段が、着色される着色対象図面に、着色対象領域を閉領域として設定するステップと、着色領域設定手段が、着色が施された画像に、着色対象図面の着色に使用する着色領域を設定するステップと、領域変形手段が、着色領域を複数の多角形パッチに分割すると共に、各多角形パッチの頂点に対する対応点を着色対象領域に配置して着色対象領域を複数のパッチに分割し、着色領域が有する多角形パッチを、対応する着色対象領域のパッチの形状に変形することによって、着色領域の形状を着色対象領域の形状に変形するステップと、着色処理手段が、変形された着色領域に基づいて着色対象領域を着色するステップと、を備えることを特徴とする。
【0009】
更に、本発明に係る着色図面作成プログラムは、コンピュータを、着色すべき着色対象領域を着色対象図面に閉領域として設定する着色対象領域設定手段、着色対象図面の着色に使用する着色領域を着色が施された着色画像に閉領域として設定する着色領域設定手段、着色領域の形状を前記着色対象領域の形状に変形する領域変形手段、及び、変形された着色領域に基づいて前記着色対象領域に着色処理を行う着色処理手段として機能させ、領域変形手段は、着色領域を複数の多角形パッチに分割すると共に、各多角形パッチの頂点に対する対応点を着色対象領域に配置して着色対象領域を複数のパッチに分割し、着色領域が有する多角形パッチを、対応する着色対象領域のパッチの形状に変形することによって、着色領域の形状を着色対象領域の形状に変形する、ことを特徴とする。
【0010】
この構成では、着色対象図面及び着色画像に着色対象領域及び着色領域を設定すると、着色領域の形状を、着色対象図面において設定した着色対象領域の形状に変形した後、変形後の着色領域に基づいて着色対象領域を着色する。よって、着色対象図面において設定した着色対象領域と、上記画像において設定した着色領域との形状が異なっていても、着色対象図面及び着色画像に着色対象領域及び着色領域を設定することで、着色対象図面に着色を施すことが可能である。その結果、着色図面の作成に要する時間を短縮することができる。
【0011】
本発明に係る着色図面作成装置では、着色領域の周縁上の多角形パッチの頂点と、着色対象領域の周縁上の対応点との対応関係を変更することによって、着色領域を着色対象領域に対して回転させる着色状態変更手段を更に備えることが好ましい。また、本発明に係る着色図面作成方法では、着色領域の周縁上の多角形パッチの頂点と、着色対象領域の周縁上の対応点との対応関係を変更することによって、着色領域を着色対象領域に対して回転させるステップを更に備えることが好適である。更にまた、本発明に係る着色図面作成プログラムでは、上記コンピュータを、着色領域の周縁上の多角形パッチの頂点と、着色対象領域の周縁上の対応点との対応関係を変更することによって、着色領域を着色対象領域に対して回転させる着色状態変更手段として機能せしめる、ことが好ましい。
【0012】
この構成により、着色領域を着色対象領域に対して回転させることができるので、一つの着色領域に基づいて、複数の着色パターンを実現することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、図面の着色に対する作業時間をより短縮可能な着色図面作成装置、着色図面作成方法及び着色図面作成プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る着色図面作成装置の一実施形態の機能ブロック図である。
【図2】図2(a)は、図1に示した着色図面作成装置で着色すべき着色対象図面の一例を示す図面である。図2(b)は、図2(a)に示した着色対象図面の着色に用いる着色画像の一例を示す図面である。図2(c)は、図2(a)に示した着色対象図面の一部を着色した着色図面の一例を示す図面である。
【図3】着色領域に対して生成した三角形パッチの一例を示す図面である。
【図4】着色領域のパッチ網と着色対象領域の対応パッチ網との対応関係を示すための図面である。
【図5】着色領域のワーピング処理の前後の対応関係を示す図面である。
【図6】表示部が表示する作業ウィンドウの一例を示す模式図である。
【図7】図1に示した着色図面作成装置の一実施形態のハードウェアの構成を示すブロック図である。
【図8】着色図面作成装置における着色図面作成方法のフローチャートを示す図面である。
