説明

移動体の軌道の概算方法および概算用システム

本発明のハイブリッドシミュレーションの方法は、移動体が取り付けられた運動シミュレータおよび移動体の到達予定の目標を表すターゲットに運動指令を提供するシミュレーションツールを用い、この移動体の第1の指定目標のオーバーシュートまたは変更を表す事象を検出した後に、この方法は、トランジション運動指令に応じて運動シミュレータによって実行された位置と所定の第1の設定ポイントの位置とを比較して、第1の設定ポイントの位置に実質的に等しい位置が検出された場合には第1マーカーを起動すること、トランジション運動指令に応じてターゲットによって実行された位置と所定の第2の設定ポイントの位置とを比較して、第2の設定ポイントの位置に実質的に等しい位置が検出された場合には第2マーカーを起動すること、を含む、移動体の第2の指定目標に関連付けられる位置調整段階、第1マーカーおよび第2マーカーが起動している場合に、デジタルシミュレーションツールにより運動シミュレータに提供される現在の運動指令と、デジタルシミュレーションツールによりターゲットに提供される現在の運動指令との差分を計算する工程、および、この差分が所定の閾値よりも小さい場合は、シミュレーションツールからの運動指令に、該運動指令が運動シミュレータおよびターゲットに与えられる前に、設定ポイントの位置にリンクされる補正項を与えることを含む、操縦段階、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば無人機、ミサイル等の、移動体または飛行体の運動性能を検査する分野に属する。
【0002】
より詳細には、本発明は、特に、移動体の指定目標のオーバーシュートまたは目標の変更を検出した後に、現実のナビゲーション環境において移動体の軌道を概算することに関する。ここでは、目標とは、ターゲットすなわち移動体の到達予定地を意味し、例えば地理的座標の形式で表される。
【0003】
本発明が意味するところでは、移動体が目標を「オーバーシュート」するという言及は、移動体が目標に到達しなかった(例えば、移動体が目標を外れた)ことを意味する。同様に、本明細書の下記では、目標に到達しようとしつつ、目標を「攻撃」する移動体について言及する。
【0004】
このことは本発明を限定するものではないが、本発明により、好ましくは、移動体の能力の評価は、外れた目標を再攻撃すること、および/または、ミッション中に目標を変更することをできるようになる。
【背景技術】
【0005】
本技術の現在の状態において、航空機またはロケット等の移動体の軌道を正確かつ合理的なコストで概算するハイブリッドシミュレーションの方法が存在する。
【0006】
これらのハイブリッドシミュレーションの方法は、下記に依存する。
・第1に、移動体、または、移動体の慣性航法システム、移動体のコンピュータ等のような移動体の所定の要素を備える移動体の部分、が取り付けられた角運動シミュレータに例示される現実のサブシステム、および、
・第2に、用いられない移動体の要素を置換する数学的モデル、および、例えば移動体の推進力、移動体の飛行力学、大気、地球等に関する数学的モデル等の移動体のナビゲーション環境をモデリングする数学的モデル。
【0007】
このようなシミュレーションの1つの方法は、例えば、欧州特許出願公開第1909067号明細書および本日付けでは公開されていない仏国特許出願第0850793号明細書に記載されている。この方法は、ハイブリッドシミュレーションの方法により概算された移動体の軌道を参照軌道と比較することによって、移動体に搭載された慣性航法システムを検査するために用いられる。
【0008】
しかし、現在のところ、特に、目標を再攻撃するまたはミッション中に目標を変更する移動体の能力を評価できるようにする目的で、移動体が到達予定の目標をオーバーシュートしたことまたは目標の変更を表す事象の検出後に、ハイブリッドシミュレーションシステムに導入された手段によって与えられる角運動を逸脱する角運動を移動体にもたらすことを要求する移動体の軌道が概算され得るようにする、ハイブリッドシミュレーションの方法もシステムも皆無である。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、現実のナビゲーション環境における移動体の軌道の概算方法を提案することによりこの要求に応えるものであり、当該環境において移動体をモデリングし、移動体が取り付けられた運動シミュレータおよび移動体の到達予定の目標を表すターゲットに運動指令を提供するデジタルシミュレーションツールを含み、シミュレーションツールは、移動体のコンピュータによって送信された操縦指令が与えられ、操縦指令に応じて軌道のポイントを送信する。本発明では、概算方法は、下記をさらに含む。
・移動体の第1の指定目標のオーバーシュートまたは変更を表す事象を検出した後における、移動体の第2の指定目標に関連付けられ、下記を含む、位置調整段階、
・第1のトランジション運動指令に応じて運動シミュレータによって実行された位置と所定の第1の設定ポイントの位置とを比較して、第1の設定ポイントの位置に実質的に等しい位置が検出された場合には第1マーカーを起動する、および、
・第2のトランジション運動指令に応じてターゲットによって実行された位置と所定の第2の設定ポイントの位置とを比較して、第2の設定ポイントの位置に実質的に等しい位置が検出された場合には第2マーカーを起動する、
・第1マーカーおよび第2マーカーが起動している場合に、デジタルシミュレーションツールにより運動シミュレータに提供される現在の運動指令と、デジタルシミュレーションツールによりターゲットに提供される現在の運動指令との差分を計算する工程、および、
・この差分が所定の閾値よりも小さい場合は、シミュレーションツールからの運動指令に、該運動指令が運動シミュレータおよびターゲットに与えられる前に、上記の設定ポイントの位置にリンクされる補正項を与えることを含む、操縦段階。
【0010】
関連する態様では、本発明は、また、現実のナビゲーション環境における移動体の軌道の概算用ハイブリッドシミュレーションシステムであって、
・移動体が取り付けられた運動シミュレータ、
・移動体の到達予定の目標を表すターゲット、および、
・現実のナビゲーション環境において移動体をモデリングし、運動シミュレータおよびターゲットに運動指令を与えるデジタルシミュレーションツールであって、移動体のコンピュータによって送信された操縦指令が与えられ、これらの操縦指令に応じて軌道のポイントを送信するシミュレーションツール、を含み、下記をさらに含むシステムを提供する。
・移動体の第1の指定目標のオーバーシュートまたは変更を表す事象を検出する手段、
・その事象を検出した後であって移動体の第2の指定目標に関連付けられる位置調整段階において起動される、下記のための手段、
・第1のトランジション運動指令に応じて運動シミュレータによって実行された位置と所定の第1の設定ポイントの位置とを比較して、第1の設定ポイントの位置に実質的に等しい位置が検出された場合には第1マーカーを起動する、および、
・第2のトランジション運動指令に応じてターゲットによって実行された位置と所定の第2の設定ポイントの位置とを比較して、第2の設定ポイントの位置に実質的に等しい位置が検出された場合には第2マーカーを起動する、
・第1マーカーおよび第2マーカーが起動されているときを検出し、その場合には、シミュレーションツールにより運動シミュレータに与えられる現在の運動指令と、シミュレーションツールによりターゲットに与えられる現在の運動指令との差分を計算する手段、
・この差分と所定の閾値とを比較する手段、および、
・差分が上記の閾値よりも小さい場合に、操縦段階において、シミュレーションツールからの運動指令に、該運動指令が運動シミュレータおよびターゲットに与えられる前に、設定ポイントの位置にリンクされる補正項を与えるために起動される手段。
【0011】
本発明は、有利には、閉ループのハイブリッドシミュレータを基礎としている。閉ループのハイブリッドシミュレータは、デジタルシミュレーションツール、ならびに、移動体が取り付けられた運動シミュレータ、移動体の到達予定の目標を表すターゲット、およびデジタルシミュレーションツールに運動指令を送信するように構成された移動体のコンピュータ等のハードウエアを含むので、軌道上のポイントの計算ができるようになる。従って、本発明によって概算された移動体の軌道は、移動体が追従するであろう現実の軌道に非常に近いものとなる。
【0012】
