説明

硬表面用除菌洗浄剤組成物

【課題】油汚れの洗浄力と低温乃至高温時における組成物の貯蔵安定性に優れることはもとより、除菌性にも優れる、硬表面の洗浄、特に、スーパーマーケットのバックヤード、厨房、レストラン、食堂、食品加工工場等の床の洗浄に好適に用いられる硬表面用除菌洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】(A)ノニオン界面活性剤20〜40質量%、(B)カチオン界面活性剤2〜10質量%、(C)アルカリ剤1〜5質量%、(D)水溶性溶剤5〜20質量%、(E)キレート剤0.1〜5質量%、及び(F)水を含有し、且つ、原液におけるpH(JIS−Z−8802:1984「pH測定方法」)が、25℃で12以上に設定されていることを特徴とする硬表面用除菌洗浄剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄力と組成物の貯蔵安定性に優れることはもとより、除菌力にも優れた硬表面用洗浄剤組成物に関する。さらに詳しくは、油汚れの洗浄力と低温乃至高温時における組成物の貯蔵安定性に優れることはもとより、除菌力にも優れる、硬表面の洗浄、特に、スーパーマーケットのバックヤード、厨房、レストラン、食堂、食品加工工場等の床の洗浄に好適に用いられる硬表面用洗浄剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、スーパーマーケットのバックヤード、厨房、レストラン、食堂、食品加工工場等においては、調理台や調理機器周辺はもとより、床にも、調理する際に油が飛び散ったり、それが拡散することで油汚れが堆積しやすい。この状態のままではすべりや転倒のおそれが生じるだけでなく、汚れを栄養源として微生物が繁殖し不衛生になるため、頻繁に床面を洗浄する必要がある。このための洗浄剤としては、従来、アルカリ剤や溶剤を主剤にし、界面活性剤を配合されたものが用いられている。
【0003】
このような洗浄剤としては、例えば、水溶性カチオン系界面活性剤、ノニオン界面活性剤、キレート化剤、水及びアルカリ性ナトリウム化合物のアルカリ性溶液からなる硬質表面用水性洗浄組成物が提案されている(特許文献1を参照)。しかしながらこれらの洗浄剤では、希釈して使う際に洗浄成分である非イオン系界面活性剤が少ないため十分な洗浄力が得られない。また、非イオン系活性剤の配合量を増やしても洗浄力があまり向上しないばかりでなく、安定性が悪くなるといった欠点がある。
また、苛性ソーダおよび/または苛性カリ、ヒドロキシアミノカルボン酸、アミノカルボン酸またはその塩あるいは水溶性高分子から選ばれるカルシウム捕捉能有するキレート剤、グリコールエーテル系溶剤、界面活性剤を特性の比率で含有する食品工業用液体洗浄剤組成物が提案されている(特許文献2を参照)。しかしながらこれらの洗浄剤は界面活性剤を可溶化するために、トルエンスルホン酸ソーダなどのアニオン系界面活性剤を必要とする。そのためカチオン系界面活性剤を配合すると除菌力が得られないばかりでなく安定性が低下する。
また、ポリオキシエチレンアルキルエーテル型界面活性剤、第4級アンモニウム塩型界面活性剤、無機塩ビルダー、キレート剤、アルカノールアミン類を含有し、原液のpHが12〜13であることを特徴とする床用洗浄剤組成物が提案されている(特許文献3を参照)。しかしながらこれらの洗浄剤は、洗浄成分としてポリオキシエチレンアルキルエーテル型界面活性剤のみを使用しているため、配合量を増やしても洗浄力があまり向上しないばかりでなく、アルカノールアミン類を含有するため、使用時にその臭気が作業者に不快感を与えるといった欠点がある。
これらの洗浄剤はいくつかの欠点があり、いまだ改良の余地が残されている。
【0004】
【特許文献1】特開平5−502683号公報
【特許文献2】特開平6−116594号公報
【特許文献3】特開2001−311093号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、油汚れの洗浄力と低温乃至高温時における組成物の貯蔵安定性に優れることはもとより、除菌性にも優れる、硬表面の洗浄、特に、スーパーマーケットのバックヤード、厨房、レストラン、食堂、食品加工工場等の床の洗浄に好適に用いられる硬表面用除菌洗浄剤組成物の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討の結果、上記の目的を達成する硬表面用除菌洗浄剤組成物を見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、
