説明

磁気表示シート

【課題】赤褐色のγ−酸化鉄の安定した分散性を有し、コントラストが良く鮮明な赤褐色の文字・画像などを表示し得る磁気表示シートを提供。
【解決手段】本発明の磁気表示シートは、筆記用透明シート、白色顔料及び赤褐色のγ−酸化鉄を含む分散液を内包したマイクロカプセルを有する固形分散層、支持体を、この順に有し、前記赤褐色のγ−酸化鉄の比表面積と前記分散液の粘度(25℃)との積が240〜680の範囲にあるγ−酸化鉄と分散液を有することを特徴とする。個別的には、前記赤褐色のγ−酸化鉄の比表面積と前記分散液の粘度(25℃)との組み合わせが、比表面積が14m/gのとき、粘度(25℃)は44mPa・s以下、前記比表面積が20m/g以下のとき、前記粘度(25℃)は33mPa・s以下、あるいは前記比表面積が24m/g以下のとき、前記粘度(25℃)は28mPa・s以下から選択されたいずれかである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気表示シートに関し、更に詳しくは黒色以外の赤褐色で文字・画像を画くことができ、しかもコントラストの鮮明な赤褐色の文字、画像を表示することができる磁気表示シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、磁気表示シートとしては、支持体上にマイクロカプセル固形分散層を有し、更に最上層として筆記用透明シートを有するマイクロカプセル磁気表示板が知られており、このマイクロカプセル中には、分散液体、白色顔料及び磁性粒子などを含有している。このような磁気表示板は、磁性粒子が一般に黒色酸化鉄であるためコントラストもよく文字を書くなど筆記用には問題なく使用できるものであった(例えば、特許文献1参照)。またマイクロカプセル磁気表示板の用途の拡大に伴い、磁気表示板においてパール顔料などの干渉色を利用することにより、筆記線や文字のカラー化(黒以外の色にすること。)が提案されるなど、黒色以外の色、例えば干渉色により文字の黒色をカラー化する試みがなされている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特許第2841291号(特許請求の範囲)
【特許文献2】特許第3572045号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前述のごとき特許文献1に記載の磁気表示シートは、鮮明な文字を書くことはできるが、文字の色が黒色に限定され、カラー化は提案されていない。また特許文献2に記載の磁気表示シートでは、実際には干渉色では文字の黒色をカラー化しようとしても、黒色が干渉色に勝ってしまうために実現は困難である。
そこで、本発明者等は、磁性材料の中から黒色以外の色のあるものを選択し、究明したところ、意外にも酸化鉄の中の赤褐色のγ−酸化鉄が表面積とマイクロカプセル内包液、いわゆる分散液の粘度とを規定することによりコントラストが良く鮮明な赤褐色の文字・画像などを表示し得ることを見出し、ここに本発明をなすに至った。
【0004】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、赤褐色のγ−酸化鉄の安定した分散性を有し、コントラストが良く鮮明な赤褐色の文字・画像などを表示し得る磁気表示シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の上記課題は、筆記用透明シート、白色顔料及び赤褐色のγ−酸化鉄を含む分散液を内包したマイクロカプセルを有する固形分散層、支持体を、この順に有し、前記赤褐色のγ−酸化鉄の比表面積と前記分散液の粘度(25℃)との積が240〜680の範囲にあるγ−酸化鉄と分散液を有することを特徴とする磁気記録シートによって達成される。
【発明の効果】
【0006】
本発明の磁気表示シートにおいて、前記赤褐色のγ−酸化鉄の比表面積と前記分散液の粘度(25℃)との積が240〜680の範囲にあるγ−酸化鉄と分散液を有することにより、赤褐色のγ−酸化鉄の安定した分散性が得られると共に、得られた表示がコントラストが良く鮮明な赤褐色の文字・画像などを表示し得るという優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に、本発明の実施の形態の最良のものについて説明するが、これは一例であってこれに限定されるものではない。
【0008】
本発明の磁気表示シートは、筆記用透明シート、白色顔料及び赤褐色のγ−酸化鉄を含む分散液を内包したマイクロカプセルを有する固形分散層、支持体を、この順に有し、前記赤褐色のγ−酸化鉄の比表面積と前記分散液の粘度(25℃)との積が240〜680の範囲にあるγ−酸化鉄と分散液を有することを特徴とするものである。