第2の目標が第1の目標と同じである場合は、この軌道は、移動体の目標のオーバーシュートする事象および目標を再攻撃する事象における移動体の挙動を反映する。一方、第1の目標と第2の目標とが異なっている場合は、本発明により概算される軌道は、ミッション中になされる目標の変更の事象における移動体の挙動を反映する。
【0013】
いわゆる位置調整段階においては、ターゲットおよび移動体は、シミュレーションツールによって運動シミュレータおよびターゲットに与えられる運動指令の出力と置き換えられるトランジション運動指令によって、所定の設定ポイントの位置に応じて配置される。このことは、位置調整段階における移動体およびターゲットの位置調整を簡易化する。この位置調整段階によれば、得られる軌道の概算が、第2の目標を攻撃する所定の段階を正確に表現したものとなることが確実となる。
【0014】
これらの設定ポイントの位置は、好ましくは、第2の目標に到達するために移動体の終末誘導装置(例えば、移動体のホーミング(またはシーカー)装置)を起動させることに対応して、移動体の軌道を概算することが可能となるように選択される。この段階は、第2の目標の検出および追跡の観点から重要な段階である。この段階における移動体の概算軌道を分析することにより、移動体が第2の目標に到達するか否かを判断することが可能となる。これにより、目標を再攻撃する移動体の能力またはミッション中に目標およびターゲットを新たな目標に変更する移動体の能力を、移動体の指定目標に応じて評価することが可能となる。
【0015】
本分野において知られているように、現在利用可能な角運動シミュレータおよびターゲットは、コストおよび実現可能性の理由で能力を制限しており、特に角運動(すなわち変位)に関しては、例えば角運動シミュレータではプラスまたはマイナス110°に、移動体のターゲットではプラスまたはマイナス40°に能力を制限している。この制限は、ハイブリッドシミュレータの種々の要素間のインターフェイスを実装するためのケーブルおよびテストベンチを用いることによりさらに悪化する。
【0016】
本発明は、いわゆる操縦段階においてシミュレーションツールによって生成された運動指令に、該運動指令が運動シミュレータおよびターゲットに与えられる前に、補正項を与えることによりこれらの制限された角運動を補償することを提案する。これらの補正項は、ターゲットおよび移動体の設定ポイントの位置にリンクされる。本発明を用いることにより、第1の目標および第2の目標の位置によらず、移動体のあらゆる軌道を概算できる。
【0017】
なお、本発明が意味するところでは、運動指令に補正項を与えるとは、その運動指令の1または複数の要素(または、当該運動指令の要素の全てであってもよい)に補正項を与えることであり、与えられる補正項の値は要素に応じて異なっていてもよい。
【0018】
本発明の特に有益なアプリケーションは、第1の目標の位置に対する第2の目標の位置が、移動体に、運動シミュレータおよびターゲットの角運動の能力に適合しない軌道を追従することを要求する状況である。この状況は、具体的には、第2の目標が第1の目標に等しく、移動体が、実質的に完全な一回転をなして、ターゲットの方向に自身を再度調整しなければならない場合に生じる。
【0019】
本発明の具体的な一実現例の概算方法では、シミュレーションツールによって運動シミュレータに与えられる運動指令はヨー要素を含み、シミュレーションツールによってターゲットに与えられる運動指令は方位角の要素を含む。ここでは、方位角の要素とは、水平面内における運動指令の角度の要素を意味する。この実現例では、この移動体の第1の指定目標のオーバーシュートまたは変更を表す事象が検出されるまでは、運動指令のヨー要素および方位角の要素に、該運動指令が運動シミュレータおよびターゲットのそれぞれに与えられる前に、角度の補正項が与えられる。
【0020】
従って、この具体的な実現例では、補正は、移動体の第1の目標への攻撃中にも与えられる。この補正は、第1の目標に到達するために移動体によって追従されるべき軌道が、運動シミュレータおよびターゲットの角度の能力に適合しなくなることを回避する。
【0021】
例えば、移動体の軌道が南に向かっており、運動シミュレータのヨー軸が、北に対して運動シミュレータがプラスまたはマイナス90°の角度位置を採ることを可能にする相対的な角運動を有している場合は、南に向かう軌道を計算するために、180°の角度の補正が与えられ得る。角度の変移は、運動シミュレータの運動指令のヨー軸およびターゲットの運動指令の方位角の軸の両方に与えられる。
【0022】
具体的な一実現例では、第2の目標に到達するために、第1の目標に到達予定の移動体によって採られる方向に対する移動体の方向の変化が要求される場合は、位置調整段階は、移動体を旋回させて移動体の方向を変更するために回転の方向を判断する工程をさらに含み、第1の設定ポイントの位置および第2の設定ポイントの位置は、その回転の方向に応じて選択される。
【0023】
すなわち、移動体は、予め知らされていなくても、ターゲットの想定される方向に旋回するように時計回りまたは反時計回りの方向の変更をなし得る。
【0024】
この実現例により、移動体の回転の方向に応じてターゲットおよび運動シミュレータの設定ポイントの位置を合わせることができるようになり、実際的には下記が可能となる。
・移動体を第2の目標に位置合わせする段階の終了、
・移動体の終末誘導装置の起動、および、
・第2の目標に到達する目的の、移動体の第2の目標への終末誘導。
【0025】
一変形例では、運動シミュレータおよびターゲットに与えられるトランジション運動指令は、判断工程において一定であり得る。例えば、これらの一定のトランジション運動指令は、事象が検出されたときに運動シミュレータおよびターゲットによって実行された位置を含んでいてもよい。
【0026】
本発明の具体的な一実現例では、操縦段階に入るために通過する閾値は、第1マーカーおよび第2マーカーのそれぞれが起動したときに運動シミュレータおよびターゲットのそれぞれによって実行された位置、および、移動体の方向を変更する目的で移動体を旋回させるための回転の方向に依存する。
【0027】
あるいは、閾値は、予め定められていてもよく、具体的には設定ポイントの位置に依存していてもよい。
【0028】
本発明の一実現例では、操縦段階は、下記から補正項を計算することをさらに含む。
・設定ポイントの位置、および、
・差分が所定の閾値よりも小さいことを検出したときにシミュレーションツールによって提供された運動指令。
【0029】
本発明の他の実現例では、操縦段階は、下記から補正項を計算する工程をさらに含む。
・第1マーカーおよび第2マーカーのそれぞれが起動したときに運動シミュレータおよびターゲットによって実行された位置、および、
・差分が所定の閾値よりも小さいことを検出したときにシミュレーションツールによって提供された運動指令。
【0030】
このことは、運動指令に与えられる補正項に、該運動指令が運動シミュレータおよびターゲットに与えられる前に、より正確な値をもたらす。
【0031】
具体的な一実現例では、操縦指令は、下記から移動体のコンピュータによって計算される。
・運動シミュレータに取り付けられた移動体の慣性航法システムによって提供された実測の慣性データ、
・現実のナビゲーション環境における慣性航法システムによって提供されるであろう慣性データを表すシミュレーションの慣性データ、および、
・慣性航法システムによって提供される実測の慣性データを表し、運動シミュレータによって実行された運動指令から計算された、理論的な慣性データ。
【0032】
操縦指令は、好ましくは、I=T2+R−T1により規定される慣性データIに応じて計算される。T2、RおよびT1は、それぞれシミュレーションの慣性データ、実測の慣性データ、および理論的な慣性データを示す。
【0033】
移動体の軌道を概算することに関しては、操縦段階はトランスペアレントである。
【0034】
実測の慣性データおよび理論的な慣性データは、運動シミュレータによって実際に実行された運動指令(すなわちデータ)に依存し、たとえ運動シミュレータが運動指令を正確に実行しなかったり、指令が不正確であったりしても、互いに一致した状態が保たれる。
【0035】
従って、如何なる運動指令が運動シミュレータに与えられても(極端な状況では、たとえ不変の運動指令が運動シミュレータに与えられたとしても)、このことは操縦指令には全く影響しないため、概算される軌道にも全く影響しない。
【0036】
故に、性能の劣る(sousdimensionne)運動シミュレータが、非常に動的な軌道の角度推移のために利用され得る。これにより、より低コストで移動体の正確な軌道が得られ得る。
