説明

硬貨処理装置

【課題】搬送ベルトの汚れを未然に防止し或いは汚れを最小限にする。
【解決手段】所定の繰出速度で硬貨を順次繰り出す硬貨繰出ローラ11と、前記硬貨繰出ローラ11による繰出速度より高速で回転し、前記硬貨繰出ローラ11によって繰り出された前記硬貨Cに当接して搬送する搬送ベルト8を有する硬貨処理装置において、前記硬貨繰出ローラ11による繰出速度V1より高速V2で回転し、前記硬貨繰出ローラ11によって繰り出された前記硬貨Cを受取る中間ローラ12を前記硬貨繰出ローラ11と前記搬送ベルト8の間に配置する。かつ前記中間ローラ12は前記搬送ベルト8と同じ速度V2で回転する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬貨の入出金処理を行なう硬貨処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スーパー、量販店、ショッピングセンター等の小売店舗においてはPOSレジスタが使用されており、当該POSレジスタの内部には、硬貨の入出金処理を行なう硬貨処理装置があった。この種の硬貨処理装置は、図7に示す構成の搬送処理が知られている。図7は従来の硬貨処理装置の入金搬送路の説明図である。同図に示したように硬貨処理装置は、図示しない硬貨入金口に投入された硬貨Cを1枚毎に分離して硬貨処理装置内部へ繰り出す硬貨繰出部50と、硬貨繰出部50から繰り出された硬貨Cを金種毎の金種別選別穴56へ1枚毎に搬送するための入金搬送路55とからなる。硬貨繰出部50には図示しない繰出口が設けられ、更に当該繰出口から繰り出された硬貨Cを入金搬送路55へ受け渡すための繰出ローラ51が設けられている。
【0003】
更に、入金搬送路55には、繰出ローラ51からの硬貨Cを受け取って搬送する搬送ベルト58と、硬貨Cの材質や形状を検知することにより正規の硬貨であるか否かの判定をする真偽判定及び金種の判別をする金種判定を行なう認識部59と、真偽判定により正規の硬貨でないと判定された硬貨Cをリジェクトするリジェクト穴69が配置されている。更に、前記入金搬送路55には、認識部59を正常に通過した硬貨Cを図示しない金種別収納庫に落下させるための複数の金種別選別穴56が、径の小さい金種順に配置されている。金種別選別穴56は、金種毎に異なる硬貨Cの外径の差を利用して硬貨Cを落下させる。ここで前記搬送ベルト58は繰出ローラ51より高速で回転する。これにより、入金搬送路55を搬送される複数の硬貨Cの間隔は所定の距離に確保され、認識部59による真偽判定及び金種判定の動作、リジェクト穴69によるリジェクト動作及び金種別選別穴56による選別動作が正確に行なわれる。
【0004】
そして、それぞれの金種別選別穴56近傍には硬貨Cの搬送を監視する複数の搬送監視センサ54が配置され、更に、幅寄せガイド57により硬貨Cの搬送が所定の搬送方向に誘導されるようになっている。前記搬送監視センサ54は、搬送された硬貨Cの到着を検知するためのセンサであり、オフからオンに切り替わる時間を測定して各搬送監視センサ54間での搬送が正常に行なわれているかを監視する。
【0005】
以上の構成により硬貨繰出部50から繰り出された硬貨Cは、幅寄せガイド57によりガイドされ、認識部59にて真偽判定及び金種判定動作を行い、正規の硬貨でないときは、リジェクト穴69より落下される。一方、正規の硬貨として判定された硬貨Cは、搬送監視センサ54により搬送を監視されながら、硬貨Cの金種毎の大きさに応じた金種別選別穴56から落下し、図示しない金種別収納庫に収納される。
【0006】
ここで上記従来の硬貨処理装置では、前記搬送ベルト58に汚れが付着すると、当該汚れが認識部59の真偽判定等に使用するA/D変換したスキャニングデータに写り込み、判定に悪影響を与え、判定精度が低下し、リジェクト率が高くなってしまうという問題があった。また、搬送ベルト58の汚れが搬送ベルト58のグリップ力を低下させ、搬送速度が変化し、搬送監視センサ54の出力による搬送エラーを発生させることもあった。
【0007】
