砒素を含有する溶液から結晶性スコロダイトを得る方法
【課題】砒素を含む溶液から、濾過性が良好で、実操業上のハンドリングに優れた結晶性スコロダイト粒子を、容易且つ短時間で生成可能とする結晶性スコロダイトの生成方法を提供する。
【解決手段】5価砒素を含有する溶液から結晶性スコロダイトを得る方法であって、当該溶液の液温を所定温度とし、当該溶液へアルカリまたは酸を添加してpHを0.8以上3.0以下の範囲内に保持しながら、当該溶液へ3価鉄源を添加し、結晶性スコロダイトを得る方法を提供する。
【解決手段】5価砒素を含有する溶液から結晶性スコロダイトを得る方法であって、当該溶液の液温を所定温度とし、当該溶液へアルカリまたは酸を添加してpHを0.8以上3.0以下の範囲内に保持しながら、当該溶液へ3価鉄源を添加し、結晶性スコロダイトを得る方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
液中に存在する砒素を、安定な砒素化合物として液から分離回収する技術であり、特には、液中に存在する砒素を、スコロダイトとして液から分離回収する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非鉄製錬において、砒素は鉱石中に含まれる随伴元素である。この結果、非鉄製錬処理の際は、砒素も処理されることとなる。当該砒素処理は、当該非鉄製錬事業において重要且つ不可避な技術要素である。従って、非鉄製錬事業において、砒素処理は、適切且つコストを抑制した処理方法で行うことが望まれている。
当該砒素処理に関して、例えば、特許文献1、2が提案されている。
【0003】
特許文献1の提案は、非鉄製錬煙灰を酸性溶液として砒素を浸出し、この浸出液に硫酸第二鉄(Fe3+)を添加し砒素を非晶質の砒酸鉄として晶出させるものである。ここへ、さらにスコロダイトの種結晶を添加し、大気圧、高温下で所定時間放置し、前記非晶質の砒酸鉄を結晶性のスコロダイトへ変換させるものである。
【0004】
特許文献2の提案は、砒素を含有する電解沈殿銅を酸化浸出し、得られた浸出液に、まず硫酸第二鉄(Fe3+)を所定量配合した後、大気圧下、高温に加熱して所定時間放置することにより、結晶性スコロダイトを生成させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−161123号公報
【特許文献2】特開2008−81784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の方法では、大量のスコロダイト種晶添加が必要である。加えて、一旦、非晶質の砒酸鉄の沈殿物を生成させ、さらに、当該砒酸鉄沈殿物をスコロダイトとして結晶化するに必要な時間が12時間以上と非常に長く、生産性の低いものである。
また、特許文献2の方法も、スコロダイト生成の際、8〜72時間(実施例では、95℃で24時間と記載されている。)反応させる必要があり、生産性に課題があるものである。
尚、従来のいずれの方法も、砒素含有溶液に硫酸第二鉄を事前に所定量を配合し混合した後、反応操作が開始されるものである。
【0007】
本発明は、上述の状況もとでなされたものであり、その解決しようとする課題は、砒素を含む溶液から、濾過性が良好で実操業上ハンドリング性に優れた結晶性スコロダイト粒子を、容易且つ短時間で生成可能とする、結晶性スコロダイトを得る方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意研究した。
その結果、5価の砒素を含む溶液を、まず所定温度に加熱し、当該温度を維持しつつ、当該溶液のpH値を0.8以上3.0以下の範囲内とした後に、当該pH範囲内で3価鉄源を添加していくことで、容易に結晶性スコロダイトが生成されるという画期的な知見を得て本発明に至った。
【0009】
即ち、上述の課題を解決する第1の発明は、
5価砒素を含有する溶液から結晶性スコロダイトを得る方法であって、
当該溶液の液温を所定温度とし、当該溶液へアルカリまたは酸を添加してpHを0.8以上3.0以下の範囲内に保持しながら、当該溶液へ3価鉄源を添加し、結晶性スコロダイトを得る方法である。
【0010】
第2の発明は、
5価砒素を含有する溶液から結晶性スコロダイトを得る方法であって、
当該溶液の液温を70℃以上とし当該液温を維持しながら、当該溶液へアルカリまたは酸を添加してpHを0.8以上3.0以下の範囲内に保持しながら、当該溶液へ3価鉄源を添加し結晶性スコロダイトを得る方法である。
【0011】
第3の発明は、
5価砒素を含有する溶液から結晶性スコロダイトを得る方法であって、
当該溶液の液温を70℃以上とし当該液温を維持しながら、当該溶液へアルカリまたは酸を添加してpHを0.8以上3.0以下の範囲内に保持しながら、当該溶液へ3価鉄源を添加し、当該3価鉄源添加終了後は、pHを非保持として結晶性スコロダイトを得る方法である。
【0012】
第4の発明は、
5価砒素を含有する溶液から結晶性スコロダイトを得る方法であって、
当該溶液の液温を70℃以上とし当該液温を維持しながら、当該溶液へアルカリまたは酸を添加してpHを0.8以上3.0以下の範囲内に保持しながら、当該溶液へ3価鉄源を添加し、当該3価鉄源添加終了後も、当該溶液のpHを0.8以上に保持しながら結晶性スコロダイトを得る方法である。
【0013】
第5の発明は、
5価砒素を含有する溶液から結晶性スコロダイトを生成させる方法であって、
当該溶液の液温を70℃以上とし当該液温を維持しながら、当該溶液へアルカリまたは酸を添加して、当該溶液のpHを0.8以上3.0以下の範囲内に設定した高低2点のpH間で保持しながら、当該溶液へ3価鉄源を添加し結晶性スコロダイトを得る方法である。
【0014】
第6の発明は、
5価砒素を含有する溶液から結晶性スコロダイトを生成させる方法であって、
当該溶液の液温を70℃以上とし当該液温を維持しながら、当該溶液へアルカリまたは酸を添加して、当該溶液のpHを0.8以上3.0以下の範囲内に設定した高低2点のpH間で保持しながら、当該溶液へ3価鉄源を添加し、当該3価鉄源添加終了後は、pHを非保持として結晶性スコロダイトを得る方法である。
【0015】
第7の発明は、
5価砒素を含有する溶液から結晶性スコロダイトを生成させる方法であって、
当該溶液の液温を70℃以上とし当該液温を維持しながら、当該溶液へアルカリまたは酸を添加して、当該溶液のpHを0.8以上3.0以下の範囲内に設定した高低2点のpH間で保持しながら、当該溶液へ3価鉄源を添加し、当該3価鉄源添加終了後も、当該溶液のpHを当該設定した低pH値以上に保持しながら結晶性スコロダイトを得る方法である。
【0016】
第8の発明は、
前記5価砒素を含有する溶液中に存在する5価砒素のモル数に対し、1倍以上のモル数の3価鉄を含む前記3価鉄源を、当該溶液へ添加する第1から第7の発明のいずれかに記載の結晶性スコロダイトを得る方法である。
【0017】
第9の発明は、
前記3価鉄源を、当該3価鉄源に含まれる3価鉄のモル数が、前記溶液に含まれる5価砒素のモル数に対し1倍以下となるように、2以上に分割し、
当該分割された一の3価鉄源を前記溶液へ添加し、スコロダイトの生成を確認したら、当該分割された二の3価鉄源を、当該スコロダイトの生成が確認された溶液へ添加し、以下、順次、分割された3価鉄源を、当該スコロダイトの生成が確認された溶液へ添加する第8の発明に記載の結晶性スコロダイトを得る方法である。
【0018】
第10の発明は、
前記3価鉄源が、3価鉄イオンを含む溶液、または、当該3価鉄イオンを含む溶液を中和して得られる中和殿物、または、これらの混合物である第1から第9の発明のいずれかに記載の結晶性スコロダイトを得る方法である。
【0019】
第11の発明は、
前記pH保持に用いるアルカリが、MgまたはCaを含むアルカリであり、前記pH保持に用いる酸が、硫酸である第1から第10の発明のいずれかに記載の結晶性スコロダイトを得る方法である。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る結晶性スコロダイトの生成方法によれば、大規模な設備投資の必要もなく、結晶性スコロダイト粒子を短時間で得ることが可能となった。さらに、得られる結晶性スコロダイト粒子は、濾過性が良好で実操業上のハンドリング性に優れるものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係るスコロダイト生成反応のフロー図である。
【図2】反応pH1.5、Fe/As比1.0、3hr時点で生成したスコロダイトのXRDスペクトルである。
【図3】反応pH0.9、Fe/As比1.0、5.5hr時点で生成したスコロダイトのXRDスペクトルである。
【図4】反応pH1.5、Fe/As比1.0、5.5hr時点で生成したスコロダイトのXRDスペクトルである。
【図5】反応pH2.0、Fe/As比1.0、5.5hr時点で生成したスコロダイトのXRDスペクトルである。
【図6】反応pH3.0、Fe/As比1.0、5.5hr時点で生成したスコロダイトのXRDスペクトルである。
【図7】反応pH3.5、Fe/As比1.0、9hr時点で生成した生成物のXRDスペクトルである。
【図8】反応pH1.4〜1.7、Fe/As比1.0、5.5hr時点で生成したスコロダイトのXRDスペクトルである。
【図9】反応pH1.0、Fe/As比1.2、5.5hr時点で生成したスコロダイトのXRDスペクトルである。
【図10】反応pH1.5、Fe/As比1.2、5.5hr時点で生成したスコロダイトのXRDスペクトルである。
【図11】反応pH1.5、Fe/As比1.2(分割添加)、6.0hr時点で生成したスコロダイトのXRDスペクトルである。
【図12】反応pH1.5、Fe/As比1.2(一括添加)、9.0hr時点で生成したスコロダイトのXRDスペクトルである。