【図9】着色図面作成装置による着色の実施例1を説明するための図面である。
【図10】着色図面作成装置による着色の実施例2を説明するための図面である。
【図11】三次元的な着色の原理を説明するための図面である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0016】
図1は、本発明に係る着色図面作成装置の一実施形態の機能ブロック図である。図2(a)は、図1に示した着色図面作成装置で着色すべき着色対象図面の一例を示す図面である。図2(b)は、図2(a)に示した着色対象図面の着色に用いる着色画像の一例を示す図面である。図2(c)は、図2(a)に示した着色対象図面の一部を着色した着色図面の一例を示す図面である。
【0017】
着色図面作成装置10は、図2(a)〜図2(c)に示すように、輪郭線からなる着色対象図面30内の任意形状の着色対象領域31を、既に着色が施された他の着色画像32内の任意形状の着色領域33に基づいて着色することによって着色図面34を作成するための装置である。
【0018】
図1に示すように、着色図面作成装置10は、機能的な構成要素として、ユーザからの各種指示を受け付ける入力部11、着色対象図面となるべき複数の図面の図面データ及び着色画像となるべき複数の画像の画像データを格納すると共に、アプリケーションソフトとしてのプログラムを格納する記憶部12、着色対象図面30に着色対象領域31を設定する着色対象領域設定部(着色対象領域設定手段)13、着色に使用する領域である着色領域33を着色画像32に設定する着色領域設定部(着色領域設定手段)14、着色領域33の形状を着色対象領域31の形状に変形する領域変形部(領域変形手段)15、変形された着色領域33を利用して着色対象領域31を着色する着色処理部(着色処理手段)16、着色対象領域31の着色状態を変更する着色状態変更部(着色状態変更手段)17、及び処理中又は処理結果の図面及び画像等をユーザに示すために表示する表示部18を有する。
【0019】
着色対象領域設定部13は、記憶部12に格納されている図面のうちの一つを着色対象図面30として選択する旨のユーザからの指示を受け付けると、選択された着色対象図面30の図面データを記憶部12から抽出し、表示部18でユーザに表示する。更に、着色対象領域設定部13は、ユーザからの指示に基づいて着色対象図面30に着色対象領域31を設定する。この領域設定のために、着色対象領域設定部13は、領域分割部13Aと、領域選択部13Bとを含む。領域分割部13Aは、ユーザからの領域指定を受け付けて、その指定された領域を閉領域として分割する。領域選択部13Bは、その閉領域を着色対象領域31として選択する旨のユーザの指示を受け付けて、指定された閉領域を着色対象領域31として設定する。
【0020】
着色領域設定部14は、記憶部12に格納されている着色済みの画像のうち一つを、着色画像32として選択する旨のユーザからの指示を受け付けると、選択された着色画像32の画像データを記憶部12から抽出し、表示部18でユーザに表示する。更に、着色領域設定部14は、ユーザからの指示に基づいて着色画像32に着色領域33を設定する。この領域設定のために、着色領域設定部14は、領域分割部14Aと、領域選択部14Bとを含む。領域分割部14Aは、ユーザからの着色領域33の指定を受け付け、その指定領域を閉領域として分割する。領域選択部14Bは、その閉領域を着色領域33として選択する旨のユーザの指示を受け付けて、指定された閉領域を着色領域33として設定する。
【0021】
ここでは、着色対象領域設定部13及び着色領域設定部14がそれぞれ領域分割部13A,14A及び領域選択部13B,14Bを有するとしたが、共通の領域分割部及び領域選択部を有してもよい。この場合、着色対象領域設定部13及び着色領域設定部14が共通の領域分割部及び領域選択部を利用して領域設定する。また、着色対象領域設定部13及び着色領域設定部14は、入力部11を介してユーザからの指示を受け付ける。
【0022】
領域変形部15は、着色領域33の形状を着色対象領域31の形状に変形する。領域変形部15は、着色対象領域31と着色領域33とにパッチ網を生成するパッチ網生成部15Aと、パッチ網生成部15Aで生成されたパッチ網を利用して着色領域33の形状を着色対象領域31の形状に変形する変形処理部15Bとを有する。
