説明

移動体の相対姿勢計測方法と装置

【課題】2つの移動体の相対姿勢を精度よく求めることができる手段を提供する。
【解決手段】第1の移動体3に第1の方位センサ9を設け、第2の移動体5に第2の方位センサ11を設ける。第1の方位センサ9は、第1の移動体3から見た、第1基準方向D1に対する第2の移動体5の方位θを計測する。第2の方位センサ11は、第2の移動体5から見た、第2基準方向D2に対する第1の移動体3の方位θを計測する。計測した方位θと方位θとに基づいて、第1基準方向D1と第2基準方向D2との相対関係θを、第1および第2の移動体の相対姿勢として求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1および第2の移動体の相対姿勢を計測する相対姿勢計測方法と装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の移動体が、互いに独立してエリア内を移動する場合に、複数の移動体が互いに衝突することを避ける制御や、先行する移動体に他の移動体を追従させる制御などを行うことがある。
なお、複数の移動体は、例えば、物品を搬送する移動ロボットであり、作業エリア内で自在に移動可能である。
【0003】
上述の制御を行うために、移動体の位置と姿勢を、次の方法A、BまたはCにより計測している。
【0004】
方法Aでは、移動体に、速度センサやジャイロセンサなどを設置する。速度センサによる速度計測値を時間積分して、移動体の位置を求め、ジャイロセンサによる角速度計測値を時間積分して、移動体の姿勢を求める。
【0005】
方法Bでは、移動体に、外界センサを搭載する。この外界センサにより、移動体の外部において既知の位置に存在する指標の方向と、該指標までの距離を計測する。この計測結果を、地図データと照合する。この照合に基づいて、移動体の自己位置と姿勢を求める。例えば、外界センサとして3次元レーザレーダやカメラを用いる。なお、下記の特許文献1では、宇宙機である移動体の姿勢として、当該移動体の進行方向と前記指標に相当する地球や太陽との相対関係を検出している。
【0006】
方法Cでは、移動体の外部に設置された計測機器(例えば、カメラ)により移動体を含む画像を取得し、この画像に基づいて移動体の位置と姿勢を求める。
【0007】
なお、後述する本発明の実施形態で使用可能な技術が、下記の特許文献2〜4に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第2514987号
【特許文献2】特開2009−33366号公報
【特許文献3】特開2007−3233号公報
【特許文献4】特開2011−28417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、移動体の位置と姿勢のうち、姿勢を精度よく計測することは難しい。
【0010】
上述した方法Aでは、ジャイロセンサの計測誤差が積分されることにより、移動体の姿勢の計測精度が低下する可能性がある。
【0011】
上述した方法Bでは、3次元レーザレーダやカメラにより指標を認識する必要がある。そのため、指標を設定できない場合には、移動体の姿勢を計測できない。
【0012】
上述した方法Cでは、移動体の姿勢を得るためには、計測機器により、移動体における3つの位置を互いに区別して計測する必要がある。従って、移動体と計測機器との距離が大きくなると、移動体における3つの位置を互いに区別して計測することが困難となる。
【0013】
一方、2つの移動体が互いに衝突することを避ける制御や、先行する移動体に他の移動体を追従させる制御を行う場合には、2つの移動体の相対姿勢が得られればよい。すなわち、移動体が移動するエリアに固定された静止座標系から見た各移動体の姿勢を求めることは必ずしも必要ではない。
【0014】
そこで、本発明の目的は、2つの移動体の相対姿勢を精度よく求めることができる方法と装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、本発明によると、第1および第2の移動体の相対姿勢を計測する相対姿勢計測方法であって、
(A)第1の移動体に第1の方位センサを設け、第2の移動体に第2の方位センサを設け、
(B)第1の移動体に設定された基点から、該基点と間隔をおいて第1の移動体に設定された方位点へ向かう方向を第1基準方向として、第1の方位センサは、第1の移動体から見た、第1基準方向に対する第2の移動体の方位θを計測し、
(C)第2の移動体に設定された基点から、該基点と間隔をおいて第2の移動体に設定された方位点へ向かう方向を第2基準方向として、第2の方位センサは、第2の移動体から見た、第2基準方向に対する第1の移動体の方位θを計測し、
(D)計測した方位θと方位θとに基づいて、第1基準方向と第2基準方向との相対関係を前記相対姿勢として求める、ことを特徴とする移動体の相対姿勢計測方法が提供される。
【0016】
本発明の好ましい実施形態によると、前記(B)を行う時の前記相対姿勢は、前記(C)を行う時の前記相対姿勢と同じであり、
前記(B)(C)で計測された方位θと方位θとに基づいて、第1基準方向と第2基準方向との前記相対関係を幾何学的に算出する。
【0017】
本発明の別の実施形態によると、前記(D)において、前記移動体の位置および姿勢の確率分布を、前記方位θと方位θに基づいて更新し、
更新された確率分布に基づいて、前記相対関係を推定する。
【0018】
好ましくは、前記移動体の位置および姿勢を内部状態とし、
該内部状態の初期値を設定するとともに、該内部状態の分散共分散行列の初期値を設定し、
前記(D)において、前記確率分布を用いたカルマンフィルタにより、前記(B)により得た前記方位θに基づいて前記内部状態と前記分散共分散行列を更新するとともに、前記(C)により得た前記方位θに基づいて前記内部状態と前記分散共分散行列を更新し、更新された内部状態から前記相対関係を推定し、または、更新された内部状態を前記相対関係とする。
