説明

硬質ポリウレタンフォームの製造およびその使用

本発明は、官能価が2.5〜4のポリエステルポリオールと、芳香族アミンポリオールと、官能価が6〜8のポリエーテルポリオールとを含有するポリオール配合物を開示する。当該ポリオール混合物は、硬質ポリウレタンフォームの作製、特に現場注入用途のフォームの作製に有用であり、低いk値と短い離型時間の良好な組み合わせをもたらす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬質ポリウレタンフォームの製造に有用なポリエステル、硬質フォームの製造における当該ポリエステルの使用、並びに、当該ポリオールから作製される硬質フォームに関する。
【背景技術】
【0002】
硬質ポリウレタンフォームは、家庭用電化製品その他の絶縁フォームとして、また、他の様々な用途における絶縁フォームとして数十年にわたって広く利用されている。これらのフォームは、ポリイソシアネートと1種以上のポリオール、ポリアミンまたはアミノアルコール化合物との反応で調製される。ポリオール、ポリアミンまたはアミノアルコール化合物の特徴としては、イソシアネート反応性基1個当たりの当量が約300までであり、1分子当たり平均で3個よりも多くのイソシアネート反応性基を有する点が挙げられる。当該反応は、反応の進行に伴ってガスを発生する発泡剤の存在下で行われる。ガスによって反応中の混合物が膨張し、気泡構造が付与される。
【0003】
当初、好んで選ばれた発泡剤は、トリクロロフルオロメタンまたはジクロロジフルオロメタンといった「硬質」クロロフルオロカーボン(CFC)であった。これらのCFCは加工が非常に容易であり、非常に良好な断熱特性を有するフォームを生成した。しかしながら、CFC発泡剤は環境への懸念のため段階的に廃止されつつある。
【0004】
CFCは、ヒドロフルオロカーボン、低沸点炭化水素、ヒドロクロロフルオロカーボン、エーテル化合物、水(イソシアネートと反応して二酸化炭素を発生する)等の他の発泡剤に置き換えられてきた。ほとんどの場合、これらの代替発泡剤は先行のCFCよりも効果の低い断熱材である。フォームが断熱をもたらす能力は「k値」と表現されることが多く、単位面積当たり・単位時間当たりにフォーム中を移動する熱の量の尺度であって、フォームの厚さとフォームの厚さ方向にかかる温度の差とを考慮に入れる。代替発泡剤を用いて製造されたフォームは、「硬質」CFC発泡剤を用いて製造されたものよりもk値が高い傾向にある。このため、硬質フォームの製造者は、発泡剤を変えたことで生じた断熱値の低下を補うために他の方法でのフォーム配合物の改質を余儀なくされてきた。このような改質の多くは、フォーム中の気泡サイズを小さくすることに着目している。気泡はサイズが小さいほど、より良好な断熱特性をもたらす傾向がある。
【0005】
k値を向上させる硬質フォーム配合物の改質は、配合物の加工特性に望ましくない影響を及ぼす傾向があることが見出された。配合物の硬化特性は、特に現場注入用途、例えば、家庭用電化製品用のフォームなどで重要である。冷蔵庫や冷凍庫のキャビネットは、例えば、外部シェルと内部ライナーを部分的に組み立て、これらの間にキャビティが形成されるようシェルとライナーを所定の位置に保持することで通常は絶縁されている。これは、ジグまたは他の装置を用いて行われることが多い。フォーム配合物をキャビティへ導入し、そこで膨張させてキャビティを満たす。フォームにより断熱がもたらされ、組立て後の製品に構造的な強度が付与される。フォーム配合物を硬化する方法は、少なくとも2つの点で重要である。第一に、完成したキャビネットをジグから取り外すことができるよう、フォーム配合物は迅速に硬化して寸法の安定したフォームを形成しなければならない。この特性は、通常「離型」時間と呼ばれ、キャビネットを製造することのできる速度に直接影響する。
【0006】
さらに、当該系の硬化特性は、「フローインデックス」または単に「フロー」として知られる特性にも影響する。フォーム配合物は、最小限の制約に逆らって膨張できるのであれば、ある一定の密度(「自由発泡密度」として公知)まで膨張する。冷蔵庫または冷凍庫のキャビネットを配合物で満たさなければならない場合には、その膨張はいくつかの点である程度の制約を受ける。狭いキャビティ内では、フォームは主に(水平方向よりも)垂直方向に膨張しなければならない。その結果、配合物は自身の重量のかなりの量に逆らって膨張しなければならない。フォーム配合物はまた、コーナー周辺や壁キャビティのあらゆる部分へも流れ込まなければならない。さらに、キャビティは通気が限られているか全く無い場合が多く、そのため、キャビティ内の気圧によって膨張中のフォームにさらに圧力がかかる。これらの制約のため、自由発泡密度のみから推測されるよりも多量のフォーム配合物をキャビティへ充填する必要がある。キャビティを最小限満たすのに必要なフォーム配合物の量は、最小充填密度(配合物の重量をキャビティ体積で割った値)として表すことができる。最小充填密度と自由発泡密度との比がフローインデックスである。フローインデックスは理想的には1.0であるが、商業上実用的な配合物では1.5のオーダーである。フローインデックスが低いほど、冷却用の家庭用電化製品用の低密度フォームを製造するのに好ましい。
【0007】
k値を低くするのに有利なフォーム配合物の改質は、離型時間、フローインデックスまたはその双方に悪影響を及ぼす傾向がある。そのため、従来のCFC系配合物にk値がかなり匹敵する配合物が開発されたものの、これらの配合物を使用する総コストは、生産性の低さ(離型時間が長いため)、原料コストの高さ(フローインデックスが高いため)またはその双方の結果、高くなる場合が多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
k値の低いフォームをもたらし、かつ、低いフローインデックスおよび/または短い離型時間をもたらす硬質フォーム配合物が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、硬質ポリウレタンフォームの調製方法であって、
A)少なくとも以下の1)〜3)を含有する反応性混合物:
1)ポリオール混合物であって、
a)7重量%〜20重量%未満のポリエステル、当該ポリエステルは公称官能価(nominal functionality)が少なくとも2.4〜4であり、OH価が200〜500mgKOH/gである
b)10〜50重量%のポリオール、当該ポリオールは公称ヒドロキシル官能価が3〜6であり、OH価が250〜600mgKOH/gであり、以下のいずれかのタイプである:
i)芳香族アミン開始ポリオール(an aromatic amine initiated polyol);
ii)脂環式アミン開始ポリオール(a cycloaliphatic amine initiated polyol);または
iii)i)およびii)の組み合わせ
c)25〜60重量%のポリエーテルポリオール、当該ポリエーテルポリオールは公称ヒドロキシル官能価が6〜8であり、OH価が300〜700mgKOH/gである