【0023】
パッチ網生成部15Aは、着色領域33にパッチ網40を生成すると共に、着色対象領域31にパッチ網40に対応する対応パッチ網50を生成する。このようなパッチ網は、例えば、次のようにして生成する。
【0024】
まず、着色画像32に複数のサンプル点42を配置して、着色画像32をドロネー分割する。この際、パッチ網生成部15Aは、着色領域33の外縁線(境界線)である周縁33a上にサンプル点42を配置しておく。次に、パッチ網生成部15Aが、閉領域である着色領域33の内側か否かを判定して、着色領域33の外側の三角形パッチ(多角形パッチ)41を除去し、パッチ網生成部15Aが、図3に示すように、着色領域33に三角形パッチ網であるパッチ網40を生成する。サンプル点42は、パッチ網40を構成する複数の三角形パッチ41の各頂点に対応する。よって、以下では、三角形パッチ41の各頂点を頂点42とも称す。
【0025】
パッチ網生成部15Aは、着色領域33にパッチ網40を生成すると、各三角形パッチ41の頂点42に対応する対応点52を着色対象領域31に設定して着色対象領域31に対応パッチ網50を生成する。この対応パッチ網50の生成は、パッチ網40の生成方法と同様とすることができる。すなわち、配置した対応点52に基づいて、着色対象図面30をドロネー分割し、着色対象領域31の内外を判定して、着色対象領域31内にパッチ網50を生成する。
【0026】
図4(a)及び図4(b)は、パッチ網生成部15Aが生成するパッチ網40と対応パッチ網50との対応関係を示すための図面である。図4(a)中の角括弧内の番号は、説明の便宜のために付した各頂点42の頂点番号である。図4(b)中の角括弧内の番号は、各対応点52に対応する頂点42の頂点番号である。図4(a)に示した着色領域33は、説明のために模式的に円形としている。また、図4(b)は着色対象領域31の模式図である。図4(a)及ぶ図4(b)に示すように、着色対象領域31における対応点52において、隣接する対応点52,52にそれぞれ対応する頂点42,42の頂点番号の関係は、着色領域33における隣接する頂点42,42の頂点番号の関係と同じとなっている。
【0027】
変形処理部15Bは、パッチ網生成部15Aが、着色領域33にパッチ網40を形成し、着色対象領域31に対応点52を配置すると、三角形パッチ41の各頂点42と、着色対象領域31の対応点52との配置関係から複数の頂点42間及び複数の対応点52間の拡縮情報をそれぞれ抽出する。変形処理部15Bは、ワーピング(Warping)処理により、着色領域33を着色対象領域31の形状に変形する。
【0028】
ここで、本実施形態のワーピング処理による形状変形の概念について説明する。本実施形態では、パッチ網生成部15Aで生成された各三角形パッチ41の各辺がバネで構成されているとしたバネモデルを採用している。そして、各辺に加わる力をf、バネののびをu及びバネ定数をkとして、各辺に対して成立する剛性方程式に基づいて、バネモデルの平衡状態を求めることで、各三角形パッチ41を、対応パッチ網50を構成するパッチ51(図4参照)の形状に変形する。バネ定数は、三角形パッチ41の剛性を表すことになるので、バネ定数を着色領域33内の位置に応じて調整することで、着色領域33の変形状態を調整することができる。例えば、着色領域33の内部側のバネ定数を周縁33a近傍のバネ定数より大きくすることで、着色領域33の内部側の変形を抑制し、周縁部の変形量が大きくなる。
【0029】
図5は、着色領域33のワーピング処理の前後の対応関係を示す図面である。図5における図5(a)は、処理前の着色領域33の一例を示しており、図4(a)の着色領域33の形状に対応する。図5(b)は、図5(a)に示した着色領域33を、図4(b)の着色対象領域31の形状に変形した図面である。図5(a)における頂点番号5−6−1で規定される三角形パッチ(図5(a)中のハッチング部)41が図5(b)の頂点番号5−6−1で規定されるパッチ(図5(b)中のハッチング部)に変形されていることになる。なお、上述したように三角形パッチ41をバネモデルで表すため、バネ定数等の関係上、変形後の三角形パッチ41の形状は、図5(b)に示すように部分的に若干湾曲した線を有する場合もある。
【0030】
