説明

移動式物品収納庫

【課題】
本発明は、フリーアドレス制に使用される複数人が並んで使用するデスクの天板の微振動を防止するとともに、フリーアドレス制に適した使い勝手の良い移動式の物品収納庫の提供を課題とする。
【解決手段】
複数人の執務者が並んで着席し使用するデスクの脇や天板下方に移動して使用される移動式の物品収納庫において、その本体部の上方に、デスクの天板を天板下面から押し上げる力を常に負荷する押し上げ手段を備えた天板支持ユニットを、中央部、右部、左部とで選択的に取り付けできうるように設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数人が横並びで使用するデスクの天板の下方に挿入して使用される移動式の物品収納庫に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、オフィスにおいて執務者が自席を有さず、必要な箇所に適宜着席して執務を行う、いわゆるフリーアドレス制に合わせて、複数人が横並びあるいは対向して使用可能なデスクが採用されている。この場合、長尺の天板の両側端部に一対の支持脚を設け、中間部を、前後幅の小さい中間脚でデスクの使用前面縁に対して後端側のみを支持し、デスクの前面縁側の下方空間を開放していることが多い。
【0003】
執務者は、このデスクで執務を行なうにあたり、書類やノートパソコン等の自らの執務道具が収納された移動式の物品収納庫と共に必要な箇所に移動し、移動式の物品収納庫の一部を、天板下方に挿入配置した後、着席し執務を行なうことが一般的である。
【0004】
一方、前記フリーアドレス制で使用されているデスクの天板上を、1人分の執務スペースごとにパネル等で仕切り、天板の下方には物品収納庫を設置し、それぞれ一人ずつの固定席として使用することが増えてきている。
【0005】
このような前面縁側の下方空間を開放しているデスクは、天板の前端側に天板の支えがないため、強固なものとは言えなかった。
そのため、書類やノートパソコンなどの比較的軽量な執務道具を載せることを前提とした、前記デスクが、前述のように固定席として使用された場合、デスク上に載せられる執務道具は、大型のパソコンや参考書籍など、重量物となるので、天板に比較的大きな揺れや歪みが発生し、使い勝手が悪いという問題点があった。
【0006】
そのような、天板の歪みを防止するため、天板の下面に当接して天板にかかる荷重の一部を支える当接部を上面に設けた特許文献1のような物品収納庫がある。
【0007】
特許文献1で見られるように、物品収納庫で天板の下面を当接支持するのみで、天板を支持する箇所を固定しない構成では、天板にかかる荷重の一部を支えることは出来るが、天板は上方への動きに対しては規制することができないものであった。
【0008】
したがって、執務者は、側端部の支持脚と物品収納庫の当接部間、あるいは物品収納庫の当接部間の天板上で執務を行なうこととなるが、執務時のパソコンのキーボード操作のように、荷重のON/OFFが繰り返されると、荷重がかかった反動で天板が上方に微妙に撓み、それが微振動となって天板を通じて全席に伝わり、他の執務者が不快に感じることがあった。
【0009】
このように、物品収納庫の上面に、天板の下面に当接する天板支持部を設置しただけの構成では、天板かかる荷重の一部を支えることにより天板の大きな歪みを防止することはできるが、微振動を防止するには不十分であった。
また、これらの解決のため、物品収納庫で天板を支持した箇所を締結固定した場合、物品収納庫を容易に移動できなくなり、フリーアドレス制のデスクとして機能しなくなる問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−172303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、このような問題点に鑑み、フリーアドレス制に使用される複数人が並んで使用するデスクの天板の微振動を防止するとともに、フリーアドレス制に適した使い勝手の良い移動式の物品収納庫の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そこで、上記課題を解決する為、本発明が第1の手段として構成したところは、複数人の執務者が並んで着席が可能な広さを有する天板と、この天板の両側端部に一対の支持脚を備え、この支持脚間に、前後幅の小さい中間脚でデスクの使用前面縁に対して後端側のみを支持し、天板の前面縁下方空間を開放するデスクの脇や天板下方に移動して使用される移動式の物品収納庫において、その本体部の上方に、デスクの天板を天板下面から押し上げる力を常に負荷する押し上げ手段を備えた天板支持ユニットを設けたことを特徴とするものである。
【0013】
