説明

石炭の粉砕助剤及びその使用方法

【課題】石炭の粉砕効率を大幅に向上させることができ、微粉炭燃焼ボイラーの燃焼効率のさらなる改善に寄与することができる石炭の粉砕助剤と、このような粉砕助剤の使用方法を提供すること。
【解決手段】平均粒径が4nm〜20μmの微細なシリカ(SiO)を含有する粉砕助剤、望ましくは、平均粒径が4〜200nmのシリカを質量比で1〜50%含有するコロイダルシリカ、さらにはこれにLi化合物などを添加したコロイダルシリカを粉砕助剤として使用し、石炭の粉砕に際して、SiO換算で0.1〜2.0%の質量比となるように添加して粉砕する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粉炭燃焼ボイラーに供給される石炭の微粉砕技術に係り、石炭の粉砕性を高め、ボイラーに供給される石炭粉の微粉度を向上させ、もってボイラーの燃焼効率を改善することができる石炭の粉砕助剤と、このような粉砕助剤の使用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
石炭は、埋蔵量が多く安定した供給が見込めることから、今や火力発電の主軸燃料となっている。
現在、石炭火力発電設備のほとんどは微粉炭燃焼ボイラーとなっている。この微粉炭燃焼ボイラーでは、塊状の石炭を微粉に粉砕して高温のボイラー内に噴射することによって燃焼させており、負荷対応性がよく燃焼効率が高く、幅広い石炭種に対応できることから石炭ボイラーの主流となっている。
【0003】
しかし、石炭は、灰分が多く、硫黄分などを含んでいるため、NOx抑制対策や排煙処理などの環境対策が必要となってくる。このような環境対策は、石炭の取扱性や粉砕性の面から改善していかなければならない。
【0004】
上記した微粉炭燃焼ボイラーは、通常、直径数センチの石炭を微粉末に粉砕するための微粉炭機を備えており、この微粉炭機により粉砕された石炭は、200メッシュ(目開き75μm)を通過する微粉末の含有率が80%程度のものとなる。
微粉炭燃焼ボイラーでは、微粉炭の粒子径が燃焼状態に大きな影響を与え、一般に、粒子径が小さいほど燃えきりが速くなり、NOx発生量や未燃分が減少することが知られている。
【0005】
そこで従来、石炭の粉砕効率を向上させ、微粉末の割合を増すための粉砕助剤として、カーボンブラック、あるいはパルミチン酸やステアリン酸などの高級脂肪酸やこれらの金属塩を粉砕に際して石炭に添加・混合することが提案されている(特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特開平1−127057号公報
【特許文献2】特開平1−127058号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した従来の粉砕助剤では、いずれもその粉砕効率が必ずしも十分なものとは言えず、石炭をさらに微粉化し、微粉炭燃焼ボイラーの燃焼効率をさらに高め、NOx発生量や未燃分をさらに減少させるためには、粉砕効率をより一層向上させることのできる助剤の開発が望まれていた。
【0007】
本発明は、従来の石炭微粉砕技術における上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、石炭の粉砕効率を従来に増して大幅に向上させることができ、微粉炭燃焼ボイラーの燃焼効率のさらなる改善に寄与することができる石炭の粉砕助剤と、このような粉砕助剤の使用方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的の達成に向けて鋭意検討を重ねた結果、平均粒径が4nm〜20μmのシリカに石炭の粉砕効率向上効果があることを見出し、さらに石炭に均一に微粒子シリカを添加し有効な効果を得るためには、水の分散液が優れていることを見出した。そしてこのシリカの水分散液の中でも、特に平均粒径が4〜200nmのシリカ(SiO)粒子を含むコロイダルシリカに優れた石炭の粉砕効率向上効果を見出し、本発明を完成するに到った。