図1に戻って、図面作成装置10の構成について更に説明する。着色処理部16は、変形処理部15Bで変形した三角形パッチ41に、元の三角形パッチ41のテクスチャをマッピングし、変形された着色領域33を着色対象領域31に貼付する貼付画像とし、この貼付画像を着色対象領域31に貼り付けることで、着色対象領域31に着色を施す。
【0031】
変形前の三角形パッチ41と、変形後のパッチとの間のテクスチャマッピングにおいて、画素のマッチング処理を実施する。この際、着色画像32の画素情報を線形補間して得られる計算結果に基づいて変形後のパッチに含まれる各画素に対応する画素情報を適宜取得する。また、着色処理部16は、着色対象領域31の周縁31aに対して内外で色彩の急激な変化を抑制するための、境界領域にぼかし処理等によるなじませ処理を施す機能を有してもよい。
【0032】
着色状態変更部17は、着色対象領域31に対して着色領域33を回転させる。着色状態変更部17は、変形処理部15Bにおいて、設定した三角形パッチ41の周縁33a上の頂点42と、対応パッチ網50の周縁50a上の対応点52との対応関係を、ユーザから入力される回転角情報に基づいて変更することで、着色対象領域31に対して着色領域33を回転させる。
【0033】
図6は、表示部18が表示する作業ウィンドウの一例を示す模式図である。図6に示すように作業ウィンドウ60は、着色作業のために着色対象図面30や着色画像32等の作業対象を表示する作業対象表示領域61と、作業のための領域指定ツールやブラシ等の各種ツールを選択するためのツール選択領域62と、作業ウィンドウ60上部のメニューバーの機能を利用して記憶部12から選択した着色対象図面30や着色画像32等の一覧を表示すると共に、それらを適宜アクティブにするために選択可能な作業対象選択領域63と、着色状態を変更するための状態変更指示領域64と、アクティブな作業対象をサムネイル表示するためのサムネイル領域65と、を有する。作業対象選択領域63は、着色対象図面30や着色画像32等の記憶部12からの選択機能を有してもよい。また、サムネイル領域65は、ブラシ機能などを一覧表示すると共に、選択可能な表示画面に切り替えることも可能となっている。
【0034】
ユーザは、作業対象選択領域63を利用して作業対象としての着色対象図面30等を選択すると、選択された図面又は画像が作業対象表示領域61に表示され、アクティブ状態となる。これにより、作業対象表示領域61に表示された着色対象図面30や着色画像32に領域指定等のためのツールを利用してユーザは、領域指定などが実施可能となっている。また、状態変更指示領域64に示された回転角を変更するための回転角指定部などを利用して着色状態を変更するための回転角の入力等が可能となっている。図6では、一つの作業ウィンドウに上記領域が表示されているとしたが、機能選択メニュー等により、適宜別ウィンドウやツールバーを表示するようにしてもよい。
【0035】
図7は、図1に示した着色図面作成装置の一実施形態のハードウェアの構成を示すブロック図である。着色図面作成装置10は、いわゆるコンピュータ装置であり、物理的な構成要素として、マウスやキーボードといった入力デバイスを有する入力部11、各種データやアプリケーションソフトを記憶する記憶部12及びディスプレイといった表示部18と共に、処理結果を出力するプリンタ19、論理演算を処理するCPU20、論理演算に必要なデータやプログラム等を一時的に記憶するRAM21、論理演算を実行するためのプログラム等を記憶するROM22、CD−ROMやDVDといった各種コンピュータ読取り可能記録媒体を読み取る記録媒体読取り部23及びデータの通信機能を有する通信部24を備えている。これらの各構成要素は、送受信用のバス25で接続されており、データの送受信が行われるようになっている。また、各種図面データや画像データは、記録媒体読取り部23又は通信部24を利用して着色図面作成装置10に入力可能となっている。図1を利用して説明した着色図面作成装置10の各機能は、コンピュータにアプリケーションソフトとしてインストールされた着色図面作成プログラム80を作動させて実現される。
【0036】
次に、図8を参照して、着色図面作成装置10を利用した着色図面の作成方法について説明する。図8は、着色図面作成装置10における着色図面作成方法のフローチャートを示す図面である。
【0037】