【0037】
他の実現例では、操縦指令は、シミュレーションのみにより得られた慣性データから移動体のコンピュータによって計算される。
【0038】
本発明の他の特徴および利点は、添付の図面を参照しながら以下の明細書から明らかとなり、これらは本発明の非限定的実施形態を示す。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1は、本発明の具体的な一実施形態の概算用システムを示す。
【図2】図2は、移動体が第1の指定目標に到達しようとするハイブリッドシミュレーションの第1パートにおいて、図1に示される概算用システムによって実施される本発明の具体的な一実現例の概算方法の主な工程を示す。
【図3A】図3Aは、移動体が第2の指定目標に到達しようとするハイブリッドシミュレーションの第2パートの位置調整段階において、図1に示される概算用システムによって実施される本発明の具体的な一実現例の概算方法の主な工程を示す。
【図3B】図3Bは、図3Aに示される位置調整段階に後続するハイブリッドシミュレーションの第2パートの操縦段階において実施される本発明の具体的な一実現例の概算方法の主な工程を示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
上記のように、本発明は、例えば無人機またはミサイル等の移動体の目標を再攻撃する能力またはミッション中に目標を変更して新たな目標を攻撃する能力を評価するために、現実のナビゲーション環境における無人機またはミサイル等の移動体の軌道を概算する方法および概算用システムを提供する。
【0041】
本発明によれば、移動体の軌道は、現実のサブシステム(例えば、移動体のオンボードコンピュータ、慣性航法システム、角運動シミュレータ、および移動体の到達予定の目標を表すターゲット)、移動体の数値モデル(例えば、移動体の推進力、燃料消費、慣性航法システムのモデル)、および移動体の環境(例えば、大気、地球の効果のモデル)を利用したハイブリッドシミュレーションアーキテクチャを用いて計算される。
【0042】
本明細書では、軌道は、地球基準座標系における、経度/緯度/高度の3軸によって各々が規定される複数のポイントから構成される。
【0043】
軌道を計算する本発明の概算用システムにより用いられるハイブリッドシミュレーションの方法は、2段階で実行され、下記を備える。
・移動体が第1の指定目標に到達しようとする期間である第1パート
・第1の目標のオーバーシュートまたは第1の目標の変更を表す事象を検出した後に続く、移動体が第2の指定目標に到達しようとする期間である第2パート
【0044】
なお、第1の目標と第2の目標とが異なっていてもよく、第2の目標が第1の目標と同じであってもよい。後者の仮定によれば、シミュレーションの第2パートでは、移動体は、同じ目標を再攻撃しようとする。この状況は、具体的には、移動体が、その第1の目標を外す場合に生じ得る。
【0045】
本発明の概算方法は、上記ハイブリッドシミュレーションアーキテクチャによって、リアルタイムかつ閉ループで実行される複数回の反復過程により実行される。これらの反復過程の各々は、移動体の計算軌道上のポイントを生成する。図1は、このハイブリッドシミュレーションアーキテクチャを実現する本発明の具体的な一実施形態の概算用システム1を図示する。
【0046】
概算用システム1は、移動体(または飛行体)3を受け入れるように構成された“3軸(3 axes)”テーブル21を備える角運動シミュレータ2を含む。3軸テーブル21は、デジタルコントロールユニット22によって制御される。この例では、移動体3はミサイルであり、タスクは外した目標01(本発明が意味するところの第1の目標)を再攻撃する移動体3の能力を評価することである。従って、この例では、本発明が意味するところの第2の目標は第1の目標と同じである。ただし、上記のように、本発明は、第1の目標と第2の目標とが異なる場合であっても、同様に適用される。
【0047】
“3軸”テーブルの動作原理は、当業者には知られているため、ここでは詳細な説明を割愛する。角運動シミュレータは、“5軸”テーブル等の他のタイプのテーブルを代わりに利用していてもよい。
【0048】
角運動シミュレータ2は、ロール軸、ピッチ軸、ヨー軸についての角運動を実行し、これら3軸についての角運動を移動体3に加える。これらの角運動は、ユニット22から取得した数値運動指令に応じて、テーブル21により与えられる。これらの指令は、運動シミュレータの3軸にそれぞれ対応する3要素の形で表される角度位置を含む。これらの指令は、角速度および角加速度も含んでいてもよい。
【0049】
分かりやすくするために、以下の通常の記載では、角度位置のみを備える運動指令に限定する。当然ながら、当業者であれば、運動指令が角速度および/または角加速度も含む状況に対して、ここで記載した実現例を如何にして援用するかが分かる。
【0050】
運動シミュレータ2は、また、運動シミュレータ2が取得した運動指令に応じて実際に実行された運動指令C14を提供するように構成されている。運動シミュレータによって実際に実行された角度位置のヨー要素は、lC14と表される。
【0051】
運動シミュレータに取り付けられた移動体3には、終末誘導装置31および慣性航法システム32が設けられている。終末誘導装置31は、例えばホーミング装置である。
【0052】
本技術分野で知られているように、終末誘導装置31は、移動体が、移動体の目標に接近すると起動される。一方、目標のオーバーシュートの検出後、または、移動体が目標から離れ過ぎている場合は、終末誘導装置31は起動しない(または、同じことではあるが、終末誘導装置31の出力はもはや取り入れられない)。
【0053】
慣性航法システム32は、ジャイロおよび加速度計等の測定器を含んでおり(図示せず)、このことにより、慣性航法システム32は、運動シミュレータ2によって加えられた運動に対応する実測の慣性データR(すなわち、レートジャイロスコープおよび加速度計の測定情報)を提供することをできるようになる。
【0054】
本発明の概算用システム1は、また、移動体の到達予定の目標を表すターゲット4(関与しているハイブリッドシミュレーションのパートに応じた第1の目標または第2の目標)を含む。
【0055】
この例では、このターゲットは、ターゲットに与えられた運動指令に応じて水平面内における円弧状のレール上を移動するように構成された搬送体に取り付けられている。これらの運動指令は角度位置を含み、水平面内における角度位置の要素(方位角の要素(composante de gisement))は地理的な北に対して規定される。ターゲット4は、さらに、これらの指令に応じたターゲット4の現在の位置(すなわち、本発明が意味するところの実行された位置)を提供するように構成されている。この現在の位置の方位角の要素はlC24と表される。
【0056】
例えば、飛行するターゲット(5軸テーブル等)、直線に沿って移動するターゲット、ホーンを有する静止したターゲット(des cibles statiques munies de cornets)等の他のターゲットが代わりに用いられ得る。本発明が意味するところでは、ホーンを有するターゲットの位置は、ホーンの重心の位置である。
【0057】
なお、水平面内におけるターゲットの移動を想定しているので、ここでは、関連する移動体およびターゲットの、角度位置のヨー要素および方位角の要素は必須である。ただし、本発明は、ターゲットが垂直面内で、または方位角の要素および高度の要素を備える方向に移動する場合においても同様に適用され得る。このような状況においては、運動指令の角度位置のヨー要素および方位角の要素に適用される下記の処理は、移動体のピッチ要素およびターゲットの高度の要素にも適用される。
【0058】
また、角運動シミュレータ2およびターゲット4は、理論モデルM1およびシミュレーションツール(シミュレータ)M2等のハイブリッドシミュレーションアーキテクチャの数値モデル要素を実装するのに用いられた、少なくとも1つのデータ処理装置またはコンピュータ5に接続されている。
【0059】
理論モデルM1は、運動シミュレータ2に取り付けられた(すなわち、運動シミュレータ2が配置された実験室の固定座標のポイントにおいて)慣性航法システム32によって測定される慣性データの理論的な写像T1(本発明が意味するところの理論的な慣性データ)を提供するように構成されている。換言すると、理論モデルM1によって提供される理論的な慣性データは、慣性航法システム32が完全なシステムであれば固定座標のポイントにおいて測定するであろう慣性データを表す。
