礫耕栽培方法及び来待石粉体製容器の製造方法
【課題】
従来の礫耕栽培は、安山岩等の花崗岩などの通常の礫が用いられており、これら礫自体は大きくなった植物の根を支えるだけであり、吸水性や根の付着性は殆どないものであり、水は間欠的に与えられるのみであり、水の供給が途絶えると植物は枯れてしまう。
【課題を解決するための手段】
素焼きの植木鉢や来待石粉体を用いて焼成した容器に、来待石粉体を造粒して焼成した多孔質造粒焼成品を入れたものに栽培植物を植え或いは種まきし、植木鉢或いは容器ごと水を浅く張った水槽に漬け、肥料は固形肥料を多孔質造粒焼成品に混ぜるか、液肥を水に混入することにより栽培を行う。来待石粉体の多孔質造粒焼成品は吸水性が良く自然に吸水して植物に徐々に水を給与する。
従来の礫耕栽培は、安山岩等の花崗岩などの通常の礫が用いられており、これら礫自体は大きくなった植物の根を支えるだけであり、吸水性や根の付着性は殆どないものであり、水は間欠的に与えられるのみであり、水の供給が途絶えると植物は枯れてしまう。
【課題を解決するための手段】
素焼きの植木鉢や来待石粉体を用いて焼成した容器に、来待石粉体を造粒して焼成した多孔質造粒焼成品を入れたものに栽培植物を植え或いは種まきし、植木鉢或いは容器ごと水を浅く張った水槽に漬け、肥料は固形肥料を多孔質造粒焼成品に混ぜるか、液肥を水に混入することにより栽培を行う。来待石粉体の多孔質造粒焼成品は吸水性が良く自然に吸水して植物に徐々に水を給与する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な礫耕栽培方法及びこれに使用する礫耕栽培用の来待石粉体製容器の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
礫耕栽培とは、土の代わりに礫を使い、これに培養液を散布して作物を栽培する方法であり、トマトやかいわれ大根、苺などの栽培にかなり広く採用されている。しかし、従来のものは大がかりな装置が必要な施設園芸であり、家庭で手軽に使用できるものは見当たらない。尚、礫耕栽培と言うキーワードを有する出願は、IPDLで調査した限り特許で2件実用新案で2件のみであり、しかも、礫が図面に描かれているのは、1件のみである(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】公開実用新案昭和62−181139号公報
【0004】
しかし、この技術は、植木鉢の内部にサイホンを仕込んだものであり、本願発明とは全く無関係のものである。そこで、本発明者は、来待石粉体の造粒焼成品を用いて、礫耕栽培をすることを思いつき、本発明を完成させたものである。
【0005】
来待石粉体の造粒焼成品に関しては、汚泥類と混合して焼成したものが本出願人により出願されている(特開2008−62219)。また、焼成品ではないが、低温乾燥した後セメントでコーティングする技術が、同じく本出願人から出願されている(特開2010−99655)。
【0006】
しかし、前者は汚泥の処理に主眼がおかれ、その焼成品は農業の土壌代替品にも用いられるとしているが、主眼は濾過材や路盤材であり、農業の土壌代替品としての用途説明はこの出願では全くなされていない。しかも、汚泥を混入して高温(1000℃前後)で焼成するとダイオキシンが発生するので、好ましくない。また、後者は、低温乾燥した後、補強としてセメントでコーティングするもので、製品は再度湖に投入されるものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、これらのものとは異なり、来待石粉体の多孔質造粒焼成品を用い、その吸水性能の良さや植物の根の付着性の良さに着目してこれを礫耕栽培の礫として使用とするものである。
【0008】
従来、出願は少ないが礫耕栽培自体はかなり広く行われている。そして、それには、普通通常の礫(安山岩等の花崗岩、その他)が用いられており、礫自体は大きくなった植物の根を支えるだけであり、吸水性や根の付着性は殆どないものであり、水は間欠的に与えられるのみである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
これに対し、来待石粉体の多孔質造粒焼成品は吸水性が良く(約10%、籾殻やおが屑混入品で約30〜50%)、しかも栽培植物の根との相性がよく根が良く付着する利点がある。しかも、その容器として素焼きの植木鉢や、同じく来待石粉体におが屑や籾殻を混合して水と混練し成型して焼成した植木鉢状の容器を用いるので、これらの容器を浅い水槽に置いておけば、自然に吸水して来待石粉体の多孔質造粒焼成品に水を供給する。そして、この水を植物が徐々に吸収するので、自動的な礫耕栽培が簡単に行えることになる。
【0010】
先ず、本発明の主眼である来待石粉体の多孔質造粒焼成品について説明する。これは、来待石粉体単体或いは来待石粉体とおが屑や籾殻、或いはその両者を混合し、それに水を混ぜたものを回転造粒機(コンクリートミキサー)で混練して攪拌造粒し、次いで乾燥して焼成する。
【0011】
来待石粉体は、礫混じり砂質粘土や礫混じりシルト質粘土或いは礫質土の粒度分布を有するもの単独、或いはこの来待石粉体の100重量部に対し、おが屑、籾殻或いはおが屑と籾殻の混合物3〜10重量部(容量でおが屑や籾殻が1に対して来待石粉体2程度の割合)と水10〜40重量部を加えて混練し攪拌造粒したのち、1000℃〜1180℃で焼成して、多孔質粒性の造粒焼成品を得る。或いはこの攪拌造粒品を500℃〜950℃で素焼きし、次いで1000℃〜1180℃で本焼きする。おが屑、籾殻或いはおが屑と籾殻の混合物3〜10重量部混合したのは、比重が軽く(約0.5)、また多孔のため吸水率が30〜50%にもなる。
【0012】
焼成は少量の場合は電気窯で行うとよい。焼成時間は、最高温度に達するまでに17〜18時間をかけ、最高温度を数十分維持した後或いは直ちに電源を切って1〜2日間次第に降温する。電気窯に限らず、灯油やガス、薪などの燃料を使用する窯も当然に使用できる。単独窯の他に、登り窯や連続窯で大量な焼成可能である。
【0013】
次に、容器は素焼きの植木鉢を用いても良いが、植木鉢は水の吸い上げが少なく、殆どが底の孔から内部の造粒焼成品に水が浸透することによる吸い上げであり、また、空気も素焼きの表面からの透過が少ない。
【0014】
これに対し、来待石粉体を用いて焼成した容器(来待容器)は、それ自体吸水性に優れ、多孔質造粒焼成品ともども水を吸い上げる。また、空隙率も大きいので側面からの空気の流通も良く、根に空気が十分に供給される利点がある。
【0015】
来待容器は、多孔質造粒焼成品と同様、礫混じり砂質粘土や礫混じりシルト質粘土或いは礫質土の粒度分布を有する来待石粉体100重量部に対し、おが屑、籾殻或いはおが屑と籾殻の混合物3〜10重量部(容量でおが屑や籾殻1に対して、来待石粉体2の割合)と水10〜40重量部より好ましくは20〜30重量部の割合でを加えて混練し、成型した後500℃〜950℃で素焼きし、次いで1000℃〜1180℃で本焼きして製造する。混練方法は特に限定はないが、小型のコンクリートミキサーを使用すれば、簡単に少量の混練物が得られる。大量の場合にはより大型の混合機を用いればよい。
【0016】