次に、上記課題を解決するため本発明の第2の手段として構成したところは、上記第1の手段に加え、本体部の上方において、天板支持ユニットを中央部、右部、左部とで選択的に取り付けできうるように設けたものである。
【0014】
次に、上記課題を解決するため本発明の第3の手段として構成したところは、上記第1あるいは第2の手段に加え、本体部の上方において、天板支持ユニットと交錯しない大きさであって、かつ天板上面と略面一となる高さの補助天板を、右部、左部とで選択的に取り付けできうるように設けたものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によると、移動式の物品収納庫の本体部の上方に設けた天板支持ユニットの押し上げ手段によってデスクの天板を天板下面より常に押し上げて、すなわち天板を押し上げた状態を維持して天板を緊張状態に保つことにより、天板の上下方向の撓みを規制することができ、天板の微振動を防止する。さらに移動式の物品収納庫を執務者が執務を行なう傍まで移動させることができるので、より執務者に近いところで天板の上下方向の撓みを規制し、確実に天板の微振動を防止する。
【0016】
請求項2に記載の発明によると、移動式の物品収納庫の本体部の上方において、天板支持部を中央部、左部、右部に適宜選択できるので、執務者の使い勝手に合わせて、物品収納庫の右勝手、左勝手やデスクの前端部からの引き出し量を自由に設定することができるとともに天板の微振動を防止する。
【0017】
請求項3に記載の発明によると、天板支持ユニットによって天板を下面より押し上げ保持した状態で、天板上面と略面一となる補助天板を使用できるので、天板の微振動を防止するとともに、より広い作業スペースを生み出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の移動式の物品収納庫をデスクと共に使用した一例を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態を示す分離斜視図である。
【図3】同実施形態に係る天板支持ユニットが、デスクの天板を押し上げ保持している状態を示す側面図である。
【図4】同実施形態に係る天板支持ユニットを示す斜視図である。
【図5】図4のA−A線拡大断面図である。
【図6】同実施形態に係る操作具を示す斜視図である。
【図7】同実施形態に係る天板支持ユニットを本体部上方の中央部に設置し、デスクの天板を押し上げ保持の状態で、本体部の1/3幅の補助天板を設置しているところを示す側面図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る天板支持ユニットが、デスクの天板を押し上げ保持している状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
フリーアドレス制に使用するデスクの天板の微振動を防止するという目的を、移動式の物品収納庫の上方に設けた天板支持ユニットで、天板を下面より押し上げ保持することによって実現した。
【実施例1】
【0020】
以下、第1実施例を添付図面に基づいて詳述する。
本発明に係る移動式の物品収納庫1は、図1に示すように、自席の限定がないフリーアドレス制のオフィスで使用されるデスクDと共に使用することが可能なものである。
本実施形態では、執務者が、横並びだけでなく対向して使用できるデスクDを適用している。
【0021】
本実施形態におけるデスクDは、複数人の執務者が並んで着席が可能な広さを有する天板D1と、天板D1の両側端部に設けられた一対の支持脚D2、D2とを備え、支持脚D2、D2間の中間部には、前後幅の小さい中間脚D3がデスクの使用前面縁に対して後端側に備えられており、天板D1の前面縁下方を開放するように天板下方空間D4が形成されている。
【0022】
移動式の物品収納庫1は、図1、図3に示すように、天板D1の天板下方空間D4に一部が収容される本体部2と、前記下方空間D4に一部が収容された本体部2に設けられた、天板D1を支持する天板支持ユニット3と、下方空間D4に収容されていない他方側の本体部2に設けられた、天板D1の上面と略面一となる補助天板T1と、本体部2の下面に設けられた移動手段としてのロック機能付きキャスター5を具備している。
【0023】
本体部2は、左右の側板6、6と、上面を構成する上板7と、下面を構成する底板8と、背板9を備えており、内部空間10を上下に2分割する棚板11を具備したオープンタイプの物品収納庫である。
尚、内部空間10の開口部には引き戸式扉や、開き戸式扉や、シャッター式扉などの閉塞手段を設けてもよい(図示せず)。
【0024】
本体部2の上板7には、天板支持ユニット3の取付用突起12、12、13、13が嵌まる取付穴12a、12a、13a、13aと、補助天板T1の支持突起14、14、15、15が嵌まる支持穴14a、14a、15a、15aが開いており、天板支持ユニット3、補助天板T1が取り外し自在に設置されている。