を含有する前記ポリオール混合物;
2)少なくとも1種の炭化水素、ヒドロフルオロカーボン、ヒドロクロロフルオロカーボン、フルオロカーボン、ジアルキルエーテルまたはフッ素置換ジアルキルエーテル物理的発泡剤;および
3)少なくとも1種のポリイソシアネート
を含有する前記反応性混合物を形成し、
B)前記反応性混合物が膨張・硬化して硬質ポリウレタンフォームを形成する条件に、前記反応性混合物を供する、
ことを含む前記方法である。
【0010】
さらなる実施態様では、前記ポリエステルが、前記ポリオール組成物の少なくとも10重量%を構成する。
【0011】
別の態様では、本発明は、上記の方法に従って作製された硬質フォームである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
上述のポリオール混合物を含む硬質フォーム配合物は、多くの場合、(1.8以下のフローインデックスと短い離型時間で表されるような)望ましい硬化特性を示し、硬化して優れた断熱特性(即ち、低いk値)を有するフォームを形成することが見出された。
【0013】
本発明は、絶縁用途、特に、成形用途とキャビティ充填用途(molded and cavity-filling applications)において特定の有用性を示す硬質ポリウレタンフォームを得るための配合物および方法を提供する。このような用途としては、例えば、パイプの中にさらにパイプがあるような場合、家庭用電化製品(冷蔵庫、冷凍庫等)、温水貯蔵タンク等が挙げられる。
【0014】
硬質ポリウレタンフォームは、(1)少なくとも1種の高官能性ポリエステルポリオール、少なくとも1種の芳香族アミン開始ポリオール、少なくとも1種の高官能性ポリエーテルポリオールを含有するポリオール混合物と、(2)少なくとも1種の有機ポリイソシアネートと、(3)以下により詳細に記載する少なくとも1種の物理的発泡剤とを少なくとも含有するポリウレタン形成組成物から調製される。
【0015】
本発明に用いるポリオール混合物は、通常、ポリオール混合物の重量を基準にして7重量%〜20重量%未満の少なくとも1種のポリエステルポリオールを含有し、当該ポリエステルポリオールは公称官能価が2.4〜4(1分子当たり平均で2.4〜4個のヒドロキシル基)であり、OH価が200〜500mgKOH/gである。別の実施態様では、ポリオール混合物は、ポリオール混合物の重量を基準にして10重量%〜20重量%未満を含有する。さらなる実施態様では、ポリエステルポリオールは公称官能価が2.5または2.6以上である。別の実施態様では、ポリエステルは公称官能価が3.5未満であり、さらなる実施態様では3以下である。さらに別の実施態様では、ポリエステルは公称官能価が2.6〜2.8である。一実施態様では、ポリエステルポリオールは、ポリオール混合物の12〜18重量%を構成する。
【0016】
ポリエステルは、多官能性の酸または酸無水物化合物を多官能性アルコールと反応させて製造する。典型的な化合物としては、ジカルボン酸およびジカルボン酸無水物が挙げられるが、さらに高い官能価を有する酸または酸無水物を用いることもできる。ポリエステルの形成に適した官能性の酸または酸無水物化合物の例としては、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、無水テレフタル酸、ジメチルテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ヘキサヒドロフタル酸、無水テトラクロロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水ピロメリット酸、コハク酸、アゼライン酸、アジピン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、無水トリメリト酸が挙げられる。さらなる実施態様では、当該酸または酸無水物は、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、無水テレフタル酸、コハク酸またはアジピン酸である。上述の酸および酸無水物の組み合わせを用いることもできる。
【0017】
ポリエステルの製造に使用する多官能性アルコールは、通常、炭素数3〜12の炭化水素鎖を含有する。さらなる実施態様では、当該アルコールは炭素数3〜9の炭化水素鎖を有する。炭化水素鎖は、直鎖状、分岐鎖状または環状の炭化水素であってよい。ポリエステルの製造に使用するアルコールは、通常、ヒドロキシル官能価が少なくとも2である少なくとも1種のアルコールと、ヒドロキシル官能価が3以上である少なくとも1種のアルコールとの混合物である。一般に、過剰に架橋するのを避けるため、ポリエステルの作製に使用するアルコールの20重量%未満を、官能価が3を超えるアルコールで構成する。さらなる実施態様では、このような高い官能性のアルコールは、ポリエステルポリオールの製造に使用するアルコールの15重量%未満である。二官能性アルコールの例としては、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エタノールアミン、ジエタノールアミンが挙げられる。三官能性アルコールの例としては、グリセロール、トリメチロールプロパン(TMP)、トリメチロールエタン、トリエタノールアミンが挙げられる。高級アルコールとしては、ペンタエリトリトール、エチレンジアミン、ソルビトールが挙げられる。一実施態様では、ジエチレングリコールとグリセロールとの混合物を多官能性の酸または酸無水物と共に用いてポリエステルを製造する。
【0018】
官能価が2.5〜4のポリエステルを得るための二官能性アルコールとより高官能性のアルコールとの比率は、当業者であれば容易に決定できる。当該ポリエステルの作製方法は周知である。ポリエステルは、典型的には、触媒を用いてまたは用いずに、アルコール成分と多官能性の酸または酸無水物成分とを共に加熱することで形成され、反応を完結させるために副産物である水を除去しながら行う。当該ポリエステルは、有機ポリカルボン酸または有機ポリカルボン酸無水物と多官能性アルコールとを1:1〜1:1.8、好ましくは1:1.05〜1:2のモル比で重縮合させることにより調製するのが有利である。ジオールと高級アルコールとのモル比は、好ましくは4:1以下である。水を共沸除去するために、少量の溶剤(例えば、トルエン)を添加してもよい。添加する場合、このような溶剤は典型的にはポリエステル生成物の使用前に除去する。
【0019】
ポリオール組成物のさらなる成分はポリエーテルポリオール(b)であり、ここで開始剤は3〜6個の反応性水素を有し、i)芳香族アミン;ii)脂環式アミン;またはiii)これらの組み合わせである。このようなポリオールb)の量は、全ポリオール組成物の10〜50重量%の量で存在する。別の実施態様では、アミンポリオール成分は全ポリオール組成物の40重量%以下の量で存在する。さらなる実施態様では、アミンポリオールはポリオール組成物の30重量%以下の量で存在する。別の実施態様では、芳香族ポリオールは全ポリオール組成物の25重量%以下の量で存在する。一実施態様では、アミンポリオールはポリオール組成物の少なくとも12重量%である。