【図13】反応pH1.5、Fe/As比1.0(Fe中和殿物パルプ)、5.5hr時点で生成したスコロダイトのXRDスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
上述した従来技術に係る特許文献1、2は、いずれも、5価砒素含有溶液に3価鉄塩を添加しスコロダイトを製造する方法についての提案である。
しかしながら、特許文献1の方法では、大量のスコロダイト種晶が必要である上、スコロダイトの結晶化に必要な時間が12時間以上という長時間を必要としている。また、特許文献2の方法も、スコロダイト生成の際、長時間を必要としている。
さらに、従来技術に係るいずれの方法も、砒素含有溶液に硫酸第二鉄を事前に所定量を配合し混合した後、反応操作が開始されるものである。
【0023】
本発明者等は、試行錯誤の結果、5価砒素含有溶液に3価鉄源を添加し、高い生産性と低コストとをもって、スコロダイトを製造するポイントを知見した。当該ポイントは、溶液の温度を所定温度以上に制御することと、pH値を0.8以上3.0以下の範囲内制御すること、および、pH制御が完了した後、溶液へ当該pH範囲内で3価鉄源添加するという添加のタイミングである。当該ポイントを押さえることで、大規模な設備投資の必要もなく、3価鉄源を用いながら、結晶性スコロダイト粒子が短時間で生成可能となった。さらに、生成する結晶性スコロダイト粒子は、濾過性が良好であり実操業上のハンドリングに優れるものである。
【0024】
すなわち、本発明は、5価砒素を含有する溶液を所定温度とし、この温度を維持しながら、当該溶液へアルカリまたは酸を添加し、pHを0.8以上3.0以下の範囲内として当該溶液へ3価鉄源を添加し、結晶性スコロダイトを得るか、または、当該溶液のpHを0.8以上3.0以下の範囲内に設定した高低2点のpH間で保持しながら、当該溶液へ3価鉄源を添加し、結晶性スコロダイトを得る方法である。
【0025】
ここで、所定温度としては、結晶性スコロダイトの生成速度の観点から70℃以上であること、および、結晶性スコロダイト生成中は当該所定温度を保つこと、が好ましい。
【0026】
さらに、pHを0.8以上3.0以下の範囲内として当該溶液へ3価鉄源を添加することで、短時間に結晶性スコロダイトが生成されるという利点がある。
一方、工程や装置の都合(pHの管理システム、装置の耐食性等)によっては、pHを0.8以上3.0以下の範囲内に設定した高低2点のpH間で保持しながら、当該溶液へ3価鉄源を添加するのも好ましい構成である。
【0027】
3価鉄源としては、3価の鉄塩がある。具体的には、硫酸第2鉄、塩化第2鉄、硝酸第2鉄等、種々が挙げられる。ここで、設備への腐食性の観点、汎用的な薬剤としての入手容易性の観点からは、硫酸第2鉄が好ましい。
硫酸第2鉄は温水に溶解し3価鉄イオンの溶液として添加することが好ましいが、液量を抑える観点から粉状で直接添加しても良い。
【0028】
3価Fe源に硫酸第2鉄を用いる場合は、下記の1)式で反応が進むものと推定される。その結果、硫酸が生成し溶液のpHが低下する。従って、中和剤を併用して、上述のようにpH制御することが好ましい。
2H3AsO4+Fe2(SO4)3+4H2O
→ 2FeAsO4・2H2O+3H2SO4 ・・・1)式
【0029】
一方、固体である3価鉄源として、水酸化鉄(Fe(OH)3)、ゲーサイト(FeO
OH)、および酸化鉄(Fe2O3)等も好適に使用する事が出来る。
これらの3価鉄源を用いる場合は、下記の2)式〜4)式で反応が進むものと推定される。この場合、硫酸が生成されないので、中和剤を用いたpH制御は基本的に不要であり、操作がより簡便となる利点を有する。
これらの3価鉄源は、被処理液への混合拡散を容易にする観点から、湿潤状態やパルプ状態として溶液へ添加することが好ましい。
H3AsO4+Fe(OH)3
→ FeAsO4・2H2O+3H2O ・・・2)式
H3AsO4+FeOOH
→ FeAsO4・2H2O ・・・・・・3)式
H3AsO4+1/2Fe2O3 +1/2H2O
→ FeAsO4・2H2O ・・・・・・4)式
【0030】
尚、3価鉄塩や3価鉄イオン溶液、および、固体としての水酸化鉄等の混合物も、3価鉄源として使用が可能である。これら混合物を添加する場合、上記1)式〜4)式の、いずれの反応が優先するかで、添加する中和剤の量が決定されることになる。
【0031】
当該3価鉄源を、5価砒素を含有する溶液へ添加する際、全量を一括添加することが出来る。当該全量一括添加によれば、操作が簡便化し、作業コストの低減を行うことが出来る。
一方、当該3価鉄源を2回以上の分割添加とする場合は、反応性が向上し、スコロダイト生成の反応時間を短縮することが出来る。当該3価鉄源の分割添加を行う場合は、当該3価鉄源に含まれる3価鉄のモル数を、前記溶液に含まれる5価砒素のモル数に対し1倍以下となるように2以上に分割することで、さらに反応性を向上出来、好ましい。
【0032】
3価鉄源添加後の5価砒素を含有する溶液のpHは、非保持としても良い。当該pHを非保持とすることで操作が簡便化し、作業コストの低減を行うことが出来る。
一方、工程や装置の都合(pHの管理システム、装置の耐食性等)によっては、3価鉄源添加後の5価砒素を含有する溶液のpHを、0.8以上、または、pHを0.8以上3.0以下の範囲内に設定した高低2点のpHにおけるpH(低値)以上に保つ構成を採ることも、好ましい構成である。
【0033】
以下、本発明に関し実施例を参照しながら詳細に説明する。
(実施例1)
1.)試験ユニットおよび試験規模
試験容器としては1Lビーカー使用を使用した。当該試験容器に設置する撹拌装置は、4枚邪魔板付き、2段タービン羽根、回転数400rpmを使用した。
このとき、1バッチ当たりにおける5価As元液の処理量は600mLとした。
【0034】
2.)5価As元液の調製
試薬60%砒酸溶液を30mL量り取り、これを純水にて600mLへ希釈し、実施例1に係る5価As元液を得た。
当該5価As元液のAs濃度は、分析の結果25.2g/Lであった。尚、当該5価As元液の93℃(実施例1における所定温度)でのpH値は、1.75であった。
【0035】
3.)3価Fe溶液の調製
試薬硫酸鉄(III)n水和物(Fe品位として21.6%)2,000gを量り取り、これを5Lビーカーに投入し、純水を加えて液量を1,900mLとした。そして、当該溶液を80℃に加温し、攪拌しながら硫酸鉄(III)を溶解させた。
硫酸鉄(III)溶解後、室温まで放冷し、液量が2,000mLになるように純水を補加
し、実施例1および各実施例に係る3価Fe溶液を得た。
分析の結果、当該3価Fe溶液のFe濃度は215g/Lであることが判明した。
【0036】
4.)5価As元液に対する、3価Fe溶液の添加量
スコロダイトの化学式はFeAsO4・2H2Oで示され、反応量論的には、As1モルに対しFe1モルが反応する、等モル反応の関係にある。
そこで、実施例1においては、当該3価Fe溶液の添加量を、Fe純分量として5価As元液中のAs総モル量の1倍当量(等モル)とした。
具体的には、5価As元液中のAs濃度が25.2g/Lであり、かつ5価As元液処理量が1バッチ当たり600mLなので、これに含まれるAs総モル量は、1バッチ当たり0.202モルと計算される。
従って、当該3価Fe溶液(Fe濃度:215g/L)の1倍当量(等モル)の添加量は下式にて算出される。
3価Fe溶液添加量(1倍当量(等モル))=0.202×55.847(Fe原子量)×1(倍)÷215×1000=52mL
同様に、後述の実施例4及び5における当該3価Fe溶液の1.2倍当量(1.2倍モル)の添加量は63mLと算出される。
【0037】
5.)pH調整剤
本実施例におけるpH調整剤は、Mg(OH)2が好ましい。これは当該pH調整剤が反応pHを調整した後、生成するMgSO4が易溶性であること、および、Mgイオンが後工程のスコロダイトに悪影響を与えない為である。pH調整剤として、Ca(OH)2も使用可能であるがpHを調整した後に生成するCaSO4が難溶性である為、この点に配慮が求められる。
その他のpH調整剤としてNaOHやKOHが挙げられるが、これらは高価であり、且つ、その濃度にもよるが、反応時にジャロサイトを形成し易く、生成スコロダイトの溶出特性に悪影響を及ぼす場合がある。そこで、NaOHやKOHをpH調整剤として用いる場合には、Mg(OH)2やCa(OH)2と併用する等して、その使用量を少量に抑えることが好ましい。
本実施例においては、試薬Mg(OH)2としてキシダ化学株式会社製試薬、水酸化マグネシウムMg(OH)2(assay min95%)を準備した。
【0038】
実施例1における以上の部分は、後述する実施例2〜5においても同様である。
【0039】
6.)スコロダイト生成反応
本発明に係るスコロダイト生成反応のフロー図を、図1に示す。以下、図1を参照しながら、本発明に係る実施例1のスコロダイト生成反応について説明する。
5価As元液〈1〉600mLを93℃へ加温し(このとき、当該元液はpH1.75を示した。)、硫酸〈2〉添加にて設定値であるpH1.50へ調整した。
このタイミングで当該元液へ、3価Fe溶液〈3〉52mL(Fe/As(mol/mol)=1.0に相当量である。)を、定量ポンプを用い30分間かけて添加した。当該添加の間、当該元液の液温を93℃に保持し、且つ、適宜量のpH調整剤〈4〉としてMg(OH)2添加によりpHが1.50より低下しないように保持した。
【0040】
当該3価Fe溶液〈3〉添加後も、pHが1.50より低下しないように保持しながら反応を進め、93℃、3時間経過時点(Fe源添加時間の30分間を含む。以下同じ。)で少量(約50mL)サンプリングを行い、93℃、5.5時間経過時点で反応を終了した。各時間経過毎の反応生成物を濾過〈5〉し、各時間経過毎の濾過物〈6〉と濾液〈7〉とを得た。
【0041】