本発明の造粒焼成品及び来待容器に用いる来待石粉体は、礫混じり砂質粘土(礫混じりシルト質粘土、礫質土)状のものである。ここに、粘土とは、粒子の大きさが5μm以下(土質学会の分類、以下同じ)のものを言う。またシルトは5〜75μm、細砂は75〜250μm、中砂は250〜850μm、粗砂は850μm〜2mm、細礫は2〜4.75mmのものを言う。そして、本発明の粉体は2.60mm以下の礫を5%以下含んでいるものを言う。また、礫混じりシルト質粘土は、礫混じり砂質粘土に比べてシルト質の割合が多く、より粘土に近いものである。
【0017】
来待石の粉体は、不良石材や端材、研削屑などをクラッシャー等の破砕機で粉砕して、また細かな研磨屑はそのままの状態で篩分け(2.65mm以下)して得られる。粒径の分布は、ほぼ図4の粒径加積曲線に類似する。
【0018】
来待容器は、手捏ねや轆轤で成型するか、鉢状或いは円筒状の型に入れて振動或いは突き固めて成型するか、或いは円錐台柱その他の柱状型に入れて振動或いは突き固めて半乾燥状態にあるものを内側を抉って鉢状に成型した後に乾燥焼成する。
【0019】
ところで、本発明で言う来待石とは、来待錆石のことである。来待錆石は、島根県に存在する宍道湖の南岸に広く分布する新第三紀中新世出雲層群下位層来待層を構成する凝灰質砂岩のことを言い、良質のものは、塊状凝灰質粗粒砂岩のうち特に淘汰の良い岩相の所に集中し、八束郡玉湯町から宍道町にかけての東西約10km、幅1〜2kmの範囲に存在する。この来待石は、石質が柔らかく採掘、加工が容易で、出雲石灯ろうは伝統工芸品に指定されている。
【0020】
この来待錆石は、多種多様な岩石片や結晶片、それらを埋める基質から構成されている。岩石片のサイズは径0.5mm〜1.0mmが多く、最大でも1.5mm程度である。岩石片や結晶片の占める割合が80%と多い。岩石片としては、安山岩、石英安山岩、流紋岩、花崩岩、多種類の凝灰岩などが確認されている。結晶片としては、斜長石、輝石、角閃石、黒雲母、不透明鉱物、火山ガラス、変質鉱物が確認されている。また、基質としては、変質によってできた沸石、緑泥石、炭酸塩鉱物が確認されている。
【0021】
これらの鉱物の中には粘土鉱物と言われるものが多く含まれており、このことが、来待錆石の粉砕物が粘土、陶土として使用できる大きな理由であると思われる。尚、来待錆石以外に、来待白石といわれるものがある。これは、年代的に古くて流紋岩系でモンモリロナイトに変質した部分が多く、本発明には使用できないものである。
【0022】
表1に分析値を示す(島根県発行「島根の地質」)ように、来待錆石には鉄が多く(Fe2 O3 として6.13%)含まれている。そのため、本発明の陶土は焼成すると赤、茶〜黒系統色に呈色する。ただ、本発明の場合土木工事や漁礁などに使用するので、焼成物の色は問題にならない。表中、数値は重量パーセントを示す。また、表1からも明らかなように、来待錆石には7%程度の焼熱減量(Ig.loss)が含まれている。これは、古代の植物残滓であり、これが焼成時に消滅して微細孔を生じることになる。
【表1】
【発明の効果】
【0023】
以上詳述したように、本発明は素焼きの植木鉢や来待石粉体を用いて焼成した容器に、来待石粉体を造粒して焼成した多孔質造粒焼成品を収納したものに栽培植物を植え或いは種まきし、植木鉢或いは容器ごと水を浅く張った水槽に漬け、肥料は固形肥料を多孔質粒体に混入するか或いは水中に液肥をいれて植物を栽培するものである。
【0024】
従って、
(1)水は、多孔質造粒焼成品に吸収され、次第に底のほうから上部まで水が上昇していく。植物の根は、この多孔質造粒焼成品から水の供給を受ける。従って、従来の礫耕栽培で水が間欠的に与えられるのとは異なり、常に少量ずつ根に水が与えられるため自動的な礫耕栽培が簡単に行え、理想的な礫耕栽培ということができる。
(2)素焼きの植木鉢では水は底の孔から多孔質粒体に吸い上げられる。これに対し、来待容器の場合、底には孔が無い場合は来待容器自体の吸水性により多孔質粒体に水が与えられる。
(3)しかも多孔質造粒焼成品及び来待容器は栽培植物の根との相性がよく根が良く付着する。
(4)来待容器の場合、側面からの通気性が良いため、根に空気が供給される。(5)素焼きの植木鉢の場合も来待容器の場合、底の方を水に漬けておいて多孔質造粒焼成品に水を吸わす方法をとる。そして、肥料は液肥を水に混入しておくか、固形肥料を多孔質造粒焼成品に混入しておくので、肥料管理は簡単である。
(6)本発明の多孔質造粒焼成品も来待容器も、篩分けした来待石粉体を水と混練し成形焼成するだけでよいから、設備さえあれば簡単に且つ大量に生産できる。
(7)混練物中に、モミ殻やのこ屑その他の有機物小塊を混入焼成することにより、多孔質の来待容器や多孔質造粒焼成品が得られ、水の吸収や伝播に優れるとともに比重を非常に小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明で使用する来待容器(来待石粉体を用いて焼成した容器)の一部を断面した斜視図である。(実施例1)
【図2】本発明で使用する市販の素焼きの植木鉢の一部を断面した斜視図である。(実施例1)
【図3】図3は本発明で使用する来待石粉体の多孔質造粒焼成品の正面図である。(実施例1)
【図4】来待石粉体の粒径加積曲線を示すグラフである。(実施例1)
【図5】来待容器1或いは多孔質造粒焼成品3を焼成する温度と時間の関係を示すグラフである。(実施例1)
【図6】(a)は、この来待容器に多孔質造粒焼成品を詰めた状態の縦断面図、(b)はこの来待容器と造粒焼成品を水に漬けた場合の水の吸い上げ高さと時間(分)の関係を示すグラフである。(実施例2)
【図7】多孔質造粒焼成品3の累積細孔容積のグラフで、縦軸は吸収した水銀の容量、横軸は細孔の直径を示す。(実施例2)
【図8】三角図法による土性表示を示すグラフである。(実施例2)
【図9】土壌粒子33とその間に界面張力によって保持された水34を示す模式図である。(実施例2)
【図10】毛細管現象を示す正面図である。(実施例2)
【図11】作物の吸水利用から見た土壌水分の分類を示す図式である。(実施例2)
【図12】土壌の粒径と有効水分量の関係を示す図式である。(実施例2)
【図13】焼成品に水を十分吸収させて毛細管現象終了時点からの自然乾燥重量の変化を示すグラフである。(実施例2)
【図14】来待容器1に多孔質造粒焼成品3と固形肥料4を入れ、水槽5に漬けた状態を示す縦断面図である。(実施例3)
【図15】大型の水槽9に来待容器1を多数設置した状態の正面図である。
【図16】来待容器と素焼き植木鉢に多孔質造粒焼成品と通常の培土を入れ、固形肥料と液肥を用いたものの成長の度合いを示す比較のグラフである。(実施例4)
【図17】1株当たりの実の個数の比較を示すグラフである。(実施例4)
【図18】ミニトマトの根71の状態を示す模式図であり、(a)が来待容器(b)が素焼き植木鉢である。(実施例4)
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
素焼きの植木鉢や来待石粉体を用いて焼成した容器に、来待石粉体を造粒して焼成した多孔質造粒焼成品を入れたものに栽培植物を植え或いは種まきし、植木鉢或いは容器ごと水を浅く張った水槽に漬けて礫耕栽培を行う。肥料は、固形肥料或いは液体肥料を用いる。
【実施例1】
【0027】
以下、本発明を、図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明で使用する来待容器1(来待石粉体を用いて焼成した容器)の一部を断面した斜視図であり、図2は、同じく本発明で使用する市販の素焼きの植木鉢2の一部を断面した斜視図である。また、図3は本発明で使用する来待石粉体の多孔質造粒焼成品3の正面図である。図4は、来待石粉体の粒径加積曲線を示すグラフである。図5は、来待容器1或いは多孔質造粒焼成品3を焼成する温度と時間の関係を示すグラフである。
