説明

秤量装置及び試料分析前処理装置

【課題】 試料の秤量精度の向上と能率化および前処理の注液時間の短縮による、総合的な作業能率の向上をすることができる、秤量装置及び試料分析前処理装置を提供する。
【解決手段】 試料容器の蓋の供給口に挿入した状態で回転することができ且つ軸心と平行にスライド運動ができる軸の外周に連続した螺旋状の所定深さの溝を設けた螺旋溝付き軸から成る試料容器組立体を所定姿勢で回転させる手段と、前記螺旋溝付き軸を供給口から所定距離を抜き出しと挿入移動を繰り返す手段と、試料を受ける測定容器および試料の秤量値を計測する計測手段、とを設ける。
また、前記螺旋溝付き軸を回転且つ供給口から所定距離を抜き出しと挿入移動を繰り返す手段
そして、ライン洗浄手段と共に、薬液を供給する少なくとも二系統の薬液供給手段を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば農地における土壌分析や環境汚染地における汚泥分析のための前処理を行なう過程で、試料の重量測定を行なう秤量装置と、それを用いた試料分析前処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、秤量装置については、土壌の試料容器を傾けた後、この容器に振動を与えて秤量することが知られているが、この方法であると試料である土壌粒子の固有振動数によって、秤量時間に差異が発生しやすく、特に、微小なパウダー状の土壌試料の場合には、秤量装置の内部において試料が宙に飛び散って舞ってしまうという現象となるので、他の容器内に入り込んでしまうという問題が多くあったものである。(特許文献1および特許文献2参照)
【0003】
また、土壌の試料の供給口を絞った形状のキャップをつけた容器を傾けた後、その容器を回転させて、試料を供給しながら秤量することも開示されているが、この場合では、容器の回転速度を変化させたとき、回転速度の強弱によって、秤量する土壌の性質の影響で、試料容器の傾けた状態での容器キャップの先端供給口において、試料の詰まりを生じてしまうことや、試料容器が傾き始めた際に、開放された供給口から一度に多量の試料が出てしまうこともあるという欠点や問題も多くあった。しかも、試料容器を傾斜させる速度や試料容器を回転させる速度を所定以上に高めることが困難でもあった。(特許文献3参照)
【0004】
試料の供給装置においては、常に安定した定量供給することに対して、従来から外周にスクリューを有する両端を固定して回転する軸によるスクリュー搬送が用いられているが、供給量の変化や供給作業の断続性および供給速度の能力などにおいては、未だ十分とは言えず満足が得られていない。特に微妙な正確な量の試料を個別の容器に断続的に供給する場合には、スクリューを停止させても試料の後流れや後ダレが生じてバラ付きを発生させてしまう問題もあった。(特許文献4参照)
【0005】
次に注液装置については、試料容器を所定角度に傾け回転させて試料を抽出容器に供給する試料供給手段と、その計測手段と、計測情報に基づき予め設定された試料の秤量値になるように試料供給手段を制御する制御手段を備えているものも公開されてはいるが、これらを含む、従来用いられている一系統の注液装置の構造では、最初の試薬を注入後に、次の試薬を注入する場合には、前作業の試薬がラインに残留しないようにライン全体の内部の洗浄作業を連続して数分間実施しなければならず、前試薬を実施後、直ぐには次の試薬の注入作業をすることができないために、極めて作業能率が悪く、最近のロボットを利用した作業の自動化による連続した高能率の十分なメリットが得られないという問題もあった。(特許文献3参照)
【0006】
上記のように、いずれの公開物件も種種の欠点や問題に対しては、未だ解決されていないばかりでなく、こうしたものについては他に効果的な技術は未だ見られない。
故に、秤量精度の向上と能率化および前処理の注液時間の短縮による、総合的な前処理作業の能率を向上することが、市場から強く求められてもいた。