尚、実施例では、執務者に対し、物品収納庫1が左右側のどちらに置かれても使用できるよう、天板支持ユニット3と補助天板T1の取付け位置が取り替え可能に、それぞれに対応した位置に、取付穴12a、12a、13a、13aに対応して他方の取付穴12b、12b、13b、13bが設けられ、支持穴14a,14a、15a、15aに対応して他方の支持穴14b、14b、15b、15bが設けられている。
また、当然のこととして、補助天板T1用の支持孔14b、14b、15b、15bと天板支持ユニット3用の取付穴12a、12a、13a、13aを共用してもよい。
【0025】
一方、図7に示すように、この天板支持ユニット3を本体部2の上方の中央部に設置し、その左右側の上方スペースのいずれか側に本体部2の1/3幅程度の補助天板T1を取り外し自在に設置し、移動式の物品収納庫1のデスク前端部からの引き出し量を小さくした状態である。
また、補助天板T1を天板支持ユニット3の右側あるいは左側に選択的に取り付けることにより、執務者に対し、物品収納庫1が左右側のどちらに置かれても使用できるようにしている。
【0026】
これら天板支持ユニット3、補助天板T1は、本体部2の上板7でなくても、側板6や背板9から支持具を介し、立ち上げて設置してもよい(図示せず)。
【0027】
天板支持ユニット3は、方形板状のベース板16と、外周に雄ネジ加工が施され、ベース板16の所定の位置に立設固定された天板支持軸19と、天板支持軸19に上下にスライド可能に被せられ、上面が天板支持部17aとなる有蓋円筒状の天板支持部材17と、天板支持部材17の下端とベース板16の上面間に臨む天板支持軸19に螺着する操作部材18より構成されている。
【0028】
操作部材18は、天板支持軸19の円周方向の略半分程度を挟持する第1挟持部20と回動用レバー22を有する主操作具18aと、第1挟持部20に対向して天板支持軸19の円周方向の略半分程度を挟持する第2挟持部21と調整用レバー23を有した副操作具18bより構成され、第1挟持部20と第2挟持部21のそれぞれの一端が回転軸24によって回動自在に連結され、回動用レバー22と調整用レバー23間に配設された付勢バネ25によって、第1挟持部20と第2挟持部21は、常に天板支持軸19の外周を挟持するよう付勢されている。
そして、第1挟持部20と第2挟持部21の内面側には、天板支持軸19の外周に施された雄ネジ加工部19aに螺合する雌ネジ加工が施され第1螺合部20aと第2螺合部21aが形成されている。
【0029】
調整用レバー23には、調整用第1グリップ23aが具備されている。
そして、回動用レバー22には、調整用第1グリップ23aに略対向した位置に調整用第2グリップ22aが具備されており、さらに調整用第2グリップ22aを延出させた位置に回動用グリップ22bが連設されている。調整用第1グリップ23a、調整用第2グリップ22aは天板支持位置の高さ調整用に使用され、回動用グリップ23bは、第1螺合部20aと第2螺合部21aの回動用に使用される。
尚、調整用レバー23に対して回動用レバー22が長く構成されているのは(回動用グリップ23bが、調整用第2グリップ22aと別に形成されているのは)、誤操作を防ぐためである。
【0030】
すなわち、主操作具18aと副操作具18bとは上記の如く、回動用レバー22の調整用第2グリップ22aと調整用レバー23の調整用第1グリップ23aを同時に握ると、回転軸24によって回動自在に軸支されているので、第1挟持部20と第2挟持部21は互いに離間するように開き、調整用第2グリップ22aと調整用レバー23の調整用第1グリップ23aの握る力を緩めると、付勢バネ25によって、主操作具18aと副操作具18bは、閉じるように近づき、第1螺合部20aと第2螺合部21aは、天板支持軸19の外周に施された雄ネジ加工部19aに螺合する構成となっている。
【0031】
本発明の移動式の物品収納庫1は上記のごとく構成され、物品収納庫1の天板支持ユニット3の天板支持部材17がデスクDの天板D1下方に位置するように物品収納庫1を移動させ、キャスター5をロック状態にする。
次に、天板D1の下方で、操作部材18の回動用レバー22と調整用レバー23を同時に握ると、第1螺合部20aと第2螺合部21aが、天板支持軸19の雄ネジ加工部19aから螺脱し、操作部材18が、天板支持軸19を容易に上下動できるようになり、前記レバー22、23を握った状態で、操作部材18を上方に押しやり、操作部材18に載置している天板支持部材17の上面の天板支持部17aが天板D1の下面に当接したところで、その状態を維持しながら、前記レバー22、23の握る力を緩めると付勢バネ25の作用により、第1螺合部20aと第2螺合部21aは、天板支持軸19の外周に施された雄ネジ加工部19aに螺合する。