これらを防止するため、特開2008−65598号公報(特許文献1)には、搬送ベルトに当接して搬送する硬貨を認識して処理する硬貨処理装置において、認識動作時以外のときに前記搬送ベルトの汚れを検出する汚れ検出手段と、前記搬送ベルトを清掃する清掃手段とを設け、前記汚れ検出手段により汚れを検出したときは、前記清掃手段を動作させるようにした技術が開示されている。これにより、保守員による保守を最小限とするとともに、搬送ベルトの汚れによる入金リジェクト及び搬送エラーの頻度を減少させることにより、判定精度の向上に寄与することができた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−65598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前記特許文献1による硬貨処理装置においては、前記搬送ベルトの汚れを検出する汚れ検出手段と、前記搬送ベルトを清掃する清掃手段を設けるものであるため、搬送ベルトの汚れを未然に防止し或いは汚れを最小限にするものではなかった。即ち、従来の硬貨処理装置においては、搬送ベルトが繰出ローラとの搬送速度差による硬貨の受取り時に、スリップ負荷で磨耗することがあった。また、搬送ベルトの磨耗により発生した搬送ベルトヒダが前記認識部で誤検知され、判定エラーを引き起こし、正常硬貨をリジェクトさせていた。更に、搬送ベルトの磨耗により、搬送ベルトの搬送性能が低下し、前記搬送監視センサの監視により搬送不良を発生させていた。このように、搬送ベルトの寿命が短いことから、搬送ベルトを頻繁に交換する必要が生じていたという問題があった。一方、搬送ベルトの交換を少なくするために搬送ベルトに耐磨耗性を要求すると、搬送ベルトの柔軟性が低下し、これに対応するためには硬貨を押圧するための圧着ローラの数が増えることとなり、全体としては高価な硬貨処理装置となるという問題があった。
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、硬貨処理装置において、搬送ベルトの汚れを未然に防止し、かつ汚れを最小限にすることにある。即ち、搬送ベルトの磨耗を防止することにより、認識部での判定エラー及び正常硬貨のリジェクトをなくすとともに、搬送ベルトの搬送性能の低下を防ぎ、かつ搬送ベルトの寿命を延ばすことができる安価で長寿命の硬貨処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために本発明は、所定の繰出速度で硬貨を順次繰り出す硬貨繰出手段と、前記硬貨繰出手段による繰出速度より高速で回転し、前記硬貨繰出手段によって繰り出された前記硬貨に当接して搬送する搬送ベルトを有する硬貨処理装置において、前記硬貨繰出手段による繰出速度より高速で回転し、前記硬貨繰出手段によって繰り出された前記硬貨を受取る中間ローラを、前記硬貨繰出手段と前記搬送ベルトの間に配置したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、前記繰出ローラによって繰り出された前記硬貨を受取る中間ローラを繰出ローラと搬送ベルトの間に配置し、当該中間ローラを搬送ベルトと同様に高速で回転することにより、硬貨は繰出ローラから中間ローラを介して搬送ベルトに搬送するようにしたので、搬送ベルトが繰出ローラとの搬送速度差による硬貨の受取り時のスリップ負荷で磨耗するようなことがない。また、搬送ベルトの磨耗により発生した搬送ベルトヒダが認識部で誤検知され、判定エラーを引き起こしたり、正常硬貨をリジェクトさせたりするおそれもない。更に、搬送ベルトの磨耗により、搬送ベルトの搬送性能が低下し、搬送不良を発生させるおそれがなくなる。更にこれにより、搬送ベルトを頻繁に交換する必要がない安価で長寿命の硬貨処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施の形態に関する硬貨処理装置の入金搬送路の斜視図である。
【図2】実施の形態に関するPOSレジスタの外観斜視図である。
【図3】実施の形態に関する硬貨処理装置の内部を示す概念図である。
【図4】実施の形態に関する入金搬送路の硬貨受渡部の正面図である。
【図5】入金搬送路の硬貨受渡部の平面図である。
【図6】入金搬送路の硬貨受渡部の変形例を示す正面図である。
