説明

石油燃焼器の放電式点火装置

【目的】 燃焼芯の最も着火しやすいポイントを選んで着火するようにした放電式点火装置。
【構成】 上昇した燃焼芯の上部に放電電極をのぞませ、燃焼芯を上動する点火つまみ6の動作の途中から、点火器スイッチ7がオンになり、放電電極から上昇する燃焼芯に向けて放電するようにしたものである。また点火つまみ6に力を加えて燃焼芯の上昇動作中は、燃焼芯の高さが正常燃焼位置より若干高くまで上昇して、燃焼芯は着火の最適ポイントを必ず通過するようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、放電を利用して燃焼芯に点火するようにした石油燃焼器の放電式点火装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】石油燃焼器の点火装置としては、細いフィラメントに、乾電池による電気を流して、フィラメントを赤熱させ、燃焼芯に着火させるものが一般的である。
【0003】乾電池を電源とするものは商品化されていないが、実公昭63−35244号のように、燃焼芯を挾んで点火用の放電電極を設け、放電を利用して燃焼芯に点火する技術は公知である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記従来の技術のうち、後者の乾電池を利用して放電電極を使って燃焼芯に点火するものに関する。乾電池を使うものは、放電による火花が弱い問題点があり、更に燃焼時間が経過すると、燃焼芯の高さが変化したり、へたったり、タールが付着するなどして、燃焼芯表面に微妙な変化が発生するものであり、また、燃焼芯と放電電極との寸法が若干ズレたりすることがあり、放電はしても火花が燃焼芯から離れて全く着火しなかったり、白煙が出るだけで着火し難いという欠点があるために、実用化が遅れているものと推定される。
【0005】放電式の点火装置がスムースに着火するようになれば、消耗度が激しく、変形・断線等の不良の多いフィラメント方式に取って代わるものであり、点火不良による苦情が大幅に減少すると見られ、出願人は放電式の点火装置の実用化に努力しているものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記課題を解決するため、芯内筒1と芯外筒2との間に芯上下軸3の回転によって上下する燃焼芯4を装着し、芯内・外筒1・2の上部に露出した燃焼芯4にのぞませて放電電極5・5aを取付けた石油燃焼器に於て、芯上下軸3を芯上げ方向に回動する点火つまみ6と、該点火つまみ6の作動時に開・閉する点火器スイッチ7とを設け、点火つまみ6は芯下げ位置で点火器スイッチ7を開路とし、かつ芯上げ途中と芯上げ燃焼位置で点火器スイッチ7を閉路とすると共に、点火つまみ6を旧位置方向に付勢する戻しバネ8を点火つまみ6に取付た石油燃焼器の放電式点火装置としたものである。
【0007】また、芯上下軸3に回動自在に取付けた回転板9には、芯上下軸3に連動する係止部9aと、回転板9を芯上げ位置に保持するロック部9bと、ロック部9bに保持した回転板9を芯下げ位置に戻す芯下げバネ10とを取付け、かつ芯上下軸3もしくは回転板9と連係して芯上下軸3の回転ストッパー9cを取付け、点火つまみ6によって芯上下軸3と共に回転する回転板9は、ロック部9bよりも更に回転ストッパー9cまで回転して燃焼芯4を高く上昇させると、燃焼芯4の高さが変化しても、点火操作時に燃焼芯4と放電電極との間の点火最良ポイント幅を広く得ることが出来る。
【0008】
【作用】芯内・外筒1・2に装着した燃焼芯4は、点火つまみ6を押し下げて芯上下軸3を回転させると、芯上下軸3は回転ストッパー9cが当接するまで燃焼芯4を上昇させ、燃焼芯4の上縁は、芯内・外筒1・2の上方へ露出する。そして点火つまみ6の操作で点火器スイッチ7が入となり、二つの放電電極5・5a間の火花放電が芯上昇途中から連続して行われ、燃焼芯4と放電電極5aとの間隙が着火に最適の位置となった時に着火する。
【0009】芯上下軸3は係止部9aによって回転板9と共動し、回転板9は芯下げバネ10を伸ばしながら回転板のロック部9bの係止部よりも更に回転し、燃焼芯4は回転ストッパー9cが当接するまで上動する。
【0010】一方、燃焼芯4に着火したら点火つまみ6から手を離すと、点火つまみ6は戻しバネ8の力で旧位置へ戻ると共に、点火器スイッチ7を開路にして放電を停止する。また回転板9は芯下げバネ10によってロック部9bが係止するまで若干戻り、燃焼芯4は所定燃焼位置に移動して、燃焼を継続する。従って、燃焼芯4は点火操作のたびに燃焼位置を通過した最高位置まで常に上昇するから、燃焼芯4の高さが変化しても確実に着火できるようになった。
【0011】
【実施例】以下、実施例を示す図により構成を説明すると、図1は本発明品要部の正面図、図2は同動作状態を示す正面図、図3は本発明品を装置した石油燃焼器の要部断面図、図4は放電電極部分の要部拡大断面図、図5は放電電極部分の要部平面図で、夫々共通する部品は同一符号で説明する。
【0012】1は芯内筒、2は芯外筒、4は芯内・外筒1・2の間に収容した燃焼芯で、芯内・外筒1・2は下方の油タンク11上に取り付けられている。3は芯上下軸であり、該芯上下軸3の回転操作で燃焼芯4を上下させる。5・5aは燃焼芯4の側面或いは上縁部に対向して設けられた放電電極で、図に示す如く一方の放電電極5(プラス側)は燃焼芯4が正常燃煙位置に上昇せしめた時の芯側面近傍にのぞませ、他方の放電電極5a(マイナス側)は放電電極5の先端と間隙を介して対向せしめ、燃焼芯4を最高位に上昇せしめた時の芯上縁近傍に設けると良い。