【0060】
理論的な写像T1を計算するために、理論モデルM1は、運動シミュレータ2によって実行された角運動にリンクした効果とともに、移動体3、より具体的には慣性航法システム32に作用する物理現象の数学的なモデル(地球の回転または局所重力等の地球の効果をモデル化した理論的な表現)を用いる。理論モデルM1は、具体的には、運動シミュレータ2によって移動体3に実際に与えられた位置、速度、および加速度を反映する運動指令を用いる。
【0061】
シミュレーションツールM2は、移動体3への局所的な地球の効果(例えば、局所重力、地球の回転速度)を考慮しながら現実のナビゲーション環境、すなわち地球の周囲のナビゲーション環境における移動体3、および移動体の到達予定の目標をモデル化する。この分野で知られている1つのシミュレーションツールは、移動体を構成する要素の数学的なモデル(特に、慣性航法システム32の仕様に基づく公称特性(許容範囲の中心)に応じた特性を有する慣性航法システムのモデル)、ならびに飛行力学のモデルおよび飛行環境のモデル等に依存する。
【0062】
ここで記載する例では、シミュレーションツールM2は、ハイブリッドシミュレーションの際に、操縦指令Pから下記を計算するように動作する。
・現実のナビゲーション環境における移動体の軌道上のポイントX
・慣性航法システム32が、軌道上のこのポイントにおける環境において提供するであろう慣性データを表すシミュレーションの慣性データT2
・軌道上のポイントに対応して、移動体3およびターゲット4に与えられる運動を表す、運動シミュレータ2およびターゲット4のそれぞれへの運動指令C11およびC21
【0063】
理論モデルM1およびシミュレーションツールM2は、例えば、コンピュータ5の読み出し専用メモリまたは不揮発性メモリ(図示せず)に保存された、ソフトウエアの形式を採る。
【0064】
移動体3は、慣性航法システム32およびコンピュータ5の両方に接続されたオンボードコンピュータ33をさらに含む。オンボードコンピュータ33は、具体的には、慣性データIに基づく移動体3の制御および誘導を担当する。オンボードコンピュータ33には、移動体の制御ユニットに対して、移動体の性能(例えば、空力制御翼面に対する回転命令、燃料流量調整バルブに対する開放指令等)に適合した回転命令(操縦指令)を生成するように構成された“制御”モジュール33bが設けられている。制御モジュール33bは自動装置であり、リアルタイムで慣性データIを用いて動作し、先に命令された指令の実行を評価し、必要があれば、軌道の設定ポイントに応じて次の命令指令を調整する。
【0065】
通常、移動体のオンボードコンピュータは、具体的には、移動体の慣性航法システムのレートジャイロおよび加速度計に由来する慣性データから操縦指令Pを生成する。本発明の検査システム1では、オンボードコンピュータ33によって用いられる慣性データIは、下記に依存する。
・実測の慣性データR
・シミュレーションの慣性データT2、および、
・理論的な慣性データT1
【0066】
より正確には、この例では、オンボードコンピュータ33は、下記の式を満たす慣性データIから操縦指令Pを計算する。
I=R+T2−T1
【0067】
この計算は、欧州特許出願公開第1909067号明細書、および仏国特許出願公開第2927418号明細書として発行されている仏国特許出願第0850793号明細書から分かるので、ここでは詳細な説明は割愛する。
【0068】
なお、コンピュータ5、運動シミュレータ2、ターゲット4、オンボードコンピュータ33および慣性航法システム32の間の接続は、電気ケーブルまたは光ケーブルによるものであってもよく、無線によるものであってもよく、もしくはその他の手段によるものであってもよい。
【0069】
以下では、移動体3の軌道上のポイントを計算するために、本発明の概算方法の第1パートの各反復過程で検査システム1によって実行される主な工程を図2を参照しながら記載する。この方法のこの第1パートでは、移動体3は、第1の指定目標01に到達しようとする。
【0070】
例えば、この第1の目標の位置は、移動体3のメモリに保存される、または、移動体3は、人工衛星、ヘリコプター、航空機等に設けられたデータリンクから第1の目標の位置を取得してもよい。第1の目標の位置は、地球基準座標系で表された位置、または移動体の知られた要素、例えば移動体の発射地点に相対的な位置に対応する。
【0071】
上記のように、本発明の概算方法の各反復過程は、リアルタイムで、かつ移動体のクロックレートによって調整されたクロックレートで、検査システム1のエンティティによって実行される。より正確には、各反復過程において、計算、および移動体のオンボードコンピュータ33、シミュレータM2、理論モデルM1、角運動シミュレータ2、慣性航法システム32、およびターゲット4の間でのデータの交換は、移動体によって実行されるタイミング処理のための実周波数で、有利にはその周波数に対応する間隔よりも短い遅延内で実行される。
【0072】
以下の説明では、「現在」という用語は、現在の反復過程のデータ(例えば、シミュレーションツール、慣性情報等によって発せられた、与えられるまたは実行される運動指令)に全般的に当てはまる。
【0073】
反復過程の際に、反復過程i−1における慣性データIからオンボードコンピュータ33によって生成された運動指令Pを取得すると(ステップE10)、デジタルシミュレーションツールM2は、現実のナビゲーション環境における移動体の軌道上のポイントXを生成する(ステップE20)。
【0074】
この目的のために、ツールM2は、具体的には、操縦指令Pに応答して現実のナビゲーション環境における移動体の現実の位置(すなわち、軌道上のポイント)、すなわちその緯度、経度および高度をツールM2が計算することをできるようにする、飛行力学モデルを用いる。この軌道上のポイントXは、本発明の概算方法によって生成される移動体の軌道に追加される(ステップE30)。
【0075】
シミュレーションツールM2は、また、リアルタイムで下記を提供する。
・現実のナビゲーション環境における計算された軌道の新たなポイントXに関して、慣性航法システム32により測定されるであろう慣性データを表すシミュレーションの慣性データT2、
・操縦指令Pに応じて運動シミュレータ2によって実行されるべき運動を示す運動指令C11(すなわち、軌道上の新たなポイントXに到達予定の移動体によって行われる運動);C11に含まれ、地理的な北に相対的に規定される角度位置のヨー要素は、lC11と表される、および、
・移動体3−ターゲット4の軸によってとりこまれるべき位置を示す数値運動指令C21;指令C21に含まれる角度位置の方位角の要素はlC21と表される。
【0076】
この例では、シミュレーションツールM2は、また、移動体と第1の目標との間の距離の概算値を提供する。具体的には、この概算値により、論理ユニット51は、移動体の第1の目標に対する位置を計算できるようになり、移動体が第1の目標をオーバーシュートしたことを検出したときには、トランジションTを起動させる(T=1)ことができるようになる(ステップE40)。それ以外では、デフォルト設定で、トランジションは起動しない(T=0)。換言すると、トランジションTは、ハイブリッドシミュレーションの第2パートにおいて機能し、第1パートにおいては機能しない。
【0077】
この例では、ハイブリッドシミュレーションの第2パートは、第2の目標の指定、換言すると、移動体の到達予定の最終目標の指定と同時に始まる。当然ながら、第1の目標とこの「最終」目標との間における1または複数の中間目標の指定は、やはり想定され得ることであるが、このような状況においては、シミュレーションの第2パート、より正確にはトランジションTの起動は、最終目標の指定からのみ有効となるであろう。
【0078】
論理ユニット51は、例えば、コンピュータプログラムまたはコンピュータ5の読み出し専用メモリに保存されたソフトウエアの機能である。その動作を、図3Aおよび図3Bを参照しながら以下に詳細に記載する。
【0079】
本実現例では、シミュレーションの第1パートにおいて、運動指令C11およびC21は、運動シミュレータ2およびターゲット4のそれぞれに与えられる前に、論理ユニット52に送られる(ステップE50)。論理ユニット52は、例えば、コンピュータプログラムまたはコンピュータ5の読み出し専用メモリに保存されたソフトウエアの機能である。この論理ユニット52は、シミュレーションツールからの運動指令C11およびC21から運動指令C21およびC22を生成するように構成されている。