(A)ノニオン界面活性剤20〜40質量%、
(B)カチオン界面活性剤2〜10質量%、
(C)アルカリ剤1〜5質量%、
(D)水溶性溶剤5〜20質量%、
(E)キレート剤0.1〜5質量%、及び
(F)水
を含有し、且つ、原液におけるpH(JIS−Z−8802:1984「pH測定方法」)が、25℃で12以上に設定されていることを特徴とする硬表面用除菌洗浄剤組成物を第1の要旨とする。
【0007】
また、上記(A)成分のノニオン界面活性剤が、(a1)ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、(a2)アルキルポリグルコシド及び(a3)アルキルアミンオキサイドを含有し、(a1)、(a2)、(a3)成分の配合比率が質量比で(a1)/(a2)/(a3)=0.08〜0.6/0.2〜0.63/0.07〜0.75の範囲にある上記硬表面用除菌洗浄剤組成物を第2の要旨とし、上記(B)成分のカチオン界面活性剤が、第4級アンモニウム塩及びポリヘキサメチレンビグアナイドから選ばれる少なくとも一種である上記硬表面用除菌洗浄剤組成物を第3の要旨とする。
【0008】
そして、上記(C)成分のアルカリ剤が、無機アルカリ性物質である上記硬表面用除菌洗浄剤組成物水溶性溶剤を第4の要旨とし、上記(D)成分の水溶性溶剤が、グリコール系溶剤及びアルコールから選ばれる少なくとも1種である上記硬表面用除菌洗浄剤組成物を第5の要旨とする。上記(E)成分のキレート剤が、ヒドロキシカルボン酸及び/又はその塩、アミノカルボン酸及び/又はその塩から選ばれる少なくとも1種である上記硬表面用除菌洗浄剤組成物を第6の要旨とする。
【0009】
さらに、床用用途である上記硬表面用除菌洗浄剤組成物を第7の要旨とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の硬表面用除菌洗浄剤組成物は、ノニオン界面活性剤(A成分)、カチオン界面活性剤(B成分)、アルカリ剤(C成分)、水溶性溶剤(D成分)、キレート剤(E成分)及び水(F成分)を含有し、且つ、原液におけるpH(JIS−Z−8802:1984「pH測定方法」)が25℃で12以上とアルカリ性に設定されていることにより、加熱又は長時間の付着により硬表面上に堅固に付着した油汚れに対する洗浄力と、低温乃至高温時における組成物の貯蔵安定性に優れることはもとより、除菌性にも優れた効果を発揮する。そのため、本発明の硬表面用除菌洗浄剤組成物は、硬表面の洗浄、特に、スーパーマーケットのバックヤード、厨房、レストラン、食堂、食品加工工場等の床の洗浄に好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0012】
本発明の硬表面用除菌洗浄剤組成物は、その主成分として、(A)ノニオン界面活性剤、(B)カチオン界面活性剤、(C)アルカリ剤、(D)水溶性溶剤、(E)キレート剤及び(F)水を含有することを特徴としている。
【0013】
上記(A)成分であるノニオン界面活性剤としては、(a1)ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、(a2)アルキルポリグルコシド及び(a3)アルキルアミンオキサイドがあげられる。これらは、被洗浄物を洗浄する目的で配合される。
【0014】
上記(a1)ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとして、具体的には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル,ポリオキシプロピレンアルキルエーテル,ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル,ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル,ポリオキシプロピレンアルキルフェニルエーテル,ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルフェニルエーテル等があげられる。
【0015】