【0019】
好ましい別の例では、前記(D)において、
第1の移動体の位置および姿勢と、第2の移動体の位置および姿勢とを1つのサンプルとして、第1および第2の移動体が取り得るサンプルを多数生成し、
前記方位θと方位θの一方に基づいて、各サンプルが実際に存在する確率を更新し、更新した当該確率がしきい値以上となるサンプルを、前記多数のサンプルから抽出し、
前記抽出した各サンプルについて、前記方位θと方位θの他方を計測した時における第1および第2の移動体の相対位置と相対姿勢を、各移動体の運動モデルに基づいて予測し、
前記方位θと方位θの他方と、前記予測した第1および第2の移動体の相対位置と相対姿勢とに基づいて、前記抽出された各サンプルが実際に存在する確率を更新し、更新した当該確率がしきい値以上となるサンプルを、前記抽出されたサンプルから抽出し、
当該抽出したサンプルに基づいて、前記相対関係を推定する。
【0020】
また、上記目的を達成するため、本発明によると、第1および第2の移動体の相対姿勢を計測する相対姿勢計測装置であって、
第1の移動体に設けられる第1の方位センサと、第2の移動体に設けられる第2の方位センサと、を備え、
第1の移動体に設定された基点から、該基点と間隔をおいて第1の移動体に設定された方位点へ向かう方向を第1基準方向として、第1の方位センサは、第1の移動体から見た、第1基準方向に対する第2の移動体の方位θを計測し、
第2の移動体に設定された基点から、該基点と間隔をおいて第2の移動体に設定された方位点へ向かう方向を第2基準方向として、第2の方位センサは、第2の移動体から見た、第2基準方向に対する第1の移動体の方位θを計測し、
計測した方位θと方位θとに基づいて、第1基準方向と第2基準方向との相対関係を前記相対姿勢として求める演算部をさらに備える、ことを特徴とする移動体の相対姿勢計測装置が提供される。
【発明の効果】
【0021】
上述した本発明によると、第1の移動体に第1の方位センサを設け、第2の移動体に第2の方位センサを設け、第1の方位センサは、第1の移動体から見た、第1基準方向に対する第2の移動体の方位θを計測し、第2の方位センサは、第2の移動体から見た、第2基準方向に対する第1の移動体の方位θを計測し、計測した方位θと方位θとに基づいて、第1基準方向と第2基準方向との相対関係を前記相対姿勢として求める。
この方法では、第1の方位センサは、第2の移動体の方位を認識できればよく、第2の移動体における3つの位置を互いに区別して計測する必要がない。第2の方位センサも同様である。
よって、第1の移動体と第2の移動体との距離が大きくても、相対姿勢を高精度に求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態による相対姿勢計測装置を示す。
【図2】(A)は、第1の移動体に固定した2次元座標系を示し、(B)は、第2の移動体に固定した2次元座標系を示す。
【図3】本発明の実施形態による相対姿勢計測方法を示すフローチャートである。
【図4】第1の移動体に固定された3次元座標系Aと、第2の移動体に固定された3次元座標系Bを示す。
【図5】(A)は、第1の方位センサが計測する方位θ1z、θ1xyを示し、(B)は、第2の方位センサが計測する方位θ2z、θ2xyを示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の好ましい実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0024】
図1は、本発明の実施形態による相対姿勢計測装置10の構成図である。相対姿勢計測装置10は、第1の移動体3に対する第2の移動体5の相対姿勢を計測する。
図1の例では、第1および第2の移動体3、5は、路面を走行するものであり、図1は、各移動体3、5を上方から見た平面図である。なお、図1において、各移動体3、5の位置を検出する位置検出装置7(3次元レーザレーダ)が、移動体3、5以外の固定位置に設けられている。
【0025】
相対姿勢計測装置10は、第1の方位センサ9と第2の方位センサ11と演算部13とを備える。
【0026】
第1の方位センサ9は、第1の移動体3に設けられる。第1の方位センサ9は、第1の移動体3から見た、第1基準方向D1に対する第2の移動体5の方位θを計測する。ここで、第1基準方向D1とは、第1の移動体3に設定された基点P1から、該基点P1と間隔をおいて第1の移動体3に設定された方位点P2へ向かう方向である。好ましくは、第1基準方向D1は、第1の移動体3の前後方向であって、第1の移動体3の後方から前方へ向かう方向である。ただし、第1基準方向D1は、第1の移動体3の前後方向から既知の角度だけ傾いた方向であってもよい。
【0027】
第1の方位センサ9は、例えば、次のように、カメラと画像処理装置とにより構成されている。カメラは、第1基準方向D1を向くように、または、第1基準方向D1に対して既知の角度だけ傾いた方向を向くように第1の移動体3に設置される。画像処理装置は、カメラにより撮像した画像において、その中心位置と第2の移動体5との位置関係に基づいて、第2の移動体5が位置する方位θを求める。この時、画像処理装置は、第2の移動体5に設けられた指標を、前記画像内において第2の移動体5の位置として特定してよい。なお、好ましくは、第1の移動体3から見てすべての方向の画像が得られるように、全方向の視野を有する1つのカメラを第1の移動体3に設置するか、もしくは、異なる方向を向く複数のカメラを第1の移動体3に設置するのがよい。
【0028】
ここで、θは、例えば、第1の移動体3に固定された2次元座標系Aで表現されてよい。例えば、2次元座標系Aは、図2(A)に示すように、その原点が基点P1であり、互いに直交するx軸とy軸を有する。このx軸は、水平方向を向き、第1基準方向D1に相当する。すなわち、x軸上に方位点P2が存在する。y軸は、x軸と直交する水平方向を向く。