【参考文献】
【特許文献1】 実開2000−337950
【特許文献2】 特開2003−161680
【特許文献3】 特開2007−163189
【特許文献4】 特開2003−228761

【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような問題を解決すると共に、多くの市場の要求にも応えようとするもので、本発明は試料の秤量精度の向上と秤量作業を能率化できる秤量装置及び前処理薬液の注液時間の短縮と注薬後のライン連続洗浄による、総合的な試料分析前処理作業能率の向上をすることができる試料分析前処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の秤量装置及び試料分析前処理装置は、底を有する筒状の試料容器の蓋の所定の位置に供給口を設け、当該供給口に挿入した状態で回転することができ且つ軸心と平行にスライド運動ができる軸の外周に連続した螺旋状の所定深さの溝を設けた螺旋溝付き軸から成る試料容器組立体と、当該試料容器組立体を所定姿勢で回転させる手段と、前記螺旋溝付き軸を供給口から所定距離を抜き出しと挿入移動を繰り返す手段と、前記供給口から供給される試料を受ける測定容器および試料供給後の測定容器内の試料の秤量値を計測する計測手段、とを設けた秤量装置である。
【0009】
また、底を有する筒状の試料容器の蓋の所定の位置に供給口を設け、当該供給口に挿入した状態で回転することができ且つ軸心と平行にスライド運動ができる軸の外周に連続した螺旋状の所定深さの溝を設けた螺旋溝付き軸から成る試料容器組立体と、当該試料容器組立体を所定姿勢で保持する手段と、前記螺旋溝付き軸を回転且つ供給口から所定距離を抜き出しと挿入移動及び停止を任意繰り返す手段と、前記供給口から供給される試料を受ける測定容器および試料供給後の測定容器内の試料の秤量値を計測する計測手段、とを設けた秤量装置である。
【00010】
そして、前述の秤量装置に加えて、所定量の試料を入れた測定容器と、薬液を供給する薬液供給手段と、測定容器内の試料の秤量値を計測する計測手段とを設けたものであって、薬液および洗浄液を供給する回路において、少なくとも二系統の薬液供給手段と各ラインの洗浄後の洗浄液の排出手段を設け、それぞれ一方の系統ラインが薬液供給作業後は常にライン内の洗浄作業に稼動させることを特徴とする試料分析前処理装置である。
【発明の効果】
【0011】
以上のとおり、本発明の秤量装置と試料供給装置及び試料分析前処理装置によれば、以下の多くの優れた効果を奏する。
請求項1の発明によれば、試料容器の蓋の所定の位置に供給口を設け、当該供給口に挿入した状態で回転することができ且つ軸心と平行にスライド運動ができる軸の外周に連続した螺旋状の所定深さの溝を設けた溝付き軸から成る試料容器組立体を有する秤量装置を用いることによって、分析用試料などの秤量作業において、試料の取り出しや停止も任意にでき、秤量の微小な調整もし易く、試料容器組立体を所定姿勢である、その場で最適の下向き傾斜角度でもって、回転させる手段と、螺旋溝付き軸を供給口から所定距離を抜き出しと挿入移動を繰り返す手段とを別に設けたことによって、装置の機構が分かり易く、その取り扱いも容易となった。故に、特別な熟練を必要としないので誰でもが容易に、能率良く、しかも極めて高精度の秤量結果を得ることが可能となり、安定した分析作業と信頼できるデーターを入手することができる。
【0012】
また、請求項2の発明によっても、請求項1と同等の効果が得られるが、試料容器組立体を所定姿勢で保持する手段として、簡単な傾斜保持スタンドだけでもよく、装置が簡単でコンパクトとなり、携帯収納が便利になって、広く薬剤などの秤量にも利用できる。
更に螺旋溝付き軸を回転させながら且つ往復運動させることによって、特に多量の試料や、試料の高速供給する場合には、秤量作業の能率に優れた効果を発揮させることができる。