【0009】
本発明の磁気表示シートにおいて、マイクロカプセルは、一例を示すと、ゼラチン被膜マイクロカプセルであり、このゼラチン被膜マイクロカプセルを形成する工程において、マイクロカプセルには、赤褐色のγ−酸化鉄、白色顔料、溶剤を含有しており、また沈殿防止剤、分散剤等の添加剤を含有する。本発明では、前記赤褐色のγ−酸化鉄の比表面積と前記分散液の粘度(25℃)との積が240〜680の範囲にあるγ−酸化鉄と分散液を有することによりコントラストが良く、鮮明な赤褐色の文字・画像を画くことができるという優れた効果が得られる。本発明に用いられる赤褐色のγ−酸化鉄の比表面積(m/g)は、14〜24の範囲がよい。また分散液の粘度(25℃)は、低い粘度から高い粘度までの広範囲にわたってコントラストが良く、鮮明な赤褐色の文字・画像を画くことができるという本発明の優れた効果が得られる。しかし、赤褐色のγ−酸化鉄の比表面積(m/g)の数値の低い分散液を用いる場合には粘度が高くても本発明の優れた効果が得られるが、比表面積(m/g)の高い赤褐色のγ−酸化鉄を用いる場合には分散液の粘度を比較的低粘度にすることが必要である。
【0010】
本発明では、前記赤褐色のγ−酸化鉄の比表面積と前記分散液の粘度(25℃)との積が240〜680の範囲にあるγ−酸化鉄と分散液を有することによりコントラストが良く、鮮明な赤褐色の文字・画像を画くことができるが、好ましくは、γ−酸化鉄の比表面積と前記分散液の粘度(25℃)との積が330〜675の範囲であり、更に好ましくは336〜672の範囲であり、いっそう好ましくは616〜672の範囲によりコントラストが良く、鮮明な赤褐色の文字・画像を画くことができる。またγ−酸化鉄の比表面積(m/g)と分散液の粘度(25℃)の値を個別的に表せば、本発明に用いられるγ−酸化鉄の比表面積(m/g)と分散液の粘度(25℃)との組み合わせは、比表面積(m/g)が14〜24のとき、分散液の粘度(25℃)は44〜14mPa・sであり、好ましくは、比表面積(m/g)が14のとき、分散液の粘度(25℃)は31〜44mPa・sであり、比表面積(m/g)が20のとき、分散液の粘度(25℃)は23〜33mPa・sであり、比表面積(m/g)が24のとき、分散液の粘度(25℃)は14〜28mPa・sである。このように、本発明では、比表面積(m/g)は、14〜24の連続した範囲で、分散液の粘度(25℃)もまた31〜44mPa・sの連続した範囲で好ましい結果が得られる。
なお、赤褐色のγ−酸化鉄の比表面積(m/g)と分散液の粘度(25℃)との組み合わせの傾向は、前述の如く分散液の粘度(25℃)は、低い粘度から高い粘度までの広範囲にわたってコントラストが良く、鮮明な赤褐色の文字・画像を画くことができることから、比表面積(m/g)が14より小さい場合でも良好な結果が得られると考えられる。
【0011】
本発明に用いられる分散液の条件を満たす溶剤としては、オクタン、ノナン、デカン、ドデカン、トルエン、ベンゼン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレン、テトラリン、ドデシルベンゼン、シクロヘキサン、シクロペンタン、フェニルキシリルエタン等の水への溶解度が1%以下の炭化水素系溶剤;2−ペプタノール、3−ペプタノール、オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール等の水への溶解度が1%以下のアルコール系溶剤、そ
の他、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル、酢酸ベンジル、2−エチルヘキシルアセタール、酪酸エチル、酪酸ブチル、酪酸イソペンチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、マレイン酸ジブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル等の水への溶解度が1%以下のエステル系溶剤等が挙げられる。これらの溶剤は、一種類のみを使用してもよくまた二種類又はそれ以上を混合して用いてもよい。 好ましい溶剤は、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ドデシルベンゼン、シクロヘキサン」、フェニルキシリルエタン、オクタノール、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチルであり、また好ましい組み合わせは、フェニルキシリルエタンとエチルベンゼン、トルエンとドデシルベンゼン、シクロヘキサンとフタル酸ジブチルである。