7.)生成したスコロダイトの評価
得られた各時間経過毎の濾過物〈6〉を純水洗浄した後、X線回折測定を行い、3時間経過時点、5.5時間経過時点におけるスコロダイト生成状況を評価した。
反応時間3時間経過時点における濾過物〈6〉のX線回折結果を図2に示し、組成の分析結果を表1に示す。
図2のX線回折結果より、反応時間3時間時点から既にスコロダイト(FeAsO4・2H2O)の結晶を示すシャープなピークが広い回折角の範囲で確認された。
【0042】
【表1】
【0043】
8.)反応持のpHを変えたときのスコロダイト生成反応
引き続き、「6.)スコロダイト生成反応」において添加する硫酸〈2〉の添加量を調整して、pH1.5より酸性側の例としてpH0.75、pH0.8、pH0.9、pH1.0の5価As元液600mLを調製した。一方、添加するpH調整剤〈4〉のMg(OH)2粉の添加量を調製して、pH1.5より中性側の例としてpH2.0、pH3.0、pH3.5の5価As元液600mLとを調製した。
この後は、「6.)スコロダイト生成反応」と同様の操作を行い、スコロダイト生成状況を評価した。
【0044】
9.)反応持のpHを変えて生成したスコロダイトの評価
反応持のpHを変えて生成したスコロダイトの評価結果を、表2に示す。
また、pH0.9としたときのスコロダイトのX線回折結果を図3に、pH1.5としたときのスコロダイトのX線回折結果を図4に、pH2.0としたときのスコロダイトのX線回折結果を図5に、pH3.0としたときのスコロダイトのX線回折結果を図6に示す。
【0045】
【表2】
【0046】
ここで、反応pH3.5とした場合は、3時間および5.5時間経過時点でスコロダイト生成が確認出来なかった。そこで、再度同様の操作を行って、9時間経過時点まで反応を行ったが、濾過物〈6〉にスコロダイトとしての明瞭なピークは確認出来なかった。この9時間経過時点における濾過物〈6〉のX線回折結果を図7に示す。
【0047】
次に、5.5時間経過時点において、濾過物〈6〉中にスコロダイトが確認されたpH0.75〜3.0の領域の試料の3時間および5.5時間経過時点における濾液〈7〉のAs濃度を測定した。当該pH0.75〜3.0の領域の試料の3時間および5.5時間経過時点における濾液〈7〉のAs濃度の測定結果を表3に示す。
【0048】
【表3】
【0049】
表3の結果から、各pH値における当初の5価Asのスコロダイトへの転換率について検討を行った。
すると、pH0.75とpH0.8とでは、当初の5価Asのスコロダイトへの転換率に、さほど差は認められない。しかし、pH0.8からpH0.9にかけて、当初の5価Asのスコロダイトへの転換率は急激に向上することが分かる。
従って、当初の5価As元液が強い酸性を示し、酸性側でスコロダイト生成反応させる場合、pHは0.8以上、好ましくは0.9以上に調整するのが良い。さらに、pHが1.0〜3.0の領域においては、スコロダイト生成反応は3時間時点でその殆どが完了しているものと推定される。一方、反応pH値の上限は、上述したように3とするのが好ましい。
【0050】
(実施例2)
実施例2は、実施例1の「6.)スコロダイト生成反応」にて説明した、3価Fe溶液添加時のpHを、実施例1で説明した所定値固定ではなく、所定の高低2点のpH間で添加をおこなった場合の実施例である。さらに実施例2は、3価Fe溶液添加後にpHを非保持とした実施例である。
【0051】
As元液(実施例1と同じ)600mL、3価Fe溶液(実施例1と同じ)52mL(Fe/As(mol/mol)=1.0)を準備した。
As元液600mLを93℃に加温し保温した(このとき、pH1.74であった。)。当該93℃に保温されたAs元液へ、3価Fe溶液52mLを定量ポンプを介し添加を開始した。尚、添加速度は、30分間で添加が完了する速度とした。
3価Fe溶液の添加開始から3分間後に、溶液のpHは1.40(当該pH値を低値とした。)となった。この時点で、溶液へMg(OH)2粉を添加し、約1分間でpH1.
70(当該pH値を高値とした。)まで中和し、その後は溶液のpHを非保持とし、3価Fe溶液の添加を継続した。約3分間後に、溶液のpH値は再度1.40(低値)となったので、Mg(OH)2を再度添加し、約1分間でpH1.70(高値)まで中和した。
以上の操作を繰り返し、所定の3価Fe溶液を全て添加し、この時点でpH1.70(高値)へ調整し、その後はpHを非保持として、撹拌と保温とを5.5時間継続し(3価Fe添加時間の30分間を含む。)反応させた。反応終了時における溶液のpHは1.61(at93℃)であり、スコロダイトの生成可能領域内であった。
【0052】
生成したスコロダイトを実施例1と同様に採取し、純水洗浄後、X線回折測定を行った。結果を図8に示す。
図8において、実施例1と同様の、スコロダイト結晶の鋭いピークが確認された。
尚、反応終了時の液中As濃度は0.55g/Lであった。
【0053】
(実施例3)
実施例3は、実施例1の「6.)スコロダイト生成反応」にて説明した、As元液の液温を60、70、80、93℃の4水準とし、サンプリング時点を反応3、5.5、7時
間時点とした実施例である。
As元液の液温の変更、および、反応時間を7時間まで延長した以外は、実施例1と同様の操作を実施し、スコロダイト結晶の生成の有無、溶液中のAs濃度の推移を測定した。さらに、濾過物にX線回折測定を行いスコロダイト結晶が認められるか否かを調べた。
As元液の液温と、スコロダイト結晶の生成の有無との関係を表4に示す。
また、As元液の温度と、As濃度の推移を表5に示す。
【0054】
【表4】
【表5】
【0055】
表4、5の結果から、As元液の液温が70℃以上あれば、反応時間7時間以内でスコロダイト結晶が確認され、スコロダイト生成は可能である。尤も、反応時間と、As濃度の低下挙動から反応性を考えると、As元液の液温は80℃以上が、さらに好ましい。
【0056】
(実施例4)
実施例4は、実施例1の「6.)スコロダイト生成反応」にて説明した、3価Fe溶液添加時間を5、30、60分の3水準とし、且つ、3価Fe溶液添加量を63mL(Fe/As(mol/mol)=1.2に相当量)に増やし、生成するスコロダイトの濾過性について検討した実施例である。
3価Fe溶液添加時間を5、30、60分の3水準とし、且つ、3価Fe溶液量を増量した以外は、実施例1と同様の操作を実施し、生成したスコロダイト結晶の濾過性を調べた。
【0057】
スコロダイト結晶の濾過性を調べた際の濾過条件について説明する。
・濾過圧:4〜4.5kg/m2
・ろ紙:直径142mm、孔径1.0μm、材質PTFE(メンブレンフィルター ADVANTEC製)
【0058】
尚、反応時間は7時間(3価Fe溶液添加時間を含む。)とした。
反応終了後の濾過物に対し純水洗浄後にX線回折測定を行ったところ、全てがスコロダイトであることが確認された。
表6に、反応終了後生成したスコロダイトの濾過性と、濾液中のAs濃度とについて示す。
【0059】
【表6】
【0060】
ここで表6の結果から、実施例4に係る生成パルプの濾過速度を考えた。
具体的には、反応後の生成パルプ量を663mL(As元液600mL+3価Fe溶液63mL)と考え、上述したろ紙の濾過面積(m2)から、単位時間(min)当たりの濾過速度を求めた。
ろ紙の濾過面積=(ろ紙半径)×(ろ紙半径)×π=(0.142/2)×(0.142/2)×3.14=0.01583m2である。従って、3価Fe溶液添加時間5分間の試験における濾過速度は、0.663L÷0.01583m2÷(22÷60)min=114L/m2/minと算出される。
以下、同様に計算した。当該計算結果を表7に示す。
【0061】
【表7】
【0062】
表7の結果から、3価Fe溶液添加時間と生成スコロダイトの濾過性とには明瞭な関係が存在することが判明した。3価Fe溶液添加時間を長く設定すれば、生成パルプの濾過速度が上がり、短時間に濾過を終了することが出来る。
尤も、3価Fe溶液添加時間5分間の場合における濾過速度は114L/m2/minであるが、当該濾過速度自体は実操業でも問題の無いレベルである。
【0063】
(実施例5)
実施例5は、実施例1の「6.)スコロダイト生成反応」にて説明した3価Fe溶液添加において、3価Fe溶液の添加総量がFe/As(mol/mol)で1倍当量以上となるとき、当該添加操作を複数回に分割して実施する方法と、当該分割添加法の利点について説明する。
【0064】
当該実施例に先立ち、本発明者等はAs元液へ、3価Fe溶液をFe/As(mol/mol)=1倍以上添加する場合、pH値が1.5以上であると生成するスコロダイト結晶のX線回折強度が弱まる挙動を示すとの知見を得た。
因みに、例として、Fe/As=1.2、5.5時間反応においてpH1.0において生成するスコロダイト結晶のX線回折測定結果を図9に、pH1.5とにおいて生成するスコロダイト結晶のX線回折測定結果を図10に示す。
【0065】
本発明者等は、3価Fe溶液をFe/As(mol/mol)=1倍以上添加する場合でも、X線回折強度が高い、すなわち結晶性が高いスコロダイト結晶を生成させるスコロダイトの生成方法を鋭意研究した。
そして、当該研究の結果、反応開始時に、3価Fe溶液のFe/As=1倍当量を添加し、スコロダイト結晶生成が確認される3〜5.5時間後、すなわち、As元液中におけるAs総モル量の90%以上が反応析出するまで反応させる。そして、当該反応開始時から3〜5.5時間経過後、残りの3価Fe溶液を追加添加し、引き続き反応を継続させる方法に想到した。
尤も、上述した3〜5.5時間の反応時間は、本試験ユニットで決まる時間である。従って、当該方法で実用化を考える場合は、使用される反応器の反応性を調べた上で、反応時間を決定すれば良い。
【0066】