なかでも、油汚れに対する洗浄力及び浸透性の点から、炭素数8〜18の第1級又は第2級アルコールに平均で2〜20モルのエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドが付加したものが好ましい。例えば、炭素数9〜16の高級アルコールのエチレンオキサイド(2〜15モル)付加物、炭素数9〜16の高級アルコールのエチレンオキサイド(2〜15モル)プロピレンオキサイド(2〜15モル)付加物が好ましく用いられる。
【0016】
また、アルキルポリグルコシドとしては、下記の一般式(1)で表される。
−(OR(Z) ・・・(1)
[式(1)中、Rは平均炭素数8〜18の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、アルケニル基又はアルキルフェニル基を示し、Rは炭素数2〜4のアルキレン基を示し、Zは炭素数5〜6の還元糖に由来する残基であり、xはその平均数が0〜5となる数を示し、yはその平均値が1〜2となる数を示す。]
は、水溶性及び洗浄力の点から、平均炭素数8〜16のアルキル基が好ましく、Rは、水溶性の点から、炭素数2〜3が好ましい。さらに、Zは単糖類もしくは2糖類以上の原料によってその構造が決定されるが、このZの原料としては、入手容易性及びコストの点から、単糖類ではグルコース及びフルクトースが好ましく、2糖類以上ではマルトース及びスクロースが好ましい。このなかでも特に、入手容易性の点からグルコースが好ましい。
【0017】
また、アルキルアミンオキサイドとしては、アルキル基の炭素数が8〜18の直鎖又は分岐鎖のアルキルジメチルアミンオキサイド、アルキル基の炭素数が8〜18のアミドプロピルアミンオキサイドがあげられ、具体的には、デシルジメチルアミンオキサイド、ラウリルジメチルアミンオキサイド、テトラデシルジメチルアミンオキサイド、ヤシ油アルキルジメチルアミンオキサイド、ミリスチルジメチルアミンオキサイド、セチルジメチルアミンオキサイド、ステアリルジメチルアミンオキサイド、デシルアミドプロピルジメチルアミンオキサイド、ラウリルアミドプロピルアミンオキサイド、やし油アミドプロピルアミンオキサイド、ミリスチルアミドプロピルアミンオキサイド等が挙げられる。洗浄力、乳化力の点から、炭素数が10〜14のもの、具体的には、ラウリルジメチルアミンオキサイド、ヤシ油アルキルジメチルアミンオキサイド、ミリスチルジメチルアミンオキサイド、デシルアミドプロピルジメチルアミンオキサイド、ラウリルアミドプロピルアミンオキサイド、やし油アミドプロピルアミンオキサイド、ミリスチルアミドプロピ
ルアミンオキサイド等が好ましく、なかでも、入手の容易さなどからデシルジメチルアミンオキサイド、ラウリルジメチルアミンオキサイド、ヤシ油アルキルジメチルアミンオキサイドが特に好ましく用いられる。
【0018】
また、上記(A)成分であるノニオン界面活性剤の配合量は、本発明の硬表面用除菌洗浄剤組成物(以下、本組成物と略すこともある)全体に対し、20〜40質量%(以下、%と略す)の範囲内に設定される。すなわち、20%未満の配合量では、洗浄力、特に油汚れへの浸透性及び油汚れの乳化性に乏しくなる、一方、40%を超えると、本組成物の貯蔵安定性に乏しくなるとともに、すすぎ性にも乏しくなるからである。なお、特に、25〜30%の範囲に設定することが、油汚れに対する洗浄力、すすぎ性及び経済性の点から好適である。
【0019】
さらに、洗浄力、低温乃至高温時における組成物の貯蔵安定性、特に油汚れへの浸透性及び油汚れの乳化性の点から、上記(A)成分のノニオン界面活性剤が、(a1)ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、(a2)アルキルポリグルコシド及び(a3)アルキルアミンオキサイドを含有し、(a1)、(a2)、(a3)成分の配合比率が質量比で(a1)/(a2)/(a3)=0.08〜0.6/0.2〜0.63/0.07〜0.75の範囲にあることが好ましく、さらに好ましくは0.1〜0.3/0.25〜0.55/0.15〜0.5の範囲にあることが好ましい。
【0020】
上記(B)成分は、被洗浄面に付着している細菌や真菌類に対する除菌作用の向上に寄与し、さらなる組成物の貯蔵安定性の向上効果にも寄与する。
【0021】