【図7】従来の硬貨処理装置の入金搬送路の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。図2は実施の形態に関するPOSレジスタの外観斜視図である。POSレジスタ3は、硬貨処理装置1と紙幣処理装置2が設けられており、硬貨処理装置1は顧客から受け取った硬貨を投入する硬貨入金口4と、顧客へ釣銭として支払う硬貨を払い出す硬貨出金口37と、受け入れ不能と判別された硬貨を収納する硬貨リジェクト部29が設けられている。
【0015】
一方、紙幣処理装置2は顧客から受け取った紙幣を入金し、かつ顧客へ釣銭として支払う紙幣を払い出す紙幣入出金口34と、紙幣処理装置2内に収納されている紙幣を回収して収納する回収カセット部39が設けられている。更に、POSレジスタ3には、硬貨処理装置1の硬貨や紙幣処理装置2内の紙幣の回収及び補充指示を入力するためのキー等が備えられた操作パネル30と、店員が操作パネル30から入力した内容やPOSレジスタ3の状態を表示するための操作表示部31、32が設けられている。
【0016】
図3は実施の形態に関する硬貨処理装置の内部を示す概念図である。硬貨処理装置1は顧客から受け取った入金硬貨を投入する前記硬貨入金口4と、硬貨入金口4に投入された硬貨を繰り出す後述する硬貨繰出部10と、硬貨繰出部10から繰り出された硬貨を金種毎の金種別選別穴16へ1枚毎に搬送する入金搬送路5と、入金された硬貨を金種別に収納し出金指示により出金する複数の金種別収納庫6と、金種別収納庫6から出金用に搬送された硬貨を搬送する出金搬送路7と、出金用の硬貨を放出する硬貨出金口37を有する。
【0017】
入金搬送路5の入口付近には、硬貨の材質や形状(外形、外径、穴の有無等)を検知することにより正規の硬貨であるか否かの判定をする真偽判定及び金種の判別をする金種判定を行なう認識部9が設けられている。そして、入金搬送路5の後述する搬送プレート25には、認識部9の真偽判定により正規の硬貨でないと判定された硬貨Cをリジェクトするリジェクト穴19と、認識部9を正常に通過した硬貨Cを金種別収納庫6に落下させるための複数の金種別選別穴16が形成されている。リジェクト穴19によりリジェクトされた硬貨又は偽金は硬貨リジェクト部29へ落下される。
【0018】
一方、認識部9による真偽判定の結果、正規の硬貨であると判定され、かつ金種判定が正常に行なわれたときは、硬貨は各金種別選別穴16まで搬送され、該当する金種別選別穴16より金種別収納庫6へ落下される。金種別選別穴16は各金種の硬貨の外形(外径)よりわずかに大きい穴で形成され、硬貨の外形の小さい順、即ち1円用、50円用、5円用、100円用、10円用、500円用の順に搬送方向に沿って配置されている。出金時においては、指定された金種に基づいて金種別収納庫6より、出金搬送路7を搬送されて硬貨出金口37へ排出される。各金種別選別穴16の硬貨搬送方向手前には搬送監視センサ24が設けられている。搬送監視センサ24は搬送された硬貨の到着を検知するためのセンサであり、オフからオンに切り替わる時間を測定して各搬送監視センサ24間での硬貨の搬送が正常に行なわれているかを監視する。
【0019】
図1は実施の形態に関する硬貨処理装置の入金搬送路の斜視図である。同図において、硬貨繰出部10は、円筒状をなして上部が前記硬貨入金口4であり、顧客から受け取った入金硬貨が硬貨入金口4に投入されると、当該硬貨Cを1枚毎に繰り出す。硬貨Cを繰り出す構造は、例えば、一定速度で回転する図示しない回転円盤を用いて、内部にある複数の硬貨Cを回転円盤の周囲に配設された周壁に沿って移動させて、当該硬貨Cを図示しない繰出口から矢印F方向へ1枚毎に繰り出す構造である。
【0020】
硬貨繰出部10から繰り出された硬貨Cは、硬貨繰出手段としての繰出ローラ11によって更に矢印F方向へ繰り出される。繰出ローラ11は硬貨繰出部10から繰り出された硬貨Cを、硬貨受渡部15において、入金搬送路5上の後述する中間ローラ12に受け渡す。繰出ローラ11は硬貨Cを確実に繰り出し、中間ローラ12に受け渡せればよく、その周速度は中間ローラ12の周速度より低速で回転する。
【0021】
中間ローラ12は搬送ベルト8の駆動側のベルトプーリ18−1と同軸に設けられ、前記繰出ローラ11の周速度より高速で回転する。中間ローラ12は、繰出ローラ11によって繰り出された硬貨Cを、搬送プレート25と挟持することによって入金搬送路5上を少しだけ搬送する。そのことにより、硬貨Cは後述する幅寄せガイド35によって矢印G方向にスライドさせられ、その後、中間ローラ12は硬貨Cを搬送ベルト8に受け渡す。なお、幅寄せガイド35は硬貨Cの搬送を所定の搬送方向に誘導するものであるが、図1には幅寄せガイド35は図示を省略する。