以上説明した3価Fe溶液を、複数回に分割して添加する効果を確認するため、3価Fe溶液をFe/As(mol/mol)=1.2倍添加することとした以外は実施例1と同様であるが、3価Fe溶液を、2回に分割して添加する試験と、1回で全量添加する試験とを行った。
【0067】
〈3価Fe溶液の2回分割添加〉
反応開始時から30分間の時点で、As元液へFe/As=1.0倍当量の3価Fe溶液(52mL)を添加し3時間反応させた。当該3時間反応後、溶液を少量サンプリングし、残りのFe/As=0.2当量の3価Fe溶液(11mL)を30分間で再度添加し
た。3価Fe溶液添加後、少量サンプリングし、引き続き4.5時間点で再サンプリングし、6時間時点で反応を終了し生成物を濾過した。
最終濾過で得られたスコロダイトは、純水洗浄後に組成分析と溶出試験とを行った。
【0068】
〈3価Fe溶液の一括添加〉
反応開始時から30分間の時点で、As元液へFe/As=1.2倍当量の3価Fe溶液(63mL)を一括添加し3時間反応させた。当該3時間反応後、溶液を少量サンプリングし、引き続き5.5時間、7時間時点で再サンプリングしAs濃度の変化を追跡し、9時間時点で反応を終了し生成物を濾過した。
最終濾過で得られたスコロダイトは、純水洗浄後に組成分析と溶出試験とX線回折測定とを行った。
【0069】
上述した3価Fe溶液の2回分割添加の場合と、3価Fe溶液の一括添加の場合とにお
ける、溶液におけるAs濃度の推移を表8に示す。
【0070】
【表8】
【0071】
表8の結果から、3価Fe溶液の2回分割添加の場合は、3価Fe溶液の一括添加の場合に比較して、反応性が格段に向上することが判明した。
3価Fe溶液の2回分割添加の場合、3時間時点で残りのFe/As=0.2相当分の3価Fe溶液を30分間かけて添加した。すると、添加終了時の3.5時間時点において、既に溶液のAs濃度は0.02g/Lであり、その後も当該As濃度に変化がないので、この3.5時間時点で反応は殆ど完了しているものと推定される。尚、6時間時点における残留As濃度が0.02g/Lであることから、Asの99.9%以上がスコロダイトへ転換したものと考えられる。
【0072】
一方、3価Fe溶液の一括添加の場合では、5.5時間時点においてもAsが0.80g/L残存していた。そして、As濃度が0.1g/L以下となるためには7時間が必要であった。
以上のことから、3価Fe溶液の分割添加は、反応性向上において非常に効果的であることが認められた。
【0073】
また、3価Fe溶液の2回分割添加の場合と、一括添加の場合で得られたスコロダイトの組成と溶出試験結果を表9に示す。
尚、溶出方法は環境庁告示13号に準拠。ただし、溶出処理後の液の濾過は、孔径0.2μmのMCE(Mixed Cellulose Ester)製のフィルターを介して行った。
【0074】
【表9】
【0075】
表9より、両場合ともAsの溶出は認められず、生成したスコロダイトは安定であることが判明した。
また、3価Fe溶液の2回分割添加で得られたスコロダイトX線回折結果を図11に、一括添加の場合で得られたスコロダイトX線回折結果を図12に示す。
【0076】
図11に示す3価Fe溶液の2回分割添加で得られたスコロダイトは、強い強度ピークを示し、結晶性の高いスコロダイトが生成したことが判明した。これに対して、図12に示す3価Fe溶液の一括添加で得られたスコロダイトは、上述した図10に示す5.5時間反応のスコロダイトより強度のアップしているものの、図11に示す3価Fe溶液の2回分割添加で得られたスコロダイトより強度は低いことが判明した。
【0077】
(実施例6)
本実施例は、3価Fe源として、3価Fe溶液(液体)ではなく、3価Fe溶液を事前に中和して得られた中和殿物パルプ(固体)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行ったものである。
尚、反応条件は、液温93℃保持、pHは1.5を保持しながら、当該中和殿物パルプを添加し、その後はpH非保持とした例である。
【0078】
中和殿物パルプ(3価Fe源(固体))について説明する。
中和殿物パルプ(3価Fe源(固体))は、「3.)3価Fe溶液の調製」にて説明した3価Fe溶液に代えて使用可能な、3価Fe溶液を中和して得られる中和殿物パルプ(3価Fe源(固体))である。
以下、当該3価Fe(固体)の調製について説明する。
「3.)3価Fe溶液の調製」にて調製した3価Fe溶液(Fe濃度215g/L)54mLを純水で2Lに希釈し、50℃に加温保持する。当該3価Fe溶液の液温を保持しながら、攪拌下にて、50g/LのNaOH溶液を添加しpH5.5へ中和する。3価Fe溶液がpH5.5に到達後、さらに15分間攪拌を維持して反応を終了し、中和パルプを得た。
得られた中和パルプを濾過して濾過ケーキを回収し、さらに当該濾過ケーキを2Lの純水でリパルプし、50℃にて15分間攪拌洗浄してから濾過して、洗浄された濾過ケーキを得た。当該洗浄された濾過ケーキを純水でリパルプし、容量を250mLへ調整した。
当該容量250mLの濾過ケーキパルプを、以後の操作において3価Fe源(固体)として用いた。
【0079】
As元液600mLを93℃に加熱し、硫酸を添加してpH1.50へ調整した。
ここで、中和殿物パルプのpHは4.52であるため、中和殿物パルプ添加による希釈に起因するpH上昇を回避する目的で希硫酸添加を行いpH1.50を保持した。ここへ、当該中和殿物パルプ250mLを約10分間にて添加し、添加後はpHを非保持のままとし、93℃にて5.5時間反応を行った(尚、当該反応時間は、中和殿物パルプ添加開始時を反応開始時としている。)。
【0080】
反応中の反応pH値の推移は、中和殿物パルプ添加終了時から15分間に渡り漸次上昇しpH1.56をピークとし、その後は徐々に低下した。そして、反応2時間時点でpH1.51、3時間時点でpH1.50となり、その後、反応終了時の5.5時間までpH1.50のままであった。
反応終了後、生成したスコロダイトを濾過して採集し、純水洗浄後、化学分析、およびX線回折測定を行った。得られたスコロダイトの化学分析結果を表10に、X線回折測定結果を図13に示す。
尚、濾液のAs濃度は0.40g/Lであった。
【0081】
【表10】
【0082】
図13と、図4との比較から明らかなように、Fe源に3価Fe溶液を用いた方法と、中和殿物パルプを用いた方法とでは、生成したスコロダイトは、同位置に殆ど同じピーク強度を示した。
従って、Fe源に中和殿物パルプを用いることは、3価Fe溶液を用いた場合と全く同様に可能である。
【0083】
尚、本実施例では、硫酸を添加し溶液のpHを制御しながらFe源を添加し行った例である。尤も、当該Fe源を所定量添加終了した時点において、溶液のpHがスコロダイト生成可能領域内(pH0.8〜3.0)に留まるのであれば、pH制御を行わなくても良い。
【技術分野】
【0001】
液中に存在する砒素を、安定な砒素化合物として液から分離回収する技術であり、特には、液中に存在する砒素を、スコロダイトとして液から分離回収する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非鉄製錬において、砒素は鉱石中に含まれる随伴元素である。この結果、非鉄製錬処理の際は、砒素も処理されることとなる。当該砒素処理は、当該非鉄製錬事業において重要且つ不可避な技術要素である。従って、非鉄製錬事業において、砒素処理は、適切且つコストを抑制した処理方法で行うことが望まれている。
当該砒素処理に関して、例えば、特許文献1、2が提案されている。
【0003】
特許文献1の提案は、非鉄製錬煙灰を酸性溶液として砒素を浸出し、この浸出液に硫酸第二鉄(Fe3+)を添加し砒素を非晶質の砒酸鉄として晶出させるものである。ここへ、さらにスコロダイトの種結晶を添加し、大気圧、高温下で所定時間放置し、前記非晶質の砒酸鉄を結晶性のスコロダイトへ変換させるものである。
【0004】
特許文献2の提案は、砒素を含有する電解沈殿銅を酸化浸出し、得られた浸出液に、まず硫酸第二鉄(Fe3+)を所定量配合した後、大気圧下、高温に加熱して所定時間放置することにより、結晶性スコロダイトを生成させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−161123号公報
【特許文献2】特開2008−81784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の方法では、大量のスコロダイト種晶添加が必要である。加えて、一旦、非晶質の砒酸鉄の沈殿物を生成させ、さらに、当該砒酸鉄沈殿物をスコロダイトとして結晶化するに必要な時間が12時間以上と非常に長く、生産性の低いものである。
また、特許文献2の方法も、スコロダイト生成の際、8〜72時間(実施例では、95℃で24時間と記載されている。)反応させる必要があり、生産性に課題があるものである。
尚、従来のいずれの方法も、砒素含有溶液に硫酸第二鉄を事前に所定量を配合し混合した後、反応操作が開始されるものである。
【0007】
本発明は、上述の状況もとでなされたものであり、その解決しようとする課題は、砒素を含む溶液から、濾過性が良好で実操業上ハンドリング性に優れた結晶性スコロダイト粒子を、容易且つ短時間で生成可能とする、結晶性スコロダイトを得る方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意研究した。
その結果、5価の砒素を含む溶液を、まず所定温度に加熱し、当該温度を維持しつつ、当該溶液のpH値を0.8以上3.0以下の範囲内とした後に、当該pH範囲内で3価鉄源を添加していくことで、容易に結晶性スコロダイトが生成されるという画期的な知見を得て本発明に至った。
【0009】
即ち、上述の課題を解決する第1の発明は、
5価砒素を含有する溶液から結晶性スコロダイトを得る方法であって、