【0020】
適切な芳香族アミン開始剤(aromatic amine initiators)の例としては、1,2−、1,3−および1,4−フェニレンジアミン;2,3−、2,4−、3,4−および2,6−トルエンジアミン;4,4’−、2,4’−および2,2’−ジアミノジフェニルメタン;ポリフェニル−ポリメチレン−ポリアミンが挙げられる。一実施態様では、ポリオール成分(b)はトルエンジアミン(TDA)開始ポリオールであり、より一層好ましくはTDAの少なくとも85重量%がオルト−TDAである。
【0021】
適切な脂環式アミン開始剤の例としては、WO2008/094239(その開示内容は引用により本明細書に含まれるものとする)に開示されているようなアミノシクロヘキサンアルキルアミン;シクロヘキサンメタンアミン、4−アミノ−α,α,4−トリメチル−(9Cl)(p−メンタン−1,8−ジアミンまたは1,8−ジアミノ−p−メンタンとしても知られる);イソホロンジアミンまたは1,8−ジアミノ−p−メンタン;オルト−シクロヘキサンジアミン;WO2008/094963(その開示内容は引用により本明細書に含まれるものとする)に開示されているような1,4シクロヘキサンジアミン、2または4メチルシクロヘキサン−1,3−ジアミン、ジアステレオ異性体;2008年6月10日に出願された米国仮特許出願第61/060236号(その開示内容は引用により本明細書に含まれるものとする)に開示されているようなメチレン(ビスシクロヘキシルアミン)アミン開始剤、2008年6月17日に出願された米国仮特許出願第61/076,491号(その開示内容は引用により本明細書に含まれるものとする)に開示されているような1,3−または1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンアミン開始剤、4,4’メチレンビス(2−メチルシクロヘキサンアミンが挙げられる。
【0022】
十分なアルキレンオキシド、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドまたはこれらの組み合わせをアミン開始剤へ付加して所望のヒドロキシル価を有するポリオールを製造する。ポリオール成分(b)は、通常、ヒドロキシル価が250〜600mgKOH/gである。さらなる実施態様では、ポリオール成分(b)はヒドロキシル価が300〜500mgKOH/gである。
【0023】
アルコキシル化反応は、簡便には、アルキレンオキシドと開始剤化合物との混合物を形成し、当該混合物を高温かつ大気圧よりも高い圧力の条件へ供することで行う。重合温度は、例えば110〜170℃であればよく、圧力は、例えば2〜10バール(200〜1000kPa)であればよい。特に、開始剤化合物上のアミン水素1当量当たり1モルよりも多くのアルキレンオキシドを付加させる場合には、触媒を用いてもよい。適切なアルコキシル化触媒としては、強塩基、例えば、アルカリ金属水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム等)の他、いわゆる二重金属シアニド触媒(このうち、亜鉛ヘキサシアノコバルテート錯体が最も有名)が挙げられる。当該反応は2段階以上で行うことができ、第一の段階では触媒を用いずに0.5〜1.0モルのアルキレンオキシドを開始剤(アミン水素1当量あたり)へ付加し、続いて1以上の後続の段階では、上述のような触媒の存在下で追加のアルキレンオキシドを付加する。反応が完了した後、触媒を失活させるか、および/または、除去すればよい。アルカリ金属水酸化物触媒は、除去してもよく、生成物中に残っていてもよく、または、酸で中和して残渣が生成物中に残っていてもよい。二重金属シアニド触媒の残渣は生成物中に残っていてもよいが、代わりに必要に応じて除去することも可能である。
【0024】
本発明の配合物には、25〜60重量%の非アミン系ポリエーテルポリオールがさらに含まれ、当該ポリエーテルポリオールは公称ヒドロキシル官能価が6〜8であり、OH価が300〜700mgKOH/gである。このようなポリオールは、上述のようなアルキレンオキシドと、6〜8個の反応性基を有する多価アルコール出発化合物とを付加重合させることで得られる。このような多価アルコールの例としては、ソルビトール、スクロース、グルコース、フルクトース、ラクトース、または、他の糖類が挙げられる。一実施態様では、出発化合物はソルビトールまたはスクロースである。これらの多価アルコール、並びに、当該アルコールと水、グリセロール、プロピレングリコール、エチレングリコールまたはジエチレングリコールとの混合物を出発化合物として用いてもよい。共開始剤を併用する場合には、共開始剤は全開始剤の20モル%以下を構成する。
【0025】
使用可能な適切なソルビトール開始またはスクロース/グリセリン開始ポリエーテルの例としては、VoranolTM360、VoranolTM RN411、VoranolTM RN490、VoranolTM 370、VoranolTM 446、VoranolTM 520、VoranolTM 550、VoranolTM RN 482およびTercarolTM RF 55ポリオール(いずれもダウ・ケミカル社より入手可能)が挙げられる。
【0026】
ポリオール混合物は、上述のもの以外にもポリオールを含有していてもよい。開始剤化合物には、アルキレングリコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等)、グリコールエーテル(例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等)、グリセリン、トリメチロールプロパン、または、ペンタエリトリトールが含まれていてもよい。開始剤化合物の一部は一級および/または二級アミノ基を含有するものであり、例えば、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、ピペラジン、アミノエチルピペラジン、ジイソプロパノールアミン、モノイソプロパノールアミン、メタノールアミン、ジメタノールアミン等であってよい。これらのタイプのアミン開始ポリオールは、ある程度自己触媒的な傾向がある。好んで選ばれるアルキレンオキシドは、プロピレンオキシド、または、プロピレンオキシドとエチレンオキシドとの混合物である。別の化合物としては、フェノールとホルムアルデヒドとジアルカノールアミンとのマンニッヒ縮合物が可能である。
【0027】