【0013】6は芯上下軸3を回転させるレバー3aと係合して上下動する点火つまみ、7は放電電極5・5aへの電気を流す点火スイッチで、点火つまみ6にアーム状のスイッチ作動部6aを付設しておけば、点火つまみ6の上下により点火器スイッチ7を入・切する。この時、点火スイッチ7は芯上動途中から入りとして放電を開始すると、燃焼芯4の高さが変化して放電着火に好適位置で着火する。8は点火つまみ6を点火操作後、旧位置へ強制的に復帰せしめる戻しバネである。
【0014】9は芯上下軸3に嵌合して芯上下軸3を回転中心とする回転板、9aはレバー3aと回転板9とを連動するべく回転板9に設けた係止部、9bは回転板9の一部を切り込みして設けたロック部で、後記する対震装置12の係止軸12aと係合して回転板9の回転を止める。
【0015】9cは芯上下軸3の回転を止める回転ストッパーであり、回転板9に形成する時はロック部9bを構成する切り込みを広幅に形成し、ロック部9bと対向した部分で構成する。勿論、回転板9以外に、例えばレバー3aが当接する位置に形成しても良い。従って、燃焼芯4を上げる動作をした時、ロック部9よりも更に芯上下軸4は回転して燃焼芯4を所定位置より若干高く上昇させることが可能となる。
【0016】10は回転板9に連係させた芯下げバネで、芯上下軸3を回転させるレバー3aを係止部9aを介して芯下げ方向へ強制的に回転させるもので、平常時は係止軸12aがロック部9bに係合して芯下げバネ10の力に抗している。11は燃焼芯4を保持する芯内・外筒1・2を載置する油タンクで、油タンク11内の燃料を燃焼芯4で吸い上げ燃焼に供する。12は地震等の振動を感知する対震装置で、強い振動を感震おもり12bが感知した時、係止軸12aに伝えて回転板9のロック部9bとの係合を外し、芯下げバネ10の力が回転板9にかかって、芯下げ方向に付勢するものである。
【0017】13は点火つまみ6の点火装置と独立して、芯上下操作を行うべく、点火つまみ6の下側に近傍して配された芯上下つまみであり、普通点火操作と芯上下操作は二個のつまみで行う場合、或いは一個のつまみで行う場合とがあるが、実施例の構造は二個のつまみで行うものである。14は芯上下軸3・点火つまみ6・芯上下つまみ13などを組み込んだ芯上下装置の基板、15は基板14に設けたスライド孔で、該スライド孔15にそって点火つまみ6・芯上下つまみ13を上下に案内する。16は芯内・外筒1・2の上部に設けた燃焼筒で、内・外炎筒および外筒なで構成している。
【0018】
【発明の効果】本発明は、以上のような構成・作用を有するもので、燃焼芯4を上げる動作の途中から放電するようにしたので、燃焼芯4の高さの変動や使用摩耗変化等による燃焼芯4の形状変化があっても、燃焼芯4の上昇動作中に放電すれば、一番着火しやすい位置で燃焼芯と放電が合った時に着火するもので、着火確率を高めることが出来、放電式点火の実用性が出て来たものである。
【0019】また、燃焼芯4の正常燃焼位置はほゞ一定であるが、燃焼芯4は使用することにより少しずつ退化するが、本発明の如く点火操作時、燃焼芯4の所定位より高く上昇するようにすれば、着火のしやすい燃焼芯4の上端部が必ず放電範囲に入って来て着火性が良いものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明品要部の正面図である。
【図2】図1に示す実施例の動作状態を示す正面図である。
【図3】本発明品を装置した石油燃焼器の要部断面図である。
【図4】本発明となる放電電極部分の要部拡大断面図である。
【図5】本発明となる放電電極部分の要部平面図である。
【符号の説明】
1 芯内筒
2 芯外筒
3 芯上下軸
4 燃焼芯
5 放電電極
5a 放電電極
6 点火つまみ
7 点火器スイッチ
8 戻しバネ
9 回転板
9a 係止部
9b ロック部
9c 回転ストッパー
10 芯下げバネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 芯内筒1と芯外筒2との間に芯上下軸3の回転によって上下する燃焼芯4を装着し、芯内・外筒1・2の上部に露出した燃焼芯4にのぞませて放電電極5・5aを取付けた石油燃焼器に於て、芯上下軸3を芯上げ方向に回動する点火つまみ6と、該点火つまみ6の作動時に開・閉する点火器スイッチ7とを設け、点火つまみ6は芯下げ位置で点火器スイッチ7を開路とし、かつ芯上げ途中と芯上げ燃焼位置で点火器スイッチ7を閉路とすると共に、点火つまみ6を旧位置方向に付勢する戻しバネ8を点火つまみ6に取付けた石油燃焼器の放電式点火装置。
【請求項2】 芯上下軸3に回動自在に取付けた回転板9には、芯上下軸3に連動する係止部9aと、回転板9を芯上げ位置に保持するロック部9bと、ロック部9bに保持した回転板9を芯下げ位置に戻す芯下げバネ10とを取付け、かつ芯上下軸3もしくは回転板9と連係して芯上下軸3の回転ストッパー9cを取付け、点火つまみ6によって芯上下軸3と共に回転する回転板9は、ロック部9bよりも更に回転ストッパー9cまで回転して燃焼芯4を高く上昇させる請求項1記載の石油燃焼器の放電式点火装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開平6−241449
【公開日】平成6年(1994)8月30日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−34343
【出願日】平成5年(1993)1月29日
【出願人】(000003229)株式会社トヨトミ (124)