説明

移動・振動計測装置

【課題】 大地震などにより生ずる構造物の倒壊などの過程の解明の計測においてその計測前の準備段階の作業の効率化を図る。
【解決手段】 移動又は振動する被計測用の対象物8の所定複数個所に取付けた発光手段6と、これら発光手段6から隔離して設置された受像手段3と、該受像手段3からの出力信号を入力する画像演算処理手段2とからなる移動・振動計測装置1において、該画像演算処理手段2に接続し前記受像手段3により受像した前記発光手段6の受光像を表示する表示手段5と、前記発光手段6に接続しこれら発光手段6を順次単独で発光させる発光制御手段7を具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば大地震などにより起こる構造物の破壊過程や崩壊過程を解明するために、構造物の変位する空間位置を離れた位置から計測したり又は、建築構造物などのヘルスモニタリングに応用したり、ETC等の交通制御システムやロボット等の移動制御システムその他種々の対象物の移動を高精度で計測できる移動・振動計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来この種の移動・計測装置として、移動又は振動する被計測用の対象物の所定複数個所に取付けた発光手段と該発光手段に対向する複数の受像手段とこれら受像手段からの出力により前記発光手段の移動量又は振動量を算出する画像演算処理手段とからなり、前記発光手段の本体の正面に複数の発光素子を配設した装置が知られている(特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2003−222554号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この従来の移動計測装置において、移動計測の前に前記各受像手段にそれぞれ対応する表示部に表示される前記各発光手段の受光像の座標の特定をするためには所定の演算を行なわなければならなかった。
【0004】
このように表示部における各発光手段の受光像の座標の特定のために所定の演算が不可欠であり、この演算に作業上の手間がかかり、特に受像手段である受像カメラの台数が増加した場合には、この作業上の手間がかなりかかる問題点があった。
【0005】
本発明はこのような問題点を解消し作業の効率化を図ると共に作業上のミスをなくす移動・振動計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はこの目的を達成すべく、移動又は振動する被計測用の対象物の所定複数個所に取付けた発光手段と、これら発光手段から隔離して設置された受像手段と、該受像手段からの出力信号を入力する画像演算処理手段とからなる移動・振動計測装置において、該画像演算処理手段に接続し前記受像手段により受像した前記発光手段の受光像を表示する表示手段と、前記発光手段に接続しこれら発光手段を順次単独で発光させる発光制御手段を具備している。
【発明の効果】
【0007】
本発明は表示手段において各発光手段の受光像の特定が容易になり本計測前の準備段階の作業の効率化が図れると共に作業上のミスをなくす効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の最良の実施形態の実施例を以下に説明する。
【実施例1】
【0009】
本発明の実施例1を図面により説明する。
【0010】
1は移動・振動計測装置を示し、該移動・振動計測装置1は、画像演算処理手段2と受像手段3と記憶手段4と表示手段5と発光手段6と発光制御手段7とからなる。
【0011】
該各発光手段6は図3の如く計測対象面である正面6bが正方形の箱体の本体6aの該正面6bの中央部を半球状の凸面6cに形成し、該凸面6cに四方に向って光を発するように単体発光素子である発光ダイオード6dを所定位置に複数配設した集合発光体に形成し、更に、該各発光手段6は図4の如く前記箱体内に受信アンテナを有する無線受信機9と該無線受信機9からの信号を入力し発光部6aに発光信号を出力する発光制御手段である小型の演算制御装置7aと該演算制御装置7aに接続されている記憶装置8とこれらの電源を有している。
【0012】
そして前記発光手段6は例えば第1発光手段6−1、第2発光手段6−2、第3発光手段6−3、……第12発光手段6−12の12個存在し、図2に示す如く底板12aと該底板12a上に立設した四方の複数の柱12bとこれら柱12bの上端に支持固定された天板12cとからなる被計測用の対象物である模擬の構造物12の各柱12bの側面や天板12cの側面等の各所定個所に前記第1発光手段6−1、第2発光手段6−2、第3発光手段6−3、……第12発光手段6−12を順次取付けた。
【0013】
尚、前記構造物12は、入力されたデータに基いて振動する振動発生源に連なる振動台A上に設置されている。
【0014】
11は前記構造物12から離れた場所に設置されている無線発信装置を示し、該無線発信装置11はこれに接続した操作装置10からの出力信号に応じて無線出力を発信するようにした。
【0015】
前記受像手段3は図1に示す如く例えば6台の受像カメラ3a、3b、……3fからなり、前記構造物12より例えば10数メートル離れた個所に設置され、該構造物12のコーナ部の左側面の個所を計測するための3台の受像カメラ3a、3b、3cと同コーナ部の右側面の個所を計測するための3台の受像カメラ3d、3e、3fが設けられている。