θは、図2(A)において、第1基準方向D1(x軸)に対する角度であり、基点P1を中心に、反時計回りにずれた方位を正の値とし、基点P1を中心に、時計回りにずれた方位を負の値として、その最大絶対値がπ(ラジアン)になるようにする。
【0029】
第2の方位センサ11は、第2の移動体5に設けられる。第2の方位センサ11は、第2の移動体5から見た、第2基準方向D2に対する第1の移動体3の方位θを計測する。ここで、第2基準方向D2とは、第2の移動体5に設定された基点P3から、該基点P3と間隔をおいて第2の移動体5に設定された方位点P4へ向かう方向である。好ましくは、第2基準方向D2は、第2の移動体5の前後方向であって、第2の移動体5の後方から前方へ向かう方向である。ただし、第2基準方向D2は、第2の移動体5の前後方向から既知の角度だけ傾いた方向であってもよい。
【0030】
第2の方位センサ11は、例えば、次のように、カメラと画像処理装置とにより構成されている。カメラは、第2基準方向D2を向くように、または、第2基準方向D2に対して既知の角度だけ傾いた方向を向くように第2の移動体5に設置される。画像処理装置は、カメラにより撮像した画像において、その中心位置と第1の移動体3との位置関係に基づいて、第1の移動体3が位置する方位θを求める。この時、画像処理装置は、第1の移動体3に設けられた指標を、前記画像内において第1の移動体3の位置として特定してよい。なお、好ましくは、第2の移動体5から見てすべての方位の画像が得られるように、全方向の視野を有する1つのカメラを第2の移動体5に設置するか、もしくは、異なる方向を向く複数のカメラを第2の移動体5に設置するのがよい。
【0031】
ここで、θは、例えば、第2の移動体5に固定された2次元座標系Bで表現されてよい。例えば、2次元座標系Bは、図2(B)に示すように、その原点が基点P3であり、互いに直交するx軸とy軸を有する。このx軸は、水平方向を向き、第2基準方向D2に相当する。すなわち、x軸上に方位点P4が存在する。y軸は、x軸と直交する水平方向を向く。
θは、図2(B)において、第2基準方向D2(x軸)に対する角度であり、基点P3を中心に、反時計回りにずれた方位を正の値とし、基点P3を中心に、時計回りにずれた方位を負の値として、その最大絶対値がπ(ラジアン)になるようにする。
【0032】
各移動体3、5に設ける上述の指標として、例えば、次のものを用いてよい。
一例では、指標は、特許文献2のように、特定のパターンで輝度が変化する発光ダイオードである。この場合、方位センサ9、11は、カメラを用いて、短い設定時間にわたる動画を画像として撮像し、画像処理装置を用いて、画像において、特定のパターンで輝度が変化する画素の位置を、指標の位置として特定する。
別の例では、指標は、特許文献3、4に記載されたような幾何学的模様である。この場合、方位センサ9、11の画像処理装置は、幾何学的模様と同じ模様を予め記憶しており、カメラを用いて得た画像において、予め記憶した当該模様と同じ模様の部分を、指標の位置として特定する。
【0033】
上述の指標は、第1および第2の移動体3、5の外面(例えば、外周面)に、間隔をおいて取り付けられていてよい。
【0034】
演算部13は、第1の方位センサ9が計測した方位θと、第1の方位センサ9が計測した方位θとに基づいて、第1基準方向D1と第2基準方向D2との相対関係を求める。求めた相対関係が、第1の移動体3に対する第2の移動体5の相対姿勢となる。相対関係は、例えば、図1のように、第1基準方向D1と第2基準方向D2とのなす角度θで表わされる。このなす角度θは、第1基準方向D1、または、この方向D1に平行な方向と、第2基準方向D2、または、この方向D2に平行な方向とのなす角度を意味する。
【0035】
図3は、上述した相対姿勢計測装置10を用いた相対姿勢計測方法を示すフローチャートである。
【0036】
ステップS1において、第1の移動体3に第1の方位センサ9を設け、第2の移動体5に第2の方位センサ11を設ける。
ステップS2において、第1の方位センサ9は、第1の移動体3から見た、第1基準方向D1に対する第2の移動体5の方位θを計測する。
ステップS3において、第2の方位センサ11は、第2の移動体5から見た、第2基準方向D2に対する第1の移動体3の方位θを計測する。
ステップS4において、演算部13は、計測した方位θと方位θとに基づいて、第1基準方向と第2基準方向との相対関係を前記相対姿勢として求める。
なお、ステップS2、S3は、移動体3、5が移動している時に行われてよい。
【0037】
以下、ステップS4で行われる演算部13による演算方法1、2を詳しく説明する。
【0038】
[演算方法1]
演算方法1は、ステップS2を行う時の前記相対姿勢が、ステップS3を行う時の前記相対姿勢と同じである場合に採用される。このような場合としては、ステップS2を行う時とステップS3を行う時との間で、第1および第2の移動体3、5の姿勢と位置が変化していない場合がある。演算方法1を行う他の場合として、ステップS2とステップS3を同じ時刻に行う場合がある。
【0039】
演算部13は、ステップS2とステップS3でそれぞれ計測した方位θと方位θとに基づいて、第1基準方向D1と第2基準方向D2との相対関係(なす角度θ)を幾何学的演算により算出する。ここでは、上述の図2のように、方位θ、θは、上述の2次元座標系A、Bで表現できるものとする。なお、図1において、D1pは、第1基準方向と平行であって基点P3を通る直線である。
演算部13は、方位θと方位θに基づいて、第1基準方向D1と第2基準方向D2とのなす角度をθを、次の式(1)により求める。なお、この式(1)において、θとθとθの単位はラジアンである。