即ち、従来の通常のスクリュー搬送『二次元作動』に加え回転搬送と共にスライドピストン搬送が同時に作動することになるので、立体的な『三次元作動』であって、供給量の調節範囲が広がると共に、供給される絶対能力も向上させることができる。
尚、実際の実施形態としては、上記請求項1のものに於いても、試料容器を別個に回転させても、螺旋溝付き軸のスライド往復運動と関係させれば、同等のものになる。
【0013】
また、請求項3の発明によれば、薬液供給手段を複数系統として設け、それぞれ薬液供給作業と洗浄液供給作業を交互に稼動させることによって、注液作業の切り替えが短時間でできるとともに、洗浄も十分に行なうことが可能となるため、前処理作業を連続的に行なうことができ、著しい作業能率の向上を図ることができる。しかも先に分析秤量を実施した試料や試薬の残留がなく、常に安定した分析値を能率よく得ることができる。
【0014】
本発明は上述のように、従来の数々の問題を全て一挙に解決し、正確な秤量作業とともに前処理作業の能率を全体的に極めて向上した実用価値が非常に大きなものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
以上に、本発明の秤量装置及び試料分析前処理装置の実施の形態は、発明の最も好ましい形態を示すものであり、本発明はこれに限定されない。
図1は本発明の秤量装置の第1の実施例の主要部構成を示す側面からの断面図である。そして、図2は図1の試料容器組立体の一部を切り欠いた拡大正面図である。
【0016】
また、図2は本発明の試料供給装置ともなるものであって、本実施例の土壌分析などに限定されないで、各種薬剤などの正確な量を供給することもできるものである。従って、図2に加えて、前記供給口から供給される試料を受ける測定容器および試料供給後の測定容器内の試料の秤量値を計測する計測手段とを設けることによって秤量装置とすることも可能である。
【0017】
図1および図2に示すように、1は試料容器組立体で、2は試料容器ホルダ、3は螺旋溝付き軸スライドユニット、4Aは試料秤である。本装置は主として、秤量前の試料を供給する試料容器組立体1と、当該試料容器組立体1を要求する姿勢で保持する試料容器ホルダ2と、当該試料容器ホルダ2を要求される所定位置への移動あるいは要求される傾斜角度での姿勢に移動させるホルダ移動ユニット25と、螺旋溝付き軸13を軸心に沿ってスライド移動させる螺旋溝付き軸スライドユニット3と、試料容器から供給される試料を受けて抽出測定される測定容器9及び秤量値を計測する試料秤4Aとで構成されている。
【0018】
本装置は、第1の実施例で、土壌分析などにおける試料の秤量作業を各種のロボットなどで自動的に繰り返し行なわれるものとしている。
従って、マニュアル作業などを含めた他の場面での応用においては、部分的な構成の省略やアレンジまたは追加することも可能である。
例えば、医療用の薬剤などを秤量する場合には、一定の狭い場所で行なうので、試料容器ホルダ2を移動させるホルダ移動ユニット25は省略することが可能となる。
【0019】
本装置の更に詳細な説明と、その作動を以下に説明する。
試料が満たされた試料容器組立体1は試料容器ホルダ2に挿入して固定保持される。
試料容器組立体1を下向き傾斜姿勢で保持させながら回転させる手段として、試料容器ホルダ2の後端には旋回プーリー23が設けられステッピングモーターに連結されて、試料容器ホルダ2と共に試料が満たされた試料容器組立体1も同時に回転されるようになっている。この回転速度は任意に変化や停止することもできる。
次に、螺旋溝付き軸13を供給口12aから所定距離を抜き出しと挿入移動を繰り返す手段として、螺旋溝付き軸13と平行にスライドする軸支持アーム31を有する螺旋溝付き軸スライドユニット3を設け、試料が満たされた試料容器組立体1に挿入されている螺旋溝付き軸13の軸柄部13bを螺旋溝付き軸スライドユニット3の軸支持アーム31にクランプされ、このクランプによって螺旋溝付き軸13は軸心と平行にスライド移動できるだけで、ラジアル方向の動きは固定されるようになっている。