当該溶液の液温を所定温度とし、当該溶液へアルカリまたは酸を添加してpHを0.8以上3.0以下の範囲内に保持しながら、当該溶液へ3価鉄源を添加し、結晶性スコロダイトを得る方法である。
【0010】
第2の発明は、
5価砒素を含有する溶液から結晶性スコロダイトを得る方法であって、
当該溶液の液温を70℃以上とし当該液温を維持しながら、当該溶液へアルカリまたは酸を添加してpHを0.8以上3.0以下の範囲内に保持しながら、当該溶液へ3価鉄源を添加し結晶性スコロダイトを得る方法である。
【0011】
第3の発明は、
5価砒素を含有する溶液から結晶性スコロダイトを得る方法であって、
当該溶液の液温を70℃以上とし当該液温を維持しながら、当該溶液へアルカリまたは酸を添加してpHを0.8以上3.0以下の範囲内に保持しながら、当該溶液へ3価鉄源を添加し、当該3価鉄源添加終了後は、pHを非保持として結晶性スコロダイトを得る方法である。
【0012】
第4の発明は、
5価砒素を含有する溶液から結晶性スコロダイトを得る方法であって、
当該溶液の液温を70℃以上とし当該液温を維持しながら、当該溶液へアルカリまたは酸を添加してpHを0.8以上3.0以下の範囲内に保持しながら、当該溶液へ3価鉄源を添加し、当該3価鉄源添加終了後も、当該溶液のpHを0.8以上に保持しながら結晶性スコロダイトを得る方法である。
【0013】
第5の発明は、
5価砒素を含有する溶液から結晶性スコロダイトを生成させる方法であって、
当該溶液の液温を70℃以上とし当該液温を維持しながら、当該溶液へアルカリまたは酸を添加して、当該溶液のpHを0.8以上3.0以下の範囲内に設定した高低2点のpH間で保持しながら、当該溶液へ3価鉄源を添加し結晶性スコロダイトを得る方法である。
【0014】
第6の発明は、
5価砒素を含有する溶液から結晶性スコロダイトを生成させる方法であって、
当該溶液の液温を70℃以上とし当該液温を維持しながら、当該溶液へアルカリまたは酸を添加して、当該溶液のpHを0.8以上3.0以下の範囲内に設定した高低2点のpH間で保持しながら、当該溶液へ3価鉄源を添加し、当該3価鉄源添加終了後は、pHを非保持として結晶性スコロダイトを得る方法である。
【0015】
第7の発明は、
5価砒素を含有する溶液から結晶性スコロダイトを生成させる方法であって、
当該溶液の液温を70℃以上とし当該液温を維持しながら、当該溶液へアルカリまたは酸を添加して、当該溶液のpHを0.8以上3.0以下の範囲内に設定した高低2点のpH間で保持しながら、当該溶液へ3価鉄源を添加し、当該3価鉄源添加終了後も、当該溶液のpHを当該設定した低pH値以上に保持しながら結晶性スコロダイトを得る方法である。
【0016】
第8の発明は、
前記5価砒素を含有する溶液中に存在する5価砒素のモル数に対し、1倍以上のモル数の3価鉄を含む前記3価鉄源を、当該溶液へ添加する第1から第7の発明のいずれかに記載の結晶性スコロダイトを得る方法である。
【0017】
第9の発明は、
前記3価鉄源を、当該3価鉄源に含まれる3価鉄のモル数が、前記溶液に含まれる5価砒素のモル数に対し1倍以下となるように、2以上に分割し、
当該分割された一の3価鉄源を前記溶液へ添加し、スコロダイトの生成を確認したら、当該分割された二の3価鉄源を、当該スコロダイトの生成が確認された溶液へ添加し、以下、順次、分割された3価鉄源を、当該スコロダイトの生成が確認された溶液へ添加する第8の発明に記載の結晶性スコロダイトを得る方法である。
【0018】
第10の発明は、
前記3価鉄源が、3価鉄イオンを含む溶液、または、当該3価鉄イオンを含む溶液を中和して得られる中和殿物、または、これらの混合物である第1から第9の発明のいずれかに記載の結晶性スコロダイトを得る方法である。
【0019】
第11の発明は、
前記pH保持に用いるアルカリが、MgまたはCaを含むアルカリであり、前記pH保持に用いる酸が、硫酸である第1から第10の発明のいずれかに記載の結晶性スコロダイトを得る方法である。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る結晶性スコロダイトの生成方法によれば、大規模な設備投資の必要もなく、結晶性スコロダイト粒子を短時間で得ることが可能となった。さらに、得られる結晶性スコロダイト粒子は、濾過性が良好で実操業上のハンドリング性に優れるものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係るスコロダイト生成反応のフロー図である。
【図2】反応pH1.5、Fe/As比1.0、3hr時点で生成したスコロダイトのXRDスペクトルである。
【図3】反応pH0.9、Fe/As比1.0、5.5hr時点で生成したスコロダイトのXRDスペクトルである。
【図4】反応pH1.5、Fe/As比1.0、5.5hr時点で生成したスコロダイトのXRDスペクトルである。
【図5】反応pH2.0、Fe/As比1.0、5.5hr時点で生成したスコロダイトのXRDスペクトルである。
【図6】反応pH3.0、Fe/As比1.0、5.5hr時点で生成したスコロダイトのXRDスペクトルである。
【図7】反応pH3.5、Fe/As比1.0、9hr時点で生成した生成物のXRDスペクトルである。
【図8】反応pH1.4〜1.7、Fe/As比1.0、5.5hr時点で生成したスコロダイトのXRDスペクトルである。
【図9】反応pH1.0、Fe/As比1.2、5.5hr時点で生成したスコロダイトのXRDスペクトルである。
【図10】反応pH1.5、Fe/As比1.2、5.5hr時点で生成したスコロダイトのXRDスペクトルである。
【図11】反応pH1.5、Fe/As比1.2(分割添加)、6.0hr時点で生成したスコロダイトのXRDスペクトルである。
【図12】反応pH1.5、Fe/As比1.2(一括添加)、9.0hr時点で生成したスコロダイトのXRDスペクトルである。
【図13】反応pH1.5、Fe/As比1.0(Fe中和殿物パルプ)、5.5hr時点で生成したスコロダイトのXRDスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
上述した従来技術に係る特許文献1、2は、いずれも、5価砒素含有溶液に3価鉄塩を添加しスコロダイトを製造する方法についての提案である。
しかしながら、特許文献1の方法では、大量のスコロダイト種晶が必要である上、スコロダイトの結晶化に必要な時間が12時間以上という長時間を必要としている。また、特許文献2の方法も、スコロダイト生成の際、長時間を必要としている。
さらに、従来技術に係るいずれの方法も、砒素含有溶液に硫酸第二鉄を事前に所定量を配合し混合した後、反応操作が開始されるものである。
【0023】
本発明者等は、試行錯誤の結果、5価砒素含有溶液に3価鉄源を添加し、高い生産性と低コストとをもって、スコロダイトを製造するポイントを知見した。当該ポイントは、溶液の温度を所定温度以上に制御することと、pH値を0.8以上3.0以下の範囲内制御すること、および、pH制御が完了した後、溶液へ当該pH範囲内で3価鉄源添加するという添加のタイミングである。当該ポイントを押さえることで、大規模な設備投資の必要もなく、3価鉄源を用いながら、結晶性スコロダイト粒子が短時間で生成可能となった。さらに、生成する結晶性スコロダイト粒子は、濾過性が良好であり実操業上のハンドリングに優れるものである。
【0024】
すなわち、本発明は、5価砒素を含有する溶液を所定温度とし、この温度を維持しながら、当該溶液へアルカリまたは酸を添加し、pHを0.8以上3.0以下の範囲内として当該溶液へ3価鉄源を添加し、結晶性スコロダイトを得るか、または、当該溶液のpHを0.8以上3.0以下の範囲内に設定した高低2点のpH間で保持しながら、当該溶液へ3価鉄源を添加し、結晶性スコロダイトを得る方法である。
【0025】
ここで、所定温度としては、結晶性スコロダイトの生成速度の観点から70℃以上であること、および、結晶性スコロダイト生成中は当該所定温度を保つこと、が好ましい。
【0026】
さらに、pHを0.8以上3.0以下の範囲内として当該溶液へ3価鉄源を添加することで、短時間に結晶性スコロダイトが生成されるという利点がある。
一方、工程や装置の都合(pHの管理システム、装置の耐食性等)によっては、pHを0.8以上3.0以下の範囲内に設定した高低2点のpH間で保持しながら、当該溶液へ3価鉄源を添加するのも好ましい構成である。
【0027】
3価鉄源としては、3価の鉄塩がある。具体的には、硫酸第2鉄、塩化第2鉄、硝酸第2鉄等、種々が挙げられる。ここで、設備への腐食性の観点、汎用的な薬剤としての入手容易性の観点からは、硫酸第2鉄が好ましい。
硫酸第2鉄は温水に溶解し3価鉄イオンの溶液として添加することが好ましいが、液量を抑える観点から粉状で直接添加しても良い。
【0028】
3価Fe源に硫酸第2鉄を用いる場合は、下記の1)式で反応が進むものと推定される。その結果、硫酸が生成し溶液のpHが低下する。従って、中和剤を併用して、上述のようにpH制御することが好ましい。
2H3AsO4+Fe2(SO4)3+4H2O
→ 2FeAsO4・2H2O+3H2SO4 ・・・1)式
【0029】
一方、固体である3価鉄源として、水酸化鉄(Fe(OH)3)、ゲーサイト(FeO
OH)、および酸化鉄(Fe2O3)等も好適に使用する事が出来る。
これらの3価鉄源を用いる場合は、下記の2)式〜4)式で反応が進むものと推定される。この場合、硫酸が生成されないので、中和剤を用いたpH制御は基本的に不要であり、操作がより簡便となる利点を有する。
これらの3価鉄源は、被処理液への混合拡散を容易にする観点から、湿潤状態やパルプ状態として溶液へ添加することが好ましい。
H3AsO4+Fe(OH)3
→ FeAsO4・2H2O+3H2O ・・・2)式
H3AsO4+FeOOH
→ FeAsO4・2H2O ・・・・・・3)式
H3AsO4+1/2Fe2O3 +1/2H2O