【0009】
すなわち、本発明は上記知見に基づくものであって、本発明の石炭粉砕助剤は、粒径が100mm以下の石炭の粉砕に用いる粉砕助剤であり、平均粒径が4nm〜20μmの粉体のシリカであることを特徴とする。また、同様の石炭に用いる粉砕助剤であって、平均粒径が4〜200nmのシリカを含有する水分散液、好ましくは当該シリカを1〜50%含むコロイダルシリカであることを特徴とする。
さらに、本発明の粉砕助剤の使用方法においては、上記粉砕助剤を石炭に添加するに際して、当該助剤を石炭に対して、SiO換算で0.1〜2.0%の質量比となるように添加することを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の石炭の粉砕助剤は、例えばコロイダルシリカのように、極めて微粉のシリカを含有するものであるから、これを石炭に添加・混合することによって石炭の粉砕効率を向上させることができ、このような微粉砕石炭を用いた微粉炭燃焼ボイラーの燃焼効率を改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明の石炭の粉砕助剤と、当該粉砕助剤の使用方法について、さらに詳細、かつ具体的に説明する。
なお、本明細書において「%」は、特記しない限り、質量百分率を意味するものとする。
【0012】
上記したように、微粉炭燃焼ボイラーは、塊状の石炭を微粉に粉砕して、高温のボイラー内に噴射し燃焼しており、負荷対応性がよく燃焼効率が高いことから現在の石炭ボイラーの主流となっている。
バンカにはサイロ又はヤードから小石程度の大きさの石炭が運ばれて貯蓄されており、この石炭は、バンカから給炭機に送られて計量され、一定量をボイラー付属の微粉炭機(ミル)に送っている。
【0013】
微粉炭機として一般的な竪型ミルでは、回転するテーブル上に石炭が供給され、粉砕ローラとの間に噛みこまれて粉砕される。粉砕された石炭は、微粉炭バーナへ1次空気によって圧送される。燃焼は微粉炭燃焼であり、高温場に微粉末が噴射され、周囲の輻射熱で粒子が燃焼する。
微粉度が向上した石炭、すなわち微粉末の含有量が増加した石炭の微粉炭燃焼では、空気(O)との反応が活発になり、燃焼効率が向上する。そして、燃焼効率の向上によりボイラー出口Oは減少し、フライアッシュ中の未燃分も減少するという燃焼促進効果が得られる。
【0014】
また、微粉度の向上により、チャーの燃え切りが速くなり、これによって火炉の還元性雰囲気が緩和され、還元雰囲気に起こる見かけ上のクリンカ(石炭灰)融点低下が抑制される。
このような燃焼場の雰囲気の変化は、火炉壁に付着しているクリンカに対し、負荷変動や炭種変更(クリーニングコール)に類似した影響を与え、物理的なクリンカ剥離作用をもたらす。
【0015】
これに加えて、本発明の粉砕助剤を使用することによって、石炭中のSiO量が増加する。これによって、石炭のシリカパーセントが上昇し、スラッギングの指標であるB/A比(塩基度)が低下するため、クリンカ性の低い石炭灰に改質される。
B:Base アルカリ性成分(Fe+CaO+MgO+NaO+KO)
A:Acid 酸性成分(SiO+Al+TiO
【0016】
本発明においては、塊状の石炭を微粉に粉砕するに際して、4nm〜20μmの平均粒径を有するシリカを粉砕助剤として使用するようにしている。このような粉砕助剤を用いて粉砕された石炭は微粉度が向上し、このような微粉炭を燃焼するボイラーにおいては、上記したように燃焼効率の向上、未燃分の減少といった効果がもたらされ、さらにはクリンカ剥離作用という効果をも得ることができる。
【0017】
本発明において、シリカ微粒子は、塊状石炭の表面に付着することにより、わずかな凹凸となって、防滑作用を発揮する。石炭は、油分を含んでいるため、粉砕時の抵抗が小さくなり、粉砕しにくいが、シリカによって抵抗が生まれて粉砕され易いようになる。