【0028】
本発明に用いた来待容器1は、図1に示すように、礫混じり砂質粘土(礫混じり粘土)や礫混じりシルト質粘土或いは礫質土の粒度分布を有する来待石粉体100重量部に対し、おが屑、籾殻或いはおが屑と籾殻の混合物3〜10重量部(容量でおが屑や籾殻1に対して、来待石粉体2の割合)と水10〜40重量部より好ましくは20〜30重量部の割合でを加えて混練し、容器状に成型した後500℃〜950℃で素焼きし、次いで1000℃〜1180℃で本焼きして製造する。焼成後の寸法は、外径が縦17cm、直径14.5cm、孔の深さ12cm、内径が10.52cm、底のえぐり深さ11が2cmであった(成型時はこれよりも1割方寸法が大きい)。尚、底12の厚みは5cm、側壁13の厚みは2cmである。混練方法は特に限定はないが、小型のコンクリートミキサーを使用すれば、簡単に少量の混練物が得られる。大量の場合にはより大型の混合機を用いればよい。来待石粉体の粒径の分布は、ほぼ図4の粒径加積曲線に類似したものとなる。
【0029】
本発明の多孔質造粒焼成品3は、図3に示すように、来待石粉体単独、或いは来待容器1と同様におが屑や籾殻を混合したものに水10〜40重量部を加えて混練し小型のコンクリートミキサーなどの回転造粒機で攪拌造粒したのち、乾燥した後500℃〜950℃で素焼きし、次いで1000℃〜1180℃で本焼きする。符号31は来待石粉体、32はおが屑などの炭化物が更に加熱されて炭酸ガス化した空洞である。多孔質造粒焼成品3の径は、1〜10mm:より好ましくは2〜5mmである。
【0030】
尚、本発明の来待容器1も多孔質造粒焼成品3も、焼成温度は、図5に示すような時間的経過を示す。即ち、約8時間かけで電気釜の温度を徐々に昇温して900℃(500℃〜950℃)程度にする。これにより、おが屑や籾殻が炭化する。次に、約4時間かけて徐々に降温し、更に6時間程度かけて1130℃(1130℃〜1180℃)にまで昇温する。この昇温により、炭化物が完全に炭酸ガスとなり、その炭の部分が空洞化する。もともと、来待石粉体は、表1に示すように有機物(Ig.loss)を含んでおり、焼成によりこれが空洞化して水を吸収する(約1%)が、おが屑や籾殻を混合したものは吸水率が30〜50%にもなるのは、この理由による。
【0031】
一方、素焼き植木鉢2は、図2に示すような5号鉢を用いた。その寸法は外径16cm、高さ13cm、底の直径10cm、側壁21の厚み1cm、底の孔22の直径3cm、底の抉り23深さ0.5cmである。符号24は底の孔22に被せるネットである。
【0032】
そして、来待容器1及び素焼き植木鉢2に、多孔質造粒焼成品3をほぼ一杯充填して、使用する。
【実施例2】
【0033】
次に、実施例2について説明する。図6(a)は、この来待容器1に多孔質造粒焼成品3を詰めた状態の縦断面図であり、来待容器1の14の位置まで水に漬かっている状態を示す。図6(b)はこの来待容器1と多孔質造粒焼成品3を水に漬けた場合の水の吸い上げ高さと時間(分)の関係を示すグラフである。図7は、多孔質造粒焼成品3の累積細孔容積のグラフで、縦軸は吸収した水銀の容量、横軸は細孔の直径を示す。図8の三角図法による土性表示を示すグラフである。図9は土壌粒子33とその間に界面張力によって保持された水34を示す模式図であり、図10は毛細管現象を示す図である。図11は、作物の吸水利用から見た土壌水分の分類を示す図式、図12は、土壌の粒径と有効水分量の関係を示す図式図13は、焼成品に水を十分吸収させて毛細管現象終了時点からの自然乾燥重量の変化を示すグラフである。
【0034】
図6(a)に示すように、来待容器1に多孔質造粒焼成品3をほぼ一杯に詰めた状態で来待容器1の下側約の4cmを水に漬けておく14と、図6(b)に示すように、時間の経過とともに多孔質造粒焼成品3の水の吸い上げ高さが次第に高くなり、ついには(27分後)一番上の多孔質造粒焼成品3まで水を吸い上げた。吸水が始まって数分後頃に傾きが緩くなっているのは、来待容器1の底の部分に水が達し、吸い上げる速度が遅くなったためと思われる。最上部までは27分掛かったが、この時、多孔質造粒焼成品3の中心部まではまだ水は来ていない。多孔質造粒焼成品3の中心部まで湿るまでには、35分かかった。
【0035】
吸水試験
来待容器の大きさは前述の通りであり、また、中まで多孔質造粒焼成品3が詰まっているとすると
来待容器1と他4の合計の体積は、
170×(72.5)2 ×π−20×(52.5)2 ×π=263429.09 mm3
吸水量 908g
体積水分率 908000 /263429.09 × 100=34.5%
【0036】
何故、このように多孔質造粒焼成品3が水を吸い上げるかは、以下に延べるようなものと推察される。即ち、図7は、多孔質造粒焼成品3の累積細孔容積のグラフで、縦軸は吸収した水銀の容量、横軸は細孔の直径を示すものであるが、このグラフから、
空隙率 = 100−(0.407/(1/1.4843)× 100=39.6≒40%
( 1.4843 :水銀の比重)
粘土分径 = 100- 100 ×0.33/ 0.40 =18.9
シルト分径=81.08-100 ×0.202/0.40 =31.5
砂分径 =100 ×0.202/0.40 =49.6
砂分径50%、シルト分径30%、粘土分径20%の数値を、図8の三角図法による土性表示に対比すると、植壌土にプロットPされる。
【0037】
即ち、来待石の土性は植壌土と考えられるので、上記体積水分率34.5%で植壌土の交点Qを求めると、これは有効水分の所にくるので、植物の生育に良いと思われる。このことから、多孔質造粒焼成品3を充填した来待容器1全体を培地として扱う。
【0038】
次に、植物にとっての有効水分と本発明多孔質造粒焼成品の水分保持力を対比して、焼成品が培地に利用できるかを評価した。まず、焼成品の空隙に水分が保持されて水が引き上げられる毛細管水面高さ(H)を求めて、焼成品の平均的空隙率を推定して、pF値を求める。
pF=logH
実験値
H=30cm
pF=log30=1.5
一方、空隙の見掛け直径(d)をジュレンの式から求めると、0.1mmの数値で、細砂に分類される。
H=0.3/d(H=30)
d=0.01cm=0.1mm
細孔分布測定結果からの分類、植壌土とはかけ離れた土性を示すものである。尚、図9は土壌粒子33とその間に界面張力によって保持された水34を示す模式図であり、図10は毛細管現象を示す図である。
【0039】
図11は、作物の吸水利用から見た土壌水分の分類を示す図式、図12は、土壌の粒径と有効水分量の関係を示す図式(Brady and Weil.2002)である。図11中でpF=1.5は、重力水の箇所に当たり、図12でR1(砂壌土)及びR2(植壌土)は体積水分率が20.9%である点を示す。
【0040】
この20.9%は、以下のようにして求めた。焼成品内の水は重力水で流れ去る排水路に相当するもので、粗孔隙と評価しなければならない。しかし、細孔分布から評価すると植壌土(砂質シルト)に分類される。
【0041】
図13は、焼成品に水を十分吸収させて毛細管現象終了時点からの自然乾燥重量の変化を示すグラフである。ここで、毛細管現象試験実施後取り上げて直後の重量が4,250gで排水能力(270g)が著しく大きい。この排水量は重力水扱いとし、体積水分から除外する。
乾燥密度 =1.16
供試体体積 =3,610/1.16=3,112.1cm3