【0012】
溶剤の種類を水への溶解度が1%以下に限定するのは、カプセル製造工程中、油敵を水中に分散してカプセル化を行うためである。この他、本発明では白色顔料、沈降防止剤、分散剤、カプセル粒子径、バインダー、表示板の材質、マイクロカプセルの製造方法等は、この技術分野において周知のマイクロカプセル磁気表示板に係る技術を使用して製造することができるが、特許第2841291号に記載されているものと同じものを用いるか、又は同様の方法が用いるのが好ましい。該特許公報に記載された事項は、本発明に使用することができるが、ここに、そのうち、特に好ましい事項について例示すると、本発明に用いられる白色顔料としては、二酸化チタン、リトポン、亜鉛華、鉛白、硫化亜鉛等が挙げられる。沈澱防止剤としては、無水珪酸、含水珪酸、珪酸塩(珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム等)、微粉アルミナ、シリカ粉、けいそう土、カリオン、ハードクレー、ソフトクレー、ベントナイト、極微細炭酸カルシウム、極微細活性化炭酸カルシウム、重炭酸カルシウム、含水塩基性炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、ベンチジンイエロー等が挙げられる。これらは単独でもまた2種以上を混合してもよい。分散剤としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、アニオン系脂肪族エステル混合物、ポリカルボン酸アミン塩が挙げられる。本発明に用いられるマイクロカプセルの平均粒径は80μm〜600μmであるが、好ましくは100μm〜400μmである。筆記用透明シートとしては、好ましくはポリエステル、ポリエチレン等の透明フィルムが用いられるが、これらに限定されるものではない。またこのフィルムの厚さは、50μm〜250μmであり、好ましくは75μm〜150μmである。また支持体としては、紙、繊維質材料、合板、金属、透明又は不透明の合成樹脂が用いられる。
【0013】
本発明の磁気表示シートは、種々の用途に使用することができ、例えば、キャッシュカード、キャッシュレスカード、クレジットカード、プリペードカード等のカード類に使用できるほか、一般的な用途として、例えば、幼児用絵本、幼児用お絵かき板などの幼児用玩具、文字練習器、各種ゲーム用板、文字練習板、習字練習板、携帯メモ用などのメモ用板、筆談用メモ板、会議用黒板、クリーンルームなどでの各種情報ボード、電光掲示板、パソコンの表示用パネル等が挙げられる。
【実施例】
【0014】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、この例は本発明を説明するためのものであり、本発明はこれに限定されるものではない。
〔製造例〕本発明に用いられるマイクロカプセルは、次のようにして製造した。
(1)ゼラチン水溶液の調整
水にゼラチンを添加し、50℃で攪拌、溶解することにより、5質量%ゼラチン水溶液を調整した。
(2)アラビアゴム水溶液の調整
水にアラビアゴムを添加して、50℃で攪拌、溶解して5質量%アラビアゴム水溶液を調整した。
(3)ゼラチンシェル形成工程
5質量%ゼラチン水溶液100gと5質量%アラビアゴム水溶液100gとを混合し、約50℃に昇温し、攪拌しながら下記内包液100gをゆっくり加え、平均粒子径が300μmになるまで攪拌した。その後、50℃の水200gを加え、更に15質量%酢酸水でpH4.7に調整したのち、得られた溶液を25℃まで冷却した。ついで10℃まで急速に冷却した後、25%グルタールアルデヒド水溶液を加えて、ゼラチンシェルからなる磁気表示シートに用いるマイクロカプセルを得た。
【0015】
(4)マイクロカプセル内包液となる分散液の調整
〔分散液1〕
γ−酸化鉄(比表面積:14)
〔商品名:γ―MRD(チタン工業社製)、赤褐色〕 3g
白色顔料〔TIPAQUE R−820(商品名);石原産業社製〕 20g
フェニルキシリルエタン 60.5g
エチルベンゼン 15g
沈降防止剤〔アエロジル(商品名):日本アエロジル社製〕 1g
分散剤〔ノプコサントK963(商品名):サンノプコ社製〕 0.5g
分散液1の全成分の総量は100gであり、この分散液1をホモミキサーで十分攪拌した後、BL型回転粘度計(株式会社東京計器製)で粘度(25℃)を測定すると31mPa・sであった。
【0016】
〔分散液2〕