【0020】
また、前記試料容器ホルダ2はホルダステー26で支えられ、試料容器組立体1を供給口12aが下方になるように傾斜させると共に、供給口12aが測定容器9の開口の上の位置まで移動させるホルダ移動ユニット25を設けてある。
そして、測定容器9は試料秤4Aの中央部に設置されている測定容器ホルダ91に挿入セットされている。
試料供給後の測定容器9内の試料の秤量値を計測する計測手段としての試料秤4Aは電子式でできていて、下面に防振具を有する秤台41の上面に設置されている。
【0021】
上記の一連の構成品の相互の最適な関係位置や姿勢を変化させる作業をマイコンとロボットによって、自動化するように作られている。
【0022】
本発明の最大のポイントである試料容器組立体1は、図2で示すように、円筒に半円球形状の底を有する試料容器本体11の開放側には、円錐形の頂部に試料の供給口12aを有する試料容器蓋12が被さっていて、供給口12aに挿入した状態で回転することができ且つ軸心と平行にスライド運動ができる軸の外周に連続した螺旋状の所定深さの溝を設けた螺旋溝付き軸13が挿入されているものである。
螺旋溝付き軸13は一般に物体に孔を開ける工具であるドリルのキリ状の溝が円柱軸の外周に形成されていて、キリの握持部に相当するストレート部分の溝の付け根には供給口12aを被う大きさの蓋用鍔13aが形成され、ストレート部分の軸柄部13bの先端にも同様の大きさのストッパ13cが形成されていて、ここで軸端を止めて軸支持アーム31が螺旋溝付き軸13を確実にクランプできるようにしている。
【0023】
このように構成されているので、試料容器本体11内に充分収納された試料Sは螺旋溝付き軸13を全体取り囲むようになり、即ち試料Sの中にドリルのキリが埋没して刺さった状態になる。この状態で試料容器組立体1を供給口12aが下になるように所定の角度に傾斜させれば、試料Sは自重で落下して供給口12aに近づき寄り集まってくる。その後螺旋溝付き軸13を所定長さ(ここでは約5mm)だけスライドさせ引き出して、試料容器本体11を試料容器ほるだ2と共に回転すれば、秤量する試料Sは供給口12aから流れ出てくる。
【0024】
試料Sは試料容器本体11と同期して回転し、螺旋溝付き軸13は回転(同期)しないので、回転数を高めれば、多量の試料が連続的に流出され、供給口12aで試料が詰まってしまうことがない。また、螺旋溝付き軸13を蓋用鍔13aの位置まで挿入すれば、試料のアトダレ(後に垂れる余分なもの)がなく、微量な調節が容易にでき、供給口12aを下に向けたまま、試料の流れを完全に止めることもできる。
尚、螺旋溝付き軸13の蓋用鍔13aは必要に応じて設ければよく、供給口12aと螺旋溝付き軸13とのシール性が十分確保できれば、軸のストレート部分(螺旋溝のない部分)だけで試料の流れを完全に止めることもできるため、蓋用鍔13aは不要となる。
【0025】
秤量装置の第2の実施例として、図示しないが、試料容器の蓋の所定の位置に供給口を設け、当該供給口に挿入しながら且つスライドや回転運動ができる軸の外周に連続した螺旋状の所定深さの溝を設けた溝付き軸から成る試料容器組立体と、例えば試験管保持スタンドのような試料容器組立体を下向き傾斜姿勢で保持する手段と、前記螺旋溝付き軸を回転運動させながら、且つ供給口から所定距離を抜出と挿入移動を繰り返すスライド運動または往復ピストン運動手段と、前記供給口から供給される試料を受ける測定容器および試料供給後の測定容器内の試料の秤量値を計測する計測手段とを設けたものである。
即ち、試料容器本体を固定しておき、前記螺旋溝付き軸を回転と往復の複合運動をさせた三次元的作動をするものである。
【0026】
上記の第2の実施例は、試料容器を回転させないで、その代わり、螺旋溝付き軸を回転させるものであって、相対的には第1の実施例と同じ作用で試料が供給されることになる。