体積水分率 =((4260−3610) 3112.1) ×100=20.9%
空隙率60%に対して、体積水分率21%、残りの39%が重力水、空気率を示すことになる。供試体が重力水に浸されている(10%)とすれば、体積水分率が18.9%、空気率35.1%の数値となる。
【0042】
数値だけからの評価では空気率が35.1%と高く、植物根の活発な活動に対する必要空気率を十分に満足するものである。土性分類などから、来待石粉体焼成品が植物の生育土壌環境としての評価をすれば、保水性、透水性に優れ、土壌の起草も十分で、空隙の大きさから焼成物内で外気に呼応した空気の流れを発生すると思われる。
【実施例3】
【0043】
次に、実施例3について説明する。図14は、来待容器1に多孔質造粒焼成品3と固形肥料4を入れ、水槽5に漬けた状態を示す縦断面図であり、図15は、大型の水槽9に図14の来待容器1を多数設置した状態の正面図である。
【0044】
即ち、図14は、実施例1に示す来待容器1に多孔質造粒焼成品3と固形肥料4を入れ、水槽5に漬けた状態を示す。符号6は水である。水6は、来待容器1に吸い上げられて多孔質造粒焼成品3に移り、下側の多孔質造粒焼成品3から次第に上の方の多孔質造粒焼成品3に吸い上げられる。多孔質造粒焼成品3に含まれる水は、植物植物7の根71から吸収される。来待容器1の横方向からは、空気8が流通する。来待容器1には多数の空隙があり、また多孔質造粒焼成品3同志の空隙及び多孔質造粒焼成品3自体の空隙もあり、空気が流通して植物の根71に空気を供給する。
【0045】
表2は、作物の種類と根の活動を活発にする必要空気率の関係を示すものである。
【表2】
本発明の来待容器1は実施例2で示す通り空気率が35.1%であるので、植物根の活発な活動にする必要空気率を十分に満足するものである。
【0046】
土性分類などから来待石粉体焼成物を植物の生育土壌環境として評価をすれば、保水性、透水性に優れ、土壌の気相も十分で、空隙の大きさから焼成物内で外気に呼応した空気の流れを発生すると思われる。
【0047】
図15は、大型の水槽9に図14の来待容器1を多数設置した状態の正面図であり、水槽9にはタンク91から常に一定量の水6が供給されるようになっている。尚、固形肥料の代わりに、液体肥料を用い、この液体肥料を水に溶解して、養液・毛管水耕栽培としてもよい。また、大型水槽9の規模及び来待容器1の数は、栽培規模、栽培場所の形状によって、決定すればよい。
【実施例4】
【0048】
次に、実施例4、本発明の来待容器1或いは素焼きの植木鉢と多孔質造粒焼成品3を用いたミニトマトの栽培について、図16〜図18に基づいて説明する。図16は、来待容器と素焼き植木鉢に多孔質造粒焼成品と通常の培土を入れ、固形肥料と液肥を用いたものの成長の度合いを示す比較のグラフである。尚、これは、9月の14日に3cm程度の苗を植え図15の装置で栽培した。水の深さは4cmであった。固形肥料は、窒素:燐酸:カリ=10:4:6のものを、多孔質造粒焼成品3に対して5%程度、液肥は、同じく窒素:燐酸:カリ=10:4:6のものを、水に2%混合したものを用いた。
【0049】
図16から明らかなように、来待容器1と液肥の組み合わせが最も成長が大きかった。総じて、液肥の方が成績が良かった。これは、固形肥料が水に十分に溶解しなかったことに起因すると思われる。通常の培土は多孔質造粒焼成品3よりも成長が少なかった。尚、種植えの場合、固形肥料の場合、水の吸収が悪いのか多孔質造粒焼成品3では枯れてしまった。液肥の場合も、水の吸い上げが悪く、植えてから水をかけた。
【0050】
図17は、1株当たりの実の個数の比較を示すグラフである(栽培実験は、各4株行った)。これから判るように、液肥で多孔質造粒焼成品を用いたものが成績がよく、中でも来待容器のものが最も多く収穫できた。次に、来待容器と固形肥の出来がよく、素焼き植木鉢の固形非は、素焼き植木鉢と栽土の組み合わせと同程度であった。
【0051】
尚、実施例4の栽培実験を通して、以下のことが判明した。
(1)植えた時期が遅すぎたが、それでも可なりの数の実が収穫できた。
(2)素焼き植木鉢:葉が黄色く変色するのが見られた。これは、根が水に使って酸欠状態になっ14めと思われる。
(3)実が尻腐れになるのはカルシウム不足、来待容器1の場合、来待石粉体にカルシウムが含まれており(表1)、かかっていない。
(4)素焼き植木鉢と栽土の場合、実が大きく糖度もたかかった。これは、根が水に漬かっていたため酸欠状態となり、花の多くがが蕾の状態でおちたため、残った実に栄養分が行ったためと思われる。
(5)来待容器と液肥の組み合わせが最も実の数が多いが、それ故に糖度は低かった。
【0052】
図18は、ミニトマトの根71の状態を示す模式図であり、(a)が来待容器1、(b)が素焼き植木鉢2である。これから判るように、来待容器1では細根72が来待容器1の壁(その細孔)に食い込んでおり、来待容器の壁からも水分を吸収しているが、素焼き植木鉢では細根72の数も少なく、また、素焼き植木鉢2の壁に食い込んでいないことが判る。
【産業上の利用可能性】
【0053】
産業廃棄物である来待石粉体を用いて、来待容器及び多孔質造粒焼成品を製造し、これを用いて植物の礫耕栽培をすることができる。この来待石粉体製品は、保水性、吸水性に優れ、また空気の流通もよく、植物の礫耕栽培にとって理想的なものである。また、安価簡単に得られるものである。
【符号の説明】
【0054】
1 来待容器
11 底のえぐり深さ
12 底
13 側壁
14 水に漬かっている位置
2 素焼き植木鉢
21 側壁
22 底の孔
23 底の抉り
24 ネット
3 多孔質造粒焼成品
31 来待石粉体
32 空洞
33 土壌粒子
34 水
4 固形肥料
5 水槽
6 水
7 植物
71 植物の根
8 空気
9 水槽
91 タンク
P 植壌土の位置
Q 植壌土と体積水分率34.5%の交点
R1 R2 砂壌土と植壌土の体積水分率が20.9%との交点
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な礫耕栽培方法及びこれに使用する礫耕栽培用の来待石粉体製容器の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
礫耕栽培とは、土の代わりに礫を使い、これに培養液を散布して作物を栽培する方法であり、トマトやかいわれ大根、苺などの栽培にかなり広く採用されている。しかし、従来のものは大がかりな装置が必要な施設園芸であり、家庭で手軽に使用できるものは見当たらない。尚、礫耕栽培と言うキーワードを有する出願は、IPDLで調査した限り特許で2件実用新案で2件のみであり、しかも、礫が図面に描かれているのは、1件のみである(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】公開実用新案昭和62−181139号公報
【0004】
しかし、この技術は、植木鉢の内部にサイホンを仕込んだものであり、本願発明とは全く無関係のものである。そこで、本発明者は、来待石粉体の造粒焼成品を用いて、礫耕栽培をすることを思いつき、本発明を完成させたものである。
【0005】
来待石粉体の造粒焼成品に関しては、汚泥類と混合して焼成したものが本出願人により出願されている(特開2008−62219)。また、焼成品ではないが、低温乾燥した後セメントでコーティングする技術が、同じく本出願人から出願されている(特開2010−99655)。
【0006】