【0022】
搬送ベルト8は中間ローラ12から受取った硬貨Cを、搬送プレート25と挟持することによって搬送プレート25上を搬送する。搬送ベルト8は駆動側のベルトプーリ18−1と従動側のベルトプーリ18―2によって、前記繰出ローラ11の周速度より高速で回転する。
【0023】
入金搬送路5は搬送プレート25と搬送ベルト8によって構成され、両者により硬貨Cを挟持しながら搬送する。搬送プレート25には、前述の通り認識部9と、リジェクト穴19と複数の金種別選別孔16が設けられる。駆動側のベルトプーリ18−1と従動側のベルトプーリ18−2の間には複数の圧着ローラ28が設けられる。
【0024】
以上の構成の硬貨処理装置1の入金搬送路5により、硬貨繰出部10から繰り出された硬貨Cは、認識部9にて真偽判定及び金種判定動作を行い、正規の硬貨でないときは、リジェクト穴19より落下させるようにし、一方、正規の硬貨として判定された硬貨は、搬送監視センサ24により搬送を監視されながら、硬貨Cの金種毎の大きさに応じた金種別選別穴16から落下し金種別収納庫6に収納されるようになっている。
【0025】
図4は実施の形態に関する入金搬送路の硬貨受渡部の正面図である。硬貨受渡部15において、繰出ローラ11は低速の回転周速度V1で回転し、搬送プレート25上の硬貨Cに当接して、硬貨Cを挟持しながら繰り出す。中間ローラ12は高速の回転周速度V2で回転し、繰出ローラ11によって繰り出された硬貨Cを受取り、硬貨Cに当接して、硬貨Cを挟持しながら少しだけ搬送する。その後、硬貨Cは、搬送ベルト8の方向(前記矢印G方向)にスライドされることにより搬送ベルト8と搬送プレート25によって挟持される。搬送ベルト8はベルトプーリ18−1の回転により中間ローラ12と同様に高速の回転周速度V2で回転する。
【0026】
ここで、回転周速度は前述の通りV1<V2の関係である。これにより、入金搬送路5を搬送される複数の硬貨Cの間隔は所定の距離に確保され、認識部9による真偽判定及び金種判定の動作、リジェクト穴19によるリジェクト動作及び金種別選別穴16による選別動作が正確に行なわれる。
【0027】
図5は入金搬送路の硬貨受渡部の平面図である。硬貨受渡部15において、繰出ローラ11は入金搬送路5の入口付近に設けられ、図示しない駆動源によって駆動される。中間ローラ12は、硬貨搬送方向に対し繰出ローラ11と同一直線上に設けられている。また、中間ローラ12の回転軸12aは、搬送ベルト8のベルトプーリ18−1の回転軸18−1aと同軸に設けられ、図示しない共通の駆動源によって駆動される。ここで、図示C1は、硬貨Cの先端が繰出ローラ11の下端Aと当接した状態を示す。その後、繰出ローラ11は低速の回転周速度V1で硬貨Cを矢印F方向に繰り出す。図示C2は、硬貨Cの先端が中間ローラ12の下端Bと当接し、同時に硬貨Cの後端が繰出ローラ11の下端Aと当接した状態を示す。
【0028】
従って、繰出ローラ11と中間ローラ12の間で硬貨Cの円滑な受渡しが行なわれるためには、繰出ローラ11の回転軸11aと中間ローラ12の回転軸12aの軸間距離L(AB間)は、硬貨Cの搬送方向の媒体長(即ち、通常の円形硬貨の場合は直径)と等しいか又は短いのがよい。
【0029】
硬貨Cが図示C2の状態から更に搬送されると、硬貨Cの後端は繰出ローラ11の下端Aとの当接が外れる。中間ローラ12によって搬送される硬貨Cは、幅寄せガイド35のスライド部35−2に沿ってスライドされる。幅寄せガイド35は入金搬送路5の側面に設けられ、搬送方向において繰出ローラ11から中間ローラ12にかけては搬送方向に平行に平行部35−1が設けられ、更に認識部9以降も搬送方向に平行に平行部35−3が設けられる。そして、中間ローラ12近傍は、搬送ベルト8方向に傾斜しているスライド部35−2が設けられている。こうして硬貨Cは、中間ローラ12とスライド部35−2により、幅寄せガイド35に沿って矢印G方向にスライドする。
【0030】