この場合は、螺旋溝付き軸を複合的に作動させなければならないので、機構の複雑化やコスト高の問題も考えられるが、反面には螺旋溝付き軸だけを回転且つ供給口から所定距離を抜出と挿入移動を繰り返す手段でよいので、特にコンパクトな装置にできることや、より大粒で大量の試料にも活用でき、しかも、第1の実施例より高速での試料供給も可能となる。
【0027】
また、次に考えられるのは、図2で示した試料容器組立体を利用した試料供給装置であって、この機構を精度良く精密に作製することによって、各種試料や各種の薬剤なども微量から多量の広範囲に亘って供給することができる。これによれば、螺旋溝付き軸を供給口から所定長さ出し入れすることによって、試料の供給が開始や停止され、次に所定角度回動または回転させれば、試料の供給量を制御して、そのまま次工程の計測や包装に繋げることもでき、応用範囲が著しく拡大する。
【0028】
図3は本発明の試料分析前処理装置の第1の実施例の主要部構成を示す斜視図である。そして、図4は図3における6種類の抽出薬液を供給する、二系統の薬液供給装置とした概略図である。
ここで言う、本発明の薬液供給装置とは、図4に示す、薬液タンク8、薬液管61、切り替えバルブ71、液配送管6、液配送ポンプ7、注液ノズル5および洗浄液タンクと洗浄液管を含めたものである。
【0029】
図3に示すように、先述の請求項1に記載した秤量装置Aに隣接して加えた、注液装置Bを設けて一連の試料分析前処理装置としたものである。
この注液装置Bは、秤量装置Aで正確に秤量された測定容器9を受ける測定容器ホルダ91が中央に設けられた注液用の薬液秤4Bと、当該薬液秤4Bの近隣前方位置に測定容器9に成分抽出のための薬液を注入する2本の注液ノズル5がノズルホルダ51を介して設けられ、これらの注液ノズル5を測定容器9の開口上まで移動させ、注液後には元の位置に戻すためのノズルホルダ51が回動およびスライド移動できるためのノズル回動・スライド機52を設けている。
【0030】
そして、薬液注入後、注液ノズル5を測定容器9の開放口上位置から退避させて、注液ノズル5の先端を受ける所定位置に、注液ノズル5から落下する余った薬液を受け入れる廃液容器55が設けられて、そこから秤台41の設置テーブルの下側にある廃液タンク(図示していない)に連結して排出されるようになっている。
また、廃液容器55は一つの薬液を注入後ノズルおよび薬液の通路を完全に洗浄するための洗浄液(蒸留水または精製水)を排出する場合にも用いられる。
【0031】
秤量装置Aで秤量された試料Sを収納した測定容器9は、注液装置Bの注液秤4Bの上面所定位置にロボットなどで移動して設置される。
【0032】
前述したまでのものは、試料分析前処理装置の上側にある部分であって、ノズルに薬液を注入するための更に必要な部分はこの図の設置台の下側にあるので、次の図4にて示し説明する。
【0033】
図4は図3における6種類の薬液を供給する、二系統の薬液供給装置とした概略図である。図4に示すように、薬液供給装置は、6種類の薬液LAからLFに対応する6個の薬液タンク8から各々6本の薬液管61と6箇所の接続口を有する2個の切り替えバルブ71を通して各薬液を汲み上げる二機の液配送ポンプ7が設置され、当該液配送ポンプ7から先述の二本の注液ノズル5まで液配送管6が配管され、接続されている。二本の注液ノズル5は片方ずつ注液ホルダと共に図の矢印のように移動して、測定容器9の開口上部位置において規定量の薬液を注入して液量が秤量されることになる。
【0034】
また、注液作業後の次の薬液にする場合には液配送ポンプ7をはじめ、液配送管6および注液ノズル5のライン全ての内部を洗浄しなければならず、液配送ポンプ7に対応する2個の洗浄液タンク59から洗浄液Hを送る各々の洗浄液管62が各切り替えバルブ71に接続されている。
【0035】
このように多数の薬液を供給する二系統の薬液供給装置を構成することにより、第一の薬液である薬液LAを注入後、次の秤量後の測定容器への第二の薬液である薬液LBを注入する場合には、待つことなく即時に他系統の薬液供給装置を用いて二本目のノズルから第二の薬液LBの注液作業が連続して実施されることになる。