θ=θ−θ−π ・・・(1)

【0040】
上述では、第1および第2の移動体3、5が、2次元平面である路面を移動する場合について説明したので、ここでは、方位θ、θは、2次元座標系A、Bで表わした。しかし、第1および第2の移動体3、5が、3次元空間内を移動する場合には、演算部13は、3次元座標系で表わされた方位θ、θに基づいて、第1基準方向D1と第2基準方向D2とのなす角度を次のように求める。
【0041】
図4は、移動体3、5が移動する空間において、これらの移動体3、5にそれぞれ固定された3次元座標系A、Bを示す。各3次元座標系A,Bは、互いに直交するx軸とy軸とz軸を有する。上述の第1基準方向D1は、3次元座標系Aのx軸に一致し、上述の第2基準方向D2は、3次元座標系Bのx軸に一致する。
【0042】
図4において、第1の方位センサ9は、上述の方位θとして方位θ1zとθ1xyを計測し、第2の方位センサ11は、上述の方位θとして方位θ2zとθ2xyを計測する。なお、図4において、P1xyは、3次元座標系Aの原点P1を3次元座標系Bのx−y平面に正射影した点であり、P3xyは、3次元座標系Bの原点P3を3次元座標系Aのx−y平面に正射影した点である。
【0043】
また、第1基準方向D1をベクトルvで表わし、第1基準方向D2をベクトルvで表わし、Rを回転行列として、

=R

が成り立つとする。この場合、第1基準方向D1と第2基準方向D2との相対関係は、上記のRで表わすことができる。ここで、Rは、例えば、

=R1z(π)R1z(-θ1z)R1xy(θ1xy)R2xy(θ2xy)R2z(θ2z

で表わされる。
2z(θ2z)は、空間上の各点を、3次元座標系Bのz軸回りに、θ2zだけ回転させる行列である。R2xy(θ2xy)は、3次元座標系BをR2z(θ2z)により回転させた座標系B1のy軸回りに、空間上の各点を、θ2xyだけ回転させる行列である。R1xy(θ1xy)は、3次元座標系Aのz軸回りに、座標系Aをθ1zだけ回転させた座標系A1のy軸回りに、空間上の各点を、θ1xyだけ回転させる行列である。R1z(−θ1z)は、3次元座標系Aのz軸回りに、空間上の各点を、−θ1zだけ回転させる行列である。R1z(π)は、空間上の各点を、3次元座標系Aのz軸回りに、π(ラジアン)だけ回転させる行列である。なお、各回転角θは、大きさを表しており、θは、各軸の正の方向から見て反時計回りの回転を示し、−θは、各軸の正の方向から見て時計回りの回転を示している。
【0044】
[演算方法2]
演算方法2は、第1の方位センサ9と第2の方位センサ11が、異なる時刻に、または、同じ時刻に、上述した方位θ1と方位θ2を計測する場合に採用される。
この場合、演算部13は、ベイズフィルタ(ベイズの定理)を用いて、前記相対関係を推定する。すなわち、演算部13は、前記移動体の位置および姿勢の確率分布を、前記方位θと方位θに基づいて更新し、更新された確率分布に基づいて、前記相対関係を推定する。なお、ベイズフィルタを用いる場合に、前記相対関係が一意に求められないときにも、確からしい前記相対関係を、確率分布を利用して求めることができる。この確率分布を絞り込むために、他の計測手段により、第1および第2の移動体3、5の位置や姿勢を計測し、これらの計測値をさらに用いてもよい。
【0045】
以下、ベイズフィルタとして、カルマンフィルタとパーティクルフィルタを用いた例を順に説明する。
【0046】
(カルマンフィルタ)
ベイズフィルタとしてカルマンフィルタを用いる場合には、次のようにする。
【0047】
まず、前記移動体の位置および姿勢を内部状態とする。例えば、第1の移動体3に設定された前記基点P1と前記方位点P2に対して静止している座標系における第2の移動体5の位置と姿勢を内部状態とする。すなわち、ここでの例では、内部状態は、第1の移動体3に対する第2の移動体5の相対位置と相対姿勢である。
演算部13は、前記確率分布を用いたカルマンフィルタにより、第1の方位センサ9が計測した前記方位θに基づいて内部状態と該内部状態の分散共分散行列を更新するとともに、第2の方位センサ11が計測した前記方位θに基づいて内部状態とその分散共分散行列を更新し、更新された内部状態(相対姿勢)から前記相対関係を推定し、または、以下で詳しく説明する具体例のように、更新された内部状態を前記相対関係とする。なお、カルマンフィルタを用いる場合には、前記確率分布は、内部状態と分散共分散行列で表わされる。
【0048】
なお、分散共分散行列が示す内部状態の確からしさが、しきい値以上になるまで、方位θと方位θの計測を繰り返すのがよい。この場合、演算部13は、方位θが計測される度に、カルマンフィルタにより、当該方位θに基づいて内部状態とその分散共分散行列を更新するとともに、方位θが計測される度に、カルマンフィルタにより、当該方位θに基づいて内部状態とその分散共分散行列を更新する。分散共分散行列が示す内部状態の確からしさが、しきい値以上になったら、演算部13は、最新の内部状態から前記相対関係を推定し、または、更新された内部状態を前記相対関係とする。
【0049】
以下において、カルマンフィルタを用いた場合の具体例を説明する。
【0050】
まず、次の[数1]で示すように、内部状態Xを定義するとともに、内部状態Xの初期値と、内部状態Xの初期分散共分散行列CovXを定義しておく。
【0051】
【数1】