繰出ローラ11の硬貨Cに対する当接が外れた後は、硬貨Cが矢印G方向にスライドすることにより、搬送ベルト8の当接開始点Dが硬貨Cの先端と当接する。即ち、搬送ベルト8は、中間ローラ12のみが硬貨Cと当接する状態となるまでは、搬送ベルト8が硬貨Cと当接しない距離に設けられる。
【0031】
そして、更に硬貨Cが搬送されて、硬貨Cの後端と中間ローラ12の下端Bとの当接が外れると、図示C3に示すように、硬貨Cは搬送ベルト8のみによって入金搬送路5を矢印H方向に高速で搬送される。
【0032】
前述のように、前記軸間距離L(AB間)は、硬貨Cの直径と等しいか又は短いのがよい。即ち、距離ABは最小径硬貨(1円)の直径に比較して等しいか又は短い。これにより、繰出ローラ11から中間ローラ12への受渡しが確実に行なうことができる。一方、距離ADは最大径硬貨(500円)の直径に比較して等しいか又は長い。これにより、高速で回転している搬送ベルト8は、繰出ローラ11によって低速で繰り出されている硬貨Cと直接接触することがなく、中間ローラ12によって一旦高速で搬送されている硬貨Cと接触することになる。従って、搬送ベルト8が繰出ローラ11との搬送速度差による硬貨Cの受取り時に、スリップ負荷で磨耗することがない。
【0033】
前記実施の形態において、中間ローラ12の回転軸12aは、搬送ベルト8のベルトプーリ18−1の回転軸18−1aと同軸であることを説明したが、これに限らない。即ち、中間ローラ12の回転軸12aは、搬送ベルト8のベルトプーリ18−1の回転軸18−1aの延長線上にあり、図示しない異なる駆動源により駆動されるものでもよい。
【0034】
更に、次に示す実施の形態の変形例のように、中間ローラ12の回転軸12aは、搬送ベルト8のベルトプーリ18−1の回転軸18−1aより硬貨Cの搬送方向上流側に位置するものでもよい。
【0035】
図6は入金搬送路の硬貨受渡部の変形例を示す正面図である。硬貨受渡部15において、硬貨搬送方向に対し、繰出ローラ11、中間ローラ12及び搬送ベルト8は同一直線上に設けられる。前述と同様に繰出ローラ11は低速の回転周速度V1で回転し、硬貨Cに当接して、硬貨Cを矢印F方向に繰り出す。中間ローラ12は高速の回転周速度V2で回転し、硬貨Cに当接すると繰出ローラ11から硬貨Cを受取り、硬貨Cを少しだけ搬送する。搬送ベルト8はベルトプーリ18−1の回転により中間ローラ12と同様に高速の回転周速度V2で回転し、硬貨Cを矢印H方向に搬送する。これらの回転周速度は前述と同様にV1<V2の関係である。
【0036】
図示C4は、硬貨Cの後端が繰出ローラ11の下端Aと当接し、同時に硬貨Cの先端が中間ローラ12の下端Bと当接した状態を示す。硬貨Cが中間ローラ12によって更に搬送されると、硬貨Cの後端は繰出ローラ11の下端Aとの当接が外れる。その後は、搬送ベルト8の当接開始点Dが硬貨Cの先端と当接する。即ち、搬送ベルト8は、中間ローラ12のみが硬貨Cと当接する状態となるまでは、搬送ベルト8が硬貨Cと当接しない距離に設けられる。そして更に硬貨Cが搬送されて、硬貨Cの後端と中間ローラ12の下端Bとの当接が外れると、硬貨Cは搬送ベルト8のみによって入金搬送路5を矢印H方向に高速で搬送される。図示C5は搬送ベルト8のみによって搬送されている状態を示す。
【0037】
前述と同様に、繰出ローラ11の回転軸11aと中間ローラ12の回転軸12aの軸間距離L(AB間)は、硬貨Cの直径と等しいか又は短いのがよい。即ち、距離ABは最小径硬貨(1円)の直径に比較して等しいか又は短い。これにより、繰出ローラ11から中間ローラ12への受渡しが確実に行なうことができる。一方、距離ADは最大径硬貨(500円)の直径に比較して等しいか又は長い。これにより、高速で回転している搬送ベルト8は、繰出ローラ11によって低速で繰り出されている硬貨Cと直接接触することがなく、一旦中間ローラ12によって高速で搬送されている硬貨Cと接触することになる。従って、搬送ベルト8が繰出ローラ11との搬送速度差による硬貨Cの受取り時に、スリップ負荷で磨耗することがない。なお、同図において、幅寄せガイド35は図示を省略してあるが、実施の形態の変形例によれば、幅寄せガイド35のスライド部35−2を設けなくてよい。
【0038】