ポリウレタン形成組成物は、少なくとも1種の有機ポリイソシアネートを含有する。有機ポリイソシアネートまたはその混合物は、1分子当たり平均で少なくとも2.5個のイソシアネート基を含有するのが有利である。好ましいイソシアネート官能価は、1分子当たり約2.5〜約3.6個または約2.6〜約3.3個のイソシアネート基である。ポリイソシアネートまたはその混合物は、イソシアネート当量が約130〜200であるのが有利である。好ましくは130〜185、より好ましくは130〜170である。これらの官能価および当量の値は、混合物中の個々のポリイソシアネートに対して当てはまる必要はなく、混合物全体としてこれらの値を満たせばよい。
【0028】
適切なポリイソシアネートとしては、芳香族、脂肪族および脂環式ポリイソシアネートが挙げられる。芳香族ポリイソシアネートが一般に好ましい。代表的なポリイソシアネートとしては、例えば、m−フェニレンジイソシアネート、2,4−および/または2,6−トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)の各種異性体、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、テトラメチレン−1,4−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエンジイソシアネート、水素化MDI(H12MDI)、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、メトキシフェニル−2,4−ジイソシアネート、4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニルジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、4,4’,4”−トリフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、水素化ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、トルエン−2,4,6−トリイソシアネート、4,4’−ジメチルジフェニルメタン−2,2’,5,5’−テトライソシアネートが挙げられる。好ましいポリイソシアネートは、いわゆる高分子化MDI(ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネートをモノマーMDIに添加した混合物)である。特に適切な高分子化MDIは、遊離MDI含量が5〜50重量%、より好ましくは10〜40重量%である。このような高分子化MDIは、商品名PAPIおよびVoranateとしてダウ・ケミカル社より入手可能である。
【0029】
特に好ましいポリイソシアネートは、平均イソシアネート官能価が1分子当たり2.6〜3.3個のイソシアネート基であり、イソシアネート当量が130〜170である高分子化MDIである。このタイプの適切な市販品としては、PAPITM 27、VoranateTM M229、VoranateTM M 220、VoranateTMM595、VoranateTM M600、VoranateTM M647およびVoratecTM SD 100 Iso(いずれもダウ・ケミカル社製)が挙げられる。
【0030】
イソシアネート末端化プレポリマーおよび準プレポリマー(プレポリマーと未反応ポリイソシアネート化合物との混合物)を使用することもできる。これらは、化学量論的に過剰な有機ポリイソシアネートをポリオール(例えば、上述のポリオール)と反応させて調製される。これらのプレポリマーを調製するのに適した方法は周知である。このようなプレポリマーまたは準プレポリマーは、好ましくはイソシアネート官能価が2.5〜3.6であり、イソシアネート当量が130〜200である。
【0031】
ポリイソシアネートは、90〜180のイソシアネート指数を与えるのに十分な量で使用する。イソシアネート指数は、ポリイソシアネート成分由来の反応性イソシアネート基の数をポリウレタン形成組成物中のイソシアネート反応性基(水等のイソシアネート反応性発泡剤に含有されるものを含む)の数で割り、100を掛けた値として算出される。イソシアネート指数の計算には、水は1分子当たり2個のイソシアネート反応性基を有すると考える。好ましいイソシアネート指数は100〜160であり、より好ましいイソシアネート指数は105〜150である。
【0032】
ポリウレタン形成組成物に使用される発泡剤には、少なくとも1種の物理的発泡剤、即ち、炭化水素、ヒドロフルオロカーボン、ヒドロクロロフルオロカーボン、フルオロカーボン、ジアルキルエーテルもしくはフッ素置換ジアルキルエーテル、または、これらの2種以上の混合物が含まれる。これらのタイプの発泡剤としては、例えば、プロパン、イソペンタン、n−ペンタン、n−ブタン、イソブテン、イソブテン、シクロペンタン、シクロヘキサン、ジメチルエーテル、1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン(HCFC−141b)、クロロジフルオロメタン(HCFC−22)、1−クロロ−1,1−ジフルオロエタン(HCFC−142b)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365mfc)、1,1−ジフルオロエタン(HFC−152a)、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFC−227ea)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)が挙げられる。炭化水素発泡剤およびヒドロフルオロカーボン発泡剤が好ましい。一部の実施態様では、炭化水素発泡剤(例えば、シクロペンタン)を物理的発泡剤として用いる。通常、物理的発泡剤の他に、さらに水を配合物へ含有させるのが好ましい。
【0033】
発泡剤は、好ましくは、配合物が硬化して15〜100kg/m、好ましくは20〜65kg/m、特に25〜45kg/mの成形密度を有するフォームを形成するような量で用いる。これらの密度を達成するには、炭化水素発泡剤またはヒドロフルオロカーボン発泡剤を、簡便には、ポリオール100重量部当たり約8〜約40重量部、好ましくは約10〜約35重量部の範囲の量で用いる。水はイソシアネート基と反応して二酸化炭素を生成し、この二酸化炭素が膨張ガスとして作用する。水は、ポリオール100重量部当たり0.5〜3.5重量部、好ましくは1.0〜3.0重量部の範囲内の量で用いるのが適切である。
【0034】
ポリウレタン形成組成物には、典型的には、ポリオールおよび/または水とポリイソシアネートとを反応させるための少なくとも1種の触媒が含まれる。適切なウレタン形成触媒としては、米国特許第4,390,645号およびWO02/079340(いずれも引用により本明細書に含まれるものとする)に記載されたものが挙げられる。代表的な触媒としては、三級アミンやホスフィン化合物、各種金属のキレート、強酸の酸性金属塩、各種金属の強塩基、アルコラートおよびフェノラート、有機酸と様々な金属との塩、四価のスズや三価および五価のA、SbおよびBiの有機金属誘導体、鉄およびコバルトの金属カルボニルが挙げられる。
【0035】