【0080】
この目的のために、第1の目標に到達予定の移動体の軌道が運動シミュレータ2およびターゲット4の角度(相対運動)能力に適合しない場合は、論理ユニット52は、ゼロではない補正項D1を運動指令C11およびC21の要素lC11およびlC21に与える。それ以外の場合は、ハイブリッドシミュレータのアーキテクチャを簡易化するために、ここではD1はゼロとする。
【0081】
なお、補正項D1は、ハイブリッドシミュレーションの第1パートにおいて、すなわち移動体が第1の目標に到達しようとしているとき(換言すると、トランジションTが機能していない、すなわちT=0のとき)のみに、論理ユニット52によって与えられる。
【0082】
第1の目標に到達予定の移動体の軌道が運動シミュレータ2の角度能力に適合しないかどうかを、現実の構成要素を用いたハイブリッドシミュレーションを実行する前に判断する目的で、移動体の予備的な軌道の概略を得るために、例えば、モデルM2(この場合は、オンボードコンピュータのモデルを含む)を用いた数値シミュレーションを実行してもよいし、移動体の軌道の予備的な概略を得るために、運動シミュレータを全く用いないシミュレーションを実行してもよい。この方法で得られた予備的な軌道が運動シミュレータ2およびターゲット4の能力に適合しない場合、与えられるべき補正項D1は、予備的な軌道、運動シミュレータ2およびターゲット4の角度能力(これらは運動シミュレータおよびターゲットの製造元により知られていると考えられる)、および運動シミュレータとターゲットの相対的な角度位置から計算される。
【0083】
より正確には、ターゲットの角度位置の方位角の要素がターゲットによって求められた角運動の範囲に含まれ、かつ運動シミュレータの角度位置のヨー要素が運動シミュレータによって求められる角運動に適合することを保証するように補正項D1が選択される。これらの2つの要求が満たされれば、補正項D1の選択は、運動シミュレータによって求められた角運動の範囲を最大限に活用するように、さらに改善されてもよい。
【0084】
例えば、運動シミュレータ2が地理的な北に対して±100°の角運動能力を有し、ターゲットが地理的な北に対して±40°の角運動能力を有し、かつ移動体の予備的な軌道が南、すなわち地理的な北に対して180°の角度で移動していることを示す場合は、−180°に等しい補正項D1が想定され得る。補正項D1の付与後に得られる運動指令は、運動シミュレータおよびターゲットの角運動に適合する。
【0085】
論理ユニット52は、補正項D1をヨー要素lC11および方位角の要素lC21に与える。より正確には、論理ユニット52は、補正項D1をヨー要素lC11および方位角の要素lC21に加えて、ヨー要素lC12および方位角の要素lC22をそれぞれ生成する(ステップE60)。
lC12=lC11+D1、lC22=lC21+D1
【0086】
その他の要素は変更されないままである。
【0087】
次に、論理ユニット52は、この方法で得られた運動指令C12およびC22を運動シミュレータ2およびターゲット4に送る(図1に示すトランジションT=0)。
【0088】
運動指令C22はターゲット4に与えられ、それに応じてターゲット4はその現在の位置C24(これは、本発明が意味するところの実行された位置または実際に実行された位置のいずれかである)を与える(ステップE70)。
【0089】
同様に、運動指令C12は、運動シミュレータ2のデジタルユニット22により取得され、3軸テーブル21によって移動体3に与えられる(ステップE80)。
【0090】
運動シミュレータ2によって与えられた運動に応じて、慣性航法システム32は、慣性航法システム32のレートジャイロおよび加速度計から得られた実測の慣性データRを提供する(ステップE82)。
【0091】
また、同時に、運動シミュレータ2によって移動体3で実際に実行された運動指令C14は、理論モデルM1に運動指令C14を与えるために、コンピュータ5に送られる(ステップE84)。これらの運動指令C14は、運動シミュレータに配置された角度センサによって測定される。
【0092】
理論モデルM1は、指令C14から、理論的な慣性データT1を計算する(ステップE86)。
【0093】
上記のように、理論的な慣性データT1を生成するために、理論モデルM1は、実験室に相当する固定座標のポイントに配置された完全な慣性航法システムに及ぼされる物理現象の数学的なモデルを含む。このモデルM1は、欧州特許出願公開第1909067号明細書および仏国特許出願第0850793号明細書(本日付けでは公開されていない)に記載のモデルと同じである。
【0094】
なお、理論的な慣性データT1は、運動シミュレータ2に取り付けられた移動体3の慣性航法システム32によって測定される慣性データ、すなわち、固定座標を有する実験室のポイントで測定される慣性データを表すであろうものである。従って、理論的な慣性データT1と慣性航法システムによって提供された実測の慣性データRとは、実際の慣性航法システムに内在する(すなわち、非公称の)特性に由来する相違を除いて一致する。
【0095】
反復過程において生成された、実測の慣性データR(慣性航法システム32によって提供される)、理論的な慣性データT1(理論モデルM1によって提供される)、およびシミュレーションの慣性データT2(シミュレータM2によって提供される)は、下記のように慣性データIを計算する(ステップE90)ために用いられる。
I=R+T2−T1
【0096】
当業者に知られた算術演算手段54および33aがこのために用いられ、各々は、図1に示すように、コンピュータ5内およびオンボードコンピュータ33内に配置されている。まず、算術演算手段54が差分T2−T1を計算し、次に、算術演算手段33aがこの差分を慣性データRに加算する。
【0097】
上記の代わりに、手段54および33aは、両方がコンピュータ5、オンボードコンピュータ33、または他の機器(例えば、慣性航法システムまたは他のコンピュータ)に配置されていてもよい。また、Iの計算につながる他の演算がなされてもよい。
【0098】
操縦指令Pは、この慣性データIに応じて、かつ上述の移動体の設定ポイントの軌道から、オンボードコンピュータ33によって計算される(ステップE100)。
【0099】
操縦指令Pは、反復過程i+1においてシミュレーションツールM2に与えられ、移動体の軌道を生成するように、ステップE10からE100が第1パートの各反復過程において繰り返される。
【0100】
論理ユニット51によって実行される処理を以下で詳細に記載する。上記のように、各反復過程において、このユニットは、移動体と第1の目標との間の距離を検証して第1の目標に対する移動体の位置を判断し、移動体が第1の目標をオーバーシュートした場合にはトランジションTを起動する(T=1)。
【0101】
より正確には、各反復過程において、ユニット51は以下の工程を実行する。
・d≦dminの場合は、dmin=dかつcpt=0、
・その他の場合は、cpt=cpt+1、
・cpt>S1の場合は、トランジションTが起動される(すなわち、T=1)。
S1、cptおよびdminは、それぞれ、所定の閾値(第1の目標のオーバーシュートを明確に検出できるように選択される)、カウンタ、移動体と第1の目標との間での想定される最大距離よりも大きい値に初期設定された最小距離を示す。
【0102】
従って、最小距離dminが複数回の反復過程(少なくともS1回の反復過程)にわたって超過された場合に、換言すれば、移動体が第1の目標を通り過ぎた場合に、トランジションTは起動される。ユニット51によるトランジションTの起動は、本発明が意味するところの移動体による第1の目標のオーバーシュートを表す事象の検出を構成する。
【0103】
当然ながら、ミッション中に目標が変更される事象における移動体の軌道が対象なのであれば、論理ユニット51は、(その目標の変更が第1の目標のオーバーシュートの前に発生したか後に発生したかに関わらず)新たな目標の指定の検出後にトランジションTを起動するように構成され得る。
【0104】
論理ユニット51によるトランジションTの起動は、ハイブリッドシミュレーションにおける第2パートの開始を示す。以下では、図3Aおよび図3Bを参照して、シミュレーションのこの第2パートにおいて、すなわち移動体が第2の目標に到達しようとしているときに、換言すると、ここでは、移動体が目標01を再攻撃しようとしているときに、実行される主な工程を記載する。
【0105】