石炭がより微粉末に粉砕されることによって、微粉炭機の抵抗値や振動が低下する。
【0018】
上記シリカ粒子の添加方法としては、特に限定はなく、例えば、粒子状態のまま、単独であるいは他の粒子(例えば石炭粉や、従来公知の助剤など)と混合した状態で、粉砕前の石炭に混合したり、粉砕中に添加したりすることができる。また、水やその他の溶媒中に分散させた状態で、予め石炭に噴霧しておいたり、微粉炭機への搬送路の途中で噴霧したりすることができる。
【0019】
本発明の粉砕助剤に用いるシリカ粒子のサイズとしては、4nm〜20μmの範囲とする。すなわち、平均粒径が4nmに満たない粒子は、得ることが困難である一方、20μmを超えると、粒子が粗過ぎて、粉砕に対する抵抗が増すことがある。
なお、本発明において、シリカ粒子のサイズ(粒径)とは、レーザー回折散乱法によって測定した有効径を意味するものとする。
【0020】
本発明の粉砕助剤においては、シリカ(SiO)粒子としてさらに微粉のコロイダルシリカを利用することができ、平均粒径が4〜200nmのシリカを質量比で1〜50%含むコロイダルシリカをそのまま粉砕助剤として使用することが可能である。
コロイダルシリカは、微粒子であるため、乾燥した後の石炭に定着しやすい。また、濃度が高くなれば、粒子数も多くなり、防滑作用に優れる。
【0021】
なお、コロイダルシリカに含まれるシリカ粒子は極めて微細であることから、平均粒径の上限を200nmとしたが、粒子数が多くなるので、細かい方が望ましいことになる。
また、コロイダルシリカのシリカ粒子濃度については、低いと目的のシリカ量を付与するためのコロイダルシリカとしての添加量を多くする必要が生じ、石炭中に移行する水分が多くなって、乾燥に要する時間やエネルギーが無駄になるため、1%以上とする。一方、上限値の50%は、コロイダルシリカ製造上の限界値に近い。
【0022】
本発明の粉砕助剤においては、Na及びKの一方又は両方をNaOとKOの合計量として質量比で0.01〜1%含有していることが望ましい。
これらアルカリ金属は、高濃度のコロイダルシリカにおけるシリカ粒子の安定分散に寄与すると共に、シリカ微粒子とともに炉内に燃焼されることで、シリカ微粒子のクリンカ抑制作用を向上させる効果も期待することができる。しかし、助剤中の含有量が0.1%に満たない場合は、添加の効果が十分に認められず、逆に1%を超えると、却ってクリンカ付着量を増加させる原因となることがある。
【0023】
一般に、コロイダルシリカには、0.3%程度のNaが製造上の不純物として含まれており、これがシリカ粒子の分散性の向上に寄与しているが、この効果をさらに確実なものとするために、あるいはクリンカ抑制作用を向上させるために、NaやKを上記上限値を超えない範囲で添加することができる。
なお、コロイダルシリカによる防滑作用、すなわち石炭の粉砕性向上作用に対するアルカリ金属の影響はほとんどないことが確認されており、仮にNaを含有しないコロイダルシリカを用いたとしても、粉砕助剤として同等の性能を示すものと考えられる。
【0024】
また、Liを添加することによっても、上記NaやKと同様の効果を得ることができ、同様に、LiOとして0.01〜1%の範囲で添加することができる。なお、LiはNaに較べて、若干少量で安定化効果を得ることができる。
なお、これらアルカリ金属、Li,Na,Kaは、炭酸塩や水酸化物、ケイ酸塩の形態で添加することができる。
【0025】
本発明の粉砕助剤を使用するに際しては、当該助剤をこれに含まれるSiO換算で、石炭に対して0.1〜2.0%となるように添加することが望ましい。
すなわち、石炭に対するSiOの添加率が0.1%に満たない場合には、粉砕助剤添加による粉砕効率向上効果がほとんど発揮されず、逆に2.0%を超えて添加したとしても、効果が飽和し、それ以上の効率向上効果が得られなくなることによる。
【0026】