【0052】
[数1]において、x、y、zは、現在において、第1の移動体3から見た第2の移動体5の相対位置を示す。すなわち、x、y、zは、それぞれ、第1の移動体3に固定された3次元座標系Aにおける互いに直交するx軸とy軸とz軸の座標値である。この3次元座標系Aのx軸は、第1基準方向D1に相当する。すなわち、この3次元座標系Aの原点が基点P1であり、x軸上に方位点P2が存在する。
[数1]において、r、r、rは、現在において、第1の移動体3から見た第2の移動体5の姿勢を示す角度(ラジアン)である。すなわち、3次元座標系Aにおいて、第2の移動体5を、x軸と平行であり第2の移動体5(例えば、基点P3)を通る軸回りにその基準姿勢からrだけ回転させ、次に、y軸と平行であり第2の移動体5(基点P3)を通る軸回りにrだけ回転させ、最後に、z軸と平行であり第2の移動体5(基点P3)を通る軸回りにrだけ回転させると、第1の移動体3から見た現在における第2の移動体5の姿勢となる。基準姿勢とは、例えば、第2基準方向D2の向きが第1基準方向D1の向きと同じ(平行)になっている第2の移動体5の姿勢である。なお、本発明によると、回転させる順序を変えたり、別のオイラー角表現や回転行列などにより、第1の移動体3から見た第2の移動体5の姿勢を表してもよい。この場合、後述の式(20)も変更する。
【0053】
この例では、θとして、第1の方位センサ9は、θ1zとθ1xyとを計測する。
θ1zは、図5(A)に示すように、前記3次元座標系Aにおいて、z軸回りの周方向に関して、第1の移動体3から見て、第1基準方向D1(x軸)に対して、第2の移動体5が存在する方位(ラジアン)である。すなわち、θ1zは、前記3次元座標系Aにおいて、第2の移動体5の基点P3をx−y平面に正射影した点P3xyと3次元座標系Aの原点(上述の基点P1)とを結ぶ線分の、第1基準方向D1(x軸)に対する方位である。
θ1xyは、図5(A)に示すように、前記3次元座標系Aにおいて、第2の移動体5の基点P3と前記3次元座標系Aの原点(上述の基点P1)とを結ぶ線分が、x−y平面となす角度(ラジアン)である。
【0054】
θ1zが計測されたら、演算部13は、次の式(2)(3)により、XとCovXを更新する。なお、 CovXは、Xの分散共分散行列を示す(以下同様)。

=X−K(Y−θ1z) ・・・(2)

CovX=(I−K)・CovX ・・・(3)

【0055】
ここで、式(2)において、左辺のXは、当該式により更新されたXであり、右辺のXは、当該式によりXを更新する直前のXである。また、式(3)において、左辺のCovXは、当該式により更新されたCovXであり、右辺のCovXは、当該式によりCovXを更新する直前のCovXである。また、式(3)において、Iは、単位行列を示す。
【0056】
は、カルマンゲインであり、次の式(4)で表わされる。

=CovX・B・V−1 ・・・(4)

は、次の[数2]の式(5)で表わされる偏微分行列であり、その上付き文字「T」は転置行列を示す。
【数2】

上式(4)のVは、次の式で表わされ、その上付き数字「-1」は逆行列を示す。


=B・CovX・B+R ・・・(6)

ここで、Rは、方位の計測誤差として想定される分散値である(以下同様)。
【0057】
上式(2)のYは、次の式で表わされる。

=g(X)=tan−1(y/x) ・・・(7)

【0058】
θ1xyが計測されたら、演算部13は、次の式(8)(9)により、XとCovXを更新する。

=X−K(Y−θ1xy) ・・・(8)

CovX=(I−K)・CovX ・・・(9)

【0059】
ここで、式(8)において、左辺のXは、当該式により更新されたXであり、右辺のXは、当該式によりXを更新する直前のXである。また、式(9)において、左辺のCovXは、当該式により更新されたXであり、右辺のCovXは、当該式によりCovXを更新する直前のCovXである。また、式(9)において、Iは、単位行列を示す。
【0060】
は、カルマンゲインであり、次の式(10)で表わされる。

=CovX・B・V−1 ・・・(10)

は、次の[数3]の式(11)で表わされる偏微分行列である。
【数3】

上式(10)のVは、次の式(12)で表わされる。

=B・CovX・B+R ・・・(12)

【0061】
上式(8)のYは、次の[数4]の式(13)で表わされる。

【数4】

【0062】
この例では、θとして、第2の方位センサ11は、θ2zとθ2xyとを計測する。
θ2zは、図5(B)に示すように、互いに直交するx軸、y軸、z軸を有し第2の移動体5に固定された3次元座標系Bにおいて、z軸回りの周方向に関して、第2の移動体5から見て、第2基準方向D2(x軸)に対して、第1の移動体3が存在する方位(ラジアン)である。すなわち、θ2zは、3次元座標系Bにおいて、第1の移動体3の基点P1をx−y平面に正射影した点P1xyと3次元座標系Bの原点(上述の基点P3)とを結ぶ線分の、第2基準方向D2(x軸)に対する方位である。
θ2xyは、図5(B)に示すように、前記3次元座標系Bにおいて、第1の移動体3の基点P1と前記3次元座標系Bの原点(上述の基点P3)とを結ぶ線分が、x−y平面となす角度(ラジアン)である。
【0063】
θ2zが計測されたら、演算部13は、次の式(14)(15)により、XとCovXを更新する。