【0016】
前記画像演算処理手段2はコンピュータからなり、前記各受像カメラ3a、3b、3c、……3fからの画像信号に基き、前記各発光手段6−1、6−2、6−3、……6−12の変位位置即ち移動量又は振動量等を算出するためのものであり、記憶手段であるDVDなどの画像記憶装置4や表示部である液晶その他からなる表示装置5が接続されている。
【0017】
そして該表示装置5の前面の表示部は図5乃至図7の如く各受像カメラ3a、3b、3c、……3fによりそれぞれ対応して各受像カメラ3a、3b、3c、……3fにより受像される各発光手段の発光像が表示されるようになっている。
【0018】
次に本発明の実施例1の使用方法及び作動について説明する。
【0019】
図1及び図2に示す如く、振動台A上に構造物12を設置してから該構造物12の柱12bと天板12cの側面の所定個所に第1発光手段6−1、第2発光手段6−2、第3発光手段6−3……第12発光手段6−12をそれぞれのベース板6eにおいて順次ネジ止めや磁石や接着などの係着手段により強固に係着する。
【0020】
次に、操作装置10において、本計測前の準備スイッチを押すと、無線発信装置11より図5のBの如く「準備」の信号の電波を発信すると、各発光手段6−1、6−2、6−3、……6−12において無線受信装置9は演算制御装置7に「準備」の信号を出力する。
【0021】
そして各発光手段6−1、6−2、6−3、……6−12において、前記「準備」の信号を入力した前記演算制御装置7は、記憶装置8から発光プログラムを読み出してそれぞれの発光手段を発光するように該発光手段の発光部6aに制御信号を出力する。
【0022】
即ち、第1発光手段6−1において、記憶装置8には第1番目の所定の短時間発光させるための発光プログラムが記憶されているので、演算制御装置7は「準備」の信号を入力すると当該記憶装置8から当該発光プログラムを読み出して第1番目の所定の短時間例えば1秒間の発光制御信号を出力して第1発光手段6−1は図5のCの如く発光する。この間他の発光手段6−2、6−3、……6−12は発光しない。
【0023】
次に、第2発光手段6−2において、記憶手段8に前記第1番目の所定の短時間の発光の後の第2番目の所定の短時間発光させるための発光プログラムが記憶されているので、演算制御装置7は「準備」の信号を入力すると当該記憶装置8から当該発光プログラムを読み出して第2番目の所定の短時間例えば1秒間の発光制御信号を出力して第2発光手段6−2は図5のDの如く第1発光手段6−1の発光後に発光する。この間他の発光手段6−1、6−3、……6−12は発光しない。
【0024】
次に第3発光手段6−3において、記憶手段8に前記第2番目の所定の短時間の発光の後の第3番目の所定の短時間発光させるための発光プログラムが記憶されているので、演算制御装置7は「準備」の信号を入力すると、当該記憶装置8から当該発光プログラムを読み出して第3番目の所定の短時間例えば1秒間の発光制御信号を出力して第3発光手段6−3は図5のEの如く第2発光手段6−2の発光後に発光する。この間他の発光手段6−1、6−2、6−4、……6−12は発光しない。
【0025】
その後、第4発光手段6−4、第5発光手段6−5等について順次短時間単独に発光していき、第12発光手段6−12において図5のMの如く短時間単独に発光して準備を終了する。
【0026】
そこで前述した第1発光手段6−1のみ発光した状態のときに該第1発光手段6−1の光を各受像カメラ3a、3b、3c、……3fにより受光してその各受像カメラ毎の画像演算処理手段2を介しての受光像は図6の如くなる。
【0027】
即ち、第1受像カメラ3aの第1表示部No.1には受光像a−1が、第2受像カメラ3bの第2表示部No.2には受光像b−1が表われるが、第1発光手段6−1は図1に示す如く第3受像カメラ3c、第4受像カメラ3d、第5受像カメラ3e及び第6受像カメラ3fの受像角度範囲外となるので、図6の如くこれらの第3、第4、第5、第6表示部No.4、No.5及びNo.6には前記第1発光手段6−1の受光像が表われない。
【0028】
そしてこれらにより、第1発光手段6−1の位置は、第1表示部No.1における受光像a−1の座標位置として、又第2表示部No.2における受光像b−1の座標位置としてそれぞれ特定され、これらの座標を記憶手段4に記憶する。
【0029】
次に前述した第2発光手段6−2のみが発光した状態のときは、図7の如く第1受像カメラ3aの第1表示部No.1には受光像a−2が、第2受像カメラ3bの第2表示部No.2には受光像b−2が表われ、又第3受像カメラ3c、第4受像カメラ3d、第5受像カメラ3e及び第6受像カメラ3fに対しては第1発光手段6−1と同様に第2発光手段6−2も図1に示す如く第3受像カメラ3c、第4受像カメラ3d、第5受像カメラ3e及び第6受像カメラ3fの受像角度範囲外となるので、図7の如く第3〜6表示部No.3、No.4、No.5、No.6には第2発光手段6−2の受光像が表われない。
【0030】
そして、これらにより第2発光手段6−2の位置は、第1表示部No.1における受光像a−2の座標位置として、又第2表示部No.2における受光像b−2の座標位置として特定され、これらの座標を記憶手段4に記憶する。
【0031】
このように、第3発光手段6−3のみが発光のとき、第4発光手段6−4のみが発光のとき、第5発光手段6−5のみが発光のとき、第6発光手段6−6のみが発光のときの前記各表示部におけるそれぞれの受光像の座標位置を特定する。