上記(B)成分であるカチオン界面活性剤としては、例えば、モノアルキルトリメチルアンモニウムハライド、モノアルキルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムハライド、アルキルジメチルベンジルアンモニウムハライド、ジアルキルジメチルアンモニウムハライド、トリアルキルモノメチルアンモニウムハライド、ジアルキルジメチルアンモニウムアジペート、ポリヘキサメチレンビグアナイド等があげられる。このカチオン界面活性剤は、各々単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0022】
具体的には、上記モノアルキルトリメチルアンモニウムハライドとしては、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ミリスチルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド等があげられる。
上記モノアルキルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムハライドとしては、ラウリルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムクロライド、ミリスチルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムクロライド等があげられる。
また、上記アルキルジメチルベンジルアンモニウムハライドとしては、炭素数が10〜14のアルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ミリスチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ステアリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド等があげられる。
上記ジアルキルジメチルアンモニウムハライドとしては、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、オクチルデシルジメチルアンモニウムクロライド等があげられる。
上記トリアルキルモノメチルアンモニウムハライドとしては、トリラウリルモノメチルアンモニウムクロライド等があげられる。
上記ジアルキルジメチルアンモニウムアジペートとしては、ジデシルジメチルアンモニウムアジペート、オクチルデシルジメチルアンモニウムアジペート等があげられる。
【0023】
上記(B)成分としては、これらのうち、除菌効果の点から、アルキルジメチルベンジルアンモニウムハライド、ジアルキルジメチルアンモニウムハライド、ポリヘキサメチレンビグアナイドが好ましく、なかでも、入手容易性の点から、アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ジアルキルジメチルアンモニウムクロライド、ポリヘキサメチレンビグアナイドが好ましい。
【0024】
また、上記(B)成分であるカチオン界面活性剤の配合量は、本組成物全体に対し、2〜10%の範囲内に設定されることが好ましい。すなわち、2%未満の配合量では、除菌効果に乏しく、一方、10%を超えても 除菌効果は飽和になり、むしろ経済的に不利になるおそれがあるからである。なお、特に、4〜8%の範囲に設定することが、除菌効果及び経済性の点から好適である。
【0025】
上記(C)成分であるアルカリ剤としては、水酸化ナトリウム,水酸化カリウム等の水酸化物、ケイ酸ナトリウム,ケイ酸カリウム等のケイ酸塩等の無機アルカリ性物質があげられる。このアルカリ剤は、油汚れに対する洗浄力を向上させる目的で配合されるもので、各々単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0026】
上記(C)成分のうち、油汚れに対する洗浄力の向上及び経済性の点から、水酸化物が好ましく用いられる。
【0027】
また、上記(C)成分であるアルカリ剤の配合量は、本組成物全体に対し、1〜5%の範囲内に設定される。すなわち、1%未満の配合量では、油汚れに対する洗浄力の向上効果に乏しく、一方、5%を超えると、本組成物の貯蔵安定性に乏しくなるからである。なお、特に、3〜5%の範囲に設定することが、油汚れに対する洗浄力の向上効果及び経済性という点から好適である。
【0028】