そして、第三の薬液LCまたは第四の薬液LDに移る場合には、切り替えバルブ71で配管接続を切り替えることによって液配送ポンプ7の吸引にて洗浄液Hが汲み上げられ、内部が洗浄される。この洗浄工程は図3に示す隣接した秤量装置Aから、次の秤量済み試料入りの測定容器が、注液装置Bの所定位置にセットされるまでの時間に行なわれるので、薬液タンク8と薬液管61を多数(6基等)設けたことは、極めて大きな作業能率の向上となる。
また、特に粘度の高い薬剤などを使用した場合には、全ライン内を綺麗に薬剤の残留がなくなるまで洗浄するためには、連続して長時間洗浄液を流さなければならないが、この場合は、比較的粘土の低い薬剤を使用した一方の系統のラインを薬剤注入後、その薬剤を洗浄後、次の薬剤を供給する作業を連続して行い、粘度の高い薬剤のラインは、そのまま継続して、連続的に洗浄と廃液を流出させて十分な清浄を実施させることができる。その結果、試薬の残留がなく、常に安定した分析値を得ることができる。
【0036】
以上のように、一つのパレット上で連続して二種類の薬液が終了してから、次のパレットに作業が進められるが、先に使用したパレットにおいて一通りの作業終了後休ませて置く時間に第一の薬液供給路を洗浄液にて洗浄することができるので、第三の薬液注入作業の準備がされることになって、連続した繰り返しの注液作業が大変能率良く行なうことができ、ロボットによる一定の作業としてロスタイムが著しく減少するので、全体を通じて極めて大きな能率効果が得られることになるのである。
【0037】
本実施例では二系統の薬液を供給する薬液供給装置を構成したものであるが、薬液は数種類からそれ以上に必要となる場合があり、これらに応じた多系統や、より沢山の薬液タンクを設けたものも考えられる。この場合、設置スペースやコストの問題が解決されれば、より一層の高能率が得られて好ましい。
【0038】
一連の秤量および前処理作業を説明すると、
1) 試料容器本体11の容積を略満たす所定量の粉体試料を収納して、円錐形の試 料容器蓋12をした後、蓋の頂部の供給口12aから螺旋溝付き軸13を挿入 して、試料容器ホルダ2にセットする。
2) ロボットにて試料容器組立体1を秤量エリアまで搬送して、秤量装置Aの所定 位置にセットする。
3) 試料容器本体11の容器蓋12に挿入された螺旋溝付き軸13を軸支持アーム 31にクランプする。
4) 螺旋溝付き軸13が試料容器組立体1の上部位置から水平の位置になるように 回動移動させる。
5) 試料容器組立体1を水平位置から下向きに45度の範囲内で傾斜させる。
6) 試料容器組立体1を試料容器ホルダ2ごとに回転させて、試料Sを測定容器9 に送出して試料秤4Aで秤量する。
7) 正確に秤量された試料入りの測定容器9を、注液装置Bにセットする。
8) 一方の注液ノズル5を、前記測定容器9上に移動させ、所定量の注液をする。
9) 新たな試料において、上記1)〜6)までの作業後に、連続して他方の注液ノ ズル5を、新たな測定容器9上に移動させ、所定量の注液をする。
10) 別のパレットに移る場面で、第三番目の抽出液に対応させるべき、第一番目の 抽出薬液を注液ノズル5および液配送管内6から排出するように充分洗浄して おく。
11) 以上を自動的に繰り返して、所定の種類の抽出液の数だけ、能率よく前処理を 実施する。
【0039】
更に、その他の実施例として、以上に述べたものの各種変形型バリエーションも可能である。
上記各構成品の形状や、材質等いずれも記載している実施例に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲において、包含されるべくものである。