シミュレーションの第2パートの反復過程は、基本的には第1パートと同様の態様(ステップE10〜E40およびE82〜E100)で進行する。ただし、シミュレーションツールM2からの運動指令C11およびC21は、該運動指令が(移動体3に与えられるために)運動シミュレータ2およびターゲット4にそれぞれ与えられる前に、論理ユニット53により処理される(図1に示すトランジションT=1)。論理ユニット53によって運動シミュレータ2およびターゲット4に与えられる運動指令(ここでは角度位置)はそれぞれC13およびC23と表され、指令C13およびC23に含まれる角度位置のヨー要素および方位角の要素は、それぞれlC13およびlC23と表される。
【0106】
本発明によれば、論理ユニット51によるトランジションTの起動後に、本発明の概算用システム1によって2つの段階が実行される。
・目標を再攻撃するために移動体3をターゲット4の方向に近い方向に合わせる目的で、いわゆるトランジション運動指令が運動シミュレータ2およびターゲット4に与えられる期間であって運動指令C11およびC21を置き換える期間である、第1すなわち「位置調整」段階φ1(図3Aに示されている)、および、
・移動体3が目標を再攻撃する際に移動体3の軌道を概算する目的で、シミュレーションツールによって運動シミュレータ2およびターゲット4に送られる運動指令C11およびC21に論理ユニット53が補正項を与える期間である、第2すなわち「操縦」段階φ2(図3Bに示されている)。
【0107】
このように、論理ユニット51によってトランジションTが起動すると(ステップF10)、移動体3およびターゲット4の位置調整の段階φ1が始まる。以下の説明では、トランジションTが起動された反復過程はi0と表される。
【0108】
トランジションTが起動したときの、運動指令C11およびC21ならびに実行された運動指令C14およびC24の現在の値は、論理ユニット53によって保存される(ステップF20)。これらの指令はそれぞれC11(i0)、C21(i0)、C14(i0)およびC24(i0)と表され、それらの指令に関する角度位置のヨー要素および方位角の要素はそれぞれlC11(i0)、lC21(i0)、lC14(i0)およびlC24(i0)と表される。
【0109】
上記のように、位置調整段階φ1の目的は、特に終末誘導装置31が起動するときに、移動体による目標01の攻撃の最終段階を観察できるように、移動体3およびターゲット4を所定の設定ポイントの位置P1およびP2に配置することである。ここでは、設定ポイントの位置P1およびP2は、近接角度位置調整の後に移動体3の方向とターゲット4の方向とが、例えば30°未満となるように選択される。ただし、これは単なる例示であり、設定ポイントの位置P1およびP2は、好ましくは、設定ポイントの位置に到達するタイミングと、移動体のセンサ、具体的には移動体の終末誘導装置の再起動のタイミングとの間の時間差を保証するように選択される。
【0110】
また、実施上の理由から、ここでは、設定ポイントの位置P1およびP2は、目標01に対する移動体3の位置に依存し、より正確には、自身をターゲット4の方向に合わせるために移動体3によってなされる方向の各種変化に依存する。
【0111】
本実施例では、第2の目標は、第1の目標と同じである。移動体が第1の目標をオーバーシュートした後、移動体は第1の目標への再攻撃を可能にするために方向を変えなければならない。従って、論理ユニット53は、まず、目標01の方向に旋回する移動体によってなされる回転の方向を判断する(ステップF30)。
【0112】
この目的のために、論理ユニット53は、現在の反復過程の現在のヨー要素lC11とヨー要素lC11(i0)の差分の絶対値(|lC11−lC11(i0)|と表される)と所定の閾値S2とを、必要であれば複数回の反復過程にわたって比較する。このテストは、この絶対値が閾値S2を超えない限り実行される。
・|lC11−lC11(i0)|がS2を超え、(lC11−lC11(i0))が正である場合は、論理ユニット53は、移動体3が時計回りの方向転換をなすべきであると判断する。
・|lC11−lC11(i0)|がS2を超え、(lC11−lC11(i0))が負である場合は、論理ユニット53は、移動体3が反時計回りの方向転換をなすべきであると判断する。
【0113】
閾値S2は、移動体の回転の方向を明確に判断できるように(数度のオーダーの大きさで)選択される。
【0114】
移動体の回転の方向を判断するこの工程において、論理ユニット53は、運動シミュレータおよびターゲットに一定のトランジション運動指令C13およびC23を与える。ここでは、それぞれがC14(i0)およびC24(i0)に等しい。換言すると、この判断工程において、論理ユニット53は、具体的には、T=0からT=1に遷移するタイミングから移動体の回転の方向が判断されるまで、運動シミュレータのヨー要素およびターゲットの方位角の要素をロックする。なお、慣性情報Iを計算するために用いられる計算モードにより、ロックすることは操縦指令の信頼性すなわち軌道に影響を及ぼさない。すなわち、実測の慣性データRおよび理論的な慣性データT1の両方が運動シミュレータによって実際に実行される運動指令に依存するため、運動シミュレータのヨー軸をロックすることはRおよびT1への正確に同じ影響を有し、この理由で慣性情報Iの計算において自己補償性である。
【0115】
また、この例では、運動指令の全ての要素はロックされ、C14(i0)およびC24(i0)の対応要素に等しくなる。あるいは、ヨー要素および方位角の要素のみが、それぞれlC14(i0)およびlC24(i0)の値にロックされ、他の要素は、現在の指令C11およびC21の対応要素または任意の値のいずれかに等しくなる。
【0116】
運動指令が角速度および角加速度をさらに含んでいる場合は、角度位置が一定であるということは、当然ながら、角速度および角加速度の要素がゼロであることを意味する。
【0117】
移動体3の回転の方向の判断の後に、論理ユニット53は、トランジション指令C13およびC23を用いた移動体の回転の方向に応じて選択された所定の設定ポイントの位置P1およびP2に運動シミュレータおよびターゲットを配置する。
【0118】
回転の方向が時計回りである場合は、運動シミュレータ2のヨー軸が設定ポイントP1の左方に配置され(負が選択され)、ターゲット4の方位角の軸が設定ポイントP2の右方に配置され(正が選択され)、移動体の実際の運動の最終段階が3軸テーブルおよびターゲットの組み合わせによって実行され得る。
【0119】
一方、回転の方向が反時計回りである場合は、運動シミュレータ2のヨー軸が設定ポイントP1の右方に配置され(正が選択され)、ターゲット4の方位角の軸が設定ポイントP2の左方に配置される(負が選択される)。
【0120】
ターゲットおよび運動シミュレータの角運動に関する制限を有効活用するために、これらの例では、P1およびP2に逆の符号が選択され、このことにより所定の角度差を表している。ただし、P1およびP2はいずれの符号であってもよい。
【0121】
また、ターゲットおよび運動シミュレータの「ゼロ」の位置は、一致していなくてもよい。ただし、ターゲットの「ゼロ」の位置と運動シミュレータの「ゼロ」の位置の角度差を考慮に入れることは、ここで記載した計算および処理を適切に適合させる方法を知っている当業者には問題とはならない。
【0122】
移動体およびターゲットの設定ポイントの位置への位置調整は、反復過程の進行中に、下記のように実行される。
・移動体に関して、位置調整段階の間、反復過程のための現在のトランジション運動指令に応じて移動体によって実際に実行された位置を表すlC14が下記のように考慮される。
・lC14−P1>0の場合(ステップF40)は、テーブルのヨー軸は、各反復過程において反時計回りに変位する(ステップF42)。換言すれば、論理ユニット53によって運動シミュレータに与えられるトランジション運動指令C13のヨー要素は、下記に等しくなる。
lC13=lC14−ε1
ε1は、小さい正の整数である。
・lC14−P1<0の場合(ステップF40)は、テーブルのヨー軸は、各反復過程において時計回りに変位する(ステップF44)。換言すれば、論理ユニット53によって運動シミュレータに与えられるトランジション運動指令C13のヨー要素は、下記に等しくなる。
lC13=lC14+ε1
トランジション運動指令C13の他の角度位置の要素は、ここでは、シミュレーションツールからの現在の運動指令C11の対応要素に等しい。