しかし、前者は汚泥の処理に主眼がおかれ、その焼成品は農業の土壌代替品にも用いられるとしているが、主眼は濾過材や路盤材であり、農業の土壌代替品としての用途説明はこの出願では全くなされていない。しかも、汚泥を混入して高温(1000℃前後)で焼成するとダイオキシンが発生するので、好ましくない。また、後者は、低温乾燥した後、補強としてセメントでコーティングするもので、製品は再度湖に投入されるものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、これらのものとは異なり、来待石粉体の多孔質造粒焼成品を用い、その吸水性能の良さや植物の根の付着性の良さに着目してこれを礫耕栽培の礫として使用とするものである。
【0008】
従来、出願は少ないが礫耕栽培自体はかなり広く行われている。そして、それには、普通通常の礫(安山岩等の花崗岩、その他)が用いられており、礫自体は大きくなった植物の根を支えるだけであり、吸水性や根の付着性は殆どないものであり、水は間欠的に与えられるのみである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
これに対し、来待石粉体の多孔質造粒焼成品は吸水性が良く(約10%、籾殻やおが屑混入品で約30〜50%)、しかも栽培植物の根との相性がよく根が良く付着する利点がある。しかも、その容器として素焼きの植木鉢や、同じく来待石粉体におが屑や籾殻を混合して水と混練し成型して焼成した植木鉢状の容器を用いるので、これらの容器を浅い水槽に置いておけば、自然に吸水して来待石粉体の多孔質造粒焼成品に水を供給する。そして、この水を植物が徐々に吸収するので、自動的な礫耕栽培が簡単に行えることになる。
【0010】
先ず、本発明の主眼である来待石粉体の多孔質造粒焼成品について説明する。これは、来待石粉体単体或いは来待石粉体とおが屑や籾殻、或いはその両者を混合し、それに水を混ぜたものを回転造粒機(コンクリートミキサー)で混練して攪拌造粒し、次いで乾燥して焼成する。
【0011】
来待石粉体は、礫混じり砂質粘土や礫混じりシルト質粘土或いは礫質土の粒度分布を有するもの単独、或いはこの来待石粉体の100重量部に対し、おが屑、籾殻或いはおが屑と籾殻の混合物3〜10重量部(容量でおが屑や籾殻が1に対して来待石粉体2程度の割合)と水10〜40重量部を加えて混練し攪拌造粒したのち、1000℃〜1180℃で焼成して、多孔質粒性の造粒焼成品を得る。或いはこの攪拌造粒品を500℃〜950℃で素焼きし、次いで1000℃〜1180℃で本焼きする。おが屑、籾殻或いはおが屑と籾殻の混合物3〜10重量部混合したのは、比重が軽く(約0.5)、また多孔のため吸水率が30〜50%にもなる。
【0012】
焼成は少量の場合は電気窯で行うとよい。焼成時間は、最高温度に達するまでに17〜18時間をかけ、最高温度を数十分維持した後或いは直ちに電源を切って1〜2日間次第に降温する。電気窯に限らず、灯油やガス、薪などの燃料を使用する窯も当然に使用できる。単独窯の他に、登り窯や連続窯で大量な焼成可能である。
【0013】
次に、容器は素焼きの植木鉢を用いても良いが、植木鉢は水の吸い上げが少なく、殆どが底の孔から内部の造粒焼成品に水が浸透することによる吸い上げであり、また、空気も素焼きの表面からの透過が少ない。
【0014】
これに対し、来待石粉体を用いて焼成した容器(来待容器)は、それ自体吸水性に優れ、多孔質造粒焼成品ともども水を吸い上げる。また、空隙率も大きいので側面からの空気の流通も良く、根に空気が十分に供給される利点がある。
【0015】
来待容器は、多孔質造粒焼成品と同様、礫混じり砂質粘土や礫混じりシルト質粘土或いは礫質土の粒度分布を有する来待石粉体100重量部に対し、おが屑、籾殻或いはおが屑と籾殻の混合物3〜10重量部(容量でおが屑や籾殻1に対して、来待石粉体2の割合)と水10〜40重量部より好ましくは20〜30重量部の割合でを加えて混練し、成型した後500℃〜950℃で素焼きし、次いで1000℃〜1180℃で本焼きして製造する。混練方法は特に限定はないが、小型のコンクリートミキサーを使用すれば、簡単に少量の混練物が得られる。大量の場合にはより大型の混合機を用いればよい。
【0016】
本発明の造粒焼成品及び来待容器に用いる来待石粉体は、礫混じり砂質粘土(礫混じりシルト質粘土、礫質土)状のものである。ここに、粘土とは、粒子の大きさが5μm以下(土質学会の分類、以下同じ)のものを言う。またシルトは5〜75μm、細砂は75〜250μm、中砂は250〜850μm、粗砂は850μm〜2mm、細礫は2〜4.75mmのものを言う。そして、本発明の粉体は2.60mm以下の礫を5%以下含んでいるものを言う。また、礫混じりシルト質粘土は、礫混じり砂質粘土に比べてシルト質の割合が多く、より粘土に近いものである。
【0017】
来待石の粉体は、不良石材や端材、研削屑などをクラッシャー等の破砕機で粉砕して、また細かな研磨屑はそのままの状態で篩分け(2.65mm以下)して得られる。粒径の分布は、ほぼ図4の粒径加積曲線に類似する。
【0018】
来待容器は、手捏ねや轆轤で成型するか、鉢状或いは円筒状の型に入れて振動或いは突き固めて成型するか、或いは円錐台柱その他の柱状型に入れて振動或いは突き固めて半乾燥状態にあるものを内側を抉って鉢状に成型した後に乾燥焼成する。
【0019】
ところで、本発明で言う来待石とは、来待錆石のことである。来待錆石は、島根県に存在する宍道湖の南岸に広く分布する新第三紀中新世出雲層群下位層来待層を構成する凝灰質砂岩のことを言い、良質のものは、塊状凝灰質粗粒砂岩のうち特に淘汰の良い岩相の所に集中し、八束郡玉湯町から宍道町にかけての東西約10km、幅1〜2kmの範囲に存在する。この来待石は、石質が柔らかく採掘、加工が容易で、出雲石灯ろうは伝統工芸品に指定されている。
【0020】
この来待錆石は、多種多様な岩石片や結晶片、それらを埋める基質から構成されている。岩石片のサイズは径0.5mm〜1.0mmが多く、最大でも1.5mm程度である。岩石片や結晶片の占める割合が80%と多い。岩石片としては、安山岩、石英安山岩、流紋岩、花崩岩、多種類の凝灰岩などが確認されている。結晶片としては、斜長石、輝石、角閃石、黒雲母、不透明鉱物、火山ガラス、変質鉱物が確認されている。また、基質としては、変質によってできた沸石、緑泥石、炭酸塩鉱物が確認されている。
【0021】
これらの鉱物の中には粘土鉱物と言われるものが多く含まれており、このことが、来待錆石の粉砕物が粘土、陶土として使用できる大きな理由であると思われる。尚、来待錆石以外に、来待白石といわれるものがある。これは、年代的に古くて流紋岩系でモンモリロナイトに変質した部分が多く、本発明には使用できないものである。
【0022】
表1に分析値を示す(島根県発行「島根の地質」)ように、来待錆石には鉄が多く(Fe2 O3 として6.13%)含まれている。そのため、本発明の陶土は焼成すると赤、茶〜黒系統色に呈色する。ただ、本発明の場合土木工事や漁礁などに使用するので、焼成物の色は問題にならない。表中、数値は重量パーセントを示す。また、表1からも明らかなように、来待錆石には7%程度の焼熱減量(Ig.loss)が含まれている。これは、古代の植物残滓であり、これが焼成時に消滅して微細孔を生じることになる。
【表1】
【発明の効果】
【0023】
以上詳述したように、本発明は素焼きの植木鉢や来待石粉体を用いて焼成した容器に、来待石粉体を造粒して焼成した多孔質造粒焼成品を収納したものに栽培植物を植え或いは種まきし、植木鉢或いは容器ごと水を浅く張った水槽に漬け、肥料は固形肥料を多孔質粒体に混入するか或いは水中に液肥をいれて植物を栽培するものである。