例えば、試料容器蓋12は円錐形でなくてもよいし、螺旋溝付き軸13の材質を摩擦計係数の小さいものとすることや、試料によって溝の表面粗さを変化させることなど、また、軸の溝はキリ状のU文字状でなく、試料が微細で少量の粉体などではV字形のほうが良い場合も考えられる。更に、試料容器や螺旋溝付き軸の大きさや直径を変えることによって、より多くの場面での活用や、一層微量な秤量要求に応えることおよび、より一層の秤量速度の向上を図ることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の秤量装置の第1の実施例の主要部構成を示す側面からの断面図である。
【図2】図1の試料容器組立体の一部を切り欠いた拡大正面図である。
【図3】本発明の試料分析前処理装置の第1の実施例の主要部構成を示す斜視図である。
【図4】図3における6種類の抽出薬液を供給する、二系統の薬液供給装置とした概略図である。
【符号の説明】
【0041】
1 試料容器組立体
11 試料容器本体
12 試料容器蓋
12a 供給口
13 螺旋溝付き軸
13a 蓋用鍔
13b 軸柄部
13c ストッパ
2 試料容器ホルダ
21 試料容器ホルダ本体
22 ホルダ軸
23 旋回プーリー
25 ホルダ移動ユニット
26 ホルダステー
3 螺旋溝付き軸スライドユニット
31 軸支持アーム
32 軸スライド機
4A 試料秤
4B 薬液秤
41 秤台
5 注液ノズル
51 ノズルホルダ
52 ノズル回動・スライド機
55 廃液容器
59 洗浄液タンク
6 液配送管
61 薬液管
62 洗浄液管
7 液配送ポンプ
71 切り替えバルブ
8 薬液タンク
81 タンク台
9 測定容器
91 測定容器ホルダ
A 秤量装置
B 注液装置
H 洗浄液
S 試料
LA 薬液A
LB 薬液B
LC 薬液C
LD 薬液D
LE 薬液E
LF 薬液F

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底を有する筒状の試料容器の蓋の所定の位置に供給口を設け、当該供給口に挿入した状態で回転することができ且つ軸心と平行にスライド運動ができる軸の外周に連続した螺旋状の所定深さの溝を設けた螺旋溝付き軸から成る試料容器組立体と、当該試料容器組立体を所定姿勢で回転させる手段と、前記螺旋溝付き軸を供給口から所定距離を抜き出しと挿入移動を繰り返す手段と、前記供給口から供給される試料を受ける測定容器および試料供給後の測定容器内の試料の秤量値を計測する計測手段、とを設けたことを特徴とする秤量装置。
【請求項2】
底を有する筒状の試料容器の蓋の所定の位置に供給口を設け、当該供給口に挿入した状態で回転することができ且つ軸心と平行にスライド運動ができる軸の外周に連続した螺旋状の所定深さの溝を設けた螺旋溝付き軸から成る試料容器組立体と、当該試料容器組立体を所定姿勢で保持する手段と、前記螺旋溝付き軸を回転且つ供給口から所定距離を抜き出しと挿入移動及び停止を任意繰り返す手段と、前記供給口から供給される試料を受ける測定容器および試料供給後の測定容器内の試料の秤量値を計測する計測手段、とを設けたことを特徴とする秤量装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載する秤量装置に加えて、所定量の試料を入れた測定容器と、薬液を供給する薬液供給手段と、測定容器内の試料の秤量値を計測する計測手段とを設けたものであって、薬液および洗浄液を供給する回路において、少なくとも二系統の薬液供給手段と各ラインの洗浄後の洗浄液の排出手段を設け、それぞれ一方の系統ラインが薬液供給作業後は常にライン内の洗浄作業に稼動させることを特徴とする試料分析前処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−69150(P2009−69150A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−230287(P2008−230287)
【出願日】平成20年8月12日(2008.8.12)
【出願人】(501353535)
【Fターム(参考)】