まず、着色図面作成装置10は、着色対象図面30に着色対象領域31を設定する着色対象領域設定ステップS10として、着色対象図面の表示ステップS11、領域分割ステップS12及び領域選択ステップS13を実施する。具体的には、ユーザによる着色対象図面30の選択指示に基づいて、着色対象領域設定部13が、記憶部12に格納されている図面データから、選択された着色対象図面30を選択し、表示部18に表示する(表示ステップS11)。次いで、着色対象領域設定部13は、着色対象図面30に対するユーザからの領域指定の指示に基づいて、指定された領域を閉領域に分割する(領域分割ステップS12)。更に、着色対象領域設定部13は、ユーザからの閉領域の選択指示に基づいて、指定された閉領域を選択して、着色対象領域31として設定する(領域選択ステップS13)。
【0038】
次に、着色図面作成装置10は、着色画像32に着色領域33を設定する着色領域設定ステップS20として、着色画像32の表示ステップS21、領域分割ステップS22及び領域選択ステップS23を実施する。具体的には、着色領域設定部14が、ユーザによる着色画像32の選択を受け付けると、記憶部12に格納されている画像データに基づいて、着色画像32を表示部18に表示する(表示ステップS21)。着色領域設定部14が、ユーザからの領域指定の指示に基づいて、指定された領域を閉領域に分割する(領域分割ステップS22)。次いで、着色領域設定部14は、ユーザからの閉領域の選択指示に基づいて、指定された閉領域を選択して、着色領域33として設定する(領域選択ステップS23)。
【0039】
着色領域設定部14が着色領域33を設定すると、着色図面作成装置10は、領域変形ステップS30として、パッチ網生成ステップS31及び変形処理ステップS32を実施する。具体的には、領域変形部S15が、着色領域33に対してパッチ網40を生成すると共に、三角形パッチ41の頂点42に対応する対応点52を着色対象領域31に設定し、対応パッチ網50を形成する(パッチ網生成ステップS31)。次いで、領域変形部14は、ワーピング処理により、着色領域33の形状を、着色対象領域31の形状に変形する(変形処理ステップS32)。
【0040】
続いて、着色図面作成装置10は、着色処理ステップS40を実施する。すなわち、着色処理部16が、変形された着色領域33の各パッチにテクスチャを貼り付けて、貼付画像とした後、その貼付画像を着色対象領域31に貼り付けることで、着色対象領域31を着色する。この際、着色処理部16は、着色対象領域31の境界近傍において、ぼかし処理などを実施してもよい。
【0041】
その後、着色図面作成装置10は、着色状態変更部17が、ユーザからの回転角の入力を受け付けると(S50でYES)、着色状態変更ステップS51を実施する。すなわち、着色状態変更部17が、着色領域33の周縁33a上の頂点42と、それに対応する着色対象領域31の周縁31a上の対応点52との対応関係を、入力された回転角に応じて変更する。変更後、変形処理ステップS32に戻り、着色を実施する。図8に示すように、着色処理ステップS40の後に、ユーザからの回転角の入力を受け付けなければ(S50でNO)、着色作業を終了する。
【0042】
本実施形態の着色図面作成装置10を用いた図面の着色方法では、ユーザが、着色対象図面30中に、任意の閉領域を着色対象領域31として設定することができると共に、着色画像32から着色対象領域31の着色に使用したい所望の領域を着色領域33として任意に設定することができる。そして、上記2つの領域を設定すると、着色図面作成装置10は、着色領域33の形状を着色対象領域31の形状に自動的に変形し、テクスチャマッピングにより得られた貼付画像が着色対象領域31に貼りつけられる。
【0043】
このように、ユーザが着色対象領域31及び着色領域33を選択することで、自動的に、任意形状の着色領域33を変形して任意形状の着色対象領域31に着色できるので、着色対象図面30の着色に要する時間を短縮することができる。また、着色領域33を着色対象領域31の形状に自動的に変形するため、着色画像32から所望の色調や質感の領域を任意に選択する可能である。その結果、着色図面を所望の色調や質感を有したものに短時間で仕上げやすい。
【0044】