→ FeAsO4・2H2O ・・・・・・4)式
【0030】
尚、3価鉄塩や3価鉄イオン溶液、および、固体としての水酸化鉄等の混合物も、3価鉄源として使用が可能である。これら混合物を添加する場合、上記1)式〜4)式の、いずれの反応が優先するかで、添加する中和剤の量が決定されることになる。
【0031】
当該3価鉄源を、5価砒素を含有する溶液へ添加する際、全量を一括添加することが出来る。当該全量一括添加によれば、操作が簡便化し、作業コストの低減を行うことが出来る。
一方、当該3価鉄源を2回以上の分割添加とする場合は、反応性が向上し、スコロダイト生成の反応時間を短縮することが出来る。当該3価鉄源の分割添加を行う場合は、当該3価鉄源に含まれる3価鉄のモル数を、前記溶液に含まれる5価砒素のモル数に対し1倍以下となるように2以上に分割することで、さらに反応性を向上出来、好ましい。
【0032】
3価鉄源添加後の5価砒素を含有する溶液のpHは、非保持としても良い。当該pHを非保持とすることで操作が簡便化し、作業コストの低減を行うことが出来る。
一方、工程や装置の都合(pHの管理システム、装置の耐食性等)によっては、3価鉄源添加後の5価砒素を含有する溶液のpHを、0.8以上、または、pHを0.8以上3.0以下の範囲内に設定した高低2点のpHにおけるpH(低値)以上に保つ構成を採ることも、好ましい構成である。
【0033】
以下、本発明に関し実施例を参照しながら詳細に説明する。
(実施例1)
1.)試験ユニットおよび試験規模
試験容器としては1Lビーカー使用を使用した。当該試験容器に設置する撹拌装置は、4枚邪魔板付き、2段タービン羽根、回転数400rpmを使用した。
このとき、1バッチ当たりにおける5価As元液の処理量は600mLとした。
【0034】
2.)5価As元液の調製
試薬60%砒酸溶液を30mL量り取り、これを純水にて600mLへ希釈し、実施例1に係る5価As元液を得た。
当該5価As元液のAs濃度は、分析の結果25.2g/Lであった。尚、当該5価As元液の93℃(実施例1における所定温度)でのpH値は、1.75であった。
【0035】
3.)3価Fe溶液の調製
試薬硫酸鉄(III)n水和物(Fe品位として21.6%)2,000gを量り取り、これを5Lビーカーに投入し、純水を加えて液量を1,900mLとした。そして、当該溶液を80℃に加温し、攪拌しながら硫酸鉄(III)を溶解させた。
硫酸鉄(III)溶解後、室温まで放冷し、液量が2,000mLになるように純水を補加
し、実施例1および各実施例に係る3価Fe溶液を得た。
分析の結果、当該3価Fe溶液のFe濃度は215g/Lであることが判明した。
【0036】
4.)5価As元液に対する、3価Fe溶液の添加量
スコロダイトの化学式はFeAsO4・2H2Oで示され、反応量論的には、As1モルに対しFe1モルが反応する、等モル反応の関係にある。
そこで、実施例1においては、当該3価Fe溶液の添加量を、Fe純分量として5価As元液中のAs総モル量の1倍当量(等モル)とした。
具体的には、5価As元液中のAs濃度が25.2g/Lであり、かつ5価As元液処理量が1バッチ当たり600mLなので、これに含まれるAs総モル量は、1バッチ当たり0.202モルと計算される。
従って、当該3価Fe溶液(Fe濃度:215g/L)の1倍当量(等モル)の添加量は下式にて算出される。
3価Fe溶液添加量(1倍当量(等モル))=0.202×55.847(Fe原子量)×1(倍)÷215×1000=52mL
同様に、後述の実施例4及び5における当該3価Fe溶液の1.2倍当量(1.2倍モル)の添加量は63mLと算出される。
【0037】
5.)pH調整剤
本実施例におけるpH調整剤は、Mg(OH)2が好ましい。これは当該pH調整剤が反応pHを調整した後、生成するMgSO4が易溶性であること、および、Mgイオンが後工程のスコロダイトに悪影響を与えない為である。pH調整剤として、Ca(OH)2も使用可能であるがpHを調整した後に生成するCaSO4が難溶性である為、この点に配慮が求められる。
その他のpH調整剤としてNaOHやKOHが挙げられるが、これらは高価であり、且つ、その濃度にもよるが、反応時にジャロサイトを形成し易く、生成スコロダイトの溶出特性に悪影響を及ぼす場合がある。そこで、NaOHやKOHをpH調整剤として用いる場合には、Mg(OH)2やCa(OH)2と併用する等して、その使用量を少量に抑えることが好ましい。
本実施例においては、試薬Mg(OH)2としてキシダ化学株式会社製試薬、水酸化マグネシウムMg(OH)2(assay min95%)を準備した。
【0038】
実施例1における以上の部分は、後述する実施例2〜5においても同様である。
【0039】
6.)スコロダイト生成反応
本発明に係るスコロダイト生成反応のフロー図を、図1に示す。以下、図1を参照しながら、本発明に係る実施例1のスコロダイト生成反応について説明する。
5価As元液〈1〉600mLを93℃へ加温し(このとき、当該元液はpH1.75を示した。)、硫酸〈2〉添加にて設定値であるpH1.50へ調整した。
このタイミングで当該元液へ、3価Fe溶液〈3〉52mL(Fe/As(mol/mol)=1.0に相当量である。)を、定量ポンプを用い30分間かけて添加した。当該添加の間、当該元液の液温を93℃に保持し、且つ、適宜量のpH調整剤〈4〉としてMg(OH)2添加によりpHが1.50より低下しないように保持した。
【0040】
当該3価Fe溶液〈3〉添加後も、pHが1.50より低下しないように保持しながら反応を進め、93℃、3時間経過時点(Fe源添加時間の30分間を含む。以下同じ。)で少量(約50mL)サンプリングを行い、93℃、5.5時間経過時点で反応を終了した。各時間経過毎の反応生成物を濾過〈5〉し、各時間経過毎の濾過物〈6〉と濾液〈7〉とを得た。
【0041】
7.)生成したスコロダイトの評価
得られた各時間経過毎の濾過物〈6〉を純水洗浄した後、X線回折測定を行い、3時間経過時点、5.5時間経過時点におけるスコロダイト生成状況を評価した。
反応時間3時間経過時点における濾過物〈6〉のX線回折結果を図2に示し、組成の分析結果を表1に示す。
図2のX線回折結果より、反応時間3時間時点から既にスコロダイト(FeAsO4・2H2O)の結晶を示すシャープなピークが広い回折角の範囲で確認された。
【0042】
【表1】
【0043】
8.)反応持のpHを変えたときのスコロダイト生成反応
引き続き、「6.)スコロダイト生成反応」において添加する硫酸〈2〉の添加量を調整して、pH1.5より酸性側の例としてpH0.75、pH0.8、pH0.9、pH1.0の5価As元液600mLを調製した。一方、添加するpH調整剤〈4〉のMg(OH)2粉の添加量を調製して、pH1.5より中性側の例としてpH2.0、pH3.0、pH3.5の5価As元液600mLとを調製した。
この後は、「6.)スコロダイト生成反応」と同様の操作を行い、スコロダイト生成状況を評価した。
【0044】
9.)反応持のpHを変えて生成したスコロダイトの評価
反応持のpHを変えて生成したスコロダイトの評価結果を、表2に示す。
また、pH0.9としたときのスコロダイトのX線回折結果を図3に、pH1.5としたときのスコロダイトのX線回折結果を図4に、pH2.0としたときのスコロダイトのX線回折結果を図5に、pH3.0としたときのスコロダイトのX線回折結果を図6に示す。
【0045】
【表2】
【0046】
ここで、反応pH3.5とした場合は、3時間および5.5時間経過時点でスコロダイト生成が確認出来なかった。そこで、再度同様の操作を行って、9時間経過時点まで反応を行ったが、濾過物〈6〉にスコロダイトとしての明瞭なピークは確認出来なかった。この9時間経過時点における濾過物〈6〉のX線回折結果を図7に示す。
【0047】
次に、5.5時間経過時点において、濾過物〈6〉中にスコロダイトが確認されたpH0.75〜3.0の領域の試料の3時間および5.5時間経過時点における濾液〈7〉のAs濃度を測定した。当該pH0.75〜3.0の領域の試料の3時間および5.5時間経過時点における濾液〈7〉のAs濃度の測定結果を表3に示す。
【0048】
【表3】
【0049】
表3の結果から、各pH値における当初の5価Asのスコロダイトへの転換率について検討を行った。
すると、pH0.75とpH0.8とでは、当初の5価Asのスコロダイトへの転換率に、さほど差は認められない。しかし、pH0.8からpH0.9にかけて、当初の5価Asのスコロダイトへの転換率は急激に向上することが分かる。
従って、当初の5価As元液が強い酸性を示し、酸性側でスコロダイト生成反応させる場合、pHは0.8以上、好ましくは0.9以上に調整するのが良い。さらに、pHが1.0〜3.0の領域においては、スコロダイト生成反応は3時間時点でその殆どが完了しているものと推定される。一方、反応pH値の上限は、上述したように3とするのが好ましい。
【0050】
(実施例2)
実施例2は、実施例1の「6.)スコロダイト生成反応」にて説明した、3価Fe溶液添加時のpHを、実施例1で説明した所定値固定ではなく、所定の高低2点のpH間で添加をおこなった場合の実施例である。さらに実施例2は、3価Fe溶液添加後にpHを非保持とした実施例である。
【0051】
As元液(実施例1と同じ)600mL、3価Fe溶液(実施例1と同じ)52mL(Fe/As(mol/mol)=1.0)を準備した。
As元液600mLを93℃に加温し保温した(このとき、pH1.74であった。)。当該93℃に保温されたAs元液へ、3価Fe溶液52mLを定量ポンプを介し添加を開始した。尚、添加速度は、30分間で添加が完了する速度とした。
3価Fe溶液の添加開始から3分間後に、溶液のpHは1.40(当該pH値を低値とした。)となった。この時点で、溶液へMg(OH)2粉を添加し、約1分間でpH1.