以上実施の形態によれば、低速で回転して硬貨Cを繰り出す繰出ローラ11と、高速で回転し硬貨Cを入金搬送路5へ搬送する搬送ベルト8との間に、繰出ローラ11によって繰り出された硬貨Cを受取る中間ローラ12を配置し、中間ローラ12を搬送ベルト8と同様に高速で回転し、硬貨Cを先に中間ローラ12に当接させ、次に搬送ベルト8当接させて搬送するようにしたので、搬送ベルト8が繰出ローラ11との搬送速度差による硬貨Cの受取り時のスリップ負荷で磨耗するようなことがなくなる。
【0039】
前述の説明において、硬貨繰出部10から繰り出された硬貨Cを、硬貨繰出手段としての繰出ローラ11によって繰り出して、中間ローラ12に受け渡す例を説明したが、これに限らない。即ち、中間ローラ12は、硬貨繰出手段としての硬貨繰出部10から直接受取る構成であっても本発明を適用可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 硬貨処理装置
2 紙幣処理装置
3 POSレジスタ
4 硬貨入金口
5 入金搬送路
6 金種別収納庫
8 搬送ベルト
9 認識部
10 硬貨繰出部
11 繰出ローラ
12 中間ローラ
15 硬貨受渡部
C 硬貨


【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の繰出速度で硬貨を順次繰り出す硬貨繰出手段と、
前記硬貨繰出手段による繰出速度より高速で回転し、前記硬貨繰出手段によって繰り出された前記硬貨に当接して搬送する搬送ベルトを有する硬貨処理装置において、
前記硬貨繰出手段による繰出速度より高速で回転し、前記硬貨繰出手段によって繰り出された前記硬貨を受取る中間ローラを、前記硬貨繰出手段と前記搬送ベルトの間に配置したことを特徴とする硬貨処理装置。
【請求項2】
前記中間ローラの周速度は、前記搬送ベルトの周速度と同一であることを特徴とする請求項1記載の硬貨処理装置。
【請求項3】
前記中間ローラの回転軸は、前記搬送ベルトのベルトプーリの回転軸の延長線上にあることを特徴とする請求項1記載の硬貨処理装置。
【請求項4】
前記中間ローラの回転軸は、前記搬送ベルトのベルトプーリの回転軸と同軸であることを特徴とする請求項3記載の硬貨処理装置。
【請求項5】
前記中間ローラの回転軸は、前記搬送ベルトのベルトプーリより前記硬貨の搬送方向上流側にあることを特徴とする請求項1記載の硬貨処理装置。
【請求項6】
前記中間ローラは、前記搬送ベルトのベルトプーリに対し前記硬貨の搬送方向の同一直線上にあることを特徴とする請求項5記載の硬貨処理装置。
【請求項7】
前記硬貨繰出手段は、繰出ローラであることを特徴とする請求項1記載の硬貨処理装置。
【請求項8】
前記繰出ローラと、前記中間ローラの回転軸の軸間距離は、前記硬貨の搬送方向の媒体長と等しいか又は短いことを特徴とする請求項7記載の硬貨処理装置。
【請求項9】
前記中間ローラは、硬貨搬送方向に対し前記繰出ローラと同一直線上に設けられ、更に、前記搬送ベルトは、前記中間ローラが前記硬貨と当接するまでは前記搬送ベルトが前記硬貨と当接しない距離に設けられることを特徴とする請求項7記載の硬貨処理装置。
【請求項10】
前記中間ローラは、硬貨搬送方向に対し前記繰出ローラと同一直線上に設けられ、更に、前記中間ローラにより搬送される前記硬貨を前記搬送ベルト側に寄せるスロープ状のガイドを設けたことを特徴とする請求項7記載の硬貨処理装置。
【請求項11】
低速で回転する繰出ローラの当接により硬貨を繰り出し、その後、高速で回転する搬送ベルトの当接により前記硬貨を受取り、複数の硬貨を間隔を空けて搬送面上に搬送する硬貨処理装置において、
前記繰出ローラと前記搬送ベルトとの間に高速で回転する中間ローラを設け、
前記繰出ローラの当接による前記硬貨の繰り出し後、前記中間ローラの当接による前記硬貨の受取りを行ない、前記硬貨に対する前記繰出ローラの当接が外れたのち、前記搬送ベルトが当接による前記硬貨の受取りを行なうことを特徴とする硬貨処理装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−266998(P2010−266998A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−116539(P2009−116539)
【出願日】平成21年5月13日(2009.5.13)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】