更に、例えば画家等に予め依頼して作成したもらった着色済みの画像を着色画像32として使用することで、画家等が使用している色使いなどを着色対象図面30の着色に適用することができる。そのため、ユーザ自身で新たに色使いなどを考慮して着色図面34を作成するよりも作業時間を大幅に短縮可能である。
【0045】
例えば、都市計画や、新築住宅又は住宅の改修の場合などの完成予想図などでは、水彩画風の作風を用いる場合がある。この場合、色調や質感などを新たに作り出すのは作業時間を要する一方、完成予想図などの提示を早急に求められることもある。これに対して、着色図面作成装置10では、着色対象領域30及び着色領域33を設定することで、自動的に、着色領域33の色調や質感を有した着色を施せるので、上記完成予想図などの作成作業を大幅に短縮できる。また、所望の色調などを実現できることも前述したとおりである。
【0046】
図9は、着色図面作成装置10による着色の実施例1を説明するための図面である。図9(a)は、着色画像32の一例を示す図面である。この着色画像32は、予め画家に依頼して作成してもらったものである。図9(b)は、着色対象図面30の一例を示す図面である。使用した着色対象図面30では、人物を輪郭線で表している。図9(c)は、図9(a)に使用されている色を利用して、図9(b)の着色対象図面30を着色した着色図面である。図9(a)〜図9(c)に示すように、着色画像32と着色対象図面30との大きさや形状が異なっていても、容易に着色が可能である。また、例えば、図9(b)の人物が持っているバック等に、図9(a)におけるブーツの色合いを適用するなどから理解されるように、着色画像32に含まれている色合いであれば、それらを利用して、着色対象図面30の任意の領域を着色可能である。
【0047】
図10は、着色図面作成装置10による着色の実施例2を説明するための図面である。図10(a)は、着色画像32の一例を示す図面である。この着色画像32は、実施例1の場合と同様に、予め画家に依頼して作成してもらったものである。図10(b)は、着色対象図面30の一例を示す図面である。図10(b)に示すように、車を輪郭線で表している。図10(c)は、図10(a)に使用されている色を利用して、図10(b)の着色対象図面30を着色した後の図面である。実施例1の場合と同様に、実施例2の場合においても、着色画像32と着色対象図面30との大きさや形状が異なっていても、容易に着色が可能である。
【0048】
また、着色図面作成装置10が、図1に示したように、着色状態変更部17を備えている場合には、着色した後に、着色領域33を着色対象領域31に対して回転させることができる。この場合、同じ着色領域33を使用して、異なった着色状態を実現することができる。例えば、着色領域33の周縁33a上にほぼ等間隔で360個のサンプル点42を配置しておけば、対応点52も着色対象領域31の周縁31a上に360個配置されることになる。よって、回転角1度につき、着色領域33の周縁33a上の頂点と、着色対象領域31の周縁33a上の対応点52との対応関係を一つずつずらすことで、一つの着色領域33を利用して360通りの着色状態を実現できる。その結果、着色のための素材の選択の幅が広がり、ユーザは、種々の色合いを容易に実現することができる。
【0049】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。着色状態変更部17は着色領域33を回転させるとした。すなわち、着色状態変更部17は着色領域33を回転させる回転処理部として機能するとして説明した。
【0050】
しかしながら、着色状態変更部17は、上記回転機能に加えて又は回転機能の代わりに、着色領域33を拡大又は縮小する拡縮調整部としての機能を備えるとすることもできる。拡縮調整部は、ユーザの指示に基づいて、領域分割部14Aで分割された閉領域の大きさを拡大及び縮小する。例えば、最初にユーザにより指定された着色領域33の大きさが、着色対象領域31より大きい場合には、着色領域33の変形により、画素を間引く量が多くなる。この場合、例えば、拡縮調整部で、着色領域33を小さくすることで、画素の間引きが抑制されるので、着色画像32における着色領域33の色合いをより反映することができる。なお、着色領域33の色合いをより忠実に反映するために、例えば、着色領域33に等高線を設定しておき、ユーザからの指示に応じて、境界領域として等高線を適宜選択することで、着色領域33の大きさを変更することが可能である。