好ましくは0に近いと考えられる閾値S3以内で設定ポイントP1にlC14があることが検出される場合は、位置調整は正しい(ステップF46)。従って、移動体によって実行された位置が、設定ポイントの位置P1に実質的に等しい(すなわち、閾値S3を除いてP1に等しい)ことが検出されれば、直ちにマーカーf1(本発明が意味するところの第1マーカー)が起動される(f1=1)(ステップF48)。位置P1に到達し、マーカーf1が起動された反復過程は、i1と表される。そして、lC13(i1)およびlC14(i1)の値が保存される。
・ターゲットに関して、位置調整段階の間、反復過程のための現在のトランジション運動指令に応じてターゲットによって実行された位置を表すlC24が下記のように考慮される。
・lC24−P2>0の場合(ステップF50)は、ターゲットの方位角の軸は、各反復過程において反時計回りに変位する(ステップF52)。換言すれば、論理ユニット53によってターゲットに与えられるトランジション運動指令C23の方位角の要素は、下記に等しくなる。
lC23=lC24−ε2
ε2は、小さい正の実数である。
・lC24−P2<0の場合(ステップF50)は、ターゲットの方位角の軸は、各反復過程において時計回りに変位する(ステップF54)。換言すれば、論理ユニット53によってターゲットに与えられるトランジション運動指令C23の方位角の要素は、下記に等しくなる。
lC23=lC24+ε2
トランジション運動指令C23の他の角度位置の要素は、ここでは、シミュレーションツールからの現在の運動指令C21の要素に等しい。
lC24が、好ましくは0に近いと考えられる閾値S4を除いて設定ポイントP2にあることが検出される場合は、位置調整は正しい(ステップF56)。従って、ターゲットによって実行された位置が、設定ポイントの位置P2に実質的に等しい(すなわち、閾値S4を除いてP2に等しい)ことが検出されれば、直ちにマーカーf2(本発明が意味するところの第2マーカー)が起動される(f2=1)(ステップF58)。位置P2に到達し、マーカーf2が起動された反復過程は、i2と表される。lC23(i2)およびlC24(i2)の値が保存される。
【0123】
なお、マーカーf1およびf2は、必ずしも同一の反復過程で起動されなくてもよい(すなわち、i1とi2とが異なっていてもよい)。また、移動体およびターゲットは、同時に位置調整されてもよく、連続的に位置調整されてもよい。
【0124】
論理ユニット53が、2つのマーカーf1およびf2が起動されていることを検出すると、直ちに現在のヨー要素lC11と現在の方位角の要素lC21との差分の絶対値が計算され、位置lC14(i1)と位置lC24(i2)との差分の絶対値から規定される閾値と比較される(ステップF60)。現在のヨー要素lC11と現在の方位角の要素lC21との差分のこの絶対値は、本発明が意味するところの、シミュレーションツールによって運動シミュレータに提供される現在の運動指令と、シミュレーションツールによってターゲットに提供される現在の運動指令との差分を構成する。
【0125】
従って、この比較は、現在のヨー要素lC11と現在の方位角の要素lC21との差分の絶対値によってここで規定される、水平面内における運動シミュレータとターゲットとの現在の角度位置の相違が所定の閾値よりも小さいことをチェックする。そのような場合は、下記のいわゆる操縦段階が開始される。
【0126】
より正確には、P1およびP2に関する上記の前提に従って、
・ステップF30において判断された移動体の回転の方向が時計回りである場合は、(lC21−lC11)>(lC24(i2)−lC14(i1))で与えられる条件(1)が満たされる限り(ステップF60)、論理ユニット53は、運動シミュレータおよびターゲットのそれぞれに、運動シミュレータおよびターゲットに提供された最新の値に等しい一定の指令lC13およびlC23を送り、設定ポイントの位置P1およびP2に到達できるようにする(ステップF70)。換言すれば、論理ユニット53は、運動シミュレータおよびターゲットのそれぞれに、lC13(i1)およびlC23(i2)の値に等しい固定された指令を送る。
・ステップF30において判断された移動体の回転の方向が反時計回りである場合は、(lC11−lC21)>(lC14(i1)−lC24(i2))で与えられる条件(2)が満たされる限り(ステップF60)、論理ユニット53は、運動シミュレータおよびターゲットのそれぞれに、運動シミュレータおよびターゲットに提供された最新の値に等しい一定の指令lC13およびlC23を送り、設定ポイントの位置P1およびP2に到達できるようにする(ステップF70)。換言すれば、論理ユニット53は、運動シミュレータおよびターゲットのそれぞれに、lC13(i1)およびlC23(i2)の値に等しい固定された指令を送る。
【0127】
他の実現例では、現在のヨー要素lC11と現在の方位角の要素lC21との差分の絶対値が、lC14(i1)およびlC24(i2)の位置に関する上記と同様のアプローチを用いて、P1とP2の位置の差分の絶対値(本発明が意味するところの所定の閾値)と比較される。
【0128】
論理ユニット53が、移動体の回転の方向に基づいて、条件(1)または条件(2)がもはや満たされていないことを検出した場合は、マーカーf3が起動され、いわゆる操縦段階φ2が開始される(ステップF80)。操縦段階が開始される反復過程はi3と表される。
【0129】
なお、マーカーf1およびマーカーf2は、好ましくは、移動体の回転の方向に基づく条件(1)または(2)がもはや満たされなくなる前に起動されるべきである。換言すれば、マーカーf1およびマーカーf2が起動される時点と、マーカーf3が起動される時点との間に十分な遅延が存在することが好ましい(たとえ遅延がゼロに近くても十分である)。この目的のために、この条件を満たすことを可能にする設定ポイントの位置P1およびP2、すなわち適切なε1および/またはε2の値が選択され得る(なお、これらの値が大きいほど、設定ポイントP1およびP2が収束する速度は大きくなる)。
【0130】
操縦段階φ2においては、論理ユニット53は、移動体およびターゲットに与えられる運動指令C11およびC21に、設定ポイントの位置P1およびP2にリンクされる補正項D2およびD3を与える。これにより、概算用システム1による、移動体およびターゲットのあらゆるタイプの運動のシミュレーションができるようになり、項D2およびD3は、これらの運動を、運動シミュレータおよびターゲットの角運動に適合させる。
【0131】
これらの補正項を計算するために、論理ユニット53は、反復過程i3において、現在のヨー要素lC11(i3)と現在の方位角の要素lC21(i3)を保存する(ステップF90)。
【0132】
次に、補正項D2およびD3は、下記の式を用いて計算される。
D2=lC14(i1)−lC11(i3)、D3=lC24(i2)−lC21(i3)
【0133】
あるいは、補正項D2およびD3は、下記の式を用いて計算されてもよい。
D2=P1−lC11(i3)、D3=P2−lC21(i3)
【0134】
従って、操縦段階の各反復過程において、第2パートの終わりまで、論理ユニット53は、ヨー要素lC11および方位角の要素lC21のそれぞれに角度のオフセットD2およびD3を下記の式に従って与える(ステップF100)。
lC13=lC11+D2
lC23=lC21+D3
【0135】
運動指令C13および運動指令C23のそれぞれの他の要素は、ここでは、シミュレーションツールからの現在の運動指令C11および現在の運動指令C21のそれぞれの対応要素に等しい。
【0136】
次に、論理ユニット53によってこのように修正された運動指令C13およびC23は、運動シミュレータおよびターゲットにそれぞれ与えられ、利用される。これらの運動指令に応じて、ターゲットは、その現在の位置を送信する。
【0137】
第2の目標への到達または第2の目標のオーバーシュート等のシミュレーション事象の終わりの検出で特徴付けられる、ハイブリッドシミュレーションの第2パートの終わり(ステップF110)には、概算用システム1によって得られた移動体の軌道が診断される。
【0138】
具体的には、第2の目標に到達するか否かが、例えば、論理ユニット51および距離を用いて判断される(ステップF120)。
【0139】
到達するのであれば、移動体3が目標をオーバーシュートした場合に、移動体3がその目標を再攻撃可能であると判断される(ステップF130)。そうでないのであれば、移動体は目標を外れた後に目標を再攻撃できないと考えられるため、移動体は無効である(ステップF140)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現実のナビゲーション環境における移動体(3)の軌道の概算方法であって、