本発明の粉砕助剤を使用することによって、石炭の微粉化が促進されることに加えて、石炭灰中のSiOの増加による付随的効果として、クリンカ剥離作用が得られることについては、先に述べたとおりである。
図1は、蒸発量600トン/h、石炭使用量60トン/hの微粉炭燃焼ボイラーにおいて、使用された石炭の性状とボイラー内のクリンカ付着状況をベテラン作業員の目視観察によって調査した結果を図示したものである。
【0027】
すなわち、横軸に石炭中のSiOパーセント、縦軸にFe及びCaOの合計含有量(ppm)を取って、クリンカ付着量の多い場合を「▲」、少ない場合を「●」としてプロットしたところ、石炭中の(Fe+CaO)が8000から12000ppmの間を境にしてクリンカ付着の大小が分かれ、8000ppm以上の石炭はスラッギング性の強い粗悪な石炭であると評価できることが分かった。
なお、石炭中のCaO及びFe含有量は、次の式によって求めたものである。
CaO(ppm)=石炭灰分(%)×灰分中のCaO(%)×100
Fe(ppm)=石炭灰分(%)×灰分中のFe(%)×100
また、横軸のシリカパーセントは、石炭灰分中のSiO、Fe、CaO及びMgOの合計含有量に対するSiO含有量の百分率である。
シリカパーセント:SiO×100÷(SiO+Fe+CaO+MgO)
【0028】
このようなクリンカ付着が顕著な石炭、すなわちCaOとFeの合計含有量が8000ppm以上である石炭に対しては、本発明の粉砕助剤の添加量を増し、SiO換算で0.4〜2.0%となるように添加することが効果的であって、これにより粉砕効率が向上に加えて、スラッギング性の強い粗悪な石炭においても、クリンカ付着の防止、低減が可能になることが見出された。
【実施例】
【0029】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。なお、本発明がこれらの実施例のみに限定されないことは言うまでもない。
【0030】
(実施例1:粉砕助剤1)
1〜4mmのサイズにふるい分けした豪州炭に、平均粒径10μmのシリカ粉を2%混合したのち、振動ミル及び擂潰機によってそれぞれ粉砕した。粉砕後、微粉炭となった試料を取り出し、ふるいによって粒度分布を測定した。その結果を振動ミルについては表1及び図2に、擂潰機については表2及び図3にそれぞれ示す。
なお、振動ミル及び擂潰機による粉砕所要時間はそれぞれ1分間及び10分間とした。
【0031】
(実施例2:粉砕助剤2)
上記のようにふるい分けした豪州炭に、平均粒径10μmのシリカを含む水分散液を、SiO換算で2.0%となるように混合したのち、振動ミル及び擂潰機を用いて同様に粉砕し、得られた微粉炭の粒度分布を同様の方法により測定した。その結果を表1及び表2、図2及び図3に併せて示す。
【0032】
(実施例3:粉砕助剤3)
上記のようにふるい分けした豪州炭に、平均粒径18nmのシリカを40%含有すると共に、ナトリウムをNaOとして0.3%含むコロイダルシリカをSiO換算で0.4%となるようにまんべんなく噴霧し、105℃で乾燥させた。これを、振動ミル及び擂潰機を用いて同様に粉砕し、得られた微粉炭の粒度分布を同様の方法により測定した。その結果を表1及び表2、図2及び図3に併せて示す。
【0033】
(実施例4:粉砕助剤4)
平均粒径18nmのシリカを40%含有し、ナトリウムをNaOとして0.3%含むコロイダルシリカに、リチウムをLiOとして0.3%となるように添加することによって当該実施例に用いる粉砕助剤を得た。
そして、このように調整したLi含有コロイダルシリカをSiO換算で0.4%となるように上記豪州炭にまんべんなく噴霧し、105℃で乾燥させた。これを、振動ミル及び擂潰機を用いて同様に粉砕し、得られた微粉炭の粒度分布を同様に測定した。その結果を表1及び表2、図2及び図3に併せて示す。
【0034】
(実施例5:粉砕助剤5)
平均粒径18nmのシリカを40%含有し、ナトリウムをNaOとして0.3%含むコロイダルシリカに、カリウムをKOとして0.5%となるように添加し、当該実施例に用いる粉砕助剤とした。