γ−酸化鉄(比表面積:14)
〔商品名:γ―MRD(チタン工業社製)、赤褐色〕 3g
白色顔料〔TIPAQUE R−820(商品名);石原産業社製〕 20g
フェニルキシリルエタン 70.5g
エチルベンゼン 5g
沈降防止剤〔アエロジル(商品名):日本アエロジル社製〕 1g
分散剤〔ノプコサントK963(商品名):サンノプコ社製〕 0.5g
分散液2の全成分の総量は100gであり、分散液1と同様の条件で粘度(25℃)を測定すると44mPa・sであった。
【0017】
〔分散液3〕
γ−酸化鉄(比表面積:20)
〔商品名:MX−450(戸田工業社製、赤褐色)〕 3g
白色顔料〔TIPAQUE R−820(商品名);石原産業社製〕 20g
フェニルキシリルエタン 45.5g
エチルベンゼン 30g
沈降防止剤〔アエロジル(商品名):日本アエロジル社製〕 1g
分散剤〔ノプコサントK963(商品名):サンノプコ社製〕 0.5g
分散液3の全成分の総量は100gであり、分散液1と同様の条件で粘度(25℃)を測定すると23mPa・sであった。
【0018】
〔分散液4〕
γ−酸化鉄(比表面積:20)
〔商品名:MX−450(戸田工業社製、赤褐色)〕 3g
白色顔料〔TIPAQUE R−820(商品名);石原産業社製〕 20g
フェニルキシリルエタン 60.5g
エチルベンゼン 15g
沈降防止剤〔アエロジル(商品名):日本アエロジル社製〕 1g
分散剤〔ノプコサントK963(商品名):サンノプコ社製〕 0.5g
分散液4の全成分の総量は100gであり、分散液1と同様の条件で粘度(25℃)を測定すると33mPa・sであった。
【0019】
〔分散液5〕
γ−酸化鉄(比表面積:24)
〔商品名:γ−THD(戸田工業社製、赤褐色)〕 3g
白色顔料〔TIPAQUE R−820(商品名);石原産業社製〕 20g
フェニルキシリルエタン 35.5g
エチルベンゼン 40g
沈降防止剤〔アエロジル(商品名):日本アエロジル社製〕 1g
分散剤〔ノプコサントK963(商品名):サンノプコ社製〕 0.5g
分散液5の全成分の総量は100gであり、分散液1と同様の条件で粘度(25℃)を測定すると14mPa・sであった。
【0020】
〔分散液6〕
γ−酸化鉄(比表面積:24)
〔商品名:γ−THD(戸田工業社製、赤褐色)〕 3g
白色顔料〔TIPAQUE R−820(商品名);石原産業社製〕 20g
フェニルキシリルエタン 50.5g
エチルベンゼン 25g
沈降防止剤〔アエロジル(商品名):日本アエロジル社製〕 1g
分散剤〔ノプコサントK963(商品名):サンノプコ社製〕 0.5g
分散液6の全成分の総量は100gであり、分散液1と同様の条件で粘度(25℃)を測定すると28mPa・sであった。
【0021】
〔分散液7〕
γ−酸化鉄(比表面積:14)
〔商品名:γ―MRD(チタン工業社製)、赤褐色〕 3g
白色顔料〔TIPAQUE R−820(商品名);石原産業社製〕 20g
フェニルキシリルエタン 75.5g
沈降防止剤〔アエロジル(商品名):日本アエロジル社製〕 1g
分散剤〔ノプコサントK963(商品名):サンノプコ社製〕 0.5g
分散液7の全成分の総量は100gであり、分散液1と同様の条件で粘度(25℃)を測定すると53mPa・sであった。
【0022】
〔分散液8〕
γ−酸化鉄(比表面積:20)
〔商品名:MX−450(戸田工業社製、赤褐色)〕 3g
白色顔料〔TIPAQUE R−820(商品名);石原産業社製〕 20g
フェニルキシリルエタン 55.5g
エチルベンゼン 20g
沈降防止剤〔アエロジル(商品名):日本アエロジル社製〕 1g
分散剤〔ノプコサントK963(商品名):サンノプコ社製〕 0.5g
分散液8の全成分の総量は100gであり、分散液1と同様の条件で粘度(25℃)を測定すると38mPa・sであった。
【0023】
〔分散液9〕
γ−酸化鉄(比表面積:24)
〔商品名:γ−THD(戸田工業社製、赤褐色)〕 3g
白色顔料〔TIPAQUE R−820(商品名);石原産業社製〕 20g
フェニルキシリルエタン 60.5g
エチルベンゼン 15g
沈降防止剤〔アエロジル(商品名):日本アエロジル社製〕 1g
分散剤〔ノプコサントK963(商品名):サンノプコ社製〕 0.5g
分散液9の全成分の総量は100gであり、分散液1と同様の条件で粘度(25℃)を測定すると34mPa・sであった。
【0024】
〔実施例1〜6、比較例1〜3〕
(1)マイクロカプセル磁気表示シート