【0051】
更に、上記実施形態では、二次元平面での着色について説明したが、着色対象領域30に対して任意の曲面情報を加味した三次元的な着色を実施する機能を図面作成装置10に付加することもできる。この三次元的な着色方法について説明する。任意の曲面情報の付加は、着色対象領域30に対して、着色領域33のパッチ網40に対応する対応パッチ網50を形成した後に実施する。
【0052】
図11は、曲面情報を付加した三次元的な着色の原理を説明するための図面である。図11では、説明の便宜上、着色対象領域31内の対応点52を接続する線を、他の線と区別するために一点鎖線で示している。以下、曲面情報を付加した三次元的な着色の方法について説明する。
【0053】
図11に示すように、着色対象領域31に任意形状の曲面90を重ね合わせる。そして、着色対象領域31の周縁31a上の対応点52の座標は維持しておく一方、着色対象領域31の内部の対応点52を曲面90上に投影する。対応点52が曲面90に投影された点を投影点53と称す。これにより、着色対象領域31の内部の対応点52に、指定した任意の曲面90の形状に応じた高さ情報が加えられ、着色対象領域31に形成されたパッチ網50を構成するパッチ51の座標が変換される。そして、着色対象領域31の周縁31a上の対応点52及び任意の曲面形状に投影された投影点53の位置情報に基づいて、着色領域33のワーピング処理を実施する。これにより、周縁31a上の対応点52と投影点53とにより形成されるパッチ網であって、パッチ網50を三次元的に拡張したパッチ網の形状に着色領域33を変形できる。なお、着色対象領域31の周縁31a上の対応点52と、曲面90上の投影点53とを接続する線は、曲面90の形状とは一致しないので、滑らかな曲面となるように曲線計算を適宜実施する。
【0054】
ワーピング処理後の着色処理は、上記実施形態の場合と同様である。すなわち、ワーピング処理により、変形した三角形パッチ41に、元の三角形パッチ41のテクスチャをマッピングし、変形された着色領域33を、着色対象領域31に貼付する貼付画像とする。そして、この貼付画像を着色対象領域31に貼り付けることで、着色対象領域31に三次元的な着色を施す。これにより、着色対象領域31に曲面情報を付加した三次元的な着色が可能となる。
【0055】
図11では、曲面90を、平面を凸状に曲げたものを例示したが、曲面90の形状はこれに限定されず、例えば、球面状のものとすることも可能である。また、三次元的着色に使用する曲面90は、予め複数の曲面形状を用意していてもよいし、適宜、曲面90を表す式などで指定してもよい。
【0056】
図1に示した実施形態では、着色状態変更部17を備えるとして説明したが、着色状態変更部17は必ずしも備えていなくてもよい。
【0057】
また、領域変形部15において、パッチ網40を生成する際に、ドロネー分割を利用したが、パッチへの分割手法はドロネー分割に限らない。また、パッチの形状も三角形に限定されず、多角形のパッチであればよい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、各種図面に着色を施す場合に適用することができるが、例えば、開発・建設計画や、住居などの構造物の完成予想図の作成において、予め用意した輪郭線からなる設計図面に着色する場合に等に好適に適用することができる。また、服飾、玩具及び生活用品のイメージ図の作成や、各種デザインのシミュレーションにも適用することができる。
【符号の説明】
【0059】
10…着色図面作成装置、13…着色対象領域設定部(着色対象領域設定手段)、14…着色領域設定部(着色領域設定手段)、15A…パッチ網生成部、15B…変形処理部、16…着色処理部(着色処理手段)、17…着色状態変更部(着色状態変更手段)、30…着色対象図面、31…着色対象領域、32…着色画像、33…着色領域、33a…周縁、34…着色図面、40…パッチ網、41…三角形パッチ(多角形パッチ)、42…サンプル点,頂点、50…対応パッチ網(パッチ網)、50a…周縁、51…パッチ、52…対応点。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色すべき着色対象領域を着色対象図面に閉領域として設定する着色対象領域設定手段と、