三級アミン触媒が一般に好ましい。三級アミン触媒として挙げられるのは、ジメチルベンジルアミン(例えば、ライン・ケミー社製DesmorapidTM DB)、1,8−ジアザ(5,4,0)ウンデカン−7(例えば、エアープロダクツ社製PolycatTM SA-1)、ペンタメチルジエチレントリアミン(例えば、エアープロダクツ社製PolycatTM 5)、ジメチルシクロヘキシルアミン(例えば、エアープロダクツ社製PolycatTM 8)、トリエチレンジアミン(例えば、エアープロダクツ社製DabcoTM 33LV)、ジメチルエチルアミン、n−エチルモルホリン、N−アルキルジメチルアミン化合物(例えば、N−エチルN,N−ジメチルアミンおよびN−セチルN,N−ジメチルアミン)、N−アルキルモルホリン化合物(例えば、N−エチルモルホリンおよびN−ココモルホリン)等である。有用な他の三級アミン触媒としては、エアープロダクツ社から商品名DabcoTM NE1060、DabcoTM NE1070、DabcoTM NE500、DabcoTM TMR、DabcoTM TMR-2、DabcoTM TMR 30、PolycatTM1058、PolycatTM 11、PolycatTM 15、PolycatTM 33、PolycatTM 41、DabcoTM MD45で販売されているもの、ハンツマン社から商品名ZR 50、ZR 70で販売されているものが挙げられる。さらに、本発明ではある一定のアミン開始ポリオールを触媒物質として使用することもできる(例えば、WO01/58976Aに記載のもの)。上記の2種以上の混合物を使用することもできる。
【0036】
触媒は、触媒として十分な量で使用する。好ましい三級アミン触媒の場合、触媒の適切な量は、ポリオール100重量部当たり約0.5〜約4部、特に約1〜約3部の三級アミン触媒である。
【0037】
三量化触媒と呼ばれることの多い他のタイプの触媒も、同様に有用な場合がある。これらには、例えば、DabcoTMK2097およびDabcoTM K-15に似た構造が含まれる。
【0038】
ポリウレタン形成組成物は、好ましくは、少なくとも1種の界面活性剤も含有する。当該界面活性剤は、ガスが発生して泡を形成し、フォームを膨張させるため、組成物の気泡を安定化させるのに役立つ。適切な界面活性剤の例としては、脂肪酸のアルカリ金属塩やアミン塩、例えば、ナトリウムオレエート、ナトリウムステアレート、ナトリウムリシノレエート(ricinoleate)、ジエタノールアミンオレエート、ジエタノールアミンステアレート、ジエタノールアミンリシノレエート、等;スルホン酸(例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸やジナフチルメタンジスルホン酸)のアルカリ金属塩やアミン塩;リシノール酸;シロキサン−オキシアルキレンポリマーまたはコポリマーおよび他のオルガノポリシロキサン;オキシエチル化(oxethylated)アルキルフェノール(例えば、TergitolTMNP9およびTritonTM X100(ダウ・ケミカル社製));オキシエチル化脂肪アルコール、例えば、TergitolTM15-S-9(ダウ・ケミカル社製);パラフィン油;ヒマシ油;リシノール酸エステル;ロート油;落花生油;パラフィン;脂肪アルコール;ポリオキシアルキレン側基やフルオロアルカン側基を有するジメチルポリシロキサンおよびオリゴマー性アクリレートが挙げられる。これらの界面活性剤は、通常、ポリオール100重量部当たり0.01〜6重量部の量で使用される。
【0039】
有機シリコーン界面活性剤が一般に好ましいタイプである。多種多様なこれらの有機シリコーン界面活性剤が市販されており、例えば、エボニック社からTegostabTMの名称で販売されているもの(例えば、TegostabTMB-8462、B8427およびB8474界面活性剤)、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社からNiaxTMの名称で販売されているもの(例えば、NiaxTM L6900およびL6988界面活性剤)、並びに、エアープロダクツ・アンド・ケミカルズ社から市販されている各種界面活性剤製品(例えば、DabcoTM DC-5598界面活性剤)が挙げられる。
【0040】
上述の成分以外にも、ポリウレタン形成組成物は、各種の補助成分、例えば、充填剤、着色料、臭気マスキング剤、難燃剤、殺生物剤、酸化防止剤、UV安定化剤、帯電防止剤、粘度調整剤等を含んでいてもよい。
【0041】
適切な難燃剤の例としては、リン化合物、ハロゲン含有化合物、メラミンが挙げられる。
【0042】
充填剤および顔料の例としては、炭酸カルシウム、二酸化チタン、酸化鉄、酸化クロム、アゾ/ジアゾ色素、フタロシアニン、ジオキサジン、再生硬質ポリウレタンフォーム、カーボンブラックが挙げられる。
【0043】
UV安定化剤の例としては、ヒドロキシベンゾトリアゾール、ジブチルチオカルバミン酸亜鉛、2,6−ジ第三ブチルカテコール、ヒドロキシベンゾフェノン、ヒンダードアミン、ホスフィットが挙げられる。
【0044】
充填剤を除く上述の添加剤は、通常、それぞれポリウレタン配合物の0.01重量%〜3重量%といった少量で使用する。充填剤は、ポリウレタン配合物の50重量%までの量で使用可能である。
【0045】
ポリウレタン形成組成物は、ポリオールとイソシアネートとが反応し、発泡剤がガスを生成し、かつ、組成物が膨張・硬化するような条件下に各種成分を同時に供することで調製される。ポリイソシアネートを除く全成分(または、これらの任意の組み合わせ)は、必要に応じて予め混合して配合ポリオール組成物とすることができ、フォームを調製するとなった際にポリイソシアネートと混合する。当該成分は必要に応じて予め加熱してもよいが、通常はその必要はなく、成分を同時にほぼ室温(約22℃)に置いて反応を行うことができる。通常、組成物に熱を加えて硬化を促す必要はなく、この操作も必要に応じて行えばよい。
【0046】
本発明は、いわゆる「現場注入」用途において特に有用であり、当該用途では、ポリウレタン形成組成物をキャビティへ分注し、キャビティ内で発泡させてキャビティを充填し、これにより構造上および/または熱的な絶縁性を組立て後の製品へ付与する。用語「現場注入」とは、必要とされる場所にフォームを作製することを云い、ある工程でフォームを作製し、その後別の製造工程において所定の位置に組み立てることを云うのではない。現場注入法は、家庭用電化製品(例えば、冷蔵庫、冷凍庫、クーラー)や、断熱フォームを含有する壁を有する類似の製品を作製するのに通常用いられている。ポリウレタン形成組成物中にアミン開始ポリオールが存在すると、配合物のフローが良くなって離型時間も短くなる傾向があり、同時にk値の低いフォームが製造される。
【0047】