70(当該pH値を高値とした。)まで中和し、その後は溶液のpHを非保持とし、3価Fe溶液の添加を継続した。約3分間後に、溶液のpH値は再度1.40(低値)となったので、Mg(OH)2を再度添加し、約1分間でpH1.70(高値)まで中和した。
以上の操作を繰り返し、所定の3価Fe溶液を全て添加し、この時点でpH1.70(高値)へ調整し、その後はpHを非保持として、撹拌と保温とを5.5時間継続し(3価Fe添加時間の30分間を含む。)反応させた。反応終了時における溶液のpHは1.61(at93℃)であり、スコロダイトの生成可能領域内であった。
【0052】
生成したスコロダイトを実施例1と同様に採取し、純水洗浄後、X線回折測定を行った。結果を図8に示す。
図8において、実施例1と同様の、スコロダイト結晶の鋭いピークが確認された。
尚、反応終了時の液中As濃度は0.55g/Lであった。
【0053】
(実施例3)
実施例3は、実施例1の「6.)スコロダイト生成反応」にて説明した、As元液の液温を60、70、80、93℃の4水準とし、サンプリング時点を反応3、5.5、7時
間時点とした実施例である。
As元液の液温の変更、および、反応時間を7時間まで延長した以外は、実施例1と同様の操作を実施し、スコロダイト結晶の生成の有無、溶液中のAs濃度の推移を測定した。さらに、濾過物にX線回折測定を行いスコロダイト結晶が認められるか否かを調べた。
As元液の液温と、スコロダイト結晶の生成の有無との関係を表4に示す。
また、As元液の温度と、As濃度の推移を表5に示す。
【0054】
【表4】
【表5】
【0055】
表4、5の結果から、As元液の液温が70℃以上あれば、反応時間7時間以内でスコロダイト結晶が確認され、スコロダイト生成は可能である。尤も、反応時間と、As濃度の低下挙動から反応性を考えると、As元液の液温は80℃以上が、さらに好ましい。
【0056】
(実施例4)
実施例4は、実施例1の「6.)スコロダイト生成反応」にて説明した、3価Fe溶液添加時間を5、30、60分の3水準とし、且つ、3価Fe溶液添加量を63mL(Fe/As(mol/mol)=1.2に相当量)に増やし、生成するスコロダイトの濾過性について検討した実施例である。
3価Fe溶液添加時間を5、30、60分の3水準とし、且つ、3価Fe溶液量を増量した以外は、実施例1と同様の操作を実施し、生成したスコロダイト結晶の濾過性を調べた。
【0057】
スコロダイト結晶の濾過性を調べた際の濾過条件について説明する。
・濾過圧:4〜4.5kg/m2
・ろ紙:直径142mm、孔径1.0μm、材質PTFE(メンブレンフィルター ADVANTEC製)
【0058】
尚、反応時間は7時間(3価Fe溶液添加時間を含む。)とした。
反応終了後の濾過物に対し純水洗浄後にX線回折測定を行ったところ、全てがスコロダイトであることが確認された。
表6に、反応終了後生成したスコロダイトの濾過性と、濾液中のAs濃度とについて示す。
【0059】
【表6】
【0060】
ここで表6の結果から、実施例4に係る生成パルプの濾過速度を考えた。
具体的には、反応後の生成パルプ量を663mL(As元液600mL+3価Fe溶液63mL)と考え、上述したろ紙の濾過面積(m2)から、単位時間(min)当たりの濾過速度を求めた。
ろ紙の濾過面積=(ろ紙半径)×(ろ紙半径)×π=(0.142/2)×(0.142/2)×3.14=0.01583m2である。従って、3価Fe溶液添加時間5分間の試験における濾過速度は、0.663L÷0.01583m2÷(22÷60)min=114L/m2/minと算出される。
以下、同様に計算した。当該計算結果を表7に示す。
【0061】
【表7】
【0062】
表7の結果から、3価Fe溶液添加時間と生成スコロダイトの濾過性とには明瞭な関係が存在することが判明した。3価Fe溶液添加時間を長く設定すれば、生成パルプの濾過速度が上がり、短時間に濾過を終了することが出来る。
尤も、3価Fe溶液添加時間5分間の場合における濾過速度は114L/m2/minであるが、当該濾過速度自体は実操業でも問題の無いレベルである。
【0063】
(実施例5)
実施例5は、実施例1の「6.)スコロダイト生成反応」にて説明した3価Fe溶液添加において、3価Fe溶液の添加総量がFe/As(mol/mol)で1倍当量以上となるとき、当該添加操作を複数回に分割して実施する方法と、当該分割添加法の利点について説明する。
【0064】
当該実施例に先立ち、本発明者等はAs元液へ、3価Fe溶液をFe/As(mol/mol)=1倍以上添加する場合、pH値が1.5以上であると生成するスコロダイト結晶のX線回折強度が弱まる挙動を示すとの知見を得た。
因みに、例として、Fe/As=1.2、5.5時間反応においてpH1.0において生成するスコロダイト結晶のX線回折測定結果を図9に、pH1.5とにおいて生成するスコロダイト結晶のX線回折測定結果を図10に示す。
【0065】
本発明者等は、3価Fe溶液をFe/As(mol/mol)=1倍以上添加する場合でも、X線回折強度が高い、すなわち結晶性が高いスコロダイト結晶を生成させるスコロダイトの生成方法を鋭意研究した。
そして、当該研究の結果、反応開始時に、3価Fe溶液のFe/As=1倍当量を添加し、スコロダイト結晶生成が確認される3〜5.5時間後、すなわち、As元液中におけるAs総モル量の90%以上が反応析出するまで反応させる。そして、当該反応開始時から3〜5.5時間経過後、残りの3価Fe溶液を追加添加し、引き続き反応を継続させる方法に想到した。
尤も、上述した3〜5.5時間の反応時間は、本試験ユニットで決まる時間である。従って、当該方法で実用化を考える場合は、使用される反応器の反応性を調べた上で、反応時間を決定すれば良い。
【0066】
以上説明した3価Fe溶液を、複数回に分割して添加する効果を確認するため、3価Fe溶液をFe/As(mol/mol)=1.2倍添加することとした以外は実施例1と同様であるが、3価Fe溶液を、2回に分割して添加する試験と、1回で全量添加する試験とを行った。
【0067】
〈3価Fe溶液の2回分割添加〉
反応開始時から30分間の時点で、As元液へFe/As=1.0倍当量の3価Fe溶液(52mL)を添加し3時間反応させた。当該3時間反応後、溶液を少量サンプリングし、残りのFe/As=0.2当量の3価Fe溶液(11mL)を30分間で再度添加し
た。3価Fe溶液添加後、少量サンプリングし、引き続き4.5時間点で再サンプリングし、6時間時点で反応を終了し生成物を濾過した。
最終濾過で得られたスコロダイトは、純水洗浄後に組成分析と溶出試験とを行った。
【0068】
〈3価Fe溶液の一括添加〉
反応開始時から30分間の時点で、As元液へFe/As=1.2倍当量の3価Fe溶液(63mL)を一括添加し3時間反応させた。当該3時間反応後、溶液を少量サンプリングし、引き続き5.5時間、7時間時点で再サンプリングしAs濃度の変化を追跡し、9時間時点で反応を終了し生成物を濾過した。
最終濾過で得られたスコロダイトは、純水洗浄後に組成分析と溶出試験とX線回折測定とを行った。
【0069】
上述した3価Fe溶液の2回分割添加の場合と、3価Fe溶液の一括添加の場合とにお
ける、溶液におけるAs濃度の推移を表8に示す。
【0070】
【表8】
【0071】
表8の結果から、3価Fe溶液の2回分割添加の場合は、3価Fe溶液の一括添加の場合に比較して、反応性が格段に向上することが判明した。
3価Fe溶液の2回分割添加の場合、3時間時点で残りのFe/As=0.2相当分の3価Fe溶液を30分間かけて添加した。すると、添加終了時の3.5時間時点において、既に溶液のAs濃度は0.02g/Lであり、その後も当該As濃度に変化がないので、この3.5時間時点で反応は殆ど完了しているものと推定される。尚、6時間時点における残留As濃度が0.02g/Lであることから、Asの99.9%以上がスコロダイトへ転換したものと考えられる。
【0072】
一方、3価Fe溶液の一括添加の場合では、5.5時間時点においてもAsが0.80g/L残存していた。そして、As濃度が0.1g/L以下となるためには7時間が必要であった。
以上のことから、3価Fe溶液の分割添加は、反応性向上において非常に効果的であることが認められた。
【0073】
また、3価Fe溶液の2回分割添加の場合と、一括添加の場合で得られたスコロダイトの組成と溶出試験結果を表9に示す。
尚、溶出方法は環境庁告示13号に準拠。ただし、溶出処理後の液の濾過は、孔径0.2μmのMCE(Mixed Cellulose Ester)製のフィルターを介して行った。
【0074】
【表9】
【0075】
表9より、両場合ともAsの溶出は認められず、生成したスコロダイトは安定であることが判明した。
また、3価Fe溶液の2回分割添加で得られたスコロダイトX線回折結果を図11に、一括添加の場合で得られたスコロダイトX線回折結果を図12に示す。
【0076】
図11に示す3価Fe溶液の2回分割添加で得られたスコロダイトは、強い強度ピークを示し、結晶性の高いスコロダイトが生成したことが判明した。これに対して、図12に示す3価Fe溶液の一括添加で得られたスコロダイトは、上述した図10に示す5.5時間反応のスコロダイトより強度のアップしているものの、図11に示す3価Fe溶液の2回分割添加で得られたスコロダイトより強度は低いことが判明した。
【0077】
(実施例6)
本実施例は、3価Fe源として、3価Fe溶液(液体)ではなく、3価Fe溶液を事前に中和して得られた中和殿物パルプ(固体)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行ったものである。
尚、反応条件は、液温93℃保持、pHは1.5を保持しながら、当該中和殿物パルプを添加し、その後はpH非保持とした例である。
【0078】
中和殿物パルプ(3価Fe源(固体))について説明する。
中和殿物パルプ(3価Fe源(固体))は、「3.)3価Fe溶液の調製」にて説明した3価Fe溶液に代えて使用可能な、3価Fe溶液を中和して得られる中和殿物パルプ(3価Fe源(固体))である。
以下、当該3価Fe(固体)の調製について説明する。
「3.)3価Fe溶液の調製」にて調製した3価Fe溶液(Fe濃度215g/L)54mLを純水で2Lに希釈し、50℃に加温保持する。当該3価Fe溶液の液温を保持しながら、攪拌下にて、50g/LのNaOH溶液を添加しpH5.5へ中和する。3価Fe溶液がpH5.5に到達後、さらに15分間攪拌を維持して反応を終了し、中和パルプを得た。