前記着色対象図面の着色に使用する着色領域を着色が施された着色画像に閉領域として設定する着色領域設定手段と、
前記着色領域の形状を前記着色対象領域の形状に変形する領域変形手段と、
変形された前記着色領域に基づいて前記着色対象領域に着色処理を行う着色処理手段と、
を備え、
前記領域変形手段は、
前記着色領域を複数の多角形パッチに分割すると共に、各前記多角形パッチの頂点に対する対応点を前記着色対象領域に配置して前記着色対象領域を複数のパッチに分割し、前記着色領域が有する前記多角形パッチを、対応する前記着色対象領域の前記パッチの形状に変形することによって、前記着色領域の形状を前記着色対象領域の形状に変形する、
ことを特徴とする着色図面作成装置。
【請求項2】
前記着色領域の周縁上の前記多角形パッチの頂点と、前記着色対象領域の周縁上の前記対応点との対応関係を変更することによって、前記着色領域を前記着色対象領域に対して回転させる着色状態変更手段を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の着色図面作成装置。
【請求項3】
着色対象領域設定手段、着色領域設定手段、領域変形手段及び着色処理手段を備える着色図面作成装置において着色図面を作成する方法であって、
前記着色対象領域設定手段が、着色される着色対象図面に、着色対象領域を閉領域として設定するステップと、
前記着色領域設定手段が、着色が施された画像に、前記着色対象図面の着色に使用する着色領域を設定するステップと、
前記領域変形手段が、前記着色領域を複数の多角形パッチに分割すると共に、各前記多角形パッチの頂点に対する対応点を前記着色対象領域に配置して前記着色対象領域を複数のパッチに分割し、前記着色領域が有する前記多角形パッチを、対応する前記着色対象領域の前記パッチの形状に変形することによって、前記着色領域の形状を前記着色対象領域の形状に変形するステップと、
前記着色処理手段が、変形された前記着色領域に基づいて前記着色対象領域を着色するステップと、
を備えることを特徴とする着色図面作成方法。
【請求項4】
前記着色領域の周縁上の前記多角形パッチの頂点と、前記着色対象領域の周縁上の前記対応点との対応関係を変更することによって、前記着色領域を前記着色対象領域に対して回転させるステップを更に備えることを特徴とする請求項1に記載の着色図面作成方法。
【請求項5】
コンピュータを、
着色すべき着色対象領域を着色対象図面に閉領域として設定する着色対象領域設定手段、
前記着色対象図面の着色に使用する着色領域を着色が施された着色画像に閉領域として設定する着色領域設定手段、
前記着色領域の形状を前記着色対象領域の形状に変形する領域変形手段、及び
変形された前記着色領域に基づいて前記着色対象領域に着色処理を行う着色処理手段、
として機能させ、
前記領域変形手段は、
前記着色領域を複数の多角形パッチに分割すると共に、各前記多角形パッチの頂点に対する対応点を前記着色対象領域に配置して前記着色対象領域を複数のパッチに分割し、前記着色領域が有する前記多角形パッチを、対応する前記着色対象領域の前記パッチの形状に変形することによって、前記着色領域の形状を前記着色対象領域の形状に変形する、
ことを特徴とする着色図面作成プログラム。
【請求項6】
前記コンピュータを、前記着色領域の周縁上の前記多角形パッチの頂点と、前記着色対象領域の周縁上の前記対応点との対応関係を変更することによって、前記着色領域を前記着色対象領域に対して回転させる着色状態変更手段として機能せしめることを特徴とする請求項5に記載の着色図面作成プログラム。

【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図11】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−216027(P2011−216027A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−85549(P2010−85549)
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(301069650)株式会社 システムラン (3)
【Fターム(参考)】