=X−K(Y−θ2z) ・・・(14)

CovX=(I−K)・CovX ・・・(15)

【0064】
ここで、式(14)において、左辺のXは、当該式により更新されたXであり、右辺のXは、当該式によりXを更新する直前のXである。また、式(15)において、左辺のCovXは、当該式により更新されたCovXであり、右辺のCovXは、当該式によりCovXを更新する直前のCovXである。また、式(15)において、Iは、単位行列を示す。
【0065】
は、カルマンゲインであり、次の式(16)で表わされる。

=CovX・B・V−1 ・・・(16)

は、次の[数5]の式(17)で表わされる偏微分行列である。
【数5】

上式(16)のVは、次の式(18)で表わされる。

=B・CovX・B+R ・・・(18)

【0066】
上式(14)のYは、次の式(19)で表わされる。

=g(X)=tan−1(y/x) ・・・(19)

ここで、xとyは、それぞれ、3次元座標系Bにおけるx軸の座標値とy軸の座標値である。そのため、xとyは、次の[数6]の式(20)により、第1の移動体3に固定された3次元座標系Aの座標値x、y、zで表わされる。
【数6】

なお、この式(20)において、cとsは、それぞれ、余弦関数(cos)と正弦関数(sin)を表わす。また、この式(20)において、zは、3次元座標系Bにおけるz軸の座標値である。
【0067】
θ2xyが計測されたら、演算部13は、次の式(21)(22)により、XとCovXを更新する。

=X−K(Y−θ2xy) ・・・(21)

CovX=(I−K)・CovX ・・・(22)

【0068】
ここで、式(21)において、左辺のXは、当該式により更新されたXであり、右辺のXは、当該式によりXを更新する直前のXである。また、式(22)において、左辺のCovXは、当該式により更新されたCovXであり、右辺のCovXは、当該式によりCovXを更新する直前のCovXである。また、式(22)において、Iは、単位行列を示す。
【0069】
は、カルマンゲインであり、次の式(23)で表わされる。

=CovX・B・V−1 ・・・(23)

は、次の[数7]の式(24)で表わされる偏微分行列である。
【数7】

上式(23)のVは、次の式(25)で表わされる。

=B・CovX・B+R ・・・(25)