この状態で、天板支持部材17は下方にずれることはなく、デスクDの天板D1にかかる荷重を、天板支持部17aを介して物品収納庫1全体でデスクDの天板D1にかかる荷重の一部を支持する状態となる。
【0032】
さらに、上方に押し上げる力を常に天板D1に負荷すること、すなわち天板D1を上方に押し上げた状態を維持することによって、天板D1を常に緊張状態となし、天板D1の上下方向への微動(微振動)を防ぐには、雄ネジ加工部19aと第1螺合部20aと第2螺合部21aは螺合しているので、上記の天板D1を支持した上記の状態から、回動用レバー22を、天板支持軸19を軸として、反時計回りに力を加えて回すと(操作部材18が上昇する方向に回転させると)、操作部材18が天板支持部材17を介して天板支持部17aより前記天板D1の下面に対して、押し上げる力を加えることができるので、天板支持部17aが天板D1の下面に押上げるように圧接した状態となる。
尚、雄ネジ加工部19aと第1螺合部20aと第2螺合部21aネジピッチにより、回動用レバー22の回動角度に対する操作部材18の上昇量が決まるので、ネジピッチを大きくすれば、付勢レバー22を少し回すだけで操作部材18が大きく上昇するので操作性がよい。
【0033】
物品収納庫1を再度移動させる時には、上記と逆の操作をし、デスクDへの支持状態を開放する。
【実施例2】
【0034】
第2実施例の天板支持ユニット3は図8に示すように、ベース板16と天板支持軸19と操作部材18と天板支持部材17より構成されている。
ベース板16と天板支持軸19と操作部材18は、第1実施例と同じ構成である。
そして、第2実施例の天板支持部材17はテコの原理を利用するもので、ベース板16に設けられた回動支持片170と、操作部材18によって押し下げられる箇所を力点とし、天板D1の下面を押上げる箇所を作用点とし、力点と作用点のほぼ中間で、回動支持片170に回動自在に支持された箇所を支点とした回動支持板171より構成されている。
すなわち、第1の実施例では、天板支持部材17の天板支持部17aは、操作部材18を上昇させることで押し上げられているが、第2の実施例では、操作部材18を押し下げることで回動支持板171の天板支持部17aを押し上げて、天板D1にかかる荷重の一部を支持している。
【0035】
そして、天板支持部17aによる天板D1の下面への押上げ圧接操作も、第1の実施例と逆の操作で、操作部材18を時計回りに回転させることにより、ネジの作用で操作部材18が下降し、回動支持板171を介して天板支持部17aを上昇させることによって行なう。
その他、本体部2や補助天板T1の構成は実施例1と同様である。
【産業上の利用可能性】
【0036】
以上のように、本発明は、移動式の物品収納庫にかかわるものであり、移動式の物品収納庫によってフリーアドレス制に使用されるデスクの天板の微振動を防止することができるので、事務所等の執務空間の移動式の物品収納庫として広く利用することができる。
【符号の説明】
【0037】
D デスク
D1 天板
D2 支持脚
D3 中間脚
1 移動式の物品収納庫
2 本体部
3 天板支持ユニット
T1 補助天板
16 ベース材
17 天板支持部材
17a 天板支持部
18 操作具
19 天板支持軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数人の執務者が並んで着席が可能な広さを有する天板と、この天板の両側端部に一対の支持脚を備え、この支持脚間に、前後幅の小さい中間脚でデスクの使用前面縁に対して後端側のみを支持し、天板の前面縁下方空間を開放するデスクの脇や天板下方に移動して使用される移動式の物品収納庫において、その本体部の上方に、デスクの天板を天板下面から押し上げる力を常に負荷する押し上げ手段を備えた天板支持ユニットを設けたことを特徴とする移動式の物品収納庫。
【請求項2】
本体部の上方において、天板支持ユニットを中央部、右部、左部とで選択的に取り付けできうるように設けた請求項1記載の移動式の物品収納庫。
【請求項3】
本体部の上方において、天板支持ユニットと交錯しない大きさであって、かつ天板上面と略面一となる高さの補助天板を、右部、左部とで選択的に取り付けできうるように設けた請求項1又は2記載の移動式の物品収納庫。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−229811(P2011−229811A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−104982(P2010−104982)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(000125990)株式会社くろがね工作所 (84)
【Fターム(参考)】