そして、このように調整したKa含有コロイダルシリカをSiO換算で0.4%となるように上記豪州炭にまんべんなく噴霧し、同様に105℃で乾燥させた。これを、振動ミル及び擂潰機により同様に粉砕し、得られた微粉炭の粒度分布を同様の方法によって測定した。その結果を表1及び表2、図2及び図3に併せて示す。
【0035】
(比較例1)
1〜4mmにふるい分けした上記豪州炭に何も処理することなく、そのまま振動ミル及び擂潰機を用いて同様の方法で粉砕し、粉砕後の微粉炭の粒度分布を同様に測定した。その結果を表1及び表2、図2及び図3に併せて示す。
【0036】
(比較例2)
ふるい分けした上記豪州炭に、平均粒径0.1mm程度の7号珪砂を1%混合したのち、振動ミル及び擂潰機によってそれぞれ同様に粉砕し、粉砕後の微粉炭の粒度分布を同様に測定した。その結果を表1及び表2、図2及び図3に併せて示す。
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

【0039】
表1及び図2から明らかなように、振動ミルによる粉砕では、いずれも75μm以下の微粉末が90%近くを占めている。しかし、微粉シリカ、シリカの水分散液、コロイダルシリカ、さらにこれにLiやKを添加したものを助剤として用いた本発明の実施例1〜5においては、何らの処理を施すことなく粉砕した比較例1や、粗粒の珪砂を用いた比較例2と比較して45μm以下の微粉末が大幅に多くなっていることが確認された。そして、この中でも、シリカは粉末で使用するよりも、水分散液やコロイダルシリカの形態の方が、粉砕助剤として優れた結果が得られることが確認された。
【0040】
また、表2及び図3に示した擂潰機による粉砕結果では、振動ミルに較べて粉砕能力が劣っているが、シリカ粉やシリカの水分散液、コロイダルシリカを用いた本発明の実施例1〜5においては、75μm以下の微粉末が70%を超え、150μm以下の微粉末が約90%を占めていた。そして、この中でもシリカは粉末のものよりも、水分散液やコロイダルシリカが良好な結果が得られていた。これに対し上記比較例1,2においては、それぞれ約50%、60%程度の占有率に留まった。
【0041】
(実施例6:粉砕助剤6)
平均粒径10nmのシリカを20%含有し、ナトリウムをNaOとして0.3%含むコロイダルシリカに、リチウムをLiOとして0.3%となるように添加することによって当該実施例に用いる粉砕助剤を得た。
そして、このLi含有コロイダルシリカを1〜4mmのサイズにふるい分けした豪州炭に、SiO換算で0.4%となるようにまんべんなく噴霧し、105℃で乾燥させた。これを、擂潰機を用いて同様に粉砕し、得られた微粉炭の粒度分布を同様に測定した。その結果を表3及び図4に示す。なお、これらの表及び図には、比較のため上記実施例3(粉砕助剤3:シリカ粒径18nm)及び比較例1,2のデータも合わせて示した。
【0042】
(実施例7:粉砕助剤7)
平均粒径が50nmのシリカを40%含有するコロイダルシリカを使用したことを除いて、上記実施例6と同様の操作を繰り返すことによって得られた微粉炭の粒度分布を同様に測定した。その結果を表3及び図4に併せて示す。
【0043】
(実施例8:粉砕助剤8)
平均粒径が100nmのシリカを40%含有するコロイダルシリカを使用したことを除いて、上記実施例6と同様の操作を繰り返すことによって得られた微粉炭の粒度分布を同様に測定した。その結果を表3及び図4に併せて示す。
【0044】
【表3】

【0045】
その結果、シリカの平均粒径が粗くなると、微粉の占有率が僅かに低くなる傾向がなくはないものの、助剤を用いない比較例1や粗粒の珪砂を用いた比較例2と較べて、大幅に微粉度が向上していることが確認された。
【0046】
(実施例9)
粉砕助剤を用いることなく稼働中の微粉炭燃焼ボイラーの微粉炭機に本発明の粉砕助剤を石炭と共に投入し、投入時間帯における微粉炭機の電流値及び振動幅の測定データから、微粉炭機に与える粉砕助剤の影響について調査した。