【0024】
従って、
(1)水は、多孔質造粒焼成品に吸収され、次第に底のほうから上部まで水が上昇していく。植物の根は、この多孔質造粒焼成品から水の供給を受ける。従って、従来の礫耕栽培で水が間欠的に与えられるのとは異なり、常に少量ずつ根に水が与えられるため自動的な礫耕栽培が簡単に行え、理想的な礫耕栽培ということができる。
(2)素焼きの植木鉢では水は底の孔から多孔質粒体に吸い上げられる。これに対し、来待容器の場合、底には孔が無い場合は来待容器自体の吸水性により多孔質粒体に水が与えられる。
(3)しかも多孔質造粒焼成品及び来待容器は栽培植物の根との相性がよく根が良く付着する。
(4)来待容器の場合、側面からの通気性が良いため、根に空気が供給される。(5)素焼きの植木鉢の場合も来待容器の場合、底の方を水に漬けておいて多孔質造粒焼成品に水を吸わす方法をとる。そして、肥料は液肥を水に混入しておくか、固形肥料を多孔質造粒焼成品に混入しておくので、肥料管理は簡単である。
(6)本発明の多孔質造粒焼成品も来待容器も、篩分けした来待石粉体を水と混練し成形焼成するだけでよいから、設備さえあれば簡単に且つ大量に生産できる。
(7)混練物中に、モミ殻やのこ屑その他の有機物小塊を混入焼成することにより、多孔質の来待容器や多孔質造粒焼成品が得られ、水の吸収や伝播に優れるとともに比重を非常に小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明で使用する来待容器(来待石粉体を用いて焼成した容器)の一部を断面した斜視図である。(実施例1)
【図2】本発明で使用する市販の素焼きの植木鉢の一部を断面した斜視図である。(実施例1)
【図3】図3は本発明で使用する来待石粉体の多孔質造粒焼成品の正面図である。(実施例1)
【図4】来待石粉体の粒径加積曲線を示すグラフである。(実施例1)
【図5】来待容器1或いは多孔質造粒焼成品3を焼成する温度と時間の関係を示すグラフである。(実施例1)
【図6】(a)は、この来待容器に多孔質造粒焼成品を詰めた状態の縦断面図、(b)はこの来待容器と造粒焼成品を水に漬けた場合の水の吸い上げ高さと時間(分)の関係を示すグラフである。(実施例2)
【図7】多孔質造粒焼成品3の累積細孔容積のグラフで、縦軸は吸収した水銀の容量、横軸は細孔の直径を示す。(実施例2)
【図8】三角図法による土性表示を示すグラフである。(実施例2)
【図9】土壌粒子33とその間に界面張力によって保持された水34を示す模式図である。(実施例2)
【図10】毛細管現象を示す正面図である。(実施例2)
【図11】作物の吸水利用から見た土壌水分の分類を示す図式である。(実施例2)
【図12】土壌の粒径と有効水分量の関係を示す図式である。(実施例2)
【図13】焼成品に水を十分吸収させて毛細管現象終了時点からの自然乾燥重量の変化を示すグラフである。(実施例2)
【図14】来待容器1に多孔質造粒焼成品3と固形肥料4を入れ、水槽5に漬けた状態を示す縦断面図である。(実施例3)
【図15】大型の水槽9に来待容器1を多数設置した状態の正面図である。
【図16】来待容器と素焼き植木鉢に多孔質造粒焼成品と通常の培土を入れ、固形肥料と液肥を用いたものの成長の度合いを示す比較のグラフである。(実施例4)
【図17】1株当たりの実の個数の比較を示すグラフである。(実施例4)
【図18】ミニトマトの根71の状態を示す模式図であり、(a)が来待容器(b)が素焼き植木鉢である。(実施例4)
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
素焼きの植木鉢や来待石粉体を用いて焼成した容器に、来待石粉体を造粒して焼成した多孔質造粒焼成品を入れたものに栽培植物を植え或いは種まきし、植木鉢或いは容器ごと水を浅く張った水槽に漬けて礫耕栽培を行う。肥料は、固形肥料或いは液体肥料を用いる。
【実施例1】
【0027】
以下、本発明を、図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明で使用する来待容器1(来待石粉体を用いて焼成した容器)の一部を断面した斜視図であり、図2は、同じく本発明で使用する市販の素焼きの植木鉢2の一部を断面した斜視図である。また、図3は本発明で使用する来待石粉体の多孔質造粒焼成品3の正面図である。図4は、来待石粉体の粒径加積曲線を示すグラフである。図5は、来待容器1或いは多孔質造粒焼成品3を焼成する温度と時間の関係を示すグラフである。
【0028】
本発明に用いた来待容器1は、図1に示すように、礫混じり砂質粘土(礫混じり粘土)や礫混じりシルト質粘土或いは礫質土の粒度分布を有する来待石粉体100重量部に対し、おが屑、籾殻或いはおが屑と籾殻の混合物3〜10重量部(容量でおが屑や籾殻1に対して、来待石粉体2の割合)と水10〜40重量部より好ましくは20〜30重量部の割合でを加えて混練し、容器状に成型した後500℃〜950℃で素焼きし、次いで1000℃〜1180℃で本焼きして製造する。焼成後の寸法は、外径が縦17cm、直径14.5cm、孔の深さ12cm、内径が10.52cm、底のえぐり深さ11が2cmであった(成型時はこれよりも1割方寸法が大きい)。尚、底12の厚みは5cm、側壁13の厚みは2cmである。混練方法は特に限定はないが、小型のコンクリートミキサーを使用すれば、簡単に少量の混練物が得られる。大量の場合にはより大型の混合機を用いればよい。来待石粉体の粒径の分布は、ほぼ図4の粒径加積曲線に類似したものとなる。
【0029】
本発明の多孔質造粒焼成品3は、図3に示すように、来待石粉体単独、或いは来待容器1と同様におが屑や籾殻を混合したものに水10〜40重量部を加えて混練し小型のコンクリートミキサーなどの回転造粒機で攪拌造粒したのち、乾燥した後500℃〜950℃で素焼きし、次いで1000℃〜1180℃で本焼きする。符号31は来待石粉体、32はおが屑などの炭化物が更に加熱されて炭酸ガス化した空洞である。多孔質造粒焼成品3の径は、1〜10mm:より好ましくは2〜5mmである。
【0030】
尚、本発明の来待容器1も多孔質造粒焼成品3も、焼成温度は、図5に示すような時間的経過を示す。即ち、約8時間かけで電気釜の温度を徐々に昇温して900℃(500℃〜950℃)程度にする。これにより、おが屑や籾殻が炭化する。次に、約4時間かけて徐々に降温し、更に6時間程度かけて1130℃(1130℃〜1180℃)にまで昇温する。この昇温により、炭化物が完全に炭酸ガスとなり、その炭の部分が空洞化する。もともと、来待石粉体は、表1に示すように有機物(Ig.loss)を含んでおり、焼成によりこれが空洞化して水を吸収する(約1%)が、おが屑や籾殻を混合したものは吸水率が30〜50%にもなるのは、この理由による。
【0031】
一方、素焼き植木鉢2は、図2に示すような5号鉢を用いた。その寸法は外径16cm、高さ13cm、底の直径10cm、側壁21の厚み1cm、底の孔22の直径3cm、底の抉り23深さ0.5cmである。符号24は底の孔22に被せるネットである。
【0032】
そして、来待容器1及び素焼き植木鉢2に、多孔質造粒焼成品3をほぼ一杯充填して、使用する。
【実施例2】
【0033】