分散液1〜9を用いて得られたγ−酸化鉄を含むマイクロカプセルスラリーを600μmメッシュの篩いで分けた後、600μm以下のマイクロカプセルを真空ろ過にかけて脱水し、一部水分を含むマイクロカプセルケーキを得た。当該ケーキ20gに水性ウレタン樹脂〔ハイドランHW−301(商品名):大日本インキ化学工業社製〕10gを混ぜ、粘度(25℃)3,500mPa・s(BL型回転粘度計)の塗工液を得た。得られたと塗工液をバーコーター方式で、100μmポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに1mmの厚さに塗工し、60℃で温風乾燥してPETフィルムに接着したγ―酸化鉄を含有するマイクロカプセル層を得た。ついで、このマイクロカプセル層上に光硬化性樹脂接着剤(ケミテック社製)をバーコーター方式で200μmの厚みで塗工し、この上に50μmPETフィルムを重ねて紫外線を照射してマイクロカプセル磁気表示シートを得た。
【0025】
(2)マイクロカプセル磁気表示シートの評価
評価方法は、作製したマイクロカプセル磁気表示シートを用いて、筆記については直径1mm、1,000ガウスの筆記用磁気ペンを表示シート表面に当て、速度200mm/秒で移動させて線質を評価した。また表示シート表面に書かれた線の消去については100×30mm、厚さ2ミリ、300ガウスの消去用ゴム磁石を表示シート裏面に当て、速度100mm/秒で移動させて消去状態を評価した。表中の評価において、○は、筆記面で鮮明な線が書けた。消去面では、1往復で完全に消去することができた。△は、筆記面で線質が一部かすれるところがあった。消去面では、2往復で完全に消去することができた。×は、筆記面で線質が非常にかすれるか又は線を書くことができなかった。消去面では、2往復しても消去することができなかった。得られた結果を表1に示すが、更に表1の数値をプロットすると、図1に示されるグラフが得られ、本発明で使用しうる範囲が明確となる。
【0026】
【表1】

【0027】
表1から明らかなように、分散液の比表面積と分散液の粘度との関係は、反比例し、比表面積が14のときは、分散液の粘度は、31〜44と高い粘度でも使用でき、また比表面積が20のときは、分散液の粘度は、23〜33と使用できる粘度は低くなる。更に比表面積が24のときは、分散液の粘度は、14〜28と一層ひくくなる。したがって、本発明の好ましい例では、比表面積が14〜24であって、分散液の粘度が31〜44から14〜28の範囲で使用したとき、赤褐色のγ−酸化鉄の安定した分散性が得られ、コントラストが良く鮮明な赤褐色の文字・画像などを表示することができるマイクロカプセル磁気表示シートが得られるという優れた効果を奏するといえる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の磁気表示シートは、業務用、営業用、家庭用等のいずれの分野における用途にも用いられる。具体的には、キャッシュカード、キャッシュレスカード、クレジットカード、プリペードカード等のカード類に使用できるほか、一般的な用途として、例えば、幼児用絵本、幼児用お絵かき板などの幼児用玩具、文字練習器、各種ゲーム用板、文字練習板、習字練習板、携帯メモ用などのメモ用板、筆談用メモ板、会議用黒板、クリーンルームなどでの各種情報ボード、電光掲示板、パソコンの表示用パネル等に簡単かつ容易に使用することができるもので、産業上極めて有用性を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係るγ−酸化鉄の比表面積と分散液の粘度(25℃)との関係を表したグラフである。
【符号の説明】
【0030】
○ 筆記面で鮮明な線が書ける。
△ 筆記面で線質が一部かすれる。
× 筆記面で線質が不良。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筆記用透明シート、白色顔料及び赤褐色のγ−酸化鉄を含む分散液を内包したマイクロカプセルを有する固形分散層、支持体を、この順に有し、
前記赤褐色のγ−酸化鉄の比表面積と前記分散液の粘度(25℃)との積が240〜680の範囲にあるγ−酸化鉄と分散液を有することを特徴とする磁気記録シート。

【図1】
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【公開番号】特開2008−276006(P2008−276006A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−121090(P2007−121090)
【出願日】平成19年5月1日(2007.5.1)
【出願人】(000105305)ケミテック株式会社 (13)