家庭用電化製品(例えば、冷蔵庫、冷凍庫、クーラー)の壁は、最も簡便には本発明に従って絶縁するが、先ず外部シェルと内部ライナーを同時に組み立ててシェルとライナーの間にキャビティが形成されるようにする。キャビティは、絶縁すべき空間および製造されるフォームの寸法と形状を規定する。典型的には、フォーム配合物の導入に先立って、シェルとライナーとを何らかの方法、例えば、溶接、溶融接合、または、何らかの接着剤を用いて(あるいは、これらを組み合わせて)互いに接合する。シェルとライナーは、ジグまたは他の装置を用いて正しい相対位置に支持または保持可能である。1つ以上の入口をキャビティに設け、これらを介してフォーム配合物を導入することができる。キャビティがフォーム配合物で充填され、かつ、フォーム配合物が膨張するため、通常1つ以上の出口を設けてキャビティ内の空気を逃がす。
【0048】
シェルおよびライナーを構成する材料は特に重要ではないが、フォーム配合物の硬化反応および膨張反応の条件に耐えられるものである。ほとんどの場合、構成材料は最終製品に望まれる特定の性能特性について選択される。特に大型の家庭用電化製品、例えば、冷凍庫または冷蔵庫では、金属(例えば、スチール)がシェルとして一般に用いられる。プラスチック、例えば、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、スチレン−アクリロニトリル樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂または耐衝撃性ポリスチレンは、小型の家庭用電化製品(例えば、クーラー)用のシェル、または、軽量であることが重要な家庭用電化製品用のシェルを作製するのに用いられることが多い。ライナーは金属であってもよいが、より典型的には上述のようなプラスチックである。
【0049】
フォーム配合物を次いでキャビティへ導入する。フォーム配合物の各種成分を全て混合し、混合物を素早くキャビティへ導入すると、キャビティ内で成分が反応・膨張する。ポリオールを水および発泡剤と共に予め混合(多くの場合、触媒および/または界面活性剤とも混合)して配合ポリオールを製造するのが一般的である。配合ポリオールは、フォームを調製する時まで保存が可能であり、フォームの調製時にポリイソシアネートと混合してキャビティ内へ導入する。通常、キャビティへの導入に先立って成分を加熱する必要はなく、また、キャビティ内で配合物を加熱して硬化を促す必要もないが、これらの工程のいずれか一方または両方を必要に応じて取り入れてもよい。シェルおよびライナーはヒートシンクとして作用する場合もあり、反応中のフォーム配合物から熱を奪うこともある。必要であれば、シェルおよび/またはライナーをある程度(例えば、50℃まで、より典型的には35〜40℃へ)加熱してこのヒートシンク効果を低減したり、硬化を促すことができる。
【0050】
膨張後、得られたフォームによってフォームを必要とするキャビティの部分が満たされるよう、十分な量のフォーム配合物を導入する。最も典型的には、基本的にキャビティ全体をフォームで充填する。キャビティを満たすのに最小限必要な量よりも多くのフォーム配合物を導入することで、キャビティをわずかに「過剰充填」するのが一般に好ましく、これによりフォーム密度がわずかに上昇する。過剰充填により、特に離型後の期間においてフォームの寸法安定性が良好になる等の恩恵が得られる。通常、キャビティは4〜35重量%過剰に充填される。ほとんどの家庭用電化製品用途における最終フォーム密度は、好ましくは25〜45kg/mの範囲である。
【0051】
フォーム配合物が膨張・硬化して十分に寸法が安定したら、シェルおよびライナーを正しい相対位置に維持するのに使用したジグまたは他の支持体から取り外すことで、得られた組立て後の製品を「離型」できる。離型時間が短いほど、所与の製造設備上で単位時間当たりに作製される部品が多くなるため、家庭用電化製品の産業では短い離型時間が重要である。
【0052】
離型時間は以下のように評価できる:離型剤でコーティングされた28リットルの「巨大」Brett金型を45℃の温度へ設定する。115%の過剰充填レベルでフォームを得るために、フォーム配合物を金型へ射出する。一定の期間の後、フォームを金型から取り出し、フォームの厚さを測定する。さらに24時間経過した後、フォームの厚さを再度測定する。24時間後の厚さと最初の厚さとの差を、フォームの離型後の膨張の指標とする。離型後の膨張が本試験で4mmを超えない場合は、離型時間が十分に長いと考える。
【0053】
記載したように、フローはフォーム配合物のもう一つの重要な特性である。本発明の目的には、200cm×20cm×5cm(約6’6”×8”×2”)の寸法を有する長方形の「Brett」金型を用いてフローを評価する。ポリウレタン形成組成物を形成し、垂直に配置(即ち、200cmの方向を垂直に配置)し、かつ、45±5℃へ予め加熱したBrett金型へ速やかに射出する。組成物を自身の重量に逆らって膨張させ、金型の内部で硬化させる。ポリウレタン形成組成物の量は、得られたフォームが金型をちょうど満たすように選択する。得られたフォームの密度を次いで測定し、同じ配合物から作製した自由発泡フォーム(配合物をプラスチック製のバッグまたはボール紙製の開放箱へ射出し、大気圧に逆らって垂直方向および水平方向へ自由に膨張させたもの)の密度と比較する。Brett金型でのフォーム密度と自由発泡密度との比を、配合物の「フローインデックス」を表すと考える。本発明を用いた場合、フローインデックス値は典型的には1.8以下であり、好ましくは1.2〜1.5である。
【0054】
ポリウレタンフォームは、低いk値を示すのが有利である。フォームのk値は複数の変数に依存する場合があり、そのうち密度は重要な変数である。多くの用途にとって、28〜40kg/m(1.8〜2.5ポンド/立方フィート)の密度を有する硬質ポリウレタンフォームは、物性と寸法安定性とコストの組み合わせが良好である。上記範囲内の密度を有する本発明のフォームは、10℃におけるk値が20mW/m−°Kを超えず、好ましくは19.5mW/m−°Kを超えず、より好ましくは19.0mW/m−°Kを超えないのが好ましい。高密度のフォームほど、k値が若干高くなる可能性がある。
【0055】
上述した家庭用電化製品や断熱フォーム以外にも、本発明は、車両用のノイズ緩衝フォーム、1層以上の積層ボード、パイプの絶縁材、その他のフォーム製品を製造するのにも有用である。本発明は、迅速な硬化が求められる場合や、フォームに良好な断熱特性が求められる場合に特に有利である。
【0056】
必要に応じて、本発明の方法を既報の方法(例えば、減圧した密閉金型キャビティへ反応混合物を射出するWO07/058793に記載の方法)と併用して実施することができる。
【実施例】
【0057】
以下の実施例は本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。特に明記しない限り、部および%は全て重量基準によるものである。
【0058】
実施例で使用する原料の説明は下記の通りである。
VORANOL* RN482は、OH価がおよそ480mgKOH/gのプロポキシル化ソルビトールであり、ダウ・ケミカル社より入手可能である。