次に、実施例2について説明する。図6(a)は、この来待容器1に多孔質造粒焼成品3を詰めた状態の縦断面図であり、来待容器1の14の位置まで水に漬かっている状態を示す。図6(b)はこの来待容器1と多孔質造粒焼成品3を水に漬けた場合の水の吸い上げ高さと時間(分)の関係を示すグラフである。図7は、多孔質造粒焼成品3の累積細孔容積のグラフで、縦軸は吸収した水銀の容量、横軸は細孔の直径を示す。図8の三角図法による土性表示を示すグラフである。図9は土壌粒子33とその間に界面張力によって保持された水34を示す模式図であり、図10は毛細管現象を示す図である。図11は、作物の吸水利用から見た土壌水分の分類を示す図式、図12は、土壌の粒径と有効水分量の関係を示す図式図13は、焼成品に水を十分吸収させて毛細管現象終了時点からの自然乾燥重量の変化を示すグラフである。
【0034】
図6(a)に示すように、来待容器1に多孔質造粒焼成品3をほぼ一杯に詰めた状態で来待容器1の下側約の4cmを水に漬けておく14と、図6(b)に示すように、時間の経過とともに多孔質造粒焼成品3の水の吸い上げ高さが次第に高くなり、ついには(27分後)一番上の多孔質造粒焼成品3まで水を吸い上げた。吸水が始まって数分後頃に傾きが緩くなっているのは、来待容器1の底の部分に水が達し、吸い上げる速度が遅くなったためと思われる。最上部までは27分掛かったが、この時、多孔質造粒焼成品3の中心部まではまだ水は来ていない。多孔質造粒焼成品3の中心部まで湿るまでには、35分かかった。
【0035】
吸水試験
来待容器の大きさは前述の通りであり、また、中まで多孔質造粒焼成品3が詰まっているとすると
来待容器1と他4の合計の体積は、
170×(72.5)2 ×π−20×(52.5)2 ×π=263429.09 mm3
吸水量 908g
体積水分率 908000 /263429.09 × 100=34.5%
【0036】
何故、このように多孔質造粒焼成品3が水を吸い上げるかは、以下に延べるようなものと推察される。即ち、図7は、多孔質造粒焼成品3の累積細孔容積のグラフで、縦軸は吸収した水銀の容量、横軸は細孔の直径を示すものであるが、このグラフから、
空隙率 = 100−(0.407/(1/1.4843)× 100=39.6≒40%
( 1.4843 :水銀の比重)
粘土分径 = 100- 100 ×0.33/ 0.40 =18.9
シルト分径=81.08-100 ×0.202/0.40 =31.5
砂分径 =100 ×0.202/0.40 =49.6
砂分径50%、シルト分径30%、粘土分径20%の数値を、図8の三角図法による土性表示に対比すると、植壌土にプロットPされる。
【0037】
即ち、来待石の土性は植壌土と考えられるので、上記体積水分率34.5%で植壌土の交点Qを求めると、これは有効水分の所にくるので、植物の生育に良いと思われる。このことから、多孔質造粒焼成品3を充填した来待容器1全体を培地として扱う。
【0038】
次に、植物にとっての有効水分と本発明多孔質造粒焼成品の水分保持力を対比して、焼成品が培地に利用できるかを評価した。まず、焼成品の空隙に水分が保持されて水が引き上げられる毛細管水面高さ(H)を求めて、焼成品の平均的空隙率を推定して、pF値を求める。
pF=logH
実験値
H=30cm
pF=log30=1.5
一方、空隙の見掛け直径(d)をジュレンの式から求めると、0.1mmの数値で、細砂に分類される。
H=0.3/d(H=30)
d=0.01cm=0.1mm
細孔分布測定結果からの分類、植壌土とはかけ離れた土性を示すものである。尚、図9は土壌粒子33とその間に界面張力によって保持された水34を示す模式図であり、図10は毛細管現象を示す図である。
【0039】
図11は、作物の吸水利用から見た土壌水分の分類を示す図式、図12は、土壌の粒径と有効水分量の関係を示す図式(Brady and Weil.2002)である。図11中でpF=1.5は、重力水の箇所に当たり、図12でR1(砂壌土)及びR2(植壌土)は体積水分率が20.9%である点を示す。
【0040】
この20.9%は、以下のようにして求めた。焼成品内の水は重力水で流れ去る排水路に相当するもので、粗孔隙と評価しなければならない。しかし、細孔分布から評価すると植壌土(砂質シルト)に分類される。
【0041】
図13は、焼成品に水を十分吸収させて毛細管現象終了時点からの自然乾燥重量の変化を示すグラフである。ここで、毛細管現象試験実施後取り上げて直後の重量が4,250gで排水能力(270g)が著しく大きい。この排水量は重力水扱いとし、体積水分から除外する。
乾燥密度 =1.16
供試体体積 =3,610/1.16=3,112.1cm3
体積水分率 =((4260−3610) 3112.1) ×100=20.9%
空隙率60%に対して、体積水分率21%、残りの39%が重力水、空気率を示すことになる。供試体が重力水に浸されている(10%)とすれば、体積水分率が18.9%、空気率35.1%の数値となる。
【0042】
数値だけからの評価では空気率が35.1%と高く、植物根の活発な活動に対する必要空気率を十分に満足するものである。土性分類などから、来待石粉体焼成品が植物の生育土壌環境としての評価をすれば、保水性、透水性に優れ、土壌の起草も十分で、空隙の大きさから焼成物内で外気に呼応した空気の流れを発生すると思われる。
【実施例3】
【0043】
次に、実施例3について説明する。図14は、来待容器1に多孔質造粒焼成品3と固形肥料4を入れ、水槽5に漬けた状態を示す縦断面図であり、図15は、大型の水槽9に図14の来待容器1を多数設置した状態の正面図である。
【0044】
即ち、図14は、実施例1に示す来待容器1に多孔質造粒焼成品3と固形肥料4を入れ、水槽5に漬けた状態を示す。符号6は水である。水6は、来待容器1に吸い上げられて多孔質造粒焼成品3に移り、下側の多孔質造粒焼成品3から次第に上の方の多孔質造粒焼成品3に吸い上げられる。多孔質造粒焼成品3に含まれる水は、植物植物7の根71から吸収される。来待容器1の横方向からは、空気8が流通する。来待容器1には多数の空隙があり、また多孔質造粒焼成品3同志の空隙及び多孔質造粒焼成品3自体の空隙もあり、空気が流通して植物の根71に空気を供給する。
【0045】
表2は、作物の種類と根の活動を活発にする必要空気率の関係を示すものである。
【表2】
本発明の来待容器1は実施例2で示す通り空気率が35.1%であるので、植物根の活発な活動にする必要空気率を十分に満足するものである。
【0046】
土性分類などから来待石粉体焼成物を植物の生育土壌環境として評価をすれば、保水性、透水性に優れ、土壌の気相も十分で、空隙の大きさから焼成物内で外気に呼応した空気の流れを発生すると思われる。
【0047】
図15は、大型の水槽9に図14の来待容器1を多数設置した状態の正面図であり、水槽9にはタンク91から常に一定量の水6が供給されるようになっている。尚、固形肥料の代わりに、液体肥料を用い、この液体肥料を水に溶解して、養液・毛管水耕栽培としてもよい。また、大型水槽9の規模及び来待容器1の数は、栽培規模、栽培場所の形状によって、決定すればよい。
【実施例4】
【0048】
次に、実施例4、本発明の来待容器1或いは素焼きの植木鉢と多孔質造粒焼成品3を用いたミニトマトの栽培について、図16〜図18に基づいて説明する。図16は、来待容器と素焼き植木鉢に多孔質造粒焼成品と通常の培土を入れ、固形肥料と液肥を用いたものの成長の度合いを示す比較のグラフである。尚、これは、9月の14日に3cm程度の苗を植え図15の装置で栽培した。水の深さは4cmであった。固形肥料は、窒素:燐酸:カリ=10:4:6のものを、多孔質造粒焼成品3に対して5%程度、液肥は、同じく窒素:燐酸:カリ=10:4:6のものを、水に2%混合したものを用いた。