上記(D)成分である水溶性溶剤としては、グリコールエーテル系溶剤及びアルコールがあげられ、各々単独で用いても2種以上を併用してもよい。この水溶性溶剤は、洗浄力の向上、特に、油汚れへの浸透性及び汚れの溶解性を向上させる目的で配合される。また、この水溶性溶剤は、すすぎ性の向上にも寄与する。
【0029】
上記グリコールエーテル系溶剤としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル等のエチレングリコールエーテル類、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等のジエチレングリコールエーテル類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル等のプロピレングリコールエーテル類、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジブチルエーテル等のジプロピレングリコールエーテル類、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のアルキレングリコール類等があげられる。
【0030】
上記アルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、メトキシブチルアルコール、ベンジルアルコール、3―メチル―3―メトキシブタノール等があげられる。
【0031】
上記(D)成分のうち、すすぎ性、油汚れへの浸透性及び汚れの溶解性の点から、グリコールエーテル系溶剤が好ましく用いられるが、なかでも、油汚れへの浸透性、汚れの溶解性及び経済性の点から、ジエチレングリコールエーテル類が好ましく用いられる。
【0032】
また、上記(D)成分である水溶性溶剤の配合量は、本組成物全体に対し、5〜20%の範囲内に設定される。すなわち、5%未満の配合量では、すすぎ性、洗浄力、特に油汚れへの浸透性及び汚れの溶解性に乏しく、一方、20%を超えると、本組成物の貯蔵安定性に乏しくなるからである。なお、特に、8〜15%の範囲に設定することが、組成物の貯蔵安定性及び経済性という点から好適である。
【0033】
上記(E)成分であるキレート剤としては、クエン酸、グルコン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸等のヒドロキシカルボン酸及び/又はそれらの塩、ニトリロトリ酢酸、エチレンジアミンテトラ酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミンテトラ酢酸、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、メチルグリシンジ酢酸等のアミノカルボン酸及び/又はそれらの塩等があげられる。
なお、これらの塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩又はアルカノールアミン塩があげられるが、これら(E)成分は、酸の形のままでもよいし、一部又は全部が塩の形でもよい。
これらのキレート剤は、洗浄力及び本組成物の貯蔵安定性を向上させる目的で配合されるもので、各々単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0034】
また、上記(E)成分であるキレート剤の配合量は、本組成物全体に対し、0.1〜5%の範囲内に設定される。すなわち、0.1%未満の配合量では、洗浄力及び本組成物の貯蔵安定性の向上効果に乏しく、一方、5%を超えると、洗浄力の向上効果は飽和になり、むしろ経済的に不利となる上、本組成物の貯蔵安定性に乏しくなるからである。なお、特に、1〜3%の範囲に設定することが、経済性及び本組成物の貯蔵安定性の点から好適である。
【0035】
上記(F)成分である水としては、純水、イオン交換水、軟水、蒸留水、水道水等があげられる。これらは、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。なかでも、経済性及び本組成物の貯蔵安定性の点から、水道水、イオン交換水が好ましく用いられる。
なお、上記「水」は、本発明の硬表面用除菌洗浄剤組成物を構成する各成分に由来する結晶水や水溶液の形で含まれる水と、外から加えられる水との総和であり、本組成物全体が100%となるよう配合される。