すなわち、蒸発量70トン/h、石炭使用量6.5トン/hの微粉炭燃焼ボイラーの微粉炭機に、実施例3と同様のコロイダルシリカ(粉砕助剤3:シリカ平均粒径18nm、シリカ含有量40%、NaO換算含有量0.3%)を石炭と一緒に投入した。この時のコロイダルシリカの投入量は石炭に対するSiO換算質量比で0.4%となるようにした。
【0047】
その結果、上記粉砕助剤の投入時間帯においては、微粉炭機の電流値が投入前の21Aから20.5Aに低下すると共に、微粉炭機の振動幅も29μmから25μmに低減し、本発明の粉砕助剤の添加によって微粉炭機運転時の負荷が軽減されることが確認された。
なお、微粉炭機による粉砕後の石炭粉の微粉度については、粉砕助剤の投入時間帯には、45μmの目開き通過微粉の割合が投入前の42%から60%に増加していることが確認された。
【0048】
(実施例10)
粉砕助剤を用いることなく稼働中の微粉炭燃焼ボイラーの微粉炭機に本発明の粉砕助剤を石炭と共に投入し、投入前後におけるボイラーの出口酸素濃度を測定し、ボイラーの燃焼状況に与える粉砕助剤の影響を調査した。
すなわち、蒸発量600トン/h、石炭使用量60トン/hの微粉炭燃焼ボイラーの微粉炭機に、石炭と共に、実施例3と同様のコロイダルシリカ(粉砕助剤3)を粉砕助剤として同様のSiO比となるように添加した。
【0049】
その結果、上記粉砕助剤の投入と共に、ボイラー出口の酸素濃度が3.0%から1.2%に減少した。そして、当該ボイラーにおいては、出口酸素濃度が3.0%となるようにシステム制御されている関係上、時間の経過と共に3.0%に上昇したが、粉砕助剤の投入を停止すると出口酸素濃度は4.0%付近まで上昇した。
このとき、粉砕後の石粉炭については、45μmの目開き通過微粉の割合が投入前の55%から、粉砕助剤の投入によって68%に増加しており、本発明の粉砕助剤によって微粉度が向上し、これによって微粉炭燃焼が促進され、酸素が多く消費されたものと考えられる。
【0050】
なお、比較のため、上記コロイダルシリカと同量の水を石炭と共に投入して同様の調査を実施したが、粉砕後の石粉炭の粒度構成や、ボイラー出口の酸素濃度には何らの変化も認められなかった。
【0051】
(実施例11)
蒸発量600トン/h、石炭使用量60トン/hの微粉炭燃焼ボイラーに付属する微粉炭機によって、上記した粉砕助剤3及び4をそれぞれ使用し、CaO及びFeの合計含有量がそれぞれ6000ppm、8000ppm、12000ppm、16000ppmである4種類の石炭を粉砕し、これらと同量の水のみを添加して粉砕した場合の微粉度と比較調査した。粉砕後の石炭粉の微粉度を45μmの目開きを通過した微粉の割合として、その結果を表4に示す。
【0052】
なお、この時のコロイダルシリカの添加量は、石炭に対してそれぞれ1%であって、SiO換算質量比では0.4%となる。
【0053】
【表4】

【0054】
表4の結果から、いずれの石炭粉においても、粉砕助剤を用いない場合(水のみ)に較べて、本発明の粉砕助剤3,4を使用することにより、微粉度が向上していることが確認された。
【0055】
次に、上記した各石炭を粉砕助剤を用いることなく稼働中の上記微粉炭燃焼ボイラーに、各粉砕助剤により粉砕した各石炭粉を投入して燃焼させ、粉砕助剤によるボイラー火炉内のクリンカ付着状況の変化をベテラン作業員の目視検査によって調査した。この結果を表5に示す。
【0056】
【表5】

【0057】
表5に示すように、本発明の粉砕助剤を使用することによって、粉砕助剤を用いない場合に較べて、クリンカの付着量が減少すること、とりわけクリンカの付着が顕著なCaO及びFe含有量の多い石炭において、粉砕助剤による低減効果が得られることが確認された。
すなわち、CaOとFeの合計含有量が6000ppmの石炭では、先に示したように(図1参照)、スラッギング性が低いことから、本発明の粉砕助剤を使用したとしても、使用前と較べてクリンカの付着状況は、さほど変化が認められなかった。