【0049】
図16から明らかなように、来待容器1と液肥の組み合わせが最も成長が大きかった。総じて、液肥の方が成績が良かった。これは、固形肥料が水に十分に溶解しなかったことに起因すると思われる。通常の培土は多孔質造粒焼成品3よりも成長が少なかった。尚、種植えの場合、固形肥料の場合、水の吸収が悪いのか多孔質造粒焼成品3では枯れてしまった。液肥の場合も、水の吸い上げが悪く、植えてから水をかけた。
【0050】
図17は、1株当たりの実の個数の比較を示すグラフである(栽培実験は、各4株行った)。これから判るように、液肥で多孔質造粒焼成品を用いたものが成績がよく、中でも来待容器のものが最も多く収穫できた。次に、来待容器と固形肥の出来がよく、素焼き植木鉢の固形非は、素焼き植木鉢と栽土の組み合わせと同程度であった。
【0051】
尚、実施例4の栽培実験を通して、以下のことが判明した。
(1)植えた時期が遅すぎたが、それでも可なりの数の実が収穫できた。
(2)素焼き植木鉢:葉が黄色く変色するのが見られた。これは、根が水に使って酸欠状態になっ14めと思われる。
(3)実が尻腐れになるのはカルシウム不足、来待容器1の場合、来待石粉体にカルシウムが含まれており(表1)、かかっていない。
(4)素焼き植木鉢と栽土の場合、実が大きく糖度もたかかった。これは、根が水に漬かっていたため酸欠状態となり、花の多くがが蕾の状態でおちたため、残った実に栄養分が行ったためと思われる。
(5)来待容器と液肥の組み合わせが最も実の数が多いが、それ故に糖度は低かった。
【0052】
図18は、ミニトマトの根71の状態を示す模式図であり、(a)が来待容器1、(b)が素焼き植木鉢2である。これから判るように、来待容器1では細根72が来待容器1の壁(その細孔)に食い込んでおり、来待容器の壁からも水分を吸収しているが、素焼き植木鉢では細根72の数も少なく、また、素焼き植木鉢2の壁に食い込んでいないことが判る。
【産業上の利用可能性】
【0053】
産業廃棄物である来待石粉体を用いて、来待容器及び多孔質造粒焼成品を製造し、これを用いて植物の礫耕栽培をすることができる。この来待石粉体製品は、保水性、吸水性に優れ、また空気の流通もよく、植物の礫耕栽培にとって理想的なものである。また、安価簡単に得られるものである。
【符号の説明】
【0054】
1 来待容器
11 底のえぐり深さ
12 底
13 側壁
14 水に漬かっている位置
2 素焼き植木鉢
21 側壁
22 底の孔
23 底の抉り
24 ネット
3 多孔質造粒焼成品
31 来待石粉体
32 空洞
33 土壌粒子
34 水
4 固形肥料
5 水槽
6 水
7 植物
71 植物の根
8 空気
9 水槽
91 タンク
P 植壌土の位置
Q 植壌土と体積水分率34.5%の交点
R1 R2 砂壌土と植壌土の体積水分率が20.9%との交点
【特許請求の範囲】
【請求項1】
素焼きの植木鉢や来待石粉体を用いて焼成した容器に、来待石粉体を造粒して焼成した多孔質造粒焼成品と固形肥料を入れたものに栽培植物を植え或いは種まきし、植木鉢或いは容器ごと水を浅く張った水槽に漬けることを特徴とする礫耕栽培方法。
【請求項2】
素焼きの植木鉢や来待石粉体を用いて焼成した容器に、来待石粉体を造粒して焼成した多孔質造粒焼成品を入れたものに栽培植物を植え或いは種まきし、植木鉢或いは容器ごと肥料を入れた水を浅く張った水槽に漬けることを特徴とする礫耕栽培方法。
【請求項3】
栽培植物或いは種は、トマト或いはミニトマトである、請求項1又は請求項2記載の礫耕栽培方法。
【請求項4】
礫混じり砂質粘土や礫混じりシルト質粘土或いは礫質土の粒度分布を有する来待石粉体100重量部に対し、おが屑、籾殻或いはおが屑と籾殻の混合物3〜10重量部と水10〜40重量部を加えて混練し、成型して乾燥した後500℃〜950℃で素焼きし、次いで1000℃〜1180℃で本焼きすることを特徴とする礫耕栽培用の来待石粉体製容器の製造方法。
【請求項5】
来待石粉体製容器は、手捏ねや轆轤で成型するか、鉢状或いは円筒状の型に入れて振動或いは突き固めて成型するか、或いは円錐台柱その他の柱状型に入れて振動或いは突き固めて半乾燥状態にあるものを内側を抉って鉢状に成型した後に乾燥焼成するものである、請求項4記載の礫耕栽培用の来待石粉体製容器の製造
【請求項6】
多孔質造粒焼成品は、来待石粉体、或い来待石粉体とおが屑や籾殻、それに水を混ぜたものを混練して攪拌造粒し、次いで乾燥した後500℃〜950℃で素焼きし、次いで1000℃〜1180℃で本焼きするものである、請求項1又は請求項2記載の礫耕栽培方法。
【請求項1】
素焼きの植木鉢や来待石粉体を用いて焼成した容器に、来待石粉体を造粒して焼成した多孔質造粒焼成品と固形肥料を入れたものに栽培植物を植え或いは種まきし、植木鉢或いは容器ごと水を浅く張った水槽に漬けることを特徴とする礫耕栽培方法。
【請求項2】
素焼きの植木鉢や来待石粉体を用いて焼成した容器に、来待石粉体を造粒して焼成した多孔質造粒焼成品を入れたものに栽培植物を植え或いは種まきし、植木鉢或いは容器ごと肥料を入れた水を浅く張った水槽に漬けることを特徴とする礫耕栽培方法。
【請求項3】
栽培植物或いは種は、トマト或いはミニトマトである、請求項1又は請求項2記載の礫耕栽培方法。
【請求項4】
礫混じり砂質粘土や礫混じりシルト質粘土或いは礫質土の粒度分布を有する来待石粉体100重量部に対し、おが屑、籾殻或いはおが屑と籾殻の混合物3〜10重量部と水10〜40重量部を加えて混練し、成型して乾燥した後500℃〜950℃で素焼きし、次いで1000℃〜1180℃で本焼きすることを特徴とする礫耕栽培用の来待石粉体製容器の製造方法。
【請求項5】
来待石粉体製容器は、手捏ねや轆轤で成型するか、鉢状或いは円筒状の型に入れて振動或いは突き固めて成型するか、或いは円錐台柱その他の柱状型に入れて振動或いは突き固めて半乾燥状態にあるものを内側を抉って鉢状に成型した後に乾燥焼成するものである、請求項4記載の礫耕栽培用の来待石粉体製容器の製造
【請求項6】
多孔質造粒焼成品は、来待石粉体、或い来待石粉体とおが屑や籾殻、それに水を混ぜたものを混練して攪拌造粒し、次いで乾燥した後500℃〜950℃で素焼きし、次いで1000℃〜1180℃で本焼きするものである、請求項1又は請求項2記載の礫耕栽培方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
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【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2012−44961(P2012−44961A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−192368(P2010−192368)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(501249261)株式会社日本海技術コンサルタンツ (17)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(501249261)株式会社日本海技術コンサルタンツ (17)
【Fターム(参考)】
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