【0036】
また、本発明の硬表面用除菌洗浄剤組成物には、本発明の効果を妨げない範囲で、任意成分として、pH調整剤、粘度調整剤、染料、香料、金属腐食抑制剤、消臭剤等を用いることができる。
【0037】
本発明の硬表面用除菌洗浄剤組成物は、原液におけるpH(JIS−Z−8802:1984「pH測定方法」)が、25℃で12以上となるよう設定される。すなわち、原液のpHが12未満であると、油汚れに対する洗浄力に乏しくなるからである。
【実施例】
【0038】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。本発明は、これらに限定されるものではない。
【0039】
後記の表1〜表2の実施例1〜6及び比較例1〜3に示す組成の硬表面用除菌洗浄剤組成物を調製し、そのpHを測定するとともに、洗浄力、除菌力及び貯蔵安定性の各項目について評価した。なお、後記の表1〜2において用いた成分は以下の通りであり、表中の数値は、各成分の含有量(純分)で示したものである。さらに、上記4つの項目の結果を後記の表1〜表2に併せて示す。
【0040】
*ポリオキシアルキレンアルキルエーテル1
:炭素数C10のアルキレンオキサイド約6モル付加物(BASF社製/商品名ルテンゾールXA60)
*ポリオキシアルキレンアルキルエーテル2
:炭素数C10のエチレンオキサイド7モル付加物(BASF社製/商品名ルテンゾールXP70)
*ポリオキシアルキレンアルキルエーテル3
:炭素数C10のエチレンオキサイド9モル付加物(BASF社製/商品名ルテンゾールXP90)
*ポリアルキルグルコシド1
:炭素数12−16のポリアルキルグルコシド(コグニス社製/商品名グルコポン600UP)
*ポリアルキルグルコシド2
:炭素数8−10のポリアルキルグルコシド(コグニス社製/商品名グルコポン215CSUP)
*アルキルアミンオキサイド1
:炭素数C12のアルキルジメチルアミンオキサイド(ライオンアクゾ社製/商品名アロモックスDM12DW)
*アルキルアミンオキサイド2
:炭素数C12のアルキルジメチルアミンオキサイド(クラリアント社製/商品名ゲナミノックスDC40)
*カチオン界面活性剤1
:ジデシルジメチルアンモニウムクロライド(ライオンアクゾ社製/商品名アーカード210−80)
*カチオン界面活性剤2
:ポリヘキサメチレンビグアナイド塩酸塩(アビシア社製/商品名ProxelIB)
*カチオン界面活性剤3
:アルキル(炭素数C12−14)ジメチルアンモニウムクロライド(三洋化成社製/商品名カチオンG50)
*キレート剤1
:エチレンジアミンテトラ酢酸・3カリウム塩(BASF社製/商品名トリロンBKT)
*キレート剤2
:エチレンジアミンテトラ酢酸・4ナトリウム塩(BASF社製/商品名トリロンBパウダー)
*キレート剤3
:メチルグリシン二酢酸・3ナトリウム塩(BASF社製/商品名トリロンM)
【0041】
(1)pH測定
〔測定方法〕
pHメーター(堀場製作所製、型式:F−16)を用いて、JIS Z−8802:1984にしたがって、各組成物の原液の25℃におけるpH値を測定し、以下の判定基準により判定した。
〔判定基準〕
○:12以上
×:12未満
【0042】
(2)洗浄力
〔汚れの調製〕
大豆油(関東化学製)24g、ラード(純正化学製)8g、牛脂(関東化学製)4g、カラーブラックMA−100(三菱化学製カーボンブラック)8g、エクゾールD−40(エクソン化学製溶剤)56gを混合し、モデル汚れを調製した。
上記床モデル汚れ4mlを白色ビニル床タイル(30cm×30cm)に均一に塗布し、室温にて3ヶ月間乾燥させた後、3.75cm×10.0cmに切断してテストピースとした。
〔試験方法〕
上記にて作成したテストピースに、水道水を用いて10倍に希釈した各組成物の溶液4mlを滴下し、1分後にウォッシャビリティーテスター(テスター産業製)を用いて、パ
ッド(5cm×9cm)で15往復させて洗浄力試験を行った。試験後、一定水量の水道水にて充分すすぎ、室温にて乾燥させた。
試験前後のテストピースの明度を、色彩色差計(ミノルタ製、型式:CR−331)を用いて測定し、次式にて洗浄率を求めて、以下の判定基準により判定した。
洗浄率(%)=(洗浄後の明度−洗浄前の明度)/(汚れ付着前の明度−洗浄前の明度)×100
〔判定基準〕
◎:洗浄率80%以上
○:洗浄率70%以上80%未満