【0070】
上式(21)のYは、次の[数8]の式(26)で表わされる。
【数8】

この式におけるxとyとzは、それぞれ、3次元座標系Bにおけるx軸の座標値とy軸の座標値とz軸の座標であり、上述した[数6]の式(20)により、第1の移動体3に固定された3次元座標系Aの座標値x、y、zで表わされる。
【0071】
上述のように更新された内部状態を、前記相対関係(前記相対姿勢)とする。すなわち、更新された内部状態Xのr、r、rを前記相対関係とする。
【0072】
上述の具体例では、3次元座標系Aと3次元座標系Bをそれぞれ第1および第2の移動体3、5に固定していたが、任意の座標系を用いてよい。例えば、静止座標系を用いてもよい。この静止座標系に対して、第1および第2の移動体3、5は移動し姿勢を変更する。この場合、内部状態は、12の変数からなる。12の変数は、第1の移動体3の位置を示す3つの変数と、第1の移動体3の姿勢を示す3つの変数と、第2の移動体5の位置を示す3つの変数と、第2の移動体5の姿勢を示す3つの変数とからなる。そこで、好ましくは、上述の第1および第2の方位センサ9、11が計測した方位に加えて、第1および第2の移動体3、5間の距離の計測値や、静止座標系における移動体3、5の位置の計測値を用いて、カルマンフィルタにより内部状態を更新する。更新された内部状態から前記相対関係を推定する。ただし、移動体3、5間の距離の計測値と、移動体3、5の位置の計測値の一方または両方が得られなくても、カルマンフィルタにより内部状態を更新し、更新された内部状態から前記相対関係を推定できる。
【0073】
(パーティクルフィルタ)
ベイズフィルタとしてパーティクルフィルタを用いる場合には、次のようにする。
【0074】
(a)まず、第1の移動体3の位置および姿勢と、第2の移動体5の位置および姿勢とを1つのサンプルとして、演算部13は、第1および第2の移動体3、5が取り得るサンプルを多数生成する。これらのサンプルは、第1および第2の移動体3、5が移動する空間の座標系で表わされてよい。すなわち、この座標系に対して、第1および第2の移動体3、5が移動する。これらのサンプルは、前記方位θと方位θの一方を計測した時刻のものである。
(b)演算部13は、多数のサンプルから前記方位θと方位θの一方に適合するサンプルを抽出する。すなわち、演算部13は、前記方位θと方位θの一方に基づいて、各サンプルが実際に存在する確率を前記確率分布として取得(更新)し、当該確率に基づいて、多数のサンプルから、当該確率がしきい値以上となるサンプルを抽出する。この確率は、前記方位θと方位θの一方に適合する度合いが高いほど、各サンプルが実際に存在する確率が高いものであってもよいし、前記方位θと方位θの一方に適合するサンプルでは1であり、そうでないサンプルでは0であってもよい。
(c)次に、演算部13は、前記(b)の処理で抽出した各サンプルについて、前記方位θと方位θの他方を計測した時における第1および第2の移動体3、5の相対位置と相対姿勢を、各移動体3、5の運動モデルに基づいて予測する。すなわち、前記(b)の処理で抽出した各サンプルについて、当該サンプルである第1および第2の移動体3、5の位置および姿勢が、方位θと方位θの他方を計測した時にとっていた値を、各移動体3、5の運動モデルに基づいて求め、求めた当該値により、当該他方を計測した時における第1および第2の移動体3、5の相対位置と相対姿勢を予測する。
(d)さらに、演算部13は、前記(b)の処理で抽出したサンプルから前記方位θと方位θの他方に適合するサンプルを抽出する。すなわち、演算部13は、前記方位θと方位θの他方と、予測した第1および第2の移動体3、5の相対位置と相対姿勢とに基づいて、前記抽出した各サンプルが実際に存在する確率を更新し、当該更新した確率に基づいて、前記抽出したサンプルから、当該確率がしきい値以上となるサンプルを抽出する。この確率は、前記方位θと方位θの他方との適合度が高いサンプルほど、高くなるものであってもよいし、前記方位θと方位θの他方に適合するサンプルでは1であり、そうでないサンプルでは0であってもよい。
(e)その後、演算部13は、前記(d)で抽出したサンプルに基づいて、前記相対関係を推定する。当該サンプルの全ては、第1の移動体3に対する第2の移動体5の相対姿勢が等しいものとなっていると考えられる。
【0075】
方位θと方位θの一方を計測する時刻またはその直後に、第1および第2の移動体3、5間の距離を計測し、演算部13は、前記(b)の処理において、当該距離に適合するサンプルを選択しておき、選択されたサンプルの中から、前記方位θと方位θの一方に適合するサンプルを抽出してもよい。
同様に、方位θと方位θの他方を計測する時刻またはその直後に、第1および第2の移動体3、5間の距離を計測し、演算部13は、前記(d)の処理において、予測した第1および第2の移動体3、5の前記相対位置に基づいて当該距離に適合するサンプルを選択しておき、選択されたサンプルの中から、前記方位θと方位θの他方に適合するサンプルを抽出してもよい。
なお、第1および第2の移動体3、5間の距離は、例えば、第1または第2の移動体3、5に設置されたレーザ距離計により計測してよい。このレーザ距離計は、この測定時刻またはその直前に得られた方位θと方位θに相当する方位において、第1および第2の移動体3、5間の距離を計測してよい。
【0076】
また、前記(b)の処理において、演算部13は、前記(b)で抽出したサンプルに近いサンプルを新たに生成してもよい。すなわち、演算部13は、抽出したサンプルと、移動体3、5の位置と姿勢が近いサンプルを新たに生成してもよい。この場合、前記(c)の処理では、演算部13は、前記新たに生成した各サンプルについても、前記方位θと方位θの他方を計測した時における第1および第2の移動体3、5の相対位置と相対姿勢を、各移動体3、5の運動モデルに基づいて予測する。さらに、前記(d)の処理では、演算部13は、前記新たに生成した各サンプルと前記(b)で抽出したサンプルとについて予測した相対位置と相対姿勢に基づいて、上述と同様に、前記新たに生成した各サンプルと前記(b)で抽出したサンプルから、前記方位θと方位θの他方に適合するサンプルを抽出する。
【0077】
方位θと方位θを繰り返し計測し、方位θと方位θを計測する度に、前記(a)を省略して、当該方位θと方位θについて前記(b)(c)(d)の処理を行ってもよい。この場合、方位θと方位θが再び計測されたら、直前の前記(d)で抽出されたサンプルについて、当該方位θと方位θの一方を計測した時における第1および第2の移動体3、5の相対位置と相対姿勢を、各移動体3、5の運動モデルに基づいて予測する。次いで、再度の前記(b)において、これらの予測した相対位置と相対姿勢に基づいて、上述と同様に、直前の前記(d)で抽出されたサンプルから前記方位θと方位θの一方に適合するサンプルを抽出する。その後、上述と同様に、前記(c)(d)の処理を行う。なお、前記(e)の処理では、最後に行った前記(d)の処理で抽出されたサンプルに基づいて、前記相対関係を求める。
【0078】
[移動体の制御]
次に、各移動体の移動制御について説明する。
【0079】
移動体3、5毎に制御装置が設けられ、該制御装置は、対応する移動体3または5の位置に基づいて、該移動装置が目標位置へ移動するように、該移動体の移動速度と移動方向を制御する。