VORANOL CP1055は、OH価がおよそ156mgKOH/gのプロポキシル化グリセリンであり、ダウ・ケミカル社より入手可能である。
VORANOL RA500は、OH価がおよそ500mgKOH/gのプロポキシル化エチレンジアミンであり、ダウ・ケミカル社より入手可能である。
VORANOL RA640は、OH価がおよそ640mgKOH/gのプロポキシル化エチレンジアミンであり、ダウ・ケミカル社より入手可能である。
VORANOL 1010Lは、OH価がおよそ110mgKOH/gのポリプロピレングリコールであり、ダウ・ケミカル社より入手可能である。
TERCARCOL* 5903は、OH価がおよそ440mgKOH/gのプロポキシル化トリレンジ−アミンであり、ダウ・ケミカル社より入手可能である。
ポリエステル−Aは、官能価が約2であり、ヒドロキシル価が315mgKOH/gの無水フタル酸/ジエチレングリコールポリエステルである。
ポリエステル−Bは、ヒドロキシル価が270mgKOH/gであり、官能価が約2.7の無水フタル酸/1,2−ブタンジオール/グリセリンポリエステルである。
ポリエステル−Cは、官能価が約2.7であり、ヒドロキシル価が270mgKOH/gの無水フタル酸/ジエチレングリコール/グリセリンポリエステルである。
ポリエステル−Dは、官能価が約2.7であり、ヒドロキシル価が270mgKOH/gのテレフタル酸/ジエチレングリコール/グリセリン由来のポリエステルである。
PolycatTM 5は、エアープロダクツ・アンド・ケミカルズ社から入手可能なアミン触媒(ペンタメチルジエチレントリアミン)である。
PolycatTM 8は、エアープロダクツ・アンド・ケミカルズ社から入手可能なアミン触媒(N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン)である。
PolycatTM 41は、エアープロダクツ・アンド・ケミカルズ社から入手可能なアミン触媒(1,3,5−トリス(3−(ジメチルアミノ)プロピルヘキサヒドロ−s−トリアジン)である。
DabcoTMTMR-30は、エアープロダクツ・アンド・ケミカルズ社から入手可能な触媒(トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール)である。
DabcoTM K2097は、エアープロダクツ・アンド・ケミカルズ社から入手可能な触媒(DEG中のカリウムアセテート)である。
シリコーン界面活性剤−Aは、エボニック社から入手可能な硬質フォーム界面活性剤である。
シリコーン界面活性剤−Bは、モメンティブ社から入手可能な硬質フォーム界面活性剤である。
シリコーン界面活性剤−Cは、エボニック社から入手可能な硬質フォーム界面活性剤である。
VORATE* SD 100は、官能価がおよそ2.7の高分子化メチレンジフェニルイソシアネートであり、ダウ・ケミカル社より入手可能である。
*VORANOL、TERCARCOLおよびVORATEは、いずれもダウ・ケミカル社の商標である。
【0059】
5個の実施例フォーム(1〜5と称する)および4個の比較例フォーム(「C1〜C4」と称する)を、表1に示す配合物量を用いて調製する。混合ヘッドを備えたキャノン製の高圧装置を金型の射出孔へ取り付け、大気圧が約1,000ミリバール(hPa)である試験室内に置く。ポリオール系とその他の配合物成分を予め混合し、次いで、少なくとも90ミリバールの混合ヘッド圧でイソシアネート成分と同時にBrett金型内へ射出する。Brett金型はアルミニウム製であり、寸法が200×20×5cmであって最上部に通気孔を有する。このBrett金型で製造されたフォームを用いて、熱伝導率(「ラムダ」とも云う)、圧縮強度、成形密度、密度分布を測定する。金型の温度は約45℃である。離型剤を金型へ塗布して離型を促進する。
【0060】
フォーム製造の24時間後にフォームサンプルを成形品の中心部から切り出し、これらのサンプルを切り出し直後に試験に用いる。ラムダは10℃(平均プレート温度)にてISO12939−01/DIN52612に従いLasercomp FOX 200を用いて測定する。成形フォーム密度および自由発泡フォーム密度はASTM1622−88に従って測定する。フォーム圧縮強度(kPa)はDIN53421−06−84に従って測定する。報告される値は、Brett金型の様々な位置から採取した5つのサンプルの平均である。
【0061】
発泡実験の際に測定される他のいくつかのパラメータは下記の通りである。
自由発泡密度(free rise density):300グラム以上の全系配合物重量から製造された自由発泡フォーム(周囲大気圧にて)の中心部より得た100×100×100mmのブロックから求めた密度である。FRDはkg/mの単位で報告される。
最小充填密度(minimum fill density):金型を完全に満たすのに必要な最小重量と金型の体積から求めた密度である。MFDは、Brettが95%以上充填される場合にはBrettの長さから推定可能である。MFDはkg/mの単位で報告される。
成形密度(molded density):金型内の射出重量と金型の体積から求めた密度である。MDはkg/mの単位で報告される。成形密度の測定値は、100×100×「厚さ」mm(表皮層を含む)の少なくとも5つのサンプルについて、サンプルの重量を測定し、各サンプルの重量をサンプルの測定体積で割った平均から求める。
【0062】
離型実験については、離型剤でコーティングされた28リットルの「巨大」金型(寸法が70×40×10cm)を45℃の温度へ設定する。115%の過剰充填レベルでフォーム配合物を金型へ射出する。過剰充填レベルは、成形密度を最小充填密度で割った値である。4、6または7分後にフォームを金型から取り出し、フォームの厚さを測定する。さらに24時間経過した後、フォームの厚さを再度測定する。24時間後の厚さと最初の厚さ(=10cm)との差を、フォームの離型後の膨張の指標とする。離型後の膨張が本試験で4mmを超えない場合は、離型時間が十分に長いと考える。
【0063】
表1に示す配合物を用いて硬質フォームを製造する。
【0064】
【表1】

【0065】
製造したフォームの特性を表2に示す。
【0066】
【表2】

【0067】
結果から、ポリエステル(C3、C4、1〜5)を含有する配合物は、対照配合物C1およびC2と比較して熱伝導率が向上していることが判る。官能価が2を超えるポリエステルは、対照サンプルC3およびC4と同様の熱伝導率を有するフォームを生成するが、実施例では、C3およびC4に比べて離型時間が有意に減少している。
【0068】
実施例6からは、高官能性ポリエステルポリオールのレベルが低いと、比較例5に対して熱伝導率の有意な向上が観察されることが判る。
【0069】
上記実施例は、開示の具体的な実施態様を構成する。本開示の利益を受ける当業者であれば、さらなる実施例および実施態様が本開示の範囲内にあることは明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬質ポリウレタンフォームの調製方法であって、