得られた中和パルプを濾過して濾過ケーキを回収し、さらに当該濾過ケーキを2Lの純水でリパルプし、50℃にて15分間攪拌洗浄してから濾過して、洗浄された濾過ケーキを得た。当該洗浄された濾過ケーキを純水でリパルプし、容量を250mLへ調整した。
当該容量250mLの濾過ケーキパルプを、以後の操作において3価Fe源(固体)として用いた。
【0079】
As元液600mLを93℃に加熱し、硫酸を添加してpH1.50へ調整した。
ここで、中和殿物パルプのpHは4.52であるため、中和殿物パルプ添加による希釈に起因するpH上昇を回避する目的で希硫酸添加を行いpH1.50を保持した。ここへ、当該中和殿物パルプ250mLを約10分間にて添加し、添加後はpHを非保持のままとし、93℃にて5.5時間反応を行った(尚、当該反応時間は、中和殿物パルプ添加開始時を反応開始時としている。)。
【0080】
反応中の反応pH値の推移は、中和殿物パルプ添加終了時から15分間に渡り漸次上昇しpH1.56をピークとし、その後は徐々に低下した。そして、反応2時間時点でpH1.51、3時間時点でpH1.50となり、その後、反応終了時の5.5時間までpH1.50のままであった。
反応終了後、生成したスコロダイトを濾過して採集し、純水洗浄後、化学分析、およびX線回折測定を行った。得られたスコロダイトの化学分析結果を表10に、X線回折測定結果を図13に示す。
尚、濾液のAs濃度は0.40g/Lであった。
【0081】
【表10】
【0082】
図13と、図4との比較から明らかなように、Fe源に3価Fe溶液を用いた方法と、中和殿物パルプを用いた方法とでは、生成したスコロダイトは、同位置に殆ど同じピーク強度を示した。
従って、Fe源に中和殿物パルプを用いることは、3価Fe溶液を用いた場合と全く同様に可能である。
【0083】
尚、本実施例では、硫酸を添加し溶液のpHを制御しながらFe源を添加し行った例である。尤も、当該Fe源を所定量添加終了した時点において、溶液のpHがスコロダイト生成可能領域内(pH0.8〜3.0)に留まるのであれば、pH制御を行わなくても良い。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
5価砒素を含有する溶液から結晶性スコロダイトを得る方法であって、
当該溶液の液温を所定温度とし、当該溶液へアルカリまたは酸を添加してpHを0.8以上3.0以下の範囲内に保持しながら、当該溶液へ3価鉄源を添加し、結晶性スコロダイトを得る方法。
【請求項2】
5価砒素を含有する溶液から結晶性スコロダイトを得る方法であって、
当該溶液の液温を70℃以上とし当該液温を維持しながら、当該溶液へアルカリまたは酸を添加してpHを0.8以上3.0以下の範囲内に保持しながら、当該溶液へ3価鉄源を添加し結晶性スコロダイトを得る方法。
【請求項3】
5価砒素を含有する溶液から結晶性スコロダイトを得る方法であって、
当該溶液の液温を70℃以上とし当該液温を維持しながら、当該溶液へアルカリまたは酸を添加してpHを0.8以上3.0以下の範囲内に保持しながら、当該溶液へ3価鉄源を添加し、当該3価鉄源添加終了後は、pHを非保持として結晶性スコロダイトを得る方法。
【請求項4】
5価砒素を含有する溶液から結晶性スコロダイトを得る方法であって、
当該溶液の液温を70℃以上とし当該液温を維持しながら、当該溶液へアルカリまたは酸を添加してpHを0.8以上3.0以下の範囲内に保持しながら、当該溶液へ3価鉄源を添加し、当該3価鉄源添加終了後も、当該溶液のpHを0.8以上に保持しながら結晶性スコロダイトを得る方法。
【請求項5】
5価砒素を含有する溶液から結晶性スコロダイトを生成させる方法であって、
当該溶液の液温を70℃以上とし当該液温を維持しながら、当該溶液へアルカリまたは酸を添加して、当該溶液のpHを0.8以上3.0以下の範囲内に設定した高低2点のpH間で保持しながら、当該溶液へ3価鉄源を添加し結晶性スコロダイトを得る方法。
【請求項6】
5価砒素を含有する溶液から結晶性スコロダイトを生成させる方法であって、
当該溶液の液温を70℃以上とし当該液温を維持しながら、当該溶液へアルカリまたは酸を添加して、当該溶液のpHを0.8以上3.0以下の範囲内に設定した高低2点のpH間で保持しながら、当該溶液へ3価鉄源を添加し、当該3価鉄源添加終了後は、pHを非保持として結晶性スコロダイトを得る方法。
【請求項7】
5価砒素を含有する溶液から結晶性スコロダイトを生成させる方法であって、
当該溶液の液温を70℃以上とし当該液温を維持しながら、当該溶液へアルカリまたは酸を添加して、当該溶液のpHを0.8以上3.0以下の範囲内に設定した高低2点のpH間で保持しながら、当該溶液へ3価鉄源を添加し、当該3価鉄源添加終了後も、当該溶液のpHを当該設定した低pH値以上に保持しながら結晶性スコロダイトを得る方法。
【請求項8】
前記5価砒素を含有する溶液中に存在する5価砒素のモル数に対し、1倍以上のモル数の3価鉄を含む前記3価鉄源を、当該溶液へ添加する請求項1から7のいずれかに記載の結晶性スコロダイトを得る方法。
【請求項9】
前記3価鉄源を、当該3価鉄源に含まれる3価鉄のモル数が、前記溶液に含まれる5価砒素のモル数に対し1倍以下となるように、2以上に分割し、
当該分割された一の3価鉄源を前記溶液へ添加し、スコロダイトの生成を確認したら、当該分割された二の3価鉄源を、当該スコロダイトの生成が確認された溶液へ添加し、以下、順次、分割された3価鉄源を、当該スコロダイトの生成が確認された溶液へ添加する
請求項8に記載の結晶性スコロダイトを得る方法。
【請求項10】
前記3価鉄源が、3価鉄イオンを含む溶液、または、当該3価鉄イオンを含む溶液を中和して得られる中和殿物、または、これらの混合物である請求項1から9のいずれかに記載の結晶性スコロダイトを得る方法。
【請求項11】
前記pH保持に用いるアルカリが、MgまたはCaを含むアルカリであり、前記pH保持に用いる酸が、硫酸である請求項1から10のいずれかに記載の結晶性スコロダイトを得る方法。
【請求項1】
5価砒素を含有する溶液から結晶性スコロダイトを得る方法であって、
当該溶液の液温を所定温度とし、当該溶液へアルカリまたは酸を添加してpHを0.8以上3.0以下の範囲内に保持しながら、当該溶液へ3価鉄源を添加し、結晶性スコロダイトを得る方法。
【請求項2】
5価砒素を含有する溶液から結晶性スコロダイトを得る方法であって、
当該溶液の液温を70℃以上とし当該液温を維持しながら、当該溶液へアルカリまたは酸を添加してpHを0.8以上3.0以下の範囲内に保持しながら、当該溶液へ3価鉄源を添加し結晶性スコロダイトを得る方法。
【請求項3】
5価砒素を含有する溶液から結晶性スコロダイトを得る方法であって、
当該溶液の液温を70℃以上とし当該液温を維持しながら、当該溶液へアルカリまたは酸を添加してpHを0.8以上3.0以下の範囲内に保持しながら、当該溶液へ3価鉄源を添加し、当該3価鉄源添加終了後は、pHを非保持として結晶性スコロダイトを得る方法。
【請求項4】
5価砒素を含有する溶液から結晶性スコロダイトを得る方法であって、
当該溶液の液温を70℃以上とし当該液温を維持しながら、当該溶液へアルカリまたは酸を添加してpHを0.8以上3.0以下の範囲内に保持しながら、当該溶液へ3価鉄源を添加し、当該3価鉄源添加終了後も、当該溶液のpHを0.8以上に保持しながら結晶性スコロダイトを得る方法。
【請求項5】
5価砒素を含有する溶液から結晶性スコロダイトを生成させる方法であって、
当該溶液の液温を70℃以上とし当該液温を維持しながら、当該溶液へアルカリまたは酸を添加して、当該溶液のpHを0.8以上3.0以下の範囲内に設定した高低2点のpH間で保持しながら、当該溶液へ3価鉄源を添加し結晶性スコロダイトを得る方法。
【請求項6】
5価砒素を含有する溶液から結晶性スコロダイトを生成させる方法であって、
当該溶液の液温を70℃以上とし当該液温を維持しながら、当該溶液へアルカリまたは酸を添加して、当該溶液のpHを0.8以上3.0以下の範囲内に設定した高低2点のpH間で保持しながら、当該溶液へ3価鉄源を添加し、当該3価鉄源添加終了後は、pHを非保持として結晶性スコロダイトを得る方法。
【請求項7】
5価砒素を含有する溶液から結晶性スコロダイトを生成させる方法であって、
当該溶液の液温を70℃以上とし当該液温を維持しながら、当該溶液へアルカリまたは酸を添加して、当該溶液のpHを0.8以上3.0以下の範囲内に設定した高低2点のpH間で保持しながら、当該溶液へ3価鉄源を添加し、当該3価鉄源添加終了後も、当該溶液のpHを当該設定した低pH値以上に保持しながら結晶性スコロダイトを得る方法。
【請求項8】
前記5価砒素を含有する溶液中に存在する5価砒素のモル数に対し、1倍以上のモル数の3価鉄を含む前記3価鉄源を、当該溶液へ添加する請求項1から7のいずれかに記載の結晶性スコロダイトを得る方法。
【請求項9】
前記3価鉄源を、当該3価鉄源に含まれる3価鉄のモル数が、前記溶液に含まれる5価砒素のモル数に対し1倍以下となるように、2以上に分割し、
当該分割された一の3価鉄源を前記溶液へ添加し、スコロダイトの生成を確認したら、当該分割された二の3価鉄源を、当該スコロダイトの生成が確認された溶液へ添加し、以下、順次、分割された3価鉄源を、当該スコロダイトの生成が確認された溶液へ添加する
請求項8に記載の結晶性スコロダイトを得る方法。
【請求項10】
前記3価鉄源が、3価鉄イオンを含む溶液、または、当該3価鉄イオンを含む溶液を中和して得られる中和殿物、または、これらの混合物である請求項1から9のいずれかに記載の結晶性スコロダイトを得る方法。
【請求項11】
前記pH保持に用いるアルカリが、MgまたはCaを含むアルカリであり、前記pH保持に用いる酸が、硫酸である請求項1から10のいずれかに記載の結晶性スコロダイトを得る方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−285322(P2010−285322A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−141463(P2009−141463)
【出願日】平成21年6月12日(2009.6.12)
【出願人】(306039131)DOWAメタルマイン株式会社 (92)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月12日(2009.6.12)
【出願人】(306039131)DOWAメタルマイン株式会社 (92)
【Fターム(参考)】
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