△:洗浄率60%以上70%未満
×:洗浄率60%未満
【0043】
(3)除菌力
〔試験方法〕
AOACのサニタイザーテストに準じて行なった。各組成物を滅菌蒸留水で100倍に希釈し、その希釈液99mlに10の9乗に調整した菌液1mlを加え混合して薬剤と菌を接触させる。30秒後、接触液1mlを取り出し、9ml薬剤不活化リン酸バッファーに加え、その1mlを別の9ml薬剤不活化バッファーに加え、同様の操作を行い段階的に希釈する。その後薬剤不活化リン酸バッファーを加えたTGEA培地(メルク製)で混釈培養し、生存菌数を測定する。接触菌数と生存菌数により菌数のLogReductionを算出する。
LogReduction = −Log(生存菌数/接触菌数)
〔判定基準〕
○:LogReductionが5以上
×:LogReductionが5未満
【0044】
(4)貯蔵安定性
〔試験方法〕
各組成物を250mLのポリ容器に入れ、室温にて1ヶ月間保管した。1ヶ月後の各組成物の外観を目視により観察し、以下の判定基準で評価した。
〔判定基準〕
○:組成物中に、沈殿、白濁が全く見られなかった。
×:組成物中に、沈殿、白濁、分離が見られた。
【0045】
【表1】

【0046】
【表2】

【0047】
上記の結果から、pHが12以上であり、(a1)/(a2)/(a3)=0.08〜0.6/0.2〜0.63/0.07〜0.75の範囲内にある実施例1〜6品は洗浄力、除菌力、貯蔵安定性のいずれの試験項目においても、良好な性能を示すことがわかる。
【0048】
一方、(a3)成分を含まない比較例1品は、洗浄力及び貯蔵安定性に劣ることがわかり、(A)成分の含有量が過剰であり、(C)成分が少ない比較例2品は、洗浄力に劣ることがわかる。また、(a1)成分を含まず、(B)成分が過剰な比較例3品は、洗浄力及び貯蔵安定性に劣ることがわかる。そして、アルカリ性市販洗剤も洗浄力及び除菌力に劣る。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ノニオン界面活性剤20〜40質量%、
(B)カチオン界面活性剤2〜10質量%、
(C)アルカリ剤1〜5質量%、
(D)水溶性溶剤5〜20質量%、
(E)キレート剤0.1〜5質量%、及び
(F)水
を含有し、且つ、原液におけるpH(JIS−Z−8802:1984「pH測定方法」)が、25℃で12以上に設定されていることを特徴とする硬表面用除菌洗浄剤組成物。
【請求項2】
上記(A)成分のノニオン界面活性剤が、(a1)ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、(a2)アルキルポリグルコシド及び(a3)アルキルアミンオキサイドを含有し、(a1)、(a2)、(a3)成分の配合比率が質量比で(a1)/(a2)/(a3)=0.08〜0.6/0.2〜0.63/0.07〜0.75の範囲にある請求項1に記載の硬表面用除菌洗浄剤組成物。
【請求項3】
上記(B)成分のカチオン界面活性剤が、第4級アンモニウム塩及びポリヘキサメチレンビグアナイドから選ばれる少なくとも一種である請求項1〜2のいずれか一項に記載記載の硬表面用除菌洗浄剤組成物。
【請求項4】
上記(C)成分のアルカリ剤が、無機アルカリ性物質である請求項1〜3のいずれか一項に記載の硬表面用除菌洗浄剤組成物。
【請求項5】
上記(D)成分の水溶性溶剤が、グリコール系溶剤及びアルコールから選ばれる少なくとも1種である請求項1〜4のいずれか一項に記載の硬表面用除菌洗浄剤組成物。
【請求項6】
上記(E)成分のキレート剤が、ヒドロキシカルボン酸及び/又はその塩、アミノカルボン酸及び/又はその塩から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜5のいずれか一項に記載の硬表面用除菌洗浄剤組成物。
【請求項7】
床用用途である請求項1〜6のいずれか一項に記載の硬表面用除菌洗浄剤組成物。

【公開番号】特開2007−126581(P2007−126581A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−321459(P2005−321459)
【出願日】平成17年11月4日(2005.11.4)
【出願人】(503066321)ディバーシー・アイピー・インターナショナル・ビー・ヴイ (16)
【Fターム(参考)】