A)少なくとも以下の1)〜3)を含有する反応性混合物を形成し:
1)以下を含有するポリオール混合物;
a)公称官能価が少なくとも2.5〜4であり、OH価が200〜500mgKOH/gである、7重量%〜20重量%未満のポリエステル
b)公称ヒドロキシル官能価が3〜6であり、OH価が250〜600mgKOH/gであり、以下のいずれかのタイプである10〜50重量%のポリオール:
i)芳香族アミン開始ポリオール;
ii)脂環式アミン開始ポリオール;または
iii)i)およびii)の組み合わせ
c)公称ヒドロキシル官能価が6〜8であり、OH価が300〜700mgKOH/gである、25〜60重量%のポリエーテルポリオール
2)少なくとも1種の炭化水素、ヒドロフルオロカーボン、ヒドロクロロフルオロカーボン、フルオロカーボン、ジアルキルエーテルまたはフッ素置換ジアルキルエーテル物理的発泡剤;および
3)少なくとも1種のポリイソシアネート;
B)前記反応性混合物が膨張・硬化して硬質ポリウレタンフォームを形成する条件に、前記反応性混合物を供する、
ことを含む方法。
【請求項2】
前記発泡剤が炭化水素である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記反応性混合物が、ポリオール成分の1.2〜2.5重量%の量で水を含有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
芳香族開始剤が、芳香族ポリカルボン酸、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族アミノカルボン酸、芳香族モノもしくはポリアミン、または、これらの組み合わせである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記芳香族開始剤が、1,2−、1,3−および1,4−フェニレンジアミン;2,3−、2,4−、3,4−および2,6−トルエンジアミン;4,4’−、2,4’−および2,2’−ジアミノジフェニルメタン;ポリフェニル−ポリメチレン−ポリアミン;並びに2種以上のこれらポリアミンの混合物からなる群より選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記芳香族開始剤が、2,3−、2,4−、3,4−、2,6−トルエンジアミンまたはこれらの組み合わせである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記芳香族開始剤が、85%以上がオルト異性体である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記芳香族ポリエーテルが、少なくとも1種のアルキレンオキシドを前記芳香族開始剤上にアニオン重付加して生成したものである、請求項4〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリエステルが、炭素数3〜9の二官能性、三官能性および/または四官能性の直鎖状、分岐鎖状または環状アルコールと、炭素数3〜12の多官能性の酸または酸無水物とから生成したものである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記アルコールが、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ヘキサンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、グリセロール、トリメチロールプロパン、または、これらの組み合わせである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記アルコールが、グリセロールとジエチレングリコールの組み合わせである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記多官能性の酸または酸無水物が、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、無水テトラクロロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水ピロメリット酸、コハク酸、アゼライン酸、アジピン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、クエン酸、無水トリメリト酸、または、これらの組み合わせである、請求項9または10に記載の方法。
【請求項13】
前記酸無水物または酸が、無水フタル酸、フタル酸、テレフタル酸、無水テレフタル酸、または、これらの組み合わせである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ポリエステルの公称官能価が2.5〜3.0である、請求項9〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記ポリオール成分c)の開始剤がソルビトールである、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
イソシアネート指数が90〜180である、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記反応混合物が、10〜30重量%の少なくとも1種のポリオールd)を含有し、ここで前記ポリオールd)は公称官能価が2〜3であり、ヒドロキシル価が80〜200である、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
熱伝導率が、ISO12939−01/DIN52612に従って10℃で測定した場合に20mW/m−°K未満である、請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
熱伝導率が、ISO12939−01/DIN52612に従って10℃で測定した場合に19mW/m−°K未満である、請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記ポリエステルポリオールが、前記ポリオール組成物の少なくとも10重量%を構成する、請求項8に記載の方法。

【公表番号】特表2012−521484(P2012−521484A)
【公表日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−502084(P2012−502084)
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【国際出願番号】PCT/US2010/026483
【国際公開番号】WO2010/111021
【国際公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】