【0032】
そして第7発光手段6−7のみが発光した状態のときは、図8の如く第1受像カメラ3aの第1表示部No.1には受光像a−7が第2受像カメラ3bの第2表示部No.2には受光像b−7が、第3受像カメラ3cの第3表示部No.3には受光像c−7が、第4受像カメラNo.4には受光像d−7が、第5受像カメラNo.5には受光像e−7が表われ、第7発光手段6−7は図1の如く第6受像カメラ3fのみの受像角度範囲外となるので、第6表示部No.6には第7発光手段6−7の受光像が表われない。
【0033】
そして第7発光手段6−7の位置は、第1表示部No.1における受光像a−7の座標位置として、第2表示部No.2における受光像b−7の座標位置として、第3表示部No.3における受光像c−7の座標位置として、第4表示部No.4における受光像d−7の座標位置として、第5表示部No.5における受光像e−7の座標位置としてそれぞれ特定され、これらの座標が記憶手段4に記憶される。
【0034】
このようにして各発光手段毎に、各受像カメラの表示部において受光像の座標の特定ができ、作業能率が格段に向上する。
【0035】
尚、図1において各受像カメラ3の受光面から延びる両点線の間が受像角度範囲内である。
【0036】
又、静止状態の構造物の実測の物体座標系と前記表示部の画像座標系との間に成立する特定の座標変換式は求められており、該座標変換式は予め記憶手段4に記憶されている。
【0037】
このようにして各表示部における各発光手段6の受光像を特定した準備作業の終了後、操作装置10を操作して無線発信装置11より図5のPの如く「計測」の無線信号を発生すると、全ての発光手段6−1、6−2、6−3、……6−12において無線受信装置9は演算制御装置7に「計測」の信号を出力し、該演算制御装置7が図5のQの如く全ての発光手段6−1、6−2、6−3、……6−12を発光し、例えば阪神大地震の震動データに応じて振動を振動台Aに加えて構造物が倒壊していくとこれに応じて各発光手段6が移動し、これら移動する各発光手段に応じた表示手段5における受光像の移動量から、前記特定の座標変換式により実物の物体座標系の高精度の移動量を算出する。
【0038】
尚、演算制御装置7は無線受信装置9を介して無線信号を捕捉できるので、無線のシリアル信号として、「何番の発光手段を発光せよ」というコマンドで、それぞれの発光手段の発光と発光させないことを制御することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は例えば大地震などにより生ずる構造物の倒壊などの過程の解明のための計測の準備段階に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】実施例1の移動・振動計測装置のブロック線図である。
【図2】発光手段を取付けた被測定の構造物の斜視図である。
【図3】発光手段の斜視図である。
【図4】発光手段のブロック線図である。
【図5】無線発信装置及び発光手段の出力波形である。
【図6】第1発光手段の受光像が表示されている表示手段の正面図である。
【図7】第2発光手段の受光像が表示されている表示手段の正面図である。
【図8】第7発光手段の受光像が表示されている表示手段の正面図である。
【符号の説明】
【0041】
1 移動・振動計測装置
2 画像演算処理手段
3 受像手段
5 表示手段
6 発光手段
7 発光制御手段
9 無線受信装置
10 操作装置
11 無線発信装置
12 対象物
































【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動又は振動する被計測用の対象物の所定複数個所に取付けた発光手段と、これら発光手段から隔離して設置された受像手段と、該受像手段からの出力信号を入力する画像演算処理手段とからなる移動・振動計測装置において、該画像演算処理手段に接続し前記受像手段により受像した前記発光手段の受光像を表示する表示手段と、前記発光手段に接続しこれら発光手段を順次単独で発光させる発光制御手段を具備していることを特徴とする移動・振動計測装置。
【請求項2】
前記発光制御手段は、前記発光手段を順次単独で発光させる発光プログラムを記憶した記憶装置が接続されていることを特徴とする請求項1に記載の移動・振動計測装置。
【請求項3】
前記発光制御手段は、操作装置に接続した無線発信装置からの無線操作信号を受信する無線受信装置が接続されていることを特徴とする請求項1又は請求項2いずれか1に記載の移動・振動計測装置。
【請求項4】
前記各発光手段に、前記発光制御手段と前記記憶装置と前記無線受信装置をそれぞれ具備していることを特徴とする請求項3に記載の移動・振動計測装置。
































【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−71517(P2006−71517A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−256553(P2004−256553)
【出願日】平成16年9月3日(2004.9.3)
【出願人】(595135866)
【出願人】(500169737)
【出願人】(000100676)IMV株式会社 (17)
【Fターム(参考)】