前記制御装置は、対応する移動体3または5に設置されてよい。移動体3、5は、例えば、走行車輪や歩行脚により路面上を移動する移動装置、空中を移動する飛行体、または、宇宙空間を移動する宇宙機である。
【0080】
このような制御を行うために、移動体3、5が移動する空間に固定された静止座標系における移動体3、5の、位置を検出する位置検出装置7が設けられる。この位置検出装置7は、適宜の手段で構成されてよいが、図1の例のように、移動体3、5が移動する空間に設置された3次元レーザレーダまたはカメラであってよい。
各移動体3、5の前記制御装置は、位置検出装置7により検出した移動体3、5の位置と、相対姿勢計測装置10により求めた相対姿勢に基づいて、対応する移動体3または5の移動速度と移動方向を制御する。
【0081】
このような移動体の制御方法として、例えば、次の制御方法1、2を採用できる。
【0082】
(制御方法1)
第2の移動体5に第1の移動体3を追従させる場合には、次のように制御を行う。第1の移動体3の前記制御装置は、位置検出装置7により検出した各移動体3、5の位置から第1の移動体3に対する第2の移動体5の相対位置を求め、この相対位置と、相対姿勢計測装置10により求めた相対姿勢に基づいて、第2の移動体5に第1の移動体3が追従して移動するように第1の移動体3の移動速度と移動方向を制御する。一方、第2の移動体5の前記制御装置は、位置検出装置7により検出した第2の移動体5の、位置に基づいて、第2の移動体5が目標位置へ移動するように、第2の移動体5の移動速度と移動方向を制御する。
この場合、相対姿勢計測装置10の演算部13は、第1の移動体3に設置されてよく、第2の方位センサ11が計測した前記方位θを第2の方位センサ11から無線により受け、求めた相対姿勢を、第1の移動体3の前記制御装置に出力する。
【0083】
(制御方法2)
第1の移動体3と第2の移動体5の衝突を避ける場合には、次のように制御を行う。第1の移動体3の前記制御装置は、位置検出装置7により検出した各移動体3、5の位置から第1の移動体3に対する第2の移動体5の相対位置を求め、この相対位置と、相対姿勢計測装置10により求めた相対姿勢に基づいて、第1および第2の移動体3、5が互いに衝突しないように第1の移動体3の移動を制御する。例えば、第1の移動体3の前記制御装置は、前記相対位置と相対姿勢に基づいて、第1および第2の移動装置が互いに衝突する可能性があるかを判断し、この可能性があると判断した場合には、この衝突を避けるように第1の移動体3の移動速度と移動方向の一方または両方を制御する。
この場合、相対姿勢計測装置10の演算部13は、第1の移動体3に設置されてよく、第2の方位センサ11が計測した前記方位θを第2の方位センサ11から無線により受け、求めた相対姿勢を、第1の移動体3の前記制御装置に出力する。
【0084】
本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得ることは勿論である。
【0085】
上述の実施形態では、各方位センサ9、11は、カメラと画像処理装置により構成されたが、他の手段で構成されてもよい。例えば、各方位センサ9、11は、レーザレーダにより構成されてもよい。
【符号の説明】
【0086】
3 第1の移動体、5 第2の移動体、7 位置検出装置、9 第1の方位センサ、11 第2の方位センサ、13 演算部、10 相対姿勢計測装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1および第2の移動体の相対姿勢を計測する相対姿勢計測方法であって、
(A)第1の移動体に第1の方位センサを設け、第2の移動体に第2の方位センサを設け、
(B)第1の移動体に設定された基点から、該基点と間隔をおいて第1の移動体に設定された方位点へ向かう方向を第1基準方向として、第1の方位センサは、第1の移動体から見た、第1基準方向に対する第2の移動体の方位θを計測し、
(C)第2の移動体に設定された基点から、該基点と間隔をおいて第2の移動体に設定された方位点へ向かう方向を第2基準方向として、第2の方位センサは、第2の移動体から見た、第2基準方向に対する第1の移動体の方位θを計測し、
(D)計測した方位θと方位θとに基づいて、第1基準方向と第2基準方向との相対関係を前記相対姿勢として求める、ことを特徴とする移動体の相対姿勢計測方法。
【請求項2】
前記(D)において、前記移動体の位置および姿勢の確率分布を、前記方位θと方位θに基づいて更新し、
更新された確率分布に基づいて、前記相対関係を推定する、ことを特徴とする請求項1に記載の移動体の相対姿勢計測方法。
【請求項3】
前記移動体の位置および姿勢を内部状態とし、
該内部状態の初期値を設定するとともに、該内部状態の分散共分散行列の初期値を設定し、
前記(D)において、前記確率分布を用いたカルマンフィルタにより、前記(B)により得た前記方位θに基づいて前記内部状態と前記分散共分散行列を更新するとともに、前記(C)により得た前記方位θに基づいて前記内部状態と前記分散共分散行列を更新し、更新された内部状態から前記相対関係を推定し、または、更新された内部状態を前記相対関係とする、ことを特徴とする請求項2に記載の移動体の相対姿勢計測方法。
【請求項4】
前記(D)において、
第1の移動体の位置および姿勢と、第2の移動体の位置および姿勢とを1つのサンプルとして、第1および第2の移動体が取り得るサンプルを多数生成し、
前記方位θと方位θの一方に基づいて、各サンプルが実際に存在する確率を更新し、更新した当該確率がしきい値以上となるサンプルを、前記多数のサンプルから抽出し、
前記抽出した各サンプルについて、前記方位θと方位θの他方を計測した時における第1および第2の移動体の相対位置と相対姿勢を、各移動体の運動モデルに基づいて予測し、
前記方位θと方位θの他方と、前記予測した第1および第2の移動体の相対位置と相対姿勢とに基づいて、前記抽出された各サンプルが実際に存在する確率を更新し、更新した当該確率がしきい値以上となるサンプルを、前記抽出されたサンプルから抽出し、
当該抽出したサンプルに基づいて、前記相対関係を推定する、ことを特徴とする請求項2に記載の移動体の相対姿勢計測方法。
【請求項5】
第1および第2の移動体の相対姿勢を計測する相対姿勢計測装置であって、
第1の移動体に設けられる第1の方位センサと、第2の移動体に設けられる第2の方位センサと、を備え、
第1の移動体に設定された基点から、該基点と間隔をおいて第1の移動体に設定された方位点へ向かう方向を第1基準方向として、第1の方位センサは、第1の移動体から見た、第1基準方向に対する第2の移動体の方位θを計測し、
第2の移動体に設定された基点から、該基点と間隔をおいて第2の移動体に設定された方位点へ向かう方向を第2基準方向として、第2の方位センサは、第2の移動体から見た、第2基準方向に対する第1の移動体の方位θを計測し、
計測した方位θと方位θとに基づいて、第1基準方向と第2基準方向との相対関係を前記相対姿勢として求める演算部をさらに備える、ことを特徴とする移動体の相対姿勢計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−61307(P2013−61307A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201458(P2011−201458)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)