【0058】
これに対して、8000ppmのCaO+Fe含有量の石炭においては、クリンカの付着が認められ、特に12000ppm以上のCaO+Feを含む石炭では、炉内にクリンカが多く付着し、16000ppm以上になると、肥大化したクリンカが付着していた。
このような石炭に対し、粉砕助剤を使用したところ、粉砕性向上の効果により、CaO+Feが8000ppmの石炭では、クリンカの付着量が減少し、スラッギングが抑制されていた。また、炉内のクリンカ付着量が多かったCaO+Feが12000ppmの石炭燃焼時では、炉内全体のクリンカ付着量の減少が確認された。肥大化したクリンカの付着が認められたCaO+Feが16000ppmの石炭では、粉砕助剤の使用によって、肥大化したクリンカの表面からこぶし大の塊が徐々に剥離してクリンカが小さくなっていく様子が確認された。
【0059】
また、コロイダルシリカにLiを加えた粉砕助剤においては、コロイダルシリカのみの粉砕助剤と同様にクリンカ抑制作用を有しており、さらに、クリンカ剥離効果を助長する作用が観察された。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】ボイラー内のクリンカ付着量に及ぼすFe+CaO含有量の影響を示すグラフである。
【図2】本発明による粉砕助剤1〜5を用いて振動ミルにより粉砕した石炭の粒度分布を助剤を使用しない場合、粗粒珪砂を使用した場合と比較して示すグラフである。
【図3】本発明による粉砕助剤1〜5を用いて擂潰機により粉砕した石炭の粒度分布を助剤を使用しない場合、粗粒珪砂を使用した場合と比較して示すグラフである。
【図4】本発明による粉砕助剤4、6〜8を用いて擂潰機により粉砕した石炭の粒度分布を助剤を使用しない場合、粗粒珪砂を使用した場合と比較して示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒径が100mm以下の石炭の粉砕に用いる粉体の粉砕助剤であって、平均粒径が4nm〜20μmの粉体のシリカであることを特徴とする石炭の粉砕助剤。
【請求項2】
粒径が100mm以下の石炭の粉砕に用いる粉砕助剤であって、平均粒径が4nm〜20μmのシリカを含有する水分散液であることを特徴とする石炭の粉砕助剤。
【請求項3】
粒径が100mm以下の石炭の粉砕に用いる粉砕助剤であって、平均粒径が4〜200nmのシリカを質量比で1〜50%含むコロイダルシリカであることを特徴とする石炭の粉砕助剤。
【請求項4】
Na及び/又はKをNaO及びKOの合計質量比で0.01〜1%含有することを特徴とする請求項2又は3に記載の粉砕助剤。
【請求項5】
LiをLiOとして質量比で0.01〜1%含有することを特徴とする請求項2〜4のいずれか1つの項に記載の粉砕助剤。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つの項に記載の粉砕助剤を石炭に添加するに際し、当該助剤を石炭に対して、SiO換算で0.1〜2.0%の質量比となるように添加することを特徴とする粉砕助剤の使用方法。
【請求項7】
石炭中のCaO及びFeの合計含有量が8000ppm以上である場合に、上記粉砕助剤を石炭に対して、SiO換算で0.4〜2.0%の質量比となるように添加することを特徴とする請求項6に記載の粉砕助剤の使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−137118(P2010−137118A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−312902(P2008−312902)
【出願日】平成20年12月9日(2008.12.9)
【出願人】(000108546)株式会社タイホーコーザイ (28)
【Fターム(参考)】