前記環境において前記移動体をモデリングし、前記移動体が取り付けられた運動シミュレータ(2)および前記移動体の到達予定の目標を表すターゲット(4)に運動指令(C11,C12)を提供する(E20)デジタルシミュレーションツール(M2)を含み、前記シミュレーションツールは、前記移動体のコンピュータ(33)によって送信された操縦指令(P)が与えられ(E10)、前記操縦指令に応じて前記軌道のポイント(X)を送信し、下記をさらに含む、概算方法。
・前記移動体の第1の指定目標のオーバーシュートまたは変更を表す事象を検出(F10)した後における、前記移動体の第2の指定目標に関連付けられ、下記を含む、位置調整段階(φ1)、
・第1のトランジション運動指令に応じて前記運動シミュレータによって実行された位置と所定の第1の設定ポイントの位置とを比較して(F46)、前記第1の設定ポイントの位置に実質的に等しい位置が検出された場合には第1マーカー(f1)を起動する、
・第2のトランジション運動指令に応じて前記ターゲットによって実行された位置と所定の第2の設定ポイントの位置とを比較して(F56)、前記第2の設定ポイントの位置に実質的に等しい位置が検出された場合には第2マーカー(f2)を起動する。
・前記第1マーカーおよび前記第2マーカーが起動している場合に、前記デジタルシミュレーションツールにより前記運動シミュレータに提供される現在の前記運動指令と、前記デジタルシミュレーションツールにより前記ターゲットに提供される現在の前記運動指令との差分を計算する工程、および、
・前記差分が所定の閾値よりも小さい場合(F60)は、前記シミュレーションツールからの前記運動指令に、該運動指令が前記運動シミュレータおよび前記ターゲットに与えられる前に、前記設定ポイントの位置にリンクされる補正項を与える(F100)ことを含む、操縦段階(φ2)。
【請求項2】
前記シミュレーションツールによって前記運動シミュレータに与えられる前記運動指令はヨー要素を含み、前記シミュレーションツールによって前記ターゲットに与えられる前記運動指令は方位角の要素を含み、
前記移動体の第1の指定目標のオーバーシュートまたは変更を表す事象が検出される(F10)までは、前記運動指令の前記ヨー要素および前記方位角の要素に、該運動指令が前記運動シミュレータおよび前記ターゲットのそれぞれに与えられる前に、角度の補正項が与えられる(E60)、請求項1に記載の概算方法。
【請求項3】
前記第2の目標に到達するために、前記第1の目標に到達予定の前記移動体によって採られる方向に対する前記移動体の方向の変化が要求される場合は、前記位置調整段階は、方向を変更するために前記移動体の回転の方向を判断する工程(F30)をさらに含み、
前記第1の設定ポイントの位置および前記第2の設定ポイントの位置は、前記回転の方向に応じて選択される、請求項1または2に記載の概算方法。
【請求項4】
前記運動シミュレータおよび前記ターゲットに与えられる前記トランジション運動指令は、前記判断工程において一定である、請求項3に記載の概算方法。
【請求項5】
一定の前記トランジション運動指令は、前記事象が検出されたときに前記運動シミュレータおよび前記ターゲットによって実行された位置を含む、請求項4に記載の概算方法。
【請求項6】
前記閾値は、前記第1マーカーおよび前記第2マーカーのそれぞれが起動したときに前記運動シミュレータおよび前記ターゲットによって実行された前記位置、および、方向を変更するための前記移動体の前記回転の方向に依存する、請求項3〜5のいずれか一項に記載の概算方法。
【請求項7】
前記操縦段階は、下記から前記補正項を計算する(F90)工程をさらに含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の概算方法。
・前記第1マーカーおよび前記第2マーカーのそれぞれが起動したときに前記運動シミュレータおよび前記ターゲットによって実行された位置、および、
・前記差分が前記所定の閾値よりも小さいことを検出したときに前記シミュレーションツールによって提供された運動指令。
【請求項8】
前記操縦指令は、下記から前記移動体の前記コンピュータによって計算される(E100)、請求項1〜7のいずれか一項に記載の概算方法。
・前記運動シミュレータに取り付けられた前記移動体の慣性航法システム(31)によって提供された実測の慣性データ(R)、
・前記現実のナビゲーション環境における前記慣性航法システムによって提供されるであろう慣性データを表すシミュレーションの慣性データ(T2)、および、
・前記慣性航法システムによって提供される実測の慣性データを表し、前記運動シミュレータによって実行された運動指令から計算された、理論的な慣性データ(T1)。
【請求項9】
前記操縦指令は、I=T2+R−T1により規定される慣性データIに応じて計算される、請求項8に記載の概算方法。
ただし、T2、RおよびT1は、それぞれ前記シミュレーションの慣性データ、前記実測の慣性データ、および前記理論的な慣性データを示す。
【請求項10】
前記第2の目標が前記第1の目標と同じである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の概算方法。
【請求項11】
前記移動体が前記第2の目標に到達することを検証する(F120)工程をさらに含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の概算方法。
【請求項12】
現実のナビゲーション環境における移動体(3)の軌道の概算用ハイブリッドシミュレーションシステム(1)であって、
・前記移動体が取り付けられた運動シミュレータ(2)、
・前記移動体の到達予定の目標を表すターゲット(4)、および、
・前記現実のナビゲーション環境において前記移動体をモデリングし、前記運動シミュレータおよび前記ターゲットに運動指令を与えるデジタルシミュレーションツール(M2)であって、前記移動体のコンピュータ(33)によって送信された操縦指令(P)が与えられ、前記操縦指令に応じて前記軌道のポイント(X)を送信するシミュレーションツール、を含み、
下記をさらに含む、システム。
・前記移動体の第1の指定目標のオーバーシュートまたは変更を表す事象を検出する手段(51)、
・前記事象を検出した後であって前記移動体の第2の指定目標に関連付けられる位置調整段階において起動される、下記のための手段(53)、
・第1のトランジション運動指令に応じて前記運動シミュレータによって実行された位置と所定の第1の設定ポイントの位置とを比較して、前記第1の設定ポイントの位置に実質的に等しい位置が検出された場合には第1マーカーを起動する、および、
・第2のトランジション運動指令に応じて前記ターゲットによって実行された位置と所定の第2の設定ポイントの位置とを比較して、前記第2の設定ポイントの位置に実質的に等しい位置が検出された場合には第2マーカーを起動する、
・前記第1マーカーおよび前記第2マーカーが起動されているときを検出し、その場合には、前記シミュレーションツールにより前記運動シミュレータに与えられる現在の前記運動指令と、前記シミュレーションツールにより前記ターゲットに与えられる現在の前記運動指令との差分を計算する手段(53)、
・前記差分と所定の閾値とを比較する手段(53)、および、
・前記差分が前記閾値よりも小さい場合に、操縦段階において、前記シミュレーションツールからの前記運動指令に、該運動指令が前記運動シミュレータおよび前記ターゲットに与えられる前に、前記設定ポイントの位置にリンクされる補正項を与えるために起動される手段(53)。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【公表番号】特表2012−526963(P2012−526963A)
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−510347(P2012−510347)
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【国際出願番号】PCT/FR2010/050923
【国際公開番号】WO2010/130953
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(509096533)エムベーデーアー フランス (7)
【氏名又は名称原語表記】MBDA FRANCE
【Fターム(参考)】